説明

液圧駆動装置

【課題】 片ロッド形液圧シリンダを使用した駆動装置において、回路の構成を簡素化するとともに、バルブの切換や電気的ゲインの切換を不要とし、制御性を向上させた液圧駆動装置を提供する。
【解決手段】 片ロッド形液圧シリンダを固定容量液圧ポンプにより駆動する液圧駆動装置であって、前記固定容量液圧ポンプは、タンクに接続された第1の固定容量液圧ポンプと、正逆反転自在の第2の固定容量液圧ポンプとを備え、第2の固定容量液圧ポンプを正逆反転した場合における前記固定容量液圧ポンプからの流体の吐出量比を、前記片ロッド形液圧シリンダのピストンのロッド側とその反対側との受圧面積比と同等になるように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより駆動される液圧ポンプからの圧液により液圧アクチュエータを駆動する液圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧アクチュエータとして、片ロッド形液圧シリンダを使用した駆動装置が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
前記文献に開示される駆動装置は、いずれも固定容量の正・逆両回転形の液圧ポンプを回転速度可変形電動モータにより駆動して、片ロッド形液圧シリンダのピストンの位置・速度・荷重を制御するものであり、また、液圧ポンプと片ロッド形液圧シリンダとの関係は閉回路となるように構成されていた。
しかしながら、前記したような駆動装置では、1台の両回転固定容量ポンプと電動モータとを組み合わせて使用しているために、片ロッド形液圧シリンダ(組み合わせシリンダを含む)のようなロッドの両側において面積の差が存在するアクチュエータの場合には、閉回路中の作動油を吸入・排出する為の吸入チェック弁と排出パイロットチェック弁とが必要であった。更に、シリンダの前進と後退とで、バルブの切換と、電気的ゲインの切換、即ち、回転速度・方向制御形モータの指令値に対するシリンダの運動速度・方向と力量・方向との比の切換が必要となり、シリンダの制御の制度を向上するには障害となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開平10−169602号公報
【特許文献2】特開2002−178200号公報
【特許文献3】特開2003−88992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、片ロッド形液圧シリンダを使用した駆動装置において、回路の構成を簡素化するとともに、バルブの切換や電気的ゲインの切換を不要とし、制御性を向上させた液圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討の結果、下記の通り解決手段を見いだした。
即ち、本発明の液圧駆動装置は、請求項1に記載の通り、片ロッド形液圧シリンダを固定容量液圧ポンプにより駆動する液圧駆動装置であって、前記固定容量液圧ポンプは、タンクに接続された第1の固定容量液圧ポンプと、正逆反転自在の第2の固定容量液圧ポンプとを備え、第2の固定容量液圧ポンプを、正逆反転した場合における前記固定容量液圧ポンプからの流体の吐出量比を、前記片ロッド形液圧シリンダのピストンのロッド側とその反対側との受圧面積比と同等になるように構成したことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の液圧駆動装置において、前記固定容量液圧ポンプは、回転速度・方向制御形モータにより駆動され、前記回転速度・方向制御形モータの制御は、前記片ロッド形液圧シリンダの前記ピストンの位置を検出するための位置検出器並びに前記片ロッド形液圧シリンダに供給及び/又は排出される流体の圧力を検出するための圧力検出器からの信号に基づいて行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸入・排出用チェック弁、パイロットチェック弁を不要とし、更に、ピストンの前進と後退とでバルブの切換も電気的ゲインの切換も不要とすることができ、片ロッド形液圧シリンダの制御性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図1を参照して本発明の液圧駆動装置について説明する。
図1に示される液圧駆動装置において、固定容量形液圧ポンプ1は、正逆回転可能な小容量(V)の第1の固定容量形液圧ポンプ2と大容量(V)の第2の固定容量形液圧ポンプ3とからなる2連ポンプとして構成されており、第1ポート側1aにおいて、第1の固定容量形液圧ポンプ2と第2の固定容量形液圧ポンプ3とが接続される。そして、第2の固定容量形液圧ポンプ3は、フィルタ4を介して変動油量吸収用作動油タンク5に接続される。そして、固定容量形液圧ポンプ1は、電動モータ(回転速度・方向制御形)6により回転駆動される。
前記固定容量形液圧ポンプ1の第1ポート1aは、片ロッド形液圧シリンダ7のヘッド側ポート7aに接続され、第2ポートは、ロッド側ポート7bに接続される。
前記片ロッド形シリンダ7のピストン12の片側にはロッド13が設けられ、ロッド13の先端部13aにより、対象物を押したり引っ張ったりする等の負荷を加えるように構成される。尚、この片ロッド形液圧シリンダ7内において、ピストン12の受圧面積は、ロッド側はAであり、その反対側はAであり、AとAの関係は、A<Aとなっている。
上記構成において、固定容量液圧ポンプ1は、第1の固定容量液圧ポンプ2と第2の固定容量液圧ポンプ3とを正回転させる場合には、第1ポート1a側からの吐出量がV+Vとなる。また、第1の固定容量ポンプを逆回転させる場合には、第2ポート1b側からの吐出量がVとなる。従って、片ロッド形液圧シリンダ7の受圧面積比(A/A)は、固定容量形液圧ポンプ1の吐出量比(V+V/V)と同等(A/A≒V+V/V)となる。
【0009】
片ロッド形液圧シリンダ7には、ピストン12の位置検出を行うためのリニアスケールやエンコーダ等を用いた位置検出センサ8が設けられており、この位置検出センサ8からの信号はコントローラ9へと送られる。
また、前記固定容量形液圧ポンプ1の第1ポート1aと片ロッド形液圧シリンダ7のヘッド側ポート7aとの間の流路及び前記固定容量形液圧ポンプ1の第2ポート1bと片ロッド形液圧シリンダ7のロッド側ポート7bとの間の流路には、並列に安全回路10が設けられ、この安全回路10の液圧を圧力検出器14a,14bにより検出してコントローラ9へと信号が送られる。
そして、コントローラ9は、前記位置検出センサ8及び圧力検出器12からの信号を受け取り、電動モータ6に必要な回転数を信号に変換して電動モータ6へ送る。尚、本実施の形態では、電動モータ6の回転数についても、モータ回転数検出器11を介してコントローラ9にフィードバックするようにしている。
【0010】
上記構成により、電動モータ6を正回転させて固定容量形液圧ポンプ1を駆動すると、固定容量形液圧ポンプ1は、第1ポート側1aから吐出量(V+V)の流体を吐出して、片ロッド形液圧シリンダ7のヘッド側ポート7aに供給される。供給された流体は、ピストン12を押圧して、ロッド13を介してロッド先端部13aから対象物に負荷を加える。その後、前記流体は、ロッド側ポート7bから排出される。排出された流体は、固定容量形液圧ポンプ1の第2ポート側1bから吸引される。
そして、ピストン12が所定の位置まで移動したことを位置検出センサ8により検出すると、コントローラ9からの信号に基づき電動モータ6が制御されてピストン12を減速停止する。このとき、ロッド先端部13aが外力により動くような場合には、位置検出センサ8が外力によるロッド13の移動を検知して、電動モータ6を正回転・逆回転することにより停止位置を保持するようにする。
次に、電動モータ6を逆回転させると、固定容量形液圧ポンプ1の第2ポート側1bから吐出量(V)の流体を吐出して、片ロッド形液圧シリンダ7のロッド側ポート7bに供給される。供給された流体は、ピストン12のロッド13側を押圧して、ロッド先端部13aを対象物から離れる方向に移動させる。その後、前記流体は、ヘッド側ポート7aから排出され、排出された流体は、固定容量形液圧ポンプ1の第1ポート側1aから吸引される。
そして、ピストン12が所定の位置まで移動したことを位置検出センサ8により検出すると、コントローラ9からの信号に基づき電動モータ6が制御されてピストン12を減速停止する。このとき、ロッド先端部13aが外力により動くような場合には、位置検出センサ8が外力によるロッド13の移動を検知して、電動モータ6を正回転・逆回転することにより停止位置を保持する。
このように、本発明では、固定容量液圧ポンプ1を正逆反転した場合の流体の吐出量比(V+V/V)が、片ロッド形液圧シリンダ7のピストン12のロッド13側とその反対側との受圧面積比(A/A)と同等となるようにしたことにより、吸入・排出用チェック弁、パイロットチェック弁を不要とし、更に、ピストン12の前進と後退とでバルブの切換も電気的ゲインの切換も不要とすることができ、片ロッド形液圧シリンダ7の制御性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の液圧駆動装置は、片ロッド形液圧シリンダを使用した駆動装置(縦型・横型を問わず)に適用することができる。特に、省エネルギで直線位置・出力・速度制御が必要な機械、例えば、プレス装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態のである液圧駆動装置の回路図
【符号の説明】
【0013】
1 固定容量形液圧ポンプ
1a 第1ポート
1b 第2ポート
2 ポンプ
3 ポンプ
4 フィルタ
5 変動油量吸収用作動油タンク
6 電動モータ
7 片ロッド形液圧シリンダ
7a ヘッド側ポート
7b ロッド側ポート
8 位置検出センサ
9 コントローラ
10 安全回路
11 モータ回転数検出器
12 ピストン
13 ロッド
14a 圧力検出器
14b 圧力検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片ロッド形液圧シリンダを固定容量液圧ポンプにより駆動する液圧駆動装置であって、前記固定容量液圧ポンプは、タンクに接続された第1の固定容量液圧ポンプと、正逆反転自在の第2の固定容量液圧ポンプとを備え、第2の固定容量液圧ポンプを正逆反転した場合における前記固定容量液圧ポンプからの流体の吐出量比を、前記片ロッド形液圧シリンダのピストンのロッド側とその反対側との受圧面積比と同等になるように構成したことを特徴とする液圧駆動装置。
【請求項2】
前記固定容量液圧ポンプは、回転速度・方向制御形モータにより駆動され、前記回転速度・方向制御形モータの制御は、前記片ロッド形液圧シリンダの前記ピストンの位置を検出するための位置検出器並びに前記片ロッド形液圧シリンダに供給及び/又は排出される流体の圧力を検出するための圧力検出器からの信号に基づいて行われることを特徴とする請求項1に記載の液圧駆動装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−194325(P2006−194325A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5560(P2005−5560)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(591005693)ボッシュ・レックスロス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】