説明

液晶ディスプレイ用駆動回路

【課題】所望の輝度が提供されるように液晶セルを短時間で駆動させる。
【解決手段】液晶セルは、最低レベルと最高レベルとの間で変動する映像信号レベルにより充電される。共通線が第1のレベルを有する場合、最低レベルは第1のレベル、最高レベルは第2のレベルとされ、共通線が第2のレベルを有する場合、最低レベルは第2のレベル、最高レベルは第2のレベルとされる。信号線のうち少なくとも何本かは、最高レベルにより駆動され、それら信号線のうち少なくとも何本かにおける電圧は、この電圧が、最低レベルと最高レベルの中間点である所定の目標値に達すると、信号線のうち少なくとも何本かに対する駆動が停止されるように監視される。制御回路は、液晶セルがビデオ信号レベルに従って充電される前に、これらの液晶セルを、最高レベルにより、監視される電圧が所定の目標値に達するまでプリチャージするように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ用駆動回路、この駆動回路を有する液晶モジュール、及び液晶ディスプレイの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶セルが、一方向において複数の信号線を共有し、垂直方向においてゲート線により選択的にイネーブルされる、液晶セルの2次元アレイを用いる液晶ディスプレイが知られている。液晶ディスプレイには、ゲート線を用いて液晶セルの各セットをイネーブルする駆動回路が設けられる。そして、このイネーブルされたセルに信号線により映像信号レベルが供給され、このセルが所望の輝度となるのに必要なレベルにまで充電される。
【0003】
通常、液晶セルがグループにまとめられることで、画像画素が形成される。典型的には、各画像画素は、赤、緑、青にそれぞれ対応する3つの液晶セルを有する。画素の赤、緑及び青の液晶セルは、同じゲート線上に供給され、同じ映像信号によって駆動することができる。具体的には、画素のすべての液晶セルをイネーブルするゲート線を用いて、まず赤の液晶セルに映像信号が信号線によって供給され、次に緑の液晶セルに映像信号が信号線によって供給され、最後に青の液晶セルに映像信号が信号線によって供給される。したがって、映像信号は、赤の液晶セルに必要とされる信号、緑の液晶セルに必要とされる信号、及び青の液晶セルに必要とされる信号にそれぞれ対応する3つの連続した部分に分割されることが理解されるであろう。
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0160404号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0006955号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造を容易にするために、液晶ディスプレイセルと同じガラス基板上に駆動回路を形成することが望ましい。液晶ディスプレイ及び駆動回路の形成を同時に行うために、低温ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor)を用いることが周知である。
【0006】
本願では、例えば−30℃程度の低温において液晶ディスプレイモジュールを利用可能とすることが望ましいと認識している。しかしながら、このような低温では、液晶の移動速度が低速となる。したがって、液晶セルに映像信号を印加するために利用できる短い時間内では、これらのセルの液晶が所望の輝度を実現するために十分な移動をすることができないという問題がある。複数の異なる色に対応する液晶セルが、1回のゲート駆動パルス中に連続して駆動される場合、駆動すべき最初の液晶セルは、液晶が移動することができるゲートパルス期間のほぼ全体を利用できるのに対し、駆動すべき最後の液晶セルは、液晶が移動することができるゲートパルス期間の3分の1のみしか利用できなくなってしまうことが理解されるであろう。したがって、低温では、液晶ディスプレイの色のバランスが悪くなるおそれがある。
【0007】
また、低温において液晶セルを駆動するために、液晶ディスプレイと同じ基板上に適切な回路を設ける際にも問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、共通線に接続された液晶セルのアレイと、前記液晶セルの各セットを選択的にイネーブルするようにそれぞれ構成された複数のゲート線と、前記セットの各液晶セルにそれぞれ接続され、当該セットが前記複数のゲート線によりイネーブルされるときに、当該セットの各液晶セルに充電するために用いられ得る複数の信号線とを有する液晶ディスプレイの駆動方法が提供される。
当該駆動方法は、前記共通線を、第1のレベル及び第2のレベルのうちの一方を選択的に有する共通信号により駆動し、前記ゲート線を、前記液晶セルの前記各セットを選択的にイネーブルするように駆動し、前記共通信号が前記第1のレベルを有する場合、最低レベルを前記第1のレベル、最高レベルを前記第2のレベルとし、前記共通信号が前記第2のレベルを有する場合、前記最低レベルを前記第2のレベル、前記最高レベルを前記第1のレベルとして、前記液晶セルを、前記最低レベルと前記最高レベルとの間で変化する映像信号レベルに基づいて充電し、前記液晶セルを前記映像信号レベルに基づいて充電するのに先立って、前記信号線のうち少なくとも何本かを前記最高レベルにより駆動することによって、前記信号線のうち少なくとも何本かに接続された液晶セルをプリチャージし、前記信号線のうち少なくとも何本かにおける電圧を監視し、当該監視される電圧が、前記最低レベルと前記最高レベルの中間である所定の目標値に到達すると、前記信号線のうち少なくとも何本かを前記最高レベルにより駆動するのを停止する。
【0009】
また、本発明の一実施形態によれば、共通線に接続された液晶セルのアレイと、前記液晶セルの各セットを選択的にイネーブルするようにそれぞれ構成された複数のゲート線と、前記セットの各液晶セルにそれぞれ接続され、当該セットが前記複数のゲート線によりイネーブルされるときに、当該セットの各液晶セルに充電するために用いられ得る複数の信号線とを有する液晶ディスプレイモジュール用駆動回路も提供される。
当該駆動回路は、前記共通線を、第1のレベル及び第2のレベルのうちの一方を選択的に有する共通信号により駆動するように構成された共通出力部と、前記ゲート線を、前記液晶セルの前記各セットを選択的にイネーブルするように駆動するように構成された複数のゲート出力部と、前記液晶セルに、最低レベルと最高レベルとの間で変化する映像信号レベルにより充電するように構成され、前記共通信号が前記第1のレベルを有する場合、前記最低レベルを前記第1のレベル、前記最高レベルを前記第2のレベルとし、前記共通信号が前記第2のレベルを有する場合、前記最低レベルを前記第2のレベル、前記最高レベルを前記第1のレベルとする複数の信号出力部と、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記最高レベルにより選択的に駆動するように構成されたスイッチ回路と、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかにおける電圧を監視し、当該監視される電圧が、前記最低レベルと前記最高レベルの中間である所定の目標値に到達すると、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記最高レベルにより駆動するのを停止するように前記スイッチ回路を制御するように構成された監視回路と、前記映像信号に応じた前記映像信号レベルによる前記液晶セルへの充電に先立って、前記スイッチ回路を前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかに対して動作させることにより、前記液晶セルをプリチャージするように構成された制御回路とを具備する。
【0010】
このようにして設けられた駆動回路により、液晶セルを中間レベル、好ましくは最低レベルと最高レベルとの間の中間点にまでプリチャージすることが可能である。これらのプリチャージされた液晶セルに実際の映像信号レベルが供給されるとき、これらのセルの液晶は既に一部移動しているので、短い時間内で、所望の輝度が提供されるように液晶を移動させることがより容易となる。さらに、中間レベル自体を生成するのに駆動回路は必要とされないので、駆動回路を液晶ディスプレイと同じ基板上に簡単に製造することが可能である。液晶ディスプレイの信号線及び液晶セルは、本質的にいくらかの静電容量を有するため、信号出力部を最高レベルにより駆動しても、この信号出力部及び信号線における電圧レベルが即座に最高レベルになるわけではない。その代わり、電圧レベルは時間の経過と共に急速に上昇する。監視回路は、この上昇を監視し、スイッチ回路に、最高レベルに達した電圧を、関連する信号出力から切断させる。
【0011】
好適な実施形態では、液晶ディスプレイが形成された基板によって、共通線が設けられる。液晶セルは、ゲート線が例えば水平方向に配列され、信号線が例えば垂直方向に配列された2次元アレイとして構成される。1本のゲート線が、ゲートパルスにより液晶セルの各セットをイネーブルすると想定すると、そのセットにおける液晶セルが複数の異なる色に対応する液晶セルである場合、そのゲートパルスにより後から駆動されるべき液晶セルにプリチャージを印加すればよい。したがって、スイッチ回路は、信号出力のうち少なくともいくらかを最大レベルにより駆動するだけでよく、監視回路も同様に、それらの信号出力を監視するだけでよい。
【0012】
液晶ディスプレイでは、連続したフレームにおける同じ液晶セルを逆の極性で駆動することが望ましいため、共通信号は、第1のレベル又は第2のレベルのいずれかを選択的に有する。したがって、駆動回路は、液晶セルのアレイを連続して用いる場合、共通信号を第1のレベル及び第2のレベルの間で交互に変更するように構成されることが好ましい。これにより、共通信号は、ゲート線のうちの1本が液晶セルの各セットをイネーブルするために用いられるとき、第1のレベル及び第2のレベルのうち、このゲート線のうちの1本が液晶セルの各セットをイネーブルするために前回用いられたときのレベルとは異なる方のレベルを有することになる。
【0013】
液晶セルは、1つのフレームについて、共通信号の第1のレベルに基づく正の極性により駆動され得る。したがって、液晶セルの映像信号レベルは、第1のレベルに対応する最低レベルと、第2のレベルに対応する最高レベルとの間のどこかに位置する。次のフレームについては、共通信号は第2のレベル、例えば上記第1のレベルよりも正の方向に高いレベルに変更され、同じ液晶セルが、負の極性により駆動される。したがって、映像信号は、第2のレベルに対応する最低レベルから、第1のレベルに対応する最高レベルまで、負の方向に供給される。
【0014】
映像ディスプレイの隣り合う線の場合も、逆の極性で駆動することが望ましい。したがって、液晶セルの各セットが並んで配置されている液晶ディスプレイモジュールの場合、駆動回路は、複数のゲート出力を用いて、液晶セルの隣り合うセットを逐次連続してイネーブルし、液晶セルの隣り合うセットに対する共通信号を第1のレベルと第2のレベルとの間で交互に変更するように構成されることが望ましい。
【0015】
このように、液晶ディスプレイの、1つのセットに対応する1本の線は、正の極性により第1のレベルで駆動され、一方、その線/セットに隣接する1本又は2本の線/セットは、負の極性により第2のレベルで駆動されることになる。
【0016】
好ましくは、スイッチ回路、及び信号出力部のうち少なくともいくつかに対して、監視回路が接続される。そして、監視回路は、監視される電圧と、所定の目標値とを比較し、監視される電圧が所定の目標値に等しくなるときを判断することができる。監視される電圧が所定の目標値と等しいとき、監視回路は、出力信号をスイッチ回路に送信して、スイッチ回路が、出力部のうち少なくともいくつかを最大レベルで駆動するのを停止するように制御することができる。
【0017】
このように、映像信号による液晶セルのセットの駆動に先立って、駆動回路は単に、スイッチ回路を用いて適当な信号出力部を最大レベルにより駆動することができる。その後、監視回路は、スイッチ回路の動作を自動的に停止させるので、関連する信号線及びそれらに関連付けられた液晶セルは、適当な所定の目標値までプリチャージされる。
【0018】
好ましくは、スイッチ回路は、信号出力部のうち少なくともいくつかを第1のレベルに選択的に接続するように構成された第1のスイッチと、信号出力部のうち少なくともいくつかを第2のレベルに選択的に接続するように構成された第2のスイッチとを有する。そして、スイッチ回路は、第1のスイッチ及び第2のスイッチを制御することができる。具体的には、最高レベルが第2のレベルに対応する場合、第1のスイッチは、信号出力部を第1のレベルに接続しないが、第2のスイッチは、信号出力部を第2のレベルに接続する。同様に、最高レベルが第1のレベルに対応する場合、第2のスイッチは、信号出力部を第2のレベルに接続しないが、第1のスイッチは、信号出力部を第1のレベルに接続する。
【0019】
したがって、スイッチ回路は、共通信号が第1のレベルを有する場合、信号出力部のうち少なくともいくつかを第2のレベルに接続するように第2のスイッチを制御し、共通信号が第2のレベルを有する場合、信号出力部のうち少なくともいくつかを第1のレベルに接続するように第1のスイッチを制御することが好ましい。
【0020】
スイッチ回路が、どちらのスイッチを用いるかを首尾良く判断出来るようにするために、スイッチ回路は、共通信号が第1のレベル及び第2のレベルのどちらを有するかを示す極性信号を受信するように構成された入力部を有してもよい。
【0021】
このようにして、スイッチ回路は、極性信号に基づいて、第1のスイッチ及び第2のスイッチを必要に応じて制御することができる。
【0022】
駆動回路は、各セットにおける液晶セルが複数のグループとして構成され、その各グループが、表示画素を構成するとともに、対応する複数の色を生成可能な複数の液晶セルからなるような液晶ディスプレイモジュールにとって特に有用である。この場合、駆動回路は、各信号出力部を用いて、各グループの複数の液晶セルを、共通映像信号により連続的に充電するように構成されてもよい。したがって、特定のグループ内(同様に、その他すべての個々のグループ内)では、各液晶セルが今度は共通映像信号により駆動される。これを行うために、共通映像信号は、液晶セルの各信号線に連続的に接続されてもよい。同時に、駆動回路は、各信号出力部を用いて、液晶セルのセットにおける液晶セルの複数のグループすべてを、複数の各映像信号により充電することが好ましい。したがって、各グループには、各グループ内の各液晶セルに供給すべき信号成分を有するそれぞれの映像信号が供給される。
【0023】
したがって、信号出力部のうち少なくともいくつかは、液晶セルのセットにおける複数の各グループのうち、少なくとも、充電すべき最後の液晶セルを充電するために必要とされるものである。
【0024】
各グループ内には、順次充電すべき複数の液晶セルが存在する。上述のように、充電すべき最後の液晶セルは、そのセルの液晶を移動させるために利用できる時間が最も少ない。したがって、本発明の一実施形態では、すべてのグループのこれら最後の液晶セルのみがプリチャージされる。
【0025】
別の実施形態では、グループ内の、充電すべき最初の液晶セル以外のすべての液晶セルをプリチャージすることが可能である。したがって、信号出力部のうちの少なくともいくつかは、液晶セルのセットにおける複数の各グループのうち、充電すべき2番目以降の液晶セルを充電するためのものである。
【0026】
勿論、いくつかの実施形態では、このプリチャージ方法をセットにおけるすべての液晶セルに適用することも可能である。しかし、グループの最初の液晶セルをプリチャージしない場合、制御回路は、駆動回路が複数の信号出力部のうちの各信号出力部を用いて、液晶セルのセットにおける複数の各グループのうち、充電すべき最初の液晶セルを映像信号により充電するのと同時に、スイッチ回路を動作させることができる。
【0027】
このように、ゲート線によるイネーブル中、プリチャージのために更なる時間を設ける必要はない。映像信号がグループの最初の液晶セルに書き込まれると同時に、そのグループ内の2番目以降の液晶セルをプリチャージすることにより、2番目以降の液晶セルは、プリチャージの利点を利用することができ、且つ、最初の液晶セルは依然として、液晶が移動できるゲートイネーブル時間を十分に利用することができる。
【0028】
上記で検討されたプリチャージ構成に加え、信号出力部を最低レベルにより選択的に駆動するプリチャージ回路を設けることも可能である。制御回路は、駆動回路が、各セットにおける液晶セルを上記映像信号レベルを有する映像信号に応じて充電するのに先立って、プリチャージ回路を各セットについて所定期間動作させることができる。
【0029】
特に、上述のように極性がフレーム毎に逆転される場合、液晶セルの電荷が、任意の映像信号レベルのために必要とされる電荷と逆の電荷となるようにすることが可能である。
【0030】
信号出力部を最低レベルに駆動することにより、液晶セルが少なくともその最低レベルまでプリチャージされることが保証される。当然、これにより、所定の目標値に到達するためにスイッチ回路によって提供が必要な充電量が少なくなる。
【0031】
プリチャージ回路は、上述のようなグループの最初の液晶セルのための信号出力部を含むすべての信号出力部を駆動することができることが好ましい。
【0032】
ゲート出力部が各線を駆動して液晶セルの各セットをイネーブルするゲート期間の開始時に、制御回路によりプリチャージパルスが供給されてもよい。このプリチャージパルスの供給後、セットにおける各グループの最初の液晶セルを、適切な映像信号で駆動することができる一方で、これらのグループにおける後続の液晶セルを、スイッチ回路により最大レベルで駆動することができる。
【0033】
駆動回路は、複数のゲート線に対応する複数のCS(補助容量)線を有する液晶ディスプレイと共に用いられることが好ましい。各CS線は、複数の各CSキャパシタによって各セットの各液晶セルに接続される。周知のように、CSキャパシタは、液晶セルの静電容量における変動を補償し易くするために設けられる。このため、制御回路は、共通信号と実質的に同じレベルを有するCS信号によってCS線を駆動するように構成される。したがって、各液晶セルは、対応するCSキャパシタに接続され、液晶セルの両端は共通信号及びCS信号にそれぞれ接続される。好ましくは、プリチャージ回路は、信号出力部をCS信号に接続することにより、信号出力部を最低レベルにより駆動するように構成される。
【0034】
これは、フレーム毎、及び線毎に極性が逆転される場合の電荷再利用において特に有用である。駆動回路が1つの線から次の線に移行すると、CS線のレベルを変更させる必要がある。しかし、プリチャージ回路によって信号出力部が液晶セルに接続されると、その液晶セルは、CS信号の以前のレベルとは逆の極性になる。したがって、液晶セル及びCS信号は、新たな最低レベルに移行する際、互いに支援し合う。
【0035】
また、本発明の一実施形態は、駆動回路及び液晶ディスプレイを有する液晶モジュールを提供する。
【0036】
好適な実施形態では、駆動回路及び液晶ディスプレイは共通の基板、例えばガラス基板により支持される。さらなる実施形態では、駆動回路及び液晶ディスプレイは低温ポリシリコンTFTから形成される。
【0037】
この液晶モジュールは、携帯電話、カメラ及び他の類似の小型機器における用途において特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施形態は、例示としてのみ提供される以下の説明により、添付の図面を参照して、より明確に理解されるであろう。
【0039】
本発明の実施形態は、例えば図1及び図2にそれぞれ示す携帯電話機器及びデジタルカメラにおいて用いられるようなLCD(Liquid Crystal Display)モジュールに適用可能である。本発明の実施形態は、いかなるLCDにも適用可能であるが、特に、LCDモジュール自体のディスプレイパネル上に形成されたLCD駆動回路を意図しており、このようなLCD駆動回路において特に有用である。すなわち、この構成は、比較的小型のLCD又は少なくとも小型化が望まれる用途のために特に有用である。
【0040】
図1の携帯電話機器2及び図2のデジタルカメラ4において、必要に応じて画像を表示するための各LCDモジュール6及び8が設けられる。
【0041】
図3は、携帯電話機器及びデジタルカメラの用途に適しており、本発明の実施形態を具現するLCDモジュール10を示す。
【0042】
LCDモジュール10は、少なくとも1枚のガラス(又は任意の他の好適な透明材料)製の基板12を有する。この基板12に対し、液晶ディスプレイ16が、任意の周知方法で形成される。図3に示す実施形態では、駆動回路14も基板12上に形成される。駆動回路14は、LCDモジュール10の下部に示されているが、同様の駆動回路をガラス基板12の液晶ディスプレイ16の周囲の任意の部分に設けてもよく、又は、液晶ディスプレイ16の周囲に分散して設けてもよい。
【0043】
図4は、液晶ディスプレイ16の実施態様の一例を示す。
【0044】
液晶ディスプレイ16は、画素の2次元アレイに分割される。画素は、水平(横)方向の行である第1の方向及び垂直(縦)方向の列である第2の方向に延びる。各画素を所望の色及び輝度となるように駆動することにより、液晶ディスプレイ16上に適切な画像が表示される。
【0045】
種々の異なる色を生成するために、各画素は、赤、緑、青をそれぞれ生成する3つの画素ユニット20R、20G、20Bを有する。図4は、第1の(水平)方向に並んで構成された画素の3つの画素ユニット20R、20G、20Bを示す。ここで、所望の視覚的に合成された色を提供するために、3つの画素ユニット20R、20G、20Bは互いに近接して配置されるべきであるが、画素の厳密な位置関係は重要ではないことを理解されたい。
【0046】
各画素ユニット20R、20G、20Bは、対応する液晶セル22R、22G、22Bを有する。各液晶セル22R、22G、22Bの片側は、共通線COMに接続される。好適な実施形態では、この共通線COMは、ガラス基板12自体の一部として形成される。各液晶セル22R、22G、22Bの反対側は、制御トランジスタすなわちスイッチ24R、24G、24Bにそれぞれ接続される。
【0047】
図4に示す実施形態では、行におけるすべてのスイッチ24R、24G、24Bは、共通ゲート線26によって制御される、すなわち、オン/オフに切り替えられる。ゲート線は、液晶ディスプレイ16の各行毎に設けられる。一方、スイッチ24R、24G、24Bへの入力部は、信号線28R、28G、28Bに接続される。具体的には、同じ列内のすべての赤の画素ユニット20Rは、1本の信号線28Rに接続され、同じ列内のすべての緑の画素ユニット20Gは、1本の信号線28Gに接続され、同じ列内のすべての青の画素ユニット20Bは、1本の信号線20Bに接続される。
【0048】
LCDモジュール10の液晶ディスプレイ16上に画像を表示するために、画像は行毎に提供される。特定のゲート線26が駆動されて、その各行におけるすべてのスイッチすなわちトランジスタ24R、24G、24Bをオンにする電圧が印加される。なお、このゲート線26は、この特定の行すなわち水平方向線をイネーブルする。まず、すべての赤の信号線28Rを用いて、その行のすべての赤の液晶セル22Rが駆動され、次に、すべての緑の信号線28Gを用いて、その特定の行のすべての緑の液晶セル22Gが駆動され、最後に、すべての青の信号線28Bを用いて、その特定の行のすべての青の液晶セル22Bが駆動される。特定の色の画素ユニット20R、20G、20Bのすべてが同時に駆動されることが好ましいが、他の構成も可能である。
【0049】
1本の行すなわち水平方向線に書き込みが行われると、対応するゲート線26が駆動されて、このゲート線26に対応するすべてのスイッチすなわちトランジスタ24R、24G、24Bをオフにする電圧が印加され、別のゲート線26が駆動されて、このゲート線26に対応するスイッチをオンにする電圧が印加される。好適な実施形態では、隣り合うゲート線26が次々に駆動されるが、他の構成も可能である。また、種々の異なる構成の画素ユニットのアレイを提供して、同様の効果を達成してもよいことも理解されるであろう。
【0050】
実際には、液晶の静電容量には或る程度の変動があるので、上述した構成だけでは、液晶セル22R、22G、22Bを確実に適切な又は所望の輝度レベルに駆動するのは困難である。液晶セル22R、22G、22Bの変動を補償するために、CSキャパシタ30が、液晶セル22R、22G、22Bに並行して設けられる。図4に示すように、CSキャパシタ30は、液晶セル22R、22G、22Bの信号駆動端と、CS線32との間に設けられる。このような構成の場合、CS線32は、各行すなわち水平方向線毎に設けられる。したがって、各行すなわち水平方向線のすべての画素ユニット20R、20G、20BのCSキャパシタ30は、対応する各CS線32に接続される。
【0051】
CS線32は、共通電圧COMの電圧に近い電圧により駆動される。これにより、液晶セル22R、22G、22Bの静電容量の変動がこれらの液晶セル22R、22G、22Bの駆動に与える影響が少なくなる。
【0052】
図5は、液晶ディスプレイ16の水平方向線の最初の2本を駆動するための種々の信号を示す。ここで、液晶ディスプレイ16の駆動中は、液晶セル22R、22G、22Bを用いる毎に、これらの液晶セルに印加される極性を逆にする必要があるということは言うまでもない。したがって、液晶ディスプレイ16上に各フレームが表示された後、すなわち各垂直期間後に、極性が逆にされる。また、隣り合う水平方向線、すなわち行は、逆の極性で駆動される。
【0053】
図5に示すように、1水平タイミングの長さを有する垂直同期パルスが、新たなフレームを示す。また、各新たな水平方向線すなわち行を示すために、短い水平同期パルスが供給される。
【0054】
第1の水平方向線及び第2の水平方向線に対するゲートパルスが示される。各ゲートパルスは、その水平方向線の期間内に位置し、ゲートパルス中、画素ユニット20R、20G、20Bの各行すなわち水平方向線は、上述した方法でイネーブルされる。したがって、第1の水平方向線に対するゲートパルス中、この第1の水平方向線のすべてのスイッチ/トランジスタ24R、24G、24Bはオンにされるが、他はされない。同様に、第2の水平方向線に対するゲートパルスでは、第2の行すなわち水平方向線のスイッチ/トランジスタのみがオンにされる。
【0055】
図5において、第1の水平方向線及び第2の水平方向線についての、赤の画素ユニット20R、緑の画素ユニット20G、及び青の画素ユニット20Bに対する電圧が示される。画素ユニット20R、20G、20Bの液晶セル22R、22G、22Bに対して示される電圧に重なって、COM信号が破線により示される。図5に示すように、COM信号は、各水平方向線毎に、1つの電圧状態から別の電圧状態に変化する。このようにして、隣り合う水平方向線の画素に印加される極性が逆にされる。また、図5に示すように、第2の垂直期間(図5の右側)では、水平方向線の画素がフレーム毎に逆の極性により駆動されるように、COM信号が全体として逆方向にされる。
【0056】
COM信号の後に、概ね同じ電圧を有するCS信号が続く。
【0057】
好適な実施形態では、COM信号及びCS信号は、0ボルト〜約5ボルトの間で状態が変化する。
【0058】
各水平期間中に、赤の画素ユニット20R、緑の画素ユニット20G、及び青の画素ユニット20Bに対し、それぞれ選択パルスが供給される。このようにして、1つの画素の赤の画素ユニット20R、緑の画素ユニット20G、及び青の画素ユニット20Bのために必要とされる駆動信号を連続的に有する共通映像線を、その画素に対して供給することができる。図5に示す選択パルスは、赤、緑、青の画素ユニット20R、20G、20Bのそれぞれに、映像線信号のうちの適切な部分を印加するために用いられる。結果として、特定の各選択パルス中、画素ユニット20R、20G、20Bのそれぞれの信号線が、その時に共通映像線信号により供給される必要電圧により駆動される。
【0059】
残念ながら、低温では、液晶の動きは遅くなる。結果として、信号線28R、28G、28Bが、必要な信号を画素ユニット20R、20G、20Bの各液晶セル22R、22G、22Bに印加しても、液晶の動きが遅すぎて、信号により意図される輝度に到達できないことがある。一方、実際のデータ書き込み時間においては、より高い電圧レベルにより充電する必要があり得る。これには、より大きいバイアス電流を用いるハイスペックのデジタル−アナログ変換器が必要とされる。
【0060】
これまでに説明した実施形態では、画質の劣化は、青の画素ユニット20Bに対して最も生じ易く、緑の画素ユニット20Gに対して最も生じにくい。
【0061】
赤の選択パルス中、イネーブルされた水平方向線の赤の画素ユニット20Rを駆動するように、映像線信号が赤の信号線28Rに印加される。しかし、赤の選択パルスが終了しても、COM信号及びCS信号はそのままなので、液晶は移動し続けることができる。言い換えれば、赤の画素ユニット20Rは、液晶が移動できる水平期間の残りの部分を利用することができる。緑の選択パルスは、赤の選択パルスの後、且つ水平期間の後期において発生するため、緑の画素ユニット20Gは、液晶の移動のために利用できる時間が少ない。同様に、緑の選択パルスの後の青の選択パルスの場合、青の画素ユニット20Bは、液晶の移動のために利用できる時間がさらに少ない。現在の水平期間の終了時において、COM信号及びCS信号は極性を変更するので、液晶のさらなる移動は停止される。したがって、緑色、そしてそれよりも高い確率で青色が、低温において劣化することが理解されるであろう。
【0062】
これらの問題を低減するために、画素ユニット20R、20G、20Bの液晶セル22R、22G、22Bにプリチャージを行うことが提案されている。言い換えれば、画素ユニット20R、20G、20Bの液晶セル22R、22G、22Bに対する所望の映像信号の印加に先立って、これらの液晶セル22R、22G、22Bの液晶を期待される映像信号の方向に動かすように、液晶セル22R、22G、22Bに信号が印加される。
【0063】
プリチャージを実行可能な第1の方法が、図6(a)を参照して説明される。具体的には、信号パルスに先立って、各水平方向線の液晶セル22R、22G、22BにCS電圧が印加される。
【0064】
図6(a)に示すように、LCD駆動回路14は、水平期間の開始時においてプリチャージパルスを生成する。このプリチャージパルスに応じて、CS信号が液晶セル22R、22G、22Bの入力側に接続される。
【0065】
上述のように、各画素ユニット20R、20G、20Bの極性は、各垂直期間毎に逆転される。したがって、個々の画素ユニット20R、20G、20Bの液晶セル22R、22G、22Bは、依然として、CS信号によって供給される極性とは逆の極性の残留電荷を有する。したがって、図6(a)に示すように、プリチャージパルスの開始時において、画素ユニット20R、20G、20Bはマイナスに帯電され、一方、CS信号は0ボルトとなる。プリチャージパルス中、画素の電荷は0ボルトまで上げられる。これは、選択パルスとして信号パルスが印加されるとき、その信号パルスが、画素ユニットの電圧を、以前のマイナスのボルトからではなく、0ボルトから上昇させるだけでよくなるようにするためである。
【0066】
図6に示すように、必要な駆動回路は、ガラス基板12自体の上に設けられてもよく、外部IC18の一部として設けられてもよい。CS電圧が用いられるため、別の回路を設ける必要はほとんどなく、コストもほとんど増加しない。
【0067】
第2の方法が、図6(b)を参照して説明される。この構成では、LCD駆動回路14を、画素における1つの画素ユニット20Rを対象とする信号を供給し、それに並行して、その画素の他の2つの画素ユニット20G、20Bにも信号を供給するように適合することができる。具体的には、上記の例では、赤の画素ユニット20R用の信号線への印加時に、並行して同じ信号が緑の画素ユニット20G及び青の画素ユニット20Bに印加される。したがって、図6(b)のタイミング図を参照すると、LCD駆動回路14により、現在の水平期間についての第1の選択パルスに少なくともオーバラップし、好ましくはこの第1の選択パルスと相殺し合うプリチャージパルスが生成される。したがって、上記の例では、プリチャージパルスは、赤の選択パルスと同時に発生する。LCD駆動回路14は、このプリチャージパルスに応じて、同じ画素における他の画素ユニット20G、20Bのうちの1つ又は両方に映像信号を印加する。図6(b)のタイミング図は、上述した青の選択パルスに基づくものであり、映像信号の青の信号部分がその映像信号の赤の信号部分と偶然同じである状況についての図である。したがって、プリチャージパルス中、赤の信号は、赤の信号線28Rに沿ってだけでなく、青の液晶セル22Bにも印加されるので、青の液晶セル22Bは赤の液晶セル22Rと同じ電圧とされる。このように、図6(b)に示す実施形態において、青の画素ユニット20Bのために、選択パルスが、青の信号線28Bを介して供給される映像信号の青の信号部分をイネーブルするとき、青の画素ユニット20Bの電荷は既に適切なレベルにあるので、画素ユニット20Bの液晶セル22Bの液晶は、時間に余裕を持って移動することができる。
【0068】
映像信号のうちの3色の各信号部分が同じではない場合も、それらは依然として、必要とされる各信号がセルに印加される前に液晶の移動を開始させる効果を有する。
【0069】
残念ながら、この構成においても画質の劣化が生じることがある。この劣化は特に、映像信号の複数の異なる色信号部分が非常に異なるような画像において生じるものである。例えば、純粋な青領域を表示すべきである場合、その映像信号の赤の信号部分はゼロになるので、CS線電圧よりも大きな影響を有することはない。また、3つの信号のうち第1の信号を供給するためのデジタル−アナログ変換回路は、実際にはさらなる電荷を(プリチャージ処理の一部として)残りの画素ユニット20G、20Bのうちの1つ又は両方に供給しなければならない。これにより、電力消費が増大する。
【0070】
図6(b)に示すように、この構成もやはり、デジタル−アナログ変換回路を外部IC18又はガラス基板12自体の上に実装することができるという利点を有する。
【0071】
次に第3の方法が提案される。この方法では、液晶セル22R、22G、22Bの電圧を、COM電圧と最大信号電圧との中間の電圧にするためにプリチャージが行われる。液晶は、この中間点において最も感度が高くなる。このようなプリチャージ電圧を印加することが、低温による画質の劣化を補償する最も有効な方法であると言える。
【0072】
この中間電圧レベルは、LCD駆動回路14又はLCDモジュール10におけるプリチャージ以外の用途では必要とされない。したがって、付加的な回路を設けることなしには、中間電圧レベルを利用することができない。具体的に言えば、中間電圧レベルを供給するために、LCD駆動回路14にアナログ増幅器又はDC−DC変換器が設けられる。
【0073】
この第3の実施形態では、3色のうちの第1の色に印加される信号とは独立してプリチャージ処理が行われる。駆動回路14により、各水平期間の開始時においてプリチャージ電圧が生成される。駆動回路14には、適切な機構、例えばCOM電圧と最大信号電圧との中間の電圧を提供するアナログ増幅器14a又はDC−DC変換器14bが実装される。したがって、図6(c)に示す水平期間について、COM電圧が0ボルトであり、最大信号電圧が5ボルトである場合、駆動回路14は、プリチャージパルス中、プリチャージを受けている液晶セル22R、22G、22Bに2.5ボルトの電圧を印加する。したがって、図6(c)に示すように、画素電圧は、プリチャージパルス中に中間電圧まで上昇し、これにより、選択パルスに先立って液晶が移動するための追加時間が与えられる。図6(c)に示すように、選択パルス中、図5を参照して上述した適切な信号が印加される。当然、+5ボルトのCOM信号を有する水平期間の場合、+5ボルトからマイナス方向に「最大」量である0ボルトまでの負の極性の信号が液晶セルに印加される。したがって、このような水平期間中に、2.5ボルトのプリチャージ電圧を印加する必要がある。
【0074】
好適な実施形態では、LCDモジュール10は、低温ポリシリコンTFTにより実装される。低温ポリシリコンTFTを用いることで、駆動回路14を、LCDモジュール10のガラス基板12上に実装することが可能である。駆動回路14を、液晶ディスプレイ16を形成するためのプロセスの一環として形成することもできる。しかしながら、低温ポリシリコンTFTを用いて製造された回路は、本質的に、例えば電圧レベル等の特性における変動が大きい。したがって、基板12自体の上に、低温ポリシリコンTFTの一部として適切なアナログ増幅器を設けることは不可能であるか又は少なくとも非常に困難である。したがって、図6(c)の左側に示すように、駆動回路14のうち、少なくともアナログ増幅部14aは、ガラス基板とは別々に設ける必要がある。
【0075】
アナログ増幅器をどこに設けるかは別として、アナログ増幅器は電力消費を増大させる。これは特に、プリチャージが短時間内に行われなければならないためである。
【0076】
DC−DC変換器14bを(図6(c)の右側に示すように)、例えば低温ポリシリコンTFT製造プロセスの一環として、ガラス基板12自体の上に実装することができるが、これにより、キャパシタ14c等の外部部品が必要性となる。また、これにより、ガラス基板12又は外部IC18のサイズも増大する。
【0077】
そこで、LCDモジュール10の駆動回路14において、液晶セル22R、22G、22Bを、アナログ増幅器又はDC−DC変換器を用いることなく中間プリチャージ電圧に駆動することができ、これにより上記問題を回避することができる構成が提案される。
【0078】
図7(a)及び図7(b)は、駆動回路14の適切な構成例を概略的に示す。
【0079】
スイッチ回路50は、必要な信号線28G、28Bを、駆動回路14から利用可能な高レベル電源52(上記の例では、+5ボルト)、又は低レベル電源54(上記の例では0ボルト)のいずれかに接続することができる。図7(a)に示す例では、各スイッチすなわちトランジスタ56、58は、信号線28を、高レベル電源52又は低レベル電源54のいずれかに接続するように制御される。
【0080】
信号線28R、28G、28Bと、液晶セル22R、22G、22Bに接続される後続の線と、液晶セル22R、22G、22Bを有する部品とはすべて、或る程度の静電容量を有することは理解されるであろう。したがって、信号線28R、28G、28Bを高レベル電源52又は低レベル電源54のいずれかに接続しても、それらの信号線28R、28G、28Bの電圧は、すぐにそれらが接続された電源の電圧レベルまで上昇又は下降するわけではない。
【0081】
この提案された構成によれば、信号線28G、28Bの電圧を監視するために、駆動回路14の一部として電圧監視回路60が設けられる。電圧監視線62は、信号線28G、28Bを電圧監視回路60に接続する。電圧監視回路60は、信号線が高レベル電源52又は低レベル電源54のいずれかに接続された後、その結果得られる信号線28G、28B上の電圧を監視する。具体的には、電圧監視回路60は、電圧が所要の中間電圧に到達するときを判定するように構成される。この点において、電圧監視回路60は、信号線28G、28Bを、高レベル電源52又は低レベル電源54のいずれかから切断するようにスイッチ回路50を制御することができる。したがって、中間電圧をプリチャージとして液晶セル22に印加することができる。
【0082】
出力線64は、電圧監視回路60をスイッチ回路50に接続する。図7(a)に示す実施形態では、出力線64は、スイッチ回路50において論理素子66に接続する。この論理素子66は、信号線28を高レベル電源52又は低レベル電源54から切断するように、スイッチ56又は58を制御する。
【0083】
スイッチ回路50は、極性線68を介して極性信号も受信する。この極性信号は、現在の水平期間の極性を示し、高レベル電源52及び低レベル電源54のどちらに信号線28を接続するかを制御するために用いられる。図7(a)に示す実施形態では、極性線68上の極性信号は、スイッチ56及び58のどちらをオンにするかを制御するために用いられる。これは、図7(a)に示すように、極性信号を論理素子66に供給することにより実行される。1つの論理素子66又は他の論理素子66は、この極性信号に応じてイネーブルされる。次に、このイネーブルされた論理素子66は、電圧監視回路60によって、出力線64を介して制御される。
【0084】
図7(b)は、電圧監視回路60の実施態様を概略的に示す。
【0085】
電圧監視回路60は、補償状態と比較状態とを交互に実行する。補償状態では、電圧監視回路60に目標電圧が接続され、インバータがオンにされる。キャパシタの左側に目標電圧が配置され、キャパシタの右側にインバータの閾値電圧が配置される。目標電圧がコンデンサから切断され、インバータがオフにされると、キャパシタはオフセット電圧を記憶する。次に、電圧監視回路60は比較状態に切り替わり、この比較状態では、監視電圧がコンデンサに接続される。監視電圧が目標電圧よりも低い場合、回路は「Low」信号を出力するが、監視電圧が目標電圧以上である場合には、出力は「Low」から「High」に変化し、電源が切断すべきであることを示す。
【0086】
図7(a)に示すように、上述した種々の要素を制御するために、制御回路90を設けてもよい。
【0087】
図8は、図5のように、2つの連続した垂直期間の開始についての種々の信号タイミングを示す。
【0088】
図6(c)を参照して上述したように、(中間電圧レベルを印加するための)プリチャージパルスが、各線又は各水平期間の開始に向けて印加される。
【0089】
図8に示す実施形態では、信号を印加されるべき第1の色(この場合は赤)は、中間電圧のプリチャージを必要としないことが想定されている。これは、上に述べた理由で、第1の信号は、液晶が移動できる水平期間の残りを利用できるからである。したがって、図8に示す実施形態では、緑の信号線28G及び青の信号線28Bだけが、スイッチ回路50及び電圧監視線62に接続される。中間電圧レベルのためのプリチャージパルスは、第1の色、例えば赤に対する選択パルスと同時に印加される。
【0090】
図8に示す実施形態では、中間電圧についてのプリチャージパルス中、後続のすべての液晶セル22G、22B(この場合は緑及び青)が中間電圧となるように、これらの液晶セル22G、22Bに信号パルスが印加される。図8に示す実施形態では、第1の色(この場合は赤)に対する選択パルスが印加されると、この第1の色の液晶セル22Rのすべてに映像信号が印加され、適切な信号電圧が印加される。続いて、他の2色に対する選択パルス中、各液晶セル22G、22Bには、適切な映像信号が印加される。図8に示すように、液晶セル22G、22Bを、中間電圧から必要な信号レベルに移行させるように充電するだけでよい。
【0091】
図8のタイミング図には、CS信号についてのプリチャージパルスの例も含まれる。ここで、駆動回路14は、図7(a)に示すようなCSプリチャージ回路80を付加的に有してもよい。図7(a)に示すように、このCSプリチャージ回路80は、信号線28R、28G、28Bのすべてに選択的に接続される。
【0092】
図6(a)を参照して説明したように、或る水平方向線の液晶セル22R、22G、22Bのすべてに、その線のために用いられるCS電圧を印加することができる。図8に示すCSに対するプリチャージパルスに応じて、CSプリチャージ回路80は、水平方向線の画素ユニット20R、20G、20Bのすべての信号線28に、書き込み間近の水平方向線に対するCSレベルを印加するように構成される。
【0093】
図8に示すように、CSに対するプリチャージパルス中、画素ユニット20R、20G、20Bのすべての液晶セル22R、22G、22Bは、CS電圧とされる。言い換えれば、上述のように、現在のフレームとは逆の極性を有する、前のフレームからの残留電荷はすべて除去される。
【0094】
この構成は、装置の全体的な電力消費を低減するという点で非常に有用である。
【0095】
或るフレームの線に対するCS電圧が+5ボルトであり、次のフレームに対しては0ボルトである例を想定すると、それらのフレームのうち最初のフレームに対する、その線を介した信号は負の極性となる。駆動回路14は、それらのフレームのうち第2のフレームの開始時において、CS信号電圧を+5ボルトから0ボルトに移行させ、これにより液晶セル22R、22G、22Bの電荷は、意図された0ボルトのCSレベルに対してマイナスとなる。水平方向線の開始点において、CS線を画素ユニット20R、20G、20Bの液晶セル22R、22G、22Bに印加することにより、電荷再利用が発生し、これにより液晶セル22R、22G、22Bにおけるマイナスの電荷は、CS信号レベル電圧を、意図された0ボルトの電圧に下降させることを支援する。
【0096】
CS信号が、次のフレームについて5ボルトに戻るとき、逆は真であることが理解される(また、図8から理解される)。液晶セル22R、22G、22Bは、前の正の極性の信号によって得られるプラスの電荷を有することになり、したがって、CS電圧を0ボルトから+5ボルトに引き上げることを支援する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態を具現することができる携帯電話の図である。
【図2】本発明の実施形態を具現することができるカメラの図である。
【図3】本発明の実施形態を具現することができる液晶ディスプレイの図である。
【図4】液晶ディスプレイの3つの画素ユニットを概略的に示す図である。
【図5】図4の画素ユニットを駆動するための信号のタイミングを示す図である。
【図6】液晶セルにプリチャージを印加するための種々の手法を示す図である。
【図7(a)】本発明の実施形態を具現する駆動回路の関連する要素を概略的に示す図である。
【図7(b)】本発明の実施形態を具現する駆動回路の関連する要素を概略的に示す図である。
【図8】本発明の実施形態による、図4の画素ユニットにプリチャージを印加するための種々の信号のタイミングを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通線に接続された液晶セルのアレイと、前記液晶セルの各セットを選択的にイネーブルするようにそれぞれ構成された複数のゲート線と、前記セットの各液晶セルにそれぞれ接続され、当該セットが前記複数のゲート線によりイネーブルされるときに、当該セットの各液晶セルに充電するために用いられ得る複数の信号線とを有する液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記共通線を、第1のレベル及び第2のレベルのうちの一方を選択的に有する共通信号により駆動するように構成された共通出力部と、
前記ゲート線を、前記液晶セルの前記各セットを選択的にイネーブルするように駆動するように構成された複数のゲート出力部と、
前記液晶セルに、最低レベルと最高レベルとの間で変化する映像信号レベルにより充電するように構成され、前記共通信号が前記第1のレベルを有する場合、前記最低レベルを前記第1のレベル、前記最高レベルを前記第2のレベルとし、前記共通信号が前記第2のレベルを有する場合、前記最低レベルを前記第2のレベル、前記最高レベルを前記第1のレベルとする複数の信号出力部と、
前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記最高レベルにより選択的に駆動するように構成されたスイッチ回路と、
前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかにおける電圧を監視し、当該監視される電圧が、前記最低レベルと前記最高レベルの中間である所定の目標値に到達すると、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記最高レベルにより駆動するのを停止するように前記スイッチ回路を制御するように構成された監視回路と、
前記スイッチ回路を前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかに対して動作させることにより、映像信号に応じた前記映像信号レベルによる前記液晶セルへの充電に先立って、前記液晶セルをプリチャージするように構成された制御回路と
を具備する液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記監視回路は、前記スイッチ回路と、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかとに接続され、前記監視される電圧を前記所定の目標値と比較して当該監視される電圧が当該所定の目標値に等しくなるときを判断し、当該監視される電圧が当該所定の目標値に等しくなると、前記スイッチ回路に出力信号を送信して、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記最高レベルにより駆動するのを停止するように前記スイッチ回路を制御するように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記スイッチ回路は、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記第1のレベルに選択的に接続するように構成された第1のスイッチと、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記第2のレベルに選択的に接続するように構成された第2のスイッチとを有し、当該第1のスイッチ及び当該第2のスイッチを制御するように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記スイッチ回路は、前記共通信号が前記第1のレベルを有する場合には、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記第2のレベルに接続するように前記第2のスイッチを制御し、前記共通信号が前記第2のレベルを有する場合には、前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかを前記第1のレベルに接続するように前記第1のスイッチを制御するように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記スイッチ回路は、前記共通信号が前記第1のレベル及び前記第2のレベルのどちらを有するかを示す極性信号を受信するように構成された入力部を有する
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記各セットにおける前記液晶セルは、対応する複数の色を生成可能な複数の液晶セルを有し表示画素を形成する複数のグループとして構成され、
当該駆動回路は、前記各信号出力部を用いて、前記各グループの前記複数の液晶セルを、共通の映像信号により連続的に充電し、かつ、前記液晶セルのセットにおける前記液晶セルの複数のグループすべてを、複数の個別の映像信号により充電するように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかは、前記液晶セルのセットにおける前記複数の各グループのうち、少なくとも、充電すべき最後の液晶セルを充電するためのものである
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記複数の信号出力部のうち少なくともいくつかは、前記液晶セルのセットにおける前記複数の各グループのうち、少なくとも、充電すべき2番目以降の液晶セルを充電するためのものである
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記制御回路は、当該駆動回路が前記複数の信号出力部の各信号出力部を用いて、前記液晶セルのセットにおける前記複数の各グループのうち、充電されるべき最初の液晶セルを前記各映像信号により充電するのと同時に、前記スイッチ回路を動作させるように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記複数の信号出力部を前記最低レベルにより選択的に駆動するように構成されたプリチャージ回路をさらに具備し、
前記制御回路は、前記各セットにおける前記液晶セルが前記映像信号レベルを有する前記映像信号に応じて充電されるのに先立って、前記プリチャージ回路を前記各セットについて所定期間動作させるように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記液晶ディスプレイモジュールは、前記複数のゲート線に対応し、複数の各CSキャパシタによって前記各セットの前記各液晶セルに接続された複数のCS線を有し、
前記制御回路は、前記共通信号と同じレベルを有するCS信号によって前記CS線を駆動するように構成され、
前記プリチャージ回路は、前記複数の信号出力部を前記CS信号に接続することにより、前記複数の信号出力部を前記最低レベルにより駆動するように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
前記液晶ディスプレイモジュールには、前記液晶セルの各セットが並んで配置され、
当該駆動回路は、前記複数のゲート線を用いて、前記液晶セルの隣り合うセットを逐次連続してイネーブルし、当該液晶セルの隣り合うセットに対する前記共通信号を前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間で交互に変更するように構成される
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の液晶ディスプレイモジュール用駆動回路であって、
当該駆動回路は、前記液晶セルのアレイを連続的に用いるために、前記共通信号を前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間で交互に変更するように構成され、
前記共通信号は、前記ゲート線のうちの1本が前記液晶セルの各セットをイネーブルするために用いられるとき、前記第1のレベル及び前記第2のレベルのうち、前記ゲート線のうちの前記1本が前記液晶セルの各セットをイネーブルするために前回用いられたときのレベルとは異なる方のレベルを有する
液晶ディスプレイモジュール用駆動回路。
【請求項14】
請求項1〜13に記載の駆動回路と、
液晶ディスプレイと
を有する液晶モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の液晶モジュールであって、
前記駆動回路及び前記液晶ディスプレイは、共通の基板上に支持される
液晶モジュール。
【請求項16】
請求項15に記載の液晶モジュールであって、
前記駆動回路及び前記液晶ディスプレイは、低温ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor)から形成される
液晶モジュール。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の液晶モジュールを有する携帯電話。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の液晶モジュールを有するカメラ。
【請求項19】
共通線に接続された液晶セルのアレイと、前記液晶セルの各セットを選択的にイネーブルするようにそれぞれ構成された複数のゲート線と、前記セットの各液晶セルにそれぞれ接続され、当該セットが前記複数のゲート線によりイネーブルされるときに、当該セットの各液晶セルに充電するために用いられ得る複数の信号線とを有する液晶ディスプレイの駆動方法であって、
前記共通線を、第1のレベル及び第2のレベルのうちの一方を選択的に有する共通信号により駆動し、
前記ゲート線を、前記液晶セルの前記各セットを選択的にイネーブルするように駆動し、
前記共通信号が前記第1のレベルを有する場合、最低レベルを前記第1のレベル、最高レベルを前記第2のレベルとし、前記共通信号が前記第2のレベルを有する場合、前記最低レベルを前記第2のレベル、前記最高レベルを前記第1のレベルとして、前記液晶セルを、前記最低レベルと前記最高レベルとの間で変化する映像信号レベルに基づいて充電し、
前記映像信号に応じた前記映像信号レベルによる前記液晶セルへの充電に先立って、前記信号線のうち少なくとも何本かを前記最高レベルにより駆動することにより、前記信号線のうち少なくとも何本かに接続された液晶セルをプリチャージし、
前記信号線のうち少なくとも何本かにおける電圧を監視し、当該監視される電圧が、前記最低レベルと前記最高レベルの中間である所定の目標値に到達すると、前記信号線のうち少なくとも何本かを前記最高レベルにより駆動するのを停止する
液晶ディスプレイの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−163246(P2009−163246A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335349(P2008−335349)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(593081408)ソニー・ユナイテッド・キングダム・リミテッド (93)
【氏名又は名称原語表記】Sony United Kingdom Limited
【Fターム(参考)】