液晶表示素子および表示装置
【課題】製造性を低下させることなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御できる液晶パネルを提供する。
【解決手段】液晶分子LCの配向方向を長手方向に沿って制御する長手状の櫛歯部32を備えた対をなす画素電極28a,28bを互いに対向して配置した副画素SPを、画素毎に櫛歯部32の長手方向に対をなすように配置する。薄膜トランジスタ26a,26bによって画素電極28a,28bの櫛歯部32を介して各画素の対をなす副画素SPのそれぞれで液晶分子LCの配向方向を互いに反対方向に対向させたり同一方向に偏らせたりする。別途部材を要することなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御できる。薄膜トランジスタ26a,26bおよび画素電極28a,28bの櫛歯部32のみで液晶分子LCの配向方向を制御できるので、配向膜のラビングを細かく制御するなどの必要がなく、製造性を低下させることがない。
【解決手段】液晶分子LCの配向方向を長手方向に沿って制御する長手状の櫛歯部32を備えた対をなす画素電極28a,28bを互いに対向して配置した副画素SPを、画素毎に櫛歯部32の長手方向に対をなすように配置する。薄膜トランジスタ26a,26bによって画素電極28a,28bの櫛歯部32を介して各画素の対をなす副画素SPのそれぞれで液晶分子LCの配向方向を互いに反対方向に対向させたり同一方向に偏らせたりする。別途部材を要することなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御できる。薄膜トランジスタ26a,26bおよび画素電極28a,28bの櫛歯部32のみで液晶分子LCの配向方向を制御できるので、配向膜のラビングを細かく制御するなどの必要がなく、製造性を低下させることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板間に介在され液晶分子により構成される液晶層を有する液晶表示素子およびこれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイなどの表示装置は、PC、ワードプロセッサ、コピー機、ファクシミリなどのOA機器の分野に限らず、キャッシュディスペンサ、ATM(Automatic Tellers Machine)、ゲーム機、テレビジョン受像機、時計、携帯電話、あるいは工場内の制御装置などの広い分野で使用されている。このような表示装置は、一般的には広視野角が要求される一方で、特にキャッシュディスペンサ、ATM、ノート型PCあるいは携帯電話などの特定の分野では、プライバシー保護のため隣からの覗き見を防止するための視界制御機能が要求される。
【0003】
このような視界制御機能を付与するため、表示装置の表示画面の前面にマイクロルーバを内蔵する可視角度調整フィルムと呼ばれる一種の光学フィルタを取り付け、表示画面の画像が正面からは明るく見えるが、側方からは暗くて見えないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このマイクロルーバを用いた光学フィルタは、カーボンブラックを含むルーバ構造のフィルムの表裏両面にポリエチレンテレフタレート(PET)製の透明フィルムを積層して作られているため、光量の透過損失が多くなり、かつ製造コストが高額になる、加えて広視野角/狭視野角を切り替えられないという問題がある。
【0005】
一方、液晶パネルの背面側に光源(バックライト)を設置した液晶ディスプレイにおいては、液晶パネルの表面輝度を増大させるため、液晶パネルとバックライトとの間にレンズ機能を備えた高分子材料製のフィルムもしくはシート、いわゆるレンズフィルム(レンズシート、プリズムシート、調光シートなどと呼ばれることもある)を介在させることにより、レンズフィルムの集光、散乱、拡大、屈折あるいは反射などを利用して正面の輝度を向上したり、上下の特定視野に対する光の分布や均一性の改善、あるいは左右もしくは上下に対する光の分散などを行って表示画面の輝度を向上させたりすることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、この構成でも、上記マイクロルーバを用いた光学フィルタと同様に、広視野角/狭視野角を切り替えられず、また、液晶パネルとバックライトとの他に別途部材が必要となるため、薄型化が容易でないという問題がある。
【0007】
そこで、広視野角/狭視野角を切り換え可能とするために、表示装置の表示側に液晶素子を配置し、この液晶素子の配向膜のラビング方向を所定領域毎に異ならせることで、正面以外の視角から画面を見た際に表示にスクランブルが掛かった状態となることで視野角を狭くすることが可能な構成が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
しかしながら、この構成では、配向膜のラビングを製造時に細かく制御する必要があるだけでなく、互いに対向させた基板同士の位置合わせなども細かく制御する必要があるなど、製造性が良好でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−67178号公報
【特許文献2】特表平10−506500号公報
【特許文献3】特開2006−284673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、上記各特許文献に記載された発明では、製造性の確保、薄型化、および、視野角の必要に応じた制御をそれぞれ可能とすることが容易でない。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造性を低下させることなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御できる液晶表示素子およびこれを備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対をなす基板と、これら基板間に介在され液晶分子により構成される液晶層と、長手状に形成され長手方向に沿って前記液晶分子の配向方向を制御する制御部を備えた対をなす画素電極が互いに対向して配置された副画素を、前記制御部の長手方向に対をなすように備えた画素と、前記画素電極毎に設けられ、これら画素電極のそれぞれを駆動するスイッチング素子とを具備したものである。
【0013】
そして、液晶分子の配向方向を長手方向に沿って制御する長手状の制御部を備えた対をなす画素電極を互いに対向して配置した副画素を、画素毎に制御部の長手方向に対をなすように設ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチング素子によって画素電極の制御部を介して各画素の対をなす副画素のそれぞれで液晶分子の配向方向を対向させたり同一方向に偏らせたりすることで、別途部材を要することなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御でき、かつ、スイッチング素子および画素電極の制御部のみで液晶分子の配向方向を制御できるので、配向膜のラビングを細かく制御するなどの必要がなく、製造性を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の液晶表示素子の副画素での液晶分子の配向状態を示す平面図であり、(a)は電圧無印加状態を示し、(b)および(c)は電圧印加状態を示す。
【図2】同上液晶表示素子の画素での液晶分子の配向状態を示す平面図であり、(a)および(b)は広視野角モードを示し、(c)および(d)は狭視野角モードを示す。
【図3】同上液晶表示素子の画素電極を示す平面図である。
【図4】同上液晶分子の配向状態と光の透過との関係を示す説明側面図であり、(a)は電圧無印加状態を示し、(b)は電圧印加状態を示す。
【図5】同上液晶表示素子を示す縦断面図である。
【図6】同上液晶表示素子の広視野角モードを示し、(a)は左視野角での表示の一部を示す説明図、(b)は正面から見た状態の表示の一部を示す説明図、(c)は右視野角での表示の一部を示す説明図、(d)は視野角と輝度との白表示の特性を示すグラフである。
【図7】同上液晶表示素子の狭視野角モードを示し、(a)は左視野角での表示の一部を示す説明図、(b)は正面から見た状態の表示の一部を示す説明図、(c)は右視野角での表示の一部を示す説明図、(d)は視野角と輝度との白表示の特性を示すグラフである。
【図8】同上液晶表示素子を備えた表示装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0017】
図5において、11は液晶表示装置としての液晶ディスプレイを示し、この液晶ディスプレイ11は、液晶表示素子としての透過型の液晶パネル12と、この液晶パネル12の背面側に配置される面状光源装置であるバックライト13とを備えている。
【0018】
液晶パネル12は、基板としてのアレイ基板15と、このアレイ基板15と対をなす基板としての対向基板16とが対向配置されて図示しない接着部により接着固定され、これら基板15,16間に液晶分子LCにより構成される液晶層17が挟持され、かつ、各基板15,16にそれぞれ偏光板18,19が貼着されて構成されている。そして、この液晶パネル12は、複数の画素部20が水平(H)方向および垂直(V)方向に沿って所定の表示領域内にマトリクス状に配置されており、各画素部20は、図3に示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれに対応する画素P3つ(画素Pr,Pg,Pb)で構成されているとともに、各画素Pは、図2に示すように、それぞれ水平(H)方向(左右方向)に対をなす(1対の)副画素SP(副画素SPa,SPb)により構成されている。
【0019】
図5に戻って、アレイ基板15は、絶縁性および透光性を有する透明基板23と、この透明基板23上に格子状に形成される図示しない走査線および信号線と、これら走査線および信号線に接続されるスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)26(薄膜トランジスタ26a,26b(図1))と、この薄膜トランジスタ26などを覆って透明基板23上に形成された絶縁膜27と、この絶縁膜27上に形成され各薄膜トランジスタ26によりそれぞれ駆動される画素電極28(画素電極28a,28b(図1))と、この画素電極28などを覆って絶縁膜27上に形成された配向膜29とを有している。
【0020】
なお、以下、薄膜トランジスタ26a,26bの少なくともいずれか、あるいは薄膜トランジスタ26a,26bの全体を、単に薄膜トランジスタ26、画素電極28a,28bの少なくともいずれか、あるいは画素電極28a,28bの全体を、単に画素電極28ということがある。
【0021】
透明基板23は、例えば平面視で四角形状に形成されたガラス基板などである。
【0022】
走査線および信号線は、例えばアルミニウムあるいは銅などの導電性を有する部材により略直線状に形成されており、走査線は図3に示す水平(H)方向、信号線は図3に示す垂直(V)方向に沿っている。また、走査線は、ゲート駆動回路すなわちゲートドライバに電気的に接続され、信号線は、ソース駆動回路すなわちソースドライバに電気的に接続されている。
【0023】
薄膜トランジスタ26は、制御端子であるゲート電極が走査線と一体に形成されており、ソース電極が信号線と一体に形成され、かつ、ドレイン電極が各画素電極28と電気的に接続されている。そして、これら薄膜トランジスタ26は、ゲートドライバからの信号が走査線を介してゲート電極に印加されることでスイッチング制御され、ソースドライバから信号線を介して入力された信号に対応して各画素電極28を駆動可能となっている。
【0024】
ここで、薄膜トランジスタ26は、図1に示すように、1つの副画素SPにつき例えば2つ(1対)が配置されている。すなわち、薄膜トランジスタ26は、図2に示すように、1つの画素Pにつき複数対、例えば4つ(2対)が配置されている。薄膜トランジスタ26aは、副画素SPの図中の下端近傍でかつ左側部近傍に位置し、薄膜トランジスタ26bは、副画素SPの図中の上端近傍でかつ右側部近傍に位置している。
【0025】
図5に示す絶縁膜27は、例えばシリコン酸化膜、あるいはシリコン窒化膜などにより形成されている。
【0026】
画素電極28は、透明で、かつ、導電性を有する例えばITOなどの材料により、例えばスパッタリングなどの一般的な成膜工程と例えばエッチングなどの一般的なパターニング工程とを繰り返すことによって薄膜状に形成されており、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図2および図3に示すように、長手方向に沿う電極接続部31と、この電極接続部31からこの電極接続部31に交差(直交)する方向である水平(H)方向へと突出した長手状の複数の制御部としての櫛歯部32とを備えた櫛歯状、すなわち微細ライン/スリット構造を有している。また、この画素電極28は、絶縁膜27に設けられたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタ26のドレイン電極と接続されている。
【0027】
櫛歯部32は、垂直(V)方向に互いに略等間隔に平行に離間され、それぞれの櫛歯部32の間に、スリット部34が形成されている。そして、画素電極28a,28bは、一方のスリット部S毎に他方の櫛歯部32が1つ挿入されるように、換言すれば、互いの各スリット部34に互いの各櫛歯部32が位置するように、互いに上下方向に反対向きに配置されている。このため、櫛歯部32は、画素電極28aと画素電極28bとで、互いに対向する方向に向けて突出しており、各画素Pの副画素SPa,SPbが、この櫛歯部32の長手方向に互いに隣接して対をなすように配置されている。なお、櫛歯部32は、例えば2μmの幅寸法を有しており、スリット部34は、例えば4μmの幅寸法を有している。したがって、この櫛歯部32の副画素SP毎の数は、副画素SPの大きさに応じて設定される。
【0028】
一方、図5に示すように、対向基板16は、絶縁性および透光性を有する透明基板41と、この透明基板41上に形成されたカラーフィルタ層42と、このカラーフィルタ層42上に形成された対向電極43と、この対向電極43上に形成された配向膜44とを有している。
【0029】
透明基板41は、透明基板23と同様に、例えば平面視で四角形状に形成されたガラス基板などである。
【0030】
カラーフィルタ層42は、例えば合成樹脂などにより形成され赤(R)、緑(G)および青(B)に対応する着色部42r,42g,42bを備え、これら着色部42r,42g,42bが垂直(V)方向に沿って長手状に形成され、水平(H)方向に順次配置されたストライプ状となっている。また、各着色部42r,42g,42bは、水平(H)方向に隣接する2つの副画素SP間に亘って連続して形成されている。
【0031】
対向電極43は、透明で、かつ、導電性を有する例えばITOなどの材料により薄膜状に形成されており、全ての画素Pに対応した共通電極となっている。
【0032】
液晶層17は、液晶分子LCの初期配向が垂直配向となっている。すなわち、液晶分子LCは、電極28,43間に電圧が印加されない状態で、長手方向が上下方向に沿うように配置されている。また、これら液晶分子LCは、画素電極28の各櫛歯部32に沿って傾斜方向が制御される。
【0033】
偏光板18,19は、図4に示すように、吸収軸18a,19aが互いに交差した、いわゆるクロスニコル配置となっている。したがって、図4(a)に示すように、電極28,43間に電圧を印加されずに液晶分子LCが偏光板18,19に対して垂直に配向している場合、入射した光L1は液晶層17を通過しても液晶分子LCには屈折率異方性が存在しないため位相のずれが生じず偏光は変化せず、出射側の偏光板19によって吸収され黒表示となる。また、電極28,43間に電圧が印加されて図4(b)に示すように液晶分子LCが傾斜した状態の場合、光L1,L2は、液晶分子LCの屈折率異方性により偏光状態が変化し、出射側の偏光板19により吸収されず透過して、白表示となるものの、光L3は液晶分子LCの屈折率異方性の影響を受けないので出射側の偏光板19により吸収されて黒表示となる。すなわち、液晶パネル12は、電圧無印加時に黒表示となる、いわゆるノーマリブラックのものである。
【0034】
バックライト13は、冷陰極管、あるいはLEDなどの光源からの白色光を面状の白色光に変換する導光板(図示せず)を有し、液晶パネル12のアレイ基板15側に対向配置されている。
【0035】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0036】
(広視野角モード)
広視野角モードの場合、各画素Pにおいて、液晶分子LCを副画素SPaと副画素SPbとで互いに180°異なる方向に傾斜させる(倒す)ことで、視野角特性を平均化する。
【0037】
具体的に、図2(a)に示すように、副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)の薄膜トランジスタ26aをオフとし、薄膜トランジスタ26bをオンとするとともに、副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)の薄膜トランジスタ26aをオンとし、薄膜トランジスタ26bをオフとする。あるいは、図2(b)に示すように、副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)の薄膜トランジスタ26aをオンとし、薄膜トランジスタ26bをオフとするとともに、副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)の薄膜トランジスタ26aをオフとし、薄膜トランジスタ26bをオンとする。
【0038】
なお、薄膜トランジスタ26のオンとは、電極28,43間に電位差が生じる電圧が画素電極28に印加されることをいい、薄膜トランジスタ26のオフとは、電極28,43間に電位差が生じない電圧が画素電極28に印加されることをいうものとする。
【0039】
この結果、液晶分子LCが副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)と副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)とで互いに反対方向に傾斜することにより、左右それぞれの方向からの視野角特性が平均化されるため、図6(a)に示すように左側から見ても、図6(b)に示すように正面から見ても、図6(c)に示すように右側から見ても、図6(d)のグラフに示すように視野角依存性のない、すなわち、どの方向からも完全な表示状態、換言すれば白は白と見える表示が可能となる。
【0040】
(狭視野角モード)
狭視野角モードの場合、図2(c)に示すように液晶分子LCを所定の一方向、例えば右方向に傾斜させる画素部20が、図7(a)ないし図7(c)に示すように複数、例えば水平(H)方向3個、垂直(V)方向3個(3×3個)ずつ並ぶ画素部群51aと、図2(d)に示すように液晶分子LCを所定の一方向と反対方向、例えば左方向に傾斜させる画素部20が、複数、例えば水平(H)方向3個、垂直(V)方向3個(3×3個)ずつ並ぶ画素部群51bとを、表示領域において所定の妨害パターン、例えば市松模様などを形成するように薄膜トランジスタ26を制御して点在させる。なお、画素部群51aと画素部群51bとは、例えばストライプ状など、任意の妨害パターンに点在させることができる。
【0041】
具体的に、画素部群51aの副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)および副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)では、薄膜トランジスタ26bをそれぞれオンとし、薄膜トランジスタ26aをそれぞれオフとする。
【0042】
また、画素部群51bの副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)および副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)では、薄膜トランジスタ26aをそれぞれオンとし、薄膜トランジスタ26bをそれぞれオフとする。
【0043】
この結果、図7(b)に示すように正面から見ると、通常の表示であるものの、図7(a)に示す左視野角では、画素部群51aの透過率が小さくなり(図7(d))黒く見え、市松模様の妨害パターンが生じ、図7(c)に示す右視野角では、画素部群51bの透過率が小さくなり(図7(d))黒く見え、市松模様の妨害パターンが生じるため、左右視野角において表示が完全な状態で観測できなくなる。したがって、表示を完全な状態で観測できる視野角が狭くなることから、事実上狭視野角となり、覗き込みなどに対する防止策として有効となる。
【0044】
上述したように、上記一実施の形態によれば、液晶分子LCの配向方向を長手方向に沿って制御する長手状の櫛歯部32を備えた対をなす画素電極28a,28bを互いに対向して配置した副画素SPを、画素P毎に櫛歯部32の長手方向に対をなすように配置することにより、薄膜トランジスタ26によって画素電極28の櫛歯部32を介して各画素Pの対をなす副画素SPa,SPbのそれぞれで液晶分子LCの配向方向を互いに反対方向に対向させたり(広視野角モード)、所定の妨害パターンを形成するように同一方向に偏らせたり(狭視野角モード)することで、可視角度調整フィルム、あるいはレンズフィルムなどの光学フィルタなどの別途部材を要することなく全体としての薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて容易に切り替え制御できる。
【0045】
また、薄膜トランジスタ26および画素電極28の櫛歯部32のみで液晶分子LCの配向方向を制御できるので、配向膜29,44のラビングを細かく制御するなどの必要がなく、製造性を低下させることがないとともに、画素P(画素部20)毎に液晶分子LCの配向方向を制御可能となるので、狭視野角モード時に形成される妨害パターンを任意に制御でき、この妨害パターンによって画像や文字などを表示したりすることも可能となり、表示可能な情報量を大幅に増加させることができる。
【0046】
さらに、画素電極28a,28bを、櫛歯部32が互いにスリット部34を介して離間されるように櫛歯状に形成し、かつ、互いの各スリット部34に互いの各櫛歯部32が位置するように配置することにより、副画素SPの面積を必要以上に大きくすることなく画素電極28a,28bを配置でき、高精細化にも対応可能になるとともに、櫛歯部32を高密度に配置できるので、液晶分子LCの配向方向を、より精度よく制御できる。
【0047】
また、液晶分子LCは、初期配向が基板15,16のそれぞれに対して垂直配向であるため、高コントラストで、かつ、応答性が良好となるとともに、配向膜29,44のラビングが必要なく、このラビングに伴う薄膜トランジスタ26の静電破壊やピンホールなどの問題が生じることがない。
【0048】
そして、上記液晶パネル12によって視野角を必要に応じて容易に切り替え制御できるので、液晶ディスプレイ11を公的な場で私的な情報を取り扱う機器、例えばキャッシュディスペンサ、ATM、ノート型PCあるいは携帯電話などの覗き込み防止用として好適に用いることができる。
【0049】
なお、上記一実施の形態の液晶パネル12を、図8に示すように、例えばCRT、あるいは有機/無機EL素子などの自発光型、あるいは液晶表示素子などの透過型の表示装置本体55の表示側に視野角制御フィルタとして適用して表示装置56を構成することも可能である。この場合には、液晶パネル12中にカラーフィルタ層42は不要である。この表示装置56でも、液晶パネル12によって視野角を必要に応じて容易に切り替え制御できるとともに、上記液晶パネル12を液晶ディスプレイ11に用いる場合と比較して、2倍以上の透過率を見込むことができる。
【符号の説明】
【0050】
12 液晶表示素子としての液晶パネル
15 基板としてのアレイ基板
16 基板としての対向基板
17 液晶層
26a,26b スイッチング素子としての薄膜トランジスタ
28a,28b 画素電極
32 制御部としての櫛歯部
34 スリット部
55 表示装置本体
56 表示装置
LC 液晶分子
P 画素
SP 副画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板間に介在され液晶分子により構成される液晶層を有する液晶表示素子およびこれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイなどの表示装置は、PC、ワードプロセッサ、コピー機、ファクシミリなどのOA機器の分野に限らず、キャッシュディスペンサ、ATM(Automatic Tellers Machine)、ゲーム機、テレビジョン受像機、時計、携帯電話、あるいは工場内の制御装置などの広い分野で使用されている。このような表示装置は、一般的には広視野角が要求される一方で、特にキャッシュディスペンサ、ATM、ノート型PCあるいは携帯電話などの特定の分野では、プライバシー保護のため隣からの覗き見を防止するための視界制御機能が要求される。
【0003】
このような視界制御機能を付与するため、表示装置の表示画面の前面にマイクロルーバを内蔵する可視角度調整フィルムと呼ばれる一種の光学フィルタを取り付け、表示画面の画像が正面からは明るく見えるが、側方からは暗くて見えないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このマイクロルーバを用いた光学フィルタは、カーボンブラックを含むルーバ構造のフィルムの表裏両面にポリエチレンテレフタレート(PET)製の透明フィルムを積層して作られているため、光量の透過損失が多くなり、かつ製造コストが高額になる、加えて広視野角/狭視野角を切り替えられないという問題がある。
【0005】
一方、液晶パネルの背面側に光源(バックライト)を設置した液晶ディスプレイにおいては、液晶パネルの表面輝度を増大させるため、液晶パネルとバックライトとの間にレンズ機能を備えた高分子材料製のフィルムもしくはシート、いわゆるレンズフィルム(レンズシート、プリズムシート、調光シートなどと呼ばれることもある)を介在させることにより、レンズフィルムの集光、散乱、拡大、屈折あるいは反射などを利用して正面の輝度を向上したり、上下の特定視野に対する光の分布や均一性の改善、あるいは左右もしくは上下に対する光の分散などを行って表示画面の輝度を向上させたりすることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、この構成でも、上記マイクロルーバを用いた光学フィルタと同様に、広視野角/狭視野角を切り替えられず、また、液晶パネルとバックライトとの他に別途部材が必要となるため、薄型化が容易でないという問題がある。
【0007】
そこで、広視野角/狭視野角を切り換え可能とするために、表示装置の表示側に液晶素子を配置し、この液晶素子の配向膜のラビング方向を所定領域毎に異ならせることで、正面以外の視角から画面を見た際に表示にスクランブルが掛かった状態となることで視野角を狭くすることが可能な構成が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
しかしながら、この構成では、配向膜のラビングを製造時に細かく制御する必要があるだけでなく、互いに対向させた基板同士の位置合わせなども細かく制御する必要があるなど、製造性が良好でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−67178号公報
【特許文献2】特表平10−506500号公報
【特許文献3】特開2006−284673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、上記各特許文献に記載された発明では、製造性の確保、薄型化、および、視野角の必要に応じた制御をそれぞれ可能とすることが容易でない。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造性を低下させることなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御できる液晶表示素子およびこれを備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対をなす基板と、これら基板間に介在され液晶分子により構成される液晶層と、長手状に形成され長手方向に沿って前記液晶分子の配向方向を制御する制御部を備えた対をなす画素電極が互いに対向して配置された副画素を、前記制御部の長手方向に対をなすように備えた画素と、前記画素電極毎に設けられ、これら画素電極のそれぞれを駆動するスイッチング素子とを具備したものである。
【0013】
そして、液晶分子の配向方向を長手方向に沿って制御する長手状の制御部を備えた対をなす画素電極を互いに対向して配置した副画素を、画素毎に制御部の長手方向に対をなすように設ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチング素子によって画素電極の制御部を介して各画素の対をなす副画素のそれぞれで液晶分子の配向方向を対向させたり同一方向に偏らせたりすることで、別途部材を要することなく薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて制御でき、かつ、スイッチング素子および画素電極の制御部のみで液晶分子の配向方向を制御できるので、配向膜のラビングを細かく制御するなどの必要がなく、製造性を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の液晶表示素子の副画素での液晶分子の配向状態を示す平面図であり、(a)は電圧無印加状態を示し、(b)および(c)は電圧印加状態を示す。
【図2】同上液晶表示素子の画素での液晶分子の配向状態を示す平面図であり、(a)および(b)は広視野角モードを示し、(c)および(d)は狭視野角モードを示す。
【図3】同上液晶表示素子の画素電極を示す平面図である。
【図4】同上液晶分子の配向状態と光の透過との関係を示す説明側面図であり、(a)は電圧無印加状態を示し、(b)は電圧印加状態を示す。
【図5】同上液晶表示素子を示す縦断面図である。
【図6】同上液晶表示素子の広視野角モードを示し、(a)は左視野角での表示の一部を示す説明図、(b)は正面から見た状態の表示の一部を示す説明図、(c)は右視野角での表示の一部を示す説明図、(d)は視野角と輝度との白表示の特性を示すグラフである。
【図7】同上液晶表示素子の狭視野角モードを示し、(a)は左視野角での表示の一部を示す説明図、(b)は正面から見た状態の表示の一部を示す説明図、(c)は右視野角での表示の一部を示す説明図、(d)は視野角と輝度との白表示の特性を示すグラフである。
【図8】同上液晶表示素子を備えた表示装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0017】
図5において、11は液晶表示装置としての液晶ディスプレイを示し、この液晶ディスプレイ11は、液晶表示素子としての透過型の液晶パネル12と、この液晶パネル12の背面側に配置される面状光源装置であるバックライト13とを備えている。
【0018】
液晶パネル12は、基板としてのアレイ基板15と、このアレイ基板15と対をなす基板としての対向基板16とが対向配置されて図示しない接着部により接着固定され、これら基板15,16間に液晶分子LCにより構成される液晶層17が挟持され、かつ、各基板15,16にそれぞれ偏光板18,19が貼着されて構成されている。そして、この液晶パネル12は、複数の画素部20が水平(H)方向および垂直(V)方向に沿って所定の表示領域内にマトリクス状に配置されており、各画素部20は、図3に示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれに対応する画素P3つ(画素Pr,Pg,Pb)で構成されているとともに、各画素Pは、図2に示すように、それぞれ水平(H)方向(左右方向)に対をなす(1対の)副画素SP(副画素SPa,SPb)により構成されている。
【0019】
図5に戻って、アレイ基板15は、絶縁性および透光性を有する透明基板23と、この透明基板23上に格子状に形成される図示しない走査線および信号線と、これら走査線および信号線に接続されるスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)26(薄膜トランジスタ26a,26b(図1))と、この薄膜トランジスタ26などを覆って透明基板23上に形成された絶縁膜27と、この絶縁膜27上に形成され各薄膜トランジスタ26によりそれぞれ駆動される画素電極28(画素電極28a,28b(図1))と、この画素電極28などを覆って絶縁膜27上に形成された配向膜29とを有している。
【0020】
なお、以下、薄膜トランジスタ26a,26bの少なくともいずれか、あるいは薄膜トランジスタ26a,26bの全体を、単に薄膜トランジスタ26、画素電極28a,28bの少なくともいずれか、あるいは画素電極28a,28bの全体を、単に画素電極28ということがある。
【0021】
透明基板23は、例えば平面視で四角形状に形成されたガラス基板などである。
【0022】
走査線および信号線は、例えばアルミニウムあるいは銅などの導電性を有する部材により略直線状に形成されており、走査線は図3に示す水平(H)方向、信号線は図3に示す垂直(V)方向に沿っている。また、走査線は、ゲート駆動回路すなわちゲートドライバに電気的に接続され、信号線は、ソース駆動回路すなわちソースドライバに電気的に接続されている。
【0023】
薄膜トランジスタ26は、制御端子であるゲート電極が走査線と一体に形成されており、ソース電極が信号線と一体に形成され、かつ、ドレイン電極が各画素電極28と電気的に接続されている。そして、これら薄膜トランジスタ26は、ゲートドライバからの信号が走査線を介してゲート電極に印加されることでスイッチング制御され、ソースドライバから信号線を介して入力された信号に対応して各画素電極28を駆動可能となっている。
【0024】
ここで、薄膜トランジスタ26は、図1に示すように、1つの副画素SPにつき例えば2つ(1対)が配置されている。すなわち、薄膜トランジスタ26は、図2に示すように、1つの画素Pにつき複数対、例えば4つ(2対)が配置されている。薄膜トランジスタ26aは、副画素SPの図中の下端近傍でかつ左側部近傍に位置し、薄膜トランジスタ26bは、副画素SPの図中の上端近傍でかつ右側部近傍に位置している。
【0025】
図5に示す絶縁膜27は、例えばシリコン酸化膜、あるいはシリコン窒化膜などにより形成されている。
【0026】
画素電極28は、透明で、かつ、導電性を有する例えばITOなどの材料により、例えばスパッタリングなどの一般的な成膜工程と例えばエッチングなどの一般的なパターニング工程とを繰り返すことによって薄膜状に形成されており、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図2および図3に示すように、長手方向に沿う電極接続部31と、この電極接続部31からこの電極接続部31に交差(直交)する方向である水平(H)方向へと突出した長手状の複数の制御部としての櫛歯部32とを備えた櫛歯状、すなわち微細ライン/スリット構造を有している。また、この画素電極28は、絶縁膜27に設けられたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタ26のドレイン電極と接続されている。
【0027】
櫛歯部32は、垂直(V)方向に互いに略等間隔に平行に離間され、それぞれの櫛歯部32の間に、スリット部34が形成されている。そして、画素電極28a,28bは、一方のスリット部S毎に他方の櫛歯部32が1つ挿入されるように、換言すれば、互いの各スリット部34に互いの各櫛歯部32が位置するように、互いに上下方向に反対向きに配置されている。このため、櫛歯部32は、画素電極28aと画素電極28bとで、互いに対向する方向に向けて突出しており、各画素Pの副画素SPa,SPbが、この櫛歯部32の長手方向に互いに隣接して対をなすように配置されている。なお、櫛歯部32は、例えば2μmの幅寸法を有しており、スリット部34は、例えば4μmの幅寸法を有している。したがって、この櫛歯部32の副画素SP毎の数は、副画素SPの大きさに応じて設定される。
【0028】
一方、図5に示すように、対向基板16は、絶縁性および透光性を有する透明基板41と、この透明基板41上に形成されたカラーフィルタ層42と、このカラーフィルタ層42上に形成された対向電極43と、この対向電極43上に形成された配向膜44とを有している。
【0029】
透明基板41は、透明基板23と同様に、例えば平面視で四角形状に形成されたガラス基板などである。
【0030】
カラーフィルタ層42は、例えば合成樹脂などにより形成され赤(R)、緑(G)および青(B)に対応する着色部42r,42g,42bを備え、これら着色部42r,42g,42bが垂直(V)方向に沿って長手状に形成され、水平(H)方向に順次配置されたストライプ状となっている。また、各着色部42r,42g,42bは、水平(H)方向に隣接する2つの副画素SP間に亘って連続して形成されている。
【0031】
対向電極43は、透明で、かつ、導電性を有する例えばITOなどの材料により薄膜状に形成されており、全ての画素Pに対応した共通電極となっている。
【0032】
液晶層17は、液晶分子LCの初期配向が垂直配向となっている。すなわち、液晶分子LCは、電極28,43間に電圧が印加されない状態で、長手方向が上下方向に沿うように配置されている。また、これら液晶分子LCは、画素電極28の各櫛歯部32に沿って傾斜方向が制御される。
【0033】
偏光板18,19は、図4に示すように、吸収軸18a,19aが互いに交差した、いわゆるクロスニコル配置となっている。したがって、図4(a)に示すように、電極28,43間に電圧を印加されずに液晶分子LCが偏光板18,19に対して垂直に配向している場合、入射した光L1は液晶層17を通過しても液晶分子LCには屈折率異方性が存在しないため位相のずれが生じず偏光は変化せず、出射側の偏光板19によって吸収され黒表示となる。また、電極28,43間に電圧が印加されて図4(b)に示すように液晶分子LCが傾斜した状態の場合、光L1,L2は、液晶分子LCの屈折率異方性により偏光状態が変化し、出射側の偏光板19により吸収されず透過して、白表示となるものの、光L3は液晶分子LCの屈折率異方性の影響を受けないので出射側の偏光板19により吸収されて黒表示となる。すなわち、液晶パネル12は、電圧無印加時に黒表示となる、いわゆるノーマリブラックのものである。
【0034】
バックライト13は、冷陰極管、あるいはLEDなどの光源からの白色光を面状の白色光に変換する導光板(図示せず)を有し、液晶パネル12のアレイ基板15側に対向配置されている。
【0035】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0036】
(広視野角モード)
広視野角モードの場合、各画素Pにおいて、液晶分子LCを副画素SPaと副画素SPbとで互いに180°異なる方向に傾斜させる(倒す)ことで、視野角特性を平均化する。
【0037】
具体的に、図2(a)に示すように、副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)の薄膜トランジスタ26aをオフとし、薄膜トランジスタ26bをオンとするとともに、副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)の薄膜トランジスタ26aをオンとし、薄膜トランジスタ26bをオフとする。あるいは、図2(b)に示すように、副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)の薄膜トランジスタ26aをオンとし、薄膜トランジスタ26bをオフとするとともに、副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)の薄膜トランジスタ26aをオフとし、薄膜トランジスタ26bをオンとする。
【0038】
なお、薄膜トランジスタ26のオンとは、電極28,43間に電位差が生じる電圧が画素電極28に印加されることをいい、薄膜トランジスタ26のオフとは、電極28,43間に電位差が生じない電圧が画素電極28に印加されることをいうものとする。
【0039】
この結果、液晶分子LCが副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)と副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)とで互いに反対方向に傾斜することにより、左右それぞれの方向からの視野角特性が平均化されるため、図6(a)に示すように左側から見ても、図6(b)に示すように正面から見ても、図6(c)に示すように右側から見ても、図6(d)のグラフに示すように視野角依存性のない、すなわち、どの方向からも完全な表示状態、換言すれば白は白と見える表示が可能となる。
【0040】
(狭視野角モード)
狭視野角モードの場合、図2(c)に示すように液晶分子LCを所定の一方向、例えば右方向に傾斜させる画素部20が、図7(a)ないし図7(c)に示すように複数、例えば水平(H)方向3個、垂直(V)方向3個(3×3個)ずつ並ぶ画素部群51aと、図2(d)に示すように液晶分子LCを所定の一方向と反対方向、例えば左方向に傾斜させる画素部20が、複数、例えば水平(H)方向3個、垂直(V)方向3個(3×3個)ずつ並ぶ画素部群51bとを、表示領域において所定の妨害パターン、例えば市松模様などを形成するように薄膜トランジスタ26を制御して点在させる。なお、画素部群51aと画素部群51bとは、例えばストライプ状など、任意の妨害パターンに点在させることができる。
【0041】
具体的に、画素部群51aの副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)および副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)では、薄膜トランジスタ26bをそれぞれオンとし、薄膜トランジスタ26aをそれぞれオフとする。
【0042】
また、画素部群51bの副画素SPa(副画素SPar,SPag,SPab)および副画素SPb(副画素SPbr,SPbg,SPbb)では、薄膜トランジスタ26aをそれぞれオンとし、薄膜トランジスタ26bをそれぞれオフとする。
【0043】
この結果、図7(b)に示すように正面から見ると、通常の表示であるものの、図7(a)に示す左視野角では、画素部群51aの透過率が小さくなり(図7(d))黒く見え、市松模様の妨害パターンが生じ、図7(c)に示す右視野角では、画素部群51bの透過率が小さくなり(図7(d))黒く見え、市松模様の妨害パターンが生じるため、左右視野角において表示が完全な状態で観測できなくなる。したがって、表示を完全な状態で観測できる視野角が狭くなることから、事実上狭視野角となり、覗き込みなどに対する防止策として有効となる。
【0044】
上述したように、上記一実施の形態によれば、液晶分子LCの配向方向を長手方向に沿って制御する長手状の櫛歯部32を備えた対をなす画素電極28a,28bを互いに対向して配置した副画素SPを、画素P毎に櫛歯部32の長手方向に対をなすように配置することにより、薄膜トランジスタ26によって画素電極28の櫛歯部32を介して各画素Pの対をなす副画素SPa,SPbのそれぞれで液晶分子LCの配向方向を互いに反対方向に対向させたり(広視野角モード)、所定の妨害パターンを形成するように同一方向に偏らせたり(狭視野角モード)することで、可視角度調整フィルム、あるいはレンズフィルムなどの光学フィルタなどの別途部材を要することなく全体としての薄型化を可能としつつ視野角を必要に応じて容易に切り替え制御できる。
【0045】
また、薄膜トランジスタ26および画素電極28の櫛歯部32のみで液晶分子LCの配向方向を制御できるので、配向膜29,44のラビングを細かく制御するなどの必要がなく、製造性を低下させることがないとともに、画素P(画素部20)毎に液晶分子LCの配向方向を制御可能となるので、狭視野角モード時に形成される妨害パターンを任意に制御でき、この妨害パターンによって画像や文字などを表示したりすることも可能となり、表示可能な情報量を大幅に増加させることができる。
【0046】
さらに、画素電極28a,28bを、櫛歯部32が互いにスリット部34を介して離間されるように櫛歯状に形成し、かつ、互いの各スリット部34に互いの各櫛歯部32が位置するように配置することにより、副画素SPの面積を必要以上に大きくすることなく画素電極28a,28bを配置でき、高精細化にも対応可能になるとともに、櫛歯部32を高密度に配置できるので、液晶分子LCの配向方向を、より精度よく制御できる。
【0047】
また、液晶分子LCは、初期配向が基板15,16のそれぞれに対して垂直配向であるため、高コントラストで、かつ、応答性が良好となるとともに、配向膜29,44のラビングが必要なく、このラビングに伴う薄膜トランジスタ26の静電破壊やピンホールなどの問題が生じることがない。
【0048】
そして、上記液晶パネル12によって視野角を必要に応じて容易に切り替え制御できるので、液晶ディスプレイ11を公的な場で私的な情報を取り扱う機器、例えばキャッシュディスペンサ、ATM、ノート型PCあるいは携帯電話などの覗き込み防止用として好適に用いることができる。
【0049】
なお、上記一実施の形態の液晶パネル12を、図8に示すように、例えばCRT、あるいは有機/無機EL素子などの自発光型、あるいは液晶表示素子などの透過型の表示装置本体55の表示側に視野角制御フィルタとして適用して表示装置56を構成することも可能である。この場合には、液晶パネル12中にカラーフィルタ層42は不要である。この表示装置56でも、液晶パネル12によって視野角を必要に応じて容易に切り替え制御できるとともに、上記液晶パネル12を液晶ディスプレイ11に用いる場合と比較して、2倍以上の透過率を見込むことができる。
【符号の説明】
【0050】
12 液晶表示素子としての液晶パネル
15 基板としてのアレイ基板
16 基板としての対向基板
17 液晶層
26a,26b スイッチング素子としての薄膜トランジスタ
28a,28b 画素電極
32 制御部としての櫛歯部
34 スリット部
55 表示装置本体
56 表示装置
LC 液晶分子
P 画素
SP 副画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす基板と、
これら基板間に介在され液晶分子により構成される液晶層と、
長手状に形成され長手方向に沿って前記液晶分子の配向方向を制御する制御部を備えた対をなす画素電極が互いに対向して配置された副画素を、前記制御部の長手方向に対をなすように備えた画素と、
前記画素電極毎に設けられ、これら画素電極のそれぞれを駆動するスイッチング素子と
を具備したことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記画素電極は、前記制御部が互いにスリット部を介して離間されるように櫛歯状に複数形成され、かつ、互いの前記各スリット部に互いの前記各制御部が位置するように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記液晶分子は、初期配向が前記基板のそれぞれに対して垂直配向である
ことを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示素子。
【請求項4】
自発光型と透過型とのいずれかの表示装置本体と、
この表示装置本体の表示側に配置された請求項1ないし3いずれか一記載の液晶表示素子と
を具備したことを特徴とする表示装置。
【請求項1】
対をなす基板と、
これら基板間に介在され液晶分子により構成される液晶層と、
長手状に形成され長手方向に沿って前記液晶分子の配向方向を制御する制御部を備えた対をなす画素電極が互いに対向して配置された副画素を、前記制御部の長手方向に対をなすように備えた画素と、
前記画素電極毎に設けられ、これら画素電極のそれぞれを駆動するスイッチング素子と
を具備したことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記画素電極は、前記制御部が互いにスリット部を介して離間されるように櫛歯状に複数形成され、かつ、互いの前記各スリット部に互いの前記各制御部が位置するように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記液晶分子は、初期配向が前記基板のそれぞれに対して垂直配向である
ことを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示素子。
【請求項4】
自発光型と透過型とのいずれかの表示装置本体と、
この表示装置本体の表示側に配置された請求項1ないし3いずれか一記載の液晶表示素子と
を具備したことを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−175864(P2010−175864A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18841(P2009−18841)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
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