説明

液化ガス供給装置

【課題】 貯蔵タンクとは別に注入配管の一部を蒸気発生のために用いることにより、液化ガスの供給制御を安定して行うことができるようにする。
【解決手段】 貯蔵タンク1と供給バルブ15との間には長尺な注入配管7を設け、その途中には、注入配管7を上流側の蒸気発生用配管部8と下流側の払出用配管部10とに仕切るための仕切バルブ11を設ける。蒸気発生用配管部8には内部の液化ガスを加温し蒸気を発生させる加熱管22を設ける。払出用配管部10には内部の液化ガスを冷却して温度を下げる冷却管23を設ける。仕切バルブ11を開弁したときには、蒸気発生用配管部8内で発生し蒸気収容部9内に捕集した蒸気を、加圧ガスとして払出用配管部10内に流通させ、払出用配管部10内の液化ガスを供給バルブ15側に向けてガス圧で押出すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロパン、ブタン、ジメチルエーテル(DME)等の液化ガスを家庭用または車載用の液化ガス容器等に向けて供給するのに好適に用いられる液化ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭用または自動車用の燃料として使用される液化ガスは、大型の貯蔵タンク内に貯蔵される。そして、この貯蔵タンクから家庭用または車載用の液化ガス容器(供給先の小型ボンベ)等に液化ガスを供給する方法としては、例えば送液ポンプ等を用いる方法と、加圧専用のガス(以下、加圧ガスという)を用いる方法とがある。
【0003】
この場合、液化ガスの供給に送液ポンプ等を用いる方法は、高圧ガス保安法の制約により、施設の安全な運用を図る必要性等から液化ガス供給施設に広いスペースを確保することが要求される。このために、施設全体が大型化するばかりでなく、建設コストも増大することになる。
【0004】
一方、液化ガスを加圧ガスを用いて供給する方法は、前記貯蔵タンクから液化ガスを外部に払出すときに一旦は小型の払出用容器内に小分けするように張込んで収容し、この払出用容器から液化ガスを供給先のボンベ等に向けて供給するときに、払出用容器内を加圧ガスにより加圧して液化ガスを送出するものである。
【0005】
そして、この種の従来技術による液化ガス供給装置は、払出用容器内を加圧するための加圧ガスとして、例えば供給対象の液化ガスより気化(蒸発)し易いプロパンガスを用いたもの(例えば、特許文献1参照)と、窒素ガス、ヘリウムガス等の不燃性ガスを用いたものとがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、別の方法として、液化ガスの貯蔵タンクを外部から加熱媒体を用いて加温し、貯蔵タンク内の圧力を供給先のボンベよりも高い圧力に保つことにより、両者の圧力差を利用して液化ガスの供給を行うものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−181291号公報
【特許文献2】特開2002−195494号公報
【特許文献3】特開2004−245279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1による従来技術では、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクとは別に、例えばプロパンガス等の加圧ガスを貯蔵する加圧ガス用の貯蔵タンクを、大型のタンクとして設ける必要があり、全体の設備が大型化してしまう。しかも、加圧ガス用の貯蔵タンク内には定期的に加圧ガスを補充する必要があるため、加圧ガスの補充作業等に手間がかかり、メンテナンス時の作業性が低下するという問題がある。
【0009】
また、特許文献2による他の従来技術でも、例えば窒素ガス、ヘリウムガス等の加圧用不燃性ガスを貯蔵するために、加圧用不燃性ガスの貯蔵タンクを別途に設ける必要がある上に、このタンク内にも加圧用不燃性ガスを適宜に補充しなければならない。このため、他の従来技術でも、全体の設備が大型化し、メンテナンス時の作業性等を向上することができないという問題がある。
【0010】
一方、特許文献3による別の従来技術は、液化ガスの貯蔵タンクよりも小容量の払出用容器を用いることなく、大型の貯蔵タンクを外部から加温する構成としている。このため、大型の貯蔵タンク自体に断熱対策を施す必要があり、設備全体が複雑になって大型化するという問題がある。
【0011】
しかも、この場合には、貯蔵タンクから自動車の車載容器(ボンベ)等に液化ガスを直接的に供給する構成としている。このため、貯蔵タンク内には常に過剰(余分)な量の液化ガスが残留または貯蔵されることになり、このような貯蔵タンクを加温し続けるには、エネルギが余分に消費され、省エネルギ化を図る上で障害になるという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、貯蔵タンクとは別に配管の一部を蒸気発生のために用いることにより、液化ガスの一部を加温して蒸気を発生させることができ、この蒸気を加圧ガスとして用いることにより液化ガスの供給制御を安定して行うことができるようにした液化ガス供給装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、貯蔵タンクとは別の小分け容器(タンク)等を不要にすることができ、設備全体の小型化、省エネルギ化等を図ることができる上に、メンテナンス時の作業性等も向上できるようにした液化ガス供給装置を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の別の目的は、蒸気発生用配管部の加温と払出用配管部の冷却とを、ヒートポンプを用いて効率的に行うことができ、省エネルギ化を実現できるようにした液化ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明は、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、該貯蔵タンクよりも低い位置に設けられ該貯蔵タンク内の液化ガスを外部の供給対象物に払出すときに開,閉される供給バルブとを備えた液化ガス供給装置に適用される。
【0016】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記貯蔵タンクの底部側には、該貯蔵タンク内の液化ガスを前記供給バルブ側に向けて供給するときに開,閉される底部バルブを設け、該底部バルブと前記供給バルブとの間には、両者の間を予め決められた配管長をもって接続し、前記貯蔵タンクと供給バルブとの間の高低差により前記貯蔵タンク内の液化ガスが前記底部バルブを介して充填状態で注入される長尺な注入配管を設け、該注入配管の途中には、当該注入配管を上流側に位置する蒸気発生用配管部と下流側に位置する払出用配管部とに仕切るための仕切バルブを設け、該仕切バルブによって仕切られた前記蒸気発生用配管部には、該仕切バルブを閉弁した状態で当該蒸気発生用配管部内の液化ガスを加温し前記液化ガスの蒸気を発生させる加温手段を設け、前記払出用配管部には、前記仕切バルブを閉弁した状態で当該払出用配管部内の液化ガスの温度を下げる冷却手段を設け、前記仕切バルブを開弁したときには、前記蒸気発生用配管部内で発生した蒸気を加圧ガスとして前記払出用配管部に流通させることにより、該払出用配管部内の液化ガスを前記供給バルブ側に向けてガス圧で押出す構成としたことにある。
【0017】
また、請求項2の発明によると、前記蒸気発生用配管部には、前記仕切バルブよりも上流側となる位置で上方に向けて突出し前記液化ガスの蒸気を内部に閉じ込めた状態で収容する蒸気収容部を設ける構成としている。
【0018】
また、請求項3の発明によると、前記蒸気発生用配管部と払出用配管部との間には、内部を循環する熱媒体が放熱部の位置で凝縮作用による放熱を行い吸熱部の位置では蒸発作用による吸熱を行うヒートポンプを設け、前記加温手段は前記ヒートポンプの放熱部により構成し、前記冷却手段は前記ヒートポンプの吸熱部により構成している。
【0019】
さらに、請求項4の発明によると、前記ヒートポンプの吸熱部は、前記払出用配管部に設けられ前記冷却手段を構成する第1の吸熱器と、該第1の吸熱器とは別に外気と接触する位置に設けられた第2の吸熱器とにより構成し、前記第1,第2の吸熱器は、前記ヒートポンプの放熱部に対して選択的に切替えて接続する構成としている。
【発明の効果】
【0020】
上述の如く、請求項1に記載の発明によれば、貯蔵タンクと供給バルブとを接続する注入配管内に高低差を利用して液化ガスを充填し、蒸気発生用配管部と払出用配管部との間を仕切バルブの閉弁によって上,下に仕切った状態で、加温手段により蒸気発生用配管部内の液化ガスを加温すると、この配管部内で液化ガスの蒸気を発生させることができる。また、払出用配管部内では、冷却手段を用いて内部の液化ガスを冷却し温度を下げることができる。そして、この状態で前記仕切バルブを開くと、蒸気発生用配管部内で発生した蒸気が払出用配管部内に向けて流出するので、このときの蒸気圧(加圧ガス)によって払出用配管部の液化ガスを供給バルブから供給対象物となるボンベ(例えば、家庭用または車載用の液化ガス容器)等に払出すことができ、蒸気発生用配管部および払出用配管部を用いた液化ガスの供給制御を安定して行うことができる。
【0021】
このため、従来技術のように別途の加圧ガス(例えば、プロパンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等)を用いる必要がなくなり、加圧ガス補充用のタンク等も不要にできるので、設備全体を小型化することができ、メンテナンス時の作業性等も向上することができる。また、貯蔵タンクではなく、注入配管の一部(蒸気発生用配管部)を加温するだけでよいため、断熱対策等を簡略化することができ、液化ガスを余分に蒸発させることなく、省エネルギ化を図ることができる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によると、蒸気発生用配管部には仕切バルブよりも上流側となる位置で上方に向けて突出し液化ガスの蒸気を内部に閉じ込めた状態で収容する蒸気収容部を設ける構成としている。このため、注入配管の蒸気発生用配管部と払出用配管部とに液化ガスを注入した後に、仕切バルブを閉弁した状態では、加温手段の加温によって蒸気発生用配管部内に発生した液化ガスの蒸気を蒸気収容部内に加圧状態で収容することができる。また、その後に前記仕切バルブを開いたときには、蒸気発生用配管部と蒸気収容部内に収容した蒸気(加圧ガス)の圧力を利用して、払出用配管部内の液化ガスを供給バルブから供給対象物となるボンベ等に効率的に移充填(供給)することができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明は、蒸気発生用配管部側の加温手段をヒートポンプの放熱部により構成し、払出用配管部側の冷却手段を前記ヒートポンプの吸熱部により構成しているので、蒸気発生用配管部側の加温と払出用配管部側での冷却とを、例えば冷媒等の熱媒体を用いたヒートポンプにより効率的に行うことができ、省エネルギ化を実現することができる。また、払出用配管部内の液化ガスを冷却することにより、供給先のボンベ等に液化ガスを供給(移充填)する作業を効率的に行うことができる。
【0024】
さらに、請求項4に記載の発明では、ヒートポンプの吸熱部を、払出用配管部側の冷却手段を構成する第1の吸熱器と外気と接触する位置に設けられた第2の吸熱器とにより構成しているので、例えば払出用配管部内の温度を監視し、液化ガスの温度が所定の設定温度に達したときには、前記ヒートポンプの放熱部を第1の吸熱器から第2の吸熱器に切替えて接続でき、このときには外気温度を利用して熱媒体(冷媒)を蒸発させ、前記放熱部側での凝縮作用による蒸気発生用配管部内の液化ガスの蒸発を促進することができる。そして、第1の吸熱器による蒸気発生用の熱量が不足する場合には、第2の吸熱器により外気を熱源として利用することができる。これにより、払出用配管部内の液化ガスが余分に冷やされるのを防ぐことができ、払出用配管部から供給先のボンベに液化ガスを供給するときに、このボンベ内に液化ガスが過剰に充填される等の不具合をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態による液化ガス供給装置を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は液化ガス2を貯蔵した大型の貯蔵タンクで、この貯蔵タンク1は、耐圧性、気密性に優れた3トン未満の密閉容器(バルク容器)により構成され、その内部には、例えば液化ブタンと液化プロパンの混合物からなる液化ガス2が図2、図3に示す如く貯蔵されている。
【0027】
そして、貯蔵タンク1は、図2に示すように後述の供給バルブ15よりも寸法La (例えば、La =500〜700mm)だけ高い位置に設置されている。これにより、貯蔵タンク1内の液化ガス2は、寸法La 分の高低差(ヘッド圧)を利用して後述の注入配管7内に充填するように張込まれるものである。
【0028】
また、貯蔵タンク1内には、液化ガス2が過充填されるのを抑えるため、例えば内容積の90%以下の範囲内で液化ガス2が収容される。そして、貯蔵タンク1内の液化ガス2は、その一部が気化(蒸発)し、例えば気化プロパンガスおよび気化ブタンガスとなって貯蔵タンク1の上層側に滞留している。
【0029】
3は貯蔵タンク1に設けられた液面センサで、該液面センサ3は、貯蔵タンク1内に収容された液化ガス2の液量を、例えばヘッド圧として検出する。4は貯蔵タンク1に設けられた圧力計で、該圧力計4は、貯蔵タンク1内に収容された液化ガス2の圧力をガス圧(気体圧)として検出するものである。
【0030】
5は貯蔵タンク1の底部に接続された継手管、6は該継手管5を介して貯蔵タンク1の底部側に設けられた底部バルブとして張込みバルブを示している。ここで、継手管5は、例えばL字状に屈曲したエルボと呼ばれる管継手等からなり、貯蔵タンク1の一部を構成するものである。そして、継手管5は、その一側(上端側)が貯蔵タンク1の底部に接続され、他側(先端側)が張込みバルブ6を介して後述の注入配管7に接続されている。
【0031】
また、張込みバルブ6は、後述する制御装置26(図4参照)からの制御信号によって開,閉弁される。そして、張込みバルブ6を開弁したときには、貯蔵タンク1内の液化ガス2が後述の注入配管7(蒸気発生用配管部8、払出用配管部10)内に充填状態で注入するように張込まれるものである。
【0032】
7は貯蔵タンク1の底部側に継手管5、張込みバルブ6を介して接続された注入配管で、該注入配管7は、後述の供給バルブ15と張込みバルブ6との間を予め決められた配管長さをもって接続する長尺なパイプライン(連結配管)により構成されている。即ち、注入配管7は、後述の蒸気収容部9を除いた部分において、例えば24〜55リッター程度の液化ガス2を内部に充填(収容)できるように、その配管長さが予め決められている。
【0033】
ここで、長尺な注入配管7は、後述の仕切バルブ11を用いて上流側の蒸気発生用配管部8と下流側の払出用配管部10とに分離するように仕切られる。そして、蒸気発生用配管部8は、例えば4〜5リッター程度の液化ガス2を注入(収容)できるように配管長さ(内容量)が決められ、払出用配管部10は、例えば20〜50リッター程度の液化ガス2を注入(収容)できるように配管長さ(内容量)が決められるものである。
【0034】
また、注入配管7は、例えば図1に示す如く貯蔵タンク1の周囲を略四角形の枠体状をなして取囲むように組立てられ、その途中部分が複数の箇所でL字状に屈曲した配管構造物として構成されている。そして、注入配管7は、図2に示す如く貯蔵タンク1の底部と供給バルブ15との間で前記寸法La 分の高低差をもって斜めに傾斜するように設置されている。
【0035】
8は注入配管7の上流側部分を構成する蒸気発生用配管部で、該蒸気発生用配管部8は、その一側が張込みバルブ6に接続され途中部分が上,下方向で略コ字状に折曲げて形成された折曲げ管部8Aと、該折曲げ管8Aの他側(上端)に接続して設けられ、後述の払出用配管部10と同様に斜めに傾斜して配置された傾斜管部8Bとにより構成されている。
【0036】
そして、蒸気発生用配管部8の傾斜管部8Bは、後述する蒸気収容部9の下側に位置し、折曲げ管部8Aに対しては、図1に示すようにほぼ垂直となる方向に配向されている。即ち、注入配管7の配管構造を、図1に示すようにX軸、Y軸およびZ軸の3次元で説明すると、蒸気発生用配管部8の折曲げ管部8Aは、全体としてX軸方向に配向され、Z軸方向で略コ字状に折曲げて形成されている。そして、傾斜管部8Bは、折曲げ管部8Aの他側からY軸方向に延びると共に、Z軸方向で斜め下向きに傾いて配置されるものである。
【0037】
また、蒸気発生用配管部8には、例えば折曲げ管部8Aの周囲等に後述の加熱管22が螺旋状に巻回して設けられ、その外側には断熱材(図示せず)を用いた断熱処理等が施されている。なお、このような断熱処理は、蒸気発生用配管部8に限らず、後述の払出用配管部10を含めて注入配管7の全長にわたって適宜に行われるものである。
【0038】
9は蒸気発生用配管部8に追加して設けられた蒸気収容部で、該蒸気収容部9は、例えば全体として逆U字状に屈曲した曲げパイプ等を用いて構成され、傾斜管部8Bから上方(Z軸方向)に突出している。この場合、蒸気収容部9は、後述の液面センサ14よりも高い位置まで上方に突出し、その上側部分は後述する所定の液面H1 (図5中のステップ3参照)よりも高い位置に配置されるものである。
【0039】
そして、蒸気収容部9は、傾斜管部8Bから上向きに立上げた状態で配設され、傾斜管部8Bの前,後をバイパス(迂回)するように傾斜管部8Bに接続されている。これにより、蒸気収容部9は、例えば蒸気発生用配管部8の折曲げ管部8Aから後述の如く発生した液化ガス2の蒸気を内部に閉じ込めるように捕集して収容するものである。このため、蒸気収容部9は、液化ガス2の蒸気を収容するのに十分な容量(配管長さ)をもって形成されている。
【0040】
10は注入配管7の下流側部分を構成する払出用配管部で、この払出用配管部10は、長さ方向の一側が後述の仕切バルブ11を介して傾斜管部8Bの他側(下流側)に接続されている。そして、払出用配管部10は、図3に示す如く長さ方向の他側(下流側)が後述する供給バルブ15の位置まで斜めに傾斜して延びるように設置されている。
【0041】
ここで、払出用配管部10は、図1に示すように仕切バルブ11の位置から斜め下向きに傾斜してY軸方向に延びた第1の傾斜管部10Aと、該第1の傾斜管部10Aの下流端からX軸方向に屈曲して斜め下向きに傾斜した第2の傾斜管部10Bと、該第2の傾斜管部10Bの下流端からY軸方向に屈曲して斜め下向きに傾斜した第3の傾斜管部10Cと、該第3の傾斜管部10Cの下流端から再びX軸方向に屈曲して斜め下向きに傾斜した第4の傾斜管部10Dと、該第4の傾斜管部10Dの下流端から再びY軸方向に屈曲して斜め下向きに傾斜した第5の傾斜管部10Eと、該第5の傾斜管部10Eの下流端から再びX軸方向に屈曲して斜め下向きに傾斜した第6の傾斜管部10Fとにより構成されている。
【0042】
そして、第1〜第6の傾斜管部10A〜10Fは、図1、図2に例示するように漸次斜め下向きに傾斜して配置され、第6の傾斜管部10Fは、その下流端が後述の供給バルブ15に接続されるものである。また、払出用配管部10のうち、例えば第5の傾斜管部10Eと第6の傾斜管部10Fには、その外周側に後述の冷却管23が螺旋状に巻回して設けられ、その外側には断熱材(図示せず)を用いた断熱処理等が施されている。
【0043】
11は注入配管7の途中位置に設けられた仕切バルブで、この仕切バルブ11は、後述する制御装置26からの制御信号により開閉操作され、閉弁時には注入配管7を上流側に位置する蒸気発生用配管部8と下流側に位置する払出用配管部10とに仕切るものである。そして、仕切バルブ11は、注入配管7内に後述の如く液化ガス2を充填するとき、または液化ガス2の払出しを行うとき等に開弁され、このときには上流側の蒸気発生用配管部8と下流側の払出用配管部10とを互いに連通した状態に保つものである。
【0044】
12は払出用配管部10(第6の傾斜管部10F)の下流側と貯蔵タンク1との間に設けられたガス均圧ラインで、該ガス均圧ライン12は、その途中部位に設けられた均圧バルブ13を開くことにより、払出用配管部10内の圧力(ガス圧)と貯蔵タンク1の圧力とを均一化し、例えば払出用配管部10内に液化ガス2の蒸気(気化ガス)が滞留するのを防ぐものである。
【0045】
ここで、均圧バルブ13は、貯蔵タンク1の上端側に配設され、ガス均圧ライン12と払出用配管部10を貯蔵タンク1に対して連通,遮断するものである。そして、払出用配管部10内から液化ガス2の払出しを行うとき等には、均圧バルブ13を予め閉弁しておくことにより、液化ガス2が払出用配管部10内からガス均圧ライン12内に向けて流通するのを防ぐものである。
【0046】
14はガス均圧ライン12の途中に設けられた液面センサで、該液面センサ14は、貯蔵タンク1の底部とほぼ同等の高さ位置に配置されている。そして、液面センサ14は、均圧バルブ13を開いた状態で後述の如く液化ガス2を注入配管7内に充填するときに、この液化ガス2が注入配管7内に予め決められた設定液量分だけ注入(充填)されたか否かを検出するものである。
【0047】
15は液化ガス2の払出し供給部を構成する供給バルブで、該供給バルブ15は、その流入側(一側)が払出用配管部10(第6の傾斜管部10F)の下流端に接続され、流出側(他側)は移充填ホース16等を介して充填ノズル17(液化ガス充填機)に接続されている。
【0048】
そして、供給バルブ15は、例えば家庭用または車載用の液化ガス容器である供給対象物のボンベ(図示せず)等に液化ガス2を、移充填ホース16、充填ノズル17を用いて供給するときに開弁され、これ以外のときには閉弁状態に保持される。これにより、供給バルブ15は、注入配管7内の液化ガス2が外部(移充填ホース16側)に漏洩したりするのを高い安全性をもって阻止するものである。
【0049】
18は蒸気収容部9に設けられた圧力センサで、この圧力センサ18は、蒸気収容部9の上端側等に配置され、蒸気収容部9内に後述の如く収容した蒸気の圧力を、ガス圧(気体圧)として検出するものである。
【0050】
19は払出用配管部10に設けられた温度センサで、該温度センサ19は、払出用配管部10のうち、例えば第6の傾斜管部10Fの下流端に設けられる。そして、温度センサ19は、払出用配管部10内に収容した液化ガス2の温度を検出(監視)するものである。
【0051】
20は蒸気発生用配管部8内で液化ガス2の蒸気を発生させるために採用した熱源となるヒートポンプで、該ヒートポンプ20は、例えば冷媒等の熱媒体が内部を循環する循環路21と、後述の加熱管22、冷却管23、圧縮機24、膨脹弁25等とにより所謂冷凍サイクルを構成するものである。
【0052】
そして、ヒートポンプ20の循環路21は、後述の圧縮機24と加熱管22との間を接続した第1の管路部21Aと、加熱管22と後述の膨脹弁25との間を接続した第2の管路部21Bと、膨脹弁25と冷却管23との間を接続した第3の管路部21Cと、冷却管23と圧縮機24との間を接続した第4の管路部21Dとにより構成されている。
【0053】
22はヒートポンプ20の一部を構成する加温手段としての加熱管で、この加熱管22は、例えば螺旋状またはコイル状に巻回される金属チューブ等を用いて形成され、図1〜図3中に二点鎖線で示すように蒸気発生用配管部8の折曲げ管部8A等に設けられるものである。そして、加熱管22は、循環路21の一側に配置されるヒートポンプ20の放熱部(放熱用熱交換器)を構成している。
【0054】
ここで、金属チューブからなる加熱管22内では、後述の圧縮機24を用いて圧縮された熱媒体が循環することにより、熱媒体の凝縮作用による発熱(凝縮熱の発生)を促進させる。これによって、加熱管22は、熱媒体の発熱を利用して蒸気発生用配管部8内の液化ガス2を加温する。
【0055】
この結果、蒸気発生用配管部8内では、例えば10〜20℃分だけ液化ガス2が温度上昇され、液化ガス2の蒸気が発生する。そして、蒸気発生用配管部8内で発生した蒸気(液化ガス2中のプロパンとブタンの混合ガス)は、液体(液化ガス2)中から分離して上方に移動し、蒸気収容部9内に捕集して収容されるものである。なお、加熱管22は、蒸気発生用配管部8の折曲げ管部8Aに限らず、傾斜管部8B、蒸気収容部9にも必要に応じて設ければよいものである。
【0056】
23は払出用配管部10に設けられた冷却手段としての冷却管で、該冷却管23は、循環路21の他側に設けられたヒートポンプ20の吸熱部(吸熱用熱交換器)を構成するものである。ここで、冷却管23は、図1、図2中に二点鎖線で例示するように払出用配管部10(例えば、傾斜管部10E,10F等)の外周側に金属チューブ等を螺旋状またはコイル状に巻回することにより構成されている。
【0057】
そして、金属チューブからなる冷却管23内では、後述の膨脹弁25を用いて気化(蒸発)し易い状態となった熱媒体が循環することにより、熱媒体の蒸発作用による吸熱を促進させる。これにより、冷却管23は、熱媒体の吸熱を利用して払出用配管部10内の液化ガス2を冷却するものである。
【0058】
24はヒートポンプ20の一部を構成する圧縮機で、該圧縮機24は、例えばインバータ式の電動モータ(図示せず)等を用いて駆動される。そして、圧縮機24は、ヒートポンプ20の循環路21内に充填された冷媒等の熱媒体を圧縮する。これにより、熱媒体は、例えば冷却管23側から加熱管22側に向けて循環路21内を強制的に循環(流通)される。そして、圧縮機24から吐出された熱媒体は、急激に温度上昇した状態で加熱管22内を流通するものである。
【0059】
25は圧縮機24と共にヒートポンプ20を構成する膨脹弁で、該膨脹弁25は、加熱管22を通過して凝縮(液相)状態となった熱媒体を急激に膨脹させ、これにより熱媒体の温度を大きく低下させる。このため、低温状態の熱媒体は、冷却管23内を循環(流通)する間に払出用配管部10内の液化ガス2を冷却し、液化ガス2からの吸熱作用により液相から気相に変換されるものである。
【0060】
26はマイクロコンピュータ等によって構成された制御装置で、該制御装置26は、図4に示す如く入力側が液面センサ3,14、圧力計4および圧力センサ18等に接続され、出力側が張込みバルブ6、仕切バルブ11、均圧バルブ13、供給バルブ15およびヒートポンプ20の圧縮機24等に接続されている。
【0061】
また、制御装置26は、ROM、RAM等からなる記憶部26Aを有し、この記憶部26A内には、液化ガス2の供給制御を行うための処理プログラム等が格納されている。そして、制御装置26は、図5に一例として示した処理手順に従って液化ガス2の供給制御処理(払出し制御処理)等を行うものである。
【0062】
本実施の形態による液化ガス供給装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、制御装置26による液化ガス供給制御の処理手順について図5を参照して説明する。
【0063】
まず、処理動作をスタートすると、ステップ1で張込みバルブ6、仕切バルブ11、均圧バルブ13を全て開弁する。これにより、貯蔵タンク1内の液化ガス2をヘッド圧(寸法La の高低差)を利用して注入配管7の蒸気発生用配管部8内に充填するように張込むと共に、仕切バルブ11を介して下流側の払出用配管部10内にも液化ガス2を充填するように張込む。
【0064】
この場合、注入配管7の蒸気発生用配管部8、払出用配管部10内に液化ガス2の蒸気(気化ガス)等が仮に残留しているとしても、この場合の蒸気は、一方で蒸気収容部9内に捕集され、残りの蒸気はガス均圧ライン12、均圧バルブ13を介して貯蔵タンク1内に回収されることになる。
【0065】
次に、ステップ2では、注入配管7の蒸気発生用配管部8、払出用配管部10内に充填(収容)された液化ガス2の液量を、液面センサ14により液面Hとして検出するように読込む。そして、ステップ3では、このときの液面Hが予め決められた所定の液面H1 まで達したか否かを判定する。なお、所定の液面H1 とは、蒸気発生用配管部8、払出用配管部10内に液化ガス2が満杯となるまで張込むように注入された状態の液面レベルである。
【0066】
ここで、蒸気発生用配管部8内の液面Hが所定の液面H1 以上となるまでは、ステップ3で「NO」と判定されるので、ステップ2に移って液化ガス2を蒸気発生用配管部8、払出用配管部10内に張込む作業を続行する。
【0067】
そして、ステップ3で「YES」と判定したときには、液化ガス2が蒸気発生用配管部8、払出用配管部10内に所定量(液面H1 )張込まれているので、ステップ4に移って張込み作業を停止するために張込みバルブ6、仕切バルブ11、均圧バルブ13を全て閉弁する。
【0068】
次に、ステップ5では、図1、図3に例示したヒートポンプ20を作動させるために圧縮機24を駆動し、冷媒等の熱媒体を循環路21内で強制的に循環させる。これにより、循環路21の一方側に位置する冷却管23(吸熱部)側では、熱媒体の蒸発作用による吸熱を利用して払出用配管部10内の液化ガス2を冷却する。
【0069】
また、循環路21の他方側に位置する加熱管22(放熱部)側では、熱媒体の凝縮作用による発熱を利用して蒸気発生用配管部8内の液化ガス2を加温し、液化ガス2の蒸気を強制的に発生させる。そして、蒸気発生用配管部8内で発生した蒸気(例えば、液化ガス2中のプロパンガス等)は、液化ガス2中から分離して上方に移動し、蒸気収容部9内に捕集して収容される。
【0070】
そこで、ステップ6では、圧力センサ18により蒸気収容部9内の圧力Pを読込み、ステップ7に移って圧力Pが所定の圧力値P1 以上に達したか否かを判定する。
【0071】
この場合、ステップ7による圧力値P1 は、例えば0.05〜0.15MPa(メガパスカル)程度分だけ供給先のボンベ(内圧)よりも高い圧力値であればよい。そして、圧力値P1 の値は、液化ガス2の種類に応じて可変に設定されるものである。また、圧力値P1 をより高い圧力に設定すれば、これによって供給先のボンベに対する液化ガス2の払出し(供給)速度を速くすることができる。
【0072】
ここで、蒸気収容部9内の圧力Pが圧力値P1 以上になると、蒸気発生用配管部8内の液化ガス2が加温により、例えば10〜20℃分だけ温度上昇され、蒸気発生用配管部8内では液化ガス2の蒸気が所定量以上に発生していると判定することができる。
【0073】
このため、ステップ7で「YES」と判定したときには、ステップ8に移って圧縮機24の駆動を停止し、蒸気発生用配管部8内の液化ガス2がこれ以上に加温され、液化ガス2の蒸気が過剰に発生するのを防ぐものである。そして、その後はステップ9に移って液化ガス2の払出し制御を実行する。
【0074】
即ち、ステップ9では、閉弁状態にある仕切バルブ11と供給バルブ15とを同時に開弁することにより、液化ガス2の払出し制御を実行する。このとき、蒸気発生用配管部8内で発生し蒸気収容部9内に捕集された液化ガス2の蒸気は、仕切バルブ11の開弁に伴って払出用配管部10(傾斜管部10A〜10F)内へと流出する。
【0075】
このため、払出用配管部10の液化ガス2は、このときの蒸気圧(加圧ガス)により供給バルブ15から移充填ホース16内に向けて押出され、充填ノズル17から家庭用または車載用の液化ガス容器(供給対象物であるボンベ)等に向けて払出される。
【0076】
そして、次なるステップ10では充填完了か否かを判定する。即ち、ステップ10では、供給先のボンベ内に所定量の液化ガス2が払出された否かを、例えばディスペンサ等の外部計量機器(図示せず)からの信号によって判定する。そして、ステップ10で「YES」と判定したときには、供給先のボンベ内に所定量の液化ガス2が払出(充填)されているので、次なるステップ11に移る。
【0077】
そして、ステップ11では、開弁状態にある仕切バルブ11と供給バルブ15とを閉弁し、液化ガス2の払出し制御を終了(完了)させる。これにより、注入配管7の蒸気発生用配管部8、払出用配管部10等を用いた液化ガス2の払出し(供給)制御を安定して行うことができる。
【0078】
かくして、本実施の形態によれば、貯蔵タンク1内の液化ガス2をヘッド圧を利用して注入配管7の蒸気発生用配管部8、払出用配管部10内に充填するように張込み、張込みバルブ6、仕切バルブ11および均圧バルブ13を全て閉弁した状態で、圧縮機24を駆動してヒートポンプ20を作動させ、払出用配管部10内の液化ガス2を冷却管23により冷却すると共に、蒸気発生用配管部8内の液化ガス2を加熱管22により加温する構成としている。
【0079】
これにより、注入配管7の蒸気発生用配管部8内では、液化ガス2の蒸気を発生することができ、このときの蒸気を蒸気収容部9内に捕集するように貯めておくことができる。そして、この状態で蒸気発生用配管部8と払出用配管部10との間に設けた仕切バルブ11を開くと共に、移充填ホース16側の供給バルブ15を開くことにより、蒸気収容部9内の蒸気圧を利用して払出用配管部10内の液化ガス2を、供給バルブ15から移充填ホース16、充填ノズル17等を介して供給先のボンベに移充填(供給)することができる。
【0080】
即ち、蒸気発生用配管部8内で発生した液化ガス2の蒸気は、蒸気収容部9内に比較的高い圧力(例えば、0.05〜0.15MPa程度だけ供給先のボンベよりも高い圧力)で捕集するように貯められ、仕切バルブ11を開弁したときには加圧ガスとなって払出用配管部10内の液化ガス2を供給バルブ15側に押出すことができる。
【0081】
このため、このときの蒸気圧(加圧ガス)によって払出用配管部10から液化ガス2を供給先のボンベに向け移充填ホース16を介して供給することができ、注入配管7の蒸気発生用配管部8と払出用配管部10とを用いた液化ガス2の払出し(供給)制御を安定して行うことができる。
【0082】
また、蒸気収容部9は、仕切バルブ11よりも上流側となる位置で蒸気発生用配管部8の傾斜管部8Bから上方に向けて突出し、その内部に液化ガス2の蒸気を閉じ込めた状態で収容する構成としている。
【0083】
このため、貯蔵タンク1内の液化ガス2を注入配管7の蒸気発生用配管部8と払出用配管部10内とに注入した後に、仕切バルブ11を閉弁した状態では、ヒートポンプ20の加熱管22を用いた加温により蒸気発生用配管部8内に発生した液化ガス2の蒸気を蒸気収容部9内に加圧状態で収容することができ、蒸気発生用配管部8内の圧力が過剰に高くなるのを蒸気収容部9によって抑えることができる。
【0084】
また、その後に蒸気発生用配管部8と払出用配管部10との間で仕切バルブ11を開弁したときには、蒸気発生用配管部8と蒸気収容部9内に収容した蒸気(加圧ガス)の圧力を有効に活用することができ、払出用配管部10内の液化ガス2を供給バルブ15側から移充填ホース16、充填ノズル17を介して供給先のボンベ等に効率的に移充填(供給)することができる。
【0085】
また、蒸気発生用配管8の折曲げ管部8Aは、上,下方向で略コ字状に折曲げて形成し、蒸気収容部9よりも十分に低い位置に配置する構成としているから、液化ガス2中の気化し易い成分を下側の折曲げ管部8Aと上側の蒸気収容部9との間で良好に気液分離することができ、液化ガス2の蒸気(気化ガス)を上方の蒸気収容部9内に効率的に捕集することができる。
【0086】
しかも、本実施の形態にあっては、貯蔵タンク1から供給される液化ガス2とは別の加圧ガス(例えば、プロパンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等)を、従来技術のように別途用いる必要がなくなり、加圧ガス専用のタンク等も不要にできる。これにより、貯蔵タンク1、注入配管7の蒸気発生用配管部8および払出用配管部10等からなる液化ガス供給装置全体の設備を小型化することができる。
【0087】
また、注入配管7の蒸気発生用配管部8内には、貯蔵タンク1から液化ガス2を順次張込むように補充すればよいので、従来技術のように加圧ガスを補充するための補充用タンク等は不要となり、これによっても装置の小型化を実現することができる。そして、メンテナンス時の加圧ガスの補充作業等を不要にすることができ、メンテナンス時の作業性も向上することができる。
【0088】
しかも、大型の貯蔵タンク1ではなく、注入配管7の蒸気発生用配管部8をヒートポンプ20の放熱部(加熱管22)により加温する構成としているので、大型の貯蔵タンク1には断熱材等を用いた断熱対策等を特別に行う必要がなく、これによっても設備の簡略化、簡素化等を図り、設備の製作、管理、維持コスト等の低減することができる。
【0089】
そして、注入配管7の蒸気発生用配管部8内には、例えば4〜5リッター程度の比較的少量の液化ガス2を充填すればよいので、この液化ガス2を加温しても余分な蒸気が発生することはなく、蒸気発生用配管部8内で発生した液化ガス2の蒸気を加圧ガスとして効率的に活用することができ、省エネルギ化を図ることができる。
【0090】
また、蒸気発生用配管部8側の加熱管22をヒートポンプ20の放熱部(放熱用熱交換器)により構成し、払出用配管部10側の冷却管23をヒートポンプ20の吸熱部(吸熱用熱交換器)により構成している。このため、蒸気発生用配管部8側の加温と払出用配管部10側での冷却とを、例えば冷媒等の熱媒体を用いたヒートポンプ20により効率的に行うことができ、大幅な省エネルギ化を実現することができる。
【0091】
従って、本実施の形態によれば、液化ガス2を供給対象物であるボンベ等に移充填して払出すときに、専用のポンプや別途の加圧ガス等を用いる必要がなくなり、液化ガス供給装置全体の設備を簡素化し、小型化を図ることができると共に、所謂オートガススタンドの設置等を容易に行うことができる。
【0092】
また、ヒートポンプ20の冷却管23を用いて払出用配管部10内の液化ガス2を冷却することにより、例えば夏季等に周囲温度の影響で供給先のボンベが比較的高い温度になっている場合でも、低い温度の液化ガスをボンベ内に最初に移充填した段階で当該ボンベの温度を下げることができ、これによりボンベ内の圧力を下げ、払出用配管部10から液化ガス2をボンベ内に供給(移充填)する作業を短時間で、効率的に行うことができる。
【0093】
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ヒートポンプの吸熱部を、払出用配管部に設けられた第1の吸熱器と、該第1の吸熱器とは別に外気と接触する位置に設けられた第2の吸熱器とにより構成し、これらの第1,第2の吸熱器をヒートポンプの放熱部に対し、選択的に切替えて接続する構成としたことにある。
【0094】
なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0095】
図中、31は本実施の形態で採用したヒートポンプで、このヒートポンプ31は、第1の実施の形態で述べたヒートポンプ20とほぼ同様に構成され、後述する循環路32の途中に加熱管22、圧縮機24および膨脹弁25等が設けられている。しかし、この場合のヒートポンプ31は、後述する第1,第2の吸熱器33,34と経路切替弁35とを有する点で、第1の実施の形態によるヒートポンプ20とは異なっているものである。
【0096】
32はヒートポンプ31の循環路で、該循環路32は、第1の実施の形態で述べた循環路21と同様に冷媒等の熱媒体が内部を循環するものである。そして、循環路32は、圧縮機24と加熱管22との間を接続した第1の管路部32Aと、加熱管22と膨脹弁25との間を接続した第2の管路部32Bと、膨脹弁25と後述の経路切替弁35との間を接続する第3の管路部32C等とにより構成されている。
【0097】
また、循環路32は、後述する第1の吸熱器33と経路切替弁35との間を接続する第4の管路部32Dと、第1の吸熱器33と圧縮機24との間を接続する第5の管路部32Eと、後述の経路切替弁35と第2の吸熱器34との間を接続する第6の管路部32Fと、第5の管路部32Eの途中に接続点Aを介して第2の吸熱器34を接続する第7の管路部32Gとを含んで構成されている。
【0098】
33は払出用配管部10に設けられた冷却手段としての第1の吸熱器で、該第1の吸熱器33は、第1の実施の形態で述べた冷却管23と同様に構成されている。しかし、第1の吸熱器33は、後述の経路切替弁35を介して第2の吸熱器34と並列に接続されている点で、前記冷却管23とは異なるものである。
【0099】
34は第1の吸熱器33とは別に外気と接触する位置に設けられた第2の吸熱器で、該第2の吸熱器34も前述した冷却管23とほぼ同様に吸熱用熱交換器として構成されている。しかし、第2の吸熱器34は、例えばエアコンディショナ(家庭用エアコン)を暖房装置として用いる場合の室外機のように、常に外気と接触する位置に設置されるものである。
【0100】
そして、第2の吸熱器34は、後述の経路切替弁35により第1の吸熱器33に替えて管路部32C,32Fと接続されたときに、膨脹弁25を用いて気化(蒸発)し易い状態をなった熱媒体が第2の吸熱器34内を循環することにより、熱媒体の蒸発作用による吸熱を促進させる。このため、第2の吸熱器34は、熱媒体の吸熱を利用して周囲の外気を冷却することになる。
【0101】
35は第1,第2の吸熱器33,34間で熱媒体の流路(経路)を切替える経路切替弁で、該経路切替弁35は、制御装置(図示せず)からの切替信号に従って経路の切替え動作を行い、例えば循環路32のうち第3の管路部32Cを第4の管路部32Dと第6の管路部32Fとのいずれか一方に選択的に連通させるものである。
【0102】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができ、蒸気発生用配管部8側の加温と払出用配管部10側での冷却とをヒートポンプ31により効率的に行うことができる。特に、本実施の形態では、ヒートポンプ31に経路切替弁35等を追加して設けたので、下記のような作用効果を奏するものである。
【0103】
即ち、経路切替弁35は、例えば予め初期設定されることにより第1の吸熱器33を選択し、第3の管路部32Cは経路切替弁35により第4の管路部32Dに接続される。そして、この状態で温度センサ19を用いて払出用配管部10内に収容した液化ガス2の温度を検出する。
【0104】
次に、温度センサ19で検出した温度が基準温度(例えば、外気温に対して8〜14℃分だけ低い温度)以下となったときには、経路切替弁35が第1の吸熱器33に替えて第2の吸熱器34を選択するように、第3の管路部32Cを第4の管路部32Dから第6の管路部32Fに切替えて接続するものである。
【0105】
これにより、ヒートポンプ31による払出用配管部10の冷却は中断されるため、払出用配管部10内の液化ガス2が、例えば外気温に対して8〜14℃以上に低い温度に冷却されるのを抑えることができ、供給先のボンベ内等で所謂過充填が発生するのを防ぐことができる。
【0106】
この場合、払出用配管部10内から過度に低い温度の液化ガス2を供給先のボンベに向けて充填(供給)すると、供給先のボンベ内には液化ガス2が過剰に充填されて過充填が生じる可能性がある。そこで、経路切替弁35で前述の如く経路の切替を行うことにより、所謂過充填に付随した不具合等をなくすことができ、供給先のボンベに対する液化ガス2の供給(移充填)作業を効率的に行うことができる。
【0107】
また、経路切替弁35によって第2の吸熱器34を選択したときには、第3の管路部32Cが第6の管路部32Fに接続されるため、膨脹弁25を通過した熱媒体は、第3の管路部32C,第6の管路部32Fを介して第2の吸熱器34を循環しつつ、第7の管路部32G、接続点A、第5の管路部32Eを介して圧縮機24へと流通する。これにより、第2の吸熱器34側では、熱媒体の吸熱を利用して周囲の外気を冷却することができる。
【0108】
また、冬季等にヒートポンプ31による放熱部(加熱管22)側での蒸気発生用の熱量が不足する場合には、第2の吸熱器34により外気を熱源として利用することができる。そして、このときには第2の吸熱器34側で外気温度を利用して熱媒体(冷媒)を蒸発させ、放熱部(加熱管22)側での凝縮作用を活性化でき、蒸気発生用配管部8内の液化ガス2の蒸発を促進することができる。また、払出用配管部10内では、内部の液化ガス2が必要以上に冷やされるのを防ぐことができる。
【0109】
なお、前記第1の実施の形態では、図1に示す如く貯蔵タンク1の周囲を略四角形の枠体状をなして取囲む配管構造に、注入配管7を組立てる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、注入配管全体の構造は、図1に示す構成に限るものではなく、例えば注入配管を貯蔵タンクの周囲に螺旋状をなして延びる配管構造に構成してもよいものである。
【0110】
また、前記第1の実施の形態では、蒸気発生用配管部8を折曲げ管部8Aと傾斜管部8Bとにより構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば張込みバルブ6と傾斜管部8Bとの間をほぼ水平に延びる配管部材等を用いて接続するように、単純な配管構造をもって蒸気発生用配管部を構成してもよい。
【0111】
また、前記第1の実施の形態では、貯蔵タンク1と供給バルブ15との高低差を、例えば500〜700mm程度の寸法La に設定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、両者の高低差を700mm以上に設定してもよい。また、貯蔵タンク1は、図1〜図3に例示した縦置きに限らず、貯蔵タンクを横置き状態で設置する構成としてもよいものである。
【0112】
さらに、前記各実施の形態では、液化ブタンと液化プロパンの混合物からなる液化ガス2を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばブタン、プロパンまたはジメチルエーテル(DME)等の液化ガスを供給制御する場合にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態による液化ガス供給装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】液化ガス供給装置の注入配管等を図1中の矢示II−II方向からみた配管構成図である。
【図3】図1中の蒸気発生用配管部と払出用配管部とを展開して示す液化ガス供給装置の全体構成図である。
【図4】図1に示す液化ガス供給装置の制御ブロック図である。
【図5】図2中の制御装置による液化ガスの供給制御処理手順を示す流れ図である。
【図6】第2の実施の形態による液化ガス供給装置を示す図3と同様位置での全体構成図である。
【符号の説明】
【0114】
1 貯蔵タンク
2 液化ガス
6 張込みバルブ(底部バルブ)
7 注入配管
8 蒸気発生用配管部
9 蒸気収容部
10 払出用配管部
11 仕切バルブ
12 ガス均圧ライン
13 均圧バルブ
14 液面センサ
15 供給バルブ
16 移充填ホース
18 圧力センサ
19 温度センサ
20,31 ヒートポンプ
21,32 循環路
22 加熱管(加温手段、放熱部)
23 冷却管(冷却手段、吸熱部)
24 圧縮機
25 膨脹弁
26 制御装置
33 第1の吸熱器(吸熱部、冷却手段)
34 第2の吸熱器(吸熱部)
35 経路切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、該貯蔵タンクよりも低い位置に設けられ該貯蔵タンク内の液化ガスを外部の供給対象物に払出すときに開,閉される供給バルブとを備えた液化ガス供給装置において、
前記貯蔵タンクの底部側には、該貯蔵タンク内の液化ガスを前記供給バルブ側に向けて供給するときに開,閉される底部バルブを設け、
該底部バルブと前記供給バルブとの間には、両者の間を予め決められた配管長をもって接続し、前記貯蔵タンクと供給バルブとの間の高低差により前記貯蔵タンク内の液化ガスが前記底部バルブを介して充填状態で注入される注入配管を設け、
該注入配管の途中には、当該注入配管を上流側に位置する蒸気発生用配管部と下流側に位置する払出用配管部とに仕切るための仕切バルブを設け、
該仕切バルブによって仕切られた前記蒸気発生用配管部には、該仕切バルブを閉弁した状態で当該蒸気発生用配管部内の液化ガスを加温し前記液化ガスの蒸気を発生させる加温手段を設け、
前記払出用配管部には、前記仕切バルブを閉弁した状態で当該払出用配管部内の液化ガスの温度を下げる冷却手段を設け、
前記仕切バルブを開弁したときには、前記蒸気発生用配管部内で発生した蒸気を加圧ガスとして前記払出用配管部に流通させることにより、該払出用配管部内の液化ガスを前記供給バルブ側に向けてガス圧で押出す構成としたことを特徴とする液化ガス供給装置。
【請求項2】
前記蒸気発生用配管部には、前記仕切バルブよりも上流側となる位置で上方に向けて突出し前記液化ガスの蒸気を内部に閉じ込めた状態で収容する蒸気収容部を設けてなる請求項1に記載の液化ガス供給装置。
【請求項3】
前記蒸気発生用配管部と払出用配管部との間には、内部を循環する熱媒体が放熱部の位置で凝縮作用による放熱を行い吸熱部の位置では蒸発作用による吸熱を行うヒートポンプを設け、前記加温手段は前記ヒートポンプの放熱部により構成し、前記冷却手段は前記ヒートポンプの吸熱部により構成してなる請求項1または2に記載の液化ガス供給装置。
【請求項4】
前記ヒートポンプの吸熱部は、前記払出用配管部に設けられ前記冷却手段を構成する第1の吸熱器と、該第1の吸熱器とは別に外気と接触する位置に設けられた第2の吸熱器とにより構成し、前記第1,第2の吸熱器は、前記ヒートポンプの放熱部に対して選択的に切替えて接続する構成としてなる請求項3に記載の液化ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−332989(P2007−332989A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162268(P2006−162268)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(506126886)株式会社コスモ技研 (2)
【Fターム(参考)】