説明

液体検査装置

【課題】被検査液体の循環を確保しつつ、安定的に検査光の投受光を行うことが可能な液体検査装置を提供すること。
【解決手段】液体検査装置1は、検査すべき被検査液体Lが貯留される液体貯留部11、被検査液体Lを所定の流量で通過させる液体通路12が形成されたブロック13、液体通路12に臨んで配置され所定波長の検査光を発生する発光素子14、発光素子14に対向するように液体通路12に臨んで配置され、前記検査光を受光する受光素子15、及び受光素子15の受光量に基づいて被検査液体Lについての評価パラメータを導出する制御演算部16を備えて成る。この液体検査装置1は、例えばエンジンに使用されている潤滑オイルの劣化度合いを監視する劣化診断装置に好適に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑オイル等の被検査液体に所定波長の検査光を照射し、その透過光を検出することで、当該液体の劣化度合い等についての評価パラメータを導出する液体検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用や機械装置用に用いられる溶液類やオイル類、或いは清涼飲料水等の各種液体の成分判定、品質管理、劣化診断等のために、当該液体に所定波長の検査光を照射すると共にその透過光を検出し、所定の評価パラメータを導出することがある。例えばコージェネレーションシステム(CGS)用のガスエンジン、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等において使用される潤滑オイルの劣化診断は、その用途の一つである。潤滑オイルは、エンジンの使用により劣化し、ピストンリングやカムの腐食及び摩耗、潤滑性能の低下、燃料消費率の増加、さらにはエンジントラブル等を招来することから、適時に交換する必要がある。但し、徒に交換したのでは省資源やコストの観点から好ましくない。従って、その交換時期の見極めのために、潤滑オイルの劣化診断が必要となる。
【0003】
従来、潤滑オイルの劣化度合いを判定するオイル劣化センサとしては、例えば特許文献1に開示されているような、異なる2波長の検査光をオイルに照射すると共にその透過光を検出し、吸光度又は透過光量に基づいて劣化判定を行うものが知られている。また、特許文献2には、耐熱性に優れる光ファイバを用いて検査光をエンジン内のオイルに照射し、光ファイバを介してその透過光を受光する劣化診断装置が開示されている。
【特許文献1】特許第2963346号公報
【特許文献2】特開2001−27635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、上記のような検査光を発生する発光素子、及び前記検査光を受光する受光素子は、環境温度によって光出力が変化する。すなわち、発光素子は温度変化により出力光量が変化し、受光素子は光電変換出力電流が変化する。例えば内燃機関の潤滑オイルを被検査液体とする場合、該潤滑オイルは高温になるので、特許文献1のようにオイル劣化のためにエンジンに発光素子及び受光素子を組み付けた場合、真の劣化度合いにマッチした吸光度又は透過光量が得られず、誤判定を行ってしまうことが考えられる。特許文献2のように光ファイバを用いれば、温度変化の影響が及ばないようにすることができるが、複雑な伝送光学系の構築が必要になると共に、当該伝送光学系における伝送損失が要因となって誤判定を行ってしまうことも考えられる。
【0005】
そこで、潤滑オイルの一部をエンジンから抜き出し、熱の影響を受けない環境下で発光素子及び受光素子による直接的な検査光の投受光を行った上で、抜き出した潤滑オイルをエンジンに戻す手法が、上記の不具合を解消するための手段として挙げられる。しかし、このような手法を採用する場合において、被検査液体としての潤滑オイルの循環を確保しつつ、安定的に前記検査光の投受光を行うことが可能な液体検査装置の開発が肝要となる。本発明は、このような液体検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る液体検査装置は、検査すべき被検査液体が貯留される液体貯留部と、前記被検査液体を所定の流量で通過させる液体通路が形成されたブロックと、前記液体通路に臨んで配置され所定波長の検査光を発生する発光素子と、前記発光素子に対向するように前記液体通路に臨んで配置され、前記検査光を受光する受光素子と、前記受光素子の受光量に基づいて、前記被検査液体についての評価パラメータを導出する演算手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、被検査液体が一時的に液体貯留部へ貯留された上で液体通路へ導かれるので、被検査液体を液体通路へ途切れることなく安定的に供給し、所定の流量で液体通路を常時通過させることが可能となる。そして、前記液体通路を挟んで発光素子と受光素子とが対向配置されていることから、液体通路を通過する被検査液体に対して、検査光の投受光を直接的に行うことができる。
【0008】
上記構成において、前記液体貯留部に貯留された被検査液体を前記液体通路へ導く導液手段をさらに備えることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、導液手段により被検査液体の液体通路に対する供給量を制御することが可能となるので、溢れ出し等を生じさせることなく、被検査液体が確実に液体通路を通過するように構成できる。
【0009】
この場合、前記液体貯留部を構成する第1の液槽と、前記ブロックが収容される第2の液槽とを備え、前記第1の液槽には貯留された被検査液体の溢出部が設けられ、前記ブロックは、前記液体通路が上下方向に延在し、且つ前記液体通路の入口が前記溢出部よりも下方に位置するように前記第2の液槽に配置され、前記導液手段は、前記溢出部と前記液体通路の入口との間を橋絡し前記被検査液体をその表面に沿って適量誘導する棒状部材からなり、前記第2の液槽の底面には、前記液体通路を通過した前記被検査液体を回収するための排出口が設けられている構成とすることができる(請求項3)。
【0010】
この構成によれば、重力を利用した簡素な構成でオイル通路へ被検査オイルを確実に導くことができる。また、被検査液体に光学測定に悪影響を与えることがある不純物が含まれていることが予定される場合に、第1の液槽に沈殿させた上で被検査オイルをオイル通路へ導けるので、一層正確なオイル劣化判定を行うことができる。
【0011】
上記いずれかの構成において、前記ブロックが、温度調節が可能な基板に取り付けられていることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、前記ブロックの温度調節を行うことが可能となるので、発光素子及び受光素子に対して外気温等の影響が及ばないようにすることができる。
【0012】
また、上記いずれかの構成において、所定の第1波長の検査光を発生する第1発光素子と、その検査光を受光する第1受光素子とからなる第1のセンサ対と、前記第1波長とは異なる第2波長の検査光を発生する第2発光素子と、その検査光を受光する第2受光素子とからなる第2のセンサ対とを含み、前記第1のセンサ対が前記液体通路の上流側に、前記第2のセンサ対が前記液体通路の下流側に各々配置されている構成とすることができる(請求項5)。この構成によれば、互いに異なる2波長の検査光を用いて被検査液体の評価パラメータを導出するセンサ構成、例えば潤滑オイルの劣化診断を行うためのセンサ構成を、簡単に構築することができる。
【0013】
この場合、前記第1波長の参照光を発生する第3発光素子及び前記第2波長の参照光を発生する第4発光素子と、これら参照光を前記オイル通路に相当する空気層を介してそれぞれ受光する第3受光素子及び第4受光素子とからなる温度補正用センサ対をさらに備えることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、温度補正用センサ対の出力に基づき温度補正を行うことで、より温度の影響を受けず正確に被検査液体の評価パラメータを導出することができる。
【0014】
上記いずれかの構成において、前記被検査液体が潤滑オイルであり、前記演算手段は、前記潤滑オイルの劣化度合いに関するパラメータを導出することが望ましい(請求項7)。この構成によれば、例えば潤滑オイルの一部をエンジンから抜き出し、熱の影響を受けない環境下で発光素子及び受光素子による直接的な検査光の投受光を行い、当該潤滑オイルの劣化診断に関するパラメータを取得した上で、抜き出した潤滑オイルをエンジンに戻すという診断装置を簡単に構築できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液体検査装置によれば、被検査液体を液体通路へ途切れることなく安定的に供給し、所定の流量で液体通路を常時通過させつつ、発光素子及び受光素子により被検査液体に対して検査光の投受光を直接的に行うことができる。このため、被検査液体の循環を確保しつつ、安定的に前記検査光の投受光を行うことが可能となる。従って、例えばエンジンの潤滑オイルの劣化診断を行う場合において、潤滑オイルの一部をエンジンから抜き出し、熱の影響を受けない環境下で発光素子及び受光素子による直接的な検査光の投受光を行った上で、抜き出した潤滑オイルをエンジンに戻すという劣化診断システムを、簡単な構成で構築できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体検査装置1の全体構成を概略的に示す構成図である。この液体検査装置1は、液体貯留部11、液体通路12が形成されたブロック13、液体通路12に臨んで配置された発光素子14、発光素子14に対向するように液体通路12に臨んで配置された受光素子15、制御演算部16(演算手段)、表示部17及び回収タンク18を備えて構成されている。
【0017】
液体貯留部11は、検査すべき被検査液体Lが貯留される漏斗状の容器である。この液体貯留部11の上端開口部からは、供給管111及び開閉弁112を備えた液体供給機構から、被検査液体Lが順次供給される。また、液体貯留部11の下端部には、導管113と調整弁114とからなる導液手段が設けられている。被検査液体Lは、調整弁114により流量を調整されつつ、液体通路12の入口部12inへ導かれる。
【0018】
ブロック13は金属プレートからなり、液体通路12は該ブロック13に直径が数ミリ程度の貫通孔を上下方向に穿孔することにより形成されている。この液体通路12の上端が被検査液体Lの入口部12inとされ、また下端部が出口部12outとされ、かかる液体通路12内を被検査液体Lが通過するようになっている。出口部12outには流量調整ネジ121が螺合され、液体通路12を通過する被検査液体Lの流量が調整可能とされている。このような液体通路12に互いに対向して臨むように、発光素子14及び受光素子15のための収納スペースがブロック13内に設けられている。
【0019】
発光素子14は、所定波長の検査光を発生するLED等からなり、液体通路12を横切る方向に向けて検査光を放射する。受光素子15は、発光素子14が発する検査光の波長に感度を有するシリコンフォトダイオード等からなり、発光素子14にその受光部が対向するように液体通路12に臨んで配置される。
【0020】
制御演算部16は、発光素子14の点灯制御並びに受光素子15の受光制御を行う。また、制御演算部16は、受光素子15の受光量に基づいて、被検査液体Lについての評価パラメータを導出する。例えば、吸光度若しくは透過光量に基づき、被検査液体Lの汚濁度、劣化度合い等を求める演算を行う。表示部17は液晶パネル等からなり、制御演算部16による評価パラメータの演算結果等が表示される。
【0021】
回収タンク18は、ブロック13の下方に配置され、液体通路12を通過し出口部12outから排出される被検査液体Lを受け取る。回収タンク18の底面には、排出管181及び開閉弁182が備えられ、被検査液体Lを他の配管系統へ流通させたり、或いは被検査液体Lを取り出した機器類へ戻したりすることが可能とされている。
【0022】
以上の通り構成された液体検査装置1によれば、供給管111から供給される被検査液体Lは、一時的に液体貯留部11へ貯留された上で液体通路12へ途切れることなく安定的に導かれる。そして、調整弁114及び流量調整ネジ121により設定された流量で、被検査液体Lは液体通路12を通過する。その際、発光素子14から検査光が照射され、被検査液体Lを透過した検査光が受光素子15にて受光される。このときの受光素子15の受光量に基づいて、制御演算部16により被検査液体Lについての評価パラメータが導出され、その結果が表示部17で表示される。一方、体通路12を通過した被検査液体Lは、回収タンク18により回収されるものである。従って、被検査液体Lの流通を確保しつつ、光ファイバ等を用いることなく、安定的に検査光の投受光を行うことができる。
【0023】
ところで、発光素子14及び受光素子15は、環境温度により出力特性が変化する。図2(a)は、一般的な受光素子の温度特性を示すグラフ、図2(b)は、一般的な発光素子の温度特性を示すグラフである。これらグラフに示す通り、受光素子は環境温度が上昇すると出力電流が上昇する傾向があり、発光素子は環境温度が上昇すると発光出力が低下する傾向がある。従って、被検査液体Lが常温から大きく外れた高温若しくは低温であったり、外気温が著しく高温若しくは低温であったりした場合、その温度の影響を受けて真の透過光量特性が測定できず、正確にパラメータを算出できない懸念がある。しかし、本実施形態に係る液体検査装置1によれば、液体貯留部11及び/又はブロック13を常温に維持させる温度維持手段(加熱素子や冷却素子等)を付設することで、簡単に温度の影響を除外することができるという利点がある。
【0024】
続いて、本発明に係る液体検査装置を、潤滑オイルの劣化診断装置に組み入れた実施形態について説明する。図3は、本発明に係る液体検査装置が適用された潤滑オイルの劣化診断装置Sの全体構成を概略的に示す構成図である。この劣化診断装置Sは、エンジン70に使用されている潤滑オイル71の劣化度合いを監視するためのものであって、オイル循環系統20、オイルクーラ30及び検査手段T(液体検査装置)を備えて構成されている。
【0025】
エンジン70は、クランクシャフト等に動力を与える内燃機関であり、例えばCGS用のガスエンジン、ガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等から成る。エンジン70の内部には潤滑オイル71が充填されており、内燃機関の円滑な動作を可能としている。このエンジン70には、潤滑オイル71の一部を被検査オイル(上述の「被検査液体L」に相当する)として抜き出すためのオイル取り出し孔72と、検査後の前記被検査オイルをエンジン70に戻すためのオイル戻し孔73とが備えられている。
【0026】
オイル循環系統20は、エンジン70のオイル取り出し孔72から潤滑オイル71の一部を被検査オイルとして抜き出し、オイルクーラ30及び検査手段Tを経由する循環経路を経て前記被検査オイルをエンジン70のオイル戻し孔13に戻すものである。オイルクーラ30は、前記循環経路の上流側に配置され、検査手段Tはオイルクーラ30よりも循環経路の下流側に配置されている。
【0027】
オイル循環系統20は、被検査オイルを強制循環させるための上流側ポンプ21と下流側ポンプ25とを含む。また、オイル循環系統20は、オイル取り出し孔12と上流側ポンプ21との間を接続する第1管路201、上流側ポンプ21とオイルクーラ30との間を接続する第2管路202、オイルクーラ30と検査手段Tとの間を接続する第3管路203、検査手段Tと下流側ポンプ25との間を接続する第4管路204及び下流側ポンプ25とオイル戻し孔13との間を接続する第5管路205を含む。これら第1〜第5管路201〜205は、樹脂パイプから構成される。さらに、被検査オイルの循環若しくは停止を各所で行わせるために、第1管路201には第1開閉弁22が、第3管路203の検査手段T寄りには第2開閉弁23が、第4管路204の検査手段T寄りには第3開閉弁24がそれぞれ配置されている。
【0028】
このようなオイル循環系統20がエンジン70に付設されている結果、エンジン70の運転中において、上流側ポンプ21の動作により潤滑オイル71の一部がオイル取り出し孔72から被検査オイルとして抜き出される。抜き出された被検査オイルは、オイルクーラ30と検査手段Tとを順次経由して冷却工程及び検査工程を経た後、下流側ポンプ25の動作によりオイル戻し孔73に戻される。
【0029】
オイルクーラ30は、エンジン70からの抜き出し時には例えば90〜110℃程度の高温である被検査オイルを、50℃程度以下に冷却するものである。このオイルクーラ30は、伝熱性に優れた金属パイプ(銅パイプ等)を螺旋状に巻回してなるパイプコイル31と、このパイプコイル31を横倒し状態で収納する水槽32とを備えている。パイプコイル31の入口端311は、第2管路202の終端と接続され、パイプコイル31の出口端312は、第3管路203の始端と接続されている。また、水槽32には水入口321と水出口322とが設けられ、冷却水を水槽32に循環させることで高温のパイプコイル31(被検査オイル)を水冷できるようになっている。
【0030】
検査手段T(上述の「液体検査装置1」に相当する)は、オイルクーラ30にて冷却された被検査オイルに所定の検査光を透過させることで前記被検査オイルの劣化度合いを判定するものである。この検査手段Tは、サンプリング油槽40と、サンプリング油槽40内に設置される検査ユニット50と、検査ユニット50による測定結果に基づき劣化度合い判定のための演算を行う処理演算部60とを具備している。
【0031】
サンプリング油槽40は、漏油受け台45の底面上に据え付けられ、被検査オイルが受け入れられるオイル供給接続部40inと、検査後の被検査オイルが排出されるオイル排出接続部40outとが備えられている。オイル供給接続部40inには、第2開閉弁23を介して第3管路203の終端が接続されている。また、オイル排出接続部40outには、第3開閉弁24を介して第4管路204の始端が接続されている。なお、漏油受け台45は、平板状のスペーサ46を介してフレーム架台47にて支持されている。
【0032】
図4は検査ユニット50が設置されたサンプリング油槽40を示す一部破断斜視図、図5は図4の側断面図である。サンプリング油槽40は、長方形の長側板401A、401Bと略正方形の短側板402A、402Bと、底板403とから形成された長方形の立体容器である。そして、サンプリング油槽40の長手方向略中央部には仕切り板41が立設されており、これによりサンプリング油槽40の内部は、第1の液槽42と第2の液槽43との2つに区画されている。
【0033】
第1の液槽42は、オイルクーラ30により冷却された被検査オイルを一時的に貯留する液体貯留部の役割を果たす。短側板402Aには、オイル供給接続部40inを通して被検査オイルを受け入れるオイル供給孔421が穿孔されており、該オイル供給孔421から第1の液槽42へ被検査オイルが連続的に供給される。供給された被検査オイルは、第1の液槽42に貯留される。なお、図5の符号OLで示す一点鎖線は、被検査オイルの液面を表している。
【0034】
第2の液槽43には、検査ユニット50が収納されると共に、第1の液槽42から誘油針44(導液手段)を介して被検査オイルが適量ずつ供給される。底板403の第2の液槽43側には、オイル排出接続部40outを通して被検査オイルを排出するオイル排出孔431が穿孔されており、検査ユニット50で検査された後の被検査オイルをエンジン70に戻すために順次排出される。
【0035】
仕切り板41は、その上側辺の中央部に、V字型に切り込まれた溢出部411が形成されている。このV字型溢出部411の最深部412を含む平面が、被検査オイルの貯留高さ限界(図5に示す液面OL)となる。
【0036】
誘油針44は、針金のような棒状部材からなり、V字型溢出部411と、後述する検査ユニット50のブロック51に設けられているオイル通路52の入口部52inとの間を橋絡し、被検査オイルの流通路の一部を構成する。誘油針44の一端側441は、V字型溢出部411の最深部412で支持され、他端側442はU字型に湾曲された状態で入口部52inに対向配置されている。オイル通路52の入口部52inは、V字型溢出部411の最深部412よりも低い高さ位置に設定されており、誘油針44は、入口部52inに向けて下側に傾斜して配置されている。この結果、被検査オイルの液面OLがV字型溢出部411の最深部412まで達したときに、被検査オイルは誘油針44の表面に沿って滴下する態様で、最深部412から入口部52inへ適量ずつ誘導されるようになる。
【0037】
検査ユニット50は、被検査オイルに所定の検査光を照射して劣化診断のための光量データを取得するためのユニットである。この検査ユニット50は、角柱状のブロック51と、このブロック51の内部に形成されているオイル通路52と、温度補正用ブロック55と、これらブロックを搭載する例えば銅板からなる金属基板500と、該金属基板500を温度調節するペルチェ素子56とを含んでいる。
【0038】
図7〜図9に基づき後述するが、ブロック51には、オイル通路52を通過する被検査オイルに直接検査光を照射する発光素子53と、前記被検査オイルを透過した前記検査光を直接受光する受光素子54とが組み付けられる。なお、本実施形態では、異なる2波長の検査光を照射する方式を例示している関係上、ブロック51は、第1波長の検査光の投受光を行わせるための第1ブロック51Aと、第1波長とは異なる第2波長の検査光の投受光を行わせるための第2ブロック51Bとが積層されて成る。
【0039】
図6(a)は、ブロック51(第1ブロック51A)の外観斜視図であり、図6(b)は図6(a)の矢印A方向の側面図である。ブロック51は、角柱状に成形された真ちゅうのような金属からなり、その長手方向に沿ってトンネル状に穿孔された発光素子受容孔511と、長手方向中央付近に上下方向に設けられた受光素子受容孔512と、受光素子受容孔512に隣接して設けられたオイル通路52とを具備している。
【0040】
発光素子受容孔511は、円柱型の空洞からなり、一端側がブロック51の端縁に開口し、他端側が受光素子受容孔512にまで達している。受光素子受容孔512は、矩形の溝孔からなり、ブロック51の上面に開口を有する。オイル通路52(第1ブロック51Aのオイル通路52A)は、ブロック51を上下方向に貫通する筒状の貫通孔からなり、発光素子受容孔511の他端側と受光素子受容孔512の片面との間に挟まれる位置に配置されている。
【0041】
オイル通路52Aは、被検査オイルを所定の流量で通過させるものであって、図6(b)に示すように、入口部52inにオイルの流入を容易とするために形成されたフィレット加工部521と、フィレット加工部521から発光素子受容孔511の上縁に至る上側通路522と、発光素子受容孔511の下縁から下側出口524へ至る下側通路523とからなる。また、オイル通路52Aの中間部(上側通路522と下側通路523との間)として、発光素子受容孔511が利用されている。なお、第2ブロック51Bにも、フィレット加工部を除いて同様なオイル通路が形成されている。
【0042】
図7、図8は、ブロック51(第1ブロック51A)に対する発光素子53(第1発光素子53A)及び受光素子54(第1受光素子54A)の組み付け状態を説明するための図であって、図7は分解斜視図、図8(a)は組み付け状態を示す透視斜視図、図8(b)は上面透視図をそれぞれ示している。発光素子53は、LED等の半導体発光素子チップが透光性を有する樹脂材料で砲弾型にレンズモールドされてなる本体部530と、本体部530から延出されたリード531とから成る。受光素子54は、発光素子53が発する光の波長に感度を有するシリコンフォトダイオード等が透光性を有する樹脂材料で薄肉の箱形にモールドされてなる本体部540と、本体部540から延出されたリード541とから成る。
【0043】
図8に示すように、発光素子53(本体部530)は、ブロック51の発光素子受容孔511へ密に挿入される。また、受光素子54(本体部540)は、その受光面が発光素子53と対向するように、受光素子受容孔512へ密に挿入される。図8(b)に示したように、発光素子53の先端面と受光素子54の受光面との間は、オイル通路52の直径に相当する長さだけ離間して対向されている。従って、オイル通路52を通過しつつある被検査オイルに対して、レンズや光ファイバ等の他の光学系を介することなく、発光素子53から直接検査光を照射し、そして被検査オイルを透過した検査光を受光素子54にて直接受光することが可能とされている。
【0044】
図9(a)は、上述の第1ブロック51Aと、これと同様の構成を有する第2ブロック51Bとの組み付け状態を示す透視斜視図であり、図9(b)は透視側面図である。第2ブロック51Bには、第1発光素子53Aとは異なる波長の検査光を発する第2発光素子53Bと、この検査光を受光する第2受光素子54Bとが収納されている。図9(b)に示したように、第2ブロック51Bにもオイル通路52Bが形成されており、第1ブロック51Aのオイル通路52Aと連通されるように2つのブロックが積層されることで、第1ブロック51Aの上端面を入口部52inとし、第2ブロック51Bの下端面を出口部52outとする1本のオイル通路52が形成されている。
【0045】
第2ブロック51Bのオイル通路52Bは、第1ブロック51Aの下側出口524(図6(b)参照)と対向する入口525から発光素子受容孔511の上縁に至る上側通路526と、発光素子受容孔511の下縁からオイル通路52の出口部52outへ至る下側通路527とからなる。また、オイル通路52Bの中間部(上側通路526と下側通路527との間)として、発光素子受容孔511が利用されている。
【0046】
オイル通路52の出口部52outには、オイル通路52を通過する被検査オイルの流量を適量に調節するための流量調節ネジ528が螺合されている。すなわち、下側通路527の内周壁にはネジ溝が刻設されており、該ネジ溝への螺合度合いを調整することで、オイル通路52を流れる被検査オイルの流量調整が可能とされている。
【0047】
図10も参照して、被検査オイルの流れについて説明する。誘油針44の表面に沿って一端側441から他端側442へ滴下しブロック51まで導かれた被検査オイルは、他端側442のU字型湾曲部下端からオイル通路52の入口部52in(フィレット加工部521)へ滴下される。入口部52inから導入された被検査オイルは、第1ブロック51Aの上側通路522を経由して第1発光素子53Aと第1受光素子54Aとの間の空隙部511Aを満たし、下側通路523を経て下側出口524へ至る。その後被検査オイルは、第2ブロック51Bの入口525へ導入され、上側通路526を経由して第2発光素子53Bと第2受光素子54Bとの間の空隙部511Bを満たし、下側通路527を経て、流量調節ネジ528で流量を規制されながらオイル通路52の出口部52outから排出される。しかる後、被検査オイルは、オイル排出孔431からオイル循環系統20(第4管路204)に戻されるものである(図5、図3参照)。
【0048】
図10に示すように、ブロック51(第1ブロック51A及び第2ブロック51B)は、密接して積層された状態で金属基板500の表面側下端付近に取り付けられている。一方、金属基板500の裏面側下端付近には、温度補正用ブロック55が取り付けられている。この温度補正用ブロック55は、第2ブロック51Bと同様の構成を備える、第3ブロック55A及び第4ブロック55Bからなる。そして、第1発光素子53Aの発光波長を第1波長とするとき、第1波長の参照光を発生する第3発光素子と、この第1波長の参照光を前記オイル通路52のサイズに相当する空気層を介して受光する第3受光素子(いずれも図略)とからなる温度補正用センサ対が第3ブロック55Aに内蔵されている。また、第2発光素子53Bの発光波長を第2波長とするとき、第2波長の参照光を発生する第4発光素子と、この第2波長の参照光を前記オイル通路52のサイズに相当する空気層を介して受光する第4受光素子(いずれも図略)とからなる温度補正用センサ対が第4ブロック55Bに内蔵されている。
【0049】
温度補正用ブロック55とブロック51とがこのような配置関係とされていることから、両者は熱的に結合されている。従って、温度補正用ブロック55の第3発光素子及び第3受光素子による投受光結果、並びに第4発光素子及び第4受光素子による投受光結果を参照することで、ブロック51において検出された透過光量等のデータを外気温の影響を受けないように温度補正して利用できるようになる。
【0050】
金属基板500の裏面側上端付近には、ペルチェ素子56が取り付けられている。このペルチェ素子56は、金属基板500を常温(40℃〜20℃程度)に温度調節することで、ブロック51及び温度補正用ブロック55を可及的に常温に維持させるものである。なお外気温の変動が小さい場合やオイルクーラ30で被検査オイルの冷却効果が十分に担保されている場合は、このペルチェ素子56の使用を省略することができる。また、金属基板500に対する外気温の影響を抑制するために、金属基板500の表面にシリコン樹脂膜等を形成しても良い。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sでは、オイルクーラ30で被検査オイルを冷却した後に、ブロック51へ導くようにしている。さらに、ペルチェ素子56により、ブロック51を常温に維持させる機能も付加されている。従って、潤滑オイル71がエンジン70内で高温になっていたとしても、発光素子53及び受光素子54が影響を受けない温度まで冷却された状態で、被検査オイルを検知部まで導くことが可能となる。
【0052】
先に図2(a)、(b)で説明したように、一般的な発光素子及び受光素子には環境温度により出力特性が変化する。従って、被検査オイルが高温のままで発光素子53及び受光素子54による検知部まで導入された場合、その温度の影響を受けて真の透過光量特性が測定できず、ひいては粘度、塩基価、酸価、不溶分などオイル劣化診断に必要なパラメータを算出できない懸念がある。しかし、本実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sによれば、温度の影響は可及的に抑制されることから、的確なオイル劣化診断を行うことができる。
【0053】
続いて、処理演算部60について説明する。図10は、処理演算部60の構成を示すブロック図である。この処理演算部60は、ドライバ61A〜61D、I/V(電流/電圧)変換部62A〜62D、A/D(アナログ/デジタル)変換部63、CPU(Central Processing Unit)64、通信部65、表示部66、ROM(Read Only Memory)67及びRAM(Random Access Memory)68を備えて構成されている。
【0054】
ドライバ61A〜61Dは、第1ブロック51A、第2ブロック51B、第3ブロック55A及び第4ブロック55Bにそれぞれ備えられている第1発光素子53A、第2発光素子53B、第3発光素子53C及び第4発光素子53Dを、後述するCPU64の測定制御部643から所定のサンプリング周期で与えられる発光制御信号に基づき駆動(発光)させる。発光波長の一例を挙げると、例えば第1発光素子53Aは870nm(第1波長)、第2発光素子53Bは950nm(第2波長)、第3発光素子53Cは870nm(第1波長)、第4発光素子53Dは950nm(第2波長)を選択することができる。
【0055】
I/V変換部62A〜62Dは、第1受光素子54A、第2受光素子54B、第3受光素子54C及び第4受光素子54Dがそれぞれ検査光を光電変換して出力した電流信号を電圧信号に変換する。ここで、I/V変換部62A、62Bから出力される電圧信号は、第1発光素子53A及び第2発光素子53Bから発せられた検査光が被検査オイルを透過した透過光量に応じた電圧信号である。すなわち、被検査オイルの劣化の程度に応じた電圧信号が出力される。一方、I/V変換部62C、62Dから出力される電圧信号は、第3発光素子53C及び第4発光素子53Dから発せられた参照光が空気層を通過しただけの空気透過光量に応じた電圧信号となる。
【0056】
A/D変換部63は、I/V変換部62A〜62Dからそれぞれ出力される電圧信号を取得し、これをデジタル信号に変換してCPU64へ向けて出力する。
【0057】
CPU64は、処理演算部60各部の動作制御を行うもので、機能的に温度補正部641、劣化演算部642及び測定制御部643を備えて構成されている。温度補正部641は、温度補正用ブロック55に対応するI/V変換部62C、62Dからの出力信号を補正用電圧として利用し、検査光の透過光量に応じたI/V変換部62A、62Bからの出力信号をそれぞれの検査光波長(第1波長及び第2波長)において温度補正する演算を行う。すなわち、第1波長が用いられたI/V変換部62Aの出力信号は、同じ第1波長が用いられたI/V変換部62Cの出力信号で補正され、第2波長が用いられたI/V変換部62Bの出力信号は、同じ第2波長が用いられたI/V変換部62Dの出力信号で補正されるものである。
【0058】
劣化演算部642は、I/V変換部62A、62Bからの出力信号に基づいて、被検査オイルの劣化度合いに関するパラメータを求める演算を行う。このパラメータとしては、透過光量若しくは吸光度の低下度合い、あるいは透過光量に基づき求められる粘度、塩基価、酸価、不溶分などを例示することができる。
【0059】
測定制御部643は、所定の測定プログラムに則りドライバ61A〜61D及びI/V変換部62A〜62Dによる測定動作を制御する。具体的には、ドライバ61A〜61D及びI/V変換部62A〜62Dにタイミングパルス等を与え、サンプリング周期毎に第1〜第4発光素子53A〜53Dを発光させると共に、その発光タイミングに同期させて第1〜第4受光素子54A〜54Dから光電変換信号(測定データ)を取得させる。
【0060】
図12は、発光波長として870nm及び950nmの2波長を使用した場合における、エンジン70の運転時間と潤滑オイル71(被検査オイル)の透過光量(受光光量)との関係の測定例を示すグラフである。グラフに示す通り、エンジン70の運転時間が長くなる程、受光光量が低下するようになる。また、870nmと950nmとでは、受光光量の大きさ、傾きが異なることが分かる。劣化演算部642は、このような特性を利用して、劣化度合いに関するパラメータを求める演算を行う。
【0061】
図13は、温度補正部641における温度補正処理を説明するためのグラフである。I/V変換部62A、62Bからの出力電圧は、符号C1で示す特性のように、温度が高くなる程低くなる。一方、温度補正用ブロック55に対応するI/V変換部62C、62Dからの出力電圧も、ブロック同士が熱結合されていることから、符号C2で示す特性のように同じような勾配を示す。従って、符号C1の特性を符号C2の特性で補償することで、符号C3で示すように殆ど温度依存性のない特性を得ることができる。
【0062】
本実施形態では、オイルクーラ30による被検査オイルの冷却、ペルチェ素子56によるブロック51の温度維持に加え、温度補正部641による上記のような温度補正処理も実行している。従って、被検査オイルの保有熱や外気温の影響を高度に除外して、発光素子及び受光素子を用いた被検査オイルの劣化診断測定を行うことができる。
【0063】
図11に戻って、通信部65は、外部の端末機等とデータ通信を行うものであり、例えば劣化演算部642による劣化診断結果を、インターネットを介して遠隔地に存在する管理センター等へ伝送する。表示部66は、液晶ディスプレイ等からなり、例えば劣化演算部642による劣化診断結果を所定の形式で表示する。
【0064】
ROM67は、当該劣化診断装置Sの動作プログラム等を記憶する。RAM68は、A/D変換部63から与えられるデータ信号、劣化演算部642による劣化診断結果等を一時的に格納する。
【0065】
以上の通り構成された本実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sの動作について説明する。エンジン70の運転が開始されると、上流側ポンプ21の駆動も開始され、潤滑オイル71の一部がオイル取り出し孔72から被検査オイルとして抜き出される。抜き出された被検査オイルは、第1管路201、第2管路202を経て、オイルクーラ30へ導かれる。このオイルクーラ30で、被検査オイルは50℃程度以下に冷却される。しかる後、被検査オイルは第3管路203を経て検査手段Tへ送られ、オイル供給接続部40inを通してサンプリング油槽40へ供給される(図3参照)。
【0066】
続いて、図5に示すように、被検査オイルは第1の液槽42に一時的に貯留される。この際、光学測定に悪影響を与えることがある不純物が第1の液槽に沈殿される。そして、被検査オイルの液面OLがV字型溢出部411の最深部412まで達すると、被検査オイルは誘油針44の表面に沿って滴下する態様で、仕切り板41の最深部412からオイル通路52の入口部52inへ適量ずつ誘導される(図10も参照)。
【0067】
その後、被検査オイルは、流量調節ネジ528で流量を規制されながらオイル通路52を通過する。この際、図9(b)に示すように、先ず第1ブロック51Aの第1発光素子53A、続いて第2ブロック51Bの第2発光素子53Bから、それぞれ異なる波長の検査光の照射を受ける。これら検査光は、被検査オイルを透過した後に各々第1受光素子54A及び第2受光素子54Bにて受光される。この受光データに基づき、処理演算部60により被検査オイルの劣化度合いに関するパラメータが算出される。
【0068】
オイル通路52の出口部52outから排出された被検査オイルは、サンプリング油槽40のオイル排出接続部40outからオイル循環系統20の第4管路204へ送られる。そして、下流側ポンプ25の動作により第5管路205を経て、オイル戻し孔73を介してエンジン70に戻される。以下、かかる動作が、エンジン70の運転期間中継続されるものである。
【0069】
以上説明した潤滑オイルの劣化診断装置Sによれば、稼働中のエンジン70の運転を停止することなく、潤滑オイル71の劣化度合いを長期間安定的に、非破壊で監視することができる。すなわち、潤滑オイル71の温度や環境温度の影響を受けて劣化度合いを誤判定するといった不具合を抑制することができる。従って、CGS用のガスエンジンのような定置用エンジン等であっても、通信部65から劣化診断結果を送信させることで、オイル交換時期を遠隔的に且つ的確に判定することができ、結果としてメンテナンス負担の軽減、オイル交換頻度の最適化及びそれに伴う廃油量の低減を図ることができる。また、発光素子53及び受光素子54と潤滑オイル(被検査オイル)とを直接接触させるに等しい構成であるので、光ファイバ等を用いて光学系を構築する必要もなく、センサ構成を簡素化することができる。
【0070】
以上、本発明の各種実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、下記[1]〜[3]のような変形実施形態を取ることができる。
【0071】
[1]図1に示した実施形態では1組の発光素子及び受光素子を用いた例を、図3以下に示した実施形態では、2組の発光素子及び受光素子を用いる2波長方式を例示した。これに限らず、3組以上の発光素子及び受光素子を用いるようにしても良い。
【0072】
[2]上記実施形態では、ブロック13、51にオイル通路52を形成する例を示したが、オイル通路は必ずしもブロック内に形成しなくとも良い。例えば、図3以下に示した実施形態において、オイル循環系統20を構成する管路に、被検査オイルを所定の流量で通過させ得る部分を形成してこれをオイル通路とし、そこに発光素子及び受光素子を対向配置するようにしても良い。
【0073】
[3]図3以下に示した実施形態では、エンジン70を挙げたが、エンジン以外の潤滑オイルを用いる他の機関にも適用可能である。例えば、コンプレッサーやギア装置等に使用されている潤滑オイルの劣化診断にも、本発明に係る液体検査装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る液体検査装置1の全体構成を概略的に示す構成図である。
【図2】(a)は、一般的な受光素子の温度特性を示すグラフ、(b)は、一般的な発光素子の温度特性を示すグラフである。
【図3】本発明に係る液体検査装置が適用された潤滑オイルの劣化診断装置Sの全体構成を概略的に示す構成図である。
【図4】検査ユニット50が設置されたサンプリング油槽40を示す一部破断斜視図である。
【図5】図4の側断面図である。
【図6】(a)は、ブロック51(第1ブロック51A)の外観斜視図であり、(b)は(a)の矢印A方向の側面図である。
【図7】ブロックに対する発光素子及び受光素子の組み付け状態を説明するための分解斜視図である。
【図8】(a)はブロックに対する発光素子及び受光素子の組み付け状態を示す透視斜視図、(b)は上面透視図をそれぞれ示している。
【図9】(a)は、第1ブロック51Aと、これと同様の構成を有する第2ブロック51Bとの組み付け状態を示す透視斜視図であり、(b)は透視側面図である。
【図10】検査ユニット50の側面図である。
【図11】処理演算部60の構成を示すブロック図である。
【図12】2波長を使用した場合における、エンジンの運転時間と潤滑オイル(被検査オイル)の透過光量(受光光量)との関係の測定例を示すグラフである。
【図13】温度補正部における温度補正処理を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0075】
L 被検査液体
1 液体検査装置
11 液体貯留部
12 液体通路
13 ブロック
14 発光素子
15 受光素子
16 制御演算部(演算手段)
17 表示部
18 回収タンク
S 潤滑オイルの劣化診断装置
20 オイル循環系統
30 オイルクーラ30
40 サンプリング油槽
40in オイル供給接続部
40out オイル排出接続部
41 仕切り板
411 溢出部
412 最深部
421 オイル供給孔
431 オイル排出孔
42 第1の液槽
43 第2の液槽
44 誘油針(導液手段)
50 検査ユニット
500 金属基板(温度調節が可能な基板)
51 ブロック
51A 第1ブロック
51B 第2ブロック
52 オイル通路
53 発光素子
53A〜53D 第1〜第4発光素子
54 受光素子
54A〜54D 第1〜第4受光素子
55 温度補正用ブロック
55A 第3ブロック
55B 第4ブロック
56 ペルチェ素子
60 処理演算部
70 エンジン
71 潤滑オイル(被検査液体)
72 オイル取り出し孔
73 オイル戻し孔
T 検査手段(液体検査装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査すべき被検査液体が貯留される液体貯留部と、
前記被検査液体を所定の流量で通過させる液体通路が形成されたブロックと、
前記液体通路に臨んで配置され所定波長の検査光を発生する発光素子と、
前記発光素子に対向するように前記液体通路に臨んで配置され、前記検査光を受光する受光素子と、
前記受光素子の受光量に基づいて、前記被検査液体についての評価パラメータを導出する演算手段と
を具備することを特徴とする液体検査装置。
【請求項2】
前記液体貯留部に貯留された被検査液体を前記液体通路へ導く導液手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の液体検査装置。
【請求項3】
前記液体貯留部を構成する第1の液槽と、前記ブロックが収容される第2の液槽とを備え、
前記第1の液槽には貯留された被検査液体の溢出部が設けられ、
前記ブロックは、前記液体通路が上下方向に延在し、且つ前記液体通路の入口が前記溢出部よりも下方に位置するように前記第2の液槽に配置され、
前記導液手段は、前記溢出部と前記液体通路の入口との間を橋絡し前記被検査液体をその表面に沿って適量誘導する棒状部材からなり、
前記第2の液槽の底面には、前記液体通路を通過した前記被検査液体を回収するための排出口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液体検査装置。
【請求項4】
前記ブロックが、温度調節が可能な基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体検査装置。
【請求項5】
所定の第1波長の検査光を発生する第1発光素子と、その検査光を受光する第1受光素子とからなる第1のセンサ対と、
前記第1波長とは異なる第2波長の検査光を発生する第2発光素子と、その検査光を受光する第2受光素子とからなる第2のセンサ対とを含み、
前記第1のセンサ対が前記液体通路の上流側に、前記第2のセンサ対が前記液体通路の下流側に各々配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体検査装置。
【請求項6】
前記第1波長の参照光を発生する第3発光素子及び前記第2波長の参照光を発生する第4発光素子と、
これら参照光を前記オイル通路に相当する空気層を介してそれぞれ受光する第3受光素子及び第4受光素子とからなる温度補正用センサ対をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項7】
前記被検査液体が潤滑オイルであり、
前記演算手段は、前記潤滑オイルの劣化度合いに関するパラメータを導出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−51678(P2008−51678A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228702(P2006−228702)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(506289756)伸和エンジニヤリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】