説明

液体散布ノズル

【課題】作業性を低下させることなくドリフト量を低減化することのできる液体散布ノズルを提供すること。
【解決手段】散布ノズル1は、液体供給路Sの途中で液体供給路を分岐させて直進噴出成分形成用通路53と旋回噴出成分形成用通路39とが形成され、分岐部分22の液体供給路に流量制御弁17が設けられて直進噴出成分形成用通路53と旋回噴出成分形成用通路39との少なくとも一方の通路を流れる液体の流量が制御され、前記少なくとも一方の通路を流れた液体が第1噴射口41から噴射されるように構成され、第1噴射口41よりも下流側の液体供給路に、外気の吸気孔29と、第1噴射口41からの液体により外気を吸気孔から吸入させる外気吸入構造52と、外気吸入構造52からの外気と第1噴射口41からの液体とを混合する気液混合構造56と、混合された混合気液を噴射する第2噴射口34とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を遠方に散布する直進噴射と、液体を広角に散布する広角噴射とに切り替えられる液体散布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体散布ノズルとしては下記の特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1記載の液体散布ノズルでは、加圧された液体を供給する液体供給路に、渦流形成中子の収容室、渦流発生室、第1噴射口、外気吸入孔、エゼクタ用通路、気液混合室、および第2噴射口が、液体供給方向に当該順で設けられており、渦流形成中子は収容室内および渦流発生室内で液体供給方向に進退自在となっている。この液体散布ノズルによれば、手持杆の末端に設けられたグリップを回して渦流形成中子を収容室に移動させることにより液体を第2噴射口から直進噴射させ、渦流形成中子を渦流発生室に移動させることにより液体を第2噴射口から広角噴射させるようになっている。
【0003】
ところが、この液体散布ノズルでは、液体供給路内で渦流形成中子を進退移動させなければならない。加えて、渦流発生室下流側の液体供給路に屈曲部があると、渦流発生室で生じた渦流は屈曲部で大きく減衰して広角噴射を阻害する。これらによって、この液体散布ノズルは全体を直線状に形成せざるを得なかったのである。このように直線状に形成された液体散布ノズルは真っ直ぐの方向にしか液体肥料や農薬を噴射しないため、特に下方からの散布に難があり野菜の葉裏などに確実に噴霧できないという不具合があった。また、渦流溝などを有する渦流形成中子、渦流形成中子との間に所定隙間を持たせる収容室、および、渦流形成中子が移動自在に摺動する渦流発生室を製作しなければならないことから、構成が複雑になり簡素かつ安価に提供できなかった。
【0004】
そこで、図7に示すような液体散布ノズル61が下記の特許文献2に記載されている。液体散布ノズル61では、加圧された液体を供給する液体供給路S1の先端に、噴射口71を有するオリフィス板72が設けられ、液体供給路S1の途中に、液体供給方向に進退自在の流量制御弁73、通水孔74を有する弁座板75、および液流制限部材76が当該順で液体供給方向に設けられている。この液体散布ノズル61によれば、手持杆の末端に設けられたグリップ(図示省略)を回して流量制御弁73を進退させることにより弁座板75の通水孔74を開閉して、液体をオリフィス板72の噴射口71から直進噴射させたり広角噴射させるようになっている。この液体散布ノズル61では、液体供給路S1が流量制御弁73の下流側位置で屈曲しており噴射口71の向きが手持杆の軸心方向から傾いているので、手持杆の角度とノズル頭の向きを手で調節するだけで噴射口71の向きを自由に変えられるようになっている。従って、野菜の葉裏に下方から噴射したり側方から茎に噴射する場合に好適とされている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−35081号公報
【0006】
【特許文献2】実開平2−37763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2記載の液体散布ノズルでは、液体のみが噴射口から噴射されるので、噴射された霧滴の径は例えば100μm以下と極めて細かくなる。そのために、霧滴が空気中に浮遊しやすく、霧滴が風に乗って飛散する、いわゆるドリフト現象により遠方まで到達し、或る種の薬液散布が禁止されている隣の菜園に無為に噴霧されるおそれがあった。かかる不具合を防ぐためには、やむなく噴射量を少なくして薬液を散布しなければならず、作業性の低い薬液散布にならざるを得なかった。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、作業性を低下させることなくドリフト量を低減化することのできる液体散布ノズルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体散布ノズルは、加圧された状態の液体を供給する液体供給路を備え、該液体供給路の途中で液体供給路を分岐させて直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路とを形成し、前記分岐部分の液体供給路に流量制御弁を設けて直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路との少なくとも一方の通路を流れる液体の流量を制御し、前記少なくとも一方の通路を流れる液体を、直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路との合流位置の下流側の液体供給路に設けた第1噴射口から噴射するように構成された液体散布ノズルにおいて、第1噴射口よりも下流側の液体供給路に、外気吸入用の吸気孔と、第1噴射口から噴射された液体によって外気を吸気孔から液体供給路内へ吸入させる外気吸入構造と、該外気吸入構造により吸入された外気と第1噴射口から噴射された液体とを混合する気液混合構造と、該気液混合構造で混合された混合気液を噴射する第2噴射口とを具備した構成にしてある。
【0010】
また、前記構成において、分岐部分と第1噴射口との間の液体供給路に中子収容室が設けられ、該中子収容室に流量制御弁からの液体を旋回させる旋回中子が保持され、該旋回中子は、中子収容室の内周面との間で旋回噴出成分形成用通路を形成する通路用外周面と、直進噴出成分形成用通路を成す貫通孔と、通路用外周面からの液体に旋回流を付与する旋回流付与構造とを備えているものである。
【0011】
そして、前記した各構成において、液体供給路が、分岐部分の下流側位置で屈曲して形成されているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液体散布ノズルによれば、第1噴射口から噴射された液体は吸入された外気と混合されたのちに第2噴射口から直進噴射または広角噴射されるので、外気と混合されることなく噴射される従来技術と比べて、数倍大きな径の霧滴を得ることができる。これにより、霧滴のドリフト量を低減化することができ、周囲に迷惑をかけることを防止できる。ひいては、ドリフト現象を考慮し噴射量を少なくして液体散布をする必要がなくなり、作業性を低下させることなく散布作業を行なうことができる。
【0013】
また、分岐部分と第1噴射口との間の液体供給路に旋回中子を固定配備した場合は、進退移動部材である流量制御弁が必ず分岐部分より上流側にあるので、液体供給路を分岐部分の下流側位置で屈曲させることができる。
【0014】
そして、液体供給路が分岐部分の下流側位置で屈曲して形成されている場合は、手で持たれる部分の液体供給路の角度と、屈曲したノズル下流側の向きを手で調節するだけで第2噴射口の向きを自由に変えることができる。従って、噴霧対象物に対して様々な角度から大径の霧滴を噴射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る液体散布ノズルの外観図、図2は前記液体散布ノズルの要部分解斜視図、図3は前記液体散布ノズルの一部分省略した側断面図、図4は前記液体散布ノズルの一部の部品を示し、(a)は旋回中子の斜視図、(b)は旋回中子の側面図、(c)は旋回中子の正面図、(d)は第2噴射口を有するオリフィス板の正面図、図5は図3におけるA−A線矢視断面図である。
各図において、この実施形態に係る液体散布ノズル1は例えば田畑などへの施肥や農薬散布を行うものであって、外パイプ2内に収容された円筒状の内パイプ5の末端に取り付けた握り柄10を手で回転操作することにより、内パイプ5を外パイプ2に対し進退移動させる手持部Tと、手持部Tの先端部分に設けられて薬液を噴射するノズル部Nとから成っている。手持部Tの末端の接続口11は、この液体散布ノズル1から離れた場所に置かれた圧送ポンプの吐出口とホース(いずれも図示省略)を介して接続されている。外パイプ2をアルミニウムパイプで構成すると、一定の耐腐食性を保持しながら軽量化を図ることができ、散布作業性を高めることができる。
【0016】
手持部Tにおいて、外パイプ2の両端開口内に円筒状の管継手3,4が嵌挿されカシメなどで固定されている。管継手3,4の筒内には、液体供給路13を有する直管状の内パイプ5が筒心方向移動自在に装入されている。内パイプ5の末端外周には円筒状の管継手6が固設され、管継手6に握り柄10が固設されている。握り柄10の接続口11の内面にはホースとつなぐための雌ネジ部12が形成されている。外パイプ2の外周面には握り柄14が取り付けられている。管継手4の末端側の内周面には雌ネジ部8が形成されている。管継手6の先端側の外周面には、管継手4の雌ネジ部8と螺合する雄ネジ部9が形成されている。これらの雌ネジ部8と雄ネジ部9は外パイプ2と内パイプ5との相対回転により螺進して外パイプ2または内パイプ5を筒心方向に相対移動させるようになっている。管継手4の末端には、移動自在の管継手6を抜け止め係止する円筒キャップ7が螺着されている。
【0017】
ノズル部Nは、側面から見て略への字状に屈曲して形成された筒状の基部ケーシング20を基にして構成されている。基部ケーシング20の末端側において屈曲部23の上流側直前位置まで、内パイプ5よりも大径の液体供給路19が形成されている。この液体供給路19には、手持部Tの内パイプ5を摺動自在に封止するO−リングなどを用いたシール部15が装入されている。基部ケーシング20の末端はユニオンキャップ16によって手持部Tの管継手3と連結されている。内パイプ5の先端には円錐筒状の流量制御弁17が取り付けられている。流量制御弁17の側面には、内パイプ5からの薬液を液体供給路19へ流す通水孔18が穿設されている。液体供給路19の先端奥部には、流量制御弁17により開閉される弁座板21が配備されている。弁座板21は、流量制御弁17により開閉されて旋回中子25の貫通孔25と液体供給路19とを連通する板中央の通水孔40と、旋回噴出成分形成用通路39,39と液体供給路19とを連通する板両側の通水孔36,36とを有している。すなわち、弁座板21は、液体供給路を直進噴出成分形成用通路53と旋回噴出成分形成用通路39,39とに分岐させる分岐部分22であり、基部ケーシング20の屈曲部23の上流側に配備されている。尚、弁座板21の通水孔40は、流量制御弁17が当接停止したときでも全閉とならず少量の薬液が通過できるよう流量制御弁17との間に隙間部(図示省略)が形成されている。
【0018】
そして、基部ケーシング20の先端側、すなわち屈曲部23の下流側に、中子収容室45が形成されている。この中子収容室45には弁座板21からの薬液を旋回させる旋回中子24が収容されて保持される。旋回中子24は、貫通孔25を筒心に有する円筒状の中子本体46と、中子本体46の先端に設けられた中子本体46よりも大径の鍔部47と、中子本体46の外周面に突設された係止突起48,48とを備えている。鍔部47の外周面には、旋回用溝49,49がそれぞれ略接線方向に沿って形成されている。これら1対の旋回用溝49,49は鍔部47の筒心回りに180度回転した位置に配置されている。但し、旋回用溝49は2つに限らず、鍔部47における配置も均等角でなくてよい。鍔部47の先端面には旋回用溝49,49と連通する円柱状の旋回発生空間50が形成されている。この旋回中子24は、基部ケーシング20の中子収容室45内に形成された係合溝51,51に係止突起48,48が嵌挿されることによって基部ケーシング20に回り止め固定される。すなわち、旋回中子24は、中子収容室45の内周面38との間で旋回噴出成分形成用通路39を形成する通路用外周面37と、直進噴出成分形成用通路53を成す貫通孔25と、旋回噴出成分形成用通路39とつながるように形成されて薬液に旋回流を付与する旋回流付与構造54,54を成す旋回用溝49,49とを備えている。
【0019】
基部ケーシング20の先端はO−リング43を介在させた状態でユニオンキャップ30の螺合により先部ケーシング28の末端と接続されている。先部ケーシング28はその末端側に合流空間26が形成され、先端側に気液混合構造56を成す気液混合室32が形成され、合流空間26と気液混合室32との間は、合流空間26および気液混合室32よりも細径のエゼクタ用通路31で連通している。尚、前記した合流空間26の中でオリフィス板27の上流側が本発明にいう合流空間である。基部ケーシング20の前方位置で旋回中子24の先端面には、第1噴射口41が先端に形成された円錐筒状のオリフィス板27が配備されている。この第1噴射口41の開口形状は円形である。オリフィス板27はその周縁部が旋回中子24の鍔部47の前面と先部ケーシング28の合流空間26の内周面段部との間で挟持されて固定される。
【0020】
そして、合流空間26におけるオリフィス板27の下流側空間と外部とを連通する吸気孔29が、先部ケーシング28の合流空間26の周壁に穿設されている。第1噴射口41が臨むエゼクタ用通路31の開口縁部とオリフィス板27との間には、エゼクタ作用を生じさせる所定の隙間が設けられている。気液混合室32は円柱状空間として形成され、その内径はエゼクタ用通路31の内径よりも十分に大きくとられて気液混合を確実に行なえるようになっている。先部ケーシング28の気液混合室32の前面開口は、第2噴射口34を有するオリフィス板33で封止される。このオリフィス板33およびO−リング44は、先部ケーシング28の先端に螺止されるユニオンキャップ35によって固定される。この場合、オリフィス板33の第2噴射口34の開口形状は、正面より見て水平方向(図4(d)の1点鎖線Hに沿う方向)から口芯回りに所定角度θ(=30度)だけ左回転した方向に長い、長円形に形成されている。これは、後で詳述するように、広範囲の散布時に第2噴射口34から正面より見て右回りに旋回しながら噴射される霧滴のスプレーパターンを水平方向に扁平にさせるためである。先部ケーシング28の周囲はフード42で被われている。このようにして、握り柄10の接続口11、内パイプ5の液体供給路13、流量制御弁17の通水孔18、基部ケーシング20の液体供給路19、弁座板21の通水孔40,36,36、旋回中子24の貫通孔25、旋回噴出成分形成用通路39,39、旋回用溝49,49、先部ケーシング28の合流空間26、オリフィス板27の第1噴射口41、エゼクタ用通路31、および気液混合室32から、全体の液体供給路S(本発明の液体供給路に相当)が構成される。
【0021】
上記のように構成された液体散布ノズル1の作用を次に説明する。まず、広い範囲にわたって噴霧作業を行なう際には、図5に示したように、握り柄10を手で回して流量制御弁17を前進させ弁座板21に着座させて通水孔40を閉止する。そこで、圧送ポンプで加圧されている薬液は液体供給路13、通水孔18,18、液体供給路19を経て、大部分が通水孔36,36から旋回噴出成分形成用通路39,39に供給される。旋回噴出成分形成用通路39,39に供給された薬液は、旋回中子24の旋回用溝49,49で接線方向の旋回力が付与されて旋回発生空間50に流入し、旋回発生空間50で旋回運動が安定化されたのち、合流空間26に流入する。合流空間26に流入した薬液は、弁座板21の通水孔40の隙間部を経て貫通孔25から流入した残りの薬液と合流したのちにオリフィス板27の第1噴射口41から噴射される。第1噴射口41から噴出した薬液は細径のエゼクタ用通路31を通過する際にエゼクタ作用を引き起こし、オリフィス板27下流側の液体供給路の圧力を低下させて吸気孔29,29から外気を吸入させる。すなわち、円錐形状のオリフィス板27、オリフィス板27の第1噴射口41、および先部ケーシング28のエゼクタ用通路31の組み合わせにより、外気を液体供給路内に吸引する外気吸入構造52が構成される。
【0022】
そして、高速旋回をしながらエゼクタ用通路31を通過した薬液と外気は十分に広い気液混合室32内で程よく旋回混合される。更に、旋回混合された混合気液はオリフィス板33の第2噴射口34から正面より見て右回りに旋回しながら外部に噴射される。この場合、第2噴射口34の開口形状は長円形であることから、第2噴射口34から噴射された霧滴W1のスプレーパターンP1は、第2噴射口34の正面から見て水平方向(図4(d)参照)に広がった長円形ないし楕円形となり、開口形状が円形の第2噴射口を用いた場合と比べて噴霧角度が更に広くなる。また、このスプレーパターンP1は正面から見てパターン周縁のみならず中心部分も霧滴で充たされた充円錐状となっている。これらの複合特性によって、作業性を上げることができる。このときに生じた霧滴W1の径は、特許文献2記載の薬液散布ノズルを微粒広角噴射モードで用いた場合と比べて約4倍程度に大きくなった。これにより、霧滴W1の噴射から着地までの時間が従来と比べて格段に早くなり、霧滴W1がドリフト現象により遠方に飛散する度合いが極めて小さくなった。従って、或る種の薬液の噴霧が禁止されている隣の菜園に無為に噴霧されるといった不具合を防ぐことができる。その結果、ドリフト現象を考慮し噴射量を少なくして薬液散布をする必要がなくなり、作業性を低下させることなく散布作業を行なうことができた。また、基部ケーシング20が弁座板21(分岐部分22)の下流側位置(屈曲部23)で屈曲しているので、手持部Tの角度とノズル部Nの向きを手で調整するだけで第2噴射口34の向きを自由に変えることができる。これにより、野菜の葉裏に下から噴射したり、側方から茎に噴射する場合に好適に用いることができる。このように、基部ケーシング20を分岐部分22の下流側位置で屈曲させることができたのは、分岐部分22と第1噴射口41との間の液体供給路に旋回中子24を固定配備したからである。また、弁座板21の通水孔40に隙間部を設けてあるので、最大の広角散布時でも第2噴射口34からの噴射量が極端に少なくならないため、吸気孔29から外部への薬液の逆流を防ぐことができる。
【0023】
一方、薬液を遠方に噴霧する場合は、図6に示すように、握り柄10を手で回して流量制御弁17を後退させ弁座板21から離間させて通水孔40を開放する。すると、圧送ポンプで加圧されている薬液はその大部分が通水孔40から旋回中子24の貫通孔25(直進噴出成分形成用通路53)に供給されて合流空間26に流入する。残りの薬液は通水孔36,36から旋回噴出成分形成用通路39,39に供給され、図5で述べたと同様、旋回中子24で旋回運動が付与されたのちに合流空間26に流入する。合流空間26に流入した直進噴出成分の薬液は当該空間内で合流した旋回噴出成分の薬液によりわずかながら旋回力を付与される。このように合流した薬液はオリフィス板27の第1噴射口41から噴射される。第1噴射口41から噴出した薬液は前記した外気吸入構造52により吸気孔29,29から外気を吸入させる。エゼクタ用通路31を通過した薬液と外気は気液混合室32内で混合されたのちにオリフィス板33の第2噴射口34から外部に噴射される。第2噴射口34から噴射された霧滴W2は直進噴出成分の薬液が多く旋回噴出成分の薬液が少ないので、近傍では拡がらずスプレーパターンP2のスプレー角度は狭く、長円形ないし楕円形の断面形状を保ちながらわずかずつ拡がって遠方まで噴射される。そして、このときに生じた霧滴W2の径も、従来の薬液散布ノズルを直進噴出モードで操作した場合と比べて大きくなり、微細な霧滴の発生量も極めて少なくなる。従って、直進噴射において微細な霧滴によるドリフト現象を抑制することができる。更に、霧滴W2の径が大きいことに加えて、ノズル部Nが屈曲部23で屈曲していることから、液体散布ノズル1を竪向きに持って第2噴射口34を高く掲げることにより、特許文献1,2に記載のものと比べて、霧滴W2の飛距離を延ばすことが可能となる。
【0024】
尚、上記の実施形態では流量制御弁を直進噴出成分形成用通路に設けた例を示したが、本発明はそれに限定されるものでなく、例えば流量制御弁を旋回噴出成分形成用通路に設けても構わない。あるいは、直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路の双方に流量制御弁を設けてもよい。
また、上記では手持部Tに対しノズル部Nを屈曲させた例を示したが、本発明はそれに限定されず、手持部とノズル部とが直線状に構成されたものも含んでいる。このように全体が直線状に構成された液体散布ノズルであっても、第2噴射口から噴射された霧滴の径は大きいので、相応の効果を奏し得る。
あるいは、手持部の末端側において内パイプを回転・進退させる握り柄の下流側に、接続口を有する別の握り柄を手持部の軸心から傾けて設け、この握り柄の近傍に接続口からの液体供給路を開閉する開閉弁を設け、この開閉弁の近傍に揺動自在に設けたトリガレバーの操作により開閉弁を開閉させるようにした、いわゆるガンタイプの液体散布ノズルも本発明に含まれる。
そして、弁座板21の通水孔40は流量制御弁17が当接停止したときに完全に封止される開口形状に形成してよいことは言うまでもない。
また、第2噴射口の開口形状は長円形に限らず、使用目的に応じて適宜選択されてよく、例えば円形、その他の形状であってよい
また、本発明に適用される液体としては堆肥、農薬に限らず、噴霧に好適に用いることのできるものであれば特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体散布ノズルの外観図である。
【図2】前記液体散布ノズルの要部分解斜視図である。
【図3】前記液体散布ノズルの一部分省略した側断面図である。
【図4】前記液体散布ノズルの一部の部品を示し、(a)は旋回中子の斜視図、(b)は旋回中子の側面図、(c)は旋回中子の正面図、(d)は第2噴射口を有するオリフィス板の正面図である。
【図5】図3におけるA−A線矢視断面図である。
【図6】図5の液体散布ノズルから直進噴出成分形成用通路を開放した態様を示す断面図である。
【図7】従来の液体散布ノズルの一部分省略した側断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 液体散布ノズル
11 接続口
13 液体供給路
17 流量制御弁
18 通水孔
19 液体供給路
21 弁座板
22 分岐部分
23 屈曲部
24 旋回中子
25 貫通孔
26 合流空間
27 オリフィス板
29 吸気孔
31 エゼクタ用通路
32 気液混合室
33 オリフィス板
34 第2噴射口
36 通水孔
37 通路用外周面
38 内周面
39 旋回噴出成分形成用通路
40 通水孔
41 第1噴射口
45 中子収容室
49 旋回用溝
50 旋回発生空間
52 外気吸入構造
53 直進噴出成分形成用通路
54 旋回流付与構造
56 気液混合構造
S 液体供給路
W1,W2 霧滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された状態の液体を供給する液体供給路を備え、該液体供給路の途中で液体供給路を分岐させて直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路とを形成し、前記分岐部分の液体供給路に流量制御弁を設けて直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路との少なくとも一方の通路を流れる液体の流量を制御し、前記少なくとも一方の通路を流れる液体を、直進噴出成分形成用通路と旋回噴出成分形成用通路との合流位置の下流側の液体供給路に設けた第1噴射口から噴射するように構成された液体散布ノズルにおいて、第1噴射口よりも下流側の液体供給路に、外気吸入用の吸気孔と、第1噴射口から噴射された液体によって外気を吸気孔から液体供給路内へ吸入させる外気吸入構造と、該外気吸入構造により吸入された外気と第1噴射口から噴射された液体とを混合する気液混合構造と、該気液混合構造で混合された混合気液を噴射する第2噴射口とを具備してなることを特徴とする液体散布ノズル。
【請求項2】
分岐部分と第1噴射口との間の液体供給路に中子収容室が設けられ、該中子収容室に流量制御弁からの液体を旋回させる旋回中子が保持され、該旋回中子は、中子収容室の内周面との間で旋回噴出成分形成用通路を形成する通路用外周面と、直進噴出成分形成用通路を成す貫通孔と、通路用外周面からの液体に旋回流を付与する旋回流付与構造とを備えている請求項1に記載の液体散布ノズル。
【請求項3】
液体供給路が、分岐部分の下流側位置で屈曲して形成されている請求項1または請求項2に記載の液体散布ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−110318(P2008−110318A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295974(P2006−295974)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(397002360)ヤマホ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】