説明

液化ガスタンク用潜没ポンプ装置

【課題】液化ガスタンク用潜没ポンプ装置用吸込弁をより製作を容易にし、コストや製作期間を低減し、また吸込弁の形状変更を容易にし、その形状変更による性能調整が可能な構造を持つ吸込弁を提供するものである。
【解決手段】本発明の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置用吸込弁は、その吸込弁の構成部品である底板、天板、中央コーン、隔壁をそれぞれ別体として製作し、中央コーンを円柱とし、隔壁を板状にしてそれらを溶接により一体にして製作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスタンク用潜没ポンプ装置に係り、特に吸込弁部のコスト低減を図るのに好適な液化ガスタンク用潜没ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置として特許文献1を図7,図8を参照して説明する。図7は、液化ガスタンク用潜没ポンプ装置の断面図、図8は、図7における液化ガスタンク用潜没ポンプ装置の吸込弁部の詳細断面図(a)と、(a)のA矢視図である。
【0003】
図7において、1は液化ガスタンク、1aは液化ガスタンク1のタンク天井板、2は液化ガスタンク1内に垂下された揚液管であり、この揚液管2の頂部に、ポンプ吊り上げ機構を備えたヘッドプレート2aを有している。3は揚液管下端に取り付けられた吸込弁アダプター、3aは吸込弁、4は吸込弁アダプター3の内部に形成した座面、5は揚液管2内に設置される潜没ポンプ本体、6は潜没ポンプ本体ケーシングに設けた吐出口、10は揚液管2の上部に設けた吐出管、7aは駆動モータ用ケーブル、7bはコネクティングボックス、8aはセンサー用ケーブル、8bはケーブルボックス、9は潜没ポンプ本体5を吊り上げるための吊り上げ用ワイヤである。なお、潜没ポンプ本体5には、図示しないモータと、このモータに回転軸で連結され吸込んだ液化ガスを昇圧する羽根車が内蔵される。
【0004】
図8に要部を示すように、潜没ポンプ装置は、液化ガスタンク1内に垂下された揚液管2と、前記揚液管2の下端に取り付けられた吸込弁アダプター3および吸込弁3aと、前記吸込弁3aの上部で且つ前記揚液管2内に配置される潜没ポンプ本体5とからなり、潜没ポンプ本体5は吸込弁アダプター3内の座面4に設置されて着座する。吸込弁アダプター3の下端部に設置された吸込弁3aは、機能で考えると底板3a−1、隔壁3a−2、側板3a−3、上部フランジ3a−4、中央コーン3a−5の要素から構成されているが、その複雑な形状のため、鋳物による一体成形でひとつの部品として製作されている。
【0005】
吸込弁3aは、ポンプ本体5が据え付けられない状態では、ガイドピン3bに沿ってスプリング3cが伸長することにより上方に引き上げられ、吸込弁アダプター3と密着して閉止状態となり、揚液管2内に液化ガスタンク1内の液化ガスが入り込まないようになる。一方、ポンプが据え付けられた時には、吸込弁3aは下方に押し込まれ、吸込弁3aを支えるガイドピン3bの移動と、スプリング3cが収縮することにより開状態となる。
【0006】
上記のように吸込弁3aは、ポンプが据え付けられていない時には、揚液管を閉止するための閉止弁として働き、ポンプが設置されると、ポンプの下端を支持するための隔壁3a−2を提供すると共に、ポンプへの吸込流路として使用されるものである。吸込弁3aのポンプへの吸込流路としての第1の働きは、液化ガスをポンプ入口へ導くことであり、また第2の働きとしては、ポンプ入口に発生する渦と呼ばれる現象を抑制することにある。
【0007】
この渦が発生するとポンプに有害な振動や騒音が発生することもあり、それを防ぐためにポンプ入口に中央コーン3a−5を設置し、渦の原因となる旋回流れの発生を防いでいる。そして、この中央コーンの高さにより入口の旋回流れの抑制効果は調整される。このような理由のため現状の吸込弁は、図8に吸込弁3aとして示すように中央コーン3a−5により突起しその回りにポンプ支持のための隔壁3a−2がついた形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−256981公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の吸込弁は機能で考えると、底板、隔壁、側板、中央コーンの要素から構成されているが、吸込弁を構成する要素形状がお互いに干渉した複雑な形状のため一体成形でひとつの部品として製作されている。そのため製作方法としては、製作費用が高く、製作期間が長いことが課題になっている。
【0010】
また吸込弁は、前述のとおり、ポンプ入口流路として入口流れの状態を決めているので、吸込弁の形状がその製作過程における製作精度の程度によっては形状が設計形状と大きく異なることがあると、ポンプの性能へ影響を及ぼすこともある。そのような場合には、吸込弁形状を追加工して所定の形状に直すことが考えられるが、従来形状では、一体形状として製作されているため、製作後に形状修正を行うことは困難であった。そのため、例えば中央コーンの高さの調整等の性能調整が必要な場合には、別の吸込弁を作り直すこともある。
【0011】
本発明は、従来技術の欠点に鑑み、吸込弁の製作をより容易にし、コストや製作期間を低減し、また製作後の性能調整が可能な吸込弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、液化ガスタンク内に垂下された揚液管底部に取り付けられた吸込弁アダプターと吸込弁とを有し、吸込弁アダプター内部の座面に着座させた状態で、昇圧した液化ガスを揚液管内に吐出する複数の吐出穴とを備えたポンプ本体を有する液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、
上記吸込弁の構成部品である底板、天板、中央コーン、ポンプ本体設置用の隔壁をそれぞれ別体に製作し、それらを組み合わせて一体に接合して構成されたことを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、円柱としたことを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、円柱上部を周方向に斜めに削除した形状としたことを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、円錐の頭部を水平に削除した形状としたことを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを円柱とし、その側面に放射状の突起状態の板をつけたことを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、その中央コーンの円柱上部を周方向に斜めに削除した形状とし、その側面に放射状の突起状態の板をつけたことを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを円錐の頭部を水平に削除した形状とし、その側面に放射状の突起状態の板をつけたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吸込弁は、各要素をそれぞれ別体として製作し、それらを一体に結合することにより、製作容易、コスト低減、製作期間短縮が実現でき、また製作後に形状変更が可能なのでポンプの性能調整ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施例1の吸込弁の断面図とA矢視図である。
【図2】本発明実施例2の吸込弁の断面図とA矢視図である。
【図3】本発明実施例3の吸込弁の断面図とA矢視図である。
【図4】本発明実施例4の吸込弁の断面図とA矢視図である。
【図5】本発明実施例5の吸込弁の断面図とA矢視図である。
【図6】本発明実施例6の吸込弁の断面図とA矢視図である。
【図7】従来の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置の断面図である。
【図8】図7における吸込弁部の詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る液化ガスタンク用潜没ポンプ装置用吸込弁の各実施の形態を図1ないし図6を参照して説明する。図1は、(a)が本発明の実施例1の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置における吸込弁の断面図で、(b)が(a)A矢視図である。
【0022】
図1において、吸込弁は、その各構成部品である底板20、天板22、中央コーン23、隔壁(4枚)21をそれぞれ別体として製作し、それら部品を溶接、ねじ、またはボルトなどの締結部材により一体に接合して構成される。吸込み弁アダプター3の内部の座面4にポンプ本体が着座した際に、その下端を支えるポンプ本体設置用の隔壁21は4枚であるが、それ以外の枚数でもよいことは言うまでもない。上記各構成部品はステンレス鋼が用いられ、底板20は、中央コーン23と隔壁(4枚)21が溶接等により接合されるので、溶接時などの変形を押さえるために高い剛性で構成される。
【0023】
図8の従来例は上記各構成部品に相当するものを一体成型によりで製作されているので、製作後に形状を修正することは困難である。本実施例では、上記構成部品を分解して、それぞれの部品の目的に応じて形状を単純化して再構成した。
【0024】
すなわち、底板20は弁体として吸込み弁アダプター3と密閉性を保つため、単一の円盤状であって接触面が密着性を良くするように削り加工されている。また、従来例の側板3a−3と上部フランジ3a−4は、その機能が隔壁3a−2を取り付けることなので、本実施例では、側板3a−3と上部フランジ3a−4を一体として、上部フランジ22の単純な形状にしている。
【0025】
吸込弁がポンプ吸込流路として機能するための流路形状は、従来、主として隔壁3a−2と中央コーン3a−5により形成され、隔壁3a−2がポンプ設置時にはポンプを支持することと吸込流路の形状を、流体的に滑らかな形状するために断面形状が円弧と直線で構成させる複雑な形状であった。本実施例では、ポンプ支持を目的として単純な直線で構成された平板である隔壁21にした。
【0026】
また従来、中央コーン3a−5は、流路を流体的に滑らかな形状とするためと、ポンプ入口に発生する渦と呼ばれる現象を抑制するため、中央が突起しその周辺へ滑らかに円錐状に末広がりに広がる形状となっているが、渦を抑制する機能を目的として、本実施例では、単純構成の円柱23に置き換えた。
【0027】
ポンプ入口においては、その入口流路形状と運転する流量との関係により、入口に旋回流れと呼ばれる流れができることがある。この旋回流れを抑制制御するために円柱23が設置されている。この円柱のこの高さを調整することで旋回流れを調整することができ、さらにはポンプ性能の最終的調整をすることができる。図1に示す本実施例の吸込弁を用いたポンプと、従来の図8の吸込弁3aを使用した場合のポンプ性能試験を実施し、両者の性能を比較したところ、ポンプ性能の差は小さく、本実施例の吸込弁がポンプ性能へ及ぼす影響は、実用上は問題にならないことを確認している。また、本実施例では、吸込弁を一体に構成された後に、天板22の開口部分22aから工具等を挿入して、高めに作った円柱23の頂部を、削り加工により高さ調整することで、ポンプ性能の最終的調整をすることができる。この点、従来の中央コーン3a−5は、頂部を削ると孔が開いてしまい、弁の機能を失う。
【0028】
図2に本発明実施例2の吸込弁の構成を示す。図1における円柱23を、円柱上部の角部を周方向に削除した形状24にした場合であり、図1の吸込弁と比較して、流路形状は滑らかになる。図3に本発明実施例3の吸込弁の構成を示す。図1における円柱23の代わりに円錐とし、その頭部を水平に削除した形状25にした場合であり、図1の吸込弁と比較して、流路形状はさらに滑らかになる。
【0029】
また図4に本発明実施例4の吸込弁の構成を示す。図1の円柱23の側面の周囲に板26を放射状に突起状態になるように固定したものである。この板26をつけることで、ポンプ入口に発生する渦の原因となる入口旋回流れを抑制する効果をより強くしたものである。また図5に本発明実施例5の吸込弁の構成を示す。図2の円柱上部の角部を周方向に削除した形状24とし、その側面の周囲に板27を放射状に突起状態になるように固定したものである。この板27をつけることで、ポンプ入口に発生する渦の原因となる入口旋回流れを抑制する効果をより強くしたものである。
【0030】
また図6に本発明実施例6の吸込弁の構成を示す。図3の円錐の頭部を水平に削除した形状25とし、その側面の周囲に板28を放射状に突起状態になるように固定したものである。板28をつけることで、ポンプ入口に発生する渦の原因となる入口旋回流れを抑制する効果をより強くしたものである。図2〜図6中、図1と同符号のものは図1の例と同等であるからその説明を省略する。
【符号の説明】
【0031】
1…液化ガスタンク、1a…タンク天井板、2…揚液管、2a…ヘッドプレート、3…吸込弁アダプター、3a…吸込弁、3b…ガイドピン、3c…スプリング、4…座面、5…潜没ポンプ本体、6…ポンプ吐出穴、7a…駆動モータ用ケーブル、7b…コネクティングボックス、8a…センサーケーブル、8b…ケーブルボックス、9…吊り上げ用ワイヤ、10…吐出管、11,11A,11B,11C…閉止板、12…Oリング、13…シートパッキン、3a−2…隔壁、3a−3…側板、3a−4…上部フランジ、3a−5…中央コーン、20…底板、21…隔壁、22…上部フランジ、23…中央コーン(円柱)、24…円柱上部の角部を周方向に削除した形状、25…円錐の頭部を水平に削除した形状、26…板、27…板、28…板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスタンク内に垂下された揚液管底部に取り付けられた吸込弁アダプターと吸込弁とを有し、吸込弁アダプター内部の座面に着座させた状態で、昇圧した液化ガスを揚液管内に吐出する複数の吐出穴とを備えたポンプ本体を有する液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、
上記吸込弁の構成部品である底板、天板、中央コーン、ポンプ本体設置用の隔壁をそれぞれ別体に製作し、それらを組み合わせて一体に接合して構成されたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、円柱としたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、円柱上部を周方向に斜めに削除した形状としたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、円錐の頭部を水平に削除した形状としたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。
【請求項5】
請求項1記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを円柱とし、その側面に放射状の突起状態の板をつけたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。
【請求項6】
請求項1記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを、その中央コーンの円柱上部を周方向に斜めに削除した形状とし、その側面に放射状の突起状態の板をつけたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。
【請求項7】
請求項1記載の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置において、上記吸込弁は、その中央コーンを円錐の頭部を水平に削除した形状とし、その側面に放射状の突起状態の板をつけたことを特徴とする液化ガスタンク用潜没ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249044(P2010−249044A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100017(P2009−100017)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】