説明

液冷ケーブルのコネクタ構造

【課題】冷却パイプ内に収容されるケーブルと接続対象とを電気的に接続するコネクタの外周側から冷却液が接続対象側に侵入するのを良好に抑制する。
【解決手段】コネクタ4のケーブル3側の端部は、冷却パイプ2の一端部内に配置されると共に、コネクタ4の外周面と冷却パイプ2の内周面との間には外側シール部材6oが配置される。そして、冷却パイプ2の一端部は、コネクタ4のケーブル3側の端部を覆うシェルカバー8の端部8a内に嵌合されると共に、外側シール部材6oよりも冷却パイプ2の他端側で端部8aをカシメることによりシェルカバー8に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内部に冷却液が供給される冷却パイプと、当該冷却パイプ内に収容されると共にコネクタを介して接続対象に電気的に接続されるケーブルとを含む液冷ケーブルのコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される電動機と電力供給源とを電気的に接続する電力ケーブルとして、電動機に取り付けられたハウジング内に収納されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電力ケーブルを収納するハウジングには、電動機を冷却する冷却装置に冷却水を供給する冷却流体供給手段から冷却水が供給され、当該電力ケーブルは、当該冷却水により電動機と同様に冷却される。また、ハウジングは、電力ケーブルから発生する電磁ノイズを除去すべく導電性材料により形成されている。更に、スポット溶接に際して用いられる溶接二次ケーブルとして、ゴム製の被覆ホースと、当該被覆ホース内に配置される給電線(ケーブル)としての銅撚り線と、銅撚り線の端部に圧入により固定される接続端子部材と、被覆ホースの内部に銅撚り線の外周部を取り囲むように形成されると共に冷却水が供給される冷却水用通路とを備えたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この溶接二次ケーブルにおいて、被覆ホースは、止め輪を介して接続端子部材の外周にカシメ固定されており、冷却水用通路は、接続端子部材の内部を貫通すると共に管継手を介し冷却水用配管に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−148984号公報
【特許文献2】特開平08−066778号公報(特に0005欄および図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような冷却液により直接冷却されるケーブルは、一般にコネクタを介して接続対象に電気的に接続されるが、漏電を回避するためには、コネクタの外周側から冷却液が接続対象側に侵入しないように万全を期す必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、冷却パイプ内に収容されるケーブルと接続対象とを電気的に接続するコネクタの外周側から冷却液が接続対象側に侵入するのを良好に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による液冷ケーブルのコネクタ構造は、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明による液冷ケーブルのコネクタ構造は、
内部に冷却液が供給される冷却パイプと、該冷却パイプ内に収容されると共にコネクタを介して接続対象に電気的に接続されるケーブルとを含む液冷ケーブルのコネクタ構造において、
前記コネクタの前記ケーブル側の端部は、前記冷却パイプの一端部内に配置されると共に、該コネクタの外周面と前記冷却パイプの内周面との間にはシール部材が配置され、前記冷却パイプの前記一端部は、少なくとも前記コネクタの前記ケーブル側の端部を覆うシェルカバー内に嵌合されると共に、前記シール部材よりも前記冷却パイプの他端側で前記シェルカバーをカシメることにより該シェルカバーに固定されることを特徴とする。
【0008】
この液冷ケーブルのコネクタ構造では、コネクタのケーブル側の端部が冷却パイプの一端部内に配置されると共に、当該コネクタの外周面と冷却パイプの内周面との間にはシール部材が配置される。そして、冷却パイプの一端部は、コネクタのケーブル側の端部を覆うシェルカバー内に嵌合されると共に、シール部材よりも冷却パイプの他端側でシェルカバーをカシメることにより当該シェルカバーに固定される。これにより、カシメ作業に際して、コネクタと冷却パイプとの間のシール部材に大きな荷重が加えられるのを抑制し、シール部材のつぶれ代を全周にわたって概ね一定にすることが可能となる。この結果、この液冷ケーブルのコネクタ構造を採用すれば、シール部材によるシール性能を良好に確保することができるので、冷却パイプ内に収容されるケーブルと接続対象とを電気的に接続するコネクタの外周側から冷却液が接続対象側に侵入するのを良好に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるコネクタ構造を有する液冷ケーブル1を含む車両の一例であるハイブリッド自動車10を示す概略構成図である。
【図2】シェルカバー8と液冷ケーブル1との接続部を示す断面図である。
【図3】シェルカバー8と液冷ケーブル1との接続部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明によるコネクタ構造を有する液冷ケーブル1を含む車両の一例であるハイブリッド自動車10を示す概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料を用いて動力を出力するエンジン(内燃機関)12と、当該エンジン12と共に動力出力装置20を構成するトランスアクスル21とを含む。トランスアクスル21は、エンジン12のクランクシャフト14に接続されたダンパ22と、シングルピニオン式のプラネタリギヤ30と、主として発電機として作動するモータ(同期発電電動機)MG1と、駆動軸23に動力を入出力するモータ(同期発電電動機)MG2と、ドライブシャフトを介して駆動輪である車輪DWに連結されるデファレンシャルギヤ24と、これらの構成要素を収容するトランスアクスルケース25等を含む。プラネタリギヤ30は、モータMG1のロータに接続されるサンギヤ(第1要素)31と、駆動軸23に接続されるリングギヤ(第2要素)32と、複数のピニオンギヤ33を支持すると共にダンパ22を介してエンジン12のクランクシャフト14に接続されるプラネタリキャリア(第3要素)34とを有する。また、モータMG2のロータは、トランスアクスルケース25内に収容される変速機26を介して駆動軸23(リングギヤ32)に接続される。更に、駆動軸23は、トランスアクスルケース25内に収容されるギヤ機構27を介してデファレンシャルギヤ24に連結される。
【0012】
また、ハイブリッド自動車10は、モータMG1を駆動するインバータ41と、モータMG2を駆動するインバータ42と、正極母線および負極母線からなる電力線やインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやり取り可能なバッテリ50とを含む。バッテリ50は、例えば200〜300Vの定格出力電圧を有するニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池である。本実施形態において、インバータ41,42は、導電性材料からなると共にトランスアクスルケース25に固定されるパワーコントロールユニットケース(以下、「PCUケース」という)45内に収容される。そして、PCUケース45内のインバータ41,42は、それぞれ液冷ケーブル1を介してモータMG1,MG2と接続される。
【0013】
液冷ケーブル1は、図1および図2に示すように、金属等の導電性材料により形成された円環状の断面形状を有する3本の冷却パイプ2と、それぞれ対応する冷却パイプ2の内部に収容される3本のケーブル(電線)3とを含む3相高圧ケーブルとして構成される。各冷却パイプ2は、図示しない冷媒供給装置(冷媒ポンプ)側からの冷却液(例えばロングライフクーラント(LLC))が供給される図示しない冷却液入口と、その内部を流通した冷却液を冷媒供給装置に戻すための冷却液出口とを有する。これにより、冷媒供給装置からの冷却液を冷却パイプ2の内部に供給してケーブル3を冷却することが可能となるので、ケーブル3の線径を縮小化することができる。なお、冷媒供給装置としては、例えばモータMG1,MG2やインバータ41,42に冷却液を供給するものを兼用することができる。
【0014】
各ケーブル3は、図2に示すように、PCUケース45に対して固定されるコネクタ(コネクタハウジング)4を介して接続対象(この場合、インバータ41または42)に接続される。各コネクタ4は、少なくともケーブル3側の端部(図中右側の端部)が円環状の断面形状を有するように樹脂等により形成される。図示するように、各コネクタ4の内部には、インバータ41または42の図示しない端子に電気的に接続される端子5が配置されており、各ケーブル3の先端は、例えば圧入等により対応する端子5に電気的に接続される。更に、コネクタ4の内周面とケーブル3の外周面との間には、例えばOリングといった内側シール部材6iが配置される。更に、コネクタ4の内周面とケーブル3の外周面との間には、内側シール部材6iよりも外側(図中右側)に位置するように内側リテーナ7iが配置され、これにより、各コネクタ4により各ケーブル3が保持される。
【0015】
また、コネクタ4のケーブル3側の端部は、図2に示すように、冷却パイプ2の一端部(図中左側の端部)内に配置され、コネクタ4の外周面と冷却パイプ2の内周面との間には例えばOリングといった外側シール部材6oが配置される。更に、コネクタ4の外周面と冷却パイプ2の内周面との間には、外側シール部材6oよりも外側(図中右側)に位置するように外側リテーナ7oが配置され、これにより、コネクタ4は、冷却パイプ2により保持される。そして、内側シール部材6iによって冷却パイプ2からコネクタ4の内部への冷却液の侵入が阻止されると共に、外側シール部材6oによって冷却パイプ2とコネクタ4との間を介した冷却液の接続対象側(インバータ41,42側)への侵入が阻止される。
【0016】
更に、コネクタ4は、PCUケース45に固定されたシェルカバー8内に配置され、冷却パイプ2の一端部(図中左側の端部)は、当該シェルカバー8内に嵌合される。すなわち、PCUケース45には、それぞれ金属等の導電性材料からなる3個のシェルカバー8が電気的に接続されている。各シェルカバー8は、円環状の断面形状を有してコネクタ4のケーブル3側の端部を覆う端部8a(図中右側の端部)を含み、各冷却パイプ2の一端部は、対応するシェルカバー8のケーブル3側の端部8a内に嵌合される。そして、各冷却パイプ2は、シェルカバー8の端部8aをカシメることにより当該シェルカバー8に固定される。これにより、各冷却パイプ2は、シェルカバー8を介してPCUケース45に電気的に接続され、PCUケース45をアースすることにより、各冷却パイプ2をアースし、それにより各ケーブル3から発生する電磁ノイズを除去することができる。
【0017】
本実施形態において、冷却パイプ2の一端部(図中左側の端部)は、図2および図3に示すように、内側リテーナ7iおよび外側リテーナ7oが端部8aの端面(図中右側の端面)よりも端子5側(図中左側)に位置するようにシェルカバー8の端部8aに嵌合される。そして、冷却パイプ2の一端部は、端部8aの内側リテーナ7iおよび外側リテーナ7oの外側端面(図中右側の端面)よりも冷却パイプ2の他端側(図中右側)の領域8bを図3に示すようなカシメ機9を用いてカシメることによりシェルカバー8に固定される。このように、内側リテーナ7iおよび外側リテーナ7oよりも冷却パイプ2の他端側、すなわち外側シール部材6oよりも冷却パイプ2の他端側で端部8aをカシメることにより、カシメによる荷重が作用する部分とコネクタ4と冷却パイプ2との間の外側シール部材6oとを冷却パイプ2の軸方向に遠ざけ、カシメ作業に際して端部8aを介して外側シール部材6oに大きな荷重が加えられるのを抑制することができる。これにより、端部8aをカシメることによる外側シール部材6oの変形を抑制し、当該外側シール部材6oのつぶれ代を全周にわたって概ね一定にすることが可能となる。
【0018】
以上説明したように、上記実施形態では、コネクタ4のケーブル3側の端部が冷却パイプ2の一端部内に配置されると共に、コネクタ4の外周面と冷却パイプ2の内周面との間には外側シール部材6oが配置される。そして、冷却パイプ2の一端部は、コネクタ4のケーブル3側の端部を覆うシェルカバー8の端部8a内に嵌合されると共に、外側シール部材6oよりも冷却パイプ2の他端側で端部8aをカシメることによりシェルカバー8に固定される。これにより、カシメ作業に際して、コネクタ4と冷却パイプ2との間の外側シール部材6oに大きな荷重が加えられるのを抑制し、外側シール部材6oのつぶれ代を全周にわたって概ね一定にすることが可能となる。この結果、外側シール部材6oによるシール性能を良好に確保することができるので、冷却パイプ2内に収容されるケーブル3と接続対象とを電気的に接続するコネクタ4の外周側から冷却液が接続対象側、すなわちコネクタ4とシェルカバー8との間の空間に侵入するのを良好に抑制することが可能となる。
【0019】
なお、外側シール部材6oの変形を抑制してつぶれ代を全周にわたって概ね一定するためには、上記実施形態のように内側リテーナ7iおよび外側リテーナ7oよりも冷却パイプ2の他端側の領域8bをカシメることが好ましい。ただし、シェルカバー8の端部8aの寸法等によっては、外側シール部材6oよりも冷却パイプ2の他端側で内側リテーナ7iおよび外側リテーナ7oの外周側から端部8aをカシメてもよい。また、上述の液冷ケーブル1は、例えば単相ケーブルといった3相高圧ケーブル以外のものとして構成されてもよく、液冷ケーブル1の接続対象は、モータMG1,MG2やインバータ41,42に限られるものではない。更に、上述のハイブリッド自動車10は、いわゆる2モータ式の動力出力装置20を含むものであるが、本発明が、いわゆる1モータ式の動力出力装置を含むハイブリッド自動車や、電気自動車、更にはエンジンのみを走行用の動力発生源として含む車両にも適用され得ることはいうまでもない。
【0020】
ここで、上記実施形態における主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施形態では、内部に冷却液が供給される冷却パイプ2と、冷却パイプ2内に収容されると共にコネクタ4を介して接続対象に電気的に接続されるケーブル3とを含む液冷ケーブル1が「液冷ケーブル」に相当し、コネクタ4のケーブル3側の端部の外周面と、冷却パイプ2の一端部の内周面との間に配置される外側シール部材6oが「シール部材」に相当し、少なくともコネクタ4のケーブル3側の端部を覆うと共に冷却パイプ2の一端部が嵌合される端部8aを有するシェルカバー8が「シェルカバー」に相当する。ただし、上記実施形態における主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、上記実施形態はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、例えば車両といった液冷ケーブルを用いた装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 液冷ケーブル、2 冷却パイプ、3 ケーブル、4 コネクタ、5 端子、6i 内側シール部材、6o 外側シール部材、7i 内側リテーナ、7o 外側リテーナ、8 シェルカバー、8a 端部、8b 領域、9 カシメ機、10 ハイブリッド自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、20 動力出力装置、21 トランスアクスル、22 ダンパ、23 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、25 トランスアクスルケース、26 変速機、27 ギヤ機構、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 プラネタリキャリア、41,42 インバータ、45 PCUケース、50 バッテリ、DW 車輪、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却液が供給される冷却パイプと、該冷却パイプ内に収容されると共にコネクタを介して接続対象に電気的に接続されるケーブルとを含む液冷ケーブルのコネクタ構造において、
前記コネクタの前記ケーブル側の端部は、前記冷却パイプの一端部内に配置されると共に、該コネクタの外周面と前記冷却パイプの内周面との間にはシール部材が配置され、前記冷却パイプの前記一端部は、少なくとも前記コネクタの前記ケーブル側の端部を覆うシェルカバー内に嵌合されると共に、前記シール部材よりも前記冷却パイプの他端側で前記シェルカバーをカシメることにより該シェルカバーに固定されることを特徴とする液冷ケーブルのコネクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74710(P2013−74710A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211679(P2011−211679)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】