説明

液晶表示装置、液晶表示装置の製造方法

【課題】良好な電圧応答特性を保持しつつ、透過率を向上させることが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置1では、画素電極12が、液晶層15の側から順に、第1サブ電極12A、誘電体層13および第2サブ電極12Bを有する。第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bへ供給する電位Va,Vbを適宜設定することで、液晶層15のうちのスリット直上の領域Aへの印加電圧と、スリットのない領域Bへの印加電圧との大小関係を目的に応じて自在に制御可能となる。映像表示時には、液晶層15全体で電界歪みを軽減するような駆動を行い、スリット位置に起因した局部的な透過率低下を抑制する。製造プロセス(プレチルト付与工程)では、プレチルト付与に有利な電界歪み(横電界)を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばVAモードの液晶を用いた液晶表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)では、例えばVA(Vertical Alignment)モードの液晶が用いられている。このような液晶表示装置では、画素電極を有する基板と対向電極を有する基板と間に、垂直配向膜を介して液晶層が封止されるが、この液晶層が、負の誘電率異方性、即ち液晶分子の誘電率がその短軸方向よりも長軸方向において小さい、という性質を有している。このような構造により、液晶は、電圧無印加時(オフ状態)には液晶分子の長軸方向が基板面に対して垂直な方向に沿った配向となるが、電圧印加時(オン状態)には、その電圧の大きさに応じて液晶分子が倒れた(傾いた)配向となる。
【0003】
ところが、電圧無印加の状態において液晶層に電圧が印加されると、基板面に垂直に配向していた液晶分子が倒れるが、その倒れる方向は任意である。このため、液晶分子の配向が乱れ、電圧に対する応答が遅くなる、あるいは所望の透過率を得にくい等の弊害が生じる。
【0004】
そこで、電圧応答時における液晶分子の倒れる方向を規制するために、予め液晶分子を特定の方向に傾けて配列させておく(いわゆるプレチルトを付与する)手法が利用されている。即ち、例えば配向膜を布等で擦り一定方向に沿った溝を形成するラビング方式や、電極に所定の間隔でスリットやリブ(突起)等を設けたMVA(Multi-domain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式等である。また、この他にも、一方の基板側を垂直配向、もう一方の基板側を水平配向としたHAN型(ハイブリッド配向型)のものも提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
更に最近では、画素電極に複数のスリットを設け、対向電極をベタ形成(スリットなし)すると共に、ポリマーにより液晶分子をプレチルト状態に保持したPSA(Polymer Sustained Alignment)方式も提案されている(特許文献2)。このようなプレチルトを用いた手法によれば、液晶分子の電圧に対する応答特性を改善できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−202575号公報
【特許文献2】米国特許7145622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の手法では、電圧応答特性を改善することはできるものの、液晶層のうち、画素電極のスリットに対応する部分(スリットの直上)では、他の部分(スリットのない部分)に比べ十分な電圧が印加されにくい。また、特にスリットのエッジ付近において電界歪み(横電界)が生じるために、液晶が捩れながら配向する。このため、駆動時には、スリット位置に対応して暗線(局所的に光透過量の少ない部分)が生じ、高透過率を得にくいという問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、良好な電圧応答特性を保持しつつ、透過率を向上させることが可能な液晶表示装置および液晶表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、液晶層と、液晶層を挟んで対向配置された一対の基板と、一対の基板のうち一方の基板の液晶層側に設けられた複数の画素電極と、複数の画素電極に対向して他方の基板に設けられた対向電極とを備えたものである。各画素電極は、液晶層の側から順に、1または複数のスリットを有する第1のサブ電極と、誘電体層と、少なくとも第1のサブ電極のスリットに対向する領域に配置された第2のサブ電極とを有している。
【0010】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、一対の基板のうち一方の基板に複数の画素電極を形成する工程と、他方の基板に対向電極を形成する工程と、一対の基板間に液晶層を封止する工程と、画素電極と対向電極とを通じて液晶層に電圧を印加しつつ液晶層を露光することにより、液晶層にプレチルトを付与する工程とを含むものである。複数の画素電極を形成する工程では、各画素電極として一方の基板側から、第2のサブ電極と、誘電体層と、第2のサブ電極に対向して1または複数のスリットを有する第1のサブ電極とをこの順に形成する。
【0011】
本発明の液晶表示装置および液晶表示装置の製造方法では、画素電極を、スリットを有する第1のサブ電極と、少なくともそのスリットに対向配置された第2のサブ電極との2層電極構造とすると共に、これら第1および第2のサブ電極間に誘電体層を設ける。このため、例えば各電極への供給電位を適宜設定することによって、液晶層のうちスリット直上の領域に印加される電圧と、スリットのない領域に印加される電圧との大小関係を自在に制御可能となる。従って、映像表示時には、液晶層全体で電界歪みを軽減するような駆動が可能となり、この結果、例えばスリット位置に起因した局部的な透過率低下が抑制される。一方、製造プロセスでは、プレチルト付与に有利な電界歪み(横電界)を発生させることができるようになる。
【0012】
具体的には、映像表示時おいては(液晶表示装置では)、駆動部が、各画素電極および対向電極に対し、例えば次のような電位供給を行うことが望ましい。即ち、液晶層のスリット直上の第1領域への印加電圧(第1のサブ電極と対向電極との電位差に応じた電圧)と、スリットのない第2領域への印加電圧(第2のサブ電極と対向電極との電位差に応じた電圧)との差が低減されるように、より望ましくは同等となるように電位供給を行うのがよい。
【0013】
一方、製造プロセスでは(液晶表示装置の製造方法では)、プレチルト付与工程において、液晶層に対し、例えば次のような電圧を印加することが望ましい。即ち、スリット直上の第1領域への印加電圧(第1のサブ電極と対向電極との電位差に応じた電圧)と、スリットのない第2領域への印加電圧(第2のサブ電極と対向電極との電位差に応じた電圧)とを互いに異なるようにするのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液晶表示装置およびその製造方法によれば、画素電極が、スリットを有する第1のサブ電極と、誘電体層と、少なくともそのスリットに対向する第2のサブ電極とを有するので、液晶層における電界分布を目的に応じて制御可能となる。例えば、映像表示時には電界歪みを抑制して局所的に透過率が下がることを抑制する一方、製造プロセスでは、電界歪みを発生させてプレチルト付与を効率的に行うことができる。よって、良好な電圧応答特性を保持しつつ、透過率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置の全体構成を表すブロック図である。
【図2】図1に示した画素の一部領域の断面図である。
【図3】液晶分子のプレチルト角を説明するための模式図である。
【図4】図2に示した第1サブ電極および第2サブ電極の平面図である。
【図5】図2に示した画素電極および対向電極への電位供給の概要を説明するための断面模式図である。
【図6】図5に示した画素電極および対向電極間の回路構成図である。
【図7】図1に示した液晶表示装置の製造方法(プレチルト付加工程)を説明するための断面模式図である。
【図8】実施例1の電界分布(等電位分布)を表した特性図である。
【図9】実施例1の電界分布(等電位分布)を表した特性図である。
【図10】比較例に係る液晶表示装置における画素の一部領域の断面図である。
【図11】比較例の電界分布(等電位分布)を表した特性図、および液晶分子の配向状態を表す平面模式図である。
【図12】実施例2の第2サブ電極への供給電位と透過率との関係(T=200nm)を表す特性図である。
【図13】実施例2の第2サブ電極への供給電位と透過率との関係(T=400nm)を表す特性図である。
【図14】実施例2の第2サブ電極への供給電位と透過率との関係(T=1000nm)を表す特性図である。
【図15】実施例3の電界分布(等電位分布)を表した特性図である。
【図16】実施例3の透過率分布の測定結果を表した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

実施の形態(画素電極を、2つの電極で誘電体膜を挟んだ積層構造とした例)
1.液晶表示装置の構成
2.液晶表示装置の製造方法(プレチルト付与時の電位Va,Vbの設定例)
3.液晶表示装置の作用(映像表示時の電位Va,Vbの設定例)

【0017】
<実施の形態>
[液晶表示装置1の構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置(液晶表示装置1)の全体構成を表すものである。液晶表示装置1は、例えば液晶表示パネル2、バックライト3、データドライバ51、ゲートドライバ52、タイミング制御部61およびバックライト駆動部62を備え、外部入力信号Dinに基づいて映像表示を行うものである。
【0018】
バックライト3は、液晶表示パネル2に向けて光を照射する光源であり、液晶表示パネル2の背面(後述の入射側偏光板19側の面)側に配置される。このバックライト3は、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)やCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)等を含むものである。バックライト駆動部62は、そのバックライト3の点灯動作(発光動作)を制御するものである。
【0019】
タイミング制御部61は、ゲートドライバ52、データドライバ51およびバックライト駆動部62の駆動タイミングを制御すると共に、外部入力信号Dinに基づく映像信号をデータドライバ51へ供給するものである。
【0020】
ゲートドライバ52は、タイミング制御部61によるタイミング制御に従って、液晶表示パネル2内の各画素10を駆動するものである。データドライバ51は、タイミング制御部61から供給される映像信号(外部入力信号Dinに基づく映像信号)に対してD/A変換を施すと共に、そのD/A変換後の映像信号を液晶表示パネル2の各画素10へ出力するものである。ゲートドライバ52およびデータドライバ51からの各駆動信号により選択された画素10に、映像信号に応じて設定された電位Va,Vb(詳細は後述)がそれぞれ供給されるようになっている。
【0021】
液晶表示パネル2は、ゲートドライバ52から供給される駆動信号およびデータドライバ51から供給される映像信号に基づき、バックライト3から発せられる光を変調するものである。この液晶表示パネル2は、全体としてマトリクス状に配置された複数の画素10を含む。
【0022】
図2は、液晶表示パネル2の断面構成を表すものである。但し、図2では、画素10の一部領域のみを示している。液晶表示パネル2は、駆動基板11と対向基板18との間に液晶層15を挟み込んだものであり、駆動基板11および対向基板18の外側には、入射側偏光板19および出射側偏光板20が貼り合わせられている。駆動基板11の液晶層15側の面には、画素電極12が画素毎に配設されており、この画素電極12の表面を覆って配向膜14が形成されている。対向基板18の液晶層15側の面には、有効表示領域のほぼ全面に渡って対向電極17が配設され、この対向電極17の表面を覆って配向膜16が形成されている。
【0023】
駆動基板11は、例えばガラス基板上に画素10を駆動するための駆動回路、例えば前述したゲートドライバ52、データドライバ51、タイミング制御部61およびバックライト制御部62等が配設されたものである。この駆動基板11上において、各画素電極12には、ゲートドライバ52およびデータドライバ51からの各駆動信号が伝送されるゲート線やソース線等の配線と、TFT(薄膜トランジスタ)(いずれも図示せず)等が接続されている。このTFTは、画素10毎に1つあるいは2つ配設されている。詳細は後述するが、本実施の形態において画素電極12は、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bの2つの電極層を有する。このため、これらの第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bへ互いに同一の電位を供給する場合には、TFTは1つとする。第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bへ互いに異なる電位を供給する場合には、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12BにTFTおよび配線が別々に設けられる。
【0024】
対向基板18は、ガラス基板の表面(対向電極17側の面または出射側偏光板20側の面)に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)のフィルタが配列してなるカラーフィルタ(図示せず)を有するものである。
【0025】
対向電極17は、例えばITO等の透明導電膜からなり、各画素10に共通の電極として(全ての画素電極12と対向して)設けられている。この対向電極17は、所定の電位、例えばグランド電位に保持されている。
【0026】
配向膜14,16は、例えば垂直配向膜であり、液晶層15内の液晶分子(詳細には配向膜14,16近傍の液晶分子)を、その長軸方向(ダイレクタ)が基板面に対してほぼ垂直となるように配向させるものである。このような配向膜14,16としては、例えばポリイミドやポリシロキサン等の垂直配向剤が用いられる。
【0027】
液晶層15は、例えば垂直配向型の液晶分子を含むものである。この液晶層15では、液晶分子が、例えば長軸および短軸をそれぞれ中心軸として回転対称な形状をなし、負の誘電率異方性(長軸方向における誘電率が短軸方向よりも小さい性質)を示す。
【0028】
この液晶層15では、図3に示したように、配向膜14,16との界面近傍の液晶分子(液晶分子15a)が、配向膜14,16からの規制により長軸方向D1が基板面に略垂直となるように配向しつつ、その垂直方向から僅かに傾いた状態で保持されている。即ち、液晶層15の配向膜14,16との界面近傍では、いわゆるプレチルトが付与されており、液晶分子15aの垂直方向からの傾き角(プレチルト角)θは、例えば0°〜3°程度である。このようなプレチルトは、液晶層15の配向膜14,16との界面近傍においてポリマーによって保持されており、この界面近傍の液晶分子の配向に倣って他の液晶分子(例えば液晶層15の厚み方向における中央付近の液晶分子)も同等の方向に配向している。
【0029】
入射側偏光板19および出射側偏光板20は、例えば互いにクロスニコルの状態で配置されており、バックライト3からの光を電圧無印加状態(オフ状態)では遮断、電圧印加状態(オン状態)では透過させるようになっている。即ち、ノーマリーブラックとなるように、入射側偏光板19および出射側偏光板20が駆動基板11および対向基板18に貼り合わせられている。
【0030】
(画素電極12の構成)
画素電極12は、駆動基板11の側から順に、第2サブ電極12B、誘電体層13および第1サブ電極12Aを積層したものである。
【0031】
図4(A)は、第1サブ電極12Aの平面構成を模式的に表したものである。第1サブ電極12Aには、複数の線状のスリット12a1が所定のパターンで設けられている。例えば、スリット12a1は、電極面内の複数の方向(ここでは4つの方向A1〜A4)に沿って延在して設けられている。このようなスリットパターンを有することにより、画素10内に配向方向の異なる領域が形成(配向分割)されるため、視野角特性が向上する。このような第1サブ電極12Aは、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなり、厚みは例えば50nm〜200nmである。スリット12a1の幅Sは、例えば2nm〜8nmであり、このスリット12a1と同方向に延在する電極部分12a2の幅Lは、例えば2nm〜8nmである。
【0032】
尚、スリット12a1のパターンとしては、このような4方向に沿って延在するパターンに限らず、例えばストライプ状やV字状など様々なパターンを採用できる。また、スリット12a1の幅Sやその数、電極部分12a2の幅Lやその数についても任意に設定可能である。
【0033】
図4(B)は、第2サブ電極12Bの平面構成を模式的に表したものである。第2サブ電極12Bは、第1サブ電極12Aの全域に渡って設けられており、ここでは、スリットや間隙等のない電極となっている。以下では、このような第2サブ電極12Bを、 “ベタ電極”と称して説明する。但し、第2サブ電極12Bは、少なくとも第1サブ電極12Aのスリット12a1に対向する領域(スリット12a1の直下の領域)に形成されていればよい。つまり、第2サブ電極12Bは、必ずしもベタ電極でなければならない訳ではなく、第1サブ電極12Aの電極部分12a2に対向する領域(電極部分12a2の直下の領域)には、スリットや間隙等が設けられていてもよい。このような第2サブ電極12Bは、例えばITO等の透明導電膜からなり、厚みは例えば50nm〜200nmである。尚、図4(A),(B)のI−I線における断面構成が図2における第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bの構成に対応している。
【0034】
誘電体層13は、画素10毎に、あるいは有効表示領域の全域に渡って、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12B間に挿設されている。この誘電体層13は、例えば窒化シリコン(SiN)等の無機絶縁膜あるいは有機絶縁膜よりなり、誘電率が例えば3〜7である場合には、厚みが例えば0.01μm〜10μmであり、望ましくは0.1μm〜3μmである。
【0035】
上記のように、画素電極12は、誘電体層13を介して第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bが積層された2層電極構造を有する。このような電極構造において、液晶層15に近い側の第1サブ電極12Aが複数のスリット12a1を有し、液晶層15に遠い側の第2サブ電極12Bがベタ電極となっている。
【0036】
これらの第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bにはそれぞれ、前述のタイミング制御部61、ゲートドライバ52およびデータドライバ51の駆動により、互いに同一のまたは異なる電位を供給可能である。例えば、図5に示したように、第1サブ電極12Aには電位Va、第2サブ電極12Bには電位Vbがそれぞれ供給可能であると共に、対向電極17は、例えばグランド電位に設定されている。これにより、液晶層15のスリット12a1の直上の領域(領域A)には、対向電極17と第2サブ電極12Bとの電位差(Vb)に応じた電圧が印加されるようになっている。一方、液晶層15の電極部分12a2の直上の領域(領域B)には、対向電極17と第1サブ電極12Aとの電位差(Va)に応じた電圧が印加されるようになっている。図6に、領域A,Bにおける回路構成を示す。但し、CLCを第1サブ電極12Aおよび対向電極17間の静電容量、CINSを第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12B間の静電容量とする。静電容量CLCは、電極部分12a2の中心部、静電容量CINSは、スリット12a1の中心部をそれぞれ想定したものである。
【0037】
電位Va,Vbは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよいが、同一電位とする場合には、上述のように、TFTは各画素10に1つ配設されていればよい。一方、電位Va,Vbを同一電位に限らず、互いに異なる電位にも設定可能にする場合には、各画素10に2つのTFTを配設すればよい。
【0038】
このような画素電極12の電極構造により、後述する製造プロセス(プレチルト付与時)および映像表示時の各場合に応じて、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bのそれぞれに所望の電位が供給されるようになっている。
【0039】
[液晶表示装置1の製造方法]
(1.パネル封止工程)
液晶表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。即ち、まず、駆動基板11の表面に、2つのTFTを公知の薄膜プロセスにより形成した後、そのTFTが形成された表面を覆うように、絶縁膜よりなる平坦化膜を成膜する。この平坦化膜上に、第2サブ電極12Bを例えば蒸着法やスパッタ法により成膜した後、フォトリソグラフィ法により画素10毎に矩形状にパターニングする。続いて、この第2サブ電極12B上に、誘電体層13を例えばプラズマCVD法により、所望の厚みとなるように成膜する。次いで、誘電体層13上に、第1サブ電極12Aを、例えば蒸着法やスパッタ法により成膜した後、フォトリソグラフィ法により複数のスリット12a1をパターン形成する。尚、誘電体層13および平坦化膜にはコンタクトホールを設け、このコンタクトホールを介して第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bをそれぞれ、駆動基板11上に形成されたTFTに電気的に接続するようにする。このようにして形成した画素電極12の表面、具体的には、第1サブ電極12Aの電極部分12a2の表面、およびスリット12a1により露出した誘電体層13の表面を覆うように、垂直配向剤を例えばスピンコート法により塗布し、ベークすることにより、配向膜14を形成する。
【0040】
一方、対向基板18の表面に、対向電極17を例えば蒸着法やスパッタ法により成膜した後、この対向電極17の表面に垂直配向剤を、例えばスピンコート法により塗布し、ベークすることにより、配向膜16を形成する。
【0041】
この後、駆動基板11の周縁領域に、例えばUV硬化性や熱硬化性のシール部を印刷し、このシール部に囲まれた領域に、例えばUV硬化性のモノマーを混入させた液晶を滴下注入することにより液晶層15を形成する。この後、駆動基板11上に、対向基板18を、例えば感光性のアクリル樹脂よりなるスペーサを介して重ね合わせ、シール部を硬化させる。このようにして、駆動基板11および対向基板18間に液晶層15が封止されたパネル封止体が形成される。
【0042】
(2.プレチルト付加工程)
続いて、上記のようにして形成したパネル封止体において、液晶層15に電圧を印加しつつ露光(UV照射)することにより、液晶層15にプレチルトを付加する。具体的には、図7(A)に示したように、対向電極17をグランド電位に保持しつつ、画素電極12の第1サブ電極12Aに電位Va、第2サブ電極12Bに電位Vbをそれぞれ供給する。但し、この際、領域A,Bのそれぞれに印加される電圧が異なるように、電位Va,Vbを設定する。具体的には、電位Va,Vbを以下の式(5)を満足するように設定すればよい。
Vb≠Va×(CINS+CLC)/CINS ………(5)
【0043】
これにより、液晶層15には、電界歪み(横電界)が発生し、液晶分子15aがスリット12a1のパターンに応じて傾倒し易くなる。そして、この液晶分子15aが傾いた状態で、UV照射を行うことにより、液晶層15に混入したモノマーが、配向膜14,16との界面近傍において硬化する。この後、図7(B)に示したように、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bをグランド電位とし、液晶層15を電圧無印加状態に戻すと、その界面近傍に形成されたポリマーが液晶分子15aを垂直方向から僅かに傾けた状態で保持する。このようにして、液晶分子15aには、図3に示したようなプレチルト角θが付与される。
【0044】
尚、電位Va,Vbは、上記式(5)に満足するものであれば、互いに異なっていてもよいが、互いに同一となるように、即ち以下の式(6)を満足するように設定してもよい。式(6)を満足する場合、上述したように第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bを駆動するためのTFTを1つ配設すれば足りるため、装置構成が簡易化する。
Vb=Va ………(6)
【0045】
図8(A)〜(C)および図9(A),(B)に、上記の式(5)を満足する電位Va,Vbにより、液晶層15に形成される電界分布(等電位分布)についての実施例(実施例1)を示す。但し、各図において、X(μm)は基板面においてスリット12a1の延在方向と直交する方向におけるスケールを示している。Z(μm)は、液晶層15の厚み方向におけるスケールであり、Z=0を第1サブ電極12A側(配向膜14側)、Z=3.5μmを対向電極側(配向膜16側)とする。
【0046】
実施例1では、上記のようなパネル封止体において、第1サブ電極12Aのスリット12a1の幅Sを4μm、電極部分12a2の幅Lを4μmとし、誘電体層13には誘電率ε=6および厚みT=200nmのSiNを用いた。配向膜14,16は、垂直配向膜(JALS2131−R6:JSR製)を、第1サブ電極12A上に塗布し、ホットプレート上で80℃、80秒間乾燥させた後、窒素雰囲気のクリーンオーブン内で200℃、60分間ベークすることにより形成した。液晶層15としては、誘電率ε(⊥)=6.2、ε(‖)=3.0、厚みが3.5μmのVA液晶を用い、アクリルモノマー(A−BP−2E:新中村化学製)を0.3wt%混入した。また、このような構成により、静電容量CLCは15.8×10-12F、静電容量CINSは267×10-12F(面積は1μm2換算)となった。尚、真空の誘電率ε0は8.9×10-12Fとした。
【0047】
このようなパネル封止体に対し、電位Vaを10V(一定)に設定し、電位Vbを変化させつつ液晶層15に電圧を印加した。具体的には、電位Vbの電位Vaに対する比(Vb/Va)を、それぞれ0、0.5、0.75、1、1.2となるように設定した。実施例1では、上記式(5)を満足して電位Va,Vbを設定することにより、液晶層15には、プレチルト付与に有効な電界歪みが生じ、また電位Va,Vbの比率によって、電界歪みの発生具合が異なることがわかる。ここでは、図8(C)に示したVb/Va=0.75の場合が、プレチルト形成に理想的な電界分布となっている。但し、電位Va,Vbの組み合わせは、これに限定されず、所望のプレチルト角、液晶層15の液晶材料や厚み、モノマー材料、第1サブ電極12Aのスリット12a1および電極部分12a2のスケール、誘電体層13の材料や厚み等に応じて、適宜設定すればよい。
【0048】
上記のようにしてプレチルト付与後のパネル封止体の駆動基板11の裏面に、入射側偏光板19、対向基板18の表面に出射側偏光板20を、互いにクロスニコル配置となるように貼り合わせる。これにより、図1に示した液晶表示装置1が完成する。
【0049】
[液晶表示装置1の作用]
(映像表示動作)
液晶表示装置1では、以下の要領で画素電極12と対向電極17との間に、外部入力信号Dinに基づく駆動電圧を印加することにより、映像が表示される。具体的には、タイミング制御部61の制御に応じて、ゲートドライバ52が、各画素10に接続されたゲート線に走査信号を順次供給すると共に、データドライバ51が、外部入力信号Dinに基づく映像信号を、所定のソース線に供給する。これにより、映像信号が供給されたソース線と走査信号が供給されたゲート線との交差点に位置する画素10が選択され、その画素10に駆動電圧が印加されることとなる。
【0050】
選択された画素10では、駆動電圧が印加されると、液晶層15に含まれる液晶分子15aの配向状態が、画素電極12と対向電極17との間の電位差に応じて変化する。具体的には、電圧無印加状態から駆動電圧が印加されることにより、配向膜14,16の近傍に位置する液晶分子15aが倒れ、その動作に倣うように、液晶層15の厚み方向中央部に向かって、順次液晶分子15aが倒れていく。この際、液晶分子15aにプレチルト角が付与されていることにより、液晶分子15aがその自らの傾き方向に倒れ易くなることから、駆動電圧に対する応答時間が短くなる。その結果、液晶層15における光学的特性が変化し、バックライト3から液晶表示パネル2へ入射した光は、変調されて出射する。液晶表示装置1では、このようにして映像が表示される。
【0051】
ここで、比較例に係る液晶表示装置の映像表示動作について説明する。図10は、比較例に係る液晶表示装置の画素の一部領域の断面構成を表したものである。この液晶表示装置は、駆動基板101と対向基板107との間に液晶層104を挟み込んだものであり、駆動基板101および対向基板107の外側には、入射側偏光板108および出射側偏光板109が貼り合わせられている。駆動基板101の液晶層104側の面には、画素電極102が画素毎に配設されており、この画素電極102の表面を覆って配向膜103が形成されている。対向基板107の液晶層104側の面には、有効表示領域のほぼ全面に渡って対向電極106が配設され、この対向電極106の表面を覆って配向膜105が形成されている。即ち、比較例の液晶表示装置では、画素電極103が、複数のスリット102a1を有する、いわゆるファインスリット構造が採用されている。
【0052】
図11(A)に、上記比較例の映像表示時における電界分布、図11(B)は、その際の液晶分子(液晶分子104a)の配向状態を模式的に示す。但し、図11(B)において、Y(μm)は基板面においてスリット12a1の延在方向におけるスケールを示しており、Y軸において破線で囲った部分よりも上方が画素電極102のスリット102a1、下方が電極部分102a2に対応している。また、液晶分子104aを、円形部分と棒状部分とを用いて模式的に表しているが、棒状部分は液晶分子の長軸方向(ダイレクタ)を示し、円形部分はその長軸方向先端(液晶分子の“頭”)を示している。例えば、円形部分のみで示されている液晶分子104aは、基板面に対してほぼ垂直な方向に沿って立っている姿勢であることを表しており、棒状部分がより長く示されている液晶分子104a程、基板面に垂直な方向からより大きな角度で倒れていることを表している。尚、画素電極以外の構成条件およびプロセス条件は、上記実施例1と同様とした。
【0053】
比較例では、図11(A),(B)に示したように、液晶層104において、スリット102a1の直上の領域Aと、電極部分102a2の直上の領域Bとの間で、印加電圧に差が発生し易い(電界歪みが生じ易い)。このため、領域Aでは、領域Bに比べ、液晶分子104aが倒れにくい。この結果、映像表示の際には、領域Aでは領域Bに比べて透過光量が少なくなることから、スリット位置に起因して局部的に輝度の低い箇所(暗線)が生じ、透過率が低下してしまう。また、輝度分布も不均一なものとなるため、表示画質が低下する。
【0054】
これに対し、本実施の形態では、画素電極12が、複数のスリット12a1を有する第1サブ電極12Aと、ベタ形成された第2サブ電極12Bとの2層電極構造とされ、これらの第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12B間に誘電体層13が挿設されている。これにより、対向電極17、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bの各電極への供給電位を適宜設定することにより、液晶層15のうち領域Aへ印加される電圧と、領域Bへ印加される電圧との大小関係を自在に制御可能となる。
【0055】
従って、映像表示の際には、液晶層15全体で電界歪みの発生を軽減させるような駆動が可能となる。このため、本実施の形態では、例えばスリット12a1のパターンに起因して透過率が低下することが抑制される。
【0056】
(映像表示時における電位Va,Vbの設定)
詳細には、領域Aおよび領域Bにそれぞれ印加される電圧同士の差が低減されるように、第1サブ電極12Aへ供給する電位Vaと、第2サブ電極12Bに供給する電位Vbとをそれぞれ設定する。尚、ここでは、例えば電位Vaを映像信号に基づく電位とし、この電位Vaの値に応じて電位Vbを設定する場合を例に挙げて説明するが、逆に電位Vbを映像信号に基づく電位として、これに応じて電位Vaを設定するようにしてもよい。
【0057】
電位Vbは、以下の式(1)および式(2)を満足するように設定するとよい。理想的には、以下の式(3)を満足することが望ましい。式(1),(2)を満足することにより、上述の単層構造の画素電極102を有する比較例(図8)よりも高透過率を得られる。更に、式(3)を満足することにより、領域A,B間の各電圧を略同一とすることができるため、液晶層15に形成される電界がフラットとなり、画素電極12を実質的にスリットや凹凸のないベタ電極と見做すことができる。従って、より透過率を高めることができ、また、輝度分布が均一化されるため、良好な表示画質を実現できる。
0.8{Va×(CINS+CLC)/CINS}≦Vb ………(1)
Vb≦1.2{Va×(CINS+CLC)/CINS} ………(2)
Vb=Va×(CINS+CLC)/CINS ………(3)
【0058】
ここで、上記式(1),(2)の導出について説明する。図12〜図14に、実施例2として、電位Vaを10V(一定)とした場合の、電位Vbと透過率との関係を示す。尚、画素電極12、液晶層15、配向膜14,16についての構成条件およびプロセス条件については、上記実施例1と同様とした。但し、誘電体層13の厚みTを、図12では200nm、図13では400nm、図14では1000nmとした。また、透過率は、出射光量/入射光量とし、最大透過率を1として記載している。尚、上述の単層構造の画素電極102を有する比較例(図10)における透過率は、画素電極102に電位10V(一定)を供給した場合、各図に点線で示したように0.88となった。また、T=200nmのとき、CLC=15.8×10-12F、CINS=267×10-12F、T=400nmのとき、CLC=15.8×10-12F、CINS=134×10-12F、T=1000nmのときには、CLC=15.8×10-12F、CINS=26.7×10-12Fとなった。
【0059】
実施例2では、誘電体層13の厚みTの大きさに応じて静電容量CINSが変化するため、電位Vbに対する透過率特性は異なってくるが、いずれのケースにおいても、比較例の透過率(0.88)を上回る透過率を実現することが望ましい。表1に、誘電体層13の厚みTが200nm,400nm,1000nmの各場合における理想的な電位(上記式(3)を満たす電位)Vb0、透過率が0.88となる電位(比較例と同等の透過率となる電位)Vb1、およびこれらの比(Vb1/Vb0)を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示したように、厚みT=200nmの場合、電位Vb0が10.6V、電位Vb1が8.2Vとなり、厚みT=400nmの場合、電位Vb0が11.2V、電位Vb1が8.9Vとなり、厚みT=1000nmの場合、電位Vb0が13.0V、電位Vb1が9.6Vとなった。また、Vb1/Vb0は、それぞれ0.77、0.80、0.75となり、理想的な電位Vb0に対する電位Vb1の変動幅はそれぞれ、23%、20%、25%となった。これらの結果から、比較例よりも高透過率を実現するためには、理想的な電位Vb0に対する変動幅が20%以内となるように、電位Vbを設定することが望ましいことがわかる。即ち、上記式(3)によって与えられる電位Vbが理想的な値ではあるが、その0.8倍以上1.2倍以下であれば(つまり、上記式(1),(2)を満足すれば)、比較例よりも高透過率を実現可能となる。
【0062】
図15(A)〜(D)には、上記の式(1),(2)を満足する電位Va,Vbにより、液晶層15に形成される電界分布(等電位分布)についての実施例(実施例3)を示す。但し、各図において、X(μm)は基板面においてスリット12a1の延在方向と直交する方向におけるスケールを示している。Z(μm)は、液晶層15の厚み方向におけるスケールであり、Z=0を第1サブ電極12A側(配向膜14側)、Z=3.5μmを対向電極側(配向膜16側)とする。また、液晶表示パネル2において、第1サブ電極12A、誘電体層13、配向膜14,16および液晶層15の構成要件およびプロセス条件を上記実施例1と同様とした。これにより、実施例3においても、CLC=15.8×10-12F、CINS=267×10-12Fとなった。
【0063】
このような液晶表示パネル2に対し、電位Vaを10V(一定)に設定し、電位Vbを変化させつつ液晶層15に電圧を印加した。具体的には、電位Vbの電位Vaに対する比(Vb/Va)を、それぞれ1、1.05、1.1、1.2となるように設定した。図15(A)〜(D)に示したように、上記式(1),(2)を満足して電位Va,Vbを設定することにより、液晶層15では、上記比較例における電界分布(図11(A))と比べ、領域A,B間での電圧差が低減され、電界歪みが軽減されていることがわかる。これにより、スリット12a1に起因して生じる暗線の発生が抑制され、高透過率が実現される(図16(A)〜(D))。図16(A)〜(D)は、実施例3におけるXY平面における透過率分布の測定結果である。
【0064】
また、ここでは、図15(B)に示したVb/Va=1.05(Vb=10.5V)の場合が、上記式(3)を満たすVb=10.6Vと近く、ほぼ理想的な電界分布(フラットな電界分布)となっている。但し、電位Va,Vbの組み合わせは、これに限定されず、映像信号に基づく電位、液晶層15の液晶材料や厚み、モノマー材料、第1サブ電極12Aのスリット12a1および電極部分12a2のスケール、誘電体層13の材料や厚み等に応じて、適宜設定すればよい。
【0065】
尚、上記式(3)の代わりに、上記製造プロセスにおいて式(6)を満足するように電位Va,Vbを設定する場合と同様の理由から、電位Va,Vbを互いに等しく、即ち、以下の式(4)を満足するようにしてもよい。
Vb=Va ………(4)
【0066】
以上説明したように、本実施の形態では、画素電極12が、第1サブ電極12Aと第2サブ電極12Bとの2層電極構造とすると共に、これらの第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12B間に誘電体層13を設ける。このため、第1サブ電極12Aおよび第2サブ電極12Bへ供給する電位Va,Vbを適宜設定することで、液晶層15のうちのスリット直上の領域Aへの印加電圧と、スリットのない領域Bへの印加電圧との大小関係を目的に応じて自在に制御可能となる。例えば、映像表示時には、スリット12a1からの影響を極力低減して液晶層15全体で電界歪みを軽減するような駆動を行うことができ、この結果、例えばスリット位置に起因した局部的な透過率低下を抑制できる。一方で、製造プロセス(プレチルト付与工程)においては、スリット12a1の機能を効果的に発揮させ、プレチルト付与に有利な電界歪み(横電界)を発生させることができる。よって、良好な電圧応答特性を保持しつつ、透過率を向上させることが可能となる。
【0067】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、第1サブ電極12Aへの供給電位Vaを10V(一定)とし、この電位Vaと上記式(1)〜(6)のいずれかに基づいて、電位Vbを設定する場合を例に挙げて説明したが、電位Vaは勿論10Vに限らず、他の値としてもよい。
【0068】
また、映像表示時には、電位Vaを映像信号に基づく電位として説明したが、映像信号に基づく電位を電位Vbとしてもよく、あるいは、映像信号に応じて電位Va,Vbの双方を上記(1)〜(4)に基づいて適切な値にそれぞれ設定してもよい。
【0069】
更に、本発明の液晶表示装置における各層の材料や厚み、寸法等は、上述したものに限定されない。例えば、液晶層15や誘電体層13については、その材料や厚み等の選定の仕方により、各電極間の静電容量CLC,CINSが変化するが、上記式(1)〜(6)のいずれかに基づいて電位Va,Vbを設定すればよい。また、第1サブ電極12Aでは、スリットの幅Sと電極部分の幅Lとが互いに等しい(S=L=4μm)である場合を例に挙げて説明したが、スリットの幅Sと電極部分の幅Lとは互いに異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…液晶表示装置、2…液晶表示パネル、3…バックライト、10…画素、11…駆動基板、12…画素電極、12A…第1サブ電極、12a1…スリット、12a2…電極部分、12B…第2サブ電極、13…誘電体層、14,16…配向膜、15…液晶層、15a…液晶分子、17…対向電極、18…対向基板、19…入射側偏光板、20…出射側偏光板、51…データドライバ、52…ゲートドライバ、61…タイミング制御部、62…バックライト駆動部、Va,Vb…電位、CLC,CINS…静電容量、θ…プレチルト角、D1…長軸方向(ダイレクタ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、
前記液晶層を挟んで対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板のうち一方の基板の前記液晶層側に設けられた複数の画素電極と、
前記複数の画素電極に対向して、他方の基板に設けられた対向電極とを備え、
各画素電極は、前記液晶層の側から順に、1または複数のスリットを有する第1のサブ電極と、誘電体層と、少なくとも前記スリットに対向する領域に配置された第2のサブ電極とを有する
液晶表示装置。
【請求項2】
各画素電極および前記対向電極に対し電位供給を行う駆動部を備え、
前記液晶層は、前記第1のサブ電極と前記対向電極との電位差に応じた電圧が印加される第1領域と、前記第2のサブ電極と前記対向電極との電位差に応じた電圧が印加される第2領域とを含み、
前記駆動部は、前記液晶層の前記第1領域および前記第2領域に印加される各電圧同士の差が低減されるように、前記対向電極、前記第1および第2のサブ電極のそれぞれに電位供給を行う
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記駆動部は、以下の式(1)および式(2)を満足するように電位供給を行う
請求項2に記載の液晶表示装置。
0.8{Va×(CINS+CLC)/CINS}<Vb ………(1)
Vb<1.2{Va×(CINS+CLC)/CINS} ………(2)
但し、
Va:第1のサブ電極と対向電極との間の電位差
Vb:第2のサブ電極と対向電極との間の電位差
INS:第1および第2のサブ電極間の静電容量
LC:第1のサブ電極および対向電極間の静電容量
とする。
【請求項4】
更に、以下の式(3)を満足する請求項3に記載の液晶表示装置。
Vb=Va×(CINS+CLC)/CINS ………(3)
【請求項5】
更に、以下の式(4)を満足する請求項3に記載の液晶表示装置。
Vb=Va ………(4)
【請求項6】
各画素電極において、前記第1のサブ電極は複数のスリットを有する
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2のサブ電極は、前記第1のサブ電極の全域に渡って設けられている
請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記液晶層では、前記画素電極および前記対向電極の近傍においてプレチルトが付与されている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
一対の基板のうち一方の基板に複数の画素電極を形成する工程と、
他方の基板に対向電極を形成する工程と、
前記一対の基板間に液晶層を封止する工程と、
前記画素電極と前記対向電極とを通じて前記液晶層に電圧を印加しつつ、前記液晶層を露光することにより、前記液晶層にプレチルトを付与する工程とを含み、
前記複数の画素電極を形成する工程では、
各画素電極として前記一方の基板側から、第2のサブ電極と、誘電体層と、第2のサブ電極に対向して1または複数のスリットを有する第1のサブ電極とをこの順に形成する
液晶表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記液晶層は、前記第1のサブ電極および前記対向電極間の電位差に応じた電圧が印加される第1領域と、前記第2のサブ電極および前記対向電極間の電位差に応じた電圧が印加される第2領域とを含み、
前記プレチルトを付与する工程では、前記液晶層の前記第1領域および前記第2領域に互いに異なる電圧を印加する
請求項9に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項11】
以下の式(5)を満足するように、前記液晶層に電圧を印加する
請求項10に記載の液晶表示装置の製造方法。
Vb≠Va×(CINS+CLC)/CINS ………(5)
但し、
Va:第1のサブ電極と対向電極との間の電位差
Vb:第2のサブ電極と対向電極との間の電位差
INS:第1および第2のサブ電極間の静電容量
LC:第1のサブ電極および対向電極間の静電容量
とする。
【請求項12】
更に、以下の式(6)を満足する
請求項11に記載の液晶表示装置の製造方法。
Vb=Va ………(6)
【請求項13】
前記複数の画素電極を形成する工程では、
前記第1のサブ電極に複数のスリットを形成する
請求項9ないし請求項12のいずれか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2のサブ電極を前記第1のサブ電極の全域に渡って形成する
請求項13に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−221400(P2011−221400A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92420(P2010−92420)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】