説明

液体紙容器

【課題】 特に浸透性や拡散性に富む化学薬品を含む液体内容物を充填包装しても、ヒートシール性や、容器の強度が低下することなく、液漏れ等を回避し、耐薬品性、耐熱性、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性、耐ピンホ−ル性に優れた液体紙容器を提供する。
【解決手段】 本発明の液体紙容器は、少なくとも、最外層1、紙基材層2、介在樹脂層3、中間層4、および最内層5を順次積層した積層体Aであって、かつ、当該積層体を構成する中間層4が、少なくとも、バリア層4a、および/または、耐ピンホール性層4bからなり、当該中間層4と当該最内層5の層間に溶融押出接着性樹脂層8を介して積層される積層体Aであって、かつ、当該最内層5が、不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂層から構成される積層体であって、更に、当該積層体を使用し、これを製函してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体紙容器に関し、更に詳しくは、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、更に、ピンホ−ルの発生を防止し、また、シ−ル不良、液漏れ等を回避し、特に、アルカリ性内容物、家庭用洗剤、車用洗剤等の内容物成分として化学薬品を含有する液体内容物を充填包装し、耐薬品性、その内容物の保存性、貯蔵性等に優れた液体紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体紙容器は、板紙を主体とする積層体であるため、使用後の廃棄性に優れ、例えば、牛乳では、容器外側から、ポリエチレン樹脂層と、紙基材層と、ポリエチレンフィルム層とを順次積層して構成された紙容器が広く使用されている。
また、従来、バリア性が不可欠な内容物を充填包装する液体紙容器を構成する積層体の層構成としては、ガス透過性が実質的にほぼ0のアルミニウム箔を中間層として積層した積層体が主流を占め、例えば、日本酒、焼酎、ワイン等のアルコール飲料や保香性が要求される果汁飲料等を中心に充填包装され、その包装製品が、広く流通している。
【0003】
また、真空蒸着法等の物理気相成長法による酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着薄膜層をプラスチックフィルム上に形成した蒸着樹脂フィルムをバリア性フィルムとして使用し、これを積層した積層体からなる液体紙容器もバリア性に優れていることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、アルミニウム箔を積層した積層体から構成される液体紙容器は、バリア性は格段に優れているが、化学薬品を内容物成分として含有する液体内容物を充填包装すると、ピンホールを通して浸透・透過してきた成分により、アルミニウム箔が腐食、あるいは、アルカリ性成分ではアルミニウム箔が溶解、消失する問題があり、化学薬品耐性を有する液体紙容器の開発が急務となっている。
また、上記の蒸着樹脂フィルムは、可撓性に劣り、屈曲や折り曲げ等、外部応力に対して耐性がないという問題点がある。例えば、液体紙容器では、罫線部分でバリア性が極端に悪化し、容器全体のバリア性を格段に向上させることは困難な状況である。また、有機物質であるプラスチックフィルム基材上に無機酸化物の蒸着薄膜層を物理的に付着させているため、無機酸化物の蒸着薄膜層と基材間の密着性は、かなり悪く、特に、浸透性の高い内容物では、保存中に無機酸化物の蒸着薄膜層の一方、あるいは両方の界面で界面剥離が起き、液漏れ等の問題を起こすことがある。
【0005】
バリア性中間層である無機酸化物の蒸着薄膜層との層間密着性を向上させて、バリア性や耐内容物性を改善し、化学薬品を含有する内容物を充填包装しても、優れた耐性を有する液体紙容器としては、少なくとも、最外層、紙基材、中間層、および、最内層を順次に積層した液体紙容器用積層体において、上記の中間層が、バリア性フィルムからなり、更に、該バリア性フィルムが、基材フィルムの少なくとも一方の面に、プラズマ気相成長法による珪素、酸素、炭素、水素を膜組成成分として含有する酸化珪素の蒸着薄膜層を形成した蒸着樹脂フィルムからなり、かつ、該蒸着樹脂フィルムを構成する酸化珪素の蒸着薄膜層の上に、硬化性被膜からなるエポキシ系樹脂を主成分とする組成物による硬化性被膜からなる接着剤層ないし接着性樹脂層を設けた構成からなる液体紙容器が提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】実開平7−12466号公報
【特許文献2】特開2003−335362号公報
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の液体紙容器では、特に浸透性や拡散性に富む化学薬品を含む液体内容物を充填包装すると、最内層から当該浸透性や拡散性に富む液体内容物を吸収して膨潤してしまい、ヒートシール性が低下したり、紙容器全体の強度が低下してしまうという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、特に浸透性や拡散性に富む化学薬品を含む液体内容物を充填包装しても、ヒートシール性や、容器の強度が低下することなく、液漏れ等を回避し、耐薬品性、耐熱性、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性、耐ピンホ−ル性に優れた液体紙容器を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の液体紙容器は、少なくとも、最外層、紙基材層、介在樹脂層、中間層、および最内層を順次積層した積層体であって、かつ、当該積層体を構成する中間層が、少なくとも、バリア層、および/または、耐ピンホール性層からなり、当該中間層と当該最内層の層間に接着性樹脂層を介して積層される積層体であって、かつ、当該最内層が、不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂層から構成される積層体であって、更に、当該積層体を使用し、これを製函してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体紙容器によれば、液体紙容器を構成する積層体の最外層および最内層が、耐薬品性、耐熱性に優れるため、特に、アルカリ性内容物、家庭用洗剤、車用洗剤等の内容物成分として化学薬品を含有する液体内容物を充填包装しても、ヒートシール性や、容器の強度が低下することなく、液漏れ等を回避し、その内容物の保存性、貯蔵性、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性、耐ピンホ−ル性、ヒートシール性、耐衝撃性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記の本発明について以下に図面等を用いて更に詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる液体紙容器用積層体についてその層構成の概略を示す概略的断面図である。
まず、本発明にかかる液体紙容器用積層体についてその一例を例示すると、図1に示すように、本発明にかかる液体紙容器用積層体Aは、少なくとも、最外層1、紙基材2、介在樹脂層3、中間層4、および、最内層5を順次に積層した構成からなり、更に、上記の中間層4が、バリア性層4a、および/または、耐ピンホール性層4bからなり、当該バリア性層4aと耐ピンホール性層4bとの層間にドライラミネート用接着剤層6を介して積層し、当該中間層4側にアンカーコート層7を形成し、当該中間層4と最内層5との層間を溶融押出接着性樹脂8を介して積層した層構成からなるものである。
更に、上記の最内層5が、エチレン−不飽和シラン化合物共重合体の水架橋物を含む樹脂層または合成樹脂フィルム層から構成されることが必要であり、このことによって、上記の積層体を製函してなる液体紙容器が耐薬品性、耐熱性に優れるため、特に、アルカリ性内容物、家庭用洗剤、車用洗剤等の内容物成分として化学薬品を含有する液体内容物を充填包装すると、その保存性、貯蔵性に優れるという利点を有するものである。
上記の例示は、本発明にかかる液体紙容器用積層体についてその層構成の一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
例えば、本発明においては、図示しないが、液体紙容器の包装目的、充填包装する内容物、その流通経路、用途等によって、更に、他の基材を任意に積層して、種々の形態からなる積層材を設計して製造することができるものである。
【0011】
次に、本発明において、上記の本発明にかかる液体紙容器用積層体を使用し、これを製函してなる液体紙容器についてその一例を説明すると、まず、上記の図2に示す液体紙容器用積層体を使用し、当該液体紙容器用積層体に、所望の液体紙容器の形状に合わせて、常法により、縦あるいは横または斜め等に折り罫を刻設すると共に打ち抜き加工して、糊代部等を有するブランク板を製造する。
次に、常法により、上記で製造したブランク板の端面に、内容物の浸透、液漏れ等を防止するために、例えば、スカイブ・ヘミング処理等を施して端面処理を行った後、糊代部の面に、上記のブランク板の他方の端部の面を対向させて重ね合わせ、次いで、その層間に、例えば、フレーム処理、あるいは、ホットエアー処理等を行い、上記の糊代部および他方の端部の部分にある最内層あるいは最外層を構成する樹脂層を溶融し、その溶融面を介して、フレームシール、あるいは、ホットエアーシール等により胴貼りシールして、筒状のスリーブを製造する。
次に、上記で製造した筒状のスリーブを、当該筒伏のスリーブを内容物充填機に供給し、次いで、内容物の充填に先立って、まず、筒状のスリーブのボトムの内面をホットエアーにより炙り、その内面の最内層を構成する樹脂層を溶融させて、プレスシールを行って底シール部を形成して、上方に開口部を有する包装用容器を製造する。
しかる後、上記で製造した包装用容器の開口部から内容物を充填した後、トップの内面をホットエアーで灸り、その内面の最内層を構成する樹脂層を溶融させて、プレスシールを行って、例えば、屋根型トップシール部を形成して、内容物を充填包装した本発明にかかる液体紙容器用積層体を使用して製函してなる液体紙容器を製造するものである。
上記の例示は、本発明にかかる液体紙容器についてその一例を例示したものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
例えば、本発明においては、図示しないが、本発明にかかる液体紙容器の形状としては、ゲーベルトップ型のもの、ブロック型のもの、筒状型のもの、その他等の任意の形状を取り得るものである。
【0012】
また、紙基材上に形成される最外層1は、加熱によって溶融し相互に融着し得るヒ−トシ−ル性を有する溶融押出し樹脂層か、または、合成樹脂フィルム層であれば、特に限定されず、具体的に例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン−アリリル酸共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、その他の熱溶融樹脂が使用できる。
上記最外層1の厚みとしては、8μm〜60μmの範囲であり、好ましくは15μm〜30μmである。
【0013】
本発明において用いられる紙基材2としては、容器を構成する基材となるものであり、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を持たせるものであり、例えば強サイズ紙の晒または半晒の紙基材、その他を使用することができる。
また、紙基材の坪量は約50g/m2〜700g/m2位のもの、好ましくは坪量80g/m2〜500g/m2位のものを使用することが好ましい。
【0014】
次に、本発明にかかる液体紙容器用積層体を構成する材料のいずれかに所望の印刷模様層9を形成することができるものである。
上記の印刷模様層としては、例えば、上記の紙基材上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
上記インキ組成物について、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシリレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロースなどの繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼインなどの天然樹脂、アマニ油、大豆油などの油脂類、その他の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明において、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料などの着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤などで充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することができる。
【0015】
次に、最内層5の材料については、加熱によって溶融し相互に融着し得るヒ−トシ−ル性を有するものであって、耐薬品性、耐熱性を有することが必要であり、例えば、「品名:リンクロン、三菱油化株式会社製」等のエチレン−不飽和シラン化合物共重合体の水架橋物を含む樹脂フィルムを使用することができる。
上記の樹脂フィルム層は、加水分解可能な有機基を有するシラン化合物を含有させることが必要であり、ポリマー中の活性シラン基が常温〜100℃程度の液状、蒸気状、空気中の水と接触することで架橋反応させて網目状高分子となるものである。
上記の樹脂フィルム層の製造方法としては、例えば、シラノール縮合触媒を配合したポリエチレン樹脂組成物を押出機等で混練したものを150℃〜300℃程度の溶融状態で押出して加工成形により成膜後、水と接触させて上記の共重合体に導入されているシラン基の水架橋によって製造できる。
厚みは、15〜150μmの範囲であって、好ましくは30〜100μmである。
また、本発明において、上記のような樹脂を使用し、これを押出機等を用いて溶融押出して、アンカ−コ−ト剤層等を介して、溶融押出樹脂層を溶融押出積層することにより、あるいは、上記のような樹脂のを使用し、予め、これから樹脂のフィルムないしシ−トを製造し、その樹脂のフィルムないしシ−トを、ラミネ−ト用接着剤層等を介してドライラミネ−ト積層することにより、最内層等を形成することができるものである。
【0016】
なお、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離型性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することがてきる。
【0017】
次に、本発明において、本発明にかかる液体紙容器を構成するバリア性層4aについて説明すると、太陽光等の光を遮光する性質、あるいは水蒸気、水、ガス等を透過しない性質等を有する材料を使用することができ、これは、単体の基材でもよく、あるいは二種以上の基材を組み合わせてなる複合基材等であってもよい。
具体的には、このバリア層の材料としては、アルミニウム箔を用いるのが一般的であるが、アルミニウム箔の代わりに、アルミニウム等の金属、シリカ、アルミナ等のセラミックをポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチックフィルムに真空蒸着又はスパッタリング等によって蒸着膜を形成して使用する場合もある。
セラミックとしては、この他に、酸化インジウム錫(ITO)、又は、亜鉛、錫、チタン、ジルコニウム、バナジウム、バリウム、クロム等の金属酸化物、窒化珪素、炭化珪素等が使用できる。
これらの材料は、一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
上記のフィルムないしシ−トの厚さとしては、任意であるが、通常、5〜300μm位が好ましく、10〜100μm位が望ましい。
更に、上記において、アルミニウム箔としては、5〜30μm位の厚さのもの、また、金属または無機酸化物の蒸着膜としては、厚さ50〜3000Å位のものを使用することが好ましく、100〜1000Å位のものが望ましい。
使用する金属、または、金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を形成することもできる。
また、上記の蒸着膜を支持する樹脂のフィルムとしては、これに蒸着層を設けることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に強度を有して強靭であり、かつ、耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
【0018】
具体的には、本発明において、上記の蒸着膜を支持する樹脂のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレイト等のポリエステル系樹脂フィルム、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブデン樹脂フィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセタール系樹脂フィルム、フッ素系樹脂、その他等を使用することができる。
なお、本発明においては、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましい。
【0019】
本発明において、金属または無機酸化物の蒸着膜の形成法について具体的に説明すると、上記のような金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して可撓性フィルムの上に蒸着する真空蒸着法、または原料に金属または金属の酸化物を使用し、酸素ガス等を導入して酸化させて可撓性フィルムの上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。
また、本発明においては、酸化珪素の蒸着膜を形成する場合、オルガノシロキサンを原料とするプラズマ化学気相成長法を用いて蒸着膜を形成することができる。
【0020】
本発明において、中間層を構成する耐ピンホール性を付与する層4bとしては、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を示し、その強度に優れ、更に、耐熱性、耐ピンホール性、耐突き刺し性等の物性に優れたフィルムないしシートを使用することができる。
具体的には、耐ピンホール性を付与する層の材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素系樹脂その他等の強靭な樹脂のフィルムないしシ−トを用いることができる。
而して、上記の樹脂のフィルムないしシ−トとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。
また、本発明において、その樹脂のフィルムないしシートの厚さとしては、強度、耐ピンホール性、耐突き刺し性、剛度、その他等について必要最低限に保持され得る厚さであれば良く、厚すぎると、コストが上昇するという欠点もあり、逆に、薄すぎると、強度、耐突き刺し性、剛度、その他等が低下して好ましくないものである。
そのフィルムの厚さとしては、5〜100μm位、好ましくは、6〜50μm位が望ましい。
【0021】
次に、本発明において、上記のような材料を使用して本発明にかかる液体紙容器用積層体Aを製造する方法について説明すると、かかる方法としては、通常の包装材料をラミネートする方法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押出ラミネーション法、Tダイ押出成形法、共押出ラミネーション法、インフレーション法、共押出インフレーション法、その他等で行うことができる。
そして、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、その他等の前処理を任意に施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコート剤、あるいは、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等の公知のアンカーコート剤、ラミネート用接着剤等を任意に使用することができる。
【0022】
本発明において、本発明にかかる液体紙容器用積層体Aを製造する方法について、具体的に述べると、例えば、ラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層を介して積層するドライラミネーション法、あるいは、溶融押出接着性樹脂による溶融押出樹脂層を介して積層する押出ラミネーション法などで行うことができる。
上記において、ラミネート用接着剤としては、例えば、1液、あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などのラミネート用接着剤を使用することができる。
上記ラミネート用接着剤のコーティング法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
そのコーティング層としては、好ましくは0.1g/m2〜10g/m2(乾燥状態)位、より好ましくは1g/m2〜5g/m2(乾燥状態)位である。
なお、上記ラミネート用接着剤には、例えば、シランカップリング剤などの接着促進剤を任意に添加することができる。
【0023】
上記において、溶融押出接着性樹脂8としては、前述のヒートシール性樹脂層を形成するヒートシール性樹脂を同様に使用することができ、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、特に、線状低密度ポリエチレン、酸変性ポリエチレンまたはポリプロピレン等を使用することが好ましい。上記の溶融押出接着性樹脂による溶融押出樹脂層の膜厚は、好ましくは5μm〜100μm位、さらに好ましくは、10μm〜50μm位である。
なお、本発明において、上記の積層を行う際に、より強固な接着強度を得る必要がある場合には、アンカーコート剤などの接着改良剤などをコートすることもできる。上記アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。
本発明においては、上記アンカーコート剤を、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤などを乾燥して、アンカーコート剤層を形成することができる。
上記アンカーコート剤の塗布量としては、0.1g/m2〜5g/m2(乾燥状態)が好ましい。
【0024】
次にまた、本発明において、本発明にかかる液体紙容器用積層体Aを使用し、これを製函してなる液体紙容器としては、例えば、ブリックタイプ、フラットタイプあるいはゲーベルトップタイプ等の液体用紙容器等を製造することができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒伏の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
更に、本発明において、本発明にかかる液体紙容器には、例えば、各種の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、その他等の種々の物品を充填包装することができるものである。
そして、本発明において、本発明にかかる液体紙容器は、特に、例えば、アルカリ性内容物、家庭用洗剤、車用洗剤等の内容物成分として化学薬品を含有する液体内容物を充填包装する包装用容器として耐薬品性、その内容物の保存性、貯蔵性等に優れる有用なものである。
【実施例1】
【0025】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
先ず、バリア性層として厚さ7μmのアルミニウム箔と、耐ピンホール性層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」という。)を用いて、二液硬化型ウレタン系の接着剤を介して、乾燥後の接着剤層が3μmとなるように、ドライラミネーション法によりラミネートして積層させ積層シートを作製した。次いで、当該積層シートのPETフィルム面側に、アンカーコート剤を0.5g/m2のコート量(乾燥重量)の割合でコーティングして、最内層として厚さ40μmの不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂フィルムを、介在樹脂層として厚さ20μmのポリエチレン樹脂からなる溶融押出樹脂を介在させて、層構成、アルミニウム箔(7μm)/接着剤層/PETフィルム(12μm)/接着剤層/ポリエチレン樹脂層(20μm)/不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂層(40μm)からなる積層シートを作製した。
次に、紙基材層として坪量400g/m2の板紙の表面に、ウレタン系インキ組成物を使用し、グラビア印刷法にて、文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様を印刷して、所望の印刷を形成した。
次に、その積層シートのアルミニウム箔面に、インラインでコロナ放電処理を施し、紙基材層の印刷を施していない面を対向して重ね合わせ、その層間に、介在樹脂層として厚さ20μmのメタクリル酸・エチレン共重合体樹脂を押し出しラミネートして、上記バリア層と紙基材層とを貼り合わせて、印刷模様層/紙基材層(400g/m2)/メタクリル酸・エチレン共重合体樹脂層(20μm)/アルミニウム箔(7μm)/接着剤層/PETフィルム(12μm)/接着剤層/ポリエチレン樹脂層(20μm)/不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂層(40μm)からなるラミネート紙シートを作製した。
次に、ラミネート紙シートの印刷面に、コロナ放電処理を施し、最外層として、厚さ20μmのポリエチレン樹脂を押し出しラミネートして、ポリエチレン樹脂(20μm)/印刷模様層/紙基材層(400g/m2)/メタクリル酸・エチレン共重合体樹脂層(20μm)/アルミニウム箔(7μm)/接着剤層/PETフィルム(12μm)/接着剤層/ポリエチレン樹脂層(20μm)/不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂層(40μm)からなる積層体を作製した。
次いで、得られた積層体を用いてブリック型紙容器を形成し、内容物として、アルカリ洗剤を充填した後、トップの内面をホットエア−で炙り、その最内層側の樹脂を溶融させて、プレスシ−ルを行い、本発明にかかる包装体を製造した。
上記で製造した包装体は、アルカリ性内容物、家庭用洗剤、車用洗剤等の内容物成分として化学薬品を充填包装して、層間剥離も認められず、耐薬品性、その内容物の保存性、貯蔵性、耐熱性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、ヒートシール性、変形防止強度、更に、光、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、内容物充填適性、耐衝撃性に優れるのものであった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる液体紙容器用積層体についてその層構成の概略を示す概略的断面図である。
【図2】図1に示す積層体を使用し、本発明にかかる液体紙容器の製函についてその製函工程の構成を示す各製函工程における液体紙容器の構成を示す概略的斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 最外層
2 紙基材
3 介在樹脂層
4 中間層
4a バリア性層
4b 耐ピンホール性層
5 最内層
6 ドライラミネート用接着剤層
7 アンカーコート層
8 溶融押出接着性樹脂層
9 印刷模様層
14 胴貼りシ−ル部
15 底シ−ル部
17 内容物
18 屋根型トップシ−ル部
A 液体紙容器用積層体
B 密閉液体紙容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最外層、紙基材層、介在樹脂層、中間層、および最内層を順次積層した積層体であって、かつ、当該積層体を構成する中間層が、少なくとも、バリア層、および/または、耐ピンホール性層からなり、当該中間層と当該最内層の層間に接着性樹脂層を介して積層される積層体であって、かつ、当該最内層が、不飽和シラン化合物を導入したエチレン共重合体の水架橋物を含む樹脂層から構成される積層体であって、更に、当該積層体を使用し、これを製函してなることを特徴とする液体紙容器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−321495(P2006−321495A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143521(P2005−143521)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】