説明

液晶セル

【課題】カラムナー液晶分子を含有するカラム状構造が一定方向に配向している液晶セルを提供する。
【解決手段】一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜1と、前記隙間に充填されたイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層2と、を含有し、前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、等方相温度域から等方相温度未満の温度へ急速に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、等方相温度域から等方相温度未満の温度へ徐々に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を形成する、液晶セル100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶セルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、液体と結晶の中間状態であり、液体の流動性と結晶の秩序を併せ持つ状態である。秩序のある構造をとりながらも動的な特性を持つ為、高機能な分子を設計する事ができる。光学特性を利用してディスプレイや各種光学素子、高強度を持った液晶性項高分子などとして利用されている。
液晶性を示す分子構造には、分子同士が相互作用を持つ棒状もしくは円盤状の剛直な分子構造の他に、1分子の中に親水性部分と疎水性を持つ両親媒性分子がある。後者は、その構造、分子間相互作用、親水基と疎水基との体積バランス等により、自己組織的にナノ相分離構造を有する、種々の液晶相を発現する。なかでもカラムナー相では、カラムナー液晶からなる1次元配向したカラム状構造が、配向方向に1軸的にイオン等の物質の輸送を行うことが期待されている。(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照。)
液晶は、通常状態では、ドメイン中では配向しているが、マクロスケールではランダム配向のポリドメイン構造を有する。しかし、実用化のためにはマクロ的に、液晶分子または液晶分子が集合して形成させる構造を、1方向へ配向させることが必要である。液晶の配向方法としてもっとも広く用いられているのは、ポリイミドなどの配向膜を1方向に擦るラビング法である。ラビング法では棒状液晶を配向させることはできるが、カラムナー液晶分子からなるカラム状構造を一方向に配向させた報告は無い。他の配向法として、SiO2などを斜めに蒸着する方法、偏光紫外線によって配向した高分子膜を利用する方法(非特許文献4、非特許文献5を参照。)、などが提案されているが、いずれの方法でもカラムナー液晶分子からなるカラム状構造を水平方向の特定方向へ配向(ホモジニアス配向)させた報告は無い。カラムナー液晶分子からなるカラム状構造は、基板に対して垂直方向に配向(ホメオトロピック配向)しやすい性質があるが、イオン伝導などをデバイスとして利用するにはホモジニアス配向させる必要がある。
【0003】
【非特許文献1】M.Yoshio,T.Mukai,H.Ohno,and T.Kato,J.Am.Chem.Soc.,126,994(2004).
【非特許文献2】M.Yoshio,T.Kagata,K.Hoshino,T.Mukai,H.Ohno,and T.Kato,J.Am.Chem.Soc.,128,5570(2006).
【非特許文献3】M.Yoshio,T.Ichikawa,H.Shimura,T.Kagata,A.Hamasaki,T.Mukai,H.Ohno,and T.Kato Bull.Chem.Soc.Jpn.80,1836(2007)
【非特許文献4】N.Kawatsuki,T.Kawakami,and T.Yamamoto,Adv.Mater.,13,1337(2001).
【非特許文献5】N.Kawatsuki,K.Goto,T.Kawakami,and T.Yamamoto,Macromolecules,35,706(2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カラムナー液晶分子を含有するカラム状構造が一定方向に配向している液晶セル、およびカラムナー液晶分子を含有するカラム状構造を一定方向に配向させる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、等方相のカラムナー液晶分子を光配向膜に接触させ、これを冷却することにより、当該カラムナー液晶分子を含有するカラム状構造を一定方向に配向させられることを見出し、さらなる検討の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の項1〜項10の発明を提供するものである。
[項1]
一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜と、
前記隙間に充填されたイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層と、
を含有し、
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、
等方相温度域から等方相温度未満の温度へ急速に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、
等方相温度域から等方相温度未満の温度へ徐々に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を形成する、
液晶セル。
[項2]
一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜と、
前記隙間に充填されたイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層と、
を含有し、
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物はカラム状構造を形成し、かつ、そのカラム軸は前記光配向膜に対してホモジニアス配向している、
液晶セル。
[項3]
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、
等方相温度域の温度まで加熱し、次いで等方相温度未満の温度へ急速に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、および
等方相温度域の温度まで加熱し、次いで等方相温度未満の温度へ徐々に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を再形成する、
上記[項2]記載の液晶セル。
[項4]
前記光配向性部が、
式(I)
【化1】

[式中、
jは、1〜12の整数を、
Xは、結合手、−CO−O−、−O−CO−、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、またはm−フェニレンを、
Yは、結合手、−O−、
【化2】

を、
Zは、アルコキシ基、アルキル基、
【化3】

を、
Rは、各出現において独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、またはオキソ基を、
n1は、0〜5の整数を、
n2は、0〜3の整数を表す。]
で示される基である、上記[項1]〜[項3]のいずれか1項に記載の液晶セル。
[項5]
前記光配向性部が、

【化4】

[式中、jは1〜12の整数を、Xは結合手、−CO−O−、−O−CO−、−N=N−、−C=C−またはm−フェニレンを、Rは、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または低級アルコキシ基を、n1は0〜5の整数を表す。]
で示される基である、上記[項4]記載の液晶セル。
[項6]
光配向膜が、エポキシ基、ビニルエーテル基、シアナート基、アクリレート基、およびメタクリレート基から選択される重合性部と前記光配向性部とを有するモノマーから形成される膜である上記[項1]〜[項5]のいずれか1項に記載の液晶セル。
[項7]
イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物が、親水性基と含フッ素疎水性基を有する扇形の両親媒性分子の塩であり、
前記親水性基は扇形の中心に位置し、および前記含フッ素疎水性基は扇形の孤に位置し、かつ
前記親水性基はカルボキシ基、水酸基、リン酸基、スルホ基、アミノ基、シアノ基、ポリオキシアルキレン基、イミダゾリウム基、または4級アンモニウム基である、
上記[項1]〜[項6]のいずれか1項に記載の液晶セル。
[項8]
前記親水性基は、イミダゾリウム基、または4級アンモニウム基である、
上記[項7]記載の液晶セル。
[項9]
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物が、

【化5】

[式中、mは0〜10の整数を表し、nは1〜12の整数を表し、nとmとの和は6〜20であり、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、X-はアニオンを表す。]
で示される化合物である上記[項1]〜[項8]のいずれか1項に記載の液晶セル。
[項10]
光配向膜の1以上の部分が有する光配向性部が一方向に配向している上記[項1]〜[項9]のいずれか1項に記載の液晶セル。
[項11]
(1)等方相温度域のイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を、一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、当該液晶配向部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜に接触させること、および
(2)前記等方相温度域のイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を等方相温度未満の温度へ冷却すること、
を含む、
イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を配向させる方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カラムナー液晶分子を含有するカラム状構造が一定方向に配向しており、イオン等の物質の輸送が可能な液晶セルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の液晶セルは、一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜と、
前記隙間に充填されたイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層と、
を含有する。
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、
等方相温度域から等方相温度未満の温度へ急速に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、
等方相温度域から等方相温度未満の温度へ徐々に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を形成する。
【0008】
本発明で用いられる光配向膜は、側鎖として光配向性部を有するポリマーから形成される膜である。前記ポリマーは、重合性部と光配向性部とを有するモノマーが重合して形成され、当該ポリマーは、側鎖として光配向性部を有する。また、前記膜において、前記光配向性部は、部分的または全体的に、一方向に配向している。
【0009】
前記モノマーの光配向性部は、好ましくは、
式(I)
【化6】

[式中、
jは、1〜12の整数を、
Xは、結合手、−CO−O−、−O−CO−、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、またはm−フェニレンを、
Yは、結合手、−O−、
【化7】

を、
Zは、アルコキシ基、アルキル基、
【化8】

を、
Rは、各出現において独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、またはオキソ基を、
n1は、0〜5の整数を、
n2は、0〜3の整数を表す。]
で示される基である。
【0010】
前記モノマーの光配向性部は、より好ましくは、
【化9】

[式中、jは1〜12の整数を、Xは結合手、−CO−O−、−O−CO−、−N=N−、−C=C−またはm−フェニレンを、Rは、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または低級アルコキシ基を、n1は0〜5の整数を表す。]
で示される基である。
【0011】
中でも、式2
【化10】

で表される基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。
本明細書中、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびノニル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、低級アルキル基としては、例えば、この中の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0012】
本明細書中、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、iso-プロポキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、ネオペンチルオキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、シクロヘキシルオキシ、1,3-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,4-ジメチルペンチルオキシ、1-エチル-3-メチルブトキシ、3-メチル-1-iso-プロピルブトキシ、1-t-ブチル-2-メチルプロポキシ、2、4-ジメチル-3-プロポキシ、2-メチルペンチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ等の炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられ、低級アルコキシ基としては、例えば、この中の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0013】
前記モノマーの重合性部は、好ましくは、エポキシ基、ビニルエーテル基、およびシアナート基、アクリレート基、およびメタクリレート基である。なかでも、光重合または熱重合が可能なアクリレート基、およびメタクリレート基が好ましい。
【0014】
式(I)で示される基を有するポリマーは、例えば、特開2000−212310号公報、または特開2002−226858号公報等に記載の方法、またはこれに準じる方法によって、合成することができる。
【0015】
本発明で用いられる、一方向に配向した光配向性部を有する光配向膜は、上記のようなポリマーの溶液を基板上に塗布(スピンコートないしキャスト)した膜を形成後、カラムナー液晶を含有するカラム状構造を配向させたい方向に対し垂直方向である偏光した偏光紫外線を照射し、加熱処理を行うことで膜内のポリマーの分子配向を誘起することができる。
また、別法として、上記のようなモノマーを溶剤に溶かして慣用の方法により製膜し、
得られた膜(フィルム)に偏光紫外光を照射してもよい。
ここで、部分的に膜をマスキングして偏光紫外線を照射することにより、所望する1以上の部分の光配向性部のみが一方向に配向している光配向膜を形成することができる。
【0016】
本発明で用いられるイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、親水性基と含フッ素疎水性基を有する両親媒性分子の塩である。当該分子は、図1に示すような扇形の分子であり、前記親水性基は扇形の中心に位置し、および前記含フッ素疎水性基は扇形の孤に位置する。このような扇形の分子としては、例えば、分子内のベンゼン環に複数個(好ましくは、2〜3個)の鎖状の含フッ素有機基が結合した構造を持つものが好ましい。このような鎖状の含フッ素有機基としては、含フッ素アルキル基を含有する基が好ましい。含フッ素有機基は、フッ素原子の存在により、疎水性が増し、液晶構造がより安定化される。
当該親水性基は好ましくは、例えば、カルボキシ基、水酸基、リン酸基、スルホ基、アミノ基、シアノ基、ポリオキシアルキレン基、イミダゾリウム基、または4級アンモニウム基である。なかでも好ましくは、イミダゾリウム基、または4級アンモニウム基である。
当該両親媒性分子の塩は、好ましくは、常温で液体であり、具体的には例えば、Cl、Br、BF4、PF6、CF3SO3、および(CF3SO22Nとの塩が好ましい。
【0017】
本発明で用いられるイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、具体的に好ましくは、
式3
【化11】

[式中、mは0〜10の整数を表し、nは1〜12の整数を表し、nとmとの和は6〜20であり、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、X-はアニオンを表す。]
で示される化合物である。
当該化合物として好ましくは、例えば、
(1)mが4であり、かつnが6〜12の化合物、
(2)nとmの和が12であり、かつnが6〜12の化合物、
(3)nとmの和が8〜18である化合物
である。
-で示されるアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、BF4-、PF6-、[CF3SO3-、および[(CF3SO22N]-が好ましい。
【0018】
式3の化合物は、例えば、M.Yoshio,T.Mukai,H.Ohno,and T.Kato,J.Am.Chem.Soc.,126,994(2004)等に記載の方法等の公知の方法、またはこれに準じる方法によって、合成することができる。
「イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層」は、「イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物」の1種を含有していてもよく、2種以上の混合物を含有していてもよい。また、「イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層」は、他の液晶化合物および添加剤を含有していてもよい。
このような他の液晶化合物および添加剤は、イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物の配向を妨げないものであれば、特に限定されるものではなく、他の液晶化合物としては、例えば類似のイオン性扇状カラムナー液晶化合物(例、1-methyl-3-[3,4,5-tris(alkyloxy)benzyl]imidazolium tetrafluoroborates)、イオン性液晶などが挙げられ、一方、添加剤としては、例えばイオン性化合物、微粒子、色素、イオン液体などが挙げられる。
【0019】
本発明の液晶セルは、一対の前記光配向膜を、所定の幅(好ましくは、2〜25μm)の隙間をあけて、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように配置し、
当該隙間に、等方相温度域の温度のイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を充填し、
ついで、イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を等方相温度域の温度へ冷却することにより得られる。
等方相のイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、前記光配向膜に接触しつつ、等方相温度未満の温度へ冷却されることにより、当該液晶化合物は、一定方向に配向したカラム状構造物を形成する。
所定の幅の隙間を空けて一対の前記光配向膜を配置するには、液晶セルの製造に汎用されている適当なサイズのスペーサーを用いればよい。一対の前記光配向膜は、液晶セルの製造に汎用されているシール剤で張り合わせることができる。
図2に本発明の液晶セルの一態様の概要を示す。
ここで、急速に冷却した場合(例、10℃/min以上)は、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、一方、徐々に冷却した場合(例、10℃/min未満、好ましくは3℃/min以下、より好ましくは1℃/min以下)は、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を形成する。
【0020】
ここで、イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を、等方相温度域の温度まで再度加熱することにより当該液晶化合物は等方相を示し、上記のように等方相温度未満の温度へ冷却する速度に応じて、異なる配向を示す。
これにより、当該液晶化合物の配向方向を変化させることができる。
【0021】
また、このようにして前記液晶化合物が配向するのは、一対の光配向膜における、前記光配向性部の配向方向が互いに平行である部分に挟まれた範囲のみであるので、前記のように、配向膜における所望する部分のみの光配向性部を一方向に配向させることにより、その部分の液晶化合物のみが配向するように、液晶セルを設計することができる。
本発明の液晶セルは、イオンの移動方向を微細に制御できる。したがって、例えば、デバイス上に微細な電池、キャパシター、および色素増感太陽電池等に利用できる。
【実施例】
【0022】
[合成例1:含フッ素カラムナー液晶の合成]
化合物1 1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩
ブテン酸 10.0g、ヘキサン 120ml、(Ph3P)4Pd(0) 2.56gを200mlフラスコに入れた。0℃まで冷却してC817I 63.3gを5分間かけて加えた。25℃で8時間撹拌した後、固体をろ別、酢酸エチルとクロロホルムで洗浄した。ろ液を回収して溶媒を留去、真空引きにより60.4gの2H,2H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−3−ヨードドデカン酸の固体を得た。個体には原料のブテン酸も含まれていたが、そのまま次の反応を行った。
化合物の同定はプロトンNMRで行った。1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=4.57(1H,m,CHI),3.27(1H,dd,J=17.6Hz,4.8Hz),3.14(1H,dd,J=17.6Hz,8.4Hz),2.88−3.02(2H,m)
LiAlH4 5.47gと脱水THF 50mlを滴下ロートと還流管を備えた200mlフラスコに加え、窒素雰囲気下、上記で得られた2H,2H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−3−ヨードドデカン酸 27.7gの脱水THF 30ml溶液を還流がかかる速さで滴下、その後さらに過熱により30分還流させた。氷浴で冷やしながらエタノールを滴下して反応をクエンチ、CHCl3で抽出、5%塩酸、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去、減圧蒸留により15.1gの1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノールの白色結晶を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=3.71(2H,t,J=5.6Hz,CH2OH),2.07−2.17(2H,m),1.65−1.75(4H,m),1.54(1H,s)
上記で得られた1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノール 13.1g、48%臭化水素酸 25.5g、Aliquat 336 0.8gを還流管を備えた100mlフラスコに加え、31時間加熱還流を行った。クロロホルムで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗い、硫酸マグネシウムで乾燥。溶媒留去、減圧蒸留により13.9gの1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロドデシルブロミドの針状結晶を得た。収率は94%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=3.44(2H,t,J=6.4Hz,CH2Br),2.04−2.18(2H,m),1.92−2.00(2H,m),1.75−1.93(2H,m)
【0023】
上記で得られた1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロドデシルブロミド 10.5g、没食子酸メチルエステル 1.0g、炭酸カリウム 4.5g、脱水DMF 15mlを100mlのフラスコに加え、アルゴン雰囲気下80℃で8時間加熱撹拌を行った。酢酸エチルで抽出、水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥。溶媒留去後、アセトンによる再結晶を2回行い、8.1gの3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)安息香酸メチルの固体を得た。収率は93%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.28(2H,s,Ar−H),4.07(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),4.02(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.90(3H,s,CO2CH3),2.11−2.19(6H,m),1.83−1.94(12H,m)
【0024】
LiAlH4 0.24gと脱水THF 7mlを、滴下ロートを備えた100mlフラスコに加え、窒素雰囲気下、上記で得られた3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)安息香酸メチル 5.0gの脱水THF 13ml溶液を氷浴冷却下滴下した。25℃で3時間撹拌した後、少量のエタノールを滴下し反応をクエンチした。クロロホルムで抽出、5%塩酸、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥。溶媒留去、真空乾燥により5.0gの3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジルアルコールの固体を得た。収率は100%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.59(2H,s,Ar−H),4.62(2H,d,J=6.0Hz,ArCH2),4.03(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.95(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),2.11−2.19(6H,m),1.83−1.94(12H,m)
【0025】
上記で得られた3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジルアルコール 1.5g、クロロホルム 40mlを100mlフラスコに加え、25℃で塩化チオニル 0.7gを滴下した。3時間撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と振り、硫酸マグネシウムで乾燥。溶媒留去、真空乾燥により1.46gの3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジルクロリドの固体を得た。収率は95%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.60(2H,s,Ar−H),4.52(2H,s,ArCH2),4.03(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.95(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),2.11−2.17(6H,m),1.82−1.91(12H,m)
【0026】
上記で得られた3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジルクロリド 1.10g、1−メチルイミダゾール 0.36g、トルエン 1mlを10mlフラスコに加え、80℃で8時間加熱撹拌を行い、80℃のまま真空引きによりトルエンと1−メチルイミダゾールを留去した。活性アルミナによるカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム→クロロホルム:メタノール 4:1)により1.17gの1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムクロリドを得た。収率は99%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=11.20(1H,s,Im−H),7.15(1H,s,Im−H),7.10(1H,s,Im−H),6.80(2H,s,Ar−H),5.46(2H,s,ArCH2),4.04−4.06(7H,s+t,NCH3,OCH2),3.94(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),2.11−2.18(6H,m),1.81−1.90(12H,m)
【0027】
上記で得られた1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムクロリド 0.60g、メタノール 5ml、クロロホルム 5mlを30mlフラスコに加え、AgBF4 0.12gのメタノール 2ml溶液を25℃で滴下した。2時間撹拌後、析出固体をろ別し溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム→クロロホルム:メタノール 20:1)により、0.52gの標題化合物を得た。収率は84%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3+S−316):δ=8.90(1H,s,Im−H),7.23(1H,s,Im−H),7.14(1H,s,Im−H),6.72(2H,s,Ar−H),5.22(2H,s,ArCH2),4.03(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.95(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.91(3H,s,NCH3),2.11−2.19(6H,m),1.81−1.90(12H,m)
【0028】
[合成例2:含フッ素カラムナー液晶の合成]
化合物2 1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムヘキサフルオロリン酸塩
合成例1で得られた1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムクロリド 0.10g、メタノール 1ml、クロロホルム 1mlを10ml反応管に加え、KPF6 0.1gのメタノール 1ml溶液を25℃で滴下した。24時間撹拌後、析出固体をろ別し溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム→クロロホルム:メタノール 20:1)により、0.06gの標題化合物を得た。収率は56%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3+S−316):δ=8.64(1H,s,Im−H),7.16(1H,s,Im−H),7.13(1H,s,Im−H),6.67(2H,s,Ar−H),5.16(2H,s,ArCH2),4.03(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.96(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.89(3H,s,NCH3),2.11−2.19(6H,m),1.81−1.90(12H,m)
【0029】
[合成例3:含フッ素カラムナー液晶の合成]
化合物3 1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸塩
化合物2の合成と同じ手順で行い、1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムクロリド 0.10g、LiCF3SO3 0.1gから0.07gの標題化合物を得た。収率は65%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3+S−316):δ=9.31(1H,s,Im−H),7.25(1H,s,Im−H),7.13(1H,s,Im−H),6.64(2H,s,Ar−H),5.27(2H,s,ArCH2),4.04(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.95(5H,s+t,NCH3,OCH2),2.11−2.19(6H,m),1.82−1.88(12H,m)
【0030】
[合成例4:含フッ素カラムナー液晶の合成]
化合物4 1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
化合物2の合成と同じ手順で行い、1−メチル−3−[3,4,5−トリス(1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロ−1−ドデカノキシ)ベンジル]イミダゾリウムクロリド 0.10g、Li(CF3SO22N 0.1gから0.10gの標題化合物を得た。収率は87%であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3+S−316):δ=9.00(1H,s,Im−H),7.19(1H,s,Im−H),7.15(1H,s,Im−H),6.68(2H,s,Ar−H),5.25(2H,s,ArCH2),4.03(4H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.97(2H,t,J=6.0Hz,OCH2),3.96(3H,s,NCH3),2.11−2.19(6H,m),1.82−1.91(12H,m)
【0031】
[合成例5:非フッ素カラムナー液晶の合成]
比較例として用いるために、J.Am.Chem.Soc.,126,994(2004).(T.Kato et al.)に記載の方法に従い、次式で表される非フッ素カラムナー液晶を合成した。
【化12】

【0032】
[合成例6:光配向させた高分子液晶膜の作製]
2mgのポリ{6−[4’−(4−メトキシシンナモイロキシ)ビフェニル−4−イロキ
シ]ヘキシルメタクリレート}(数平均分子量:Mn=1.1×104、重量平均分子量:Mw=3.0×104;分子量及び分子量分布は液体クロマトグラフィーシステム(TOSOH SC−8020)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、分子量は、ポリスチレン標準で計算した。)を、塩化メチレン溶液1gに溶解させ、石英基板上に2段階の条件、第1条件(500rpm、10 秒)、および第2条件(1500rpm、40s))で、スピンキャスト膜(膜厚:約 50 nm)を作製した。
この膜に直線偏光紫外光を照射することによって、偏光の電界振動方向に対して平行に吸収長軸を有する光反応部位を選択的に光架橋反応させた。直線偏光紫外光照射には、290 nm以下の波長をカットするガラスフィルターとグランテーラープリズムを備えた超高圧水銀ランプUSHIO SPOT CURE MODEL UIS−25102を用い、光強度150mW/cm2(365nm)の偏光光を室温でフィルムに照射した。
次に、露光した膜をLinkam TH−600 PM Hot Stageを用いて液晶温度150℃で10 分間、熱処理することで再配向を誘起した。加熱後、配向を固定するため、直ちに室温まで急冷した。
【0033】
[実施例1:液晶セル]
合成例6で作製した高分子液晶膜を2枚用意し、12.5μmのポリイミドスペーサーを一対挟み、塗布面を向き合わせて配置し、ガラス基板間に合成例1〜4で合成した各カラムナー液晶を等方相温度である80℃で注入してパラレル型液晶セルを作製した。このように作製した液晶セルを偏光顕微鏡(OLYMPUS社、BX51)で観察するとカラムナー液晶が良好に配向していることが確認された。
等方相からの冷却時に、加熱後直ちに室温の金属板上に置くことにより、急冷した場合では水平配向が得られ、そのカラム軸の配向方向は膜の偏光照射の電界振動方向に垂直であった(図3参照)。それに対し、徐冷した場合(0.1oC/min)、カラム軸の配向方向は基板に対し垂直配向(図4参照)となり、等方相温度以上での加熱と冷却速度の調整により、可逆的に水平配向と垂直配向を誘起することができた。
【0034】
[実施例2:パターン形成]
合成例6の紫外光の照射工程において、フォトマスクを利用して高分子液晶膜上に露光部、未露光部のパターン化処理を行った後、同様に熱処理工程、カラムナー液晶の配向制御工程を行った。偏光顕微鏡観察によりカラムナー液晶を観察したところ、カラムナー液晶の配向制御工程で加熱後に急冷した場合では、露光部と未露光部の違いによって、露光部のみが水平配向となるため、カラムナー液晶の配向した領域とポリドメイン領域のパターンが形成された(図5参照)。
一方、徐冷した場合には、露光部、未露光部に関わらず基板に垂直な方向状態が得られた。
【0035】
[比較例1:非フッ素カラムナー液晶を用いた液晶セル]
実施例1と同様にして、合成例5で合成した非フッ素カラムナー液晶を用いて液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、実施例1と同じ条件で徐冷および急冷した場合、いずれの場合にもホメオトロピック配向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の液晶セルは、イオンの移動方向を微細に制御できる。したがって、例えば、デバイス上に微細な電池、キャパシター、および色素増感太陽電池等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物の扇形形状を示す概略図
【図2】本発明の液晶セルの一態様の側面の断面図
【図3】急冷した場合の偏光顕微鏡写真
【図4】徐冷した場合の偏光顕微鏡写真とコノスコープ像
【図5】パターニングされたカラムナー液晶の偏光顕微鏡写真
【符号の説明】
【0038】
100 液晶セル
1 一方向に配向した光配向性部を有する光配向膜
2 イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層
3 シール剤
4 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜と、
前記隙間に充填されたイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層と、
を含有し、
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、
等方相温度域から等方相温度未満の温度へ急速に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、
等方相温度域から等方相温度未満の温度へ徐々に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を形成する、
液晶セル。
【請求項2】
一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、前記光配向性部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜と、
前記隙間に充填されたイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を含有する層と、
を含有し、
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物はカラム状構造を形成し、かつ、そのカラム軸は前記光配向膜に対してホモジニアス配向している、
液晶セル。
【請求項3】
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物は、
等方相温度域の温度まで加熱し、次いで等方相温度未満の温度へ急速に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホモジニアス配向しているカラム状構造を形成し、および
等方相温度域の温度まで加熱し、次いで等方相温度未満の温度へ徐々に冷却した場合には、カラム軸が前記光配向膜に対してホメオトロピック配向しているカラム状構造を再形成する、
請求項2記載の液晶セル。
【請求項4】
前記光配向性部が、
式(I)
【化1】

[式中、
jは、1〜12の整数を、
Xは、結合手、−CO−O−、−O−CO−、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、またはm−フェニレンを、
Yは、結合手、−O−、
【化2】

を、
Zは、アルコキシ基、アルキル基、
【化3】

を、
Rは、各出現において独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、またはオキソ基を、
n1は、0〜5の整数を、
n2は、0〜3の整数を表す。]
で示される基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項5】
前記光配向性部が、

【化4】

[式中、jは1〜12の整数を、Xは結合手、−CO−O−、−O−CO−、−N=N−、−C=C−またはm−フェニレンを、Rは、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または低級アルコキシ基を、n1は0〜5の整数を表す。]
で示される基である、請求項4記載の液晶セル。
【請求項6】
光配向膜が、エポキシ基、ビニルエーテル基、シアナート基、アクリレート基、およびメタクリレート基から選択される重合性部と前記光配向性部とを有するモノマーから形成される膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項7】
イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物が、親水性基と含フッ素疎水性基を有する扇形の両親媒性分子の塩であり、
前記親水性基は扇形の中心に位置し、および前記含フッ素疎水性基は扇形の孤に位置し、かつ
前記親水性基はカルボキシ基、水酸基、リン酸基、スルホ基、アミノ基、シアノ基、ポリオキシアルキレン基、イミダゾリウム基、または4級アンモニウム基である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項8】
前記親水性基は、イミダゾリウム基、または4級アンモニウム基である、
請求項7記載の液晶セル。
【請求項9】
前記イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物が、

【化5】

[式中、mは0〜10の整数を表し、nは1〜12の整数を表し、nとmとの和は6〜20であり、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、X-はアニオンを表す。]
で示される化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項10】
光配向膜の1以上の部分が有する光配向性部が一方向に配向している請求項1〜9のいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項11】
(1)等方相温度域のイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を、一方向に配向した光配向性部を有する一対の光配向膜であって、当該液晶配向部の配向方向が互いに平行になるように隙間を空けて配置された一対の光配向膜に接触させること、および
(2)前記等方相温度域のイオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を等方相温度未満の温度へ冷却すること、
を含む、
イオン性サーモトロピックカラムナー含フッ素液晶化合物を配向させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−60973(P2010−60973A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228018(P2008−228018)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】