説明

液体封入式防振装置

【課題】液体封入式防振装置において、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制する。
【解決手段】副流体室6に気体巻き込み抑制部材10を配設する。この気体巻き込み抑制部材10は、筒軸X方向及び上下方向と直交する左右方向の外側から内側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの上側から左右方向内側に延びる傾斜面11a,12aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体とともに空気を封入し、その空気の圧縮膨張を利用することでダイヤフラムを省略したエアダイヤフラム式の液体封入式防振装置が知られている(特許文献1及び2を参照)。この液体封入式防振装置は、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備えている。各流体室には非圧縮性の流体としての液体と、圧縮性の気体としての空気とが封入されるが、使用時には、適正な防振性能が発揮できるように、主流体室は液体で満たし、副流体室は液体と空気とで満たした状態となるように構成されている。そして、液体が両流体室間をオリフィスを介して流動する際に発生する液柱共振等により、振動発生源の振動が減衰されるようになっている。
【特許文献1】特許第3902812号公報
【特許文献2】特許第3631348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の液体封入式防振装置では、液体が両流体室間をオリフィスを介して行き来する際に、液体がオリフィスの副流体室側開口から副流体室に噴出されることによって、副流体室の気体がその噴出された液体に巻き込まれて混入し、その結果として、気体が主流体室に溜まり、損失係数tanδが低下したり、そのばらつきが大きくなったりした。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置において、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置であって、上記副流体室に配設されているとともに、筒軸方向及び上下方向と直交する所定方向の外側から内側に行くに従って上側に傾斜するように上記オリフィスの副流体室側開口の上側から所定方向内側に延びる傾斜面を有する気体巻き込み抑制部材をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0006】
これにより、副流体室に、筒軸方向及び上下方向と直交する所定方向の外側から内側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィスの副流体室側開口の上側から所定方向内側に延びる傾斜面を有する気体巻き込み抑制部材を配設しているので、ゴム弾性体と気体巻き込み抑制部材の傾斜面との間に、所定方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる噴流通路が形成される。そして、液体がオリフィスの副流体室側開口から噴出されると、その噴出された液体が、所定方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる噴流通路を流れることによって、その勢いが衰えていき、その噴出圧力も低減していく。このため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制することができる。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記傾斜面は、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全面が上記副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置することを特徴とするものである。
【0008】
これにより、気体巻き込み抑制部材の傾斜面を、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全面を副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置させているので、噴流通路は、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全体が副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置する。このため、噴流通路の少なくとも一部が副流体室に封入された液体の液面よりも上側に位置する場合と比較して、オリフィスの副流体室側開口から噴出した液体の噴出圧力を確実に低減させることができ、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0009】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記気体巻き込み抑制部材は、上記ゴム弾性体と一体に成形されたゴム製のものであることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、気体巻き込み抑制部材を、ゴム弾性体と一体に成形されたゴム製のものにしているので、部材点数を削減することができる。
【0011】
第4の発明は、上記第1又は2の発明において、上記気体巻き込み抑制部材は、上記副流体室に取り付けられた別体のものであることを特徴とするものである。
【0012】
これにより、気体巻き込み抑制部材を、副流体室に取り付けられた別体のものにしているので、気体巻き込み抑制部材の材料や形状等を任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、副流体室に、筒軸方向及び上下方向と直交する所定方向の外側から内側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィスの副流体室側開口の上側から所定方向内側に延びる傾斜面を有する気体巻き込み抑制部材を配設しているので、ゴム弾性体と気体巻き込み抑制部材の傾斜面との間に、所定方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる噴流通路が形成され、そして、液体がオリフィスの副流体室側開口から噴出されると、その噴出された液体が、所定方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる噴流通路を流れることによって、その勢いが衰えていき、その噴出圧力も低減していくため、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態1に係る液体封入式防振装置(以下、防振装置という)は、細筒形状をした金属製の内筒体1や、この内筒体1の周囲を囲む円筒形状をした金属製の外筒体2、これら内筒体1と外筒体2との間に介在して両者を互いに連結する略円筒形をしたゴム弾性体3、このゴム弾性体3の内部に一体化される中間筒体4、外筒体2内に形成され、液体Lが封入される主流体室5及び副流体室6、これら主流体室5及び副流体室6に連通するオリフィス7及び排気通路8、プラスチック製の蓋体9などを備えている。
【0016】
この防振装置は、主流体室5が下側に位置するように筒軸Xを横向き(水平向き)にした状態で、内筒体1をエンジンの変速機側に取り付け、外筒体2を車体側に取り付けて使用される。尚、以下、上下等の方向はこの使用時の方向に従うものとし、例えば筒軸X方向は前後方向とし、この前後方向及び上下方向と直交する方向は左右方向(所定方向)とする。
【0017】
図1に示すように、この防振装置は、例えば、ゴム弾性体3と蓋体9とを組み合わせて外筒体2に途中まで圧入し、気体Aとしての空気の封入量を考慮して主流体室5及び副流体室6に所定量の液体Lを注入した後、最後まで圧入して外筒体2の筒軸方向の両端部をかしめることによって製造される。
【0018】
図2、図3に示すように、ゴム弾性体3は、その上部に一対の弧状壁3c,3cと、上壁3bとを有するとともに、図1に示すように、その下部の周壁3dにおいて上向きに凹んだ凹部3eを有している。
【0019】
また、ゴム弾性体3は、その内部に、加硫成型により一体化された内筒体1及び中間筒体4を有しており、無負荷の状態では、図3の(a)に示すように、内筒体1は、その筒軸が外筒体2の筒軸Xよりも上方に変位した部位に当該筒軸Xと平行に前後に延びるように設けられ、中間筒体4は、ゴム弾性体3の外周寄りでその周囲を囲むように設けられている。また、ゴム弾性体3には、内筒体1の左右両側において、前後方向に延びるように一対の空隙部3a,3aが形成されている。
【0020】
副流体室6は、このゴム弾性体3を外筒体2に嵌め込むことによって、先の上壁3b及び弧状壁3c,3cと外筒体2の内壁(内周面)とで周囲を囲まれて形成され、主流体室5は、先の凹部3eの下側の開口に蓋体9を嵌め込むことによって形成される。
【0021】
この主流体室5の床面となる蓋体9の上壁の略中央部には、上方に突出するストッパ9aが設けられている。そして、ゴム弾性体3が大きく変形してこのストッパ9aに衝突したとしても、その衝撃を緩和するように主流体室5の天井面となる凹部3eの内壁上部30には、ストッパ9aに対向して下方に突出する緩衝部30aが設けられている。
【0022】
このような形状をしたゴム弾性体3は、特に、垂直方向の剛性が高められていて、上下方向に硬くなるようなバネバランスでもって、内筒体1と外筒体2とが互いに弾性連結している。
【0023】
すなわち、ゴム弾性体3では、内筒体1の左右両側の部分からそれぞれ弾性変形可能な主バネ部3f,3fが外筒体2に向かい対称状に斜め下方に延びていて、主として内筒体1と外筒体2との間に加わる荷重を受け止めて弾性変形するように構成されている。
【0024】
そして、被支持体であるエンジンの静荷重を支持した使用状態においては、図3の(b)に示すように、内筒体1と上壁3bとの間が分離してゴム弾性体3が変形するとともに内筒体1が下方に変位する。
【0025】
特に本実施形態では、これら主バネ部3f,3fは、いずれも左右より上下方向に延びて立つように構成されているため、下向きの負荷が大きくても、これはしっかりと受け止められることとなる。これら主バネ部3f,3fの形状は、後述するように排気通路8が設けられているので、主流体室5に溜まる気体Aを気にせずに自由に設計できる。
【0026】
オリフィス7は、図1や図3に示すように、ゴム弾性体3の周壁3dの前後方向の略中央部を切り欠いて形成された帯状の溝部7aを含んでおり、ゴム弾性体3が外筒体2に嵌め込まれた状態で、右方の主バネ部3fの下端から周方向に延びて副流体室6に連通する帯状の通路として構成されている。このように、オリフィス7の通路長は比較的長くなっているため、低周波域で優れた防振効果が発揮される。
【0027】
一方、主流体室5内の気体Aを自動的に副流体室6に導いて排除することができる排気通路8が、このオリフィス7とは別に形成されている。
【0028】
すなわち、この排気通路8は、横排気通路8aと周排気通路8b(本発明で言うところのオリフィス)とで構成されていて、その横排気通路8aは、左方の主バネ部3fの上端(主流体室5を構成している凹部3eの上端)に開口するとともに、そこから外周に向かって横向きに延びている。
【0029】
そして、本実施形態の横排気通路8aは、図1、図4に示すように、ゴム弾性体3の左方の主バネ部3fを前後方向の略中央で二分して、下方に開放された溝状に形成されている。このように横排気通路8aを溝状に形成することは、成型時の型抜きを容易にして製造コストや量産性の面で有利となり、主流体室5に溜まった気体Aが横排気通路8a内に入り易くなって、気体Aを主流体室5から誘い出す誘い溝としても機能する。
【0030】
さらに、主流体室5の天井面である凹部3eの内壁上部30に形成された緩衝部30aの周りには、横排気通路8aとの接続部位が最も高く位置するように傾斜している周溝30bが全周に亘って形成されている。つまり、周溝30bの最も高い部位に横排気通路8aが開口しているので、主流体室5の上部に溜まる気体Aはこの周溝30bを伝って自動的に横排気通路8aの開口に導かれ、主流体室5から排除され易くなる。
【0031】
一方、周排気通路8bは、図4に示すように、ゴム弾性体3の周壁3dの外周面が、オリフィス7よりも十分小さく切り欠かれていて、ゴム弾性体3が外筒体2に嵌め込まれた状態では、ゴム弾性体3の外周部位で横排気通路8aに接続され、そこから周方向を上向きに延びて副流体室6に連通する細管状の通路となるように構成されている。このように、周排気通路8bの通路長は比較的短く、通路断面積は比較的小さくなっているため、周排気通路8bは、高周波域で優れた防振効果が発揮されるオリフィスとしても機能する。
【0032】
そして、本実施形態では、図3の(b)に示すように、所定の静荷重が加わる使用時には、主バネ部3fが変形して横排気通路8aの上面が傾斜し、その周排気通路8bとの接続部位が最も高くなるように設定されているため、主流体室5に溜まる気体Aが自動的に副流体室6に導かれ、確実性をもって排除できる。尚、横排気通路8aも無負荷の状態、つまり成型段階から上記のように傾斜させておけば、変形に頼らず確実に上記作用効果を得ることができる。
【0033】
これら以外にも、右方の主バネ部3fの下端に設けられた、主流体室5に通じるオリフィス7の連通口7bは、主流体室5に流入する液体Lがその内壁に沿って流れるように、略上向きに開口するように設けておくとよい。そうすれば、防振装置の使用時に、オリフィス7を介して主流体室5に液体Lが流入すると、主流体室5内には、オリフィス7が設けられたその下端部から内壁に沿って横排気通路8aに向かう液体Lの流れが形成されるため、主流体室5内に気体Aが溜まるのをより確実に防ぐことができる。
【0034】
副流体室6には、図2、図3に示すように、副流体室6の上部に封入された気体Aがオリフィス7や周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから副流体室6に噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制するための樹脂製の気体巻き込み抑制部材10が配設されている。この気体巻き込み抑制部材10は、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に挟み込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部11,12、連結部13、並びに嵌合部14を備えている。
【0035】
第1気体巻き込み抑制部11は、副流体室6の気体Aがオリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制するためのものである。第1気体巻き込み抑制部11は、副流体室6の右側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、断面が略三角形状に形成されている。
【0036】
第1気体巻き込み抑制部11は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための下側傾斜面11a(本発明で言うところの傾斜面)を有している。この下側傾斜面11aは、右側(左右方向外側)から左側(左右方向内側)に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側(左右方向内側)に延びている。下側傾斜面11aの左右方向(水平方向)に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。下側傾斜面11aの前後方向長さは、第1気体巻き込み抑制部11が副流体室6の前後方向の略全域に亘って延びることによって、副流体室6の前後方向長さと略同じになっている。下側傾斜面11aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0037】
第1気体巻き込み抑制部11は、下側傾斜面11aに加えて、上側傾斜面11b及び円弧面11cをさらに有している。この上側傾斜面11bは、下側傾斜面11aの左端から右側に行くに従って上側に傾斜するように延びている。円弧面11cは、下側及び上側傾斜面11a,11bの間に延びていて、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0038】
以上のように、副流体室6の右側に第1気体巻き込み抑制部11を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3b及び弧状壁3c,3cと第1気体巻き込み抑制部11の下側傾斜面11aとで周囲を囲まれた第1噴流通路6aが形成される。この第1噴流通路6aは、第1気体巻き込み抑制部11の下側傾斜面11aが左側に行くに従って上側に傾斜することによって、左側に行くに従って通路断面積が大きくなる(上下方向長さが長くなる)。また、下側傾斜面11aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第1噴流通路6aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0039】
第2気体巻き込み抑制部12は、副流体室6の気体Aが周排気通路8bの副流体室側開口7cから噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制するためのものである。第2気体巻き込み抑制部12は、副流体室6の左側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、断面が略三角形状に形成されている。
【0040】
第2気体巻き込み抑制部12は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための下側傾斜面12a(本発明で言うところの傾斜面)を有している。この下側傾斜面12aは、左側(左右方向外側)から右側(左右方向内側)に行くに従って上側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側(左右方向内側)に延びている。下側傾斜面12aの左右方向(水平方向)に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。下側傾斜面12aの前後方向長さは、第2気体巻き込み抑制部12が副流体室6の前後方向の略全域に亘って延びることによって、副流体室6の前後方向長さと略同じになっている。下側傾斜面12aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0041】
第2気体巻き込み抑制部12は、下側傾斜面12aに加えて、上側傾斜面12b及び円弧面12cをさらに有している。この上側傾斜面12bは、下側傾斜面12aの右端から左側に行くに従って上側に傾斜するように延びている。円弧面12cは、下側及び上側傾斜面12a,12bの間に延びていて、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0042】
以上のように、副流体室6の左側に第2気体巻き込み抑制部12を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3b及び弧状壁3c,3cと第2気体巻き込み抑制部12の下側傾斜面12aとで周囲を囲まれた第2噴流通路6bが形成される。この第2噴流通路6bは、第2気体巻き込み抑制部12の下側傾斜面12aが右側に行くに従って上側に傾斜することによって、右側に行くに従って通路断面積が大きくなる(上下方向長さが長くなる)。また、下側傾斜面12aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第2噴流通路6bは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0043】
連結部13は、副流体室6の中央側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、第1及び第2気体巻き込み抑制部11,12の間に設けられて両者を互いに連結しているとともに、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。嵌合部14は、連結部13の中央部から下側に延びていて、断面が矩形状に形成されている。嵌合部14は、ゴム弾性体3の上壁3b及び中間筒体4における嵌合部14に対応する部分にそれぞれ形成された嵌合孔3g,4aに嵌合されている。
【0044】
−防振装置の動作−
以下、本実施形態に係る防振装置の動作について説明する。
【0045】
エンジンの振動が内筒体1に伝達されると、内筒体1が外筒体2に対して上下方向に相対的に変位することによって、主流体室5及び副流体室6の容積が交互に拡大・縮小する。これにより、液体Lはオリフィス7及び周排気通路8bを介して流動して、この流動に伴ってオリフィス7及び周排気通路8bにおいて発生する液柱共振等によってエンジン振動が減衰される。この際、副流体室6に封入された気体Aが圧縮・膨脹されることによって、液体Lの主流体室5及び副流体室6の間における移動に伴う体積変動が吸収されるため、オリフィス7及び周排気通路8bを介する液体Lの流動量が確保される。
【0046】
また、オリフィス7及び周排気通路8bにおいて発生する液柱共振によって、液体Lはオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから外筒体2の内壁に沿って副流体室6に噴出される。このように、液体Lがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出されると、その噴出された液体Lが、左右方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる第1及び第2噴流通路6a,6bを流れることによって(図3(b)の矢印を参照)、その勢いが衰えていき(消波されていき)、その噴出圧力も低減していく。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることが抑制される。
【0047】
図5は、防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示す図である。同図の実線が、本実施形態に係る防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示すものであり、破線が、従来の防振装置、つまり、気体巻き込み抑制部材10を有しない防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示すものである。図5に示すように、本実施形態に係る防振装置は、従来の防振装置よりも損失係数tanδが増大している。また、本実施形態に係る防振装置は、従来の防振装置よりも損失係数tanδのばらつきが小さくなっている。
【0048】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、副流体室6に、筒軸方向及び上下方向と直交する左右方向の外側から内側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cの上側から左右方向内側に延びる下側傾斜面11a,12aを有する気体巻き込む抑制部材10を配設しているので、ゴム弾性体3と気体巻き込む抑制部材10の下側傾斜面11a,12aとの間に、左右方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる第1及び第2噴流通路6a,6bが形成される。そして、液体Lがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出されると、その噴出された液体Lが、左右方向外側から内側に行くに従って通路断面積が大きくなる第1及び第2噴流通路6a,6bを流れることによって、その勢いが衰えていき、その噴出圧力も低減していく。このため、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを抑制することができる。
【0049】
また、気体巻き込む抑制部材10の下側傾斜面11a,12aを、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面を副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置させているので、第1及び第2噴流通路6a,6bは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。このため、第1及び第2噴流通路6a,6bの少なくとも一部が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも上側に位置する場合と比較して、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出した液体Lの噴出圧力を確実に低減させることができ、副流体室6の気体Aがオリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cから噴出された液体Lに巻き込まれることを確実に抑制することができる。
【0050】
さらに、気体巻き込む抑制部材10を、副流体室6に取り付けられた別体のものにしているので、気体巻き込む抑制部材10の材料や形状等を任意に設定することができる。
【0051】
尚、本実施形態では、気体巻き込み抑制部材10を樹脂製のものにしているが、これに限らず、例えばゴム製のものにしてもよい。但し、製造時の作りやすさの観点からは、樹脂製のものにするのが望ましい。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図6、図7に示すように、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に前後方向に延びるように設けられてゴム弾性体3と一体に成形されたゴム製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部15,16を備えている。
【0053】
第1気体巻き込み抑制部15は、副流体室6の右側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、断面が略三角形状に形成されている。第1気体巻き込み抑制部15は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための下側傾斜面15a(本発明で言うところ傾斜面)を有している。この下側傾斜面15aは、右側から左側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。下側傾斜面15aの左右方向に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。下側傾斜面15aの前後方向長さは、第1気体巻き込み抑制部15が副流体室6の前後方向の略全域に亘って延びることによって、副流体室6の前後方向長さと略同じになっている。下側傾斜面15aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0054】
第1気体巻き込み抑制部15は、下側傾斜面15aに加えて、上側傾斜面15b及び円弧面15cをさらに有している。この上側傾斜面15bは、下側傾斜面15aの左端から右側に行くに従って上側に傾斜するように延びている。円弧面15cは、下側及び上側傾斜面15a,15bの間に延びていて、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0055】
以上のように、副流体室6の右側に第1気体巻き込み抑制部15を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3b及び弧状壁3c,3cと第1気体巻き込み抑制部15の下側傾斜面15aとで周囲を囲まれた第1噴流通路6aが形成される。この第1噴流通路6aは、第1巻き込み抑制部15の下側傾斜面15aが左側に行くに従って上側に傾斜することによって、左側に行くに従って通路断面積が大きくなる。また、下側傾斜面15aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第1噴流通路6aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0056】
第2気体巻き込み抑制部16は、副流体室6の左側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、断面が略三角形状に形成されている。第2気体巻き込み抑制部16は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための下側傾斜面16a(本発明で言うところの傾斜面)を有している。この下側傾斜面16aは、左側から右側に行くに従って上側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。下側傾斜面16aの左右方向に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。下側傾斜面16aの前後方向長さは、第2気体巻き込み抑制部16が副流体室6の前後方向の略全域に亘って延びることによって、副流体室6の前後方向長さと略同じになっている。下側傾斜面16aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0057】
第2気体巻き込み抑制部16は、下側傾斜面16aに加えて、上側傾斜面16b及び円弧面16cをさらに有している。この上側傾斜面16bは、下側傾斜面16aの右端から左側に行くに従って上側に傾斜するように延びている。円弧面16cは、下側及び上側傾斜面16a,16bの間に延びていて、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。
【0058】
以上のように、副流体室6の左側に第2気体巻き込み抑制部16を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3b及び弧状壁3c,3cと第2気体巻き込み抑制部16の下側傾斜面16aとで周囲を囲まれた第2噴流通路6bが形成される。この第2噴流通路6bは、第2巻き込み抑制部16の下側傾斜面16aが右側に行くに従って上側に傾斜することによって、右側に行くに従って通路断面積が大きくなる。また、下側傾斜面16aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第2噴流通路6bは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0059】
第1及び第2気体巻き込み抑制部15,16には、型抜き用の孔15d,16dが左右方向に延びるようにそれぞれ形成されている。
【0060】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0061】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、気体巻き込み抑制部材10を、ゴム弾性体3と一体に成形されたゴム製のものにしているので、部材点数を削減することができる。
【0062】
その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図8〜図10に示すように、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に挟み込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体の樹脂製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部17,18、並びに連結部19を備えている。
【0064】
第1気体巻き込み抑制部17は、副流体室6の右側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、断面がコ字状に形成されている。第1気体巻き込み抑制部17の内壁上部は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための傾斜面17aを構成している。この傾斜面17aは、右側から左側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。傾斜面17aの左右方向に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。傾斜面17aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0065】
第1気体巻き込み抑制部17の周壁17bは、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。第1気体巻き込み抑制部17の前後方向両側の脚部17,17c下部は、ゴム弾性体3の上壁3bの右端部に接触支持されている。
【0066】
以上のように、副流体室6の右側に第1気体巻き込み抑制部17を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3bと第1気体巻き込み抑制部17の内壁とで周囲を囲まれた第1噴流通路6aが形成される。この第1噴流通路6aは、第1気体巻き込み抑制部17の傾斜面17aが左側に行くに従って上側に傾斜することによって、左側に行くに従って通路断面積が大きくなる。また、傾斜面17aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第1噴流通路6aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0067】
第2気体巻き込み抑制部18は、副流体室6の左側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、断面がコ字状に形成されている。第2気体巻き込み抑制部18の内壁上部は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための傾斜面18aを構成している。この傾斜面18aは、左側から右側に行くに従って上側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。傾斜面18aの左右方向に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。傾斜面18aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0068】
第2気体巻き込み抑制部18の周壁18bは、外筒体2の内壁に沿うように断面が円弧状に形成されている。第2気体巻き込み抑制部18の前後方向両側の脚部18c,18c下部は、ゴム弾性体3の上壁3bの左端部に接触支持されている。
【0069】
以上のように、副流体室6の左側に第2気体巻き込み抑制部18を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3bと第2気体巻き込み抑制部18の内壁とで周囲を囲まれた第2噴流通路6bが形成される。この第2噴流通路6bは、第2気体巻き込み抑制部18の傾斜面18aが右側に行くに従って上側に傾斜することによって、右側に行くに従って通路断面積が大きくなる。また、傾斜面18aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第2噴流通路6bは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0070】
連結部19は、第1及び第2気体巻き込み抑制部17,18の外壁上部の間に左右方向に延びるように設けられていて、第1及び第2気体巻き込み抑制部17,18を互いに連結しているとともに、矩形状に形成されている。
【0071】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0072】
以上により、本実施形態によれば、実施形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0073】
尚、本実施形態では、気体巻き込み抑制部材10を樹脂製のものにしているが、これに限らず、例えば金属製のものにしてもよい。
【0074】
(実施形態4)
本実施形態は、気体巻き込み抑制部材10の構成が実施形態1と相違するものである。以下、その相違点について主に説明する。本実施形態に係る気体巻き込み抑制部材10は、図11〜図13に示すように、ゴム弾性体3の両弧状壁3c,3cの間に挟み込むことによって副流体室6に取り付けられた、外筒体2やゴム弾性体3とは別体の樹脂製のものである。気体巻き込み抑制部材10は、第1及び第2気体巻き込み抑制部20,21、並びに連結部22を備えている。
【0075】
第1気体巻き込み抑制部20は、副流体室6の右側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、矩形板状に形成されている。第1気体巻き込み抑制部20は、右側から左側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。
【0076】
第1気体巻き込み抑制部20の下面は、オリフィス7の副流体室側開口7cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための傾斜面20aを構成している。この傾斜面20aは、第1気体巻き込み抑制部20が左側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びることによって、左側に行くに従って上側に傾斜するようにオリフィス7の副流体室側開口7cの上側近傍から左側に延びている。傾斜面20aの左右方向に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。傾斜面20aの前後方向長さは、第1気体巻き込み抑制部20が副流体室6の前後方向の略全域に亘って延びることによって、副流体室6の前後方向長さと略同じになっている。傾斜面20aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0077】
以上のように、副流体室6の右側に第1気体巻き込み抑制部20を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3b及び弧状壁3c,3cと第1気体巻き込み抑制部20の傾斜面20aとで周囲を囲まれた第1噴流通路6aが形成される。この第1噴流通路6aは、第1気体巻き込み抑制部20の傾斜面20aが左側に行くに従って上側に傾斜することによって、左側に行くに従って通路断面積が大きくなる。また、傾斜面20aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第1噴流通路6aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0078】
第2気体巻き込み抑制部21は、副流体室6の左側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、矩形板状に形成されている。第2気体巻き込み抑制部21は、左側から右側に行くに従って上側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。
【0079】
第2気体巻き込み抑制部21の下面は、周排気通路8bの副流体室側開口8cから噴出された液体Lの噴出圧力を低減するための傾斜面21aを構成している。この傾斜面21aは、第2気体巻き込み抑制部21が右側に行くに従って上側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びることによって、右側に行くに従って上側に傾斜するように周排気通路8bの副流体室側開口8cの上側近傍から右側に延びている。傾斜面21aの左右方向に対する傾斜角度は、例えば10〜20度である。傾斜面21aの前後方向長さは、第2気体巻き込み抑制部21が副流体室6の前後方向の略全域に亘って延びることによって、副流体室6の前後方向長さと略同じになっている。傾斜面21aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置している。
【0080】
以上のように、副流体室6の左側に第2気体巻き込み抑制部21を配設することによって、ゴム弾性体3の上壁3b及び弧状壁3c,3cと第2気体巻き込み抑制部21の傾斜面21aとで周囲を囲まれた第2噴流通路6bが形成される。この第2噴流通路6bは、第2気体巻き込み抑制部21の傾斜面21aが右側に行くに従って上側に傾斜することによって、右側に行くに従って通路断面積が大きくなる。また、傾斜面21aは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全面が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置することから、第2噴流通路6bは、エンジンの静荷重を支持した使用状態では、その全体が副流体室6に封入された液体Lの液面よりも下側に位置する。
【0081】
連結部22は、副流体室6の中央側にその前後方向の略全域に亘って延びるように配設されていて、第1及び第2気体巻き込み抑制部20,21の間に設けられて両者を互いに連結しているとともに、ゴム弾性体3の上壁3bに沿うように左右方向中央部の断面が円弧状に形成されている。連結部22の中央部には、気体抜き用の孔22aが形成されている。
【0082】
尚、本実施形態に係る防振装置の動作や防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係については、実施形態1とほぼ同様である。
【0083】
以上により、本実施形態によれば、実施形態1とほぼ同様の効果が得られる。
【0084】
尚、本実施形態では、気体巻き込み抑制部材10を樹脂製のものにしているが、これに限らず、例えば金属製のものにしてもよい。
【0085】
(その他の実施形態)
尚、本発明にかかる防振装置は、前記の各実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0086】
すなわち、上記各実施形態では、オリフィス7及び周排気通路8bの副流体室側開口7c,8cにそれぞれ対応するように傾斜面を設けているが、いずれか一方にのみ対応するように傾斜面を設けてもよい。但し、副流体室6の気体Aが液体Lに巻き込まれることを抑制する観点からは、両方に対応するように傾斜面を設けることが望ましい。
【0087】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0088】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明にかかる液体封入式防振装置は、副流体室の気体がオリフィスの副流体室側開口から噴出された液体に巻き込まれることを抑制する用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態1に係る液体封入式防振装置の分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係るゴム弾性体を上方から見た図である。
【図3】実施形態1に係る液体封入式防振装置の筒軸方向から見た側方断面図であり、(a)は無負荷の状態を、(b)は負荷が加わった状態を示している。
【図4】実施形態1に係るゴム弾性体の要部を示す斜視図である。
【図5】実施形態1に係る液体封入式防振装置に入力される振動の周波数fと損失係数tanδとの関係を示す図である。
【図6】実施形態2に係るゴム弾性体の図2相当図である。
【図7】実施形態2に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図8】実施形態3に係るゴム弾性体の図2相当図である。
【図9】実施形態3に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図10】実施形態3に係るゴム弾性体を右方から見た図である。
【図11】実施形態4に係るゴム弾性体の図2相当図である。
【図12】実施形態4に係る液体封入式防振装置の図3相当図である。
【図13】実施形態4に係るゴム弾性体の図10相当図である。
【符号の説明】
【0091】
1 内筒体
2 外筒体
3 ゴム弾性体
5 主流体室
6 副流体室
7 オリフィス
7c 副流体室側開口
8 排気通路
8b 周排気通路(オリフィス)
8c 副流体室側開口
10 気体巻き込み抑制部材
11a,12a,15a,16a 下側傾斜面(傾斜面)
17a,18a,20a,21a 傾斜面
A 気体
L 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸を横向きにして配置される内筒体と、この内筒体の周囲を囲む外筒体と、これら内筒体と外筒体との間に介在して両者を互いに連結するゴム弾性体と、このゴム弾性体で区画されて、相対的に下側に形成される主流体室及び相対的に上側に形成される副流体室と、上記ゴム弾性体の周壁に形成されてこれら主流体室と副流体室とに連通するオリフィスと、を備え、この副流体室には気体が封入された液体封入式防振装置であって、
上記副流体室に配設されているとともに、筒軸方向及び上下方向と直交する所定方向の外側から内側に行くに従って上側に傾斜するように上記オリフィスの副流体室側開口の上側から所定方向内側に延びる傾斜面を有する気体巻き込み抑制部材をさらに備えたことを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体封入式防振装置において、
上記傾斜面は、被支持体の静荷重を支持した状態では、その全面が上記副流体室に封入された液体の液面よりも下側に位置することを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体封入式防振装置において、
上記気体巻き込み抑制部材は、上記ゴム弾性体と一体に成形されたゴム製のものであることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の液体封入式防振装置において、
上記気体巻き込み抑制部材は、上記副流体室に取り付けられた別体のものであることを特徴とする液体封入式防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−133452(P2010−133452A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307884(P2008−307884)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】