液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置
【課題】 気相状態で安定的にガス消費設備に送気可能な、エネルギー効率が高く機能的に優れた液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供すること。
【解決手段】 熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部6と、充填容器1の底部1aおよび外周部1bに接するように配設された空間部1cと、空間部1cの底部1aに近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管4の内部に配設された加温部5と、これらを制御する制御部を有するとともに、液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、該制御部において、熱媒体供給部6での熱媒体の制御温度および供給流量、加温部5に付加する熱量を制御し、充填容器1内部の気相圧力が、熱媒体の制御温度における液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【解決手段】 熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部6と、充填容器1の底部1aおよび外周部1bに接するように配設された空間部1cと、空間部1cの底部1aに近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管4の内部に配設された加温部5と、これらを制御する制御部を有するとともに、液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、該制御部において、熱媒体供給部6での熱媒体の制御温度および供給流量、加温部5に付加する熱量を制御し、充填容器1内部の気相圧力が、熱媒体の制御温度における液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置に関するもので、例えば、半導体用特殊材料ガスなどのように、使用時あるいは送気時に気化処理を必要とする液化ガスの気化処理に用いる液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いて処理された液化ガスを供給する液化ガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスや各種プロセスで使用される特殊材料ガスや各種のプロセスガスには、BCL3,SiH2CL2,HF、CLF3、WF6等に代表される蒸気圧が大気圧かそれ以下と非常に低い液化ガスがよく用いられている。このような低蒸気圧の液化ガスは、他の材料ガスと同様に、通常高圧ガス容器に液体状態で充填されて当該液化ガスを消費する半導体製造工場や各種のプロセスに納入され、納入された高圧容器から、または該高圧容器から当該工場やプロセスに設けられた別の容器に移充填された後に、気化してガス消費設備まで供給される(以下この容器を「充填容器」あるいは単に「容器」という)。このとき、液化ガスの消費設備である半導体製造プロセス装置や各種のプロセス装置(以下「プロセス装置」という)では、これらの液化ガスを液体状態ではなく、気体状態で受け入れ気体状態で使用される。従って、当該容器に充填された液化ガスは、シリンダーキャビネットと呼ばれるガス供給設備に収納され、その容器内で気化させて気体状態にしてプロセス装置に繋がれた配管に送り出すようになっている。
【0003】
一般に、液化ガスを気化させて供給する場合、気相部のガスが容器外に放出されると、気相部の圧力は低下する方向に動くが、実際にはこうした気相部圧力低下の動きを是正するように直ちに液化ガスが液相部から気化し気相部の圧力低下を抑制する。しかし、この気化に必要な熱エネルギーは、液相部が持つエネルギーを消耗する形でなされるため、液相温度が徐々に低下し、液相温度の低下に伴い気相部の蒸気圧も低下する結果、液化ガスの供給圧力は徐々に低下していき、最後には液化ガスを所望の流量で供給することができなくなるという問題が発生する。つまり、容器の外部から自然に進入する熱量は、容器内の温度が外部の温度に対して低下することにより容器内外に外高内低の温度差が生じてから初めて寄与するものであり、この圧力不足による供給量不足の問題を解消するには、自然に進入する熱量だけでは不十分であるという技術的課題がその背景となっている。
【0004】
こうした問題に対して、従来一般には図12(A)および(B)のような構成の液化ガスの供給設備100が用いられることがある。具体的には図12(A)は、現場据付式の容器101に対し、その周囲および底部の周りに空間102を設け、図12(B)は、搬送式の容器103に対し、その周囲に空間104を設けて、各々の空間に室温よりも高い温度の熱媒体を熱媒体供給部105から供給し、常時循環させる方式である。この方式は、液化ガスの温度を予め室温よりも高くしておくことによって、液相部Lの液化ガスが持つ内部エネルギーを高めているだけの効果であり、液相部Lの温度は、液相部Lから気化熱を奪われることにより徐々に低下することには変わりない。ここで、容器101,103の外周を循環している熱媒体からの熱の進入が液相温度の低下を抑制するのに寄与し出すのは、液相部Lからのエネルギーを消費しながら気化した結果、液相温度がある程度低下して容器内外に外高内低の温度差が発生してからである。従って、元々蒸気圧が低い低蒸気圧液化ガスの供給設備としては、図12(A)および(B)のような単に液相部Lの温度を上げるだけの対応では、やはり遅かれ早かれ供給圧力低下による供給量不足の問題が生じることとなる。
【0005】
また、液化ガスの蒸気圧が室温で大気圧かそれよりも低い低蒸気圧液化ガスについて、こうした加温する方法を適用した場合、供給配管を流れるのは配管周囲温度よりも高い温度での飽和蒸気圧となり、この飽和蒸気が供給配管で冷却されることによって再液化することとなる。半導体プロセス等で用いられる低蒸気圧液化ガスは、HFやCLF3に代表されるようにほとんどが腐蝕性ガスであり、しかも強い腐蝕性を有することから配管内で再液化すると、配管の腐蝕、半導体プロセスで最も回避しなければならない腐蝕生成物の同伴によるプロセスの金属汚染、バルブ等の狭隘部での再液化した凝縮液による液封、あるいはそのクラック現象による圧力変動といった問題の誘因となる。この問題を解消するには、供給配管およびガス消費設備内のすべての接ガス部分の温度を、液化ガス充填容器の加温温度よりも高くした状態に保持しなければならないという、極めて管理の難しい温度制御が求められることになり実現は大きな負荷となる。このように、低蒸気圧液化ガスの場合には、配管およびガス消費設備が置かれている環境温度よりも低い温度で気化蒸発させて上記再液化の問題を回避しながら、供給量をいかに高めて安定的に供給できるかという問題をクリアしなければならないという困難な問題を常に孕んでいる。
【0006】
一方、搬送用容器の底部を加温して供給圧力の低下を防止することを主眼として、例えば、図13に示すような構成を有する液化ガス供給装置が提案されている。具体的には、ガス容器210を載置する設置台211と、ガス容器210の底面に向けて熱媒体を噴出する熱媒体噴出ノズル212と、該熱媒体噴射ノズル212に温度調節した熱媒体を供給する熱媒体供給ライン213と、ガス容器210を囲むように設置台211上面に設けられた半割状の筒対からなる容器カバー214とを有し、上記熱媒体噴出ノズル212からガス容器底面に向けて高速で噴出した熱媒体は、ガス容器210の底面を加温あるいは冷却した後、スリット219cの外周側を通って容器カバー214内周の空間225に排出される(例えば特許文献1参照)。
【0007】
このように、容器の外部から容器の壁面を介して容器内部の液化ガスの液相部に熱を伝えることによって液相部の温度低下を抑制しようとする試みは、蒸気圧が比較的高い蒸気圧を有する液化ガス、例えばHCL、HBr、NH3、CL2等には十分な有効性を発揮する一方、本発明が対象とするCLF3、HF、WF6等の蒸気圧が大気圧付近か大気圧よりも低く、圧力の許容低下幅が極めて小さい低蒸気圧液化ガスに対しては、熱伝導の応答性の悪さから十分な対応ができず、液化ガスの消費流量が大きい場合には、圧力不安定や長期連続供給ができないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−227597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような低蒸気圧液化ガスを安定的に供給する上で解決しなければならない技術的課題を要約すると次のようになる。
【0010】
(i)容器外部からの熱補給の遅延による供給圧力低下が、プロセスの質量流量制御機能不良を引き起こすという問題
低蒸気圧の液化ガスについても、他の液化ガスおよび圧縮ガスの場合と同様、容器内で気化した液化ガスをプロセス装置にまで送るためのエネルギーは、液化ガスが有する蒸気圧という圧力エネルギーだけである。従って、容器内の液化ガスの温度が変動すると液化ガスの蒸気圧力も変動し、引いては液化ガスの供給圧力も変動することになる。一般の高圧ガスであれば圧力調整器(減圧弁)による圧力安定化を図ることができるが、低蒸気圧の液化ガスでは蒸気圧そのものが元々極めて低いため、圧力調整器による圧力の平坦化が期待できない。従前の方式では、気化する際に液相から瞬時に奪われる気化熱が容器外部から速やかには補給されないので液相温度が低下し、それに伴う蒸気圧の変動がそのまま当該液化ガスの供給圧力の変動となり、プロセスへの供給圧力の変動からプロセス装置内の質量流量も変動し、処理プロセスの不良に繋がることがあった。
【0011】
(ii)図12(A)および(B)のように、従来の対応である単に液化ガスの温度レベルを上げることにより蒸気圧を上げ液化ガスの供給圧力の変動を抑えようとする試みは、前述のように供給配管途上ないしはガス消費設備内での液化ガスの再液化を起こすという別の問題を生じてしまう。従って、低蒸気圧液化ガスの供給においては、液化ガスを室温よりも低い温度で気化させながら、それによって元々低い蒸気圧がさらに低くなって液相温度の低下の許容幅が狭まっても、それを上回る熱補給能力を持った気化供給装置が望まれている訳である。ここに、低蒸気圧液化ガスにおける他のガスにない供給の難しさの本質がある。
【0012】
(iii)充填気化容器周辺温度の変動の影響
また、低蒸気圧液化ガスは、元々蒸気圧が大気圧付近ないしはそれ以下と低いので、従前の液化ガス供給装置では大きな問題とならなかった周囲環境温度の変動によって引き起こされる気化する液化ガスの圧力変動も無視できず、この圧力変動がプロセス装置の質量流量の変動となるという問題もあった。従来、図12(A)および(B)に示すような、液化ガス充填容器の周囲を室温よりも高い温度に恒温コントロールする方法が採られることがあるが、この方法では、供給配管途上やプロセス装置内部接ガス部で再液化を起こすので良い解決方法ではないことは前述の通りである。
【0013】
(iv)容器内の液化ガスの気化は、気相と接する液相の表面層で起こるので、この部分の温度がまず冷え、瞬時に液相全体の温度が平均して冷えるわけではない。従って、液相の大部分は温度がすぐには下がらないので、容器の内外温度に差がすぐには生じない。温度勾配がなければ容器外部からの熱進入はないので、勢い液化ガス自身がもっているエネルギーを消耗しながら蒸発を続けることになる。気化現象が発生している液相表層部とその他の部分の液相部間で発生した温度不均衡状態は、液相内を熱が伝わる効果と、温度降下に伴う液相の比重の増加によって生ずるマス(物質)の移動、すなわち対流運動によって徐々に液相全体の温度が降下していく。その結果、徐々に容器の内外温度勾配が生し、そこではじめて容器の外部から熱が補給され始めることとなる。通常、気液界面の液相とその他の部分の液相間の熱およびマスの移動は緩慢であるので、気液界面の液相温度に支配される蒸気圧は徐々に低下することになる。この外部からの熱補給の遅延に伴う気相部の圧力低下を防止する方法として、気相部の圧力変化をモニタし、圧力が下がるとそれに連動して熱媒体を容器表面に吹きつけることにより、容器外部から容器内部へ熱を強制的に起こさせ、気相部の圧力の低下防止を図る加温制御法が考案されている(例えば特許文献1〔請求項6〜8〕および関連記載事項参照)。しかし、本発明が対象とする蒸気圧が大気圧かそれよりも低い低蒸気圧しか持たない液化ガスでは、許容圧力変動幅が他の液化ガスよりもさらに小さいので、こうした方法では、当該許容変動幅に収めることは困難であった。
【0014】
(v)また、気相部の圧力変化をモニタする方法では、確かに気相部圧力が低下したのを感知して、その時点で充填容器の外周部温度を一時的に高めることにより外部からの熱補給を促進させ、気相部の圧力の低下を防ぐ効果はあるが、液化ガスの消費が停止した時には気相部の圧力に連動して加温制御することから、液化ガスの気液界面付近の液相表層部の温度が回復すると、その他の液化ガス液相温度が十分に回復していなくても外部からの熱補給が停止することとなる。一旦この状態になると、液相上層部の液相温度が高くなりその部分の液比重が他の液相部の液比重よりも軽くなるため、加温停止後は表層部だけ温度が回復し他は回復していないという状態で安定し、熱の均一化に寄与するはずの対流も起こさなくなり、液全体の平均温度は回復しないまま、次のガス消費開始を迎えることとなる。低蒸気圧液化ガスの気化供給装置では、このようなガス消費が停止するたびに液化ガスがもつエネルギーが減少することによる供給開始時の圧力変動の影響は無視できないので、何らかの改善が求められていた。
【0015】
本発明の目的は、こうした課題に対応し、気相状態で安定的にガス消費設備に送気可能な、エネルギー効率が高く機能的に優れた気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することにある。特に、低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスの熱処理に用いることができる液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0017】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法であって、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部に、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【0018】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置であって、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部と、熱媒体を温度制御して、該空間部に循環供給する熱媒体供給部と、前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部と、これらを制御する制御部を有するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、該制御部において、前記熱媒体供給部での熱媒体の制御温度および供給流量、前記加温部に付加する熱量を制御し、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【0019】
気化手段によって液化ガスなどの液化ガスを安定的に供給するためには、供給開始時の温度条件とともに、供給開始後の気化熱による液相の温度維持が重要となる。このとき、気相部の圧力すなわち液化ガスの蒸気圧を直接支配するのは、液相全体の温度ではなく、気液界面の極めて局所的な液相の表層部の温度であるから、液化ガスを安定的に送るためにはこの液相の表層部の温度をいかに維持するかがポイントとなる。しかるに従前の方法では、この気化熱が局部的にかつ選択的に奪われる気液界面の極薄い液相表層部の温度維持が困難であった。この表層部の液相温度を維持するためには容器外部から気化熱に相当する熱量を応答性よく供給できることとともに、容器の壁面を伝って供給される熱量を速やかに液相表層部へ運ばなければならない。このためには液相内の静止状態での熱伝導のみに頼ったのではまったく間に合わない。壁面を伝わってくる熱をいかに素早くこの気液界面の液相表層に移動させるかに掛かっている。本発明は、
(i)容器の外周部および底部と接触するように熱媒体が循環可能に供給される空間部を有することによって、容器周辺環境温度の影響をなくすことができる。
(ii)容器の底面に集中的に熱エネルギーを付加できる構造を採ることにより、容器の底部から選択的に熱を補給し液相内に上昇流を積極的に起こさせるとともに、容器の外周側面との温度差を発生させることによって、液化ガスの液相部に積極的な対流を形成させ、補給された熱を速やかに気化現象が発生している気液界面部送り込み、液相表層部の液相温度の低下を防止して安定な気相圧力を確保する。
(iii)液化ガスの消費が停止している状態でも、常に液相部の対流を発生させ、気相部の圧力が、容器外周部を循環する熱媒体の温度における該液化ガスの飽和蒸気圧よりも高い圧力に維持する。具体的には、容器底面部に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与える加温器を設け、気相部の圧力に連動して付加する熱量を制御する。
(iv)さらに、後述するように、容器の底面中央部に対して直角方向の噴射口を有するノズルからの液相の熱媒体を噴射させることによって、容器の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図るとともに、熱媒体の噴流が照射される容器壁面の肉厚を他の部分よりも薄くすることによって、熱媒体から容器内の液相部へ伝熱する総括伝熱係数の改善を図って、熱媒体からの容器の壁面へ伝わる熱伝導性をアップすることができる。
という機能を有することを特徴とするものである。
【0020】
つまり、既述の課題の1つである環境温度の変動に伴う圧力変動に対して、本発明は、恒温の熱媒体供給部によって常に再生される熱媒体を、液化ガスを充填した容器の外周部および底部に常に循環させる構造をとることで、その解消を図るものである。また、もう1つの課題である熱収支バランス不全による圧力変動に対して、本発明は、液化ガスが気化する際に液相特にその表層より奪われる気化熱に相当する熱を速やかに補填するように、充填容器の底面中央部に対して直角方向の噴射口を有するノズルから熱媒体を噴射させることによって、液相の中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して液相温度の均一性を確保することで、その解消を図るものである。
【0021】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法にあって、
前記充填容器の底部と外周部の各々に接するように配設された2つの独立した空間部Sa,Sbに、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記底部に接する空間部Saに供給される熱媒体を、該空間部Saの内部または空間部Saに内設された熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【0022】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置にあって、
熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部と、
前記充填容器の底部に接するように配設された空間部Saと、
前記充填容器の外周部に接するように配設され、前記空間部Saと独立した空間部Sbと、
前記熱媒体供給部から供給された熱媒体が、前記空間部Sbに配設された導入部から空間部Sbに導入された後に、前記空間部Sbに配設された供出口から供出される流路Bと、
該流路Bから供出された熱媒体が、空間部Saに配設された熱媒体導入管より空間部Saに導入される流路Aと、
前記熱媒体導入管の内部または空間部Saの内部に配設された加温部を有し、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記流路Bから供出された熱媒体が、前記加温部によって付加的に加温されることを特徴とする。
【0023】
上記のように、本発明における熱媒体は、単に容器外周部の空間部の温度を均一に制御し、容器内部の液相部の温度を一定にするだけではなく、容器や配管等の周囲温度と液相温度の適正な温度差を形成するとともに、液相部の中心部と周辺部の温度差を作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の均一性を確保するという優れた機能を有している。ここで、液相部の中心部の温度の制御には、容器の底部からの温熱の付加が重要な役割を果たすとともに、液相部の周辺部の温度の制御には、容器の外周部の熱媒体の存在が重要な役割を果たしている。つまり、熱媒体が導入される空間部において、容器の底部に接する空間部Saと容器の外周部に接する空間部Sbとは、その役割が相違することから、各々独立した空間を形成することが可能であり、これに加えて以下のような、いくつか優れた機能・効果を得ることができる。
(i)独立した空間とすることによって、各空間部の独立した温度制御が容易となり、制御精度を上げることができる。従って、本発明のように、容器の底面と側面での小さな温度差を正確に制御することを目的とする場合には有効である。
(ii)本構成のように、先に温度制御された熱媒体を空間部Sbに導入し、供出された熱媒体を空間部Saに導入して加温することによって、供出時に温度低下が生じた熱媒体を加温して、該制御温度よりも高い一定温度の熱媒体として容器の底部に照射することができる。
【0024】
本発明は、上記液化ガスの気化方法であって、前記熱媒体導入管の内部に設けられた前記加温部によって加温され、該熱媒体導入管から供出される熱媒体を、前記充填容器の底部の内の中心部に選択的に照射することにより充填容器中心部での液化ガスへの入熱を他の底部よりも上昇させて、前記液相内に液相中心部で上昇、液相の外周部で下降する対流を発生させることを特徴とする。
上記のように、液相内部での対流の形成は、液化ガスの送気に伴う液相表層部の液相温度の低下を防止して安定な気相圧力を確保するために重要な機能を果たしている。本発明は、こうした対流の形成をより効率的に行うためには、加温された熱媒体の照射を容器の底面の特に中心部に集中的に行うことが好ましいことを見出したものである。つまり、容器の底面の中心部に集中的に熱エネルギーを付加できる構造を採ることにより、該中心部に選択的に熱を補給し液相内の中心部で上昇流を積極的に起こさせるとともに、容器の外周側面からの付加的熱補給はしないように容器外面の熱媒体の流路を設定することによって、液化ガスの液相に積極的な対流を形成させ、容器壁面を伝って補給された熱を速やかに、気化現象が発生している気液界面部送り込み、液相表層部の液相温度の低下を防止して安定な気相圧力を確保することができる。具体的な手段として、後述するように、噴射ノズルから容器の底面に直角に熱媒体を噴射して入熱する方法や容器の底面中央部の肉厚を他部よりも薄肉にする構成などによって実現することが可能となる。
【0025】
本発明は、上記液化ガスの気化装置であって、前記充填容器の底部と接する前記空間部に、前記熱媒体導入管に繋がり該底面の中央部に接する空間部の壁面に直角に熱媒体を噴射させるノズルを配設し、前記熱媒体導入管の内部に加温部が配設されることを特徴とする。
【0026】
上記のように、液相内部での対流の形成をより効率的に行うためには、加温された熱媒体の照射を容器の底面の特に中心部に集中的に行うことが好ましい。本発明は、その具体的な手段として、噴射ノズルから容器の底面に直角に熱媒体を噴射して入熱するもので、容器の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図ることによって、液相内部での対流の形成をより効率的に行うことができる。さらに、そのノズルが配設され熱媒体が導入される熱媒体導入管の内部に加温部を配設することによって、一層正確に制御された入熱を行うことができ、安定した液相内部での対流の形成を確保することができる。
【0027】
本発明は、上記液化ガスの気化装置であって、前記充填容器の気相部に連結して圧力検出部を設けるとともに、その測定値を指標として、前記加温部に付加する熱量および/または熱媒体の流量を制御する機能を有することを特徴とする。
【0028】
上記のように、特に低蒸気圧の液化ガスを安定的に気化するには、気液界面の温度制御が重要である。本発明は、容器周囲の温度条件安定化と安定的な温熱の供給を確保し、容器底部を集中的に加温し液相内に対流を形成させて気液界面への温熱の安定供給を確保することによって、安定的な気化条件の確保を図るとともに、容器内の気相部の圧力(蒸気圧、以下「気相圧力」という)を常時モニタし、モニタされた気相圧力が低下すると直ちに加温操作を行うことによって、微小変化にも迅速な対応を可能とするものである。すなわち、気相圧力の低下に応じてオン・デマンドに熱媒体の導入流路内に組み込まれた加温部(浸漬ヒータ)を作動させ、このヒータから付加された熱により容器周囲を流れる熱媒体(熱媒体供給部から循環供給される)の温度を恒温化温度よりも一時的に上げることによって、熱収支バランス不全による圧力変動という課題をさらに効果的に解消することを図ったものである。
【0029】
本発明は、上記液化ガスの気化装置であって、前記充填容器の底面中央部の肉厚が他部よりも薄肉であることを特徴とする。
【0030】
液化ガスなどの充填容器は、耐圧あるいは搬送時等の破損防止のために厚肉の堅牢な金属製の容器が用いられる。一方、本発明が目的とする容器内の液相部あるいは気相部の温度の安定化の観点からは、容器の厚みは極力薄いことが好ましい。本発明は、上記のように、充填容器の底面中央部が、充填容器内部の液相温度の均一化を図る上において重要な部位であり、また充填容器の堅牢性を損なわずに比較的薄肉にすることが可能な部位であるとの知見を基に、容器の底面中央部の肉厚が他部よりも薄肉にして高い伝熱機能の確保を図ったものである。これによって、容器の底面中央部に対して熱媒体を噴射し、さらに迅速に液相の中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して液相温度の均一性を確保することが可能となった。特に、容器の底面中央部に対して直角方向の噴射口を有するノズルからの液相の熱媒体を噴射させ、さらに熱媒体の噴流が照射される容器壁面の肉厚を他の部分よりも薄くした場合にあっては、前者によって容器の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図るとともに、後者によって熱媒体から容器内の液相部へ伝熱する総括伝熱係数の改善を図って、熱媒体からの容器の壁面へ伝わる熱伝導性を向上させることができる。
【0031】
本発明は、液化ガスが充填された充填容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガス供給装置であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の気化装置を用い、前記充填容器に充填された液化ガスの気化処理、および/または前記ガス消費設備近傍に設置され前記配管送気された後に再液化して貯蔵された液化ガスの気化処理を行うことを特徴とする。
【0032】
液化ガス供給装置は、例えば半導体製造プロセスなどにおいて重要な役割を果たすとともに、容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する場合においても、液化ガスの安定した供給が要求される。特に、低蒸気圧の液化ガスの場合、気化装置の設置環境条件や送気開始後の気化熱による供給量の低下などの課題は、従前の液化ガス供給装置では十分に対応することができなかった。本発明は、こうした課題に対して、上記気化装置を用い、充填容器内の液化ガスの気液界面温度の安定化を図り気相圧力つまり送気圧力の安定化を図るもので、これによって、低蒸気圧の液化ガスの場合であっても、プロセス装置に対して安定した送気圧力を確保し、所望の流量を安定的に供給することが可能な液化ガス供給装置を提供することが可能となった。また、容器において気化させて送気された液化ガスを、一旦ガス消費設備であるプロセス装置側で強制的に液化させた後、再度、本発明に係る気化装置を用いて気化させてプロセス装置に送気することによって、安定した送気圧力の確保を図ることが可能となった。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスについても、気相状態で安定的にガス消費設備に送気可能な、エネルギー効率が高く機能的に優れた液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。充填容器の底部および外周部に接するように配設され熱媒体が供給される空間部と、熱媒体を温度制御して該空間部に循環供給する熱媒体供給部と、空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部と、これらを制御する制御部を有するとともに、該制御部において、熱媒体供給部での熱媒体の制御温度および供給流量、加温部に付加する熱量を制御し、充填容器内部の気相圧力が、熱媒体の制御温度における液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整する液化ガスの気化装置が基本となる。ここでは、液化ガスとして、HF、CLF3、BCL3、SiH2CL2、WF6等に代表される低蒸気圧の液化ガスを処理する場合について説明する。
【0035】
<本発明に係る液化ガスの気化装置の基本構成例>
図1は、本発明に係る液化ガスの気化装置(以下「本気化装置」という)の基本構成例を示す概略図である。本気化装置は、主として、液化ガスが充填される充填容器1、その底部1aおよび外周部1bに接するように熱媒体が供給される空間部1cを形成するジャケット2、底部1aの底面中心部M近傍に熱媒体を噴射するノズル3、ノズル3へ熱媒体を供給するための熱媒体導入管4、供給される熱媒体を加熱する浸漬ヒータ5(加温部に相当)、および温度調節された熱媒体を供給する熱媒体供給部6から構成される。充填容器1の上部には圧力センサ(圧力検出部に相当)7が配設され、内部に充填された液化ガスの気相部Gの圧力を検出する。液化ガスは、液体状態で充填口1dから充填容器1に供給され、気化されて導出口1eから気体状態で供出される。これらは制御部(図示せず)によって統括的に制御される。
【0036】
このとき、冷却ジャケット2の外周および底部と接触するように熱媒体が流通可能な空間部1cを有することによって、充填容器1の周辺から温熱を供給するとともに、充填容器1の底面中心部M近傍に対して直角方向に熱媒体を噴射させることによって、液相部Lの中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して、液相温度の均一性を確保することができる。これによって、容器内部の液相部Lから均一に液化ガスを気化させることができ、安定的な液化ガスの供給ができる。また、熱媒体供給部に浸漬ヒータ5を組み込み、供給される熱媒体を加熱することによって、液化ガスの供給量すなわち気化量に応じて液相部Lの液化ガスから奪われる気化熱を、速やかに補填できるので、さらに安定した圧力で液化ガスを供給できる。
【0037】
充填容器1は、図1に例示するように液化ガスを充填口1dから補充が可能な定置式移充填容器を用いる場合以外に、液化ガスを充填した状態で搬送され容器ごと交換して補充する搬送用容器を用いることが可能である。ここで、充填容器1の底面中央部Mの肉厚が他部よりも薄肉であることが好ましい。高い伝熱機能の確保を図り、当該部位に噴射される熱媒体からの温熱を内部の液相部Lの中央部に伝達し、液相内に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して液相温度の均一性を確保することを可能とするものである。具体的には、実証の結果、充填容器1の底面の面積の約1/2に相当する円形部の肉厚(直径にして1/√2の円形領域)を、それを取り囲むドーナツ状の底部1aおよび充填容器1の外周部1bの肉厚よりも薄くする構造とすることが好ましいことが判った。
【0038】
また、充填容器1の底部1a側の空間部1cには、熱媒体が噴出する速度を上げるためのノズル3および熱媒体導入管4が設けられ、熱媒体供給部6から供給された熱媒体は、供給口4a、熱媒体導入管4、ノズル3、空間部1cおよび供出口2aを介して熱媒体供給部6に戻る循環流路を形成する。温熱を有する熱媒体がノズル3から噴射され、充填容器1内部の液相の液化ガスに伝熱することによって、気化熱による液相温度の低下を防止することができる。このとき、ノズル3の先端形状を、充填容器1の底部1aの面積の約1/2の大きさのフラットな円形とし、ノズル3とそれに対向する充填容器1の底部1aの間に狭隘部3aを設け、充填容器1の底面中心部M近傍に噴射された恒温流体がこの狭隘部3aを通ることにより、空間部1cの他の部分よりも熱媒体の流速および圧力を上げるような構造にすることが好ましい。
【0039】
次に、こうした構成によって機能する、本気化装置特有の作用・機能について説明する。つまり、本気化装置は、以下のような作用・機能を有している。
(a)充填容器1周辺のジャケット2内部の空間部1cに熱媒体を循環的に供給することによって、充填容器1の外部環境温度の変動に伴う影響を遮断し、供給圧力の変動を防止する。
(b)充填容器1の底面中央部Mに直角に熱媒体を噴射させることによって、充填容器1の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図るとともに、さらに熱媒体の噴流が照射される容器壁面の肉厚を他の部分よりも薄くすることによって、熱媒体から充填容器1内部の液相部へ伝熱する総括伝熱係数の改善を図って、熱媒体からの充填容器1の壁面へ伝わる熱伝導性をアップする。
(c)容器内部の液相部の温度を一定にするだけではなく、容器や配管等の周囲温度と液相温度の適正な温度差を形成するとともに、液相部の中心部と周辺部の温度差を作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の均一性を確保する。前者において、充填容器1のジャケット2内部の空間部1cの熱媒体、つまり、循環熱媒体の制御温度が寄与し、後者において、ノズル3から噴出する熱媒体、つまり、浸漬ヒータ5の制御温度が寄与することから、両者に温度差を設けた非平衡条件を形成することによって、液相表層部の温度維持が可能となる。
(d)底面中央部Mに集中的に熱エネルギーを付加できる構造を採ることにより、底面中心部Mに選択的に熱を補給し液相内の中心部で上昇流を積極的に起こさせるとともに、充填容器1の外周側面からの付加的熱補給はしないように容器外面の熱媒体の流路を設定することによって、液化ガスの液相に積極的な対流を形成させ、充填容器1の壁面を伝って補給された熱を速やかに、気化現象が発生している気液界面部送り込み、液化ガスの気化熱と充填容器1の周囲からの温熱供給量の熱収支バランスの不全を抑制し、液相表面の温度変化に伴う圧力変動を防止することができる。
(e)液化ガスの消費が停止している状態でも、常に液相部の対流を発生させ、気相部の圧力が、容器外周部を循環する熱媒体の温度における該液化ガスの飽和蒸気圧よりも高い圧力に維持することができる。具体的には、容器底面部に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与える加温器を設け、気相部の圧力に連動して付加する熱量を制御する。
【0040】
〔熱媒体の温熱制御〕
上記(a)〜(d)のような作用・機能を同時に確保するためには、熱媒体供給部6から供給される熱媒体の温熱の総量と充填容器1の底面中央部Mに直角に噴射させる熱媒体の温熱量を管理する必要がある。つまり、熱媒体供給部6から供給される熱媒体の温度および供給量を制御するだけではなく、ノズル3から噴射させる熱媒体の温熱、具体的には熱媒体導入管4の温度および供給量を制御することが重要となる。
【0041】
(1)熱媒体供給部6から供給される熱媒体の温熱制御
充填容器1に対して常に周囲から循環的に温熱が提供され、液化ガスの液相温度の均一性を維持するためには、供給される熱媒体の温度が重要な制御対象となる。熱媒体供給部6から充填容器1に供給される熱媒体の温度は、従来は本気化装置から送気する液化ガスの蒸気圧(供給圧力)に応じて、次のように決定されていた。すなわち、図2に示すように、液化ガス固有の温度−飽和蒸気圧曲線において、液化ガスの供給圧力(図2中のPv値)に相当する飽和蒸気圧が得られる液化ガスの液相温度(図2中のTv値)に等しい値に熱媒体の温度は設定されるのが従来の方式であった。これに対して本気化装置は、Tv値よりも低い値Tn[=Tv−α]に設定することを特徴とする。ここで、α値は、例えば3〜6℃程度に設定することが好ましい。
【0042】
(2)熱媒体導入管4の温度制御
本気化装置では、熱媒体供給部6から充填容器1に供給される熱媒体の温度Tnが、液化ガスの供給圧力を所定の値Pvに保つために必要な液相温度Tvよりもα値分だけ低い値に制御されて、熱媒体供給部6から送り出されてくる。一方、そのように送られてきた熱媒体に付加的に熱を与える加温部(浸漬ヒータ)5は、充填容器1の気相部Gの圧力がPv値になるように連動制御されるので、従来の方式と違って、本気化装置からガス消費設備に送気して液相から気化熱が奪われている場合だけでなく、ガス消費設備に送気していない場合にあっても、充填容器1の底面中心部M近傍に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与えるよう浸漬ヒータ5は作動し続けることになる。本気化装置が送気中である場合と送気停止中である場合の浸漬ヒータ5の動作の違いは、底面中心部M近傍に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与える浸漬ヒータ5からの熱量と作動頻度の差だけである。送気していない時でも浸漬ヒータ5は断続的に作動し続ける。
【0043】
充填容器1内部の液化ガスの液相内における対流の発生には、気液界面における気化熱による温度の低下に対応した底面中央部Mからの部分的な温熱の付加が重要な制御対象となる。つまり、熱媒体から液化ガスの液相部Lが受ける温熱を底面中央部M付近で大きくなるようにすることにより、図3に示すように、液相部Lの中心部で上昇流Fa、周辺部で下降流Fbとなるような対流を形成させることができ、常にこうした対流パターンとなるように温度制御をするものである。これによって、底部1aで加温された液相部Lは、他の液相部Lよりも暖かくなり軽くなるため中心付近で上昇流Faを形成し、速やかに気化現象を起こしている気液界面Lgに送られ、気液界面Lgに滞留する気化熱によって液相温度が低下している液相部Lを周辺に追いやる形で速やかに上昇してきた暖かい液相部Lと入れ替わることにより気化力の低下を防止し、気相圧力の低下を防ぐように作用する。それと同時に、それまで気液界面Lg付近にあって気化熱を奪われ温度が低下した液相部Lは逆に速やかに外周部に追いやられ、さらに充填容器1の内壁を伝うように底部1a方向に下降流Fbを形成する。このようにして底部1aに送り返された温度が低下した液相部Lは、底部1aにおいて温熱の補充を受けることにより、全体として効率よく充填容器1の周囲を流れる熱媒体Hから温熱を受けることができ、それによって気化熱による蒸気圧の低下を抑制することに寄与する。これにより供給圧力の変動の極めて少ない液化ガスの気化供給装置が実現できる。
【0044】
本気化装置においては、熱媒体供給部6から供給される熱媒体を、熱媒体導入管4、ノズル3、空間部1cを介して熱媒体供給部6に戻す循環系を形成している。従って、供給される熱媒体の温度は、熱媒体導入管4つまりノズル3では高く、空間部1cでは充填容器1の底部1aで奪われた温熱分だけ温度が低下する。これによって、上記のような液相内での対流の形成を図ることができるが、さらに、ノズル3に通じる熱媒体の流路である熱媒体導入管4に熱媒体に浸漬可能な状態で加温部(浸漬ヒータ)5を配設することが好ましい。気相圧力が低下すると直ちに加温操作を行うことによって、微小変化にも迅速な対応が可能となる。浸漬ヒータ5は、充填容器1内の気相圧力が供給圧力設定値よりも低下する事態になってはじめて作動する。浸漬ヒータ5が作動することにより充填容器1の底部1aに送られる熱媒体が、それまでの熱媒体の温度よりも一時的に温度が高くなり、その結果液化ガスへの入熱量が増えることにより液化ガスの液相温度の低下が抑えられ、ひいては気相圧力の低下が抑えられる。気相圧力が元の圧力に回復するとこの浸漬ヒータ5の作動は停止する。浸漬ヒータ5は、液化ガスの気相圧力をモニタする圧力センサ7からの液化ガス圧力信号8が予め設定された値になるように、温度調節器9によってON/OFF制御ないしPID制御されるようになっている。すなわち、この浸漬ヒータ5は、常時作動するのではなく、気相圧力低下に連動したオン・デマンド制御による制御動作をするようになっている。
【0045】
図4は、本気化装置における圧力挙動を比較説明したものである。図4(B)は、気相圧力に連動した熱媒体の温度制御を施さない場合の圧力挙動を示している。すなわち、気相圧力の変動に連動せずに、単に充填容器1を恒温化するように制御した場合の圧力挙動である。図4(A)は、充填容器1の外周に設けられた空間部1cを循環する熱媒体の温度を、該液化ガスの供給圧力を飽和蒸気圧として発生させる液相温度Tvと同じ温度に制御した上で、液化ガスが送気中に気化熱が液相部Lから奪われることにより液相温度の低下、それに伴う気相圧力が低下した時点で、循環する熱媒体に圧力低下を抑制するために付加的に入熱を加える制御を施した場合の、加熱部の動作パターンとその時の液化ガスの圧力挙動を示している。図4(C)は、本気化装置の温度制御を、充填容器1の外周に設けられた空間部1cを循環する熱媒体に施した場合の、加熱部の動作パターンと液化ガスの圧力挙動を示している。すなわち、熱媒体供給部6から送られてくる熱媒体の温度を上記液相温度Tvよりも低く抑えた上で、液化ガスの供給圧力が所定の値になるように、熱媒体の供給流路中に配設された浸漬ヒータ5で熱媒体に2次的に熱量を付加し制御された場合の、加熱部(浸漬ヒータ5)の動作バターンとその時の液化ガスの圧力挙動を示している。
【0046】
(2−1)図4(A)および(B)は、液相温度の制御を機能させた場合と機能させない場合の圧力挙動を比較説明したものである。図4(B)に示すように、液相温度の制御をしない場合には、液化ガスが気化する際に奪われる熱によって供給圧力は時間の経過とともに徐々に低下していくのに対して、図4(A)に示すように、液相温度の制御を行った場合には、多少の変動はするがその変動は液化ガスの供給上問題にならない程度に低い値に抑えられるので、従来問題となっていた供給圧力の低下は生じない。具体的には、液相温度の制御をしない場合では、(Ba)液化ガスが消費されると気化熱による液相温度の低下で時間とともに供給圧力が大きく低下し、(Bb)供給停止後も液相温度の回復は非常に遅いので気相圧力の回復も遅い。一方、液相温度の制御を行った場合では、(Aa)気相圧力に連動して浸漬ヒータ5がON/OFF動作(またはPID動作)をするので圧力変動は殆どなく、(Ab)供給停止中は圧力変動要因がないので浸漬ヒータ5は動作しない。検証試験においては、液相温度の制御を行った場合の供給圧力の変動は、10kPa以下の微小範囲にとどまることが確認された。
【0047】
(2−2)図4(C)および(D)は、本気化装置と従来の制御方式におけるオン・デマンド・ヒーティング・システムを採用した場合の圧力挙動を比較説明したものである。図4(D)に示すように、従来の制御方式では、液化ガスの送気を停止した後は、液相表層部以外の液相部Lの温度が低下した状態で安定するのに対して、図4(C)に示すように、本気化装置では、液化ガスの送気を停止した後も加熱状態を維持するので、従来問題となっていた液相温度の低下は生じない。具体的には、図4(D)に示すように、従来の制御方式では、液化ガスの送気状態においては、気相圧力に連動してON/OFF制御(またはPID制御)をするので圧力変動は殆どないが、それでも瞬時に奪われる気化熱とそれよりも緩慢な入熱の連度の違いによって、液相部L全体の温度を平均した温度は徐々に低下し、この状態で液化ガスの送気が停止すると、(Db)液相表層部の温度だけが回復し、その他の大部分の液相温度は回復しない状態で安定化してしまう。一方、本気化装置では、図4(C)に示すように、液化ガスの送気状態においては、(Ca)気相圧力に連動して浸漬ヒータ5がON/OFF動作(またはPID動作)をするので圧力変動および液相温度の低下も殆んどなく、液化ガスの送気を停止した後は、(Cb)気化熱が奪われないが、浸漬ヒータ5の設定温度よりも容器外周部1b側の空間部1cの温度(循環供給される熱媒体の制御温度)が低い非平衡条件のため、浸漬ヒータ5がON/OFF動作(またはPID動作)を継続し、(Da)液相温度をほぼ一定に維持し続ける。検証試験においては、一旦液化ガスの送気を停止した後に再度送気状態にした場合であっても、本気化装置の供給圧力の変動は、10kPa以下の微小範囲にとどまることが確認された。
【0048】
また、本気化装置では、このオン・デマンド制御における応答性を高めるために、以下の構成が関連して有効に機能している。
(i)上記オン・デマンド・ヒーティングシステムで追加的に熱を受容した熱媒体を、充填容器1の底部1aに近接し直角に噴射する構造とする。
(ii)熱媒体が底部1aに噴出する速度を上げるために、熱媒体導入管4の末端にノズル3を設ける
(iii)充填容器1の底部1aの肉厚を、それを取り囲むドーナツ状の底面および収納容器の側壁面の肉厚よりも薄くする構造とする。
(iv)ノズル3の先端形状を、フラットな円形とし、ノズル3とそれに対向する底部1aの間に狭隘部3aを設けた構造とする。
【0049】
なお、充填容器1の内部における対流の形成条件の設定は、予め所定の液化ガスを充填した充填容器1を用い、環境温度、熱媒体の温度・流量、気化させた液化ガスの送気圧力(温度)・流量を指標として対流発生の条件をシミュレーションすることによって、確定することが可能である。また、対流の存在は、上記シミュレーション時に想定することによって検証することも可能であるが、実際に透明な充填容器1によって検証する方法、液面検知センサ(内蔵式や外部からの間接検知式などを含む)による液相部Lの液表面の動きにより検証する方法や、充填容器外周表面の液相上部に相当する位置と液相下部に相当する位置との温度差および対流発生時の測定値の変化を、予め知見として入手することによって検証することが可能である。
【0050】
〔本気化装置の第1構成例の変形例〕
図5は、上記本気化装置の第1構成例に対応する変形例であって、浸漬ヒータ5を、熱媒体導入管4の内部ではなく、底部1aに近接する空間部1f(空間部1cの一部)に設けることによって、充填容器1の底面中央部Mに直角に熱媒体を噴射させる機能を確保している。比較的細い熱媒体導入管4を用いることによって、第1構成例におけるノズル3に近い機能を有し、底部1aとの間に浸漬ヒータ5を配設することによって、噴射させる熱媒体の加温を確保することができる。このように簡便な構造によって、第1構成例とほぼ同等の機能を有する本気化装置を構成することができる。
【0051】
<本気化装置の第2構成例>
図6(A)および(B)は、上記本気化装置の第1構成例に対応する発展形であって、充填容器1の底部1aに接するように配設された空間部Saと、充填容器1の外周部に接するように配設され空間部Saと独立した空間部Sbと、熱媒体供給部6から供給された熱媒体が空間部Sbに配設された導入部4bから空間部Sbに導入された後に、空間部Sbに配設された排出口4cから排出される流路Bと、流路Bから供出された熱媒体が空間部Saに配設された熱媒体導入管4aより空間部Saに導入される流路Aを有することを特徴とする。上記図12と同様、図6(A)は、現場据付式の充填容器1の場合を例示し、図6(B)は、搬送式の充填容器1の場合であって、充填容器1の下部に配設されたロードセルWにより重量を測定することによって、内部の液化ガスの残量を把握できる装置を例示する。
【0052】
第1構成例では一体であった空間部1cを、役割の相違からそれぞれ独立した空間部Saと空間部Sbを形成したものである。また、熱媒体供給部6から供給された熱媒体が、空間部Sbを介して空間部Sbに導入され、浸漬ヒータ5によって加温された後ノズル3によって噴射することによって、充填容器1の底部1aに集中的に入熱する。こうした構成によって、次のような作用や機能をえることができる。
(i)独立した空間とすることによって、各空間部Sa,Sbの独立した温度制御が容易となり、制御精度を上げることができ、同一熱媒体を用いて小さな温度差を正確に制御することができる。これによって、充填容器1や送気用の配管等の周囲温度と液相温度の適正な温度差を形成するとともに、液相部Lの中心部と周辺部の温度差を作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の均一性を確保することができる。
(ii)先に温度制御された熱媒体を空間部Saに導入し、供出された熱媒体を空間部Sbに導入して加温することによって、供出時に温度低下が生じた熱媒体を加温して、該制御温度よりも高い一定温度の熱媒体として容器の底部に照射することができる。
【0053】
〔本気化装置の第2構成例の変形例〕
(1)図7は、上記本気化装置の第2構成例に対応する1つの変形例であって、充填容器1の外周部に接するように配設された空間部Sbの外周を、充填容器1の底部1aに接するように配設された空間と一体となる空間部Saが覆うように配設される。空間部Sbに対して充填容器1の周辺環境温度の影響をなくすことができ、より正確に空間部Sbの温度制御を行うことができる。
【0054】
(2)図8は、上記本気化装置の第2構成例に対応する他の変形例であって、空間部Sbの外周を空間部Saが覆うように配設され、底部1aの底面中心部M近傍まで空間部Sbが形成されるとともに、空間部Saの内部に熱媒体導入管4が配設される。図7の構成以上に、空間部Sbに対して充填容器1の周辺環境温度の影響をなくすことができるとともに、ノズル3からの熱媒体を底部1aの底面中心部Mのより狭い範囲で噴射することができることによって、充填容器1の底部1aにさらに集中的に入熱することができ、液相部Lの中心部と周辺部の温度差を精度よく作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の高い均一性を確保することができる。
【0055】
<本発明に係る液化ガス供給装置の構成例>
上記気化装置は、例えば半導体製造プロセスなどにおいて液化ガスが充填された充填容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガス供給装置に用いられる。ここで、充填容器に充填された液化ガスの気化処理、および/またはガス消費設備近傍に設置され配管送気された後に再液化して貯蔵された液化ガスの気化処理に用いられる。
【0056】
図9(A)は、こうした気化装置を用いた本発明に係る液化ガス供給装置(以下「本供給装置」という)の基本構成例(第1構成例)を示す概略図である。低蒸気圧液化ガスを安定的に気化させ、供給配管20を介してガス消費設備(プロセス装置)30への圧力の変動のない供給を実現するものである。本気化装置では、低蒸気圧液化ガスが充填された容器1が、上記気化装置を有する液化ガス供給ユニット10に着脱できるようになっている。この液化ガス供給ユニット10を用いることにより、従来、蒸気圧がもともと低いがために気化熱による液相温度低下による供給圧力の減退により困難であった低蒸気圧液化ガスの長時間連続供給が可能となる。ここで、プロセス装置30は、半導体製造プロセスではCVDやPVDなどのプロセスチャンバ31と、これに所定の圧力や流量を調整して供給するガス制御ユニット32などを有している。
【0057】
充填容器1に充填された液化ガスは、液化ガス供給ユニット10によって気化される。気体状態となった液化ガスは、供給配管20を介してプロセス装置30に送気される。なお、導入された液化ガスを含むプロセス装置30からの排ガスは、排ガス処理装置(図示せず)を介して排出される。本供給装置では、気化熱による液相の温度低下による圧力減退が非常に少ないことより、従来の方式では困難であった低蒸気圧液化ガスの室温以下の温度での気化供給も可能となる。この室温以下の温度の液化ガス蒸気供給方式が採用できることにより、従来、低蒸気圧液化材料を気化して送る供給系において問題となる供給配管20内での再液化問題は発生せず、安定した送気圧力を確保し再液化による配管腐蝕といった問題のない供給が可能となる。
【0058】
本供給装置は、さらに、図9(B)に示すように、2セットの液化ガス供給ユニット11,12を有する構成とすることができる。基本的に、図9(A)に示す構成と同じであるが、液化ガス供給ユニット11,12を2セット有しているので、この2セットを交互に切換えながら供給することにより、供給中の液化ガス供給ユニット11の充填容器11a内の液化ガスの残量が残り少なくなった時点で、それまでに恒温化されていた待機中の液化ガス供給ユニット12にガス供給を切換えることにより、充填容器の交換度に一時停止する必要なく、連続的に液化ガスの供給を行うことができる。
【0059】
こうした構成を有する本供給装置は、以下の条件において機能するという特徴がある。つまり、本供給装置においては、上記の気化装置が有する機能を有効に生かすことによって、各部の設定温度(制御温度を含む)を非常に精度よく調整し維持することができる。以下、図9(A)に基づき説明する。なお、下記に示したプロセスおよび温度等の条件は、本供給装置が多く用いられる例示であり、これに限定されないことはいうまでもない。
【0060】
(a)熱媒体供給部6における熱媒体の制御温度は、低蒸気圧液化ガスの供給配管20の途上ないしプロセス装置30の接ガス部での再液化を防止する観点より、供給配管20およびプロセス装置30が置かれている環境温度(半導体プロセスであればクリーンルームの室温となる)その温度の変動幅の最低温度よりも、さらに低い温度に設定することができる。
【0061】
(b)半導体プロセスにおいて、クリーンルームの室温の変動幅は通常23±1〜2℃に収められているので、熱媒体の制御温度は、再液化のリスクに対する十分な裕度をもった13℃程度にすることが好ましい。その上で、熱媒体供給系に組み込まれる浸漬ヒータ5の作動を、充填容器1の気相部Gの圧力が、この熱媒体供給部6から送りだされてくる熱媒体の温度、すなわち、前述の13℃よりも高い温度で、かつ、配管およびプロセス装置30の置かれた環境温度の下限値よりも常に下回る温度、具体的に半導体工場の場合には15〜16℃、における該液化ガスの飽和蒸気圧に設定することができる。
【0062】
(c)このような温度設定にすることにより、該液化ガスの供給が停止している状態でも充填容器1の環境温度が液相部Lの目標温度よりも低いために、熱媒体供給系内に配設された浸漬ヒータ5は、ガス供給停止中でも間歇的に作動することとなり、充填容器1内の液相部Lでの対流が継続して形成され、液化ガスの送気が常時持続されることとなる。この結果、低蒸気圧液化ガスの場合に、従来方式では十分に対応できなかった制御の対象である「気液界面の液相表層部のみ温度」を目標値とすることができ、従来方式の課題であった「他の部分がそれよりも低い温度であっても見かけ上の気相部Gの圧力が回復しているためヒータ作動が停止し、そのため液相全体のエネルギーが十分回復せず、従って、供給再開時に供給圧力がどうしても異常低下しやすい」という問題点は解消されることになる。
【0063】
(d)充填容器1の外周に循環させる熱媒体の温度を液化ガスの液相部Lの目標温度よりも低く抑えることの別の効用として、供給停止時にそれまでの供給中にフル稼働状態の浸漬ヒータ5によって熱媒体に蓄積された熱慣性により、浸漬ヒータ5の動作停止後も、液化ガスにしばらく熱を補給し続けることができることから、液相温度のオーバーシュート現象を抑制するという効果もある。
【0064】
〔本供給装置の第2構成例〕
図10(A)および(B)は、上記本供給装置の第1構成例のそれぞれに対応する発展形であって、遠隔の1次液化ガス供給ユニット13から供給配管20aを経由して液化ガスを液相で2次液化ガス供給装置10(または11,12)に補給できるようにしたものである。図10(A)に示すように、1次液化ガス供給ユニット13に、液圧送用ガス(例えば、窒素などの不活性ガス)13bを供給することによって、充填容器13aに充填された液相の液化ガスを液体状態のまま、2次液化ガス供給ユニット10に圧送される。圧送された液化ガスは、2次液化ガス供給ユニット11において用いられた上記気化装置によって、供給配管20bを介してプロセス装置30に送気される。
【0065】
従前の低蒸気圧液化ガスを気化して送る供給系では、供給配管内を流れるガスは、供給圧力が非常に低いだけでなく飽和蒸気圧に近い蒸気であり、配管周囲の温度変化の影響を受けやすいため、複数の環境温度領域を通過する長距離配管での供給は困難である。従って、これら低蒸気圧の液化ガス供給装置は、必然的にプロセス装置と同一の空調環境下に設置されるのが普通である。プロセス装置が半導体製造装置の場合には、半導体消費設備が置かれたクリーンルーム内に低蒸気圧の液化ガス供給装置は置かれることになる。従って、本供給装置のように、1次液化ガス供給ユニット13の充填容器13aの交換を2次液化ガス供給ユニット10よりも遠隔から充填できることは、クリーンルームのような閉鎖空間での危険な液化ガスの交換作業を排除できるため、ガス供給設備の安全設計上、および作業効率の向上といった面よりメリットが大きい。また、上記本供給装置の第1構成例と同様、図10(B)に示すように、2セットの液化ガス供給ユニット11,12を有する構成とすることができる。
【0066】
〔本供給装置の第3構成例〕
図11(A)および(B)は、上記本供給装置の第2構成例のそれぞれに対応する構成をさらに発展させた装置であって、1次液化ガス供給ユニット13から供給配管20aを経由して2次液化ガス供給ユニット10(および12)に対して液化ガスの遠隔補充を気体状態で行うものである。第2構成例の場合は、液体状態で行っているところ、第3構成例に係る本供給装置では、気相状態で送られてきた液化ガスを、プロセス装置30の近傍に置かれた2次液化ガス供給ユニット11で一旦再液化して液化状態で貯蔵し、液相として貯蔵し液化ガスを上記気化装置によって再度気化し、供給配管20bを介して気体状態でプロセス装置30まで送気する液化ガス供給装置である。
【0067】
具体的には、図11(A)に示すように、1次液化ガス供給ユニット13によって、充填容器13aに充填された液化ガスが気化される。気体状態となった液化ガスは、供給配管20aを介して2次液化ガス供給ユニット10(または11,12)に送気される。送気された液化ガスは、2次液化ガス供給ユニット10(または11,12)において、再液化手段(図示せず)によって再度液化させ、貯蔵手段(図示せず)によって液体状態で貯蔵される。貯蔵された液化ガスは、気化手段(図示せず)によって気化される。気体状態となった液化ガスは、供給配管20bを介してプロセス装置30に送気される。なお、導入された液化ガスを含むプロセス装置30からの排ガスは、排ガス処理装置(図示せず)を介して排出される。液化ガスメーカから納入される充填容器1Dの場合は、その取付け取外し作業は、もっぱら1次液化ガス供給ユニット13でしか行なわないので、一般作業員の働いているプロセス装置30の置かれた場所(半導体製造プロセスであればクリーンルーム内)では、配管の大気開放という危険な作業は行わなくて済む。そのため、従来は不可能であった低蒸気圧液化ガスも含めた全ての液化ガスの作業場(クリーンルームなど)からの完全分離、集中供給が可能となり、安全性の飛躍的増大と作業の効率化を図ることができる。
【0068】
2次液化ガス供給ユニット10は、1次液化ガス供給ユニット13および供給配管20aから送気された気体状態の液化ガスを再度液化して一旦液体状態の液化ガスとして貯蔵する機能と、一旦貯蔵した液化ガスを再度気化させ気体状態でプロセス装置30に送気する機能を有している。本供給装置においては、液化手段、貯蔵手段および上述気化装置を用いることによって、こうした機能を確保することができる。また、上記本供給装置の第1,2構成例と同様、図11(B)に示すように、2セットの液化ガス供給ユニット11,12を有する構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記においては、主として半導体あるいはFPD製造プロセスに用いる半導体用特殊ガスなどの液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置について述べたが、本発明は、こうしたエレクトロニクス用液化ガスに限られず、各種プロセス用の液化ガスあるいは各種液体の熱処理プロセスなどに適用することができる。また、複数の温度条件を必要とする場合に、対応する温度の冷媒のみを供給する装置としても有用であり、特に複数の温度条件において熱処理を必要とする製造プロセスに対しては有用である。例えば、ガスの吸着処理や精製処理などのプロセスにおける冷却・加熱の切換えに用いられる処理手段などが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る気化装置(本気化装置)の基本構成例を示す概略図
【図2】液化ガスの温度−飽和蒸気圧線を例示する説明図
【図3】本気化装置における充填容器内部の液相内における対流を例示する説明図
【図4】本気化装置における圧力挙動を例示する説明図
【図5】本気化装置の第1構成例の変形例を示す説明図
【図6】本気化装置の第2構成例を示す説明図
【図7】本気化装置の第2構成例の変形例を示す説明図
【図8】本気化装置の第2構成例の変形例を示す説明図
【図9】本発明に係る液化ガス供給装置(本供給装置)の基本構成例を示す説明図
【図10】本供給装置の第2構成例を示す説明図
【図11】本供給装置の第3構成例を示す説明図
【図12】従来技術に係る液化ガス気化装置を例示する概略図
【図13】従来技術に係る液化ガス供給装置を例示する概略図
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B 充填容器
1a 底部
1b 外周部
1c,Sa,Sb 空間部
1d 充填口
1e 導出口
2 ジャケット
2a 供出口
3 ノズル
3a 狭隘部
4 熱媒体導入管
5 浸漬ヒータ(加温部)
6 熱媒体供給部
7 圧力センサ
8 液化ガス圧力信号
9 温度調節器
10〜13 液化ガス供給ユニット
20,20a,20b 供給配管
30 ガス消費設備(プロセス装置)
A,B 流路
G 気相部
L 液相部
M 底面中心部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置に関するもので、例えば、半導体用特殊材料ガスなどのように、使用時あるいは送気時に気化処理を必要とする液化ガスの気化処理に用いる液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いて処理された液化ガスを供給する液化ガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスや各種プロセスで使用される特殊材料ガスや各種のプロセスガスには、BCL3,SiH2CL2,HF、CLF3、WF6等に代表される蒸気圧が大気圧かそれ以下と非常に低い液化ガスがよく用いられている。このような低蒸気圧の液化ガスは、他の材料ガスと同様に、通常高圧ガス容器に液体状態で充填されて当該液化ガスを消費する半導体製造工場や各種のプロセスに納入され、納入された高圧容器から、または該高圧容器から当該工場やプロセスに設けられた別の容器に移充填された後に、気化してガス消費設備まで供給される(以下この容器を「充填容器」あるいは単に「容器」という)。このとき、液化ガスの消費設備である半導体製造プロセス装置や各種のプロセス装置(以下「プロセス装置」という)では、これらの液化ガスを液体状態ではなく、気体状態で受け入れ気体状態で使用される。従って、当該容器に充填された液化ガスは、シリンダーキャビネットと呼ばれるガス供給設備に収納され、その容器内で気化させて気体状態にしてプロセス装置に繋がれた配管に送り出すようになっている。
【0003】
一般に、液化ガスを気化させて供給する場合、気相部のガスが容器外に放出されると、気相部の圧力は低下する方向に動くが、実際にはこうした気相部圧力低下の動きを是正するように直ちに液化ガスが液相部から気化し気相部の圧力低下を抑制する。しかし、この気化に必要な熱エネルギーは、液相部が持つエネルギーを消耗する形でなされるため、液相温度が徐々に低下し、液相温度の低下に伴い気相部の蒸気圧も低下する結果、液化ガスの供給圧力は徐々に低下していき、最後には液化ガスを所望の流量で供給することができなくなるという問題が発生する。つまり、容器の外部から自然に進入する熱量は、容器内の温度が外部の温度に対して低下することにより容器内外に外高内低の温度差が生じてから初めて寄与するものであり、この圧力不足による供給量不足の問題を解消するには、自然に進入する熱量だけでは不十分であるという技術的課題がその背景となっている。
【0004】
こうした問題に対して、従来一般には図12(A)および(B)のような構成の液化ガスの供給設備100が用いられることがある。具体的には図12(A)は、現場据付式の容器101に対し、その周囲および底部の周りに空間102を設け、図12(B)は、搬送式の容器103に対し、その周囲に空間104を設けて、各々の空間に室温よりも高い温度の熱媒体を熱媒体供給部105から供給し、常時循環させる方式である。この方式は、液化ガスの温度を予め室温よりも高くしておくことによって、液相部Lの液化ガスが持つ内部エネルギーを高めているだけの効果であり、液相部Lの温度は、液相部Lから気化熱を奪われることにより徐々に低下することには変わりない。ここで、容器101,103の外周を循環している熱媒体からの熱の進入が液相温度の低下を抑制するのに寄与し出すのは、液相部Lからのエネルギーを消費しながら気化した結果、液相温度がある程度低下して容器内外に外高内低の温度差が発生してからである。従って、元々蒸気圧が低い低蒸気圧液化ガスの供給設備としては、図12(A)および(B)のような単に液相部Lの温度を上げるだけの対応では、やはり遅かれ早かれ供給圧力低下による供給量不足の問題が生じることとなる。
【0005】
また、液化ガスの蒸気圧が室温で大気圧かそれよりも低い低蒸気圧液化ガスについて、こうした加温する方法を適用した場合、供給配管を流れるのは配管周囲温度よりも高い温度での飽和蒸気圧となり、この飽和蒸気が供給配管で冷却されることによって再液化することとなる。半導体プロセス等で用いられる低蒸気圧液化ガスは、HFやCLF3に代表されるようにほとんどが腐蝕性ガスであり、しかも強い腐蝕性を有することから配管内で再液化すると、配管の腐蝕、半導体プロセスで最も回避しなければならない腐蝕生成物の同伴によるプロセスの金属汚染、バルブ等の狭隘部での再液化した凝縮液による液封、あるいはそのクラック現象による圧力変動といった問題の誘因となる。この問題を解消するには、供給配管およびガス消費設備内のすべての接ガス部分の温度を、液化ガス充填容器の加温温度よりも高くした状態に保持しなければならないという、極めて管理の難しい温度制御が求められることになり実現は大きな負荷となる。このように、低蒸気圧液化ガスの場合には、配管およびガス消費設備が置かれている環境温度よりも低い温度で気化蒸発させて上記再液化の問題を回避しながら、供給量をいかに高めて安定的に供給できるかという問題をクリアしなければならないという困難な問題を常に孕んでいる。
【0006】
一方、搬送用容器の底部を加温して供給圧力の低下を防止することを主眼として、例えば、図13に示すような構成を有する液化ガス供給装置が提案されている。具体的には、ガス容器210を載置する設置台211と、ガス容器210の底面に向けて熱媒体を噴出する熱媒体噴出ノズル212と、該熱媒体噴射ノズル212に温度調節した熱媒体を供給する熱媒体供給ライン213と、ガス容器210を囲むように設置台211上面に設けられた半割状の筒対からなる容器カバー214とを有し、上記熱媒体噴出ノズル212からガス容器底面に向けて高速で噴出した熱媒体は、ガス容器210の底面を加温あるいは冷却した後、スリット219cの外周側を通って容器カバー214内周の空間225に排出される(例えば特許文献1参照)。
【0007】
このように、容器の外部から容器の壁面を介して容器内部の液化ガスの液相部に熱を伝えることによって液相部の温度低下を抑制しようとする試みは、蒸気圧が比較的高い蒸気圧を有する液化ガス、例えばHCL、HBr、NH3、CL2等には十分な有効性を発揮する一方、本発明が対象とするCLF3、HF、WF6等の蒸気圧が大気圧付近か大気圧よりも低く、圧力の許容低下幅が極めて小さい低蒸気圧液化ガスに対しては、熱伝導の応答性の悪さから十分な対応ができず、液化ガスの消費流量が大きい場合には、圧力不安定や長期連続供給ができないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−227597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような低蒸気圧液化ガスを安定的に供給する上で解決しなければならない技術的課題を要約すると次のようになる。
【0010】
(i)容器外部からの熱補給の遅延による供給圧力低下が、プロセスの質量流量制御機能不良を引き起こすという問題
低蒸気圧の液化ガスについても、他の液化ガスおよび圧縮ガスの場合と同様、容器内で気化した液化ガスをプロセス装置にまで送るためのエネルギーは、液化ガスが有する蒸気圧という圧力エネルギーだけである。従って、容器内の液化ガスの温度が変動すると液化ガスの蒸気圧力も変動し、引いては液化ガスの供給圧力も変動することになる。一般の高圧ガスであれば圧力調整器(減圧弁)による圧力安定化を図ることができるが、低蒸気圧の液化ガスでは蒸気圧そのものが元々極めて低いため、圧力調整器による圧力の平坦化が期待できない。従前の方式では、気化する際に液相から瞬時に奪われる気化熱が容器外部から速やかには補給されないので液相温度が低下し、それに伴う蒸気圧の変動がそのまま当該液化ガスの供給圧力の変動となり、プロセスへの供給圧力の変動からプロセス装置内の質量流量も変動し、処理プロセスの不良に繋がることがあった。
【0011】
(ii)図12(A)および(B)のように、従来の対応である単に液化ガスの温度レベルを上げることにより蒸気圧を上げ液化ガスの供給圧力の変動を抑えようとする試みは、前述のように供給配管途上ないしはガス消費設備内での液化ガスの再液化を起こすという別の問題を生じてしまう。従って、低蒸気圧液化ガスの供給においては、液化ガスを室温よりも低い温度で気化させながら、それによって元々低い蒸気圧がさらに低くなって液相温度の低下の許容幅が狭まっても、それを上回る熱補給能力を持った気化供給装置が望まれている訳である。ここに、低蒸気圧液化ガスにおける他のガスにない供給の難しさの本質がある。
【0012】
(iii)充填気化容器周辺温度の変動の影響
また、低蒸気圧液化ガスは、元々蒸気圧が大気圧付近ないしはそれ以下と低いので、従前の液化ガス供給装置では大きな問題とならなかった周囲環境温度の変動によって引き起こされる気化する液化ガスの圧力変動も無視できず、この圧力変動がプロセス装置の質量流量の変動となるという問題もあった。従来、図12(A)および(B)に示すような、液化ガス充填容器の周囲を室温よりも高い温度に恒温コントロールする方法が採られることがあるが、この方法では、供給配管途上やプロセス装置内部接ガス部で再液化を起こすので良い解決方法ではないことは前述の通りである。
【0013】
(iv)容器内の液化ガスの気化は、気相と接する液相の表面層で起こるので、この部分の温度がまず冷え、瞬時に液相全体の温度が平均して冷えるわけではない。従って、液相の大部分は温度がすぐには下がらないので、容器の内外温度に差がすぐには生じない。温度勾配がなければ容器外部からの熱進入はないので、勢い液化ガス自身がもっているエネルギーを消耗しながら蒸発を続けることになる。気化現象が発生している液相表層部とその他の部分の液相部間で発生した温度不均衡状態は、液相内を熱が伝わる効果と、温度降下に伴う液相の比重の増加によって生ずるマス(物質)の移動、すなわち対流運動によって徐々に液相全体の温度が降下していく。その結果、徐々に容器の内外温度勾配が生し、そこではじめて容器の外部から熱が補給され始めることとなる。通常、気液界面の液相とその他の部分の液相間の熱およびマスの移動は緩慢であるので、気液界面の液相温度に支配される蒸気圧は徐々に低下することになる。この外部からの熱補給の遅延に伴う気相部の圧力低下を防止する方法として、気相部の圧力変化をモニタし、圧力が下がるとそれに連動して熱媒体を容器表面に吹きつけることにより、容器外部から容器内部へ熱を強制的に起こさせ、気相部の圧力の低下防止を図る加温制御法が考案されている(例えば特許文献1〔請求項6〜8〕および関連記載事項参照)。しかし、本発明が対象とする蒸気圧が大気圧かそれよりも低い低蒸気圧しか持たない液化ガスでは、許容圧力変動幅が他の液化ガスよりもさらに小さいので、こうした方法では、当該許容変動幅に収めることは困難であった。
【0014】
(v)また、気相部の圧力変化をモニタする方法では、確かに気相部圧力が低下したのを感知して、その時点で充填容器の外周部温度を一時的に高めることにより外部からの熱補給を促進させ、気相部の圧力の低下を防ぐ効果はあるが、液化ガスの消費が停止した時には気相部の圧力に連動して加温制御することから、液化ガスの気液界面付近の液相表層部の温度が回復すると、その他の液化ガス液相温度が十分に回復していなくても外部からの熱補給が停止することとなる。一旦この状態になると、液相上層部の液相温度が高くなりその部分の液比重が他の液相部の液比重よりも軽くなるため、加温停止後は表層部だけ温度が回復し他は回復していないという状態で安定し、熱の均一化に寄与するはずの対流も起こさなくなり、液全体の平均温度は回復しないまま、次のガス消費開始を迎えることとなる。低蒸気圧液化ガスの気化供給装置では、このようなガス消費が停止するたびに液化ガスがもつエネルギーが減少することによる供給開始時の圧力変動の影響は無視できないので、何らかの改善が求められていた。
【0015】
本発明の目的は、こうした課題に対応し、気相状態で安定的にガス消費設備に送気可能な、エネルギー効率が高く機能的に優れた気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することにある。特に、低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスの熱処理に用いることができる液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0017】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法であって、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部に、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【0018】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置であって、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部と、熱媒体を温度制御して、該空間部に循環供給する熱媒体供給部と、前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部と、これらを制御する制御部を有するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、該制御部において、前記熱媒体供給部での熱媒体の制御温度および供給流量、前記加温部に付加する熱量を制御し、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【0019】
気化手段によって液化ガスなどの液化ガスを安定的に供給するためには、供給開始時の温度条件とともに、供給開始後の気化熱による液相の温度維持が重要となる。このとき、気相部の圧力すなわち液化ガスの蒸気圧を直接支配するのは、液相全体の温度ではなく、気液界面の極めて局所的な液相の表層部の温度であるから、液化ガスを安定的に送るためにはこの液相の表層部の温度をいかに維持するかがポイントとなる。しかるに従前の方法では、この気化熱が局部的にかつ選択的に奪われる気液界面の極薄い液相表層部の温度維持が困難であった。この表層部の液相温度を維持するためには容器外部から気化熱に相当する熱量を応答性よく供給できることとともに、容器の壁面を伝って供給される熱量を速やかに液相表層部へ運ばなければならない。このためには液相内の静止状態での熱伝導のみに頼ったのではまったく間に合わない。壁面を伝わってくる熱をいかに素早くこの気液界面の液相表層に移動させるかに掛かっている。本発明は、
(i)容器の外周部および底部と接触するように熱媒体が循環可能に供給される空間部を有することによって、容器周辺環境温度の影響をなくすことができる。
(ii)容器の底面に集中的に熱エネルギーを付加できる構造を採ることにより、容器の底部から選択的に熱を補給し液相内に上昇流を積極的に起こさせるとともに、容器の外周側面との温度差を発生させることによって、液化ガスの液相部に積極的な対流を形成させ、補給された熱を速やかに気化現象が発生している気液界面部送り込み、液相表層部の液相温度の低下を防止して安定な気相圧力を確保する。
(iii)液化ガスの消費が停止している状態でも、常に液相部の対流を発生させ、気相部の圧力が、容器外周部を循環する熱媒体の温度における該液化ガスの飽和蒸気圧よりも高い圧力に維持する。具体的には、容器底面部に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与える加温器を設け、気相部の圧力に連動して付加する熱量を制御する。
(iv)さらに、後述するように、容器の底面中央部に対して直角方向の噴射口を有するノズルからの液相の熱媒体を噴射させることによって、容器の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図るとともに、熱媒体の噴流が照射される容器壁面の肉厚を他の部分よりも薄くすることによって、熱媒体から容器内の液相部へ伝熱する総括伝熱係数の改善を図って、熱媒体からの容器の壁面へ伝わる熱伝導性をアップすることができる。
という機能を有することを特徴とするものである。
【0020】
つまり、既述の課題の1つである環境温度の変動に伴う圧力変動に対して、本発明は、恒温の熱媒体供給部によって常に再生される熱媒体を、液化ガスを充填した容器の外周部および底部に常に循環させる構造をとることで、その解消を図るものである。また、もう1つの課題である熱収支バランス不全による圧力変動に対して、本発明は、液化ガスが気化する際に液相特にその表層より奪われる気化熱に相当する熱を速やかに補填するように、充填容器の底面中央部に対して直角方向の噴射口を有するノズルから熱媒体を噴射させることによって、液相の中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して液相温度の均一性を確保することで、その解消を図るものである。
【0021】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法にあって、
前記充填容器の底部と外周部の各々に接するように配設された2つの独立した空間部Sa,Sbに、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記底部に接する空間部Saに供給される熱媒体を、該空間部Saの内部または空間部Saに内設された熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする。
【0022】
本発明は、液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置にあって、
熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部と、
前記充填容器の底部に接するように配設された空間部Saと、
前記充填容器の外周部に接するように配設され、前記空間部Saと独立した空間部Sbと、
前記熱媒体供給部から供給された熱媒体が、前記空間部Sbに配設された導入部から空間部Sbに導入された後に、前記空間部Sbに配設された供出口から供出される流路Bと、
該流路Bから供出された熱媒体が、空間部Saに配設された熱媒体導入管より空間部Saに導入される流路Aと、
前記熱媒体導入管の内部または空間部Saの内部に配設された加温部を有し、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記流路Bから供出された熱媒体が、前記加温部によって付加的に加温されることを特徴とする。
【0023】
上記のように、本発明における熱媒体は、単に容器外周部の空間部の温度を均一に制御し、容器内部の液相部の温度を一定にするだけではなく、容器や配管等の周囲温度と液相温度の適正な温度差を形成するとともに、液相部の中心部と周辺部の温度差を作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の均一性を確保するという優れた機能を有している。ここで、液相部の中心部の温度の制御には、容器の底部からの温熱の付加が重要な役割を果たすとともに、液相部の周辺部の温度の制御には、容器の外周部の熱媒体の存在が重要な役割を果たしている。つまり、熱媒体が導入される空間部において、容器の底部に接する空間部Saと容器の外周部に接する空間部Sbとは、その役割が相違することから、各々独立した空間を形成することが可能であり、これに加えて以下のような、いくつか優れた機能・効果を得ることができる。
(i)独立した空間とすることによって、各空間部の独立した温度制御が容易となり、制御精度を上げることができる。従って、本発明のように、容器の底面と側面での小さな温度差を正確に制御することを目的とする場合には有効である。
(ii)本構成のように、先に温度制御された熱媒体を空間部Sbに導入し、供出された熱媒体を空間部Saに導入して加温することによって、供出時に温度低下が生じた熱媒体を加温して、該制御温度よりも高い一定温度の熱媒体として容器の底部に照射することができる。
【0024】
本発明は、上記液化ガスの気化方法であって、前記熱媒体導入管の内部に設けられた前記加温部によって加温され、該熱媒体導入管から供出される熱媒体を、前記充填容器の底部の内の中心部に選択的に照射することにより充填容器中心部での液化ガスへの入熱を他の底部よりも上昇させて、前記液相内に液相中心部で上昇、液相の外周部で下降する対流を発生させることを特徴とする。
上記のように、液相内部での対流の形成は、液化ガスの送気に伴う液相表層部の液相温度の低下を防止して安定な気相圧力を確保するために重要な機能を果たしている。本発明は、こうした対流の形成をより効率的に行うためには、加温された熱媒体の照射を容器の底面の特に中心部に集中的に行うことが好ましいことを見出したものである。つまり、容器の底面の中心部に集中的に熱エネルギーを付加できる構造を採ることにより、該中心部に選択的に熱を補給し液相内の中心部で上昇流を積極的に起こさせるとともに、容器の外周側面からの付加的熱補給はしないように容器外面の熱媒体の流路を設定することによって、液化ガスの液相に積極的な対流を形成させ、容器壁面を伝って補給された熱を速やかに、気化現象が発生している気液界面部送り込み、液相表層部の液相温度の低下を防止して安定な気相圧力を確保することができる。具体的な手段として、後述するように、噴射ノズルから容器の底面に直角に熱媒体を噴射して入熱する方法や容器の底面中央部の肉厚を他部よりも薄肉にする構成などによって実現することが可能となる。
【0025】
本発明は、上記液化ガスの気化装置であって、前記充填容器の底部と接する前記空間部に、前記熱媒体導入管に繋がり該底面の中央部に接する空間部の壁面に直角に熱媒体を噴射させるノズルを配設し、前記熱媒体導入管の内部に加温部が配設されることを特徴とする。
【0026】
上記のように、液相内部での対流の形成をより効率的に行うためには、加温された熱媒体の照射を容器の底面の特に中心部に集中的に行うことが好ましい。本発明は、その具体的な手段として、噴射ノズルから容器の底面に直角に熱媒体を噴射して入熱するもので、容器の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図ることによって、液相内部での対流の形成をより効率的に行うことができる。さらに、そのノズルが配設され熱媒体が導入される熱媒体導入管の内部に加温部を配設することによって、一層正確に制御された入熱を行うことができ、安定した液相内部での対流の形成を確保することができる。
【0027】
本発明は、上記液化ガスの気化装置であって、前記充填容器の気相部に連結して圧力検出部を設けるとともに、その測定値を指標として、前記加温部に付加する熱量および/または熱媒体の流量を制御する機能を有することを特徴とする。
【0028】
上記のように、特に低蒸気圧の液化ガスを安定的に気化するには、気液界面の温度制御が重要である。本発明は、容器周囲の温度条件安定化と安定的な温熱の供給を確保し、容器底部を集中的に加温し液相内に対流を形成させて気液界面への温熱の安定供給を確保することによって、安定的な気化条件の確保を図るとともに、容器内の気相部の圧力(蒸気圧、以下「気相圧力」という)を常時モニタし、モニタされた気相圧力が低下すると直ちに加温操作を行うことによって、微小変化にも迅速な対応を可能とするものである。すなわち、気相圧力の低下に応じてオン・デマンドに熱媒体の導入流路内に組み込まれた加温部(浸漬ヒータ)を作動させ、このヒータから付加された熱により容器周囲を流れる熱媒体(熱媒体供給部から循環供給される)の温度を恒温化温度よりも一時的に上げることによって、熱収支バランス不全による圧力変動という課題をさらに効果的に解消することを図ったものである。
【0029】
本発明は、上記液化ガスの気化装置であって、前記充填容器の底面中央部の肉厚が他部よりも薄肉であることを特徴とする。
【0030】
液化ガスなどの充填容器は、耐圧あるいは搬送時等の破損防止のために厚肉の堅牢な金属製の容器が用いられる。一方、本発明が目的とする容器内の液相部あるいは気相部の温度の安定化の観点からは、容器の厚みは極力薄いことが好ましい。本発明は、上記のように、充填容器の底面中央部が、充填容器内部の液相温度の均一化を図る上において重要な部位であり、また充填容器の堅牢性を損なわずに比較的薄肉にすることが可能な部位であるとの知見を基に、容器の底面中央部の肉厚が他部よりも薄肉にして高い伝熱機能の確保を図ったものである。これによって、容器の底面中央部に対して熱媒体を噴射し、さらに迅速に液相の中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して液相温度の均一性を確保することが可能となった。特に、容器の底面中央部に対して直角方向の噴射口を有するノズルからの液相の熱媒体を噴射させ、さらに熱媒体の噴流が照射される容器壁面の肉厚を他の部分よりも薄くした場合にあっては、前者によって容器の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図るとともに、後者によって熱媒体から容器内の液相部へ伝熱する総括伝熱係数の改善を図って、熱媒体からの容器の壁面へ伝わる熱伝導性を向上させることができる。
【0031】
本発明は、液化ガスが充填された充填容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガス供給装置であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の気化装置を用い、前記充填容器に充填された液化ガスの気化処理、および/または前記ガス消費設備近傍に設置され前記配管送気された後に再液化して貯蔵された液化ガスの気化処理を行うことを特徴とする。
【0032】
液化ガス供給装置は、例えば半導体製造プロセスなどにおいて重要な役割を果たすとともに、容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する場合においても、液化ガスの安定した供給が要求される。特に、低蒸気圧の液化ガスの場合、気化装置の設置環境条件や送気開始後の気化熱による供給量の低下などの課題は、従前の液化ガス供給装置では十分に対応することができなかった。本発明は、こうした課題に対して、上記気化装置を用い、充填容器内の液化ガスの気液界面温度の安定化を図り気相圧力つまり送気圧力の安定化を図るもので、これによって、低蒸気圧の液化ガスの場合であっても、プロセス装置に対して安定した送気圧力を確保し、所望の流量を安定的に供給することが可能な液化ガス供給装置を提供することが可能となった。また、容器において気化させて送気された液化ガスを、一旦ガス消費設備であるプロセス装置側で強制的に液化させた後、再度、本発明に係る気化装置を用いて気化させてプロセス装置に送気することによって、安定した送気圧力の確保を図ることが可能となった。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスについても、気相状態で安定的にガス消費設備に送気可能な、エネルギー効率が高く機能的に優れた液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。充填容器の底部および外周部に接するように配設され熱媒体が供給される空間部と、熱媒体を温度制御して該空間部に循環供給する熱媒体供給部と、空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部と、これらを制御する制御部を有するとともに、該制御部において、熱媒体供給部での熱媒体の制御温度および供給流量、加温部に付加する熱量を制御し、充填容器内部の気相圧力が、熱媒体の制御温度における液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整する液化ガスの気化装置が基本となる。ここでは、液化ガスとして、HF、CLF3、BCL3、SiH2CL2、WF6等に代表される低蒸気圧の液化ガスを処理する場合について説明する。
【0035】
<本発明に係る液化ガスの気化装置の基本構成例>
図1は、本発明に係る液化ガスの気化装置(以下「本気化装置」という)の基本構成例を示す概略図である。本気化装置は、主として、液化ガスが充填される充填容器1、その底部1aおよび外周部1bに接するように熱媒体が供給される空間部1cを形成するジャケット2、底部1aの底面中心部M近傍に熱媒体を噴射するノズル3、ノズル3へ熱媒体を供給するための熱媒体導入管4、供給される熱媒体を加熱する浸漬ヒータ5(加温部に相当)、および温度調節された熱媒体を供給する熱媒体供給部6から構成される。充填容器1の上部には圧力センサ(圧力検出部に相当)7が配設され、内部に充填された液化ガスの気相部Gの圧力を検出する。液化ガスは、液体状態で充填口1dから充填容器1に供給され、気化されて導出口1eから気体状態で供出される。これらは制御部(図示せず)によって統括的に制御される。
【0036】
このとき、冷却ジャケット2の外周および底部と接触するように熱媒体が流通可能な空間部1cを有することによって、充填容器1の周辺から温熱を供給するとともに、充填容器1の底面中心部M近傍に対して直角方向に熱媒体を噴射させることによって、液相部Lの中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して、液相温度の均一性を確保することができる。これによって、容器内部の液相部Lから均一に液化ガスを気化させることができ、安定的な液化ガスの供給ができる。また、熱媒体供給部に浸漬ヒータ5を組み込み、供給される熱媒体を加熱することによって、液化ガスの供給量すなわち気化量に応じて液相部Lの液化ガスから奪われる気化熱を、速やかに補填できるので、さらに安定した圧力で液化ガスを供給できる。
【0037】
充填容器1は、図1に例示するように液化ガスを充填口1dから補充が可能な定置式移充填容器を用いる場合以外に、液化ガスを充填した状態で搬送され容器ごと交換して補充する搬送用容器を用いることが可能である。ここで、充填容器1の底面中央部Mの肉厚が他部よりも薄肉であることが好ましい。高い伝熱機能の確保を図り、当該部位に噴射される熱媒体からの温熱を内部の液相部Lの中央部に伝達し、液相内に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して液相温度の均一性を確保することを可能とするものである。具体的には、実証の結果、充填容器1の底面の面積の約1/2に相当する円形部の肉厚(直径にして1/√2の円形領域)を、それを取り囲むドーナツ状の底部1aおよび充填容器1の外周部1bの肉厚よりも薄くする構造とすることが好ましいことが判った。
【0038】
また、充填容器1の底部1a側の空間部1cには、熱媒体が噴出する速度を上げるためのノズル3および熱媒体導入管4が設けられ、熱媒体供給部6から供給された熱媒体は、供給口4a、熱媒体導入管4、ノズル3、空間部1cおよび供出口2aを介して熱媒体供給部6に戻る循環流路を形成する。温熱を有する熱媒体がノズル3から噴射され、充填容器1内部の液相の液化ガスに伝熱することによって、気化熱による液相温度の低下を防止することができる。このとき、ノズル3の先端形状を、充填容器1の底部1aの面積の約1/2の大きさのフラットな円形とし、ノズル3とそれに対向する充填容器1の底部1aの間に狭隘部3aを設け、充填容器1の底面中心部M近傍に噴射された恒温流体がこの狭隘部3aを通ることにより、空間部1cの他の部分よりも熱媒体の流速および圧力を上げるような構造にすることが好ましい。
【0039】
次に、こうした構成によって機能する、本気化装置特有の作用・機能について説明する。つまり、本気化装置は、以下のような作用・機能を有している。
(a)充填容器1周辺のジャケット2内部の空間部1cに熱媒体を循環的に供給することによって、充填容器1の外部環境温度の変動に伴う影響を遮断し、供給圧力の変動を防止する。
(b)充填容器1の底面中央部Mに直角に熱媒体を噴射させることによって、充填容器1の外壁面での境膜伝熱係数の改善を図るとともに、さらに熱媒体の噴流が照射される容器壁面の肉厚を他の部分よりも薄くすることによって、熱媒体から充填容器1内部の液相部へ伝熱する総括伝熱係数の改善を図って、熱媒体からの充填容器1の壁面へ伝わる熱伝導性をアップする。
(c)容器内部の液相部の温度を一定にするだけではなく、容器や配管等の周囲温度と液相温度の適正な温度差を形成するとともに、液相部の中心部と周辺部の温度差を作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の均一性を確保する。前者において、充填容器1のジャケット2内部の空間部1cの熱媒体、つまり、循環熱媒体の制御温度が寄与し、後者において、ノズル3から噴出する熱媒体、つまり、浸漬ヒータ5の制御温度が寄与することから、両者に温度差を設けた非平衡条件を形成することによって、液相表層部の温度維持が可能となる。
(d)底面中央部Mに集中的に熱エネルギーを付加できる構造を採ることにより、底面中心部Mに選択的に熱を補給し液相内の中心部で上昇流を積極的に起こさせるとともに、充填容器1の外周側面からの付加的熱補給はしないように容器外面の熱媒体の流路を設定することによって、液化ガスの液相に積極的な対流を形成させ、充填容器1の壁面を伝って補給された熱を速やかに、気化現象が発生している気液界面部送り込み、液化ガスの気化熱と充填容器1の周囲からの温熱供給量の熱収支バランスの不全を抑制し、液相表面の温度変化に伴う圧力変動を防止することができる。
(e)液化ガスの消費が停止している状態でも、常に液相部の対流を発生させ、気相部の圧力が、容器外周部を循環する熱媒体の温度における該液化ガスの飽和蒸気圧よりも高い圧力に維持することができる。具体的には、容器底面部に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与える加温器を設け、気相部の圧力に連動して付加する熱量を制御する。
【0040】
〔熱媒体の温熱制御〕
上記(a)〜(d)のような作用・機能を同時に確保するためには、熱媒体供給部6から供給される熱媒体の温熱の総量と充填容器1の底面中央部Mに直角に噴射させる熱媒体の温熱量を管理する必要がある。つまり、熱媒体供給部6から供給される熱媒体の温度および供給量を制御するだけではなく、ノズル3から噴射させる熱媒体の温熱、具体的には熱媒体導入管4の温度および供給量を制御することが重要となる。
【0041】
(1)熱媒体供給部6から供給される熱媒体の温熱制御
充填容器1に対して常に周囲から循環的に温熱が提供され、液化ガスの液相温度の均一性を維持するためには、供給される熱媒体の温度が重要な制御対象となる。熱媒体供給部6から充填容器1に供給される熱媒体の温度は、従来は本気化装置から送気する液化ガスの蒸気圧(供給圧力)に応じて、次のように決定されていた。すなわち、図2に示すように、液化ガス固有の温度−飽和蒸気圧曲線において、液化ガスの供給圧力(図2中のPv値)に相当する飽和蒸気圧が得られる液化ガスの液相温度(図2中のTv値)に等しい値に熱媒体の温度は設定されるのが従来の方式であった。これに対して本気化装置は、Tv値よりも低い値Tn[=Tv−α]に設定することを特徴とする。ここで、α値は、例えば3〜6℃程度に設定することが好ましい。
【0042】
(2)熱媒体導入管4の温度制御
本気化装置では、熱媒体供給部6から充填容器1に供給される熱媒体の温度Tnが、液化ガスの供給圧力を所定の値Pvに保つために必要な液相温度Tvよりもα値分だけ低い値に制御されて、熱媒体供給部6から送り出されてくる。一方、そのように送られてきた熱媒体に付加的に熱を与える加温部(浸漬ヒータ)5は、充填容器1の気相部Gの圧力がPv値になるように連動制御されるので、従来の方式と違って、本気化装置からガス消費設備に送気して液相から気化熱が奪われている場合だけでなく、ガス消費設備に送気していない場合にあっても、充填容器1の底面中心部M近傍に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与えるよう浸漬ヒータ5は作動し続けることになる。本気化装置が送気中である場合と送気停止中である場合の浸漬ヒータ5の動作の違いは、底面中心部M近傍に噴射される熱媒体に対して付加的に熱を与える浸漬ヒータ5からの熱量と作動頻度の差だけである。送気していない時でも浸漬ヒータ5は断続的に作動し続ける。
【0043】
充填容器1内部の液化ガスの液相内における対流の発生には、気液界面における気化熱による温度の低下に対応した底面中央部Mからの部分的な温熱の付加が重要な制御対象となる。つまり、熱媒体から液化ガスの液相部Lが受ける温熱を底面中央部M付近で大きくなるようにすることにより、図3に示すように、液相部Lの中心部で上昇流Fa、周辺部で下降流Fbとなるような対流を形成させることができ、常にこうした対流パターンとなるように温度制御をするものである。これによって、底部1aで加温された液相部Lは、他の液相部Lよりも暖かくなり軽くなるため中心付近で上昇流Faを形成し、速やかに気化現象を起こしている気液界面Lgに送られ、気液界面Lgに滞留する気化熱によって液相温度が低下している液相部Lを周辺に追いやる形で速やかに上昇してきた暖かい液相部Lと入れ替わることにより気化力の低下を防止し、気相圧力の低下を防ぐように作用する。それと同時に、それまで気液界面Lg付近にあって気化熱を奪われ温度が低下した液相部Lは逆に速やかに外周部に追いやられ、さらに充填容器1の内壁を伝うように底部1a方向に下降流Fbを形成する。このようにして底部1aに送り返された温度が低下した液相部Lは、底部1aにおいて温熱の補充を受けることにより、全体として効率よく充填容器1の周囲を流れる熱媒体Hから温熱を受けることができ、それによって気化熱による蒸気圧の低下を抑制することに寄与する。これにより供給圧力の変動の極めて少ない液化ガスの気化供給装置が実現できる。
【0044】
本気化装置においては、熱媒体供給部6から供給される熱媒体を、熱媒体導入管4、ノズル3、空間部1cを介して熱媒体供給部6に戻す循環系を形成している。従って、供給される熱媒体の温度は、熱媒体導入管4つまりノズル3では高く、空間部1cでは充填容器1の底部1aで奪われた温熱分だけ温度が低下する。これによって、上記のような液相内での対流の形成を図ることができるが、さらに、ノズル3に通じる熱媒体の流路である熱媒体導入管4に熱媒体に浸漬可能な状態で加温部(浸漬ヒータ)5を配設することが好ましい。気相圧力が低下すると直ちに加温操作を行うことによって、微小変化にも迅速な対応が可能となる。浸漬ヒータ5は、充填容器1内の気相圧力が供給圧力設定値よりも低下する事態になってはじめて作動する。浸漬ヒータ5が作動することにより充填容器1の底部1aに送られる熱媒体が、それまでの熱媒体の温度よりも一時的に温度が高くなり、その結果液化ガスへの入熱量が増えることにより液化ガスの液相温度の低下が抑えられ、ひいては気相圧力の低下が抑えられる。気相圧力が元の圧力に回復するとこの浸漬ヒータ5の作動は停止する。浸漬ヒータ5は、液化ガスの気相圧力をモニタする圧力センサ7からの液化ガス圧力信号8が予め設定された値になるように、温度調節器9によってON/OFF制御ないしPID制御されるようになっている。すなわち、この浸漬ヒータ5は、常時作動するのではなく、気相圧力低下に連動したオン・デマンド制御による制御動作をするようになっている。
【0045】
図4は、本気化装置における圧力挙動を比較説明したものである。図4(B)は、気相圧力に連動した熱媒体の温度制御を施さない場合の圧力挙動を示している。すなわち、気相圧力の変動に連動せずに、単に充填容器1を恒温化するように制御した場合の圧力挙動である。図4(A)は、充填容器1の外周に設けられた空間部1cを循環する熱媒体の温度を、該液化ガスの供給圧力を飽和蒸気圧として発生させる液相温度Tvと同じ温度に制御した上で、液化ガスが送気中に気化熱が液相部Lから奪われることにより液相温度の低下、それに伴う気相圧力が低下した時点で、循環する熱媒体に圧力低下を抑制するために付加的に入熱を加える制御を施した場合の、加熱部の動作パターンとその時の液化ガスの圧力挙動を示している。図4(C)は、本気化装置の温度制御を、充填容器1の外周に設けられた空間部1cを循環する熱媒体に施した場合の、加熱部の動作パターンと液化ガスの圧力挙動を示している。すなわち、熱媒体供給部6から送られてくる熱媒体の温度を上記液相温度Tvよりも低く抑えた上で、液化ガスの供給圧力が所定の値になるように、熱媒体の供給流路中に配設された浸漬ヒータ5で熱媒体に2次的に熱量を付加し制御された場合の、加熱部(浸漬ヒータ5)の動作バターンとその時の液化ガスの圧力挙動を示している。
【0046】
(2−1)図4(A)および(B)は、液相温度の制御を機能させた場合と機能させない場合の圧力挙動を比較説明したものである。図4(B)に示すように、液相温度の制御をしない場合には、液化ガスが気化する際に奪われる熱によって供給圧力は時間の経過とともに徐々に低下していくのに対して、図4(A)に示すように、液相温度の制御を行った場合には、多少の変動はするがその変動は液化ガスの供給上問題にならない程度に低い値に抑えられるので、従来問題となっていた供給圧力の低下は生じない。具体的には、液相温度の制御をしない場合では、(Ba)液化ガスが消費されると気化熱による液相温度の低下で時間とともに供給圧力が大きく低下し、(Bb)供給停止後も液相温度の回復は非常に遅いので気相圧力の回復も遅い。一方、液相温度の制御を行った場合では、(Aa)気相圧力に連動して浸漬ヒータ5がON/OFF動作(またはPID動作)をするので圧力変動は殆どなく、(Ab)供給停止中は圧力変動要因がないので浸漬ヒータ5は動作しない。検証試験においては、液相温度の制御を行った場合の供給圧力の変動は、10kPa以下の微小範囲にとどまることが確認された。
【0047】
(2−2)図4(C)および(D)は、本気化装置と従来の制御方式におけるオン・デマンド・ヒーティング・システムを採用した場合の圧力挙動を比較説明したものである。図4(D)に示すように、従来の制御方式では、液化ガスの送気を停止した後は、液相表層部以外の液相部Lの温度が低下した状態で安定するのに対して、図4(C)に示すように、本気化装置では、液化ガスの送気を停止した後も加熱状態を維持するので、従来問題となっていた液相温度の低下は生じない。具体的には、図4(D)に示すように、従来の制御方式では、液化ガスの送気状態においては、気相圧力に連動してON/OFF制御(またはPID制御)をするので圧力変動は殆どないが、それでも瞬時に奪われる気化熱とそれよりも緩慢な入熱の連度の違いによって、液相部L全体の温度を平均した温度は徐々に低下し、この状態で液化ガスの送気が停止すると、(Db)液相表層部の温度だけが回復し、その他の大部分の液相温度は回復しない状態で安定化してしまう。一方、本気化装置では、図4(C)に示すように、液化ガスの送気状態においては、(Ca)気相圧力に連動して浸漬ヒータ5がON/OFF動作(またはPID動作)をするので圧力変動および液相温度の低下も殆んどなく、液化ガスの送気を停止した後は、(Cb)気化熱が奪われないが、浸漬ヒータ5の設定温度よりも容器外周部1b側の空間部1cの温度(循環供給される熱媒体の制御温度)が低い非平衡条件のため、浸漬ヒータ5がON/OFF動作(またはPID動作)を継続し、(Da)液相温度をほぼ一定に維持し続ける。検証試験においては、一旦液化ガスの送気を停止した後に再度送気状態にした場合であっても、本気化装置の供給圧力の変動は、10kPa以下の微小範囲にとどまることが確認された。
【0048】
また、本気化装置では、このオン・デマンド制御における応答性を高めるために、以下の構成が関連して有効に機能している。
(i)上記オン・デマンド・ヒーティングシステムで追加的に熱を受容した熱媒体を、充填容器1の底部1aに近接し直角に噴射する構造とする。
(ii)熱媒体が底部1aに噴出する速度を上げるために、熱媒体導入管4の末端にノズル3を設ける
(iii)充填容器1の底部1aの肉厚を、それを取り囲むドーナツ状の底面および収納容器の側壁面の肉厚よりも薄くする構造とする。
(iv)ノズル3の先端形状を、フラットな円形とし、ノズル3とそれに対向する底部1aの間に狭隘部3aを設けた構造とする。
【0049】
なお、充填容器1の内部における対流の形成条件の設定は、予め所定の液化ガスを充填した充填容器1を用い、環境温度、熱媒体の温度・流量、気化させた液化ガスの送気圧力(温度)・流量を指標として対流発生の条件をシミュレーションすることによって、確定することが可能である。また、対流の存在は、上記シミュレーション時に想定することによって検証することも可能であるが、実際に透明な充填容器1によって検証する方法、液面検知センサ(内蔵式や外部からの間接検知式などを含む)による液相部Lの液表面の動きにより検証する方法や、充填容器外周表面の液相上部に相当する位置と液相下部に相当する位置との温度差および対流発生時の測定値の変化を、予め知見として入手することによって検証することが可能である。
【0050】
〔本気化装置の第1構成例の変形例〕
図5は、上記本気化装置の第1構成例に対応する変形例であって、浸漬ヒータ5を、熱媒体導入管4の内部ではなく、底部1aに近接する空間部1f(空間部1cの一部)に設けることによって、充填容器1の底面中央部Mに直角に熱媒体を噴射させる機能を確保している。比較的細い熱媒体導入管4を用いることによって、第1構成例におけるノズル3に近い機能を有し、底部1aとの間に浸漬ヒータ5を配設することによって、噴射させる熱媒体の加温を確保することができる。このように簡便な構造によって、第1構成例とほぼ同等の機能を有する本気化装置を構成することができる。
【0051】
<本気化装置の第2構成例>
図6(A)および(B)は、上記本気化装置の第1構成例に対応する発展形であって、充填容器1の底部1aに接するように配設された空間部Saと、充填容器1の外周部に接するように配設され空間部Saと独立した空間部Sbと、熱媒体供給部6から供給された熱媒体が空間部Sbに配設された導入部4bから空間部Sbに導入された後に、空間部Sbに配設された排出口4cから排出される流路Bと、流路Bから供出された熱媒体が空間部Saに配設された熱媒体導入管4aより空間部Saに導入される流路Aを有することを特徴とする。上記図12と同様、図6(A)は、現場据付式の充填容器1の場合を例示し、図6(B)は、搬送式の充填容器1の場合であって、充填容器1の下部に配設されたロードセルWにより重量を測定することによって、内部の液化ガスの残量を把握できる装置を例示する。
【0052】
第1構成例では一体であった空間部1cを、役割の相違からそれぞれ独立した空間部Saと空間部Sbを形成したものである。また、熱媒体供給部6から供給された熱媒体が、空間部Sbを介して空間部Sbに導入され、浸漬ヒータ5によって加温された後ノズル3によって噴射することによって、充填容器1の底部1aに集中的に入熱する。こうした構成によって、次のような作用や機能をえることができる。
(i)独立した空間とすることによって、各空間部Sa,Sbの独立した温度制御が容易となり、制御精度を上げることができ、同一熱媒体を用いて小さな温度差を正確に制御することができる。これによって、充填容器1や送気用の配管等の周囲温度と液相温度の適正な温度差を形成するとともに、液相部Lの中心部と周辺部の温度差を作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の均一性を確保することができる。
(ii)先に温度制御された熱媒体を空間部Saに導入し、供出された熱媒体を空間部Sbに導入して加温することによって、供出時に温度低下が生じた熱媒体を加温して、該制御温度よりも高い一定温度の熱媒体として容器の底部に照射することができる。
【0053】
〔本気化装置の第2構成例の変形例〕
(1)図7は、上記本気化装置の第2構成例に対応する1つの変形例であって、充填容器1の外周部に接するように配設された空間部Sbの外周を、充填容器1の底部1aに接するように配設された空間と一体となる空間部Saが覆うように配設される。空間部Sbに対して充填容器1の周辺環境温度の影響をなくすことができ、より正確に空間部Sbの温度制御を行うことができる。
【0054】
(2)図8は、上記本気化装置の第2構成例に対応する他の変形例であって、空間部Sbの外周を空間部Saが覆うように配設され、底部1aの底面中心部M近傍まで空間部Sbが形成されるとともに、空間部Saの内部に熱媒体導入管4が配設される。図7の構成以上に、空間部Sbに対して充填容器1の周辺環境温度の影響をなくすことができるとともに、ノズル3からの熱媒体を底部1aの底面中心部Mのより狭い範囲で噴射することができることによって、充填容器1の底部1aにさらに集中的に入熱することができ、液相部Lの中心部と周辺部の温度差を精度よく作り出し液相内の対流を形成することによって液相表層部と他の液相部との温度の高い均一性を確保することができる。
【0055】
<本発明に係る液化ガス供給装置の構成例>
上記気化装置は、例えば半導体製造プロセスなどにおいて液化ガスが充填された充填容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガス供給装置に用いられる。ここで、充填容器に充填された液化ガスの気化処理、および/またはガス消費設備近傍に設置され配管送気された後に再液化して貯蔵された液化ガスの気化処理に用いられる。
【0056】
図9(A)は、こうした気化装置を用いた本発明に係る液化ガス供給装置(以下「本供給装置」という)の基本構成例(第1構成例)を示す概略図である。低蒸気圧液化ガスを安定的に気化させ、供給配管20を介してガス消費設備(プロセス装置)30への圧力の変動のない供給を実現するものである。本気化装置では、低蒸気圧液化ガスが充填された容器1が、上記気化装置を有する液化ガス供給ユニット10に着脱できるようになっている。この液化ガス供給ユニット10を用いることにより、従来、蒸気圧がもともと低いがために気化熱による液相温度低下による供給圧力の減退により困難であった低蒸気圧液化ガスの長時間連続供給が可能となる。ここで、プロセス装置30は、半導体製造プロセスではCVDやPVDなどのプロセスチャンバ31と、これに所定の圧力や流量を調整して供給するガス制御ユニット32などを有している。
【0057】
充填容器1に充填された液化ガスは、液化ガス供給ユニット10によって気化される。気体状態となった液化ガスは、供給配管20を介してプロセス装置30に送気される。なお、導入された液化ガスを含むプロセス装置30からの排ガスは、排ガス処理装置(図示せず)を介して排出される。本供給装置では、気化熱による液相の温度低下による圧力減退が非常に少ないことより、従来の方式では困難であった低蒸気圧液化ガスの室温以下の温度での気化供給も可能となる。この室温以下の温度の液化ガス蒸気供給方式が採用できることにより、従来、低蒸気圧液化材料を気化して送る供給系において問題となる供給配管20内での再液化問題は発生せず、安定した送気圧力を確保し再液化による配管腐蝕といった問題のない供給が可能となる。
【0058】
本供給装置は、さらに、図9(B)に示すように、2セットの液化ガス供給ユニット11,12を有する構成とすることができる。基本的に、図9(A)に示す構成と同じであるが、液化ガス供給ユニット11,12を2セット有しているので、この2セットを交互に切換えながら供給することにより、供給中の液化ガス供給ユニット11の充填容器11a内の液化ガスの残量が残り少なくなった時点で、それまでに恒温化されていた待機中の液化ガス供給ユニット12にガス供給を切換えることにより、充填容器の交換度に一時停止する必要なく、連続的に液化ガスの供給を行うことができる。
【0059】
こうした構成を有する本供給装置は、以下の条件において機能するという特徴がある。つまり、本供給装置においては、上記の気化装置が有する機能を有効に生かすことによって、各部の設定温度(制御温度を含む)を非常に精度よく調整し維持することができる。以下、図9(A)に基づき説明する。なお、下記に示したプロセスおよび温度等の条件は、本供給装置が多く用いられる例示であり、これに限定されないことはいうまでもない。
【0060】
(a)熱媒体供給部6における熱媒体の制御温度は、低蒸気圧液化ガスの供給配管20の途上ないしプロセス装置30の接ガス部での再液化を防止する観点より、供給配管20およびプロセス装置30が置かれている環境温度(半導体プロセスであればクリーンルームの室温となる)その温度の変動幅の最低温度よりも、さらに低い温度に設定することができる。
【0061】
(b)半導体プロセスにおいて、クリーンルームの室温の変動幅は通常23±1〜2℃に収められているので、熱媒体の制御温度は、再液化のリスクに対する十分な裕度をもった13℃程度にすることが好ましい。その上で、熱媒体供給系に組み込まれる浸漬ヒータ5の作動を、充填容器1の気相部Gの圧力が、この熱媒体供給部6から送りだされてくる熱媒体の温度、すなわち、前述の13℃よりも高い温度で、かつ、配管およびプロセス装置30の置かれた環境温度の下限値よりも常に下回る温度、具体的に半導体工場の場合には15〜16℃、における該液化ガスの飽和蒸気圧に設定することができる。
【0062】
(c)このような温度設定にすることにより、該液化ガスの供給が停止している状態でも充填容器1の環境温度が液相部Lの目標温度よりも低いために、熱媒体供給系内に配設された浸漬ヒータ5は、ガス供給停止中でも間歇的に作動することとなり、充填容器1内の液相部Lでの対流が継続して形成され、液化ガスの送気が常時持続されることとなる。この結果、低蒸気圧液化ガスの場合に、従来方式では十分に対応できなかった制御の対象である「気液界面の液相表層部のみ温度」を目標値とすることができ、従来方式の課題であった「他の部分がそれよりも低い温度であっても見かけ上の気相部Gの圧力が回復しているためヒータ作動が停止し、そのため液相全体のエネルギーが十分回復せず、従って、供給再開時に供給圧力がどうしても異常低下しやすい」という問題点は解消されることになる。
【0063】
(d)充填容器1の外周に循環させる熱媒体の温度を液化ガスの液相部Lの目標温度よりも低く抑えることの別の効用として、供給停止時にそれまでの供給中にフル稼働状態の浸漬ヒータ5によって熱媒体に蓄積された熱慣性により、浸漬ヒータ5の動作停止後も、液化ガスにしばらく熱を補給し続けることができることから、液相温度のオーバーシュート現象を抑制するという効果もある。
【0064】
〔本供給装置の第2構成例〕
図10(A)および(B)は、上記本供給装置の第1構成例のそれぞれに対応する発展形であって、遠隔の1次液化ガス供給ユニット13から供給配管20aを経由して液化ガスを液相で2次液化ガス供給装置10(または11,12)に補給できるようにしたものである。図10(A)に示すように、1次液化ガス供給ユニット13に、液圧送用ガス(例えば、窒素などの不活性ガス)13bを供給することによって、充填容器13aに充填された液相の液化ガスを液体状態のまま、2次液化ガス供給ユニット10に圧送される。圧送された液化ガスは、2次液化ガス供給ユニット11において用いられた上記気化装置によって、供給配管20bを介してプロセス装置30に送気される。
【0065】
従前の低蒸気圧液化ガスを気化して送る供給系では、供給配管内を流れるガスは、供給圧力が非常に低いだけでなく飽和蒸気圧に近い蒸気であり、配管周囲の温度変化の影響を受けやすいため、複数の環境温度領域を通過する長距離配管での供給は困難である。従って、これら低蒸気圧の液化ガス供給装置は、必然的にプロセス装置と同一の空調環境下に設置されるのが普通である。プロセス装置が半導体製造装置の場合には、半導体消費設備が置かれたクリーンルーム内に低蒸気圧の液化ガス供給装置は置かれることになる。従って、本供給装置のように、1次液化ガス供給ユニット13の充填容器13aの交換を2次液化ガス供給ユニット10よりも遠隔から充填できることは、クリーンルームのような閉鎖空間での危険な液化ガスの交換作業を排除できるため、ガス供給設備の安全設計上、および作業効率の向上といった面よりメリットが大きい。また、上記本供給装置の第1構成例と同様、図10(B)に示すように、2セットの液化ガス供給ユニット11,12を有する構成とすることができる。
【0066】
〔本供給装置の第3構成例〕
図11(A)および(B)は、上記本供給装置の第2構成例のそれぞれに対応する構成をさらに発展させた装置であって、1次液化ガス供給ユニット13から供給配管20aを経由して2次液化ガス供給ユニット10(および12)に対して液化ガスの遠隔補充を気体状態で行うものである。第2構成例の場合は、液体状態で行っているところ、第3構成例に係る本供給装置では、気相状態で送られてきた液化ガスを、プロセス装置30の近傍に置かれた2次液化ガス供給ユニット11で一旦再液化して液化状態で貯蔵し、液相として貯蔵し液化ガスを上記気化装置によって再度気化し、供給配管20bを介して気体状態でプロセス装置30まで送気する液化ガス供給装置である。
【0067】
具体的には、図11(A)に示すように、1次液化ガス供給ユニット13によって、充填容器13aに充填された液化ガスが気化される。気体状態となった液化ガスは、供給配管20aを介して2次液化ガス供給ユニット10(または11,12)に送気される。送気された液化ガスは、2次液化ガス供給ユニット10(または11,12)において、再液化手段(図示せず)によって再度液化させ、貯蔵手段(図示せず)によって液体状態で貯蔵される。貯蔵された液化ガスは、気化手段(図示せず)によって気化される。気体状態となった液化ガスは、供給配管20bを介してプロセス装置30に送気される。なお、導入された液化ガスを含むプロセス装置30からの排ガスは、排ガス処理装置(図示せず)を介して排出される。液化ガスメーカから納入される充填容器1Dの場合は、その取付け取外し作業は、もっぱら1次液化ガス供給ユニット13でしか行なわないので、一般作業員の働いているプロセス装置30の置かれた場所(半導体製造プロセスであればクリーンルーム内)では、配管の大気開放という危険な作業は行わなくて済む。そのため、従来は不可能であった低蒸気圧液化ガスも含めた全ての液化ガスの作業場(クリーンルームなど)からの完全分離、集中供給が可能となり、安全性の飛躍的増大と作業の効率化を図ることができる。
【0068】
2次液化ガス供給ユニット10は、1次液化ガス供給ユニット13および供給配管20aから送気された気体状態の液化ガスを再度液化して一旦液体状態の液化ガスとして貯蔵する機能と、一旦貯蔵した液化ガスを再度気化させ気体状態でプロセス装置30に送気する機能を有している。本供給装置においては、液化手段、貯蔵手段および上述気化装置を用いることによって、こうした機能を確保することができる。また、上記本供給装置の第1,2構成例と同様、図11(B)に示すように、2セットの液化ガス供給ユニット11,12を有する構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記においては、主として半導体あるいはFPD製造プロセスに用いる半導体用特殊ガスなどの液化ガスの気化方法、気化装置およびこれを用いた液化ガス供給装置について述べたが、本発明は、こうしたエレクトロニクス用液化ガスに限られず、各種プロセス用の液化ガスあるいは各種液体の熱処理プロセスなどに適用することができる。また、複数の温度条件を必要とする場合に、対応する温度の冷媒のみを供給する装置としても有用であり、特に複数の温度条件において熱処理を必要とする製造プロセスに対しては有用である。例えば、ガスの吸着処理や精製処理などのプロセスにおける冷却・加熱の切換えに用いられる処理手段などが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る気化装置(本気化装置)の基本構成例を示す概略図
【図2】液化ガスの温度−飽和蒸気圧線を例示する説明図
【図3】本気化装置における充填容器内部の液相内における対流を例示する説明図
【図4】本気化装置における圧力挙動を例示する説明図
【図5】本気化装置の第1構成例の変形例を示す説明図
【図6】本気化装置の第2構成例を示す説明図
【図7】本気化装置の第2構成例の変形例を示す説明図
【図8】本気化装置の第2構成例の変形例を示す説明図
【図9】本発明に係る液化ガス供給装置(本供給装置)の基本構成例を示す説明図
【図10】本供給装置の第2構成例を示す説明図
【図11】本供給装置の第3構成例を示す説明図
【図12】従来技術に係る液化ガス気化装置を例示する概略図
【図13】従来技術に係る液化ガス供給装置を例示する概略図
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B 充填容器
1a 底部
1b 外周部
1c,Sa,Sb 空間部
1d 充填口
1e 導出口
2 ジャケット
2a 供出口
3 ノズル
3a 狭隘部
4 熱媒体導入管
5 浸漬ヒータ(加温部)
6 熱媒体供給部
7 圧力センサ
8 液化ガス圧力信号
9 温度調節器
10〜13 液化ガス供給ユニット
20,20a,20b 供給配管
30 ガス消費設備(プロセス装置)
A,B 流路
G 気相部
L 液相部
M 底面中心部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法であって、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部に、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする液化ガスの気化方法。
【請求項2】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法にあって、
前記充填容器の底部と外周部の各々に接するように配設された2つの独立した空間部Sa,Sbに、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記底部に接する空間部Saに供給される熱媒体を、該空間部Saの内部または空間部Saに内設された熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする液化ガスの気化方法。
【請求項3】
前記熱媒体導入管の内部に設けられた前記加温部によって加温され、該熱媒体導入管から供出される熱媒体を、前記充填容器の底部の内の中心部に選択的に照射することにより充填容器中心部での液化ガスへの入熱を他の底部よりも上昇させて、前記液相内に液相中心部で上昇、液相の外周部で下降する対流を発生させることを特徴とする請求項1または2記載の液化ガスの気化方法。
【請求項4】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置であって、
熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部と、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部と、
前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部と、
これらを制御する制御部を有するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、該制御部において、前記熱媒体供給部での熱媒体の制御温度および供給流量、前記加温部に付加する熱量を制御し、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする液化ガスの気化装置。
【請求項5】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置にあって、
熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部と、
前記充填容器の底部に接するように配設された空間部Saと、
前記充填容器の外周部に接するように配設され、前記空間部Saと独立した空間部Sbと、
前記熱媒体供給部から供給された熱媒体が、前記空間部Sbに配設された導入部から空間部Sbに導入された後に、前記空間部Sbに配設された排出口から排出される流路Bと、
該流路Bから供出された熱媒体が、空間部Saに配設された熱媒体導入管より空間部Saに導入される流路Aと、
前記熱媒体導入管の内部または空間部Saの内部に配設された加温部を有し、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記流路Bから供出された熱媒体が、前記加温部によって付加的に加温されることを特徴とする液化ガスの気化装置。
【請求項6】
前記充填容器の底部と接する前記空間部に、前記熱媒体導入管に繋がり該底面の中央部に接する空間部の壁面に直角に熱媒体を噴射させるノズルを配設し、前記熱媒体導入管の内部に加温部が配設されることを特徴とする請求項4または5記載の液化ガスの気化装置。
【請求項7】
前記充填容器の気相部に連結して圧力検出部を設けるとともに、その測定値を指標として、前記加温部に付加する熱量および/または熱媒体の流量を制御する機能を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の液化ガスの気化装置。
【請求項8】
前記充填容器の底面中央部の肉厚が他部よりも薄肉であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の液化ガスの気化装置。
【請求項9】
液化ガスが充填された充填容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガスの供給装置であって、
請求項4〜8のいずれかに記載の液化ガスの気化装置を用い、
前記充填容器に充填された液化ガスの気化処理、
および/または前記ガス消費設備近傍に設置され前記配管送気された後に再液化して貯蔵された液化ガスの気化処理
を行うことを特徴とする液化ガスの供給装置。
【請求項1】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法であって、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部に、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする液化ガスの気化方法。
【請求項2】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化方法にあって、
前記充填容器の底部と外周部の各々に接するように配設された2つの独立した空間部Sa,Sbに、温度制御された熱媒体を循環的に供給するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記底部に接する空間部Saに供給される熱媒体を、該空間部Saの内部または空間部Saに内設された熱媒体導入管の内部に配設された加温部に付加する熱量を制御することによって、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする液化ガスの気化方法。
【請求項3】
前記熱媒体導入管の内部に設けられた前記加温部によって加温され、該熱媒体導入管から供出される熱媒体を、前記充填容器の底部の内の中心部に選択的に照射することにより充填容器中心部での液化ガスへの入熱を他の底部よりも上昇させて、前記液相内に液相中心部で上昇、液相の外周部で下降する対流を発生させることを特徴とする請求項1または2記載の液化ガスの気化方法。
【請求項4】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置であって、
熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部と、
前記充填容器の底部および外周部に接するように配設された空間部と、
前記空間部の底部に近接する空間または該空間に設けられた熱媒体導入管の内部に配設された加温部と、
これらを制御する制御部を有するとともに、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、該制御部において、前記熱媒体供給部での熱媒体の制御温度および供給流量、前記加温部に付加する熱量を制御し、前記充填容器内部の気相圧力が、前記熱媒体の制御温度における前記液化ガスの飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整することを特徴とする液化ガスの気化装置。
【請求項5】
液相と気相が共存する状態で収納されている液化ガスの充填容器から、該気相部の液化ガスをその消費設備に送気する液化ガスの気化装置にあって、
熱媒体を温度制御して循環供給する熱媒体供給部と、
前記充填容器の底部に接するように配設された空間部Saと、
前記充填容器の外周部に接するように配設され、前記空間部Saと独立した空間部Sbと、
前記熱媒体供給部から供給された熱媒体が、前記空間部Sbに配設された導入部から空間部Sbに導入された後に、前記空間部Sbに配設された排出口から排出される流路Bと、
該流路Bから供出された熱媒体が、空間部Saに配設された熱媒体導入管より空間部Saに導入される流路Aと、
前記熱媒体導入管の内部または空間部Saの内部に配設された加温部を有し、
前記液化ガスを送気する状態と送気を停止する状態のいずれにおいても、前記流路Bから供出された熱媒体が、前記加温部によって付加的に加温されることを特徴とする液化ガスの気化装置。
【請求項6】
前記充填容器の底部と接する前記空間部に、前記熱媒体導入管に繋がり該底面の中央部に接する空間部の壁面に直角に熱媒体を噴射させるノズルを配設し、前記熱媒体導入管の内部に加温部が配設されることを特徴とする請求項4または5記載の液化ガスの気化装置。
【請求項7】
前記充填容器の気相部に連結して圧力検出部を設けるとともに、その測定値を指標として、前記加温部に付加する熱量および/または熱媒体の流量を制御する機能を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の液化ガスの気化装置。
【請求項8】
前記充填容器の底面中央部の肉厚が他部よりも薄肉であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の液化ガスの気化装置。
【請求項9】
液化ガスが充填された充填容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガスの供給装置であって、
請求項4〜8のいずれかに記載の液化ガスの気化装置を用い、
前記充填容器に充填された液化ガスの気化処理、
および/または前記ガス消費設備近傍に設置され前記配管送気された後に再液化して貯蔵された液化ガスの気化処理
を行うことを特徴とする液化ガスの供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−52596(P2009−52596A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217553(P2007−217553)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
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