説明

液化天然ガス輸送用パイプ

【課題】円筒状部材の末端に熱伝導ブリッジを生じることがない、低温液体輸送用の熱絶縁されたパイプを提供する。
【解決手段】円筒状部材から形成された3種類の同軸管、即ち、熱膨張率の小さい材料から製造された内管2と、中間管3と、炭素鋼から製造された外管4とを含み、内管2と中間管3との間の環状スペースに断熱材7が配備された低温液体輸送用の熱絶縁されたパイプに関し、各管の円筒状部材2a,2b,…,3a,3b,3c,…,4a,4b,…のそれぞれを接続するため及び他方では管の温度変化の際の熱収縮に起因する力に制限を加える目的でこれらの力を受容するために、管2,3,4は連結継手5,6を用いて2つずつ連結されている。中間管3の円筒状部材3bは、組立の際に連結継手5,6と共働して内管2と外管4との間の熱伝導ブリッジの形成を阻止するために十分な長さに製造されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温流体を輸送するパイプ、より特定的には、空中、地下または海底の環境で液化天然ガスを輸送するパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
フランス特許第2748545号は、同軸の2本の管を含む液化天然ガ輸送用パイプを記載している。この種のパイプは優れた熱絶縁性を有しているが幾つかの欠点も有している。即ち、内管の収縮(長さ4,000mのパイプあたり1mのオーダの収縮)が生じるので、直管部分の末端のベンドの手前で2本の管の間に鉄鋼製の連結継手を使用しなければならない。このような継手は熱伝導ブリッジを生じさせ、その結果として、
−アセンブリの熱効率が低下する、及び、
−外管の温度が低下し、このため、外管が脆くなり、衝撃や応力集中に弱くなる。
【0003】
また、簡単な外側被覆の使用は信頼性の観点から十分でないと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明は、有効な熱絶縁性を有しており、基本要素である円筒状部材の末端に熱伝導ブリッジを生じることがなく、また優れた信頼性を有している、液化天然ガスのような低温液体輸送用のパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って本発明の一つの目的は、円筒状部材から形成された3種類の同軸管、即ち、熱膨張率の小さい材料から製造された内管と、中間管と、鉄鋼から製造された外管とを含み、内管と中間管との間の環状スペースに断熱材が配備されており、
−一方では各管の円筒状部材のそれぞれを接続するため及び他方では管の温度変化の際の熱収縮によって生じる力を受容するために、管が連結継手を用いて2つずつ連結されていること、及び、
−中間管の円筒状部材が、組立の際に連結継手と共働して内管と外管との間の熱伝導ブリッジの形成を阻止するために十分な長さを有していること、
を特徴とする低温液体輸送用の熱絶縁されたパイプを提供することである。
【0006】
1つの特徴によれば、中間管と外管との間の環状スペースに断熱材が配備されている。
【0007】
本発明の別の実施態様では、中間管と外管との間の環状スペースに周囲の海底環境の圧力に比べて高圧または低圧のガスが充填されている。
【0008】
また別の特徴によれば、連結継手が底部で接合された2つのU字の形状を有しており、同一環状スペースの異なるセクション間のガス循環を可能にしかつこれによって同一環状スペースの昇圧または降圧を許容するように管の軸に平行な貫通孔を有している。
【0009】
また別の特徴によれば、内管と中間管とを互いに連結する連結継手が、連結継手の熱膨張率と該継手に接続された内管及び中間管のそれぞれの熱膨張率との間の熱膨張率をそれぞれ有している管状補強材によって固定されている。
【0010】
別の特徴によれば、
−内管は約8mmよりも小さい肉厚を有している、
−中間管は15mmよりも小さく約6mmよりも大きい肉厚を有している、
−外管は約12mmよりも大きい肉厚を有している。
【0011】
別の特徴によれば、内管が、−162℃から20℃までの範囲の温度で2.10−6m/m/Kよりも小さい膨張率をもつ材料から製造されている。
【0012】
別の特徴によれば、内管がニッケル含量約36%の鉄−ニッケル合金から製造されている。
【0013】
別の特徴によれば、中間管が低温適応材料、例えば、ステンレススチールまたはニッケル9%を含む鋼合金から製造されている。
【0014】
別の特徴によれば、断熱材が工業的制御真空下のシリカ基材の断熱材である。
【0015】
本発明のパイプの第一の利点は、パイプ破損の危険が著しく減少することである。
【0016】
別の利点は、隣り合う2つの管の間の連結継手が示差熱収縮を受容することである。
【0017】
また別の利点は、第二環状スペースを点検することによって、信頼性の高い廉価な方法でパイプの状態を予防的に検証できることである。
【0018】
本発明のその他の特徴、詳細及び利点は、添付図面に示す非限定実施例に基づいた以下の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施態様の長手方向断面図を表す。
【図2】別の実施態様の長手方向断面図を表す。
【図3】本発明の2つの管の間の継手の1つの実施態様を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が対象としているパイプは一般的に、低温液体を1つの場所から別の場所に搬送するために、例えば液化ガスを液化施設から遠方の船舶に積み込んだり積み下ろしたりするために使用される。従って、パイプを海底に敷設し、ベンドを形成して、パイプの鉛直部分を上向きに立ち上がらせる。海底に敷設したパイプの部分またはサポートに載置したパイプの部分の長さを変化させると、これに伴ってパイプから立ち上がる鉛直部分の位置が変化する。これらの変化は鉛直部分に力を作用させるので、このような力を制御する必要がある。長手方向パイプを地上または空中または地下に敷設するときも同様の制御が必要である。
【0021】
図1は、3つの管、即ち、内部を低温流体が通る内管2と中間管3と外管4とから構成された低温液体輸送用のパイプ1を長手方向軸XYに沿った部分断面図として示す。これらの管の各々は、完成パイプを形成するために末端と末端とが溶接された円筒状部材2a,2b;3a,3b及び3c;4a,4bから形成されている。本発明によれば、力を受容する継手5及び6を用いて管の円筒状部材が接続されている。これらの継手5及び6の機能は、本発明の本質的な特徴に従ってパイプの末端に作用した力に制限を加えることである。パイプがベンドを有しているときにこの機能が特に重要であることは明らかである。パイプのベンド部分は図示していないが、当業者はこのようなパイプの収縮を抑制することによって得られる利点を容易に理解されるであろう。
【0022】
第1図で、内管2は2つの円筒状部材2a及び2b、中間管3は3つの円筒状部材3a、3b及び3c、外管は2つの円筒状部材4a及び4bによって形成されている。
【0023】
例えば、円筒状部材2a、3a及び4aが1つのベンドの末端であり、円筒状部材2b、3b及び4bが長さ数キロメートルに及ぶ海底パイプの末端であると考えてもよい。例えば、後述するような複数の同種装置を順次に組立てることによって別の配置が得られると考えることももちろん可能である。
【0024】
内管2及び中間管3の円筒状部材は継手5によって連結され、中間管3及び外管4の円筒状部材は継手6によって連結されている。連結継手5及び6は、底部で接合された2つのU字の形状の断面図として図示されている。言うまでもなく、管の円筒状部材の各々は溶接によってU字の対応する分岐に接続されている。内管2及び中間管3はそれぞれ、継手5の内側分岐5a及び外側分岐5bに結合され、中間管3及び外管4はそれぞれ、継手6の内側分岐6a及び外側分岐6bに結合されている。
【0025】
継手5と内管2との完全な連結を確保するために継手5の内径は内管2の内径に等しい。同様の完全な連結を得るために継手5の外径は中間管3の外径に等しい。U字の2つの分岐5a及び5bの間の距離は、内管2と中間管3との間の所望の距離に基づいて決定される。これらの2つの管、即ち、管2と管3との間に組込まれる断熱材7の厚みは上記の距離によって決定される。
【0026】
完全な連結を確保するために継手6の内径は中間管3の内径に等しい。同じく完全な連結を確保するために継手6の外径は外管4の外径に等しい。継手6のU字の2つの分岐間の距離もまた、中間管3と外管4との間の所望の距離に基づいて決定される。
【0027】
継手5は管の軸XYに平行な軸をもつ貫通孔51を有している。この貫通孔51は、内管2と中間管3との間に存在する第一の環状スペース11のセクション11aと11bとの間の空気循環を可能にする。これによってこの環状スペース11の昇圧または降圧が許容される。
【0028】
継手6もまた、管の軸XYに平行な貫通孔61を有している。この貫通孔61は、外管4と中間管3との間に存在する第二の環状スペース10のセクション10aと10bとの間の空気循環を可能にする。これによってこの環状スペース10の昇圧または降圧が許容される。
【0029】
図1に示した継手5及び6は直径に沿って互いに連続して配置されてはいない。即ち、本発明によれば、内管2と外管4との間の熱伝導ブリッジの発生が実際に阻止される。より詳細に説明すると、3種類の管の間に一つの連結継手しか存在しないときは局部的に極めて大量の冷気が放出され、外管4の大幅な温度低下が誘発される(−100℃よりも低い温度に達し得る)。外管は価格上の理由から炭素鋼で製造されるので、十分な延性を維持するために−50℃よりも低い温度になってはならない。本発明は、内側に低温の作用を受け外側に海底環境の作用を受ける単一連結継手の熱絶縁の必要性を特に有利に解消する。このような継手はまた、解決がより難しい熱収縮作用下のパイプの移動に関連した剪断力を受容することも要求される。
【0030】
従って、これらの3種類の管を2つずつ接続する別々の連結継手を含む3管型パイプを製造すれば、局部熱の問題を解消し得る。最後に、第三の管を間挿することによってパイプの剛性を強化し、その結果としてパイプの信頼性が有意に改善される。中間管と外管とが同時に破損する確率がほぼゼロであることは容易に理解されよう。第二の環状スペース10は内部の圧力を上昇または下降させることによってラインの状態を制御し得る。
【0031】
内管2と中間管3との間に存在する環状スペース11に断熱材7が配置されている。この実施態様では中間管3と外管4との間に存在する環状スペース10に海底圧力に比べて高い圧力のガスが充填されている。このガスは例えば窒素である。高圧ガスを使用すると、特に浸水の可能性を完全に検出し得る。この圧力の連続的な制御によってパイプを簡単にかつ廉価に良好な状態に制御し得る。
【0032】
また、連結継手5のレベルで熱の放散を最小にするために、継手5及び中間管3の周囲に断熱材9を配置してもよい。断熱を確保するためには例えば約0.5−1.5mという長さlをもつスリーブで十分なことは明らかである。
【0033】
図2に示す本発明の変形実施態様では、中間管3と外管4との間に存在する環状スペース10に断熱材8が配置されている。この実施態様でも上記に説明したようにこの環状スペースに高圧または低圧のガスを存在させることが可能である。
【0034】
断熱材7、8及び9は例えば、多孔質材料または工業的制御真空下のシリカ基材の材料から構成されており、個別に温度調整されてもよく環状スペースに沿って温度調整されてもよい。
【0035】
温度変化による収縮及び膨張に起因する溶接部の周辺応力を低減するために、連結継手5は連結継手5の熱膨張率と該継手に接続された内管2及び中間管3の熱膨張率との間の熱膨張率を有しているのが有利であろう。このような継手を得るのは難しいかもしれない。従って図3は、パイプの性能を改善し得る実施態様を示す。この実施態様で、内管2を中間管3に接続する連結継手5は、連結継手5の熱膨張率と該継手に連結される内管2及び中間管3の熱膨張率との間の熱膨張率を有している管状補強材52及び53によって内管2及び3のそれぞれに固定されている。管3の外径及び内径にそれぞれ等しい外径及び内径をもつ補強材53は、継手5と管3の円筒状部材3a及び3bとの間に配置されている。管2の外径及び内径にそれぞれ等しい外径及び内径をもつ補強材52は、継手5と管2の円筒状部材2a及び2bとの間に配置されている。
【0036】
また、このような構造を連結継手6に応用することも考察できる。しかしながら、中間管3と外管4との間の温度差は中間管3と内管2との間の温度差よりも小さいので、この構造で問題は解消されている。
【0037】
非限定例を挙げると、内管2は約8mmよりも小さい肉厚を有しており、中間管3は約6mm−15mmの範囲の肉厚を有しており、外管4は約12mmよりも大きい肉厚を有している。
【0038】
内管は、−162℃から20℃までの範囲の温度で2.10−6m/m.Kよりも小さい膨張率を有しているニッケル含量約36%の鉄/ニッケル合金から製造されるのが有利である。中間管3は低温適応材料、例えば、ステンレススチールまたはニッケル9%の鋼合金から製造され、外管4は普通鋼から製造される。
【0039】
このようにして製造されたパイプは、ラインの終端が2つの管だけを含むように設計することもできる。この場合、片側だけが外管4に連結される連結継手6を使用する。この場合、連結継手6は自由端の処で円錐状の外側輪郭に沿って中間管3に連結するような形状である。また、その先の中間管3の直径は、内管2に近付くように縮小する。勿論、パイプラインの終端部分は従来の方法で断熱されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材から形成された3種類の同軸管であって、熱膨張率の小さい材料から製造された内管(2)と、中間管(3)と、鉄鋼から製造された外管(4)とを含み、内管(2)と中間管(3)との間の環状スペース(11)に断熱材(7,8)が配備されており、
−一方では各管の円筒状部材(2a,2b,3a,3b,3c,4a,4b)のそれぞれを接続するため及び他方では管の温度変化の際の熱収縮によって生じる力を受容するために、管(2,3,4)が連結継手(5,6)を用いて2つずつ連結されていること、及び、
−中間管(3)の円筒状部材(3b)は、組立の際に連結継手(5,6)と共働して内管(2)と外管(4)との間の熱伝導ブリッジの形成を阻止するために十分な長さを有していること、
を特徴とする低温液体輸送用の熱絶縁されたパイプ。
【請求項2】
中間管(3)と外管(4)との間の環状スペース(10)に断熱材(8)が配備されていることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項3】
中間管(3)と外管(4)との間の環状スペース(10)に周囲の海底環境の圧力に比べて高圧または低圧のガスが充填されていることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項4】
連結継手(5,6)が底部で接合された2つのU字の形状を有しており、同一環状スペース(10;11)の異なるセクション(10a,10b;11a,11b)間のガス循環を可能にしかつこれによって同一環状スペースの昇圧または降圧を許容するように管の軸に平行な貫通孔(51,61)を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項5】
内管(2)と中間管(3)とを互いに連結する連結継手(5)が、連結継手(5)の熱膨張率と該継手に接続された内管(2)及び中間管(3)のそれぞれの熱膨張率との間の熱膨張率を有している管状補強材(52,53)によって固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項6】
内管(2)が約8mmよりも小さい肉厚を有していること、
中間管(3)が15mmよりも小さく約6mmよりも大きい肉厚を有していること、
外管(4)が約12mmよりも大きい肉厚を有していること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項7】
内管(2)が、−162℃から20℃までの範囲の温度で2×10−6m/m/Kよりも小さい膨張率を有している材料から製造されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項8】
内管(2)がニッケル含量約36%の鉄−ニッケル合金から製造されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項9】
中間管(3)が低温適応材料、例えば、ステンレススチールまたはニッケル9%を含む鋼合金から製造されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。
【請求項10】
断熱材(7,8)が工業的制御真空下のシリカ基材の断熱材であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液化天然ガス輸送用パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67919(P2012−67919A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237644(P2011−237644)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2004−332905(P2004−332905)の分割
【原出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(504425082)
【Fターム(参考)】