説明

液体封入式防振装置

【課題】可動板に切込みが形成された液体封入式防振装置において、主液室内が負圧状態となった際のキャビテーションの発生を抑え、且つ、動的ばね定数の上昇を抑制する。
【解決手段】連結金具3と、支持金具5と、これらを連結するゴム弾性体7と、ゴム弾性体7の変形に伴い容積が変化する液室11を受圧室21と平衡室31とに仕切るオリフィス盤9と、受圧室21と平衡室31とを連通するオリフィス通路19と、オリフィス盤9の収容室29に収容された可動板41とを備えたエンジンマウント1である。収容室29の中央部には可動板41の弾性変形を許容するための空間29b,29cが存在している。可動板41は、空間29b,29cに対応する中央部分51と、その周りの周縁部分61とを有し、中央部分51の厚さが、周縁部分61の厚さよりも薄くなっている。中央部分51には、軸線Z方向に貫通する切込みスリット71が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体封入式防振装置に関し、特に、主液室の液圧変動を吸収するための可動板に切込みが形成された液体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定周波数域のエンジン振動を効果的に吸収して減衰させるエンジンマウント等の防振装置として、被支持体であるエンジン側の連結金具と車体側の支持金具との間にゴム弾性体が介設され、ゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように連結金具と支持金具との間に形成された液室と、液室の内部を主液室と副液室とに仕切る仕切部材と、主液室と副液室とを連通するオリフィス通路と、仕切部材の内部に形成された収容室に収容された可動板と、を備えた液体封入式防振装置が知られている。
【0003】
かかる液封入式防振装置においては、通常の振動入力時には、オリフィス通路での液流動による液柱共振作用やゴム弾性体の制振効果により、振動減衰等が行われるが、例えば大きな振動が入力したときには、当該防振装置自体が異音発生源となってしまうことがある。
【0004】
このような異音は、キャビテーションにより発生するものであり、より詳しくは、防振装置に大きな振動が入力したときに、主液室内が過度の負圧状態となって、封入された液体の飽和蒸気圧を下回ることで多数の気泡が生じ、このようにして生じた気泡が消滅する際の衝撃音により発生するものである。
【0005】
主液室内がこのような過度の負圧状態になるのを抑えるために、例えば、特許文献1には、受圧室と平衡室を仕切るように配設された可動板に対して、可動板が蓋板金具によって受圧室側への変位が拘束された状態で蓋板金具に形成された中央連通孔と協働することによって平衡室から受圧室への流体流動を許容する開口(舌片状の圧抜可動片を区画する切込み)を設けると共に、底壁に対して、可動板が底壁によって平衡室側への変位が拘束された状態で開口を通じての受圧室から平衡室への流体流動を阻止する内側当接部を設けた液体封入式防振装置が開示されている。この液体封入式防振装置によれば、受圧室に生じた過大な負圧を速やかに解消することが可能になるとともに、オリフィス通路を流動する流体の流動量を確保して、流体の流動作用に基づく防振効果を発揮することが可能となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−112607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、開口を構成する圧抜可動片が、可動板のその他の部位と同様、厚く形成されていることから、圧抜可動片が変形し難くなって、開口が開き難くなるおそれがある。
【0008】
また、特許文献1のものでは、内側当接部によって圧抜可動片の平衡室側への変形が阻止されることから、受圧室の圧力が上昇して動的ばね定数が高くなるおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、主液室の液圧変動を吸収するための可動板に切込みが形成された液体封入式防振装置において、主液室内が負圧状態となった際に、切込みを確実に開かせて、キャビテーションの発生を抑えるとともに、動的ばね定数の上昇を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、仕切部材の内部に形成された収容室に、これに収容される可動板の主液室側及び副液室側への弾性変形を許容するための空間が存在するように、収容室及び可動板を形成することで、主液室内が負圧状態となった際、可動板に形成された切込みが開き易くなるようにしている。
【0011】
第1の発明は、被支持体側に連結される連結金具と、支持体側に連結される支持金具と、これら両金具を連結し、弾性変形により当該両金具を少なくとも当該両金具を結ぶ軸方向に相対変位させるゴム弾性体と、当該ゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように当該連結金具と当該支持金具との間に形成された液室と、当該液室の内部を主液室と副液室とに仕切る仕切部材と、当該主液室と当該副液室とを連通するオリフィス通路と、当該仕切部材の内部に形成された収容室に、軸方向に移動可能に収容された可動板と、を備えた液体封入式防振装置であって、上記仕切部材には、上記収容室を上記主液室及び副液室のそれぞれに連通させる連通孔が形成されており、上記収容室の中央部には、上記可動板の主液室側及び副液室側への弾性変形を許容するための空間が存在し、上記可動板は、上記空間に対応する中央部分が略円盤状に形成されているとともに当該中央部分の周りの周縁部分が略円環状に形成され、且つ、当該中央部分の軸方向の厚さが、当該周縁部分の軸方向の厚さよりも薄くなっており、上記可動板の中央部分には、軸方向に貫通する切込みスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明によれば、防振装置に大きな振動が入力して、主液室内が負圧状態となると、収容室に軸方向に移動可能に収容された可動板が、仕切部材の、収容室を区画する主液室側の面に押し当てられる。
【0013】
ここで、収容室には、例えば、収容室を区画する、仕切部材の主液室側(副液室側)の面を主液室側(副液室側)に凹ませたり、可動板の主液室側(副液室側)の面を副液室側(主液室側)に凹ませたりすることによって、可動板の主液室側及び副液室側への弾性変形を許容するための空間が存在している。これにより、収容室を区画する、仕切部材の主液室側の面に、周縁部分が押し当てられた場合にも、可動板の中央部分は変形が規制されることなく、主液室側に膨らむように変形することから、軸方向に貫通するように形成された切込みスリットが開き易くなる。
【0014】
このように切込みスリットが開き易くなることによって、副液室側から主液室側へ液体が流れ易くなり、主液室側が速やかに減圧されて、キャビテーションの発生が抑えられる。
【0015】
また、可動板の中央部分の軸方向の厚さは、その周縁部分の軸方向の厚さよりも薄いことから、当該中央部分がより確実に変形し易くなる。さらに、可動板の中央部分の軸方向の厚さが薄く形成されていることから、仮に、仕切部材の、収容室を区画する面がフラットに形成されている場合でも、周縁部分に対する中央部分の軸方向の位置を調整することにより、可動板の軸方向の弾性変形を許容するための空間を容易に確保することができる。
【0016】
また、可動板の副液室側への弾性変形を許容するための空間が存在していることから、主液室内が押圧状態となって、収容室を区画する、仕切部材の副液室側の面に、周縁部分が押し当てられた場合にも、可動板の中央部分は変形が規制されることなく副液室側に変形する。このような可動板の弾性変形を利用することにより主液室内の液圧上昇が吸収されのるで、可動板の副液室側に空間が存在していない場合に比べて、動的ばね定数の上昇を抑制することが可能となる(メンブラン効果)。
【0017】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記切込みスリットは、両端がそれぞれ上記可動板の中央部分と周縁部分との境に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明によれば、切込みスリットの両端がそれぞれ、軸方向の厚さが異なる、可動板の中央部分と周縁部分との境に位置するように形成されているので、薄い方の中央部分に形成された切込みスリットの切込みが、径方向に進行しようとしても、軸方向の厚さが厚い周縁部分がストッパとして機能する。これにより、切込みスリットの切込みが、径方向に進行するのを抑えることができる。
【0019】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記可動板の周縁部分の内周面には、上記切込みスリットの切込みが上記中央部分の外周に沿って進行するのを抑えるために、当該切込みスリットの端に対応する部分に、径方向内側に突出する突出部が形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
第3の発明によれば、径方向への進行を規制された切込みスリットの切込みが、周縁部分の内周面に沿って進行しようとしても、切込みスリットの端に対応する部分に形成された径方向内側に突出する突出部がストッパとして機能する。これにより、切込みスリットの切込みが、中央部分と周縁部分との境で、薄い中央部分の周方向に進行するのを抑えることができる。
【0021】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記可動板の、上記切込みスリットが形成されていない中央部には、当該可動板が変形した際に、上記仕切部材の、軸方向と直交し且つ上記空間を区画する面に当接するように、主液室側及び/又は副液室側に突起する突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
第4の発明によれば、例えば、主液室内が負圧状態となると、可動板が主液室側に膨らむように変形し、これにより、当該可動板の中央部に主液室側に突起するように形成された突起部が、仕切部材の、軸方向と直交し且つ空間を区画する面に当接する。これにより、仕切部材の面に当接した突起部が支点となって、可動板がより一層変形し易くなる。
【0023】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記仕切部材の、軸方向と直交し且つ上記空間を区画する面には、上記可動板が変形した際に、当該可動板の中央部に当接するように、主液室側及び/又は副液室側に突起する突設部が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
第5の発明によれば、例えば、主液室内が負圧状態となると、可動板が主液室側に膨らむように変形し、これにより、仕切部材に副液室側に突起するように形成された突設部が、当該可動板の中央部に当接する。これにより、可動板の中央部に当接した突設部が支点となって、可動板がより一層変形し易くなる。
【0025】
第6の発明は、上記第1〜第5のいずれか1つの発明において、上記空間は、上記仕切部材の、軸方向と直交し且つ上記収容室を区画する面を、主液室側及び/又は副液室側に凹ませることで形成されており、上記仕切部材の、軸方向と平行な且つ上記空間を区画する面には、上記可動板側に向かうほど径方向外側に傾斜するスロープ部が、部分的に形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
第6の発明によれば、変形した可動板によって、仕切部材の面を凹ませることで形成された空間が塞がれても、当該空間を区画する面に部分的に形成されたスロープ部によって、当該空間と収容室とが連通するので、液体の流れ易さを確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る液体封入式防振装置によれば、収容室には、可動板の主液室側及び副液室側への弾性変形を許容するための空間が存在していることから、可動板の周縁部分が仕切部材の主液室側の面に押し当てられ場合にも、可動板の中央部分の変形は規制されることなく、主液室側に膨らむように変形する。これにより、中央部分に形成された切込みスリットが開くので、副液室側から主液室側へ液体が流れ易くなり、主液室側が速やかに減圧されて、キャビテーションの発生が抑えられる。
【0028】
さらに、可動板の中央部分の軸方向の厚さは、その周縁部分の軸方向の厚さよりも薄いことから、当該中央部分がより確実に変形し易くなる。
【0029】
また、主液室内が押圧状態となって、可動板の周縁部分が仕切部材の副液室側の面に押し当てられた場合にも、可動板の中央部分は変形が規制されることなく副液室側に変形し、これにより、主液室内の液圧上昇が吸収されのるで、動的ばね定数の上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る液体封入式防振装置の一実施形態である自動車用エンジンマウントを示す。
【図2】同図(a)は、オリフィス盤及び可動板を示す縦断面図であり、同図(b)は、可動板を示す底面図である。
【図3】オリフィス盤の上側本体部を示す斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線の矢視断面図である。
【図5】可動板の変形状態を模式的に示す縦断面図である。
【図6】オリフィス盤及び可動板を示す縦断面図である。
【図7】オリフィス盤及び可動板を示す縦断面図である。
【図8】オリフィス盤及び可動板を示す縦断面図である。
【図9】切込みスリットの形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
−マウントの全体構成−
図1は、本発明に係る液体封入式防振装置の一実施形態である自動車用エンジンマウントを示し、このエンジンマウント1は、図示しない自動車のエンジン及び変速機(以下、両者をまとめてパワープラントという)と車体との間に介在されて、そのパワープラントの静荷重を支持するとともに、当該パワープラントからの振動を吸収し或いは減衰させて、車体への振動の伝達を抑制する機能を有している。なお、以下の説明では、図1の上側を軸線Z方向上側(以下、上側という)とし、図1の下側を軸線Z方向下側(以下、下側という)とする。
【0033】
エンジンマウント1は、図示しないブラケット等を介して被支持体であるパワープラントに取り付けられる概略円柱状の連結金具3と、支持体である車体フレームに取り付けられる円筒状の支持金具5と、これら両金具3,5を連結し、弾性変形により両金具3,5を少なくとも当該両金具3,5を結ぶ軸線Z方向に相対変位させるゴム弾性体7とを備え、この支持金具5の下側外周にそれぞれ溶接された一対の脚部35,35によって、車体フレームに固定されるようになっている。支持金具5は、後述するストッパ金具45とともにエンジンマウント1のケースとしても機能する。
【0034】
連結金具3は、軸線Z方向の中間部に鍔部23を有し、鍔部23の下側には下方に向かって窄んだテーパ部33が、また鍔部23の上側には軸部13が、それぞれ形成されている。軸部13の上端面にはパワープラント側のブラケットが取り付けられて、図示しないボルトがボルト穴13aに螺入される。鍔部23は軸線Zを中心とする円環状であり、その上面及び外周面に各々環状のストッパゴム37,47が設けられている。
【0035】
さらに、連結金具3の内部には、ボルト穴13aの下端から下方に延びてテーパ部33の先端に開口するように通路33aが形成されている。この通路33aは、ボルト穴13aよりも小径で、上広がりのテーパ部を介してボルト穴13aに連通していて、液室11に液体を供給する経路となる。なお、通路33aの上端には鋼球等の封止材33bが打ち込まれて、液室11を封止している。
【0036】
上記ゴム弾性体7は、その上部が連結金具3の下側のテーパ部33を覆って加硫接着され、そこから放射状に拡がりながら斜め下に向かって延びる厚肉の傘状部17と、この傘状部17の下端に連続して下方に延びる円筒部27とを有しており、この円筒部27が支持金具5の内周に固定されている。支持金具5は、内筒15と外筒25とからなる二重構造のものであり、その内筒15がゴム弾性体7の円筒部27に埋め込まれて一体化されるとともに、この円筒部27の外周面が外筒25の内周面に接着固定されている。
【0037】
また、ゴム弾性体7の円筒部27は下側で内径が拡大されて、環状の段部が形成されており、この段部を受け部として下方からオリフィス盤(仕切部材)9が嵌挿されるとともに、このオリフィス盤9を下方から覆うようにしてゴム製のダイヤフラム59が配設されている。ダイヤフラム59は、全体としては上方に開口する碗状であり、その開口縁を周回するように厚肉部59aが形成されるとともに、この厚肉部59aに補強部材59bが埋め込まれている。こうして補強された厚肉部59aは、オリフィス盤9の下面に液密に重ね合わされて、支持金具5の内筒15の下端に内向きに形成されたフランジ15bによって下方からかしめられている。このダイヤフラム59は、上凸の環状部と下凸の環状部とが上下に反転することによって、容積が大幅に変化するようになっている。
【0038】
そのように容積の変化するダイヤフラム59によって円筒部27の下端が閉じられ、ゴム弾性体7の内部(連結金具3と支持金具5との間)には、液体が封入され且つ当該ゴム弾性体7の変形に伴い容積が変化する液室11が形成されている。この液室11は、オリフィス盤9によって上下に仕切られていて、その上側が受圧室(主液室)21になり、下側、即ちオリフィス盤9及びダイヤフラム59によって区画される部分が、平衡室(副液室)31になる。パワープラントからの振動が入力してゴム弾性体7が変形すると、主に受圧室21の容積が変化し、液体が、受圧室21と平衡室31とを連通するオリフィス通路19を介して、受圧室21と平衡室31との間を流通する。この液体の流出入に伴い前記のようにダイヤフラム59が変形して、平衡室31の容積が変化する(体積補償)。
【0039】
オリフィス盤9は、樹脂製の上側本体部39と下側本体部49とが組合わされて、全体としては比較的厚肉の円盤状をなし、その内部に形成された収容室29にはゴム製の可動板41が軸線Z方向に移動可能に収容されている。可動板41は、比較的周波数が高く振幅の小さなエンジン振動が入力したときに、この振動に同期して振動することで受圧室21の液圧変動を吸収する。
【0040】
上側本体部39は、図2(a)及び図3に示すように、円盤状の頂壁部39aと、当該頂壁部39aの下面における外周端部から軸線Z方向の平衡室31側(下側)に延びる円環状の外側竪壁部39bと、当該外側竪壁部39bと同心且つ当該外側竪壁部39bよりも径方向内側で頂壁部39aの下面から下側に突設された円環状の内側竪壁部39cとを有している。内側竪壁部39cは、外側竪壁部39bに比して径方向に厚くなっている。また、頂壁部39aのうち内側竪壁部39cの内側の中央頂壁部39dは、頂壁部39aの他の部位に比して軸線Z方向の厚さが薄くなっている。
【0041】
一方、下側本体部49は、円盤状の底壁部49aと、当該底壁部49aの上面における外周端部から軸線Z方向の受圧室21側(上側)に延びる円環状の外側竪壁部49bと、当該外側竪壁部49bと同心且つ当該外側竪壁部49bよりも径方向内側で底壁部49aの上面から上側に延びる円環状の内側竪壁部49cとを有している。
【0042】
そうして、上側本体部39と下側本体部49とを同心で重ね合わせると、上側本体部39と下側本体部49との間に、可動板41を収容するための収容室29と、当該収容室29を囲むようにオリフィス通路19とが形成される。
【0043】
収容室29は、底壁部49aの上面と、内側竪壁部49cの内周面と、内側竪壁部39cの下端面及び内周面と、中央頂壁部39dの下面とによって区画される、大小2枚の円盤を軸線Z方向に同心に重ねたような形状の空間となっている。この収容室29を受圧室21に連通させるよう、図3に示すように、頂壁部39a(中央頂壁部39dを除く)及び内側竪壁部39cには8つの貫通孔(連通孔)39e,39e,…が、また、中央頂壁部39dには4つの貫通孔(連通孔)39f,39f,…が形成されている。同様に、収容室29を平衡室31に連通させるよう、底壁部49aには、内側竪壁部49cよりも内側に12つの貫通孔(連通孔)49d,49d,…が形成されている。
【0044】
オリフィス通路19は、底壁部49aの上面と、外側竪壁部39b,49bの内周面と、内側竪壁部39c,49cの外周面と、頂壁部39aの下面とによって区画される空間からなり、その一端が上側本体部39上面の開口部(図示せず)にて受圧室21に臨み、他端が下側本体部49下面に開口する開口部(図示せず)から平衡室31に臨んでいる。オリフィス通路19は、比較的低周波で振幅の大きな振動にチューニングされている。
【0045】
一方、ゴム弾性体7の傘状部17等、エンジンマウント1の上側の部分を囲むように、支持金具5の上端にはその外筒25と略同径の円筒形状を有するストッパ金具45が取り付けられている。ストッパ金具45の下端には外側に張り出したフランジ45bが形成され、このフランジ45bがゴム弾性体7の円筒部27の上端に載置されて、その内部の内筒15の上端に外向きに形成されたフランジ15aとともに、外筒25の上端に形成されたコ字状部25aによってかしめられている。
【0046】
ストッパ金具45は、鍔部23のストッパゴム47と当接することによって連結金具3の前後方向の相対変位を規制する。このストッパ金具45の上端には、連結金具3の軸部13を取り囲むように内周側に向かって延びるフランジ45aが形成されており、このフランジ45aの下面が鍔部23上面のストッパゴム37に当接することによって、連結金具3の上方への変位を規制する。
【0047】
なお、図1においては、エンジンマウント1にパワープラントの静荷重が作用していない状態を示しており、鍔部23上面のストッパゴム37とストッパ金具45上端のフランジ45aとの隙間は小さいが、エンジンマウント1が自動車に取り付けられてパワープラントを支持し、その静荷重が加わる1G状態では、ゴム弾性体7が撓んで連結金具3が下方に変位するので、前記の隙間は大きくなる。
【0048】
−可動板及び収容室の構造−
上述の如く、収容室29は、大小2枚の円盤を軸線Z方向に同心に重ねたような形状の空間となっており、可動板41は平衡室31側の大きな円盤状の空間29aに収容されている。これにより、収容室29の中央部には、可動板41の上側(受圧室21側)に、当該可動板41の受圧室21側への弾性変形を許容するための空間29bが存在することになる。換言すると、空間29bは、収容室29を区画する、上側本体部39の下面を上側(受圧室21側)に凹ませることで形成されている。
【0049】
可動板41は、図2(a)に示すように、空間29bに対向するように、略円盤状に形成された中央部分51と、当該中央部分51の周りに略円環状に形成された周縁部分61とを有している。可動板41は、中央部分51の上面と周縁部分61の上面とが面一になるように一体形成されており、中央部分51の軸線Z方向の厚さは、周縁部分61の軸線Z方向の厚さよりも薄くなっている。このため、収容室29を区画する、底壁部49aの上面がフラットに形成されているにも拘わらず、収容室29の中央部には、可動板41の下側(平衡室31側)に、当該可動板41の平衡室31側への弾性変形を許容するための空間29cが存在していることになる。具体的には、この空間29cは、底壁部49aの上面と、周縁部分61の内周面と、中央部分51の下面とによって区画されている。
【0050】
可動板41には、空間29bに対応する部分に、その両端がそれぞれ可動板41の中央部分51と周縁部分61との境に位置するように、軸線Z方向に貫通する切込みスリット71が形成されている。具体的には、図2(b)に示すように、中央部分51の外周に沿うように切込みスリット71,71が2つ形成されている。このように、切込みスリット71の両端71a,71aがそれぞれ、軸線Z方向の厚さが異なる、可動板41の中央部分51と周縁部分61との境に位置するように形成されているので、薄い方の中央部分51に形成された切込みスリット71の切込みが、径方向に進行しようとすると、厚い周縁部分61がストッパとして機能する。これにより、切込みスリット71の切込みが、径方向に進行するのを抑えることができる。
【0051】
さらに、周縁部分61の内周面には、切込みスリット71の切込みが中央部分51の外周に沿って進行するのを抑えるために、当該切込みスリット71の端71aに対応する部分に、径方向内側に突出する突出部61a,61aが、周縁部分61の下端から中央部分51の下面に亘って形成されている。なお、突出部61a,61aの上端は中央部分51の下面と一体に繋がっている。このように、周縁部分61の内周面に突出部61a,61aが形成されることによって、径方向への進行を規制された切込みスリット71の切込みが、周縁部分61の内周面に沿って進行しようとしても、突出部61aがストッパとして機能する。これにより、切込みスリット71の切込みが、中央部分51と周縁部分61との境で、薄い中央部分51の外周に沿って進行するのを抑えることができる。
【0052】
また、可動板41の中央部分51の上面の中央部には、当該中央部分51が変形した際に、中央頂壁部39dの下面(軸線Z方向と直交し且つ空間29bを区画する、オリフィス盤9の面)に当接するように、受圧室21側に突起する上側突起部51aが形成されている。なお、上側突起部51aは、中央部分51が受圧室21側に変形した際に、当該上側突起部51aの先端が中央頂壁部39dの下面に当接することによって発生する異音が小さくなるように、先細り形状に形成されている。
【0053】
一方、可動板41の中央部分51の下面には、上側突起部51aに対応する位置に、当該中央部分51が変形した際に、底壁部49aの上面に当接するように、平衡室31側に突起する下側突起部51bが形成されている。なお、下側突起部51bも、上側突起部51aと同様に、当該下側突起部51bの先端が底壁部49aの上面に当接することによって発生する異音が小さくなるように、先細り形状に形成されている。
【0054】
さらに、上側本体部39の内側竪壁部39cの内周面(軸線Z方向と平行且つ空間29bを区画する、オリフィス盤9の面)には、下方(可動板41側)に向かうほど径方向外側に傾斜するスロープ部39g,39g,…が4つ形成されている。このように、径方向外側に傾斜するスロープ部39g,39g,…を形成することで、変形した可動板41の中央部分51により、仮に空間29bが塞がれても、当該スロープ部39gによって、当該空間29bと収容室29とが連通するので、液体の流れ易さを確保することができる。
【0055】
なお、スロープ部39g,39g,…を形成した場合には、液体の流れが方向性を持つため、スロープ部39g,39g,…と切込みスリット71,71との位置関係を調整し且つ一定にする必要がある。このため、本実施形態では、図4に示すように、可動板41の周縁部分61の外周面に、径方向内側に窪む凹部61b,61b,…を4つ形成しているとともに、これらの凹部61b,61b,…に対応するように、下側本体部49の内側竪壁部49cの内周面に径方向内側に突起する凸部49e,49e,…を4つ形成している。そうして、可動板41を下側本体部49に嵌め込む際に、4つの凸部49e,49e,…をそれぞれ4つの凹部61b,61b,…に係合させることで、可動板41が収容室29内で回転するのが抑えられ、スロープ部39g,39g,…と切込みスリット71,71との位置関係が一定に維持される。なお、図4では、スロープ部39g,39g,…を見易くするために、可動板41及び下側本体部49のハッチングを省略している。
【0056】
以上の如く構成された本実施形態のエンジンマウント1では、通常の振動入力時には、高周波領域の振動は、ゴム弾性体7の弾性変形により吸収される。このとき、エンジンシェイクなどの低周波領域の大振幅振動は、オリフィス通路19での液体の流動による液柱共振作用によって吸収、減衰されるようになっている。さらに、アイドル振動などの比較的周波数が高く振幅の小さなエンジン振動については、可動板41がこの振動に同期して振動することで受圧室21の液圧変動が吸収される。
【0057】
一方、自動車の車輪が縁石等に乗り上げた場合等、エンジンマウント1に大きな振動が入力して、受圧室21内が負圧状態となると、オリフィス盤9の内部に形成された収容室29に軸線Z方向に移動可能に収容された可動板41の周縁部分61が、内側竪壁部39cの下面に押し当てられる。
【0058】
ここで、収容室29の中央部には、空間29bが存在していることから、可動板41の周縁部分61が内側竪壁部39cの下面に押し当てられた場合にも、中央部分51は、変形が規制されることなく、また、軸線Z方向の厚さが薄く形成されていることから、空間29b内で受圧室21側に膨らむように変形する。そうして、中央部分51の上面に形成された、受圧室21側に突起する上側突起部51aが、中央頂壁部39dの下面に当接すると、図5に示すように、この上側突起部51aが支点となって、可動板41の中央部分51の切込み切込みスリット71,71が形成された部位がより一層変形し易くなり、これにより、中央部分51の外周端に形成された切込みスリット71,71が開く。
【0059】
このように切込みスリット71,71が開くことによって、平衡室31側から受圧室21側へ液体が流れ易くなり、受圧室21側が速やかに減圧されて、キャビテーションの発生が抑えられる。
【0060】
一方、受圧室21内が正圧(押圧)状態となると、可動板41がオリフィス盤9の底壁部49aの上面に押し当てられるが、中央部分51の軸線Z方向の厚さを周縁部分61の軸線Z方向の厚さよりも薄くしたことで、可動板41の下側に、可動板41の平衡室31側への弾性変形を許容するための空間29cが存在していることから、中央部分51の変形は規制されない。このような中央部分51の弾性変形を利用することにより受圧室21内の液圧上昇が吸収されるので、可動板41の下側に空間が存在していない場合に比べて動的ばね定数の上昇を抑制することが可能となる。
【0061】
また、受圧室21内の液圧上昇が大きい場合には、中央部分51が空間内で平衡室31側に膨らむようにさらに変形して、中央部分51の下面に形成された、平衡室31側に突起する下側突起部51bが、底壁部49aの上面に当接する。このように、下側突起部51bが底壁部49aの上面に当接すると、この下側突起部51bが支点となって、可動板41の中央部分51の切込み切込みスリット71,71が形成された部位がより一層変形し易くなる。これにより、中央部分51の外周端に形成された切込みスリット71,71が開き、受圧室21側から平衡室31側へ液体が流れ易くなり、受圧室21内の過度の液圧上昇が抑えられる。
【0062】
−効果−
本実施形態によれば、収容室29の中央部には、可動板41の受圧室21側に、当該可動板41の受圧室21側への弾性変形を許容するための空間29bが存在していることから、周縁部分61がオリフィス盤9の内側竪壁部39cの下面に押し当てられた場合にも、可動板41の中央部分51は変形が規制されることなく、受圧室21側に膨らむように変形する。これにより、当該空間29bに対応する部分に、軸線Z方向に貫通するように形成された切込みスリット71が開き、平衡室31側から受圧室21側へ液体が流れ易くなり、受圧室21側が速やかに減圧されて、キャビテーションの発生が抑えられる。
【0063】
また、可動板41の中央部分51の軸線Z方向の厚さは、その周縁部分61の軸線Z方向の厚さよりも薄いことから、オリフィス盤9の底壁部49aの上面がフラットに形成されている場合にも、軸線Z方向における周縁部分61に対する中央部分51の位置を調整することにより、可動板41の軸線Z方向の弾性変形を許容するための空間を容易に確保できる。さらに、可動板41の中央部分51の軸線Z方向の厚さが薄く形成されていることで、当該中央部分51がより変形し易くなる。
【0064】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0065】
上記実施形態では、可動板41の中央部分51の上下両面に突起部51a,51bを形成したが、これに限らず、例えば、図6(a)に示すように、受圧室21が正圧状態のときの可動板41の平衡室31側への変形を促すべく、中央部分51の下面だけに下側突起部51bを形成してもよいし、これとは逆に、受圧室21が負圧状態のときの可動板41の受圧室21側への変形を促すべく、中央部分51の上面だけに上側突起部51aを形成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、可動板41の中央部分51の上下両面に突起部51a,51bを1つずつ形成したが、これに限らず、例えば、図6(b)に示すように、中央部分51の下面に複数の下側突起部51b,51bを形成してもよいし、また、図6(c)に示すように、中央部分51の上下両面に複数の突起部51a,51a,51b,51b,51bを形成してもよい。このように、複数の突起部51a,51b,…を形成すれば、各突起部51a,51b,…が、オリフィス盤9の中央頂壁部39dの下面又は底壁部49aの上面に当接する際の衝撃が分散され、突起部51a,51b,…の先端が中央頂壁部39d又は底壁部49aに当接することによって発生する異音をさらに小さくすることが可能となる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、可動板41に突起部51a,51bを形成したが、これに限らず、例えば、図7(a)に示すように、可動板41の中央部分51が変形した際に、当該中央部分51に当接するように、オリフィス盤9の中央頂壁部39dの下面に平衡室31側に突起する上側突設部9aを形成し、底壁部49aの上面に受圧室21側に突起する下側突設部9bを形成するようにしてもよい。また、図7(b)に示すように、受圧室21が正圧状態のときの可動板41の平衡室31側への変形を促すべく、中央部分51の下面に下側突起部51bを形成するとともに、受圧室21が負圧状態のときの可動板41の受圧室21側への変形を促すべく、オリフィス盤9の中央頂壁部39dの下面に平衡室31側に突起する上側突設部9aを形成するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、中央部分51の上面と周縁部分61の上面とが面一になるように可動板41を形成したが、中央部分51の軸線Z方向の厚さが周縁部分61の軸線Z方向の厚さよりも薄くなっているのであれば、これに限らず、例えば、図8(a)に示すように、中央部分51が周縁部分61の軸線Z方向における中央部に位置するように可動板41を形成してもよい。このようにすれば、オリフィス盤9の頂壁部39aの下面及び底壁部49aの上面を共に、フラットに形成しても(より詳しくは、上側本体部39の内側竪壁部39cに中央頂壁部39dを設けなくても)、収容室29の中央部には、可動板41の軸線Z方向における弾性変形を許容するための空間が存在していることになる。したがって、オリフィス盤9の製造が容易になる。
【0069】
さらに、上記実施形態では、中央部分51の上面と周縁部分61の上面とが面一になるように可動板41を形成したが、これに限らず、例えば、図8(b)に示すように、中央部分51の上面が、周縁部分61の上面よりも受圧室21側に突出するように段差を設けてもよい。このようにすれば、可動板41の周縁部分61が、内側竪壁部39cの下面に押し当てられた際、中央部分51が空間29bに嵌り易くなることから、可動板41の受圧室21側への弾性変形を確実に行わせることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、中央部分51の外周に沿うように切込みスリット71,71を2つ形成したが、これに限らず、例えば、図9(a)に示すように、切込みスリット71,71,…を4つ形成てもよいし、図9(b)に示すように、切込みスリット71,71,…を8つ形成てもよい。このように、各切込みスリット71の長さを短くすれば、開き易さは劣るものの、通常の振動入力時における振動減衰機能を維持し易くなる。なお、これらの場合にも、各切込みスリット71の端71aに対応する部分に、突出部61a,61a,…を形成するのが望ましい。
【0071】
さらに、上記実施形態では、中央部分51の外周に沿うように切込みスリット71,71を形成したが、これに限らず、切込みスリット71,71を、例えば、図9(c)に示すように、中央部分51の中心に向かって突出する半円弧状に形成てもよいし、図9(d)に示すように、中央部分51の中心を通る直線状に形成てもよいし、図9(e)に示すように、中央部分51の中心で交差する十字状に形成てもよいし、図9(f)に示すように、中央部分51の中心を通らない直線状に形成てもよい。なお、これらの場合にも、各切込みスリット71の両端71a,71aがそれぞれ中央部分51と周縁部分61との境に位置し、且つ、各切込みスリット71の端71aに対応する部分に、突出部61a,61a,…を形成するのが望ましい。また、中央部分51の中心部に切込みスリット71が形成されていない図9(c)及び(f)のものでは、上側及び/又は下側突起部51a,51bを形成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、中央部分51の外周縁が、上側本体部39の外側の貫通孔39e,39e,…と内側の貫通孔39f,39f,…との間に位置するように、中央部分51を形成したが、中央部分51は、極端に(中央部分51の外周縁が、内側の貫通孔39f,39f,…よりも内側に位置し、周縁部分61で貫通孔39e,39f,…が塞がれるくらい)小さかったり、極端に(中央部分51の外周縁が、外側の貫通孔39e,39e,…よりも外側に位置し、変形した中央部分51で貫通孔39e,39f,…が塞がれるくらい)大きかったりするのでなければ、どのような大きさでもよい。
【0073】
さらに、上記実施形態では、上側本体部39の内側竪壁部39cの内周面にスロープ部39g,39g,…を形成したが、液体の流れ易さを確保できるのであれば、スロープ部39g,39g,…を形成しなくてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、樹脂製のオリフィス盤9を用いたが、これに限らず、例えば、鉄板製のオリフィス盤を用いてもよい。
【0075】
さらに、上記実施形態では、切込みスリット71の端71aに対応する部分に、径方向内側に突出する突出部61aを形成したが、突出部61aは必ずしも形成しなくてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、本発明の液体封入式防振装置をいわゆる縦置きのエンジンマウント1に適用しているが、これに限らず、横置きのエンジンマウントにも適用することができるし、エンジンマウントに限らずサスペンションブッシュ等にも適用できる。さらに、自動車用途に限定されることもない。
【0077】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明は、主液室の液圧変動を吸収するための可動板に切込みが形成された液体封入式防振装置等について有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 エンジンマウント(液体封入式防振装置)
3 連結金具
5 支持金具
7 ゴム弾性体
9 オリフィス盤(仕切部材)
9a 上側突設部(突設部)
9b 下側突設部(突設部)
11 液室
19 オリフィス通路
21 受圧室(主液室)
29 収容室
29b 空間
29c 空間
31 平衡室(副液室)
39e 貫通孔(連通孔)
39f 貫通孔(連通孔)
41 可動板
49d 貫通孔(連通孔)
51 中央部分
51a 上側突起部(突起部)
51b 下側突起部(突起部)
61 周縁部分
61a 突出部
71 切込みスリット
71a 端
Z 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持体側に連結される連結金具と、支持体側に連結される支持金具と、これら両金具を連結し、弾性変形により当該両金具を少なくとも当該両金具を結ぶ軸方向に相対変位させるゴム弾性体と、当該ゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように当該連結金具と当該支持金具との間に形成された液室と、当該液室の内部を主液室と副液室とに仕切る仕切部材と、当該主液室と当該副液室とを連通するオリフィス通路と、当該仕切部材の内部に形成された収容室に、軸方向に移動可能に収容された可動板と、を備えた液体封入式防振装置であって、
上記仕切部材には、上記収容室を上記主液室及び副液室のそれぞれに連通させる連通孔が形成されており、
上記収容室の中央部には、上記可動板の主液室側及び副液室側への弾性変形を許容するための空間が存在し、
上記可動板は、上記空間に対応する中央部分が略円盤状に形成されているとともに当該中央部分の周りの周縁部分が略円環状に形成され、且つ、当該中央部分の軸方向の厚さが、当該周縁部分の軸方向の厚さよりも薄くなっており、
上記可動板の中央部分には、軸方向に貫通する切込みスリットが形成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体封入式防振装置において、
上記切込みスリットは、両端がそれぞれ上記可動板の中央部分と周縁部分との境に位置するように形成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体封入式防振装置において、
上記可動板の周縁部分の内周面には、上記切込みスリットの切込みが上記中央部分の外周に沿って進行するのを抑えるために、当該切込みスリットの端に対応する部分に、径方向内側に突出する突出部が形成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の液体封入式防振装置において、
上記可動板の、上記切込みスリットが形成されていない中央部には、当該可動板が変形した際に、上記仕切部材の、軸方向と直交し且つ上記空間を区画する面に当接するように、主液室側及び/又は副液室側に突起する突起部が形成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の液体封入式防振装置において、
上記仕切部材の、軸方向と直交し且つ上記空間を区画する面には、上記可動板が変形した際に、当該可動板の中央部に当接するように、主液室側及び/又は副液室側に突起する突設部が形成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の液体封入式防振装置において、
上記空間は、上記仕切部材の、軸方向と直交し且つ上記収容室を区画する面を、主液室側及び/又は副液室側に凹ませることで形成されており、
上記仕切部材の、軸方向と平行な且つ上記空間を区画する面には、上記可動板側に向かうほど径方向外側に傾斜するスロープ部が、部分的に形成されていることを特徴とする液体封入式防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137477(P2011−137477A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295882(P2009−295882)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】