液化燃料ガス供給装置
【課題】ガス組成変動を一定範囲に抑制することが求められるガス供給装置に好適な液化燃料ガス供給装置を提供する。
【解決手段】合流点P2の下流側の位置Dにおいては、最初にメイン配管L1側を通過したハンチングH1’が到達する。この時間帯にはバイパス配管を経由したハンチングH1”は到達していない。従って、合流後におけるハンチングH1’の振幅は位置B通過時の1/2、すなわち発熱量変化量はΔQ/2となる。ハンチングH1’通過後に、バイパス配管を通過したハンチング成分H1”が到達する。この場合のハンチングH1”も、ハンチングH1’と同様に振幅1/2、発熱量変化量ΔQ/2となる。結局、発熱量変動抑制装置6通過後のガスは、通過前のガスに対してハンチング継続時間は2倍となるが、振幅は1/2となり、発熱量抑制が実現される。
【解決手段】合流点P2の下流側の位置Dにおいては、最初にメイン配管L1側を通過したハンチングH1’が到達する。この時間帯にはバイパス配管を経由したハンチングH1”は到達していない。従って、合流後におけるハンチングH1’の振幅は位置B通過時の1/2、すなわち発熱量変化量はΔQ/2となる。ハンチングH1’通過後に、バイパス配管を通過したハンチング成分H1”が到達する。この場合のハンチングH1”も、ハンチングH1’と同様に振幅1/2、発熱量変化量ΔQ/2となる。結局、発熱量変動抑制装置6通過後のガスは、通過前のガスに対してハンチング継続時間は2倍となるが、振幅は1/2となり、発熱量抑制が実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料ガス供給装置に係り、特に、都市ガス等、ガス組成変動を一定範囲に抑制することが求められるガス供給装置に好適な液化燃料ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LNG(液化天然ガス)は産業用及び家庭用等の燃料や発電用原料として広く用いられており、また、二酸化炭素排出削減に貢献するエネルギーとして注目されている。都市ガス原料としては、タンカーやタンクローリーで運ばれるLNGを受入基地のLNG貯槽に一旦貯蔵した後に、気化器(ベーパライザー)でガス化して、導管ネットワークや専用配管を介して需要家に供給する。
【0003】
このようなLNG気化供給方式においては、LNGに含まれる各炭化水素の沸点の相違により、気化器起動時に生成ガスの組成が変動し、これに伴い供給ガスの発熱量が変動するという問題がある。このため、供給ガスの発熱量安定化を図るための種々の技術が提案されている。気化器自体の改良としては、LNG気化器の停止時にパージラインからLPGをパージする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、吸着材を用いる方式として、気化器下流側に活性炭を充填した吸着材充填塔を設けて、発熱量を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2)。図11は、このような吸着材充填塔を用いた従来の燃料ガス供給装置100を示す。従来の燃料ガス供給装置100は、LNG貯槽101、外気を加熱源とする気化器102、吸着材充填塔103を主要構成とする。吸着材充填塔103内には細孔直径2.0〜3.0nmの活性炭が充填されている。このような構成により、タンクローリー105、ライン106を介して供給されるLNGをLNG貯槽101に一旦貯蔵し、気化器102で気化して天然ガスとし、さらに吸着材充填塔103を通過させる。これにより、気化器出側において高沸点(重質炭化水素)成分の組成比が高く、ガス発熱量が高いときには、高沸点成分を吸着材で吸着し、また低沸点成分であるメタンの組成比が高くガス発熱量が低いときには、吸着した高沸点成分を脱着させて発熱量を抑制するものである。
【0005】
【特許文献1】特開平7−109476号公報
【特許文献2】特開2005-273753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の吸着材を用いた発熱量調整方法においては、吸着材の吸着量に限界があるため、充填塔単位体積当たりのガス処理量が制限される。このため、都市ガス供給のような高度の発熱量安定化が必要とされる場合には、吸着材充填量を増やすことが必要となり、充填塔容積の大型化、建設作業や設置作業の煩雑化が避けられないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、液化燃料ガスを気化して供給する液化燃料ガス供給装置において、吸着材を用いることなく、起動時の組成変動を一定範囲以下に抑えて供給可能とする液化燃料ガス供給装置を提供するものである。本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る燃料ガス供給装置は、
【0008】
(1)複数の成分を含む液化燃料ガスを気化して供給する燃料ガス供給装置であって、気化器と、気化器下流側にガス組成変動抑制手段と、を備え、該ガス組成変動抑制手段は、メイン配管と、メイン配管から分岐して合流点で合流するバイパス配管と、を備え、かつ、 少なくとも気化器起動時に、メイン配管とバイパス配管を流れる燃料ガスの流量比を、1:1に分配するとともに、気化器起動時に発生するガス組成ハンチングに関して、メイン配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点を通過した後に、バイパス配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点に到達するように、構成されて成ることを特徴とする。
【0009】
本発明において、「ガス組成ハンチング」とは、気化器起動時(非定常状態)から平衡状態のガス組成に至るまでの組成変動をいう。ハンチング発生の原因は、以下のように考えられる。液化燃料ガスとしてLNGを例にとると、通常、起動前には気化器内には比較的高温(約−30℃)のガスが残留している。起動バルブが開かれると、LNG貯槽内のLNGが気化器の下部マニホールドに流入し、残留している比較的高温の残留ガスと同温度の配管表面に接触して気化する。この場合、LNGに含まれる炭化水素類のうち、沸点温度の低いメタン成分(沸点−161℃)が優先的に蒸発する。このため、起動時の非定常状態では、気化器から出るガスはメタン成分の多い低発熱量ガスとなり、時間経過とともに定常状態の標準発熱量となる。
【0010】
図7は、本発明の作用を、発熱量変動を例にとり概念的に示した図である。後述する図2を参照して、同図(a)、(b)は、メイン配管とバイパス配管を流れる燃料ガス(流量比Rf)が、合流点の下流側位置Dに到着時間差τを以って単独に通過すると仮定したときの、それぞれのガス発熱量変動の時間的推移を示している。実際には両者は上記流量比で混合するから、合流後のガス発熱量変動は同図(c)に示すように、ハンチング振幅が抑制される。この場合の抑制率Rq(=ΔQ’/ΔQ)は、ハンチング継続時間(Δt)、Rf及びτの関数となるが、常に1≧Rq≧1/2の範囲にある。ここに、Δtを気化器能力により定まる固定値と考えると、振幅を最小値とするRf及びτの組み合わせとなるように、ガス組成変動抑制手段を設定すればよいことになる。
図8は、流量比Rf=1、τ=Δt のときの、振幅抑制効果を示したものである。同図から明らかなように、Rf=1、かつ、τ≧Δt のときは、必ずRq=1/2となる。
【0011】
(2)本発明において、ガス組成変動抑制手段としては、メイン配管とバイパス配管の配管内容積差を以下のように設定したものを用いることができる。
両配管の管内容積差をΔVとし、全ガス流量をF、ハンチング継続時間をΔt とすると、
ΔV≧F・Δt ・・・・・(1)式
に設定されているとき、メイン配管側に分配されるガスのハンチング成分が合流点通過後に、バイパス配管側に分配されるガスのハンチング成分が合流点に到達することになる。この場合、メイン配管とバイパス配管を同一口径(断面積S)とすれば、配管延長差Δλとして、ΔV=Δλ・S だから、
Δλ≧F・Δt/S・・・・・(2)式
となるように、配管延長差を設定すればよい。
【0012】
さらに、ガス組成変動抑制手段としては、(3)メイン配管側に設けた流量調整弁又は(4)メイン配管側に設けたオリフィスを用いることもできる。
これら(2)〜(4)の適宜組み合わせにより、メイン配管とバイパス配管の流量比を1:1に分配し、かつ、メイン配管側を流れたハンチング成分が合流点到達後に、バイパス配管側を流れたハンチング成分が合流点に到達するようにすることができる。
特に、オリフィスを用いることにより全ての配管を埋設することができるため、メンテナンス・コストの削減に資する。
【0013】
(5)上記各発明において、気化器の起動速度、起動圧力又は熱交換量のいずれか一以上の要素により定まるハンチング継続時間に基づいて、配管内容積差が構成されて成ることを特徴とする。
上述のように、ハンチングの振幅及び継続時間は、起動時における液化燃料の気化器流入特性及び気化器自体の熱交換特性に関係する。すなわち、ハンチング継続時間(Δt)は、気化器の起動速度(Fs)、起動圧力(PL)又は熱交換量の関数として表される。ここに「熱交換量」は、熱交換面積、温度差、熱伝達率等により定まる量である。
図9は、起動速度を変化させたときのハンチング特性を示した実測データである。
同図(a)は、気化器内温度−30℃、起動圧力3.7MPaの条件で、起動速度を変化させたときのハンチング特性を示している。同図(a)はFs=30t/h、また、同図(b)はFs’=7t/h のときのデータである。Δtf=86秒、Δtf’=230秒であり、(b)は(a)と比較して約3倍の継続時間及び変動幅を有していることが分かる。なお、同図では便宜上、2つのデータを連続的に並べて表示しており、横軸はハンチング継続時間の比較のために示したものである(図10も同様)。
【0014】
また、図10は、起動圧力を変化させたときのハンチング特性を示した実測データである。同図(a)は、起動圧力PL=3.97MPa、同図(b)はPL=1.8MPaのときのデータである。Δtp=127秒、Δtp’=277秒であり、(b)は(a)と比較して約2.2倍の継続時間及び変動幅を有していることが分かる。
これらの実測データより、必要起動速度、起動圧力に合わせて、配管内容積差を設けることにより、変動幅の緩和が可能となる。
【0015】
(6)上記各発明において、合流点通過後のガス組成ハンチングを所望の範囲内に抑制するための、複数のガス組成変動抑制手段を備えて成ることを特徴とする。
上述のようにガス組成変動抑制手段を1段通過させることにより、ガス組成変動を1/2に抑制することができる。さらに、変動範囲をこれ以下に抑制したい場合には、ガス組成変動抑制手段を複数段設けることにより、各段ごとに変動幅を1/2づつ縮小させることができる。従って、目的変動範囲に合わせて、ガス組成変動抑制手段を必要段数設ければよいことになる。
【0016】
(7)上記各発明において、液化燃料ガスがメタンを主成分とするLNGであり、前記燃料ガスが都市ガスであることを特徴とする。
現在、全国の都市ガスはウオッベ指数及び燃焼速度指数に基づいて14種類のガスグループに分類され、都市ガス事業者は特定したガス種の都市ガスを供給域内の需要家に対して供給することが、ガス事業法により義務付けられている。例えば、CH4を主成分とする13A都市ガスについては、52.7≦WI≦57.8、35≦MCP≦47と定められている。ここにウオッベ指数(WI)は、ガスの発熱量H(MJ/m3)をガスの空気に対する比重sの平方根で割った数値(WI=H/√s)で表され、ガス機器の完全燃焼性の指標となるものである。また、燃焼速度指数(MCP)は、都市ガス中の各可燃性ガスの燃焼速度の関数として表される。詳細はガス事業法に示されているため、ここでは省略する。従って、本発明によるガス組成変動抑制手段通過後の混合ガスのWI及びMCPを、上記13A都市ガスの範囲に制御することにより、供給域内で都市ガス13A用機器を良好に燃焼させることができる。
【0017】
(8)燃料ガス供給装置は、気化器と前記ガス組成変動抑制手段との間に付臭剤添加装置をさらに備え、かつ、前記ガス組成変動抑制手段は、起動時に生じる燃料ガス中の付臭濃度ハンチングについても、所定の範囲内に抑制可能に構成されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成により気化器起動時の組成変動抑制が可能となる。
また、吸着材充填塔を要しないため、イニシャルコストを大幅に削減することができ、 さらに圧力損失を小さくできるため、送出設備の小型化が可能となるという効果がある。
また、バイパス配管部分について地下埋設が可能となるため、メンテナンス・コストを削減できるという効果がある。
また、自動弁等の動作部を持たないため故障部位がなく、高い信頼性を確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至6を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複説明を回避するため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0020】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置1の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置1は、LNG貯槽2と、気化器3と、LNG貯槽2と気化器3とを結ぶ配管L3と、配管L3内に介装される起動バルブ4と、気化器3の下流側の供給ラインL0と、供給ラインL0経路内に設けられた発熱量変動抑制装置6と、を備えている。供給ラインL0は、気化器3と発熱量変動抑制装置6とを結ぶ配管L4と、発熱量変動抑制装置6下流側にあって需要家(図示せず)に燃料ガスを供給するための供給配管L5と、により構成されている。発熱量変動抑制装置6は、分岐点P1と合流点P2間を結ぶメイン配管L1及びバイパス配管L2と、メイン配管L1内に介装される流量調整バルブ5と、により構成されている。
LNG貯槽2内には、LNGタンカー、タンクローリ等により運ばれるLNGが貯蔵されている。LNGはメタン(CH4)を主成分とし、その組成比及び各成分の発熱量は表1の通りである。
【0021】
【表1】
気化器3の上部には海水スプレー装置(図示せず)が設けられており、海水散布により下部マニホールド部3bに送入されるLNGを気化し、供給ガスとして熱交換部3c、上部マニホールド部3aを経て、供給ラインL0に送出するように構成されている。
発熱量変動抑制装置6において、メイン配管L1とバイパス配管L2とは同一口径の配管が用いられ、配管延長差Δλ=λ2−λ1に設定されている。バイパス配管L2は全て、またメイン配管L1は流量調整バルブ5近傍を除く部分が土中埋設されている。流量調整バルブ5の開度は、起動時に両配管を同一流量が流れるように予め調整されている。
以上の構成により、燃料ガス供給装置1は、LNG貯槽2内のLNGを気化器3で気化して天然ガスとし、発熱量変動抑制装置6を通過させた後に、供給ラインL0を介して需要家先に供給するものである。
【0022】
次に図2をも参照して、燃料ガス供給装置1の起動時における発熱量変動抑制方法について説明する。起動前には、通常供給時の標準発熱量Q0のガスが残留している。運転開始に伴い起動バルブ4が開かれると、LNG貯槽2内のLNGが気化器3の下部マニホールド3aに流入する。ここで、残留ガスと接触、気化し、上述のように発熱量変動(ハンチング部)が形成される。気化器を出た燃料ガスは、配管L4を経由して分岐点P1に到達する。このときの流量をF(Nm3/h)とする。図3(a)は、分岐点P1直前の位置Aにおける発熱量の時間的推移を示している。ハンチング振幅=ΔQ、ハンチング継続時間=Δt1を示している。ハンチングH1の頂点通過時刻はtaである。分岐点P1において、燃料ガスはメイン配管L1とバイパス配管L2に、それぞれ同一流量F/2となるように分配される。
【0023】
同図(b)は、分岐後のメイン配管L1側の位置Bにおける発熱量の時間的推移を示しており、位置Aにおけるハンチング振幅=ΔQ、ハンチング継続時間=Δtが維持される。但し、流量は1/2である。ハンチングH1’の頂点通過時刻はtbである。さらに、バイパス配管側の位置Cにおける発熱量変化は同図(c)であり、ハンチングH1”の頂点通過時刻は、tbから時間Δt1経過後のtcとなる。
さらに合流点P2の下流側の位置Dにおいては、最初にメイン配管L1側を通過した経由したハンチングH1’が到達する。この時間帯にはバイパス配管を経由したハンチングH1”は到達していない。従って、合流後におけるハンチングH1’の振幅は位置B通過時の1/2、すなわち発熱量変化量はΔQ/2となる。
ハンチングH1’通過後に、バイパス配管を通過したハンチング成分H1”が到達する。この場合のハンチングH1”も、ハンチングH1’と同様に振幅1/2、発熱量変化量ΔQ/2となる。結局、発熱量変動抑制装置6通過後のガスは、通過前のガスに対してハンチング継続時間は2倍となるが、振幅は1/2となり、発熱量抑制が実現される(同図(d))。
なお、本実施形態では流量比Rf=1、到達時間差τ=Δtとした例を示したが、振幅を1/2に抑制する他の(Rf、τ)の組み合わせを選択することもできる。以下の実施形態についても同様である。
【0024】
(第二の実施形態)
次に図3、4を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、発熱量変動抑制装置をカスケード的に配置することにより、さらなる発熱量抑制を実現するものである。
図3は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置20の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置20が燃料ガス供給装置1と異なる点は、供給ラインL0経路中に2段階の発熱量変動抑制装置を備えていることである。すなわち、発熱量変動抑制装置6に加えて、その下流側にさらに発熱量変動抑制装置21を備えている。発熱量変動抑制装置21は、供給ラインL0経路内の分岐点P3、合流点P4間で分岐・合流するメイン配管L21とバイパス配管L22と、メイン配管L1内に介装される流量調整バルブ22により構成されている。バイパス配管L22の延長は、発熱量変動抑制装置6のバイパス配管L2の2倍の長さを備えている。2倍としたのは、後述するように合流後のハンチング継続時間が2倍となるためである。また、流量調整バルブ22の開度は、起動時にメイン配管L21とバイパス配管L22に同一流量が流れるように調整されている。その他の構成については燃料ガス供給装置1と同様であるので、重複説明を省略する。
【0025】
次に図4をも参照して、本実施形態の作用について説明する。位置A及び位置Dにおける発熱量の時間的推移は、上述の実施形態と同一である。さらに、発熱量変動抑制装置21の下流側の位置Eにおいては、発熱量変動抑制装置6における変動抑制と同一作用により、ハンチング振幅Heは、位置Dにおける振幅と比べてさらに1/2(ΔQ’/4)に縮小される。これに対して、ハンチング継続時間は2倍(4Δt1)となる(同図(c)参照)。これにより発熱量抑制効果がさらに増すこととなる。
なお、本実施形態では発熱量変動抑制装置を2段階に設けたが、必要変動抑制値に応じてさらに多段階に設けることができる。
【0026】
(第三の実施形態)
さらに図5,6を参照して、他の実施形態について説明する。本実施形態は、気化器3を出たガスを付臭して供給する場合の、付臭濃度変動抑制を図る形態である。
図5は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置30の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置30が第一の実施形態に係る燃料ガス供給装置1と異なる点は、気化器3の下流側に付臭剤添加装置31を備えていることである。付臭剤としては、例えばt-ブチルメルカプタン(TBM)−ジメチルサルファイド(DMS)の混合付臭剤を用いることができる。さらに、発熱量変動抑制装置6に替えて、ガス組成変動抑制装置32を備えている。発熱量変動抑制装置32は、供給ラインL0経路内の分岐点P5、合流点P6間で分岐・合流するメイン配管L31と、バイパス配管L32と、メイン配管L31内に介装される流量調整バルブ33と、により構成されている。
【0027】
メイン配管L31とバイパス配管L32の配管延長差Δλ3は、後述する付臭濃度ハンチング継続時間(Δt3)と、第一の実施形態の発熱量ハンチング継続時間(Δt1)のうちの長い方に対応して設定されている。これにより、発熱量変動抑制及び付臭濃度変動抑制の両立が可能となる。なお、本実施形態においては、Δt3>Δt1のケースを想定している。
その他の構成については燃料ガス供給装置1と同様であるので、重複説明を省略する。
【0028】
次に、燃料ガス供給装置30の起動時における付臭濃度変動抑制について説明する。起動前の状態では、付臭剤添加装置31のノズル部(図示せず)に残留する付臭剤が供給ライン内に拡散することにより、付臭剤添加装置31近傍における配管内ガスは高付臭濃度(Cmax)となっている。気化器3の起動に伴って生成する天然ガスが、供給ラインL0に送出されると、過渡的に高付臭濃度ガスによるハンチングH3が形成される。図6(a)は、付臭剤添加装置31の下流側位置Fにおける、供給ガスの付臭濃度Cの時間的推移を示したものである。本実施形態ではハンチングH3の継続時間Δt3として、設計付臭濃度C0を超える時間に設定している。
【0029】
付臭剤添加装置32通過後の位置Gにおいては、最初にメイン配管L31側を通過したハンチングH3’が到達し、その通過後にバイパス配管L32側を通過したハンチングH3”が到達する。これにより、位置Gにおけるガスの付臭濃度は、上述の各実施形態におけるハンチング抑制作用と同様に振幅が1/2に縮小され、ハンチング継続時間は2倍となる(同図(b)参照)。これにより、付臭濃度を許容濃度C1以下とすることができる。ここに、許容付臭濃度C1は供給条件に対応して予め定められている。
さらに、上述のように配管延長差Δλ3が、発熱量ハンチングの抑制にも有効に設定されているから、発熱量変動の抑制も可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、LNGのガス化供給装置に限らず、気化器を用いてガス化する液化燃料ガスの供給装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第一の実施形態に係る燃料ガス供給装置1の構成を示す図である。
【図2】燃料ガス供給装置1の発熱量変動抑制形態を示す図である。
【図3】第二の実施形態に係る燃料ガス供給装置20の構成を示す図である。
【図4】燃料ガス供給装置20の発熱量変動抑制形態を示す図である。
【図5】第三の実施形態に係る燃料ガス供給装置30の構成を示す図である。
【図6】燃料ガス供給装置30の付臭濃度変動抑制形態を示す図である。
【図7】本発明による発熱量変動抑制作用を説明する図である。
【図8】ハンチング振幅を最小にする流量比Rf、到着時間差τの組み合わせ例を示す図である。
【図9】起動速度の相違により生じる発熱量ハンチング継続時間の差を示す図である。
【図10】起動圧力の相違により生じる発熱量ハンチング継続時間の差を示す図である。
【図11】従来の燃料ガス供給装置100の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1、20、30・・・・燃料ガス供給装置
2・・・・LNG貯槽
3・・・・気化器
4・・・・起動バルブ
5、22、33・・・・流量調整バルブ
6,21、32・・・・発熱量変動抑制装置
31・・・・付臭剤添加装置
L0・・・・供給ライン
L1、L21、L31・・・・メイン配管
L2、L22、L32・・・・バイパス配管
L3〜L5・・・・ 供給配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料ガス供給装置に係り、特に、都市ガス等、ガス組成変動を一定範囲に抑制することが求められるガス供給装置に好適な液化燃料ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LNG(液化天然ガス)は産業用及び家庭用等の燃料や発電用原料として広く用いられており、また、二酸化炭素排出削減に貢献するエネルギーとして注目されている。都市ガス原料としては、タンカーやタンクローリーで運ばれるLNGを受入基地のLNG貯槽に一旦貯蔵した後に、気化器(ベーパライザー)でガス化して、導管ネットワークや専用配管を介して需要家に供給する。
【0003】
このようなLNG気化供給方式においては、LNGに含まれる各炭化水素の沸点の相違により、気化器起動時に生成ガスの組成が変動し、これに伴い供給ガスの発熱量が変動するという問題がある。このため、供給ガスの発熱量安定化を図るための種々の技術が提案されている。気化器自体の改良としては、LNG気化器の停止時にパージラインからLPGをパージする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、吸着材を用いる方式として、気化器下流側に活性炭を充填した吸着材充填塔を設けて、発熱量を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2)。図11は、このような吸着材充填塔を用いた従来の燃料ガス供給装置100を示す。従来の燃料ガス供給装置100は、LNG貯槽101、外気を加熱源とする気化器102、吸着材充填塔103を主要構成とする。吸着材充填塔103内には細孔直径2.0〜3.0nmの活性炭が充填されている。このような構成により、タンクローリー105、ライン106を介して供給されるLNGをLNG貯槽101に一旦貯蔵し、気化器102で気化して天然ガスとし、さらに吸着材充填塔103を通過させる。これにより、気化器出側において高沸点(重質炭化水素)成分の組成比が高く、ガス発熱量が高いときには、高沸点成分を吸着材で吸着し、また低沸点成分であるメタンの組成比が高くガス発熱量が低いときには、吸着した高沸点成分を脱着させて発熱量を抑制するものである。
【0005】
【特許文献1】特開平7−109476号公報
【特許文献2】特開2005-273753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の吸着材を用いた発熱量調整方法においては、吸着材の吸着量に限界があるため、充填塔単位体積当たりのガス処理量が制限される。このため、都市ガス供給のような高度の発熱量安定化が必要とされる場合には、吸着材充填量を増やすことが必要となり、充填塔容積の大型化、建設作業や設置作業の煩雑化が避けられないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、液化燃料ガスを気化して供給する液化燃料ガス供給装置において、吸着材を用いることなく、起動時の組成変動を一定範囲以下に抑えて供給可能とする液化燃料ガス供給装置を提供するものである。本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る燃料ガス供給装置は、
【0008】
(1)複数の成分を含む液化燃料ガスを気化して供給する燃料ガス供給装置であって、気化器と、気化器下流側にガス組成変動抑制手段と、を備え、該ガス組成変動抑制手段は、メイン配管と、メイン配管から分岐して合流点で合流するバイパス配管と、を備え、かつ、 少なくとも気化器起動時に、メイン配管とバイパス配管を流れる燃料ガスの流量比を、1:1に分配するとともに、気化器起動時に発生するガス組成ハンチングに関して、メイン配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点を通過した後に、バイパス配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点に到達するように、構成されて成ることを特徴とする。
【0009】
本発明において、「ガス組成ハンチング」とは、気化器起動時(非定常状態)から平衡状態のガス組成に至るまでの組成変動をいう。ハンチング発生の原因は、以下のように考えられる。液化燃料ガスとしてLNGを例にとると、通常、起動前には気化器内には比較的高温(約−30℃)のガスが残留している。起動バルブが開かれると、LNG貯槽内のLNGが気化器の下部マニホールドに流入し、残留している比較的高温の残留ガスと同温度の配管表面に接触して気化する。この場合、LNGに含まれる炭化水素類のうち、沸点温度の低いメタン成分(沸点−161℃)が優先的に蒸発する。このため、起動時の非定常状態では、気化器から出るガスはメタン成分の多い低発熱量ガスとなり、時間経過とともに定常状態の標準発熱量となる。
【0010】
図7は、本発明の作用を、発熱量変動を例にとり概念的に示した図である。後述する図2を参照して、同図(a)、(b)は、メイン配管とバイパス配管を流れる燃料ガス(流量比Rf)が、合流点の下流側位置Dに到着時間差τを以って単独に通過すると仮定したときの、それぞれのガス発熱量変動の時間的推移を示している。実際には両者は上記流量比で混合するから、合流後のガス発熱量変動は同図(c)に示すように、ハンチング振幅が抑制される。この場合の抑制率Rq(=ΔQ’/ΔQ)は、ハンチング継続時間(Δt)、Rf及びτの関数となるが、常に1≧Rq≧1/2の範囲にある。ここに、Δtを気化器能力により定まる固定値と考えると、振幅を最小値とするRf及びτの組み合わせとなるように、ガス組成変動抑制手段を設定すればよいことになる。
図8は、流量比Rf=1、τ=Δt のときの、振幅抑制効果を示したものである。同図から明らかなように、Rf=1、かつ、τ≧Δt のときは、必ずRq=1/2となる。
【0011】
(2)本発明において、ガス組成変動抑制手段としては、メイン配管とバイパス配管の配管内容積差を以下のように設定したものを用いることができる。
両配管の管内容積差をΔVとし、全ガス流量をF、ハンチング継続時間をΔt とすると、
ΔV≧F・Δt ・・・・・(1)式
に設定されているとき、メイン配管側に分配されるガスのハンチング成分が合流点通過後に、バイパス配管側に分配されるガスのハンチング成分が合流点に到達することになる。この場合、メイン配管とバイパス配管を同一口径(断面積S)とすれば、配管延長差Δλとして、ΔV=Δλ・S だから、
Δλ≧F・Δt/S・・・・・(2)式
となるように、配管延長差を設定すればよい。
【0012】
さらに、ガス組成変動抑制手段としては、(3)メイン配管側に設けた流量調整弁又は(4)メイン配管側に設けたオリフィスを用いることもできる。
これら(2)〜(4)の適宜組み合わせにより、メイン配管とバイパス配管の流量比を1:1に分配し、かつ、メイン配管側を流れたハンチング成分が合流点到達後に、バイパス配管側を流れたハンチング成分が合流点に到達するようにすることができる。
特に、オリフィスを用いることにより全ての配管を埋設することができるため、メンテナンス・コストの削減に資する。
【0013】
(5)上記各発明において、気化器の起動速度、起動圧力又は熱交換量のいずれか一以上の要素により定まるハンチング継続時間に基づいて、配管内容積差が構成されて成ることを特徴とする。
上述のように、ハンチングの振幅及び継続時間は、起動時における液化燃料の気化器流入特性及び気化器自体の熱交換特性に関係する。すなわち、ハンチング継続時間(Δt)は、気化器の起動速度(Fs)、起動圧力(PL)又は熱交換量の関数として表される。ここに「熱交換量」は、熱交換面積、温度差、熱伝達率等により定まる量である。
図9は、起動速度を変化させたときのハンチング特性を示した実測データである。
同図(a)は、気化器内温度−30℃、起動圧力3.7MPaの条件で、起動速度を変化させたときのハンチング特性を示している。同図(a)はFs=30t/h、また、同図(b)はFs’=7t/h のときのデータである。Δtf=86秒、Δtf’=230秒であり、(b)は(a)と比較して約3倍の継続時間及び変動幅を有していることが分かる。なお、同図では便宜上、2つのデータを連続的に並べて表示しており、横軸はハンチング継続時間の比較のために示したものである(図10も同様)。
【0014】
また、図10は、起動圧力を変化させたときのハンチング特性を示した実測データである。同図(a)は、起動圧力PL=3.97MPa、同図(b)はPL=1.8MPaのときのデータである。Δtp=127秒、Δtp’=277秒であり、(b)は(a)と比較して約2.2倍の継続時間及び変動幅を有していることが分かる。
これらの実測データより、必要起動速度、起動圧力に合わせて、配管内容積差を設けることにより、変動幅の緩和が可能となる。
【0015】
(6)上記各発明において、合流点通過後のガス組成ハンチングを所望の範囲内に抑制するための、複数のガス組成変動抑制手段を備えて成ることを特徴とする。
上述のようにガス組成変動抑制手段を1段通過させることにより、ガス組成変動を1/2に抑制することができる。さらに、変動範囲をこれ以下に抑制したい場合には、ガス組成変動抑制手段を複数段設けることにより、各段ごとに変動幅を1/2づつ縮小させることができる。従って、目的変動範囲に合わせて、ガス組成変動抑制手段を必要段数設ければよいことになる。
【0016】
(7)上記各発明において、液化燃料ガスがメタンを主成分とするLNGであり、前記燃料ガスが都市ガスであることを特徴とする。
現在、全国の都市ガスはウオッベ指数及び燃焼速度指数に基づいて14種類のガスグループに分類され、都市ガス事業者は特定したガス種の都市ガスを供給域内の需要家に対して供給することが、ガス事業法により義務付けられている。例えば、CH4を主成分とする13A都市ガスについては、52.7≦WI≦57.8、35≦MCP≦47と定められている。ここにウオッベ指数(WI)は、ガスの発熱量H(MJ/m3)をガスの空気に対する比重sの平方根で割った数値(WI=H/√s)で表され、ガス機器の完全燃焼性の指標となるものである。また、燃焼速度指数(MCP)は、都市ガス中の各可燃性ガスの燃焼速度の関数として表される。詳細はガス事業法に示されているため、ここでは省略する。従って、本発明によるガス組成変動抑制手段通過後の混合ガスのWI及びMCPを、上記13A都市ガスの範囲に制御することにより、供給域内で都市ガス13A用機器を良好に燃焼させることができる。
【0017】
(8)燃料ガス供給装置は、気化器と前記ガス組成変動抑制手段との間に付臭剤添加装置をさらに備え、かつ、前記ガス組成変動抑制手段は、起動時に生じる燃料ガス中の付臭濃度ハンチングについても、所定の範囲内に抑制可能に構成されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成により気化器起動時の組成変動抑制が可能となる。
また、吸着材充填塔を要しないため、イニシャルコストを大幅に削減することができ、 さらに圧力損失を小さくできるため、送出設備の小型化が可能となるという効果がある。
また、バイパス配管部分について地下埋設が可能となるため、メンテナンス・コストを削減できるという効果がある。
また、自動弁等の動作部を持たないため故障部位がなく、高い信頼性を確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至6を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複説明を回避するため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0020】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置1の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置1は、LNG貯槽2と、気化器3と、LNG貯槽2と気化器3とを結ぶ配管L3と、配管L3内に介装される起動バルブ4と、気化器3の下流側の供給ラインL0と、供給ラインL0経路内に設けられた発熱量変動抑制装置6と、を備えている。供給ラインL0は、気化器3と発熱量変動抑制装置6とを結ぶ配管L4と、発熱量変動抑制装置6下流側にあって需要家(図示せず)に燃料ガスを供給するための供給配管L5と、により構成されている。発熱量変動抑制装置6は、分岐点P1と合流点P2間を結ぶメイン配管L1及びバイパス配管L2と、メイン配管L1内に介装される流量調整バルブ5と、により構成されている。
LNG貯槽2内には、LNGタンカー、タンクローリ等により運ばれるLNGが貯蔵されている。LNGはメタン(CH4)を主成分とし、その組成比及び各成分の発熱量は表1の通りである。
【0021】
【表1】
気化器3の上部には海水スプレー装置(図示せず)が設けられており、海水散布により下部マニホールド部3bに送入されるLNGを気化し、供給ガスとして熱交換部3c、上部マニホールド部3aを経て、供給ラインL0に送出するように構成されている。
発熱量変動抑制装置6において、メイン配管L1とバイパス配管L2とは同一口径の配管が用いられ、配管延長差Δλ=λ2−λ1に設定されている。バイパス配管L2は全て、またメイン配管L1は流量調整バルブ5近傍を除く部分が土中埋設されている。流量調整バルブ5の開度は、起動時に両配管を同一流量が流れるように予め調整されている。
以上の構成により、燃料ガス供給装置1は、LNG貯槽2内のLNGを気化器3で気化して天然ガスとし、発熱量変動抑制装置6を通過させた後に、供給ラインL0を介して需要家先に供給するものである。
【0022】
次に図2をも参照して、燃料ガス供給装置1の起動時における発熱量変動抑制方法について説明する。起動前には、通常供給時の標準発熱量Q0のガスが残留している。運転開始に伴い起動バルブ4が開かれると、LNG貯槽2内のLNGが気化器3の下部マニホールド3aに流入する。ここで、残留ガスと接触、気化し、上述のように発熱量変動(ハンチング部)が形成される。気化器を出た燃料ガスは、配管L4を経由して分岐点P1に到達する。このときの流量をF(Nm3/h)とする。図3(a)は、分岐点P1直前の位置Aにおける発熱量の時間的推移を示している。ハンチング振幅=ΔQ、ハンチング継続時間=Δt1を示している。ハンチングH1の頂点通過時刻はtaである。分岐点P1において、燃料ガスはメイン配管L1とバイパス配管L2に、それぞれ同一流量F/2となるように分配される。
【0023】
同図(b)は、分岐後のメイン配管L1側の位置Bにおける発熱量の時間的推移を示しており、位置Aにおけるハンチング振幅=ΔQ、ハンチング継続時間=Δtが維持される。但し、流量は1/2である。ハンチングH1’の頂点通過時刻はtbである。さらに、バイパス配管側の位置Cにおける発熱量変化は同図(c)であり、ハンチングH1”の頂点通過時刻は、tbから時間Δt1経過後のtcとなる。
さらに合流点P2の下流側の位置Dにおいては、最初にメイン配管L1側を通過した経由したハンチングH1’が到達する。この時間帯にはバイパス配管を経由したハンチングH1”は到達していない。従って、合流後におけるハンチングH1’の振幅は位置B通過時の1/2、すなわち発熱量変化量はΔQ/2となる。
ハンチングH1’通過後に、バイパス配管を通過したハンチング成分H1”が到達する。この場合のハンチングH1”も、ハンチングH1’と同様に振幅1/2、発熱量変化量ΔQ/2となる。結局、発熱量変動抑制装置6通過後のガスは、通過前のガスに対してハンチング継続時間は2倍となるが、振幅は1/2となり、発熱量抑制が実現される(同図(d))。
なお、本実施形態では流量比Rf=1、到達時間差τ=Δtとした例を示したが、振幅を1/2に抑制する他の(Rf、τ)の組み合わせを選択することもできる。以下の実施形態についても同様である。
【0024】
(第二の実施形態)
次に図3、4を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、発熱量変動抑制装置をカスケード的に配置することにより、さらなる発熱量抑制を実現するものである。
図3は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置20の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置20が燃料ガス供給装置1と異なる点は、供給ラインL0経路中に2段階の発熱量変動抑制装置を備えていることである。すなわち、発熱量変動抑制装置6に加えて、その下流側にさらに発熱量変動抑制装置21を備えている。発熱量変動抑制装置21は、供給ラインL0経路内の分岐点P3、合流点P4間で分岐・合流するメイン配管L21とバイパス配管L22と、メイン配管L1内に介装される流量調整バルブ22により構成されている。バイパス配管L22の延長は、発熱量変動抑制装置6のバイパス配管L2の2倍の長さを備えている。2倍としたのは、後述するように合流後のハンチング継続時間が2倍となるためである。また、流量調整バルブ22の開度は、起動時にメイン配管L21とバイパス配管L22に同一流量が流れるように調整されている。その他の構成については燃料ガス供給装置1と同様であるので、重複説明を省略する。
【0025】
次に図4をも参照して、本実施形態の作用について説明する。位置A及び位置Dにおける発熱量の時間的推移は、上述の実施形態と同一である。さらに、発熱量変動抑制装置21の下流側の位置Eにおいては、発熱量変動抑制装置6における変動抑制と同一作用により、ハンチング振幅Heは、位置Dにおける振幅と比べてさらに1/2(ΔQ’/4)に縮小される。これに対して、ハンチング継続時間は2倍(4Δt1)となる(同図(c)参照)。これにより発熱量抑制効果がさらに増すこととなる。
なお、本実施形態では発熱量変動抑制装置を2段階に設けたが、必要変動抑制値に応じてさらに多段階に設けることができる。
【0026】
(第三の実施形態)
さらに図5,6を参照して、他の実施形態について説明する。本実施形態は、気化器3を出たガスを付臭して供給する場合の、付臭濃度変動抑制を図る形態である。
図5は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置30の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置30が第一の実施形態に係る燃料ガス供給装置1と異なる点は、気化器3の下流側に付臭剤添加装置31を備えていることである。付臭剤としては、例えばt-ブチルメルカプタン(TBM)−ジメチルサルファイド(DMS)の混合付臭剤を用いることができる。さらに、発熱量変動抑制装置6に替えて、ガス組成変動抑制装置32を備えている。発熱量変動抑制装置32は、供給ラインL0経路内の分岐点P5、合流点P6間で分岐・合流するメイン配管L31と、バイパス配管L32と、メイン配管L31内に介装される流量調整バルブ33と、により構成されている。
【0027】
メイン配管L31とバイパス配管L32の配管延長差Δλ3は、後述する付臭濃度ハンチング継続時間(Δt3)と、第一の実施形態の発熱量ハンチング継続時間(Δt1)のうちの長い方に対応して設定されている。これにより、発熱量変動抑制及び付臭濃度変動抑制の両立が可能となる。なお、本実施形態においては、Δt3>Δt1のケースを想定している。
その他の構成については燃料ガス供給装置1と同様であるので、重複説明を省略する。
【0028】
次に、燃料ガス供給装置30の起動時における付臭濃度変動抑制について説明する。起動前の状態では、付臭剤添加装置31のノズル部(図示せず)に残留する付臭剤が供給ライン内に拡散することにより、付臭剤添加装置31近傍における配管内ガスは高付臭濃度(Cmax)となっている。気化器3の起動に伴って生成する天然ガスが、供給ラインL0に送出されると、過渡的に高付臭濃度ガスによるハンチングH3が形成される。図6(a)は、付臭剤添加装置31の下流側位置Fにおける、供給ガスの付臭濃度Cの時間的推移を示したものである。本実施形態ではハンチングH3の継続時間Δt3として、設計付臭濃度C0を超える時間に設定している。
【0029】
付臭剤添加装置32通過後の位置Gにおいては、最初にメイン配管L31側を通過したハンチングH3’が到達し、その通過後にバイパス配管L32側を通過したハンチングH3”が到達する。これにより、位置Gにおけるガスの付臭濃度は、上述の各実施形態におけるハンチング抑制作用と同様に振幅が1/2に縮小され、ハンチング継続時間は2倍となる(同図(b)参照)。これにより、付臭濃度を許容濃度C1以下とすることができる。ここに、許容付臭濃度C1は供給条件に対応して予め定められている。
さらに、上述のように配管延長差Δλ3が、発熱量ハンチングの抑制にも有効に設定されているから、発熱量変動の抑制も可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、LNGのガス化供給装置に限らず、気化器を用いてガス化する液化燃料ガスの供給装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第一の実施形態に係る燃料ガス供給装置1の構成を示す図である。
【図2】燃料ガス供給装置1の発熱量変動抑制形態を示す図である。
【図3】第二の実施形態に係る燃料ガス供給装置20の構成を示す図である。
【図4】燃料ガス供給装置20の発熱量変動抑制形態を示す図である。
【図5】第三の実施形態に係る燃料ガス供給装置30の構成を示す図である。
【図6】燃料ガス供給装置30の付臭濃度変動抑制形態を示す図である。
【図7】本発明による発熱量変動抑制作用を説明する図である。
【図8】ハンチング振幅を最小にする流量比Rf、到着時間差τの組み合わせ例を示す図である。
【図9】起動速度の相違により生じる発熱量ハンチング継続時間の差を示す図である。
【図10】起動圧力の相違により生じる発熱量ハンチング継続時間の差を示す図である。
【図11】従来の燃料ガス供給装置100の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1、20、30・・・・燃料ガス供給装置
2・・・・LNG貯槽
3・・・・気化器
4・・・・起動バルブ
5、22、33・・・・流量調整バルブ
6,21、32・・・・発熱量変動抑制装置
31・・・・付臭剤添加装置
L0・・・・供給ライン
L1、L21、L31・・・・メイン配管
L2、L22、L32・・・・バイパス配管
L3〜L5・・・・ 供給配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を含む液化燃料ガスを気化して供給する燃料ガス供給装置であって、
気化器と、気化器下流側にガス組成変動抑制手段と、を備え、
該ガス組成変動抑制手段は、メイン配管と、メイン配管から分岐して合流点で合流するバイパス配管と、を備え、かつ、
少なくとも気化器起動時に、メイン配管とバイパス配管を流れる燃料ガスの流量比を、1:1に分配するとともに、
気化器起動時に発生するガス組成ハンチングに関して、メイン配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点を通過した後に、バイパス配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点に到達するように、
構成されて成ることを特徴とする燃料ガス供給装置。
【請求項2】
前記ガス組成変動抑制手段が、メイン配管とバイパス配管の配管内容積差に基づき設定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項3】
前記ガス組成変動抑制手段が、メイン配管側に設けた流量調整弁を含んで成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス組成変動抑制手段が、メイン配管側に設けたオリフィスを含んで成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項5】
気化器の起動速度、起動圧力又は熱交換量のいずれか一以上の要素により定まる前記ハンチング成分の継続時間に基づいて、前記配管内容積差が構成されて成ることを特徴とする請求項2乃至4に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項6】
前記合流点通過後のガス組成ハンチングを所望の範囲内に抑制するための、複数の前記ガス組成変動抑制手段を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至5に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項7】
前記液化燃料ガスがメタンを主成分とするLNGであり、前記燃料ガスが都市ガスであることを特徴とする請求項1乃至6に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項8】
前記燃料ガス供給装置は、気化器と前記ガス組成変動抑制手段との間に付臭剤添加装置をさらに備え、かつ、
前記ガス組成変動抑制手段は、起動時に生じる燃料ガス中の付臭濃度ハンチングについても、所定の範囲内に抑制可能に構成されて成ることを特徴とする請求項1乃至7に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項1】
複数の成分を含む液化燃料ガスを気化して供給する燃料ガス供給装置であって、
気化器と、気化器下流側にガス組成変動抑制手段と、を備え、
該ガス組成変動抑制手段は、メイン配管と、メイン配管から分岐して合流点で合流するバイパス配管と、を備え、かつ、
少なくとも気化器起動時に、メイン配管とバイパス配管を流れる燃料ガスの流量比を、1:1に分配するとともに、
気化器起動時に発生するガス組成ハンチングに関して、メイン配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点を通過した後に、バイパス配管側に分配される燃料ガスのハンチング成分が合流点に到達するように、
構成されて成ることを特徴とする燃料ガス供給装置。
【請求項2】
前記ガス組成変動抑制手段が、メイン配管とバイパス配管の配管内容積差に基づき設定されて成ることを特徴とする請求項1に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項3】
前記ガス組成変動抑制手段が、メイン配管側に設けた流量調整弁を含んで成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス組成変動抑制手段が、メイン配管側に設けたオリフィスを含んで成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項5】
気化器の起動速度、起動圧力又は熱交換量のいずれか一以上の要素により定まる前記ハンチング成分の継続時間に基づいて、前記配管内容積差が構成されて成ることを特徴とする請求項2乃至4に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項6】
前記合流点通過後のガス組成ハンチングを所望の範囲内に抑制するための、複数の前記ガス組成変動抑制手段を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至5に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項7】
前記液化燃料ガスがメタンを主成分とするLNGであり、前記燃料ガスが都市ガスであることを特徴とする請求項1乃至6に記載の液化燃料ガス供給装置。
【請求項8】
前記燃料ガス供給装置は、気化器と前記ガス組成変動抑制手段との間に付臭剤添加装置をさらに備え、かつ、
前記ガス組成変動抑制手段は、起動時に生じる燃料ガス中の付臭濃度ハンチングについても、所定の範囲内に抑制可能に構成されて成ることを特徴とする請求項1乃至7に記載の液化燃料ガス供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−108913(P2009−108913A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281085(P2007−281085)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
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