説明

液体量測定装置及びそれを用いたポリオレフィンの製造方法

【課題】攪拌機構を有する容器内部のポリオレフィン製造用触媒スラリー量を正確かつ安全に測定することができる液体量測定装置、及びそれを用いたポリオレフィン製造方法を提供する。
【解決手段】液体が収容された攪拌機構付き容器内の液体量を測定する装置であって、容器本体と攪拌機構を電気的に絶縁し、これらの間に生ずる静電容量を測定する静電容量測定部又は測定手段と、測定された静電容量に基づいて容器内の液体量を演算する演算器とを備えることを特徴とする液体量測定装置、及びそれを用いたポリオレフィン製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌機構付き容器内の液体量を測定する装置及びそれを用いたポリオレフィン製造方法に関し、更に詳しくは、容器内のポリオレフィン製造用触媒スラリー量を正確に測定することができる液体量測定装置及びその測定装置を用いたポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレンを代表とするポリオレフィンを製造する方法として、液相重合プロセス、気相重合プロセスが知られている。液相重合プロセスは大別すると、バルク重合法とスラリー重合法に分類される。バルク重合法では、攪拌機構付の槽型反応器や、反応液を軸流ポンプ等で循環するループ型反応器を用い、液化させたモノマー中でポリオレフィンを製造する。スラリー重合は、バルク重合法と同様な反応器を用い、オレフィン重合用触媒に対して不活性な炭化水素系溶媒中にモノマーを溶解させて重合することによりポリオレフィンを得る方法である。一方、気相重合は、流動層や攪拌機を備えた槽型反応器を用い、固体触媒成分を実質的に液体の存在しない条件下で重合を行い、顆粒状の製品を抜き出す方法である。
【0003】
重合運転の形態としては、生産性や経済性の観点から、1回の重合バッチごとに反応器から製品を抜き出すバッチ重合よりも、触媒やモノマー成分を含む原料を連続的に反応器へ供給し、同時に得られた重合物を抜き出す連続重合が広く用いられている。後者の場合、固体重合成分を反応器へ連続して供給することが必要であり、この工程に安定性を欠く場合には、得られた製品の均一性や物性に不都合を生じたり、重合プロセスの安定運転を阻害する要因となることが知られている。
【0004】
このようなオレフィン重合触媒は、一般に数10ミクロンの固体であり、重合反応器への供給の手段としては、実質的に液体を含まない粉体の状態でフィードする方法と、触媒に対して不活性な炭化水素溶媒にスラリーとして懸濁させた状態でフィードする方法が行われている。前者による方法では、微細な粉体の安定供給を確保するために、触媒粒子の流動性を良好に保つ必要があり、かつ、供給流量を制御するための特殊な装備を必要とする。一方、後者による方法では、攪拌を備えた供給槽と適切なポンプを用いれば、比較的容易に固体触媒成分を均一に分散させ、かつ、安定して反応器へのフィードが可能であることから多用されている。一般に、固体触媒成分は、懸濁させるのに広く用いられる炭化水素溶媒に比べて密度が高いため、沈降を防止して均一な分散度を保つために、ミネラルオイルなどの粘稠な液体を用いることもある。いずれにせよ、このような固体触媒を懸濁させたスラリーの反応器への供給流量は比較的僅少であることから、インラインでの計測が困難なことが多い。そこで、固体触媒成分が均一となっている前提のもと、スラリー貯槽のレベル低下を検出することで反応器への触媒供給量を管理することが行われている。
【0005】
一般的に、容器内に収容されている液体やスラリーの液量を知る手段としては、
(1)差圧式レベル計、
(2)浮子(フロート)式レベル計、
(3)ディスプレーサ式レベル計、
(4)超音波式レベル計、
(5)放射線式レベル計、
(6)静電容量式レベル計
等が使用されている。差圧式レベル計は、容器の垂直方向において上部空間と容器下部のあいだの差圧を測定し、液体の密度を勘案することにより、液柱高さを求めるものである。浮子式レベル計は、液に浮かべたフロートの位置を測定することで、液の高さを求めることが可能となる。ディスプレーサ式レベル計では、同様に浮子を用いるが、これに加わる浮力を計測することで、液高さを計測するものである。超音波式レベル計では、液上方に設置した超音波の発信器と反射波受信器によって、液面を介した測定面間距離を計測する。放射線式レベル計では、槽をはさんで放射線源と検出器を上下対向させ、液位により放射線の吸収度合いが異なることを利用する。静電容量式レベル計では、被測定液体を容器内に設けた測定用電極と容器との間の静電容量として電気的に検出するレベル検出器である。
これらのうち、浮子式レベル計やディスプレーサ式レベル計では、計測対象となる液体やスラリーに直接浮子を沈める機構であるため、特に液体からの固体析出やスラリーからの固体付着を嫌う用途では適当ではない。また、超音波式レベル計では、計測対象からの反射波を計測するため、激しい攪拌により液面が乱れたり、ボルテックスが立つような場合は正確な測定が難しくなる。放射線レベル計では、その物理的な特質から、人体への影響を排除するための特別な装置系が必要となり、保守管理にも安全性に配慮した技術が求められる。静電容量式レベル計(例えば、特許文献1参照)では、攪拌機構を有する容器においては攪拌翼との接触を回避する必要性から電極棒の設置が困難な場合がある。さらに、これらの計器は、比較的大型の工業計器として用いられているものが多く、特に小型の容器に設置するには、適切なサイズの入手が困難という問題もある。
以上の理由から、ポリオレフィン製造プロセスにおける触媒スラリー容器内の液体量を測定するためには、その簡便性や精度、安全性などの観点から、差圧式レベル計(例えば、特許文献2、3参照。)が多用されてきた。
【0006】
しかしながら、特許文献2、3に開示された、差圧を用いて液体量を測定する方法は、攪拌機構を有した容器、特に、液体に粉体を懸濁させスラリー化させる小型容器においてはその激しい攪拌による液体の動圧を大きく受けるため、液量に従った差圧を正確に測定することが困難であるばかりでなく、触媒スラリーが差圧を測定するための導圧管やノズルを閉塞させるという問題があった。通常、このような場合には、導圧管への固体流入を防止するよう、フラッシング流体を入れるようにしたり、受圧部をテフロン(登録商標)などのダイアフラムで形成して導圧管自体をなくす方法も行われるが、攪拌による動圧の影響はいずれも免れない。
【特許文献1】特開昭61−283831号公報
【特許文献2】特開昭63−42422号公報
【特許文献3】特開2006−313079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、攪拌機構を有する容器内部の液量を正確かつ安全に測定することができる液体量測定装置、及びそれを用いたポリオレフィン製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、液体が収容された攪拌機構付き容器において、容器本体と攪拌軸などの攪拌機構とを電気的に絶縁し、例えば発振器と帰還コンデンサを有する差動増幅器の静電容量測定部又は測定手段により静電容量を求め、その静電容量に基づいて、容器内の液体量を演算することにより、容器内の液体量が正確かつ安全に測定することができること、さらに、同様の構造を有する容器内部のポリオレフィン製造用触媒スラリー量の測定にも適用でき、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、液体が収容された攪拌機構付き容器内の液体量を測定する装置であって、容器本体と攪拌機構を電気的に絶縁し、これらの間に生ずる静電容量を測定する静電容量測定部又は測定手段と、測定された静電容量に基づいて容器内の液体量を演算する演算器とを備えることを特徴とする液体量測定装置が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、液体が固体を懸濁させたスラリーであることを特徴とする液体量測定装置が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、スラリーがオレフィン重合用触媒を適当な液体に懸濁させたものであることを特徴とする液体量測定装置が提供される。
【0012】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明に係る液体量測定装置を用いてポリオレフィンを製造する方法であって、演算器で演算されたポリオレフィン製造用触媒スラリー量に基づき、触媒の供給量を調整して、反応器で単位時間あたりに生産されるポリオレフィンの量を制御することを特徴とするポリオレフィンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体量測定装置によれば、差圧を計測することがないので動圧による測定誤差や差圧測定のためのノズル閉塞という問題が無く精度高く安定的に測定できるという効果がある。このため、本発明の液体量測定装置は、ポリオレフィンの製造に、好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の液体量測定装置(以下、本測定装置ともいう)は、攪拌機構付き容器において、容器本体と攪拌機構の攪拌軸を電気的に絶縁し、これらの間に生ずる静電容量を測定する静電容量測定部又は測定手段と、その測定された静電容量に基づいて、容器内の液体量を演算する演算器とを備えるものである。また、本発明のポリオレフィン製造方法は、本測定装置を用い、演算器で演算されたポリオレフィン製造用触媒スラリー量に基づき、触媒の供給量を調整して、反応器で単位時間あたりに生産されるポリオレフィンの量を制御するものである。
以下、本測定装置について、その構成や、該装置を用い、ポリオレフィン生産量を制御するポリオレフィン製造方法等について詳細に説明する。
【0015】
本測定装置は、攪拌機構付き容器において、容器そのものと攪拌機構を一対の検出プローブとして機能させる。容器本体と撹拌機構、具体的には撹拌軸を電気的に絶縁し、このプローブ間、すなわち容器の液体収容部に液体が存在すると、この一対の検出プローブ間に形成される静電容量が増大し、この増大する静電容量は、存在する液体量に依存する。そこで、この静電容量を測定部又は測定手段で測定し、演算器によって、これを液体量に換算することにより、液体量を測定することができる。
【0016】
静電容量から液体量の換算にあたっては、例えば、一対の検出プローブ間またはその近傍に全く液体が存在しない状態から、液体量が最大限に存在するまでの間の静電容量の変化を、予め複数点測定して、検量線を作成しておき、これと実際に測定された静電容量とを照合対比すればよい。また、この検量線は、使用する液媒体の種類や懸濁させる固体の種類、およびその濃度などにより変化するが、攪拌容器中のスラリーの物理条件は通常一定に保たれ、かつその組成条件等は既知であることから、適用すべき検量線を予め選定しておけば運用上なんら不都合はあり得ない。
【0017】
本発明の液体量測定装置では、差圧を計測することがないので、差圧測定のノズル閉塞の問題を生じないし、激しい攪拌による動圧によって測定が困難になるといった問題も生じない。
また、攪拌軸を検出プローブとしているので、攪拌機構を有する容器であれば、容器自体の大きさは、何ら制限されない。
【0018】
本発明において、液体としては、特に制限されず、固体を懸濁したスラリーであってもよく、特にオレフィン重合用触媒を炭化水素溶媒に懸濁させたポリオレフィン製造用触媒スラリーに適用することができる。
【0019】
また、本発明に係るポリオレフィン製造方法は、本発明の容器本体と撹拌軸を電気的に絶縁した液体量測定装置、重合用触媒を炭化水素溶媒に懸濁させたスラリーを使用することによって、ポリオレフィン製造用触媒スラリー量の正確な測定が可能となり、反応器で単位時間あたりに生産されるポリオレフィン量が目標値になるように、正確に制御することができる。一般に、チーグラー触媒を代表とするポリオレフィンの重合活性の指標として、単位触媒重量に対するポリマー重量を用いることが行われる。以下、単にこれを活性と称することとする(単位はkgポリマー/g触媒)。この活性値に、触媒の供給流量(単位はg触媒/h)を掛け合わせたものが、単位時間あたりに生産されるポリオレフィン量(単位はkgポリマー/h)となる。従って、所望の生産量に調整する手段としては、活性を制御する方法と、触媒の供給流量を制御する方法がある。このうち活性値は、触媒系固有の特性に加え、重合温度や圧力、共重合コモノマーの種類やその濃度、重合物の分子量や反応器での滞留時間などさまざまな要素によって決定されるが、目標とするポリマーに対応した重合条件として固定されるのが一般的である。したがって、滞留時間等を除き、生産量に対する制御因子とすることは通常無い。一方で、供給触媒量は、活性が一定であれば、その投入量に比例して生産量が変化してしまうことから、所望条件への制御の手段として極めて重要である。本発明による方法を用いることで、触媒スラリーを収納した容器液面とその低下速度を知ることにより、実質的に触媒供給量を把握できることから、単位時間あたりに生産されるポリオレフィンの量とあわせて活性の絶対値を知り、さらには目標となる生産量に調整するための制御手段として極めて有効に活用することが可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施形態の一態様を、図面に基づいて説明する。
図1において、符号1は、内部にオレフィン重合用触媒を炭化水素系溶媒で懸濁させた縦型容器を示し、容器1、攪拌シャフト(軸)2は、互いに絶縁された一対の検出プローブとして配設され、制御演算部14から構成される。制御演算部14は、容器1に交流電源を供給する発振器8、攪拌シャフト2から交流信号を受信する差動増幅器9、及び、差動増幅器9の出力電圧から液体量を演算する演算器11から構成されている。発振器8及び差動増幅器9は、本発明の液体量測定装置における静電容量測定部を構成する。
【0021】
図1において、一対の検出プローブの容器1は、絶縁ガスケット4を介して、容器蓋3で保護され、また、もう一方の検出プローブの攪拌シャフト2は、絶縁軸受5を介して、容器蓋3と絶縁され、さらに、攪拌シャフト2は、絶縁カップリング13を介して、電動機とも絶縁されている。
【0022】
攪拌シャフト2と、制御演算部14の差動増幅器9との間は、シールド芯線6によって、集電子(ブラシ)12を介して、配線される。また、シールド(網線)7は、容器蓋3に配線される。容器1から延びる一方のシールド芯線6には、発振器8から交流電源が入力され、他方の攪拌シャフト2から延びるシールド芯線6は、差動増幅器9の反転端子に接続される。差動増幅器9の非反転端子は、前記、容器蓋3のシールド(網線)7に接続される。差動増幅器9の出力端子と、その反転端子との間には、帰還コンデンサ10が接続される。差動増幅器9の出力は、演算器11に入力される。
【0023】
上記液体量測定装置において、発振器8の出力電流をEiとし、一対の検出プローブ(1と2)によって形成される静電容量をCxとし、帰還コンデンサ10の容量をCcとすると、差動増幅器9の出力端子に現れる出力電力E0は、次式[1]で与えられる。
E0=(Cx/Cc)×Ei ・・・[1]
【0024】
一般に、液体は、気体よりも大きな比誘電率を有することから、一対の検出プローブ(1と2)間の液体量に比例して、出力電圧E0が変化する。
ここで、予め実測によって、出力電圧E0と容器内の関係を求めておき、演算器12内に記憶する。つまり、容器1内の液体量がゼロから最大値までの間の適当な間隔で、差動増幅器9からの出力電圧値と液体量の関係を実測し、例えば、この実測値に基づいて、グラフを作り、制御演算部14の演算器11に記憶させておく。このようにすると、演算器11により、差動増幅器9からの出力電圧E0に基づいて、容器内の液体量を求めることができる。
なお、グラフの作成に代えて、あらかじめ実測した記憶している数値から補間法によって求めてもよい。
【0025】
通常、オレフィン重合用触媒を炭化水素系溶媒で懸濁させたスラリーにおいては、触媒として、固体触媒を用い、このような固体触媒の密度は、炭化水素溶媒の密度よりも高いが、その沈降を防止するために比較的大きな回転速度で攪拌することが求められる。このため、従来多用されてきた差圧式レベル計では、本来精密に計測すべき液ヘッド分による差圧に対し、攪拌による動圧が外乱として作用するため、精度高く液量を計測することが困難であった。
【0026】
しかし、本実施形態例の液体量測定装置では、基本的に容器内部の液体量を反映し、攪拌による動圧の影響を受けることがないことから、精度の高い検出が可能であるので優れている。
また、攪拌機構を有する容器では、新たにセンサーを挿入しようとすれば、その検出端が攪拌翼に接触しないような配慮が必要であるが、本発明によれば必然的に具備されている攪拌シャフトを検出プローブの一方とすることができ、設置上も簡便な形態をとることができる。
【0027】
上記実施形態例の容器としては、縦型容器(図1)以外にも、横型容器等が挙げられる。攪拌シャフト2に装備された攪拌翼としてアンカー翼を示しているが、このほか、パドル翼、タービン翼といった形状を使用することもでき、形状は、何ら限定されない。
【0028】
本発明の液体量測定装置が適用できるオレフィン重合用プロセスでは、触媒は、チーグラー触媒系であれ、メタロセン触媒系であれ、特に制限されない。重合条件としては、通常のオレフィン重合条件が適用できる。
【0029】
本発明のポリオレフィン製造方法において、使用できるオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等である。これらオレフィンの単独重合若しくは共重合は、必要に応じて分子量調節剤である水素ガスを供しながら実施される。
【実施例】
【0030】
以下、実施例として、コールドモデルテストに基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0031】
内容量600mLのステンレス製で上部から液体を投入できる攪拌機構を有する縦型容器1において、胴体部に発振器からシールド芯線を接続し、また、攪拌シャフトに接している集電子(ブラシ)に差動増幅器からのシールド芯線を接続し、更に、差動増幅器からのシールド(網線)を容器蓋に接続した。
ここで、容器と容器蓋間、容器蓋と攪拌シャフト間には、それぞれテフロン(登録商標)製のガスケット、軸受を介在させた。また、攪拌シャフトと電動機は、塩化ビニルチューブで絶縁した。
そして、室温条件、非攪拌下および500回転下に、該容器内部の静電容量をバックグラウンドとして測定した。
次に、非攪拌下および500回転下、水を順次投入し、その際の静電容量を測定した。その結果から検量線を作成した。同様に、比較例として差圧式レベル計を用いたテストを併せて実施した。これら結果を、表1および図2、3に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
本コールドモデル実験により、表1および図2、3から理解できるように、差圧式レベル計では、動圧の影響を受ける為に攪拌の有無により出力値が異なるのに対し静電容量式レベル計では攪拌によらず精度良く測定でき、かつ良好な線形の関係が得られることが示された。
即ち、攪拌シャフトを静電容量式レベル計のプローブとして利用する本測定法を用いることで、機械的攪拌によって動圧が生じる液体についても、その正確な液体量の計測が可能であることが示された。
【0034】
オレフィン重合用触媒を炭化水素系溶媒に懸濁させたスラリーにおいても、原理的にはコールドモデルと同等の状況にあるため、本測定法を用いることで、触媒スラリー容器の液体量を精度よく測定でき、また、この測定値に基づいて反応器で単位時間あたりに生産されるポリオレフィン量の制御を行うことにより、精度の高い制御が可能となる。
【0035】
以上、本発明をその実施形態例に基づいて説明したが、本発明の液体量測定装置およびポリオレフィン製造法は、上記実施形態例の構成にのみ、限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正および変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の液体量測定装置は、攪拌機構付き容器内の液体量を、正確かつ安全に測定することができるため、攪拌機構を有する容器内部のポリオレフィン製造用触媒スラリー量も、正確かつ安全に測定することができ、しかも、縦型容器や横型容器等にも適用でき、産業上利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態例に係る液体量測定装置を有する縦型容器を説明するブロック図である。
【図2】比較例の差圧式レベル形を用いた測定結果である。
【図3】実施例の静電容量式レベル計を用いた測定結果である。
【符号の説明】
【0038】
1 容器(本体)
2 攪拌シャフト
3 容器蓋
4 絶縁ガスケット
5 絶縁軸受
6 シールド芯線
7 シールド(網線)
8 発振器
9 差動増幅器
10 帰還コンデンサ
11 演算器
12 集電子(ブラシ)
13 絶縁カップリング
14 制御演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された攪拌機構付き容器内の液体量を測定する装置であって、
容器本体と攪拌機構を電気的に絶縁し、これらの間に生ずる静電容量を測定する静電容量測定部又は測定手段と、測定された静電容量に基づいて容器内の液体量を演算する演算器とを備えることを特徴とする液体量測定装置。
【請求項2】
液体が固体を懸濁させたスラリーであることを特徴とする請求項1に記載の液体量測定装置。
【請求項3】
スラリーがオレフィン重合用触媒を炭化水素系溶媒に懸濁させたものであることを特徴とする請求項2に記載の液体量測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体量測定装置を用いてポリオレフィンを製造する方法であって、
演算器で演算されたポリオレフィン製造用触媒スラリー量に基づき、触媒の供給量を調整して、反応器で単位時間あたりに生産されるポリオレフィンの量を制御することを特徴とするポリオレフィンの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−309604(P2008−309604A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157112(P2007−157112)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】