説明

液体状態検知センサ

【課題】液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子を備える液体状態検知センサで、素子を包囲するようにその外側に配置された外側包囲部の内側に入り込んだ気泡を、外側に円滑に排出して、気泡による濃度検知に対する悪影響を低減する。
【解決手段】外筒電極の下端寄り部位を延設してなる外側包囲部11bの内側であってゴム状弾性部材80の下向き面80aの下方に、素子110の先端部110bの外側との間に空間が形成されるもので、外側包囲部11bの側壁に気泡排気用の貫通部18を形成する。ゴム状弾性部材の下向き面80aと外周面89とのなす交差稜部のうち、貫通部18に対応する部位に、切欠き部80kを形成した。一方、貫通部18は、切欠き部80kにおける高さHの範囲内で設けた。外側包囲部11bの内側に侵入した気泡Wは、切欠き部80k及び貫通部18を通過して、その外側に排出されるから、悪影響を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の状態を検知する液体状態検知センサに関し、特に、液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子を備える液体状態検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼル機関、例えば、ディーゼルエンジンを搭載した自動車から排出される窒素酸化物(NOx)を還元して無害化する排ガス浄化装置にNOx選択還元触媒(SCR)を用いる場合がある。この装置では、還元剤として尿素水溶液が用いられるが、この装置で窒素酸化物を効果的に還元するには、尿素水溶液が適正な濃度範囲(尿素水溶液中の尿素液度の範囲)であることが必要である。
【0003】
しかし、この尿素水溶液を貯溜する尿素水タンクに適正濃度の尿素水溶液を収容した場合でも、経時変化等に起因して尿素濃度が適正範囲を逸脱してしまうことがある。また、尿素水タンクに、水道水など、適正な尿素濃度の尿素水溶液以外の液体を注入してしまう場合もあり得る。
【0004】
そこで、尿素水タンクに、尿素水溶液の尿素濃度を検知する濃度センサを取り付け、尿素水溶液の尿素濃度が適正範囲から逸脱した場合など、異常時に警告等を発し、排ガス浄化装置における窒素酸化物の還元(浄化)が適切に行えなくなっていることを運転者に知らせるシステムが提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−371831号公報
【特許文献2】WO 2007/004543 A1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体中の特定成分の濃度を検知する液体状態検知センサであって、その検知手段をなす液体濃度検知素子をその液中に液没させてその濃度を検知するものにおいては、次のような解決すべき課題がある。というのは、このような液体濃度検知素子(以下、単に素子とも言う)を用いて、尿素水溶液などの液体における尿素などの特定成分の濃度を検知するに当たっては、液体に含まれる気泡とくに多数の気泡(群)が、測定の妨げとなることがあるという点である。これは、液体中の特定成分の濃度を測定するのに、液体濃度検知素子に気泡が付着していたのでは、液体の濃度を検知するのに気泡の影響が重畳するなどの不具合を生じさせるからである。
【0006】
一方、液体濃度検知素子のうち液中に配置される部分の周囲には、液体の流れの制御や素子の保護等を目的として、液の流動ないし出入りを許容する貫通部(貫通穴)付きの素子保護カバー(プロテクタ)を設ける場合がある。また、このような素子保護カバーに加えて、その貫通部からカバー内に入り込む液が素子に直接衝突するのを防止するなどの目的から、或いは、液体状態検知センサの構成ないし構造上から、液体濃度検知素子又は素子を包囲する素子保護カバーの外側(周囲)に、筒状部材又は環状部材などからなる外側包囲部材を支持部材を介在させて配置する構造としたい場合もある。さらに、液体状態検知センサが、特許文献2のように、導体からなる筒状の外筒電極と、この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、この両電極の間で前記液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル(液位)検知部を備えているものであり、素子が内部電極の先端に取付けられるものでは、液流などから素子をさらに保護するため、外筒電極の先端を延設して、外側包囲部材と同様の役割を担うことになる外側包囲部を形成し、この外側包囲部にて素子を包囲することもある。
【0007】
ところが、このように外側包囲部材又は外側包囲部(以下、外側包囲部ともいう)を設ける場合には、その外側包囲部で包囲される空間(領域)内に、液中に侵入或いは含まれる気泡或いは気泡群(以下、単に気泡とも言う)が滞留することがある。このように外側包囲部内に侵入した気泡は、液の流動或いは揺れに伴って、素子保護カバーの貫通部を通ってその内側に入り込むことがある。その場合には、入り込んだ気泡が、液体濃度検知素子の周囲を取り囲むことになり、その結果として濃度の誤検知を招いたりする。このように、外側包囲部を配置する場合には、その存在ゆえに、その内側に気泡が滞留し易く、結果として濃度検知に悪影響が生じることがあるといった問題があった。
【0008】
なお、このような気泡対策としては、外側包囲部材又は外側包囲部自体の壁面に貫通部を設けて気泡の排出路を設けることが提案される。このようにすれば、その貫通部から外側包囲部の外側に気泡を排出(ないし誘導)できるため、素子保護カバーの有無にかかわらず、気泡が素子に接するのが防止される。しかし、そのような貫通部を設けることは本来、外側包囲部を設ける目的からすれば好ましいものではない。また、単に貫通部を設けたとしても、気泡の円滑な排出は容易でないし、一掃することは達成されない。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子を備える液体状態検知センサにおいて、気泡による濃度検知に対する悪影響を低減できるようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明は、導体からなる筒状の外筒電極と、
この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、
この両電極の間で液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部を備えており、
さらに、前記内部電極の先端部に取付けられたホルダ部材と、
該ホルダ部材の下端から、自身の先端部を突出させた状態でそのホルダ部材に保持されてなる、液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子と、
自身の下向き面が前記ホルダ部材の下端より低位置とならないようにして前記ホルダ部材の外周面に外嵌されてなると共に、前記外筒電極に内嵌されてなる筒状ないし環状をなす支持部材と、を備える液体状態検知センサであって、
前記外筒電極は、前記支持部材の下向き面よりも下方に延びて前記素子の先端部の外側と自身の内側に空間を形成する外側包囲部を有し、
該外側包囲部の側壁には内外に通じる気泡排気用の貫通部が1又は複数形成されて、前記素子がその先端部を下方にして液体中に液没された際に、前記外側包囲部の内側の前記空間にある液体中に侵入した気泡が、前記貫通部を通過して該外側包囲部の外側に排出されるように構成されており、
しかも、前記支持部材における下向き面と外周面とのなす交差稜部のうち、前記外側包囲部の周方向における前記貫通部に対応する部位に、切欠き部が形成されているか、或いは、周方向に沿って面取り部が形成されており、
前記貫通部の少なくとも一部が、前記切欠き部又は前記面取り部における高さの範囲内に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、前記支持部材における下向き面は、全体が平坦面か、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面か、或いは、少なくとも外周縁寄り部位において内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体状態検知センサである。そして、請求項3に記載の本発明は、前記支持部材における前記切欠き部又は前記面取り部が傾斜面取り状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体状態検知センサである。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、前記支持部材の下向き面側であって前記外筒電極の内側には、該支持部材をその下向き面において位置決めするための位置決め板部を有する位置決め部材が取付けられており、
前記位置決め板部は、その外周縁又は外周縁寄り部位のうち、前記外側包囲部に形成されたその周方向における前記貫通部に対応する部位に、気泡が通過可能の切欠き部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体状態検知センサである。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子と、
前記素子の下端に位置する先端部を、自身の下端から突出させた状態で該素子を保持してなるホルダ部材と、
自身の下向き面が前記ホルダ部材の下端より低位置とならないようにして前記ホルダ部材の外周面に外嵌されてなる筒状ないし環状をなす支持部材と、
前記支持部材の下向き面の下方であって前記素子の先端部の外側と自身の内側に空間が形成されるように、該支持部材の外周面に外嵌されてなる筒状又は環状に形成された外側包囲部材と、を備える液体状態検知センサであって、
該外側包囲部材の側壁には内外に通じる貫通部が1又は複数形成されて、前記素子がその先端部を下方にして液体中に液没された際に、前記外側包囲部材の内側の前記空間内にある液体中に侵入した気泡が、前記貫通部を通過して該外側包囲部材の外側に排出されるように構成されており、
しかも、前記支持部材における下向き面と外周面とのなす交差稜部のうち、前記外側包囲部材の周方向における前記貫通部に対応する部位に、切欠き部が形成されているか、或いは、周方向に沿って面取り部が形成されており、
前記貫通部の少なくとも一部が、前記切欠き部又は前記面取り部における高さの範囲内に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明は、前記支持部材における下向き面は、全体が平坦面か、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面か、或いは、少なくとも外周縁寄り部位において内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体状態検知センサである。そして、請求項7に記載の本発明は、前記支持部材における前記切欠き部又は前記面取り部が傾斜面取り状に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体状態検知センサである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の作用ないし効果について、図2〜図4を参照して説明すると、本発明の液体状態検知センサでは、支持部材であるゴム状弾性部材80における切欠き部(又は面取り部)80kと、外側包囲部(以下、外側包囲部材又は外側包囲部ともいう)11bにおける貫通部18との位置関係が、その貫通部18の少なくとも一部が、切欠き部80kにおける高さHの範囲内に存在するように設けられている。このため、本液体状態検知センサの使用過程で、液体中の気泡Wが外側包囲部11bの内側の空間(以下、包囲空間とも言う)に入り込んだとしても、その気泡Wは、外側包囲部材11b内に入って液体中を上昇する過程においてゴム状弾性部材80における下向き面80a(又は位置決め板部152)に突き当り、その下向き面の外周縁に至ると、切欠き部80kに案内され、外側包囲部11bの側壁に形成された貫通部18を通って外側に排出され得る。すなわち、本発明の液体状態検知センサでは、液体中の気泡Wが包囲空間内に入り込んだとしても、その内部の上方に位置するゴム状弾性部材80の下向き面80aのうち、外周に形成された切欠き部80kに案内され、貫通部18を気泡の通過路として外側包囲部11bの外側に排出されるため、気泡Wが包囲空間内に滞留するのが防止される。このように本発明の液体状態検知センサによれば、外側包囲部11b内に入り込んだ気泡が、液体濃度検知素子110の先端部に付着することが防止される。これにより、液体中の特定成分の濃度検知に対する支障の発生防止に効果的である。なお、ここでは支持部材としてゴム状弾性部材からなるものを示したが、支持部材の材質がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0016】
本発明においては、貫通部の少なくとも一部が、前記切欠き部(又は前記面取り部)における高さの範囲内に存在するように設けられていればよい。この場合、気泡の排出性能の点からは、貫通部は、その上端縁が前記切欠き部(又は前記面取り部)における上端縁より上に位置させることが好ましい。さらに、この位置関係に加えて、貫通部の下端縁が前記切欠き部(又は前記面取り部)における下端縁より下に位置させることが好ましい。ただし、貫通部の下端縁が下方に位置するほど、素子を包囲する外側包囲部の本来の目的を損ねることにもなるため、貫通部はこれらを考慮して、その上端縁及び下端縁の位置、さらには形状や寸法を設定するのが好ましい。
【0017】
なお、前記支持部材における下向き面は、請求項2又は請求項6に記載したように、全体が平坦面(水平の平面)か、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面か、或いは、少なくとも外周縁寄り部位において内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面に形成されていると、気泡が外側に円滑に案内される。このような傾斜面に形成することで、下向き面は、円錐形状、円錐台形状などのテーパ形状となる。
【0018】
なお、本発明において、前記支持部材における前記切欠き部又は前記面取り部は、請求項3又は請求項7に記載したように、傾斜面取り状に形成されているのが、気泡の排出性能の点から好ましいが、円弧面取り状に形成してもよい。もっとも本発明の前記支持部材における前記切欠き部又は前記面取り部は、図3に示したような縦断面において、階段状をなしていてもよいなど、その形は限定されるものではない。
【0019】
さらに、本発明の液体濃度検知素子は、少なくとも液体中の特定成分の濃度を検知するセンサであればよい。ただし、この濃度のほか、液体の温度や、液体の有無(液位が下限レベルを下回ったか否かを検知するもの)、或いは液体の種類、或いはこれらを併せて検知するものであってもよい。請求項1〜4に記載したセンサは、内外両電極を有してなるレベル検知部を備えたセンサであり、液位を検知することもできるものであるが、請求項5〜7に記載したセンサは、このようなレベル検知部を備えないセンサである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図11に基づいて説明するが、本実施の形態の液体状態検知センサ100は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液に含まれる尿素の濃度検知素子等からなる濃度検知部に加えて、尿素水溶液のレベル(液位)の検知部(レベル検知部)を備えているものである。すなわち、図1及び図2に示すように、液体状態検知センサ(以下、単にセンサともいう)100は、円筒形状を有する外筒電極10、および、その外筒電極10の内部にて外筒電極10の軸線O方向に沿って設けられた円筒状の内部電極20から構成されるレベル検知部70と、内部電極20の下端側(図1,2下端側)に設けられた濃度検知部30を主体として、以下に詳述するように構成されている。
【0021】
まず、レベル検知部70について説明する。レベル検知部70をなす外筒電極10は金属材料(導体)からなり、軸線O方向に延びる長細い円筒形状を呈している。外筒電極10の外周上における周方向に等間隔となる例えば3本の母線(図示せず)上には、各母線に沿ってそれぞれ複数の細幅のスリット15が断続的に開口されている。また、外筒電極10の下端寄り部位11において、上記スリット15が形成された各母線上には、後述する内部電極20との間に介在される支持部材としてのゴム状弾性部材80の抜け防止のための開口部(円形穴)16が3つ、同寸で同一高さ位置にそれぞれ貫通して設けられている。さらに、外筒電極10の基端部(図示上端)12に近い位置で、スリット15が形成された各母線のうちの1つの母線上には、1つの空気抜き孔19が形成されている。
【0022】
また、外筒電極10の下端寄り部位11は、後述する濃度検知部30をなす液体濃度検知素子(セラミックヒータ)110の先端部(下端部)110bを包囲するように延設されており、本例では素子110の先端部110bを覆って保護する素子保護カバー130ごと、自身の内側に空間を保持して包囲する外側包囲部11bをなしている。この外側包囲部11bは、開口部16の位置より下端側において、軸線O方向(図示下端側)に、本例では素子保護カバー130の下端を超えて延設(延長)されている。この外側包囲部11bは、外筒電極10をなす筒部材にて形成されており、その図示下端10aは開口されている。この外側包囲部11bのうち、抜け防止のための3つの開口部(円形穴)16の周方向における中間位置の側壁には、詳しくは後述するが、外側包囲部11bが液没された際に、外側包囲部11bの内外に気泡を通過可能な貫通部(円形穴)18が3つ、同寸で同一高さ位置にそれぞれ貫通して設けられている。ただし、この高さ位置は、開口部16より下に位置するように設定されている。なお、詳細は後述するが、この貫通部(円形穴)18は、図3及び図4に示したように、その下端縁18aが本形態ではゴム状弾性部材80の下向き面80aと略一致する位置に設定されている。
【0023】
他方、外筒電極10は、その図示上端である基端部12が、金属製の取付部(取付け部材)40の下部中央に下向きに突出する筒状(円筒状)の電極支持部41の外周に嵌合(係合)した状態で溶接されている。取付部40は尿素水タンク(図示せず)にセンサ100を固定するための取付けフランジとして機能するところであり、取り付けボルトを挿通するための取り付け孔(図示せず)が鍔部42に形成されている。また、取付部40の鍔部42を挟んで電極支持部41の反対側(図示上側)には、センサ100と外部回路(図示せず)との電気的な接続を行うために設けられた中継用の回路基板60などを収容する収容部43が立設形成されている。
【0024】
回路基板60は、収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示せず)上に載置されている。収容部43はカバー45に覆われ保護されており、そのカバー45は、鍔部42に固定されている。また、カバー45の側面にはコネクタ62が固定されており、コネクタ62の接続端子(図示せず)と回路基板60上の電極端子とが配線ケーブル61によって接続されており、このコネクタ62を介し、回路基板60と外部回路(図示せず)との接続が行われている。
【0025】
また、取付部40における電極支持部41の内周面(孔)46は収容部43内に開口されており、この孔46内に、内部電極20の基端部22が挿通されている。本実施の形態の内部電極20は軸線O方向に延びる長細い円筒形状をした金属材料からなっている。なお、この内部電極20の外周面上には、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁性被膜23が形成されている。後述するが、この内部電極20と外筒電極10との間で、尿素水溶液のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部70が構成されている。
【0026】
この内部電極20の軸線O方向の図示上端側の基端部22の外周には、内部電極20を取付部40に固定するためにフランジ状をなすパイプガイド55が固定されており、電極支持部41における孔46内に配置された筒状のインナーケース50の内側に配置され、パイプガイド55を介して吊下げ状に係合されている。すなわち、このパイプガイド55は、内部電極20の基端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材(吊下げ部)である。一方、インナーケース50は内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように内部電極20を位置決め支持する鍔付き筒状の樹脂製部材であり、下端側が取付部40の電極支持部41の孔46に内挿されている。そして、このインナーケース50の上端部には径方向外側に向かって突出する鍔部51が形成されており、インナーケース50が電極支持部41に係合される際には、収容部43側から電極支持部41の孔46に挿通され、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、インナーケース50が孔46内を通り抜けることが防止されている。内部電極20は、収容部43側からインナーケース50の内側に挿通されており、パイプガイド55が鍔部51の上面に当接することで、脱落が防止されている。
【0027】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、Oリング53とOリング54とが設けられており、その外周と取付部40の孔46との間の隙間、そしてその内周と内部電極20の基端部22の外周との間の隙間をそれぞれ密閉している。これにより、センサ100が尿素水タンク(図示せず)の天板又は上蓋に取り付けられた際に、尿素水タンクの内部と外部とが収容部43を介して連通しないようにその水密性および気密性が保たれている。なお、取付部40の鍔部42の下端側の面(図1下面)には図示せずの板状のシール部材が装着され、センサ100を尿素水タンクに取り付けた際に、鍔部42と尿素水タンクとの間の水密性および気密性が保たれるようになっている。
【0028】
なお、内部電極20の取付部40への組み付けは、図1に示したように、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧されることによっている。ただし、押さえ板56は、パイプガイド55との間に絶縁性のある押さえ板57を挟み込み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58による締付けによって収容部43内に固定されている。これにより、内部電極20が電極支持部41に固定されている。この固定に使用している押さえ板56,57には中央に孔59が開口されており、内部電極20の電極引出線52と、後述する液体濃度検出素子110との電気的な接続を行う2本のリード線90(図1では一方のリード線90のみを表示している。)を内包する2芯のケーブル91とが挿通され、それぞれ回路基板60上のパターンに電気的に接続されている。回路基板60のグランド側の電極(図示せず)は取付部40に接続されており、これにより、取付部40に溶接された外筒電極10がグランド側に電気的に接続されている。
【0029】
さて、次に濃度検知部30について説明するが、この濃度検知部30は、内部電極20の下端部21に設けられている(図1、図2参照)。具体的には次のようである。濃度検知部30は、本例では尿素水溶液中の尿素の濃度検出を行う液体濃度検出素子(セラミックヒータ)110と、この液体濃度検出素子110をその先端部(下端部)110bを突出させた状態で保持すると共に、内部電極20の下端部21に取付けられた絶縁性樹脂製のホルダ部材120などから構成されている。ただし、本形態では、このホルダ部材120の下端から突出する液体濃度検出素子110の先端部110bは、素子保護カバー130により包囲されて保護されている。素子保護カバー130の詳細は後述する。
【0030】
このうち液体濃度検出素子110は、図5に示したように、絶縁性セラミックからなる矩形板状のセラミック基体111上にPtまたはWを主体とするヒータパターン115を形成し、対となる矩形板状のセラミック基体(図示せず)で挟んだ状態でヒータパターン115を埋設状に形成したものである。ここでは発熱抵抗体114を構成するパターンの断面積を、電圧印加のための両極となるリード部112,113のパターンよりも小さくするようにして、通電時、主に発熱抵抗体114において発熱が行われるようにしている。また、リード部112,113の両端には、それぞれセラミック基体111の表面に貫通するビア導体またはスルーホール導体(図示せず)が設けられており、2本のリード線90との接続を中継する2つの端子119(図2では一方のみを表示している。)のそれぞれと電気的に接続されている。
【0031】
また、液体濃度検出素子110を支持する絶縁性樹脂製のホルダ部材120は、図2等に示したように、同心で、大径をなす大径円筒部122と小径をなす小径円筒部121との径違いの円筒状に形成されており、その大径円筒部122の内側に内部電極20の下端部21を挿入させてその外周を覆っている。なお、本形態では、このようにホルダ部材120を内部電極20の下端部21に取付けており、詳しくは後述するが、このホルダ部材120を介して、環状のゴム状弾性部材80の内側にて内部電極20の下端部21を弾性的に支持している。また、このホルダ部材120における大径円筒部122と小径円筒部121とを接続する部位の外周面は下端に向かって縮径するテーパー状の段部(テーパ部)123とされている。そして、ホルダ部材120の下端寄り部位をなす小径円筒部121の外周面には、周方向に等角度間隔で4箇所、正面視において略矩形をなす凹部124が形成(凹設)されている。また、ホルダ部材120の小径円筒部121の下端(面)125の外周寄り部位には上向きにテーパが付されたテーパ面を有している。なお、ゴム状弾性部材80の下向き面80aは、ホルダ部材120の下端(面)125より低位置とならない位置に保持されている。
【0032】
一方、ホルダ部材120の内周面は、小径円筒部121、段部123、そして大径円筒部122に向けて、段付き状に拡径する横断面円形に形成されている。ただし、小径円筒部121の下端面125には、液体濃度検出素子110の先端部110bが略隙間なく突出可能に軸線O方向から見て(横断面において)矩形をなす開口126が形成されている。この開口126の横断面における矩形の短辺及び長辺は、それぞれ液体濃度検出素子110の厚み及び幅の各寸法に対応するように設定されている。そして、素子110は、長手方向のリード部112,113(図5参照)側を小径円筒部121内に挿入し、発熱抵抗体114の埋設された先端部110b側をホルダ部材120の下端面125から突出(露出)させ、その状態で、接着剤又は樹脂129を小径円筒部121の内周面127内に充填して固化させることにより、液体濃度検出素子110はホルダ部材120の開口126内にシールを保持して固定されている。
【0033】
他方、大径円筒部122の内径は、内部電極20の下端部21の外径より若干大きく構成されており、その内周面128には本形態では2つの凹溝128bがその周方向に形成されている。しかして、このようなホルダ部材120が大径円筒部122側から内部電極20の下端部21に外嵌状に装着されている。ただし、その2つの凹溝128bに装填されたそれぞれのシールリング(例えばゴム製のOリングパッキン)140を介して、その内周面128と内部電極20の外周面との間のシールが確保され、内部電極20の内部にこの間を通って測定対象をなす液が侵入することが防止されている。また、ホルダ部材120の段部123の内周面には、環状の棚段部128cが形成されており、ホルダ部材120が内部電極20の下端部21に装着された状態において、その下端部21の端面21bがこの棚段部128cに当接して軸線O方向の位置決めがされている。なお絶縁性被膜23は、内部電極20の外周面における下端部から、上端側の基端部22にてOリング54が配置される位置にかけて形成されており、尿素水タンク(図示せず)内にてレベル検知部70が尿素水溶液に浸漬されても、内部電極20が尿素水溶液に直接接触することがないようにされている。
【0034】
なお、ホルダ部材120の内部電極20への装着前において、液体濃度検出素子110の端子119にはケーブル91の2本のリード線90の芯線がそれぞれ加締めまたは半田付けにより接合される。そして、その装着状態において、絶縁性の保護部材95により、端子119とリード線90とが接合部位ごと覆われて保護されている。さらに、この2本のリード線90は筒形状の内部電極20内を挿通され、上記回路基板60に接続されている。
【0035】
また、本例では、ホルダ部材120の下端側には、液体濃度検出素子110の下端部の周囲を覆って保護する素子保護カバー130がその上部を外嵌状にして取付けられている。この素子保護カバー130は、例えば金属板製で有底円筒形状に形成されている。また、素子保護カバー130の胴部133の外周上にて、本形態では周方向に等間隔となる4本の母線上に、それぞれ2つの円形に開口された測定対象をなす液の流通孔135が形成されている。そして、底部132にはその中心に同様に開口された流通孔136が形成されている。このような素子保護カバー130は、その胴部133の内径が、上記したホルダ部材120における小径円筒部121の外径と同じか若干大きくなるように設定されている。そして、素子保護カバー130は、その胴部133のうち、ホルダ部材120に外嵌される基端(上端)又は基端寄り部位であって、周方向に等角度間隔で4箇所の部位には、その内側に下向き突出する凸部(舌片状の爪)137が設けられており、弾性変形してホルダ部材120における凹部124に嵌合して、ホルダ部材120に抜け止め状に、しかも軸線O回りに回転不能とされている。
【0036】
他方、ゴム状弾性部材80は、自身の下向き面80aがホルダ部材120の下端125より低位置とならないように、ホルダ部材120の外周面に外嵌されているが、同時に、その外周面89を外筒電極10の下端寄り部位11の内周面に内嵌している。これにより、内部電極20と外筒電極10とは、その下方において相互に支持しあう形を成している。ただし、ゴム状弾性部材80は、本形態では、図6、図7に示すように、それ自体全体が筒状又は環状をなすように構成されているが、その内周面は、素子保護カバー130の胴部133の外周面のうち、凸部137に対応する部位と、素子保護カバー130を避けたホルダ部材120の大径円筒部122の外周面とに、軸線O方向の先後に跨るようにして、その胴部133と大径円筒部122との外周面に締り嵌め状に取付けられるように、内径が径違いの筒状をなしている。そして、下端側の円筒部の内周面81が小径をなし、上端側の円筒部の内周面82が大径をなしている。小径の内周面81は、その内径が素子保護カバー130の胴部133の外径より若干小さくされており、大径の円筒部の内周面82は、その内径がホルダ部材120の大径円筒部122の外径より若干小さくされており、両者をテーパー状の内周面83にて接続している。ただし、この内周面83は、ホルダ部材120に外嵌される前は、若干、凸となす円弧状を呈している。
【0037】
このように、ゴム状弾性部材80の内周側の面は、ホルダ部材120および素子保護カバー130の外周面が締り嵌め状に嵌合するように形成された内径の異なる2つの内周面81,82と、両者を接続するテーパー状の内周面83とから構成される。ただし、その内周面82、83上で、外周面89上にて周方向に等間隔となる3本の各母線に対応する位置には、各内周面82,83上を連続する溝部84がそれぞれ溝設されている(図6,7参照)。
【0038】
また、本形態のゴム状弾性部材80は、その溝部84に対応する外周面89上であって、周方向に等間隔となる3本の母線上に、外筒電極10の各開口部16にそれぞれ嵌合(係合)し、抜け防止及び回転防止として機能する突起部87が設けられている。本形態では、この突起部87は、正面は略円形とされているが、側面視においては、下端側に向かって高さが高くなる(突出量が大きくなる)鋸歯(又は人の鼻)形状を呈している。また、外周面89の周方向において各突起部87間には、それぞれ軸線O方向に沿った複数(本実施の形態では5本)の溝部88が溝設されている。しかして、このようなゴム状弾性部材80は、外筒電極10の内側へその下端10a側から圧入され、ホルダ部材120における小径円筒部121に嵌合された素子保護カバー130を下端側の円筒部の内周面81に臨ませると共に、外周面89の突起部87を外筒電極10の各開口部16にそれぞれ嵌合させている。これにより、内部電極20は外筒電極10の下端寄り部位において弾性的に支持されている。
【0039】
他方、このようなゴム状弾性部材80における下向き面80aと外周面89とのなす交差稜部には、周方向に沿って微小なアールの面取りが付与されているが、その交差稜部のうち、その周方向の各突起部87の中間に位置する部位には、部分的に切り欠かれてなる切欠き部80kが設けられている。これにより本形態では、ゴム状弾性部材80が外筒電極10の下端寄り部位に嵌合されている状態において、外側包囲部11bの周方向における貫通部18に対応する部位に切欠き部80kが設けられている。ただし、その切欠き部80kは所定の幅で傾斜面取り部をなすように形成されている。そして、本形態では、図3、図4に示したように、その切欠き部80kの下端縁(本形態では下端面80aと同位置)が貫通部18の下端縁18aと略一致し、しかも、切欠き部80kの上端縁80bが、貫通部18の上端縁18bと略一致するような位置関係となるように設定されている。これにより、切欠き部80kと貫通部18を介して、外側包囲部11bの内外に流路が形成されている。なお、本形態では、3箇所の貫通部18に対応する位置で、各切欠き部80kをなすものとして説明したが、このような切欠き部80kに代えて、周方向に沿って、その全体に面取り部を設けてもよいし、3箇所の貫通部18に対応するように断続的に、そのような面取り部を設けてもよい。
【0040】
ただし、本形態では、このように外筒電極10の内側に取り付けられたゴム状弾性部材80の下向き面80a側であって外筒電極10の内側(外側包囲部11bの内側)には、図2に示したように、このゴム状弾性部材80をその下向き面80a側において位置決めするための位置決め板部152を有する位置決め部材150が取付けられている。この位置決め部材150は、図2及び、図8、図9に示したように形成されている。すなわち、この位置決め部材150は、環状をなす円形板における外周縁を、等角度間隔で3箇所、接線方向に平行に直線状にカットしてなる切欠き部153を有する位置決め板部152と、その外周のうちの切欠き部153のない部位においてその位置決め板部152と略直角で下端側に延びる3つの脚部154と、その脚部154の下端において外向きに突出するフック156とを有している。各フック156は、脚部154の下端の中央に設けられており、このフック156を外筒電極10における外側包囲部11bの下端10aに係合させて軸線O方向の位置決めをしつつ、その位置決め板部152にてゴム状弾性部材80の下向き面80aを支持して位置決めしている。
【0041】
この位置決め部材150の固定は、脚部154を外筒電極10における外側包囲部11bの下端10a寄り部位に溶接することによっている。また、この固定においては、位置決め部材150の切欠き部153が、外側包囲部11bの周方向の貫通部18に対応する位置に設定されており、図2に示したように、外側包囲部11b内に侵入した気泡Wが、位置決め板部152の切欠き部153及びゴム状弾性部材80の切欠き部80kを通過して貫通部18に至り、外側包囲部11bの外側に排出されるように構成されている。
【0042】
なお、位置決め板部152の中央には円形穴152aが設けられており、ホルダ部材120の下端部に取付けられた素子保護カバー130の胴部133を挿通させている。また、この位置決め板部152は、外径が外筒電極10の内径より小さ目とされ、脚部154は外筒電極10の軸線方向にその内周面に沿うように設定されている。
【0043】
また、本形態の位置決め部材150には、平面視において前記した円形穴152aを閉塞するような底板157を脚部154の下端寄り部位に水平に備えている。ただし、この底板157は、その周縁において等角度間隔で3箇所、それぞれ「く」の字状に上向き屈曲形成された取付け片158を備えており、各取付け片158を各脚部154の上端寄り部位の内面に溶接により固定されている。この底板157は、液が外側包囲部11b内に下から上向きに流動する際、その液流が素子保護カバー130の底の流通孔136から素子110に直撃するのを防止するための役割を果たしている。しかして、このような位置決め部材150は、ゴム状弾性部材80を外筒電極10に取付けた後に、外筒電極10の下端10a側から内側に配置して、フック156を外筒電極10の下端10aに係合させ、その状態で、各脚部154を外筒電極10に例えば抵抗溶接で固定し、これによってゴム状弾性部材80の下向き面80aを支持している。
【0044】
上記した構成の本形態のセンサ100においては、次のような特有の作用効果が得られる。すなわち、このようなセンサ100は、図示しないタンクの例えば天板に、素子110が下端に位置するようにして垂下状に取り付けられ、タンク内の液体(尿素水溶液)中に両電極10,20及び素子110が液没させられる。各検知原理の詳細は後述するが、液位は両電極10,20の間で前記液体のレベルに応じて静電容量が変化することで検知される。また、液体中の尿素の濃度は液体の熱伝導率が異なることに基づいて検知される。そして、この濃度の検知においては、外側包囲部11bで包囲される空間(領域)内の液中に気泡が侵入して、液の流動等に伴って、素子保護カバー130の流通孔135、136を通ってその内側に入り込むと、入り込んだ気泡が、液体濃度検知素子110の周囲を取り囲むことになり、その結果として濃度の誤検知を招いたりする。
【0045】
ところが、本形態のセンサ100では、図2に示したように、このように外側包囲部11bの内側に液中の気泡Wが入り込んだとしても、その気泡Wは外側包囲部11bの側壁に設けられた気泡排出用の貫通部18から円滑にその外側に排出させることができる。すなわち、本形態のセンサ100では、ゴム状弾性部材80の下向き面80aと外周面89との交差稜部に切欠き部80kが設けられている。また、この切欠き部80kは、位置決め部材150における位置決め板部152の切欠き部153と、外側包囲部11bの気泡の排出用の貫通部18に対応する位置にある。しかも、貫通部18は上記したように切欠き部80kの高さHに略一致する位置関係において設けられている(図2〜図4参照)。このため、液体中の気泡Wが外側包囲部11bの内側(空間)に入り込んだとしても、その気泡Wは、外側包囲部11b内にて上昇する過程においてゴム状弾性部材80における下向き面80a又は位置決め板部152に当り、それらの外周縁側に至ると、切欠き部153及び切欠き部80kに案内され、外側包囲部11bの貫通部18を通ってその外側に排出される。このため、外側包囲部11b内に入り込んだ気泡Wが、液体濃度検知素子110の先端部110bに接触することが防止されるから、液体中の特定成分の濃度検知に対する支障の発生防止に効果的である。なお、本形態では、気泡の一部はゴム状弾性部材80に設けられた流通路85を通じて外筒電極10の内側に至り、スリット15からもその外側に排出される。
【0046】
上記形態では、ゴム状弾性部材80における下向き面80aと外周面89とのなす交差稜部のうち、外側包囲部11bの周方向における貫通部18に対応する部位に切欠き部80kが形成されているものとしたが、本発明では上記もしたように、このような部分的な切欠き部80kに代えて、交差稜部の周方向に沿う全体に面取り部を設けてもよい。ただし、この場合の面取り部は周方向の全体でなく、周方向の一部又は複数部位に断続的に設けてもよい。なお、面取り部を周方向に沿ってその一部に設けたものは、切欠き部ともなる。
【0047】
なお、ゴム状弾性部材80における切欠き部又は面取り部と、外側包囲部11bにおける貫通部18との高さH上の位置関係は、前記例では上下の各端縁が一致するものとして例示したが、本発明においては、貫通部の少なくとも一部が、切欠き部又は面取り部における高さの範囲内に存在するように設けられていればよい。因みに、これを模式的に表すとその代表例としては、図10のA〜Dに示したような4つの場合に分けられる。すなわち、同図−Aは、貫通部18の全部が、切欠き部80kにおける高さHの範囲内に存在する場合である。同図−Bは、貫通部18の下端縁18aが、切欠き部80kにおける高さHの範囲内に存在し、上端縁18bが、切欠き部80kにおける上端縁80bより上位に位置する場合である。同図−Cは、貫通部18の上端縁18bが、切欠き部80kにおける高さHの範囲内に存在し、下端縁18aが、切欠き部80kにおける下端縁より下位に位置する場合である。そして、同図−Dは、貫通部18の上端縁18bが、切欠き部80kにおける上端縁80bより上位に位置し、下端縁18aが、切欠き部80kにおける下端縁より下位に位置する場合である。気泡の排出性の点からは、上記もしたように、同図−Dに示したようにするのが好ましいが、素子110に対する液の直撃を防止する観点からは、同図−A又はBに示した位置関係とするのが好ましい。
【0048】
また、上記形態では、ゴム状弾性部材80における下向き面80aを、切欠き部80kを除いて平坦面としたが、これは、内側(中心)から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面か、或いは、少なくとも外周縁寄り部位において、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面に形成してもよい。気泡の排出性の点からは、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面とするのが好ましい。すなわち、ゴム状弾性部材80における下向き面80aは、気泡の排出性の点からは、円錐又は円錐台等の形状とするのが好ましい。この場合、上記形態のように、位置決め部材を設ける場合には、その位置決め板部も、ゴム状弾性部材80における下向き面に倣う形状とするのが好ましい。
【0049】
なお、上記した液体状態検知センサ100が尿素水タンク(図示せず)に取り付けられて使用されるときのセンサ内における液体の流れないし動きについて図2を参照して説明する。図2に示すように、外筒電極10内には、ゴム状弾性部材80よりも軸線O方向下端側のB部と、上端側のC部とに、それぞれ外筒電極10の軸線O方向最下端部の開口とスリット15とを介して尿素水溶液が流入する。また、素子保護カバー130内のD部には、液体の流通孔135,136を介してB部より尿素水溶液が流入する。
【0050】
次に、上記した液体状態検知センサ100により、尿素水溶液のレベルおよび尿素の濃度を検知する原理について説明する。まず、図11を参照し、レベル検知部70において尿素水溶液のレベルを検知する原理について説明する。図11は、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図である。
【0051】
液体状態検知センサ100は、尿素水溶液を収容した尿素水タンク(図示せず)に、その底壁側に外筒電極10および内部電極20の下端側を向けた状態で組み付けられる。つまり液体状態検知センサ100のレベル検知部70は、尿素水タンク(図示せず)内で容量の変化する尿素水溶液の変位方向(尿素水溶液のレベルの高低方向)を軸線O方向とし、外筒電極10および内部電極20の下端側が尿素水溶液の容量の少ない側(低レベル側)となるように、尿素水タンク(図示せず)に組み付けられる。そして、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間の静電容量を測定し、両者間に存在する尿素水溶液が軸線O方向においてどれだけのレベルまで存在しているか検知している。これは周知のように、径方向の電位の異なる2点間において、その径の差が小さくなるほど静電容量の大きさが大きくなることに基づく。
【0052】
すなわち、図11に示すように、尿素水溶液で満たされていない部分においては、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、外筒電極10の内周面と絶縁性被膜23との間に介在する空気層の厚みに相当する距離(距離Fで示す)と、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離(距離Gで示す)との合計の距離(距離Eで示す)となる。一方、尿素水溶液が満たされた部分において、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、尿素水溶液が導電性を示すため外筒電極10と尿素水溶液との電位がほぼ等しくなることから、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離Gとなる。
【0053】
換言すれば、尿素水溶液で満たされていない部分におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がFで空気を誘電体(不導体)とするコンデンサの静電容量と、電極間の距離がGで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサとを直列に接続したコンデンサの合成の静電容量といえる。また、尿素水溶液で満たされた部分におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がGで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサの静電容量といえる。そして両者を並列に接続したコンデンサの静電容量が、レベル検知部70全体の静電容量として測定されることとなる。
【0054】
ここで、絶縁性被膜23を挟む電極間の距離Gと比べ、空気層を挟む電極間の距離Fは大きく構成されているため、空気を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量は、絶縁性被膜23を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量よりも小さい。このため、尿素水溶液で満たされていない部分の静電容量の変化よりも尿素水溶液で満たされた部分の静電容量の変化の方が大きく、外筒電極10および内部電極20からなるコンデンサ全体としての静電容量は、尿素水溶液のレベルに比例する。なお、本実施の形態では、尿素水溶液のレベル検知を回路基板60に搭載したマイクロコンピュータを含むレベル検知回路で行っており、レベル検知回路にて得られたレベル情報信号を、コネクタ62を介して外部回路(例えば、ECU)に対し出力している。外部回路は、入力されるレベル情報信号に基づき、尿素水溶液のレベルが適正か否かを判定し、適正では無い場合に運転者のその旨を通知する処理を適宜行う。
【0055】
次に、液体性状検知部30を構成する液体濃度検出素子110において、尿素水溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知する原理について説明する。一般に、液体に含まれる特定成分の濃度によって、液体の熱伝導率が異なることが知られている。つまり、発熱抵抗体を用い、その周囲の液体を一定時間加熱した場合、濃度の異なる液体では温度上昇率が異なってくる。また、発熱抵抗体に定電流を流した場合に、発熱抵抗体の周囲の温度の上昇に比例して、発熱抵抗体の抵抗値が上昇することも知られている。このことから発熱抵抗体を用い、その周囲の液体を一定時間加熱した場合に、発熱抵抗体の抵抗値変化の度合いが求まれば、周囲の液体の温度変化の度合いが求まり、液体中の特定成分の濃度を得ることができる。
【0056】
本実施の形態の液体状態検知センサ100では、発熱抵抗体114に定電流を流すように構成されており、発熱抵抗体114の両端には自身の抵抗値の大きさに応じた検出電圧Vdが発生する。なお、発熱抵抗体114の一端の電位をPinとし、発熱抵抗体114の他端の電位をPoutとしたとき、検出電圧Vdは、電位Pinと電位Poutの差分で求められる。具体的には、まず、発熱抵抗体114への通電開始直後の検出電圧Vdを測定し、一定時間後(例えば700ms後)に、再度検出電圧Vdの測定を行う。そして、予め実験等により作成したテーブル(図示せず)を用い、上記2つの検出電圧Vdの差分値をパラメータとして、尿素水溶液の濃度の決定を行っている。なお、本実施の形態では、尿素水溶液のレベル検知と同様に、尿素水溶液の濃度検知(算出)を回路基板60に搭載したマイクロコンピュータを含む濃度検知回路で行っており、濃度検知回路にて得られた濃度情報信号を、コネクタ62を介して外部回路(例えば、ECU)に対し出力している。外部回路は、入力された濃度情報信号に基づき、尿素水溶液の濃度が適正範囲にあるか否かを判定し、適正範囲に無い場合に運転者にその旨を通知する処理を適宜行う。
【0057】
なお、上記の本実施の形態では、液体濃度検出素子110の発熱抵抗体114とリード部112,113とは同一の材料を用いパターンの断面積を異ならせたことによって主に発熱抵抗体114で発熱が行われるようにしたが、それぞれの材質を異ならせてもよい。
【0058】
さて、次に上記したセンサとは異なる本発明のセンサについて図12に基づいて説明する。上記形態では、レベル検知部70を備えたセンサの実施形態であったのに対し、本例は、そのようなレベル検知部を備えないで、液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子のみを設けてなるセンサ200である。図12は、その一例を示す要部断面図であるが、このものは、図2との関係で言うと、レベル検知部を形成ないし構成する手段を除去した点が相違するのみであるため、その相違点のみ説明し、同一の部位には同一の符号を付すに止める。
【0059】
すなわち、このセンサ200は、上記形態における外筒電極10及び内部電極20を除去し、外筒電極10の下端部寄り部位に延設してなる外側包囲部11bの代わりに、円筒状の独立の外側包囲部材11bを設けると共に、内部電極20に代えて、上下に延びる単なる円筒部材20の先端部に、上記したのとまったく同様にして素子110を設けたものである。より具体的には、外筒電極10を図2において、ゴム状弾性部材80の上端部において切断してその上部を除去するとともに、内部電極20に代えて、上下に延びる単なる円筒部材20としたものである。しかして、このセンサ200は、その液体濃度検知素子100を含む部位を液没して、その濃度の検知に供されるが、その使用過程において外側包囲部材11bの内側に侵入した気泡Wは上記した形態の場合と同様にして円滑にその外側に排出される。
【0060】
なお、液体濃度検出素子110は、上記もしたように、液体に含まれる特定成分(例えば、尿素)の濃度検出以外に、液体の温度や液体の下限レベルの検知を検出するために用いられてもよい。例えば、液体濃度検出素子110にて液体の温度を検出する場合には、発熱抵抗体114に定電流を流し始めた直後の当該発熱抵抗体114の抵抗値の大きさ(より詳細には、発熱抵抗体114の両端に生じる検出電圧Vdの大きさ)に基づき、液体の温度を検出することができる。発熱抵抗体114の通電直後の抵抗値は、液体の温度に対応した値を示していることから、このような手法により液体の温度を検出することができるのである。また、液体濃度検出素子110の周囲に液体が存在する場合と存在しない場合とでは、発熱抵抗体114の抵抗値の変化挙動が大きく異なることから、この違いを利用して液体の下限レベルの検知を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の液状態検知センサの実施の形態を示す縦断正面図。
【図2】図1の液状態検知センサの先端部(下端部)の拡大図。
【図3】図2のA部拡大図。
【図4】図3を矢印Bから見た図。
【図5】液体濃度検知素子(セラミックヒータ)のヒータパターンを示す模式図。
【図6】図1のセンサに使用した支持部材としてのゴム弾性部材の斜視図。
【図7】図6の支持部材としてのゴム弾性部材の説明図であって、Aは正面図(側面図)、Bは平面図、CはBの中央水平断面図、Dは底面図。
【図8】図1のセンサに使用した位置決め部材の斜視図。
【図9】図8の位置決め部材の説明図であって、Aは正面図(側面図)、Bは平面図、CはBの中央縦断面図、Dは底面図。
【図10】貫通部と、支持部材としてのゴム弾性部材の切欠き部との高さ関係を示す説明図。
【図11】外筒電極と内部電極とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図。
【図12】本発明の液状態検知センサの別例の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0062】
10 外筒電極
11b 外側包囲部又は外側包囲部材
18 気泡排気用の貫通部
18b 貫通部の上端縁
18a 貫通部の下端縁
20 内部電極
70 レベル検知部
80 ゴム状弾性部材(支持部材)
80a ゴム状弾性部材の下向き面
80c ゴム状弾性部材における下向き面と外周面とのなす交差稜部
80k ゴム状弾性部材における切欠き部
89 ゴム状弾性部材の外周面
100 液体状態検知センサ
110 液体濃度検知素子
110b 液体濃度検知素子の先端部
120 ホルダ部材
125 ホルダ部材の下端
150 位置決め部材
152 位置決め板部
153 位置決め板部における気泡が通過可能の切欠き部
O 軸線
H 切欠き部における高さ
W 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体からなる筒状の外筒電極と、
この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、
この両電極の間で液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部を備えており、
さらに、前記内部電極の先端部に取付けられたホルダ部材と、
該ホルダ部材の下端から、自身の先端部を突出させた状態でそのホルダ部材に保持されてなる、液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子と、
自身の下向き面が前記ホルダ部材の下端より低位置とならないようにして前記ホルダ部材の外周面に外嵌されてなると共に、前記外筒電極に内嵌されてなる筒状ないし環状をなす支持部材と、を備える液体状態検知センサであって、
前記外筒電極は、前記支持部材の下向き面よりも下方に延びて前記素子の先端部の外側と自身の内側に空間を形成する外側包囲部を有し、
該外側包囲部の側壁には内外に通じる気泡排気用の貫通部が1又は複数形成されて、前記素子がその先端部を下方にして液体中に液没された際に、前記外側包囲部の内側の前記空間にある液体中に侵入した気泡が、前記貫通部を通過して該外側包囲部の外側に排出されるように構成されており、
しかも、前記支持部材における下向き面と外周面とのなす交差稜部のうち、前記外側包囲部の周方向における前記貫通部に対応する部位に、切欠き部が形成されているか、或いは、周方向に沿って面取り部が形成されており、
前記貫通部の少なくとも一部が、前記切欠き部又は前記面取り部における高さの範囲内に配置されていることを特徴とする液体状態検知センサ。
【請求項2】
前記支持部材における下向き面は、全体が平坦面か、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面か、或いは、少なくとも外周縁寄り部位において内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体状態検知センサ。
【請求項3】
前記支持部材における前記切欠き部又は前記面取り部が傾斜面取り状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体状態検知センサ。
【請求項4】
前記支持部材の下向き面側であって前記外筒電極の内側には、該支持部材をその下向き面において位置決めするための位置決め板部を有する位置決め部材が取付けられており、
前記位置決め板部は、その外周縁又は外周縁寄り部位のうち、前記外側包囲部に形成されたその周方向における前記貫通部に対応する部位に、気泡が通過可能の切欠き部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体状態検知センサ。
【請求項5】
液体中の特定成分の濃度を検知する液体濃度検知素子と、
前記素子の下端に位置する先端部を、自身の下端から突出させた状態で該素子を保持してなるホルダ部材と、
自身の下向き面が前記ホルダ部材の下端より低位置とならないようにして前記ホルダ部材の外周面に外嵌されてなる筒状ないし環状をなす支持部材と、
前記支持部材の下向き面の下方であって前記素子の先端部の外側と自身の内側に空間が形成されるように、該支持部材の外周面に外嵌されてなる筒状又は環状に形成された外側包囲部材と、を備える液体状態検知センサであって、
該外側包囲部材の側壁には内外に通じる貫通部が1又は複数形成されて、前記素子がその先端部を下方にして液体中に液没された際に、前記外側包囲部材の内側の前記空間内にある液体中に侵入した気泡が、前記貫通部を通過して該外側包囲部材の外側に排出されるように構成されており、
しかも、前記支持部材における下向き面と外周面とのなす交差稜部のうち、前記外側包囲部材の周方向における前記貫通部に対応する部位に、切欠き部が形成されているか、或いは、周方向に沿って面取り部が形成されており、
前記貫通部の少なくとも一部が、前記切欠き部又は前記面取り部における高さの範囲内に配置されていることを特徴とする液体状態検知センサ。
【請求項6】
前記支持部材における下向き面は、全体が平坦面か、内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面か、或いは、少なくとも外周縁寄り部位において内側から外周縁に向かうに従い上位となる上向き傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体状態検知センサ。
【請求項7】
前記支持部材における前記切欠き部又は前記面取り部が傾斜面取り状に形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体状態検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−215954(P2008−215954A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51880(P2007−51880)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】