説明

液晶表示素子用シール剤、上下導通材料及び液晶表示素子

【課題】多量のラジカル開始剤を含有するシール剤では、シール剤構成成分が液晶中に染み出して液晶汚染を引き起こし、液晶表示に不具合を起こしやすいという従来の問題点を検討し、開始剤による液晶汚染を抑制した液晶表示素子用シール剤、上下導通材料及び液晶表示素子を提供する。
【解決手段】ラジカル硬化性樹脂及びジアジド化合物を含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記ジアジド化合物の含有量が、前記ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である液晶表示素子用シール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合開始剤による液晶汚染を抑制した液晶表示素子用シール剤、上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、電子部品等は、ますます高性能、高品位を求められており、なかでも、液晶パネルの開発が盛んであり、特に高品質が求められている。液晶パネル等の液晶表示素子は、2枚の電極付き透明基板を一定の間隔をおいて対向させ、その周囲をシール剤で接着してセルを形成し、一部に設けられた液晶注入口からセル内に液晶を注入し、その液晶注入口を封口剤を用いて封止することにより製造される。
【0003】
また、近年、液晶パネル等の液晶表示素子の製造方法は、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化等を目的として、従来の真空注入方式から、光硬化型の樹脂組成物からなるシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式にかわりつつある。
この滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方の透明基板を重ねあわせ、シール部に紫外線(UV)を照射して仮硬化を行う。その後、必要に応じて液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を製造する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができる。今後はこの滴下工法が液晶表示装置の製造方法の主流となると期待されている。
【0004】
ここで用いられるシール剤としては、液晶表示素子の製造工程の簡略化のため、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されているような、アクリル系硬化性樹脂を主成分とし、UV照射により硬化するものが多く用いられている。
しかし、UV照射により硬化するこれらのシール剤は、充分に硬化させるために、一般に多量のラジカル重合開始剤を含有しており、ラジカル重合開始剤の残渣や硬化反応による副生成物が液晶中に溶け出して、液晶パネルの表示品位を低下させるという問題があった。
特に、滴下工法では、シール剤が完全に硬化する前に液晶と接するため、多量のラジカル開始剤を含有するシール剤では、シール剤構成成分が液晶中に染み出して液晶汚染を引き起こし、液晶表示に不具合を起こしやすいという問題があった。
また、モバイル機器に液晶が普及している近年では、液晶パネル自体が過酷な環境に置かれることが多く、この問題が深刻化している。
【0005】
このような問題に対し、例えば、特許文献4には、ラジカル重合開始剤を高分子量化し、更に、ラジカル反応性基を分子内中に導入することによりこの問題を低減化させているものが開示されているが、変性純度があまり高くなく、反応残渣が多く存在するため、充分に問題解決できているとはいえなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−295087号公報
【特許文献2】特開2002−338946号公報
【特許文献3】特開2003−280004号公報
【特許文献4】特開2001−133794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、ラジカル重合開始剤による液晶汚染を抑制した液晶表示素子用シール剤、上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ラジカル硬化性樹脂及びジアジド化合物を含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記ジアジド化合物の含有量が、前記ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ラジカル重合開始剤としてジアジド化合物を用いることで、液晶表示素子用シール剤を、ラジカル重合開始剤の配合量が極めて微少量であっても硬化させることができるということを見出し、硬化物中にラジカル重合開始剤の反応による副生成物やラジカル重合開始剤の残渣がほとんど存在せず、また、未硬化のシール剤中に存在するラジカル重合開始剤の量も極めて微小であることから、液晶中に染み出す物質の量を抑制することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ラジカル重合開始剤として、ジアジド化合物を含有する。
上記ジアジド化合物の含有量としては、後述するラジカル硬化性樹脂100重量部に対して下限が0.0001重量部、上限が0.1重量部である。0.0001重量部未満であると、ラジカル開始剤としての機能を果たさず、0.1重量部を超えると、未反応のジアジド化合物や、反応により生じた副生成物が液晶に染み出し、液晶汚染を引き起こす。好ましい下限は0.001重量部である。
【0011】
上記ジアジド化合物としては特に限定されないが、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)及び(10)からなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。これらジアジド化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なかでも、反応性に優れることから(8)が好ましい。
【化1−1】

【0012】
【化1−2】

【0013】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ラジカル硬化性樹脂を含有する。
上記ラジカル硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル基を有する化合物、エチレン誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。なかでも、速やかに反応
が進行する点から、(メタ)アクリル基を有する化合物が好適に用いられる。
なお、ここでいう(メタ)アクリル基とは、アクリル基又はメタクリル基を意味する。
【0014】
上記(メタ)アクリル基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物としては特に限定されず、1官能のものとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H,−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0016】
また、上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート2−n−ブチル−2−エチル−1,3―プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエンルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシ
アヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。
【0019】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、エピコート828EL、エピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート806、エピコート4004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピクロンEXA1514(大日本インキ社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、RE−810NM(日本化薬社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロンEXA7015(大日本インキ社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、EP−4000S(旭電化社製)等のプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂、エピコートYX−4000H(ジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂、YSLV−50TE(東都化成社製)等のスルフィド型エポキシ樹脂、YSLV−80DE(東都化成社製)等のエーテル型エポキシ樹脂、EP−4088S(旭電化社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれも大日本インキ社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂、エピクロンN−770(大日本インキ社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンN−670−EXP−S(大日本インキ社製)等のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンHP7200(大日本インキ社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン430(大日本インキ社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ZX−1542(東都化成社製)、エピクロン726(大日本インキ社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611、(ナガセケムテックス社製)等のアルキルポリオール型エポキシ樹脂、YR−450、YR−207(いずれも東都化成社製)、エポリードPB(ダイセル化学社製)等のゴム変性型エポキシ樹脂、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等のグリシジルエステル化合物、エピコートYL−7000(ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂、その他YDC−1312、YSLV−80XY、Y
SLV−90CR(いずれも東都化成社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EXA−7120(大日本インキ社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物を反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレートは、具体的には、例えば、レゾルシノール型エポキシ樹脂EX−201(ナガセケムテックス社製)360重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、アクリル酸210重量部を空気を送り込みながら、90℃で還流攪拌しながら5時間反応させることによって得ることができる。
【0021】
また、エポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、エベクリル3700、エベクリル3600、エベクリル3701、エベクリル3703、エベクリル3200、エベクリル3201、エベクリル3600、エベクリル3702、エベクリル3412、エベクリル860、エベクリルRDX63182、エベクリル6040、エベクリル3800(いずれもダイセルユーシービー社製)、EA−1020、EA−1010、EA−5520、EA−5323、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0022】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を触媒である錫系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0023】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
また、上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートとしては、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0025】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル
酸誘導体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の市販品やエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA変性エポキシアクリレート等のエポキシアクリレート等が挙げられる。
【0026】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートは、具体的には、例えば、トリメチロールプロパン134重量部、重合禁止剤としてBHT0.2重量部、反応触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.01重量部、イソホロンジイソシアネート666重量部を加え、60℃で還流攪拌しながら2時間反応させ、次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート51重量部を加え、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌しながら2時間反応させることにより得ることができる。
【0027】
上記ウレタン(メタ)アクリレートで市販品のものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、エベクリル230、エベクリル270、エベクリル4858、エベクリル8402、エベクリル8804、エベクリル8803、エベクリル8807、エベクリル9260、エベクリル1290、エベクリル5129、エベクリル4842、エベクリル210、エベクリル4827、エベクリル6700、エベクリル220、エベクリル2220(いずれもダイセルユーシービー社製)、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンSH−500B(いずれも根上工業社製)、U−122P、U−108A、U−340P、U−4HA、U−6HA、U−324A、U−15HA、UA−5201P、UA−W2A、U−1084A、U−6LPA、U−2HA、U−2PHA、UA−4100、UA−7100、UA−4200、UA−4400、UA−340P、U−3HA、UA−7200、U−2061BA、U−10H、U−122A、U−340A、U−108、U−6H、UA−4000(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AT−600、UA−306H、AI−600、UA−101T、UA−101I、UA−306T、UA−306I等が挙げられる。
【0028】
本発明の液晶表示素子用シール剤を滴下工法に用いる場合、硬化前の液晶への成分溶出をより抑制するために、上記(メタ)アクリル基を有する化合物としては、1分子中に1つ以上の水素結合性官能基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0029】
上記水素結合性官能基としては特に限定されず、例えば、−OH基、−SH基、−NHR基(Rは、芳香族、脂肪族炭化水素、又は、これらの誘導体を表す)、−COOH基、−NHOH基等の官能基、また分子内に存在する−NHCO−、−NH−、−CONHCO−、−NH−NH−等の残基が挙げられ、特に導入の容易さから−OH基を選択することが好ましい。
【0030】
1分子中に1つ以上の水素結合性官能基を有し、かつ、(メタ)アクリル基を有する化合物としては、例えば、上記ウレタン(メタ)アクリレートやエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記ラジカル硬化性樹脂以外に、必要に応じて熱硬
化性樹脂を含有してもよい。
【0032】
上記熱硬化性樹脂としては、液晶表示素子用シール剤の接着性等を向上させる目的で、例えば、エポキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0033】
上記エポキシ基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、エピクロロヒドリン誘導体、環式脂肪族エポキシ樹脂、イソシアネートとグリシドールとの反応から得られる化合物等が挙げられる。
【0034】
上記エピクロロヒドリン誘導体としては特に限定されず、例えば、エピコート828EL、エピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート806、エピコート4004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピクロンEXA1514(大日本インキ社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、RE−810NM(日本化薬社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロンEXA7015(大日本インキ社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、EP−4000S(旭電化社製)等のプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂、エピコートYX−4000H(ジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂、YSLV−50TE(東都化成社製)等のスルフィド型エポキシ樹脂、YSLV−80DE(東都化成社製)等のエーテル型エポキシ樹脂、EP−4088S(旭電化社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれも大日本インキ社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂、エピクロンN−770(大日本インキ社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンN−670−EXP−S(大日本インキ社製)等のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンHP7200(大日本インキ社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン430(大日本インキ社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ZX−1542(東都化成社製)、エピクロン726(大日本インキ社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等のアルキルポリオール型エポキシ樹脂、YR−450、YR−207(いずれも東都化成社製)、エポリードPB(ダイセル化学社製)等のゴム変性型エポキシ樹脂、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等のグリシジルエステル化合物、エピコートYL−7000(ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂、その他YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも東都化成社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EXA−7120(大日本インキ社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0035】
また、上記環式脂肪族エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000、エポリードGT300、EHPE(いずれもダイセル化学社製)等が挙げられる。
【0036】
また、上記イソシアネートとグリシドールとの反応から得られる化合物は、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物に対して2当量のグリシドールを触媒である錫系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0037】
上記イソシアネートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2
,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
また、上記イソシアネートとしては、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0039】
上記イソシアネートとグリシドールとの反応から得られる化合物は、具体的には、例えば、トリメチロールプロパン134重量部、反応触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.01重量部、イソホロンジイソシアネート666重量部を加え、60℃で還流攪拌しながら2時間反応させ、次に、グリシドール222重量部を加え、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌しながら2時間反応させることにより得ることができる。
【0040】
上記ラジカル硬化性樹脂や上記熱硬化性樹脂(以下、これらを併せて硬化性樹脂ともいう)は、硬化時の未硬化残分を少しでも低減させるため、1分子中に2つ以上の反応性官能基を有する化合物であることが好ましい。
【0041】
また、上記硬化性樹脂としては、異なる反応性官能基を1分子中に有する化合物を用いてもよい。このような化合物としては、例えば、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物が挙げられる。
【0042】
上記1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物は、例えば、2つ以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる化合物や、2官能以上のイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びグリシドールを反応させることにより得られる化合物が挙げられる。
【0043】
上記2つ以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる化合物は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得ることができる。
【0044】
上記2つ以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる化合物の原料となるエポキシ化合物としては、例えば、エピコート828EL、エピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート806、エピコート4004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピクロンEXA1514(大日本インキ社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、RE−810NM(日本化薬社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロンEXA7015(大日本インキ社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、EP−4000S(旭電化社製)等のプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂、エピコートYX−4000H(ジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂、Y
SLV−50TE(東都化成社製)等のスルフィド型エポキシ樹脂、YSLV−80DE(東都化成社製)等のエーテル型エポキシ樹脂、EP−4088S(旭電化社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれも大日本インキ社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂、エピクロンN−770(大日本インキ社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンN−670−EXP−S(大日本インキ社製)等のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンHP7200(大日本インキ社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン430(大日本インキ社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ZX−1542(東都化成社製)、エピクロン726(大日本インキ社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611、(ナガセケムテックス社製)等のアルキルポリオール型エポキシ樹脂、YR−450、YR−207(いずれも東都化成社製)、エポリードPB(ダイセル化学社製)等のゴム変性型エポキシ樹脂、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等のグリシジルエステル化合物、エピコートYL−7000(ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂、その他YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも東都化成社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EXA−7120(大日本インキ社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0045】
上記2つ以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる化合物は、具体的には、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ダウケミカル社製:D.E.N.431)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、アクリル酸200重量部を空気を送り込みながら、90℃で還流攪拌しながら5時間反応させることによって得ることができる(この場合50%部分アクリル化されている)。
【0046】
上記2つ以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる化合物のうち、市販品としては、例えば、エベクリル1561(ダイセルユーシービー社製)が挙げられる。
上記2官能以上のイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びグリシドールを反応させることにより得られる化合物は、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びグリシドールそれぞれ1当量を触媒である錫系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0047】
上記2官能以上のイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びグリシドールを反応させることにより得られる化合物の原料となる2官能以上のイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
また、上記イソシアネートとしては、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、
トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0049】
上記2官能以上のイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びグリシドールを反応させることにより得られる化合物の原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の市販品やエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA変性エポキシアクリレート等のエポキシアクリレート等が挙げられる。
【0050】
上記2官能以上のイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体及びグリシドールを反応させることにより得られる化合物は、具体的には、例えば、トリメチロールプロパン134重量部、重合開始剤としてBHT0.2重量部、反応触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.01重量部、イソホロンジイソシアネート666重量部を加え、60℃で還流攪拌しながら2時間反応させ、次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート25.5重量部及びグリシドール111重量部を加え、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌しながら2時間反応させることにより得ることができる。
【0051】
上記硬化性樹脂は、硬化性樹脂中の反応性官能基の30mol%以上が(メタ)アクリル基であることが好ましい。硬化性樹脂中の(メタ)アクリル基が反応性官能基の30mol%未満であると、充分な光硬化性が得られない場合がある。更には、50〜90mol%が(メタ)アクリル基であることが好ましい。
【0052】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記含有物の他、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては特に限定されず、例えば、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0053】
上記アミン化合物とは、分子中に1個以上の1〜3級のアミノ基を有する化合物のことを意味し、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミン、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、2−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物、アミキュアPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製)等のアミンアダクト類、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0054】
上記多価フェノール系化合物とは、例えば、エピキュア170、エピキュアYL6065(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のポリフェノール化合物、エピキュアMP402FPI(ジャパンエポキシレジン社製)等のノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
【0055】
上記酸無水物としては、例えば、エピキュアYH−306、YH−307(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。
【0056】
なかでも低温硬化性、保存安定性に優れているという点でジヒドラジド化合物を用いるこ
とが好ましい。
上記熱硬化剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記熱硬化剤の含有量としては特に限定されないが、上記ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限は1重量部、好ましい上限は100重量部である。1重量部未満であると、エポキシの硬化が不充分になることがあり、100重量部を超えると、液晶表示素子用シール剤の保存安定性が悪化する恐れがあり、また、シール剤硬化物となった場合、耐湿性が低下する恐れがある。より好ましい上限は20重量部である。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤は、主に液晶表示素子用シール剤と液晶表示素子基板とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0059】
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記シランカップリング剤の含有量としては特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。0.1重量部未満であると、性能が充分に発揮されないことがあり、10重量部を超えると、余剰のシランカップリング剤が液晶に溶出し、表示品位を低下させる恐れがある。
より好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0061】
また、本発明の液晶表示素子用シール剤は、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等の目的に充填剤を含有してもよい。
【0062】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、等の無機フィラーやポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機フィラーが挙げられる。
【0063】
上記充填剤の含有量としては特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限は1重量部、好ましい上限は100重量部である。1重量部未満であると、性能が充分に発揮されないことあり、100重量部を超えると、液晶表示素子用シール剤の描画性等ハンドリング性を低下させる恐れがある。より好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0064】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化させた硬化体の体積抵抗率が10Ω・cm以上であることが好ましい。10Ω・cm未満であると、硬化後の本発明の液晶表示素子用シール剤の絶縁性悪くなり、製造する液晶表示素子がショートすることがある。
【0065】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては特に限定されず、上記ラジカル硬化性樹脂及びジアジド化合物と、必要に応じて配合される上記シランカップリング剤等の所定量とを、従来公知の方法により混合する方法等が挙げられる。この際、含有するイオン性不純物を除去するために、イオン吸着性固体と接触させてもよい。
【0066】
また、本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導
通材料を製造することができる。このような上下導通材料を用いれば、液晶を汚染することなく透明基板の電極を導電接続することができる。
本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0067】
上記導電性微粒子としては特に限定されず、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0068】
本発明の液晶表示素子用シール剤及び/又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0069】
本発明によれば、ラジカル重合開始剤による液晶汚染を抑制した液晶表示素子用シール剤、上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0071】
(A)エポキシ(メタ)アクリレートの合成
EX−201(レゾルシノール型エポキシ樹脂)120gをトルエン500mLに溶解させ、この溶液にトリフェニルホスフィン0.1gを加え、均一な溶液とした。この溶液にアクリル酸70gを還流攪拌下2時間かけて滴下後、更に還流攪拌を8時間行った。次いで、トルエンを除去することにより、全てのエポキシ基をアクリロイル基に変性したエポキシ(メタ)アクリレート(EX−201完全変性品:粘度60Pa)を得た。
【0072】
(B)エポキシ基の一部分をアクリル酸と反応させたノボラック型エポキシ樹脂の合成
フェノールノボラック型エポキシ樹脂N−770(大日本インキ社製)190gをトルエン500mLに溶解させ、この溶液にトリフェニルホスフィン0.1gを加え、均一な溶液とした。この溶液にアクリル酸35gを還流撹拌下2時間かけて滴下後、更に還流撹拌を6時間行った。次に、トルエンを除去することによって50mol%のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応したノボラック型固形変性エポキシ樹脂(以下、部分変性樹脂ともいう)を得た。変性率は樹脂を塩酸―ジオキサン溶液に溶解させた後、エポキシ基によって消費された塩酸量をKOHを用いて滴定する方法によって測定した。
【0073】
(実施例1)
(A)で製造したエポキシ(メタ)アクリレート20重量部、(B)で製造した部分変性樹脂80重量部、ラジカルジアジド化合物として上記式(8)で表されるジアジドカルコン(東洋合成工業社製)0.001重量部、熱硬化剤としてアミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製)16重量部、充填剤としてSO−C1(アドマテックス社製)30重量部、及び、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)2重量部を遊星式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて混合後、更に3本ロールを用いて混合させることにより液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0074】
(実施例2)
(A)で製造したエポキシ(メタ)アクリレートを50重量部、(B)で製造した部分変性樹脂を50重量部、熱硬化剤としてアミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製)を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0075】
(実施例3)
(A)で製造したエポキシ(メタ)アクリレート100重量部、ラジカルジアジド化合物としてジアジドカルコン(東洋合成工業社製)0.001重量部、充填剤としてSO−C1(アドマテックス社製)30重量部、及び、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)2重量部を遊星式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて混合後、更に3本ロールを用いて混合させることにより液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0076】
(実施例4)
(A)で製造したエポキシ(メタ)アクリレート50重量部、(B)で製造した部分変性樹脂50重量部、ラジカルジアジド化合物としてジアジドカルコン(東洋合成工業社製)0.01重量部、熱硬化剤としてアミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製)10重量部、充填剤としてSO−C1(アドマテックス社製)30重量部、及び、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)2重量部を遊星式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて混合後、更に3本ロールを用いて混合させることにより液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0077】
(比較例1)
(A)で製造したエポキシアクリレート50重量部、(B)で製造した部分変性樹脂50重量部、開始剤として光重合開始剤であるイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカル社製)1重量部、熱硬化剤としてアミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製)10重量部、充填剤としてSO−C1(アドマテックス社製)30重量部、及び、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)2重量部を遊星式攪拌機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて混合後、更に3本ロールを用いて混合させることにより液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0078】
(比較例2)
開始剤として光重合開始剤であるKR−02(ライトケミカル社製)を1重量部用いた以外は、比較例1と同様にして液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0079】
(比較例3)
開始剤として光重合開始剤であるKR−02(ライトケミカル社製)を0.1重量部用いた以外は、比較例1と同様にして液晶表示素子用シール剤を製造した。
【0080】
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた液晶表示素子用シール剤について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0081】
(1)液晶への影響評価
10mLサンプル管に得られたそれぞれの液晶表示素子用シール剤0.1gを入れ、サンプル管の底に平滑に広がるまで放置した後、上部より紫外線を50mW/cmで60秒照射した。その後、更に液晶(5001:メルク社製)を1g加え、120℃1時間加熱を行ない、液晶表示素子用シール剤の熱硬化を終了させた。
このサンプルをさらに80℃下に保管し、液晶比抵抗値の経時変化(200時間、500時間)を測定した。
なお、液晶表示素子用シール剤に接触しない液晶の比抵抗は120℃1時間加熱後で4.01×1013Ω・cmであり、80℃500時間保管後の値は3.89×1013Ω・cmであった。
【0082】
(2)UV硬化性
得られたそれぞれの液晶表示素子用シール剤100重量部に対して、平均粒径5μmのポリマービーズ(積水化学工業株式会社製;ミクロパールSP)3重量部を遊星式撹拌装置によって分散させ均一な液とし、極微量をコーニングガラス1737(20mm×50mm×1.1mm)の中央部に取り、同型のガラスをその上に重ね合わせてシール剤を押し広げ、紫外線を50mW/cmで60秒照射した。次に、上下ガラスを剥がし、液晶表示素子用シール剤中のアクリル基の転化率をIR法によって解析した。
なお、転化率は810cm−1のピークの減少量から算出した。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、ラジカル重合開始剤による液晶汚染を抑制した液晶表示素子用シール剤、上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル硬化性樹脂及びジアジド化合物を含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記ジアジド化合物の含有量が、前記ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して0.0001〜0.1重量部であることを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
ジアジド化合物は、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)及び(10)からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【化1−1】

【化1−2】

【請求項3】
請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項4】
請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤及び/又は請求項3記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2006−243396(P2006−243396A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59582(P2005−59582)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】