説明

液体噴射装置

【課題】フラッシングにより回転ローラーに付着した液体が乾燥し、液体の溶質が回転ローラーの周面に堆積することを効果的に防ぎ、液体噴射ヘッドのノズル形成面を傷つけたり汚してしまうことのない液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】記録ヘッド11により印刷用紙Pに対して記録を行い、記録ヘッド11のフラッシングを回転ローラー29に対して行うことができるプリンター1であって、回転ローラー29のインク受け部42よりも下方の部分の少なくとも一部を洗浄液27に浸漬させることができるように洗浄液27が貯留される貯留槽28を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置においては、インクを記録ヘッドのノズル開口からインク滴として印刷用紙に噴射させて印刷を行う関係上、次に示すような問題を抱えている。すなわち、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇やノズル形成面におけるインクの固化,塵埃の付着によってノズル開口に目詰まりが発生し、さらには記録ヘッド内に気泡が混入し、印刷不良を起こすという問題である。
【0003】
このため、インクジェット式記録装置にあっては、非印刷領域(フラッシング領域)において一定時間毎に記録ヘッドのノズル開口からインクを噴射させることにより、ノズル開口の目詰まりを解消させる、いわゆるフラッシング(空噴射)を行うものがある。
【0004】
このようなフラッシングを行うインクジェット式記録装置においては、たとえば、特許文献1に開示されるように、フラッシングされたインクが堆積しないように、回転ローラーに対してインクを噴射するものがある。特許文献1に開示されるインクジェット式記録装置では、回転ローラーの回転移動により回転ローラーに付着したインクを重力方向に落下させることにより、回転ローラーの周面に付着したインクが乾いて堆積してしまうことを防止している。また、スクレイパーにより、回転ローラーに付着したインクを掻き取ることによっても、回転ローラーの周面にインクが乾いて堆積してしまうことを防止している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−320690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転ローラーからインクが落下しきれなかったり、あるいは、スクレイパーにより掻き取りが不十分で、回転ローラーに付着したままインクが固まってしまい、回転ローラーの周囲に堆積してしまうことがある。回転ローラーの周面に、インクが固まり堆積すると記録ヘッドのノズル形成面が、堆積したインクに接触し、ノズル形成面を傷つけたり汚してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、フラッシングにより回転ローラーに付着した液体が乾燥し、液体の溶質が回転ローラーの周面に堆積することを効果的に防ぎ、液体噴射ヘッドのノズル形成面を傷つけたり汚してしまうことのない液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、液体噴射ヘッドにより記録媒体に対して記録を行い、液体噴射ヘッドのフラッシングを回転ローラーに対して行うことができる液体噴射装置であって、回転ローラーのフラッシングされた液体を受ける液体受け部よりも下方の部分の少なくとも一部が洗浄液に浸漬させられるように、洗浄液が貯留される洗浄液貯留槽を備えることとする。
【0009】
このように液体噴射装置を構成することで、回転ローラーの円周面のインクが付着した部分を、洗浄液に浸漬させながら移動させることができ、付着インクを円周面から除去することができる。そのため、乾燥したインクが回転ローラーの円周面に堆積し難くなり、液体噴射ヘッドのノズル形成面を傷つけたり汚してしまうことを防ぐことができる。
【0010】
上記発明に加えて、回転ローラーの母線と液体噴射ヘッドのノズル列とが平行であることとする。
【0011】
このように液体噴射装置を構成することで、フラッシングが実行されるノズル列は、ノズル列を構成するノズルの位置に拘わらず、回転ローラーの円周面との間の距離(間隔)を一定にすることができる。これにより、ノズル列と円周面との間の間隔を狭めることができ、ノズル列から噴射したインクが円周面に到達する前にミスト化して周囲に飛散してしまうことを防止できる。
【0012】
上記発明に加えて、回転ローラーの液体受け部は、回転ローラーの回転軸を含む鉛直面から外れた位置に配置されていることとする。
【0013】
このように液体噴射装置を構成することで、ノズル列から噴射され液体受け部に位置する円周面に衝突(着弾)したインク滴がノズル形成面に跳ね返り難いものとすることができる。
【0014】
回転ローラーは、回転軸よりも液体噴射ヘッド側の部分が印刷領域の反対側に向かうように回転することとする。
【0015】
このように液体噴射装置を構成することで、回転ローラーとノズル形成面との間に、印刷領域から非記録領域の側に向かう気流が発生し易くなる。そのため、フラッシング時に発生したインクミストが印刷領域の側に飛散し難くなる。
【0016】
上記発明に加えて、回転ローラーに付着したインクを除去する除去部材を備えることとする。
【0017】
このように液体噴射装置を構成することで、洗浄液による付着インクの除去に加えて、除去部材によっても、回転ローラーに付着したインクの除去を行うことができ、付着インクの除去の程度を極めて高いものとすることができる。
【0018】
上記発明に加えて、除去部材は、回転ローラーの洗浄液に浸漬されている部分よりも回転方向に向かって上方となる部分において、付着したインクの除去を行うことができるように配置されていることとする。
【0019】
このように液体噴射装置を構成することで、洗浄液の中を通過し十分に粘度が低下している付着インクに対して除去を行うことができるため、付着インクの除去を効率よく行うことができる。
【0020】
上記発明に加えて、除去部材は、回転ローラーが洗浄液に浸漬されている部分において、付着したインクの除去を行うことができるように配置されていることとする。
【0021】
このように液体噴射装置を構成することで、洗浄液に浸漬させられ、粘度の低下した付着インクを除去部材により除去できるため、効果的に付着インクの除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェットプリンターの全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンターの概略の構成を示す平面概略図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンターを正面から見たときの概略の構成を示す断面概略図である。
【図4】図1に示すフラッシングボックスを正面から見たときの概略の構成を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
(インクジェット式記録装置1の全体構成)
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1から図4を参照しながら説明をする。図1は、本発明の第1の実施形態に係る液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(以下、プリンターと記載する。)1の全体構成の概略を示す斜視図である。図2は、プリンター1の概略の構成を示す平面概略図である。図3は、プリンター1を前方(正面)から見たときの概略の構成を示す断面概略図である。なお、図1に示す矢印X方向を前方、矢印Y方向を左方、矢印Z方向を上方として以下の説明を行うこととする。
【0024】
図1において、キャリッジ2は、キャリッジモーター3によって駆動されるタイミングベルト4を介し、ガイドロッド5に案内されてプラテン6の軸方向(主走査方向)に往復移動し得るように構成されている。なお、ガイドロッド5は、互いに対向する左右二つのフレーム7,8に取り付けられ支持されている。両フレーム7,8は、背面板9および底板10によって連結されている。
【0025】
キャリッジ2の下面部には液体噴射ヘッドとして、インクジェット式の記録ヘッド11が装着されている。また、記録ヘッド11の下側には、記録媒体としての印刷用紙Pを支持する用紙ガイド台12(図2,図3参照)が備えられている。用紙ガイド台12は、下側部が全体に開口する箱体であり全体として直方体を呈している。用紙ガイド台12の上面は、印刷用紙Pを副走査方向(主走査方向と直角な方向)に案内するガイド面13として形成されている。
【0026】
また、キャリッジ2の上面部には記録ヘッド11にインクを供給するブラックインクカートリッジ14Kおよびカラーインクカートリッジ14Y,14C,14Mが着脱可能に保持されている。カラーインクカートリッジ14Y,14C,14Mには、たとえば、イエロー、シアン、マゼンタ色のインクが貯留されている。記録ヘッド11には、各インクカートリッジ14K,14Y,14C,14Mにそれぞれ接続するノズル列15K,15Y,15C,15M(図4参照)が設けられている。したがって、各ノズル列15K,15Y,15C,15Mからは、対応するインクカートリッジ内に貯留される色のインクが噴射される。各ノズル列15K,15Y,15C,15Mは、左右方向に配列されている。また、1つのノズル列は、前後方向に配列される複数のノズルから構成されている。
【0027】
キャリッジ2の往復移動の右端側に位置する非印刷領域16(ホームポジション)には、クリーニング機構17が配置されている。また、キャリッジ2の往復移動の左端側に位置する非印刷領域18には、フラッシング受け手段としてのフラッシングボックス19が配置されている。非印刷領域16と非印刷領域18との間には、記録ヘッド11により印刷用紙Pに対して印刷が行われる領域である印刷領域20として設定されている。
【0028】
キャリッジ2は、前記したようにガイドロッド5に案内され、用紙ガイド台12に対向して平行に非印刷領域16と非印刷領域18との間を往復移動し得るように構成されている。キャリッジ2の左右方向へ移動において記録ヘッド11による印刷が行われるが、この印刷が行われる用紙ガイド台12上の領域が「印刷領域20」である。これに対して、印刷領域20の左右に配置され、印刷が行われない領域が「非印刷領域16と非印刷領域18」である。
【0029】
プリンター1は、クリーニング機構17およびフラッシングボックス19に対して、フラッシングを行うことができるように構成されている。つまり、プリンター1は、印刷領域20の両側においてフラッシングを行うことができる。したがって、プリンター1は、フラッシングの実行に先立って、非印刷領域16または非印刷領域18のうち、記録ヘッド11との距離が近い側に記録ヘッド11を移動させ、クリーニング機構17またはフラッシングボックス19に対してフラッシングを実行することができる。これにより、フラッシング時における記録ヘッド11の移動量を少なくすることができ、フラッシング開始までの時間を短縮することがきる。
【0030】
(クリーニング機構17)
クリーニング機構17は、記録ヘッド11のノズル形成面21(図3参照)を封止可能なキャップ22と、ポンプユニットとしての吸引ポンプ(チューブポンプ)23と、ワイピング手段としてのワイパー24等を備える。そして、クリーニング機構17によるフラッシングの実行は、次のように行われる。
【0031】
記録ヘッド11が非印刷領域16に移動し、キャップ22の直上に位置した時に、キャップ22が上昇し、キャップ22により記録ヘッド11のノズル形成面21を封止する。そして、印刷とは関係のない駆動信号を記録ヘッド11に印加し、インク滴を空噴射するフラッシングを行う。これにより、ノズル内の凝固したインクをノズル外に排出することができる。排出された廃インクは、吸引ポンプ23を介して廃液タンク25に排出される。
【0032】
クリーニング機構17は、上述のフラッシングの他、ノズル内のインクを吸引するクリーニングと、ノズル形成面21を払拭するワイピングとを行うことができるように構成されている。クリーニングでは、ノズル形成面21をキャップ22により封止した状態で、吸引ポンプ23によりキャップ22内部に負圧を発生させ、ノズル内のインクの吸引排出を行う。このクリーニングによっても、ノズル内の凝固したインクをノズル外に排出することができる。また、ワイピングでは、ワイパー24により、ノズル形成面21に付着しているインクを払拭する。
【0033】
ワイパー24は、記録ヘッド11の移動経路と直角な水平方向に進退可能となるように配置されている。したがって、ワイパー24を、記録ヘッド11の移動経路に進出させた状態で、記録ヘッド11を主走査方向に移動することで、ノズル形成面21に付着しているインクをワイパー24により払拭することができる。
【0034】
なお、吸引ポンプ23の吸引動作とワイパー24の移動動作とは、印刷用紙Pを搬送する紙送りモータ(図示せず)の駆動力を利用して行うことができる。また、キャップ22は、プリンター1の休止期間中における記録ヘッド11のノズル開口の乾燥を防止する蓋体としての機能も備えている。
【0035】
(フラッシングボックス19の構成)
用紙ガイド台12のガイド面13の非印刷領域18に位置する部分には、平面視において矩形を呈するフラッシング用の貫通孔26が設けられている。そして、用紙ガイド台12内の貫通孔26の下側には、図4に示すフラッシングボックス19が備えられている。図4は、フラッシングボックス19を前方から見たときの概略の構成を示す断面概略図である。このフラッシングボックス19は、洗浄液27が貯留される貯留槽28と、回転ローラー29と、除去部材としての3つのスクレイパー30,31,32等を備えている。
【0036】
貯留槽28は全体として直方体を呈し、その上面に貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、貫通孔26と同一の形状および大きさに形成され、貫通孔26と合致する位置に形成されている。したがって、ガイド面13の上方と貯留槽28の内部とは、貫通孔26および貫通孔33により連通している。また、貫通孔26および貫通孔33は、前後方向について、ノズル列15K(15Y,15C,15M)の前後方向の長さよりも長く形成されている。
【0037】
回転ローラー29は、回転軸34により回転可能に貯留槽28内に支持されている。回転ローラー29は、回転軸34の軸方向を前後方向に向けた円柱体を呈している。そして、回転ローラー29は、その円周面35の最上部が貫通孔26および貫通孔33の周縁よりも貫通孔26,33の内側寄りに位置し、記録ヘッド11から回転ローラー29に対してインク滴をフラッシングすることができるように配置されている。また、回転ローラー29は、円周面35の最上部が、ガイド面13と略同一の高さとなるように配置されている。
【0038】
回転ローラー29は、たとえば、印刷用紙Pを搬送する紙送りモータ(図示せず)の駆動力が回転軸34に伝達されることで回転することができるようになっている。プリンター1においては、回転ローラー29の回転方向は、回転ローラー29の最上部が印刷領域20から遠ざかる方向(矢印M方向)であり、前方視において反時計回りとされている。すなわち、回転ローラー29は、回転軸34よりも記録ヘッド11側の部分における回転方向が、印刷領域20に対して反対側に向かう方向に回転させられる。
【0039】
さらに、回転ローラー29の回転軸34は、ノズル列15K(15Y,15C,15M)に平行に配置されている。したがって、回転ローラー29の円周面35上の母線とノズル列15K(15Y,15C,15M)とは平行な配置になっている。
【0040】
貯留槽28には、回転ローラー29が、回転ローラー29の下側の、たとえば、1/3程度の部分が浸漬させることができるように洗浄液27が貯留されている。したがって、回転ローラー29が回転すると、回転ローラー29の円周面35は、順次、洗浄液27に浸漬させられる。
【0041】
スクレイパー30,31,32は、貯留槽28の内部に配置され、回転ローラー29の円周面35に付着したインク(付着インク)を掻き取ることができるように、回転ローラー29に押圧接触している。スクレイパー30は、貯留槽28の上壁部36に支持部37を介して取り付けられている。スクレイパー30は、回転ローラー29の洗浄液27から上方に出ている部分であって、回転ローラー29の円周面35が上方から下方に向かって摺動する側に配置されている。すなわち、スクレイパー30は、回転ローラー29の左側に配置されている。
【0042】
また、スクレイパー31は、貯留槽28の底面部38に支持部39を介して取り付けられている。スクレイパー31は、回転ローラー29が洗浄液27に浸漬している部分において円周面35に押圧接触できるように配置されている。
【0043】
そして、スクレイパー32は、貯留槽28の右側面40に支持部41を介して取り付けられている。スクレイパー32は、回転ローラー29の洗浄液27から上方に出ている部分であって、回転ローラー29の円周面35が下方から上方に向かって摺動する側に配置されている。すなわち、スクレイパー32は、回転ローラー29の右側に配置されている。
【0044】
(フラッシングボックス19に対するフラッシングの実行)
上述のように構成されるフラッシングボックス19に対するフラッシングの実行は、次のように行われる。なお、ここでは、ノズル列15Kから15Mのうち、ノズル列15Kについてフラッシングを行う場合について説明を行う。
【0045】
フラッシングの実行に当たり、先ず、プリンター1は、記録ヘッド11のフラッシグを実行しようとするノズル列であるノズル列15Kを、回転ローラー29上の液体受け部としてのインク受け部42の直上、すなわち、インク受け部42の鉛直線上に配置する。インク受け部42は、貫通孔26,33の周縁よりも貫通孔26,33の内側の位置であり、かつ、回転軸34を挟んで印刷領域20と反対側の位置に設定されている。ノズル列15Kを、インク受け部42の直上に配置した後、ノズル列15Kから印刷とは関係のないインクが噴射するように、記録ヘッド11に駆動信号が印加され、ノズル列15Kからインク滴がフラッシングされる。これにより、ノズル列15K内のノズル内で凝固したインクをノズル外に排出することができる。排出されたインク滴は、貫通孔26および貫通孔33の内側に配置される回転ローラー29のインク受け部42に付着する。
【0046】
回転ローラー29は、紙送りモーター(図示省略)の駆動力を受けて、反時計回り(矢印M方向)に回転している。したがって、回転ローラー29は、インク受け部42においてインク滴が付着されながら反時計回りに回転をする。そのため、回転ローラー29の円周面35に付着したインクは、スクレイパー30,31,32および洗浄液27により、円周面35から除去される。
【0047】
インク受け部42において円周面35に付着したインクは、先ず、スクレイパー30により円周面35から除去される。スクレイパー30の掻き取り位置は、インク受け部42においてインクが付着した部分が洗浄液27に浸漬される前の位置であり、インク受け部42において円周面35に付着したインクは、比較的早いタイミングでスクレイパー30により掻き取られる。このため、インク受け部42において円周面35に付着したインクの粘度が上がる前に、効果的に円周面35から付着インクを除去することができる。
【0048】
そして、回転ローラー29のスクレイパー30により付着インクが除去された部分は、回転ローラー29の回転により、洗浄液27に浸漬させられる位置に移動する。インクが付着した円周面35は、回転ローラー29の回転により、洗浄液27中を移動させられる。このようにインクが付着している円周面35が洗浄液27中を移動することで、円周面35に付着しているインクが洗浄液27により除去される。
【0049】
洗浄液27中には、スクレイパー31が配置されている。したがって、スクレイパー31によっても円周面35に付着しているインクを除去することができる。円周面35は、スクレイパー31の位置に移動するまでの間、洗浄液27に浸漬させられている。そのため、付着インクは、その粘度が低下させられた状態となり、スクレイパー31により効果的に付着インクを円周面35から除去することができる。また、円周面35のスクレイパー31が接触している部分は、洗浄液27に浸漬している。そのため、スクレイパー31により除去される付着インクは、洗浄液27側に溶け出しながら除去され、付着インクの除去が効率的に行われる。
【0050】
そして、回転ローラー29のスクレイパー31によりインクが除去された部分は、さらに、回転ローラー29の回転により、洗浄液27に浸漬させられた状態で移動する。円周面35に付着したインクは、洗浄液27中を移動する間、洗浄液27により円周面35から除去される。
【0051】
洗浄液27の液面よりも上方には、スクレイパー32が配置されている。このスクレイパー32によっても円周面35に付着しているインクを除去することができる。スクレイパー32では、スクレイパー30およびスクレイパー31、そして洗浄液27により除去し切れなかったインクが除去される。スクレイパー32が押圧接触する部分では、付着インクは、洗浄液27内を通過され十分にその粘度が低下している状態となっている。そのため、付着インクの除去を効率よく行うことができる。
【0052】
回転ローラー29の回転は、ノズル列15Kからフラッシングを行っている間に加えて、ノズル列15Kのフラッシングが終わった後、少なくとも、フラッシング終了時にインク受け部42に位置している円周面35が、スクレイパー32を通過するまで行われる。これにより、フラッシング終了時にインク受け部42に位置していた円周面35に対して、3つのスクレイパー30,31,32および洗浄液27による付着インクの除去処理を行うことができ、円周面35に付着したインクの除去を確実なものとすることができる。
【0053】
なお、上述の例では、回転ローラー29の下側の1/3程度を洗浄液27に浸漬させることとしているが、回転ローラー29が洗浄液27に浸漬させられる部分は、インク受け部42よりも下側の部分であれば、回転ローラー29の下側の1/3よりも多くて少なくてもよい。つまり、回転ローラー29が、インク受け部42より下側部分の少なくとも一部において洗浄液27に浸漬させられることで、洗浄液27により、回転ローラー29に付着したインクの除去を行うことができる。
【0054】
以上のように、3つのスクレイパー30,31,32および洗浄液27により、回転ローラー29に付着したインクの除去の程度を極めて高いものとすることができる。そのため、乾燥したインクが回転ローラー29の周面に堆積することを効果的に防ぐことができ、記録ヘッド11のノズル形成面21を傷つけたり汚してしまうことを防ぐことができる。
【0055】
上述したように、プリンター1においては、回転ローラー29の回転軸34が、ノズル列15K(15Y,15C,15M)に平行に配置されている。したがって、回転ローラー29の円周面35上の母線とノズル列15K(15Y,15C,15M)とは平行な配置になっている。そのため、フラッシングが実行されるノズル列15Kは、ノズル列15Kの前後方向の位置に拘わらず、回転ローラー29の円周面35との間の距離(間隔)が一定である。これにより、ノズル列15Kと円周面35との間の間隔を狭めることができ、ノズル列15Kから噴射したインクが円周面35に到達する前にミスト化して周囲に飛散してしまうことを防止できる。
【0056】
たとえば、回転ローラー29の回転軸34を左右方向に配置した場合には、ノズル列15Kの列方向が回転ローラー29の円周方向となる。そのため、ノズル列15Kの中央部では、円周面35との間隔が狭くなるが、前後方向ほど円周面35との間隔が広くなる。その結果、前後方向に在るノズルから噴射したインクのミストが飛散し易くなるという問題が発生する。これに対し、回転ローラー29の回転軸34を、ノズル列15K(15Y,15C,15M)に平行に配置することで、上述の問題が発生しないようにすることができる。
【0057】
また、プリンター1においては、インク受け部42が、回転ローラー29の回転軸34よりも左側、すなわち、回転軸34を含む鉛直面よりも左側に外れた(ずれた)位置に設定されている。つまり、インク受け部42に位置する円周面35は、その法線Hが、ノズル形成面21に対して直交する状態よりも左側に傾斜する面となっている。そのため、ノズル列15Kから噴射されインク受け部42に位置する円周面35に衝突(着弾)したインク滴は、左方に反射されやすくノズル形成面21に跳ね返り難いものとなる。
【0058】
また、プリンター1においては、回転ローラー29の回転方向は、回転ローラー29の最上部が印刷領域20から遠ざかる方向(矢印M方向)であり、前方視において反時計回りとされている。すなわち、回転ローラー29は、回転軸34よりも記録ヘッド11側の部分における回転方向が、印刷領域20に対して反対側に向かう方向に回転させられている。これにより、回転ローラー29とノズル形成面21との間に、印刷領域20から非記録領域18の側に向かう気流が発生し易くなる。そのため、フラッシング時に発生したインクミストが印刷領域20側に飛散し難くなり、ガイド面13や印刷用紙Pへのミストの付着を防止できる。
【0059】
ノズル列15Kについてフラッシングが終わった後は、順次、他のノズル列が、インク受け部42の直上に配置されるようにキャリッジ2を移動し、他のノズル列についても上述したフラッシングが実行される。なお、フラッシングは、4つのインク列15K,15Y,15C,15Mの中から、1つまたは2つ、あるいは3つの選択したノズル列のみについて行うようにしてもよい。また、インク列は、1列あるいは5列以上の構成であってもよい。
【0060】
回転ローラー29は、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等のプラスチック材料からなるインク非吸収体によって形成されている。これにより、記録ヘッド11から噴射されるインクが円周面35に付着しても、インクが回転ローラー29に吸収されることがない。そのため、スクレイパー30,31,32によるインクの除去(掻き取り)や洗浄液27による洗浄が行い易いものとなっている。
【0061】
また、スクレイパー30,31,32は、ブチルゴムやフッ素ゴム等の可撓性とインク非吸収性を有す材料から形成されている。回転ローラー29の円周面35に先端部を押圧接触することで、円周面35に付着したインクを除去する(掻き取る)ことができるように構成されている。なお、除去部材としては、スクレイパーに換えて、スポンジ等により、付着インクを払拭することで、付着インクの除去を行う構成としてもよい。
【0062】
なお、貯留槽28の下部には、インク吸収保持材25Aが備えられる廃液タンク25に繋がる流路43が接続され、バルブ44を開放することで、汚れた洗浄液27を廃液タンク25に排出することができる。また、貯留槽28の上部には、補給タンク45が接続されている。そのため、洗浄液27を廃液タンク25に排出した後、あるいは、貯留槽28内の洗浄液27が蒸発等で減少したときに、補給タンク45から貯留槽28に洗浄液27を補給することができる。
【0063】
(変形例)
上述したプリンター1では、円周面35に付着したインクの除去を3つのスクレイパー30,31,32および洗浄液27により行っているが、スクレイパー30,31,32を用いることなく、洗浄液27内で回転ローラー29を回転するだけの構成としてもよい。洗浄液27内をインクが付着した円周面35が移動することで、付着インクを洗浄液により溶かしながら除去することができる。そのため、背景技術の欄で説明したスクレイパーだけによって円周面35に付着したインクを除去する構成よりも、効率的に付着インクの除去を行うことができる。また、洗浄液27によるインクの除去に加えて、スクレイパー30,31,32のうち、1つまたは2つのスクレイパーを用いて付着インクを除去するようにしてもよい。
【0064】
なお、スクレイパー30またはスクレイパー31のうち少なくとも一方を備え、スクレイパー32を備えない構成としてもよい。このような構成とした場合には、洗浄液27から脱出した円周面35に付着している洗浄液27がスクレイパー32により除去されないようにすることができる。これにより、洗浄液27が付着した状態の円周面35をインク受け部42に位置させることができ、円周面35に付着したインクの凝固を防ぐことができる。特に、洗浄液27の蒸発量、あるいは揮発量が多い場合には、スクレイパー32を備えないことで、インク受け部42において、円周面35を湿潤な状態にすることができる。
【0065】
(実施の形態の主な効果)
上述のように本実施の形態に係る液体噴射装置としてのプリンター1は、噴射液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド11により記録媒体としての印刷用紙Pに対して記録(印刷)を行い、記録ヘッド11のフラッシングを回転ローラー29に対して行うことができるものであり、回転ローラー29の液体受け部としてのインク受け部42よりも下方の部分の少なくとも一部を洗浄液27に浸漬することができるように洗浄液27が貯留される洗浄液貯留槽28を備える。
【0066】
このようにプリンター1を構成することで、回転ローラー29の円周面35のインクが付着する部分を、洗浄液27に浸漬させながら移動させることができる。付着インクは洗浄液27に浸漬されることで粘度が低下する。さらに、回転ローラー29の回転により、インクが付着した部分が移動するため、付着インクに対して洗浄液27の流れが発生する。そのため、付着インクを円周面35から効率的に除去することができる。つまり、乾燥したインクが回転ローラー29の円周面35に堆積することを効果的に防ぐことができ、記録ヘッド11のノズル形成面21を傷つけたり汚してしまうことを防ぐことができる。
【0067】
また、プリンター1は、回転ローラー29の母線と記録ヘッド11のノズル列15Kとが平行である。
【0068】
このようにプリンター1を構成することで、フラッシングが実行されるノズル列15Kは、ノズル列15Kの前後方向の位置に拘わらず、回転ローラー29の円周面35との間の距離(間隔)を一定にすることができる。これにより、ノズル列15Kと円周面35との間の間隔を狭めることができ、ノズル列15Kから噴射したインクが円周面35に到達する前にミスト化して周囲に飛散してしまうことを防止できる。
【0069】
また、プリンタ−1においては、回転ローラー29のインク受け部42が、回転ローラー29の回転軸34を含む鉛直面から外れた位置に配置されている。
【0070】
このようにプリンター1を構成することで、円周面35のインク受け部42における法線Hが、ノズル形成面21に対して直交する状態よりも左側に傾斜する。すなわち、円周面35のインク受け部42における接平面が左下に傾斜する。そのため、ノズル列15Kから噴射されインク受け部42に位置する円周面35に衝突(着弾)したインク滴は、左方に反射されやすくノズル形成面21に跳ね返り難いものとなる。
【0071】
また、プリンタ−1において、回転ローラー29は、回転軸34よりも記録ヘッド11側の部分が印刷領域20の反対側に向かうように回転する。
【0072】
このようにプリンター1を構成することで、回転ローラー29とノズル形成面21との間に、印刷領域20から非記録領域18の側に向かう気流が発生し易くなる。そのため、フラッシング時に発生したインクミストが印刷領域20側に飛散し難くなり、ガイド面13や印刷用紙Pへのミストの付着を防止できる。
【0073】
また、プリンタ−1は、回転ローラー29に付着したインクを除去する除去部材としてのスクレイパー30,31,32を備える。
【0074】
このようにプリンター1を構成することで、洗浄液27による付着インクの除去に加えて、3つのスクレイパー30,31,32によっても、回転ローラー29に付着したインクの除去を行うことができ、付着インクの除去の程度を極めて高いものとすることができる。
【0075】
また、プリンタ−1は、回転ローラー29の洗浄液27に浸漬されている部分よりも回転方向に向かって上方となる部分において、スクレイパー32により、付着インクの除去を行っている。
【0076】
このようにプリンター1を構成することで、スクレイパー30およびスクレイパー31、そして洗浄液27によっても除去し切れなかった付着インクを、スクレイパー32により除去することができる。また、スクレイパー32が押圧接触する部分では、付着インクは、洗浄液27内を通過され十分にその粘度が低下している状態となっている。そのため、付着インクの除去を効率よく行うことができる。
【0077】
また、プリンタ−1は、回転ローラー29が洗浄液27に浸漬されている部分において、スクレイパー31により、付着インクの除去を行っている。
【0078】
円周面35は、スクレイパー31の位置に移動するまでの間、洗浄液27に浸漬させられている。そのため、付着インクは、その粘度が低下された状態となり、スクレイパー31により効果的に付着インクを円周面35から除去することができる。また、円周面35のスクレイパー31が接触している部分は、洗浄液27に浸漬している。そのため、スクレイパー31により除去される付着インクは、洗浄液27側に溶け出しながら除去され、付着インクの除去を効率的に行うことができる。
【0079】
上述の実施の形態においては、液体噴射装置を、インクを噴射するプリンター(インクジェットプリンター)1として説明したが、この限りではなく、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を記録ヘッド(液体噴射ヘッド)から噴射できる流体噴射装置としても具現化できる。
【符号の説明】
【0080】
1 … プリンター(液体噴射装置) 11 … 記録ヘッド(噴射液体噴射ヘッド) 15K,15Y,15C,15M … ノズル列 20 … 印刷領域
29,53 … 回転ローラー 28 … 洗浄液 28 … 貯留槽 30,31,32 … スクレイパー(除去部材) 34 … 回転軸 42 … インク受け部(液体受け部) P … 印刷用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射液体噴射ヘッドにより記録媒体に対して記録を行い、
上記液体噴射ヘッドのフラッシングを回転ローラーに対して行うことができる液体噴射装置であって、
上記回転ローラーの上記フラッシングされた液体を受ける液体受け部よりも下方の部分の少なくとも一部が洗浄液に浸漬させられるように、上記洗浄液が貯留される洗浄液貯留槽を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記回転ローラーの母線と前記液体噴射ヘッドのノズル列とが平行である、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴射装置において、
前記液体受け部は、前記回転ローラーの回転軸を含む鉛直面から外れた位置に配置されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載の液体噴射装置において、
前記回転ローラーは、前記回転軸よりも前記液体噴射ヘッド側の部分が印刷領域の反対側に向かうように回転する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1に記載の液体噴射装置であって、
前記回転ローラーに付着したインクを除去する除去部材を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射装置であって、
前記除去部材は、前記回転ローラーの前記洗浄液に浸漬されている部分よりも回転方向に向かって上方となる部分において、前記付着したインクの除去を行うことができるように配置されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記除去部材は、前記回転ローラーが前記洗浄液に浸漬されている部分において、前記付着したインクの除去を行うことができるように配置されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126062(P2011−126062A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284876(P2009−284876)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】