説明

液体噴射装置

【課題】構成部品を変更及び追加することなく吸引クリーニングの際のインクの消費量を低減できる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル面42と、ノズル面に開口する複数のノズル40と、ノズルに液体(インク)を供給する液体室(個別インク室43)と、ノズルにノズルの開口41を介して液体室からの液体を吐出させる吐出動作を行わせるアクチュエーター(圧電素子46)と、ノズルの開口を封止するキャップ部材60と、キャップ部材に接続されてキャップ部材で封止されたノズルの開口から液体を吸引する吸引手段(吸引ポンプ61)と、ノズルの吐出動作の良否を判定し、キャップ部材で封止されたノズルの開口から吸引手段を駆動して液体を吸引する際に、吐出動作良のノズル(正常ノズル40B)から液体を吸引する際のノズルの流路抵抗を吐出動作不良(不良ノズル40A)のノズルの流路抵抗よりも大きく設定する制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引クリーニングの際のインク消費量低減を図った液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド(以下、ヘッドという)から印刷用紙等の被記録媒体に対してインク(液体)を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置(以下、プリンターという)が知られている。
プリンターでは、インクカートリッジやインクタンク等のインク貯留部からインクがヘッド内のインク室に供給され、ヘッドに設けられた圧電素子等のアクチュエーターを駆動してインク室内のインクの圧力を高めることにより、インク室のインクがインク室と連通したノズルの開口を介して吐出(噴射)される。
このようなプリンターでは、電源断時や非吐出時間が所定時間経過すると、ノズル内のインクの溶媒がノズルの開口を介して蒸発することにより、ノズル内のインクの粘度が上昇し、増粘したインクがノズル内に詰まって、吐出不良を生じる可能性がある。
そこで、プリンターでは、ノズルからインクを吐出させるフラッシング動作、強制的にノズルからインクを吸引する吸引クリーニング動作、ノズルの開口が設けられるノズル面に付着したインクを除去する払拭クリーニング動作等のクリーニング処理を行うようにしている。また、ノズルからインクを吐出させる動作を行っていない時(電源断時や非吐出時)には、ノズル面をキャッピング手段のキャップ部材で覆ってノズル内のインクの溶媒の蒸発を抑制するようにしている。
吸引クリーニング動作の際には、ノズル面に開口するノズルの開口を取り囲むようにキャップ部材の壁状の封止部をノズル面と接触させてノズル面とキャップ部材とで区画された内側空間を密閉状態としてから、当該内側空間を吸引ポンプで吸引して当該内側空間に負圧を発生させることにより、強制的に全部のノズルからインクを吸引する。
しかしながら、強制的に全部のノズルからインクを吸引していたので、インクの消費量が多くなってしまうという問題点があった。
そこで、ノズル列毎に吸引クリーニングを行う方法(特許文献1など参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−225715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズル列毎に吸引クリーニングを行う場合、ノズル列中に吐出動作不要のノズルが1つでもある場合には、ノズル列すべてのノズルを吸引クリーニングしなければならないので、インクの消費量が多くなってしまうという問題点があった。
また、ノズル列毎に吸引クリーニングを行う場合、ノズル列毎に封止する構造のキャップ部材が必要となるとともに、キャップ部材と吸引ポンプとを連通させる複数の吸引路が必要となり、しかも、複数の吸引路毎に吸引路を開閉する開閉弁が必要となるので、構成部品の変更及び追加が必要となってしまうという問題点もあった。
【0005】
本発明は、構成部品を変更及び追加することなく吸引クリーニングの際のインクの消費量を低減できる液体噴射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、ノズル面と、前記ノズル面に開口する複数のノズルと、前記ノズルに液体を供給する液体室と、前記ノズルに前記ノズルの開口を介して前記液体室からの液体を吐出させる吐出動作を行わせるアクチュエーターと、前記ノズルの開口を封止するキャップ部材と、前記キャップ部材に接続されて前記キャップ部材で封止された前記ノズルの開口から液体を吸引する吸引手段と、前記ノズルの吐出動作の良否を判定し、前記キャップ部材で封止された前記ノズルの開口から前記吸引手段を駆動して液体を吸引する際に、吐出動作良のノズルから液体を吸引する際のノズルの流路抵抗を吐出動作不良のノズルの流路抵抗よりも大きく設定する制御手段とを備えたので、構成部品を変更及び追加することなく吸引クリーニングの際のインクの消費量を低減できる液体噴射装置となる。
前記制御手段は、前記吐出動作良のノズルの前記アクチュエーターに前記液体を前記液体室側に引込ませる信号を出力することにより、前記吐出動作良のノズルから液体を吸引する際のノズルの流路抵抗を前記吐出動作不良のノズルの流路抵抗よりも大きく設定するので、前記アクチュエーターを制御することで、構成部品を変更及び追加することなく吸引クリーニングの際のインクの消費量を低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターを示す斜視図(実施形態1)。
【図2】ヘッドの構造を示す断面図(実施形態1)。
【図3】制御構成を示すブロック構成図(実施形態1)。
【図4】吸引クリーニングの際の不良ノズル及び正常ノズルの状態を模式的に示した断面図(実施形態1)。
【図5】正常ノズル用信号を示す図(実施形態1)。
【図6】不良ノズル用信号を示す図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
図1に基づいて、実施形態1のプリンターの全体構成を説明する。プリンター1は、印刷手段2と、被記録媒体給排手段3と、クリーニング手段4と、制御手段5とを備える。
尚、本明細書において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」の方向は、図1の状態にプリンター1を置いて矢印Aで示す前側から見た場合に特定される方向である。
【0009】
印刷手段2は、キャリッジ6と、キャリッジガイド部材7と、キャリッジ駆動機構8と、リニアエンコーダー9と、インクカートリッジ(以下、カートリッジと略す)10と、ヘッド11とを備える。
【0010】
キャリッジ6は、ヘッド取付部(不図示)、カートリッジ取付部12、軸受部13を備え、ヘッド11及びカートリッジ10が取付けられた状態でキャリッジガイド部材7に沿ってヘッド11及びカートリッジ10をプリンター1の左右方向(主走査方向)に移動させる搬送手段である。
【0011】
キャリッジガイド部材7は、キャリッジ6の軸受部13としての例えば軸受孔を貫通して、一端(左端)が装置筐体14の一方の側板(左側板)15に連結され他端(右端)が装置筐体14の他方の側板(右側板)16に連結されて、装置筐体14の両方の側板15,16間に掛け渡されたガイド軸により形成される。
【0012】
キャリッジ駆動機構8は、装置筐体14の後板17の右側部に設けられた駆動プーリー18と、装置筐体14の後板17の左側部に設けられた従動プーリー19と、この駆動プーリー18と従動プーリー19とに掛け渡されたタイミングベルト20と、駆動プーリーを回転させる駆動源としてのキャリッジ駆動モーター21とを備える。キャリッジ駆動モーター21の出力軸を正方向又は逆方向に回転させることによって、タイミングベルト20が左右方向に往復移動可能に構成される。
【0013】
タイミングベルト20の上側ベルト部と下側ベルト部とのうちの一方とキャリッジ6とが連結され、キャリッジ駆動モーター21の出力軸が正方向又は逆方向に回転することによって、ヘッド11及びカートリッジ10を搭載したキャリッジ6がタイミングベルト20の動きに連動してキャリッジガイド部材7に沿って左右方向に往復移動可能に構成される。
【0014】
キャリッジガイド部材7に沿って左右に移動可能なヘッド11が印刷用紙等の被記録媒体Sに対して印刷可能な印刷領域、及び、印刷領域より外れた非印刷領域は予め決められている。
【0015】
リニアエンコーダー9は、フォトディテクター(不図示)を搭載したエンコーダー用基板22と、リニアスケール23とにより構成される。エンコーダー用基板22は、キャリッジ6の例えば後面に取付けられる。リニアスケール23は、タイミングベルト20と平行となるように装置筐体14の後板17の前面に取付けられる。エンコーダー用基板22と装置筐体14の後板17に取付けられた制御手段5とがフラットケーブルのような信号線24により接続され、当該信号線24を介してエンコーダー用基板22と制御手段5との間で信号の授受が行われる。即ち、フォトディテクターは、リニアスケール23の目盛りを光学的に読み取って得たキャリッジ6のポジション信号を制御手段5へ出力する。そして、制御手段5は、このポジション信号に基づいてキャリッジ6の位置を認識し、キャリッジ6の移動方向及び移動量を制御する。
【0016】
キャリッジ6のカートリッジ取付部12に着脱可能に装着されるカートリッジ10は、溶媒としての水に着色剤としての染料又は顔料を含有した、例えばシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)等の印刷に用いるインクを各々個別に収納する容器として構成される。カートリッジ10は各インク容器毎にヘッド11に連通するインク供給口(不図示)を有し、キャリッジ6に設けられたインク供給針(不図示)がインク供給口に差し込まれることにより、インクがインクカートリッジ10からヘッド11に供給される。
【0017】
キャリッジ6に取付けられたヘッド11は、図2に示すように、ヘッドケース31、流路形成ユニット32、駆動ユニット33を備えている。尚、ここでは、縦振動型の圧電素子46を有するタイプのヘッド11を例にして説明する。
【0018】
ヘッドケース31は、例えば合成樹脂で形成され、カートリッジ10から流路形成ユニット32にインクを供給するための流路となる内部流路34と、駆動ユニット33を収容する収容空間35とを備える。
【0019】
流路形成ユニット32は、ノズル基板36、流路基板37、振動板38が積層され互いに接着剤等で接合されて構成される。
【0020】
ノズル基板36は、例えばステンレス鋼等の金属で形成され、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル40,40…を備える。ノズル基板36の板を貫通する貫通孔からなるノズル40のインク噴射口となる開口41を有する面がノズル面42となる。ノズル基板36には、例えば、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)及びブラック(K)等の各色のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル40,40…を配列した各色毎のノズル列(不図示)が設けられている。
【0021】
流路基板37は、例えばシリコン板が異方性エッチングされたことにより形成され、一方の面とノズル基板36のノズル面42とは反対側の面(ノズル40のインク受入口を有する面)とが接合され、他方の面と振動板38の一方の面とが接合されたことにより、各ノズル40,40…と個別に連通する各個別インク室(液体室)43,43…、内部流路34と連通する共通インク室44、共通インク室44と各個別インク室43,43…とをそれぞれ個別に連通させる各インク供給通路45,45…が形成された構成である。
【0022】
振動板38は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものにより形成され、一方の面と流路基板37の他方の面とが接合される。
振動板38の他方の面において個別インク室43に対応する部位には、圧電素子46の一端と接合されるアイランド部47が形成されている。
そして、個別インク室43を区画する振動板38が、圧電素子46の駆動に応じて弾性変形する。
振動板38の他方の面とヘッドケース31とが連結板48を介して互いに接合され、振動板38と内部流路34の終端との間には、共通インク室44内の圧力変化を小さくするためのコンプライアンス部49が形成されている。
【0023】
駆動ユニット33は、複数の圧電素子46,46…と、圧電素子46の他端部を支持する固定部材50と、駆動信号を圧電素子46に供給する信号線51とを備える。
【0024】
カートリッジ10がキャリッジ6に装着されると、カートリッジ10からのインクが、内部流路34を経由して共通インク室44に供給され、共通インク室44に供給されたインクは、各インク供給通路45を経由して複数の個別インク室43のそれぞれに分配されて供給される。
そして、圧電素子46に駆動信号が印加されると、圧電素子46が伸縮し、振動板38がノズル基板36に接近する方向及びノズル基板36から離れる方向に変形する。これにより、個別インク室43の容積が変化し、インク室43内のインクの圧力が変動する。このインクの圧力の変動によって、インクがノズル40の開口41から吐出される。
【0025】
図1に示すように、被記録媒体給排手段3は、供給トレイ(不図示)に載置された被記録媒体Sを挿入する挿入口(不図示)と、供給トレイに載置された被記録媒体Sをプリンター1内に取り込む取込ローラー(不図示)と、取込まれた被記録媒体Sをヘッド11のノズル面42と対向する位置に搬送する搬送ローラー55と、ノズルから吐出されたインクが紙面に着弾されたことにより印刷が終了した被記録媒体Sを排出する排出ローラー(不図示)とを備えている。取込ローラー、搬送ローラー55及び排出ローラーは、ギヤ機構(不図示)を介してローラー駆動モーター56により駆動される。尚、装置筐体14の内底面57にはキャリッジガイド部材7に沿ってプラテン58が設けられており、被記録媒体Sがプラテン58上で搬送される。
【0026】
クリーニング手段4は、キャッピング手段59と吸引手段としての吸引ポンプ61とノズル面払拭手段62とを備える。
【0027】
キャッピング手段59は、キャリッジガイド部材7に沿って左右に移動可能なヘッド11が非印刷領域に位置された際に当該ヘッド11のノズル面42と対向する位置に設けられる。
キャッピング手段59は、キャップ部材60と、キャップ部材60を移動させるキャップ部材駆動機構(不図示)とにより構成される。
図4に示すように、キャップ部材60は、例えば、略直方体で上部が開口した有底筐体形状に形成される。キャップ部材60は、少なくともノズル面42と接触する有底筐体部63の開口縁部64がノズル面42に対して密着性に優れた材料、例えば、シリコンゴムなどの絶縁体により形成される。
キャップ部材60の底面70には、吸引用の貫通孔71と大気開放用の貫通孔(不図示)とが設けられる。
吸引用の貫通孔71と吸引ポンプ61の吸引側とがチューブのような吸引管72により連通可能に接続される。よって、キャッピング手段59と、吸引ポンプ61と、これらを駆動制御する制御手段5とにより、吸引クリーニング手段が構成される。
また、大気開放路(不図示)が大気開放用の貫通孔と連通可能に接続され、大気開放路には大気開放路を開閉する大気開放弁(不図示)を備える。
【0028】
当該キャッピング手段59は、キャップ部材駆動機構により、ノズル面42を封止する状態とノズル面42から離れた状態とに移動可能に構成される。
キャップ部材60の開口縁部64がノズル面42のすべてのノズル40,40…の開口41,41…を取り囲むようにノズル面42に接触することにより、キャップ部材60の内面とノズル面42とで囲まれて全ノズル40,40…を外部と遮断する密閉空間が形成されて、全てのノズル40,40…が封止される。そして、大気開放弁を閉じた状態で吸引ポンプ61を駆動すると密閉空間内が負圧となってノズル40内のインクが強制的に吸引される。このように、定期的にノズル40内のインクを強制的に吸引することにより、ノズル詰まり等によるノズル40の吐出不良を解消させる吸引クリーニングが行われる。なお、吸引ポンプ61で吸引されたインクは、吸引ポンプ61の吐出側に接続された排出管73を介して廃液タンク(不図示)内に排出され、廃液タンク内に設置された廃液吸収材(不図示)によって吸収される。
キャッピング手段59によるノズル40の封止を解除するときには吸引ポンプ61を停止して大気開放弁を開いた後に、キャップ部材駆動機構を駆動して、キャップ部材60をノズル面42から離れるように移動させる。
【0029】
尚、有底筐体部63の内底面には保湿剤(不図示)が設置されており、キャップ部材60は、印刷休止中などにノズル40内のインクが乾燥するのを防止するためにノズル40を封止する場合や、フラッシング動作時においてノズル40より吐出されるインクを受ける場合にも用いられる。
【0030】
ワイピング装置などのノズル面払拭手段62は、ヘッド11のノズル面42に残留するインクを取り除くための手段であって、ヘッド11が非印刷領域に位置された際に当該ヘッド11のノズル面42と対向する位置、例えば、キャッピング手段59と隣接した位置に設けられる。
ノズル面払拭手段62は、例えばゴム板等の弾性部材や繊維部材により形成された払拭体66(図1参照)と、払拭体66が固定された基台(不図示)と、払拭体66を移動させる払拭体駆動機構(不図示)とを備える。
【0031】
当該ノズル面払拭手段62による払拭クリーニング動作は、払拭体駆動機構を駆動して、払拭体66を、ヘッド11のノズル面42と接触可能となる位置まで移動させた後、キャリッジ6を払拭体66の位置する方向に移動させる。これにより、払拭体66がノズル面42に残留しているインクを払拭するので、ヘッド11のノズル面42に付着した残留インクを良好に除去できる。
【0032】
制御手段5は、各種処理プログラムを記憶したROM、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM、ホストコンピューターとの情報のやり取りを行うインターフェイス、CPU、発振回路、タイマー等を備えた、いわゆるマイクロプロセッサーにより構成される。
図1,5に示すように、制御手段5と駆動信号生成回路81とがメイン基板82上に形成され、メイン基板82は例えば装置筐体14に取付けられている。
駆動信号生成回路81は、例えば、クロック信号に基づいて駆動信号としてのアナログ電圧波形を生成するD/Aコンバーターにより構成される。
メイン基板82上の制御手段5と駆動信号生成回路81とがメイン基板82上の形成された信号線(不図示)により接続され、ヘッド11に設けられた圧電素子制御基板(不図示)と駆動信号生成回路81とが信号線24を介して接続される。そして、制御手段5は、ホストコンピューター100から送られてくる印刷データに基づいてキャリッジ6、ヘッド11の圧電素子46、被記録媒体給排手段3等を制御し、被記録媒体Sに印刷を行う。
【0033】
制御手段5は図3に示すように各手段を制御する。即ち、制御手段5とエンコーダー基板とが信号線24により接続され、制御手段5とキャリッジ駆動用モーター21とが信号線(不図示)により接続されていることにより、印刷時やクリーニング時におけるキャリッジ6の位置制御が行われる。制御手段5と払拭体駆動機構のモーターのような駆動源(不図示)とが信号線(不図示)により接続されていることにより、払拭体66が駆動制御される。制御手段5とキャップ部材駆動機構のモーターのような駆動源(不図示)とが信号線(不図示)により接続されていることにより、キャップ部材60が駆動制御される。制御手段5と吸引ポンプ61とが信号線(不図示)により接続されていることにより、吸引ポンプ61が駆動制御される。制御手段5と被記録媒体給排手段3のローラー駆動モーター56とが信号線(不図示)により接続されていることにより、被記録媒体給排手段3の各ローラーが駆動制御される。
【0034】
さらに、図3に示すように、制御手段5は、ノズル制御手段84を構成する。ノズル制御手段84は、ノズル良否判定処理プログラム及びノズル良否判定処理プログラムの手順に従ってノズル良否判定処理を実行するCPU等により実現されるノズル良否判定手段85、圧電素子制御処理プログラム及び圧電素子制御プログラムの手順に従って圧電素子制御処理を実行するCPU等により実現される圧電素子制御手段86を構成する。
【0035】
ノズル良否判定手段85は、ノズル40の吐出動作が不良か否かを判定する手段であり、例えば、ユーザーからの指示により行うノズル良否判定試験の結果に基づいてノズル良否判定を行ったり、各個別インク室43の残留振動に基づいてノズル良否判定を行ったり、内蔵カメラで撮影したノズル40の画像を基本画像と照合してノズル良否判定を行う。
【0036】
そして、圧電素子制御手段86は、吸引クリーニングを行う前にノズル良否判定手段85から送信されてくるノズル良否判定結果を認識し、吸引クリーニングにおいて、吐出動作が不良のノズル(以下、不良ノズル40Aという)の圧電素子46に不良ノズル用信号81Aを出力するよう駆動信号生成回路81に指示するとともに、吐出動作正常のノズル(以下、正常ノズル40Bという)の圧電素子46に正常ノズル用信号81Bを出力するよう駆動信号生成回路81に指示する。
即ち、圧電素子制御手段86は、吸引クリーニングの際に、不良ノズル40Aの圧電素子46に、例えば、通常の非印刷時においてノズル40のメニスカスを維持させるのに必要な信号を不良ノズル用信号81Aとして印加するとともに、正常ノズル40Bの圧電素子46に、正常ノズル40B内のインクを個別インク室43側に引き込むような動作をさせる正常ノズル用信号81Bを圧電素子46に印加する。また、制御手段は、キャップ部材60を駆動することによりキャップ部材60で全てのノズル40が封止された後、吸引ポンプ61を駆動して吸引クリーニングを行う。
【0037】
上述の不良ノズル用信号81Aが不良ノズル40Aの圧電素子46に印加された場合、圧電素子46が収縮した待機状態となり、ノズル面42に近い位置に不良ノズル40Aのメニスカスが形成されるので、吸引ポンプ61で不良ノズル40Aを吸引する場合の不良ノズル40Aの流路抵抗が小となるため、吸引クリーニングによって不良ノズル40A内のインクが吸引されて不良ノズル40Aの吐出不良を解消させることができるとともに、不良ノズル40A内のインクの排出を早くでき、吸引時間を短縮できる。
【0038】
上述の正常ノズル用信号81Bとして、例えば、図5に示すような信号を用いる。即ち、正常ノズル用信号81Bとして、図6に示す通常の印刷動作時に印加されるような駆動電圧波形信号よりも最初の充電時間が長く、その後、当該駆動電圧波形信号よりも小さい振幅で充電及び放電を繰り返すような電圧波形の信号を用いる。
このような正常ノズル用信号81Bが正常ノズル40Bの圧電素子46に印加された場合、正常ノズル40B内のインクは、個別インク室43側に引き込まれるように動くので、吸引ポンプ61で正常ノズル40Bを吸引する場合の正常ノズル40Bの流路抵抗が大となるため、正常ノズル40Bからのインク吸引量を少なくできる。
【0039】
即ち、吸引クリーニング時において、不良ノズル40Aの圧電素子46に、ノズル面42に近い位置にメニスカスを形成させる不良ノズル用信号81Aを印加して、吸引の際のノズル内流路抵抗を小さくし、かつ、正常ノズル40Bの圧電素子46に、個別インク室43に近い位置にメニスカスを形成させる正常ノズル用信号81Bを印加して、吸引の際のノズル内流路抵抗を大きくするとともに、吸引ポンプ61で不良ノズル40A内のインクを吸引することにより、不良ノズル40Aの吐出不良を解消させ、かつ、正常ノズル40B内より吸引するインクの量を減らせるようにした。
尚、理想的には、不良ノズル40A内のインクのみを吸引できるように、吸引ポンプ61による吸引力と正常ノズル40B内のインクを個別インク室43側に引き込む力とを釣り合わせることで、吸引クリーニング時において正常ノズル40Bから吸引するインク量(インク消費量)を0にできる。
【0040】
実施形態1によれば、吸引クリーニングにおいて、不良ノズル40A内のインクを吸引することで不良ノズル40Aの吐出不良を解消させることができるとともに、正常ノズル40Bから吸引するインクの量を低減できる。
また、従来のように、キャップ部材の構成を変更したり、キャップ部材と吸引ポンプとの吸引路を追加したり、複数の吸引路毎に開閉弁を追加する必要がないので、構成部品を変更及び追加することなく吸引クリーニングにおけるインクの消費量を低減できるようになる。
【0041】
実施形態2
吸引クリーニングにおいて、不良ノズル40Aの圧電素子46に、例えば、図6に示す通常の印刷動作時に印加されるような駆動電圧波形信号を不良ノズル用信号81Aとして印加してもよい。
このような不良ノズル用信号81Aが不良ノズル40Aの圧電素子46に印加された場合、まず、圧電素子46に中間電位81aが与えられて圧電素子46が収縮した待機状態となり、そして、圧電素子46に充電されて圧電素子46が更に収縮すると個別インク室43の圧力が下がり、共通インク室44のインクが各インク供給通路45を経由して個別インク室43内に供給される。そして、圧電素子46に充電された電圧が放電されて圧電素子46が伸張すると個別インク室43内の圧力が上がり、個別インク室43のインクがノズル40を介して吐出され、放電後に圧電素子46に中間電位81aが与えられて圧電素子46が収縮した待機状態となる。このような中間電位81a、充電、放電、中間電位81aを付与する不良ノズル用信号81Aを圧電素子46に繰り返し印加することによって、不良ノズル40Aがインクの吐出動作を行う。
【0042】
このように、吸引クリーニング時において、不良ノズル40Aの圧電素子46に図6に示すような不良ノズル用信号81Aを印加して、不良ノズル40A内のインクを押出す(吐出す)ように不良ノズル40Aの圧電素子46を駆動させることで、吸引ポンプ61で不良ノズル40Aを吸引する場合に、実施形態1と比べて不良ノズル40Aの流路抵抗がさらに小さくなるため、不良ノズル40A内のインクの排出をより早くでき、吸引時間をより短縮できるようになる。
【0043】
一方、吸引クリーニング時において、実施形態1と同じように、例えば、図5に示す正常ノズル用信号81Bを正常ノズル40Bの圧電素子46に印加する。
【0044】
実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果が得られ、しかも、実施形態1と比べて、吸引クリーニング時における不良ノズル40A内のインクの排出をより早くでき、吸引時間をより短縮できる。
【0045】
実施形態3
吸引クリーニング時において、正常ノズル40Bの圧電素子46に、例えば、通常の非印刷時においてノズル40のメニスカスを維持させるのに必要な信号を正常ノズル用信号81Bとして印加するとともに、不良ノズル40Aの圧電素子46に、例えば、図6に示す通常の印刷動作時に印加されるような駆動電圧波形信号を不良ノズル用信号81Aとして印加し、かつ、実施形態1;2と比べて吸引ポンプ61の吸引量を減らして駆動する制御手段5を備えることにより、不良ノズル40Aの吐出不良を解消させることができるとともに、正常ノズル40Bから吸引するインクの量を低減できるように構成されたプリンター1としてもよい。
【0046】
尚、ヘッドとしては、上述した縦振動型の他、例えば、たわみ振動型のヘッド、あるいはインク室内に発熱抵抗体(例えばヒーターなど)を設けた電気熱変換式のヘッド等が挙げられる。即ち、本願発明は、アクチュエーターとしての圧電素子46を変形させてインクを加圧する方式のヘッドの他、アクチュエーターとしての発熱抵抗体に電圧を印加してインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式のヘッドにも採用可能である。
【0047】
上記実施形態は、インクジェット式のプリンターを例として説明したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは上記実施形態で説明したような一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
5 制御手段、11 ヘッド、40 ノズル、40A 不良ノズル、
40B 正常ノズル、41 ノズルの開口、42 ノズル面、
43 個別インク室(液体室)、46 圧電素子(アクチュエーター)、
61 吸引ポンプ(吸引手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面と、
前記ノズル面に開口する複数のノズルと、
前記ノズルに液体を供給する液体室と、
前記ノズルに前記ノズルの開口を介して前記液体室からの液体を吐出させる吐出動作を行わせるアクチュエーターと、
前記ノズルの開口を封止するキャップ部材と、
前記キャップ部材に接続されて前記キャップ部材で封止された前記ノズルの開口から前記液体を吸引する吸引手段と、
前記ノズルの吐出動作の良否を判定し、前記キャップ部材で封止された前記ノズルの開口から前記吸引手段を駆動して前記液体を吸引する際に、吐出動作良のノズルから前記液体を吸引する際のノズルの流路抵抗を吐出動作不良のノズルの流路抵抗よりも大きく設定する制御手段と、
を備えた液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記吐出動作良のノズルの前記アクチュエーターに前記液体を前記液体室側に引込ませる信号を出力することにより、前記吐出動作良のノズルから前記液体を吸引する際のノズルの流路抵抗を前記吐出動作不良のノズルの流路抵抗よりも大きく設定することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−183765(P2011−183765A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54103(P2010−54103)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】