説明

液晶表示装置の駆動方法及び液晶表示装置

【課題】フリッカの発生を抑制することができる液晶表示装置の駆動方法及び液晶表示装置の提供。
【解決手段】液晶物質の応答が生じないような時間間隔で連続的に2回画素電圧及び共通電圧をフリップさせることを、所定期間だけ繰り返して行う。所定期間経過後に、画素電圧及び共通電圧の位相を反転させるために、画素電圧及び共通電圧のフリップを1回だけ行い、引き続いて、液晶物質の応答が生じないような時間間隔で連続的に2回画素電圧及び共通電圧をフリップさせることを、所定期間だけ繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリッカの発生を抑制することができる液晶表示装置の駆動方法及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型液晶表示装置として代表的な薄膜トランジスタ(TFT)型は、画素毎に設けた薄膜トランジスタTFTをスイッチング素子として画素電極に信号電圧(映像信号電圧:階調電圧)を印加するものであるため、画素間のクロストークがなく、高精細で多階調表示が可能である。
【0003】
一方、この種の液晶表示装置を携帯型の情報端末など、電源にバッテリーを用いる電子装置に実装した場合、その表示に伴う消費電力の低減化が必要となる。そのために、液晶表示装置の各画素にメモリ機能を持たせたものが従来より提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0004】
いわゆるダイナミックメモリタイプと称する液晶表示装置であり、ソースバスラインとゲートバスラインとの交点に設置した薄膜トランジスタTFTの出力側(画素電極側)にDRAMセル(DRAM : Dynamic Random Access memory)などのメモリを設け、これに表示データを保持することで所定時間の間、表示データを保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−536347号公報
【特許文献2】特表2006−523323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このダイナミックメモリタイプの液晶表示装置は、メモリに保持したデータが時間と共にリークするため、定期的なリフレッシュを必要とする。特に、多結晶シリコン半導体を用いて画素のメモリ機能を構成する場合は、リーク電流が大きくなる傾向があり、この作用としてフリッカが顕著に現れる。
【0007】
フリッカを抑えるためには、リフレッシュサイクルを短くする必要がある。しかしながら、リフレッシュサイクルを短くすることは、各画素にメモリ機能を持たせることで必要な書き込みを省き、周辺回路、及び消費電力の低減を図るという効果を低下させることになる。
すなわち、フリッカの問題と消費電力の問題とはトレードオフの関係にあり、低消費電力を実現しつつ、フリッカを抑えることが可能な液晶表示装置の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、液晶物質の応答が生じないような時間間隔でメモリに対するリフレッシュを偶数回行う動作を所定期間繰り返す第1のリフレッシュ動作と、前記所定期間経過後に前記メモリに対するリフレッシュを奇数回行う第2のリフレッシュ動作とを交互に繰り返すことにより、低消費電力を実現し、しかもフリッカの発生を抑えることが可能な液晶表示装置の駆動方法、及びこの駆動方法により駆動される液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液晶表示装置の駆動方法は、液晶物質に印加する電圧をスイッチング素子によりオン/オフ制御すると共に、前記液晶物質に印加された電圧の値を前記スイッチング素子のオフ期間にメモリを用いて保持することにより、前記液晶物質の光透過率又は光反射率を制御する液晶表示装置の駆動方法において、前記液晶物質の応答が生じないような時間間隔で前記メモリに対するリフレッシュを偶数回行う動作を所定期間繰り返す第1のリフレッシュ動作と、前記所定期間経過後に前記メモリに対するリフレッシュを奇数回行う第2のリフレッシュ動作とを交互に繰り返すことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る液晶表示装置の駆動方法は、前記所定期間を、前記第2のリフレッシュ動作を行う期間よりも長く設定してあることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る液晶表示装置の駆動方法は、前記所定期間が、人間の目が色の変化として認識し難いくらい長く、かつ表示する画像の焼き付きが発生しないくらい短い時間であることを特徴とする。
【0012】
本発明の液晶表示装置は、液晶物質に印加する電圧をスイッチング素子によりオン/オフ制御すると共に、前記液晶物質に印加された電圧の値を前記スイッチング素子のオフ期間にメモリを用いて保持することにより、前記液晶物質の光透過率又は光反射率を制御する液晶表示装置において、前記液晶物質の応答が生じないような時間間隔で前記メモリに対するリフレッシュを偶数回行う動作を所定期間繰り返す第1のリフレッシュ動作と、前記所定期間経過後に前記メモリに対するリフレッシュを奇数回行う第2のリフレッシュ動作とを交互に繰り返す手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の液晶表示装置は、前記所定期間を、前記第2のリフレッシュ動作を行う期間よりも長く設定してあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る液晶表示装置は、前記所定期間が、人間の目が色の変化として認識し難いくらい長く、かつ表示する画像の焼き付きが発生しないくらい短い時間であることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、第1のリフレッシュ動作において、メモリのリフレッシュを行う時間間隔が液晶物質の応答が生じないような時間間隔に設定されているため、第1のリフレッシュを行っている所定期間は、液晶物質の光学特性(光透過率及び光反射率)が殆ど変化しない。
また、第2のリフレッシュ動作に移行させる際に、フィードスルー効果の影響を受けて、液晶物質の光学特性が少しだけ変化することになるが、引き続いて第1のリフレッシュ動作を行うため、変化した後の光学特性が更に所定期間だけ保持されることになる。
【0016】
本発明にあっては、第1のリフレッシュ動作と第2のリフレッシュ動作とを交互に繰り返して行うため、同じ色(例えば白色)を表示している場合には、第2のリフレッシュ動作の実行時に、液晶物質の光学特性の変化が見られる。
第1のリフレッシュ動作と第2のリフレッシュ動作とを、例えば1Hz程度よりも低い周波数で切り替えることにより、第2のリフレッシュ動作へ移行する際の光学特性の変化に起因したフリッカが人の目に認識されにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による場合は、液晶物質に印加する電圧の値を保持したメモリに対するリフレッシュ頻度を落とすことができ、液晶表示装置全体の消費電力を低く保つことができる。
また、液晶物質の光学特性(光透過率及び光反射率)を変化させることなく、メモリのリフレッシュを行えるため、フリッカの発生が抑えられる。
しかも、同じ色(例えば白色)を表示している場合であっても、人の目が色の変化として認識し難いくらいの長い時間(例えば、1秒以上)を周期として、画素電圧の位相及び共通電圧の位相を反転させるので、焼き付きの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施の形態における画素回路を概略的に説明する回路図である。
【図3】本実施の形態における駆動シーケンスの一例を示す図である。
【図4】液晶物質の光学特性と印加電圧レベルの絶対値との関係を示すグラフである。
【図5】白画素及び黒画素におけるフリッカの現れ方を説明した説明図である。
【図6】白画素及び黒画素におけるフリッカの現れ方を説明した説明図である。
【図7】液晶パネルの断面図である。
【図8】セルギャップに起因したフィードスルー電圧の相違を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。本実施の形態に係る液晶表示装置は、制御回路101、画像メモリ102、電源回路103、ソースドライバ104、ゲートドライバ105、液晶パネル106、反射板(不図示)を備え、外光の反射によって表示を行う反射型の液晶表示装置である。
【0020】
制御回路101は、入力される同期信号から、メモリ制御信号、電源制御信号、ソースドライバ制御信号、及びゲートドライバ制御信号を生成し、生成した各制御信号を、それぞれ、画像メモリ102、電源回路103、ソースドライバ104、ゲートドライバ105へ出力する。
【0021】
画像メモリ102は、入力される表示データを一時的に記憶し、制御回路101から入力されたメモリ制御信号に同期して液晶パネル106に表示すべき画素データをソースドライバ104へ出力する。なお、画像メモリ102は制御回路101に内蔵され、制御回路101にて内部処理されるような構成であってもよいことはいうまでもない。
【0022】
ここで、入力される同期信号及び表示データは、携帯電話機、携帯型ゲーム機等に搭載されたCPU又はLCDコントロールICから出力されるLCD信号、パーソナルコンピュータ(PC)のCRT出力信号をA/D変換した信号、PC等に搭載されたビデオRAMを制御回路101が直接的に制御して取得した信号等に含まれるものである。
【0023】
電源回路103は、制御回路101から入力された電源制御信号に同期してソースドライバ104用の駆動電圧Vs、ゲートドライバ105用の駆動電圧Vg、及び液晶パネル106の共通電極用の共通電圧Vcomを生成し、それぞれ、ソースドライバ104、ゲートドライバ105、及び液晶パネル106へ出力する。
【0024】
ゲートドライバ105は、制御回路101から入力されたゲートドライバ制御信号に同期して、後述するスイッチング素子12(図2を参照)をオン/オフ制御する走査電圧を出力部に順次出力し、出力された走査電圧を液晶パネル106の走査線に印加する機能と、すべてのスイッチング素子12をオン制御する電圧を出力部に一斉に出力し、出力された電圧を液晶パネル106のすべての走査線に印加する機能とを有する。
【0025】
ソースドライバ104は、制御回路101から入力されたソースドライバ制御信号に同期して、画像メモリ102から出力された画素データを取り込み、画素データに応じた電圧を液晶パネル106のデータ線に印加する機能と、ソースドライバ制御信号と非同期に、外部電源より入力された外部電圧を液晶パネル106の全てのデータに印加する機能とを有する。
【0026】
液晶パネル106は、各画素を構成する画素回路10,10,10,…がマトリクス状に配置された基板と、共通電極13(対向電極ともいう)が配置された基板との間に液晶物質14を封入したものである。画素回路10の構成については図2を用いて説明することとするが、画素回路10は、画素電極11及びこの画素電極11に印加する電圧をオン/オフ制御するスイッチング素子12を備え、スイッチング素子12のオン期間にデータ電圧を画素電極11と共通電極13との間に印加すると共に、印加されたデータ電圧の値をスイッチング素子12のオフ期間にDRAMなどのメモリ15を用いて保持し、このデータ電圧によって決定される液晶物質の光透過率又は光反射率を制御するための回路である。
【0027】
図2は本実施の形態における画素回路10を概略的に説明する回路図である。画素回路10は、画素電極11に印加する電圧をオン/オフ制御するスイッチング素子12を備える。スイッチング素子12としてはTFT(Thin-Film Transistor)が用いられる。このスイッチング素子12のオン期間にデータ電圧(すなわち、画素電極11に印加される電圧と共通電極13に印加される電圧との電位差)を印加することにより、2つの基板の間に封入された液晶物質14に所望の電圧を印加する構成としている。
【0028】
また、画素回路10の構成要素として、液晶物質14に印加されている電圧の値を保持するためのメモリ15を備える。メモリ15としては、SRAMセル(SRAM : Static Random Access Memory)と比較してサイズ面で有利なDRAMセルを用いる。このメモリ15は、液晶物質14に印加された電圧の値をスイッチング素子12のオフ期間に保持するための機能を有する。メモリ15としてDRAMを採用しているため、保持した電圧の値を維持するために、定期的なリフレッシュ(記憶保持動作)が行われる。
【0029】
本実施の形態では、スイッチング素子12のオン期間に印加された電圧、及びこのメモリ15に保持された電圧の値に基づいて、液晶物質14の光透過率(又は光反射率)を制御することにより、液晶パネル106において画像の表示を行う。
【0030】
図3は本実施の形態における駆動シーケンスの一例を示す図である。駆動シーケンスの上段(図3(a))は、画素電極11に印加される電圧(画素電圧)の時間変化を示したものであり、駆動シーケンスの中段(図3(b))は、共通電極13に印加される電圧(共通電圧)の時間変化を示したものである。この駆動シーケンスにおいて特徴的なことの1つは、液晶物質14の応答が生じないような時間間隔で連続的に2回画素電圧及び共通電圧をフリップさせることを、所定期間だけ繰り返して行っていることである。液晶物質14の応答が10ms程度である場合、例えば、1ms程度の時間間隔でフリップさせることを行う。すなわち、図3は、第1のリフレッシュ動作として、1msの時間間隔で2回リフレッシュする動作を所定期間(1s)だけ繰り返して実行している様子を示している。
なお、本実施の形態では、第1のリフレッシュ動作として、画素電圧及び共通電圧を連続的に2回フリップさせているが、2回に限らず、偶数回行うことも可能である。
【0031】
また、本実施の形態の駆動シーケンスにおいて特徴的なことの他の1つは、連続的に2回フリップさせる動作を繰り返して行った後(所定時間経過後)、1回だけ画素電圧及び共通電圧をフリップさせることである。すなわち、図3は、第1のリフレッシュ後、第2のリフレッシュ動作として、1回だけリフレッシュする動作を行っている様子を示している。引き続き、上記と同様に液晶物質14の応答が生じないような時間間隔で連続的に2回画素電圧及び共通電圧をフリップさせる動作を所定期間だけ繰り返す。これにより、画素電圧の位相及び共通電圧の位相が上記所定期間の経過前後において反転する。本実施の形態に係る駆動シーケンスでは、このような第1のリフレッシュ動作及び第2のリフレッシュ動作を交互に繰り返すことを特徴としている。
なお、本実施の形態では、第2のリフレッシュ動作として、画素電圧及び共通電圧を1回だけフリップさせているが、1回に限定する必要はなく、3回以上の奇数回行うことも可能である。
【0032】
図3(c)は、上記駆動シーケンスを採用した場合の、液晶物質14の光透過率(又は光反射率)の時間を示したものである。液晶物質14の光透過率(又は光反射率)は、所定期間ほぼ一定となり、次の所定期間の切り替え時には微小な変化はあるものの、次の所定期間において変化した値をほぼ保つことができる。所定期間経過後の切り替え時における光透過率(又は光反射率)が微小であるため、切り替え時間を調整することにより、人間の目にはフリッカとして認識されなくなる。切り替え周期が、10Hz程度になるとフリッカとして認識され易くなるので、10Hz程度より低い周期で切り替えを行うことが望ましい。
【0033】
以下、図3で示した駆動シーケンスで駆動される本実施の形態に係る液晶表示装置の特性を、従来の構成と比較しながら説明する。各画素がメモリを持たない従来の液晶表示装置では、フリッカを抑えるために60Hz程度で駆動し、各画素へのデータの書き込みを随時行う必要が生じる。各画素へのデータの書き込みを行うために、各バスラインを通じて充放電を繰り返すため、バスライン1本当たりの寄生容量が10〜100pF程度の小さな値であっても、トータルでは数mW〜数十mW程度の消費電力が必要になる。そのため、各画素がメモリを持たない従来の液晶表示装置では、消費電力を低減させることが困難となる。
【0034】
これに対し、本実施の形態に係る液晶表示装置は、バックライトを必要としない反射型の液晶表示装置であり、そもそもバックライトを点灯させるための電力が不要である。更に、各画素回路10がDRAMセルを備えており(MIP : Memory In Pixel)、スイッチング素子12のオフ期間にデータ電圧の値をDRAMセルにより保持することが可能であるため、各バスラインを通じた充放電を休めることができる。そのため、各画素がメモリを持たない従来の液晶表示装置と比較して、消費電力を低減させることが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態では、印加されたデータ電圧の値をスイッチング素子12のオフ期間に保持するためにDRAMセルを用いており、このDRAMセルに保持されるデータ電圧の値を維持するために、DRAMセルのリフレッシュを行う。DRAMセルはデジタルメモリであるため、HIGHレベルの電圧が維持されるような時間間隔でリフレッシュを行えば、リフレッシュ自体の目的を果たすことが可能である。しかしながら、リフレッシュの直後から画素より電流のリークが発生し得るため、DRAMセルで保持される電圧の値はアナログ的に減少する。
【0036】
図4は液晶物質の光学特性と印加電圧レベルの絶対値との関係を示すグラフである。横軸は液晶物質に印加する電圧レベルの絶対値を表し、縦軸はその液晶物質の透過率(又は反射率)を表す。図4のグラフに示されるように、液晶物質の透過率(又は反射率)は、印加される電圧レベルに対して非線形なカーブを持つ。人間の目は、この光学特性に関して非常に敏感であるため、上述のように画素からの電流のリークが存在する場合、たとえそれが電圧差の非常に小さな変化(例えば、10mV程度)であったとしても、人間の目にはノイズ又はフリッカとして認識される。
【0037】
一般的に、ノーマリブラック方式の液晶パネルでは、白色を表示する際のフリッカが顕著となる。すなわち、液晶物質の透過率を印加電圧で偏微分した場合、白色の表示域では偏微分の絶対値(ΔTw=|dT/dv|)が有限の値を持つのに対し、黒色の表示域では偏微分の絶対値(ΔTb=|dT/dv|)が略ゼロであるため、白色の表示域では、印加電圧の変化に対して透過率が変化し易い。
【0038】
フリッカを抑える方法として、画素電圧と同一のソースバスラインを形成することが考えられる。しかしながら、ソースバスラインは、一つのコラム上で配列している全ての画素にとって共通であるため、ソースバスの電圧が共通電圧に達した場合、ブラック画素(黒色を表示している画素)からのリークは最小になる。しかし、この場合にはホワイト画素(白色を表示している画素)からのリークが最大となる。逆に、ソースバスの電圧がホワイト画素の電圧と同じになった場合、ホワイト画素からのリークは最小となるが、黒画素からのリークが最大となる。図5及び図6は白画素及び黒画素におけるフリッカの現れ方を説明した説明図である。
【0039】
このように、共通電圧の調整を行ったとしても、黒画素及び白画素の双方を同時的にリークを減少させることはできない。しかしながら、上述したように、透過率(又は反射率)は、白色の表示域と比べ黒色の表示域の方が、画素電圧の変化に対する依存性が非常に小さい。そのため、ソースバスの電圧をホワイト画素を表示するときの電圧レベルに保つと、フリッカをより小さく抑えることができる。
【0040】
この方法により、画素(主としてホワイト画素)からのリークに起因したフリッカを抑えたとしても、依然としてフリッカが視認される。フリッカが視認されるもう一つの要因は、ディスプレイにおけるセルギャップの不均一性である。図7は液晶パネルの断面図である。セルギャップの値(すなわち、液晶物質を挟む2つの基板間の距離)はスペーサー及び密封材によって定まるものであり、製造工程においてセルギャップの不均一性が必然的に発生する。例えば、液晶パネルの面内において、中央付近のセルギャップが狭く、周辺領域のセルギャップが広い(または、中央付近のセルギャップが広く、周辺領域のセルギャップが狭い)という不均一性が生じる(図7(a)及び図7(b)を参照)。
【0041】
各画素にDRAMを設けた本実施の形態の液晶表示装置では、画素電圧がフィードスルー効果の影響を強く受ける。更に、液晶パネルの面内においてセルギャップが不均一であるため、セルギャップの値に応じて画素のキャパシタンスが変化する。このキャパシタンスの変化に伴い、各画素の間でフィードスルー電圧の値にばらつきが生じる。
【0042】
図8はセルギャップに起因したフィードスルー電圧の相違を説明する図である。セルギャップが狭い場合、画素のキャパシタンスは大きくなるため、図8(a)に示すようにフィードスルーの影響が小さくなる。一方、セルギャップが広い場合、画素のキャパシタンスは小さくなるため、図8(b)に示すように、フィードスルーの影響が大きくなる。一般的には、画素電圧の正負間の振幅は共通電圧のレベル調整によって補償することができる。しかしながら、液晶パネル面内のセルギャップの不均一性に起因してフィードスルー電圧にばらつきが生じるため、共通電圧のレベル調整が非常に困難となる。例えば、図8(a)に示されるように、中央付近のセルギャップが狭く、周辺領域のセルギャップが広い液晶パネルにおいて、中央付近の画素のフィードスルー電圧を考慮して共通電圧のレベル調整を行った場合、周辺領域の画素のフィードスルー効果については無視できる程度まで軽減することができない。その結果、中央付近の画素についてはフリッカを抑えることができても、周辺領域の画素についてはフリッカが依然として視認される。
【0043】
一般的なディスプレイでは、60Hz程度で駆動することによりフリッカを抑えることができる。しかしながら、MIPを採用した本来の目的は消費電力を抑えることであるから、より高いフレームレートを採用して、消費電力が上昇することは本来の目的から外れることになる。
【0044】
本実施の形態では、単に高いフレームレートを採用するのではなく、図3に示したような駆動シーケンスを採用することにより、スイッチング素子12のオフ期間における画素(主としてホワイト画素)からのリーク電流に起因したフリッカ、及び液晶パネル106における面内のセルギャップの不均一性に起因したフリッカの双方を抑える構成とした。
【0045】
これにより、液晶物質14に印加する電圧の値を保持したメモリ15に対するリフレッシュ頻度を落とすことができ、液晶表示装置全体の消費電力を低く保つことができる。特に、メモリ15から読み出した電圧値を基にリフレッシュを行う公知の手法(例えば、特表2006−523323号公報に記載の手法)を用いることにより、各画素回路10の内部でリフレッシュ動作が完結し、リフレッシュ動作のために画素回路10の外部から充放電を繰り返す必要がないため、低消費電力を実現することができる。
【0046】
また、液晶物質14の光学特性(光透過率及び光反射率)を変化させることなく、メモリ15のリフレッシュを行えるため、60Hz程度の高フレームレートを用いることなくフリッカの発生を抑えることができる。
【0047】
しかも、同じ色(例えば白色)を表示している場合であっても、人の目が色の変化として認識し難いくらいの長い時間(例えば、1秒以上)を周期として、画素電圧の位相及び共通電圧の位相を反転させるので、焼き付きの発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 画素回路
11 画素電極
12 スイッチング素子
13 共通電極
14 液晶物質
15 メモリ
101 制御回路
102 画像メモリ
103 電源回路
104 ソースドライバ
105 ゲートドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶物質に印加する電圧をスイッチング素子によりオン/オフ制御すると共に、前記液晶物質に印加された電圧の値を前記スイッチング素子のオフ期間にメモリを用いて保持することにより、前記液晶物質の光透過率又は光反射率を制御する液晶表示装置の駆動方法において、
前記液晶物質の応答が生じないような時間間隔で前記メモリに対するリフレッシュを偶数回行う動作を所定期間繰り返す第1のリフレッシュ動作と、前記所定期間経過後に前記メモリに対するリフレッシュを奇数回行う第2のリフレッシュ動作とを交互に繰り返すことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項2】
前記所定期間を、前記第2のリフレッシュ動作を行う期間よりも長く設定してあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の駆動方法。
【請求項3】
前記所定期間は、人間の目が色の変化として認識し難いくらい長く、かつ表示する画像の焼き付きが発生しないくらい短い時間であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の駆動方法。
【請求項4】
液晶物質に印加する電圧をスイッチング素子によりオン/オフ制御すると共に、前記液晶物質に印加された電圧の値を前記スイッチング素子のオフ期間にメモリを用いて保持することにより、前記液晶物質の光透過率又は光反射率を制御する液晶表示装置において、
前記液晶物質の応答が生じないような時間間隔で前記メモリに対するリフレッシュを偶数回行う動作を所定期間繰り返す第1のリフレッシュ動作と、前記所定期間経過後に前記メモリに対するリフレッシュを奇数回行う第2のリフレッシュ動作とを交互に繰り返す手段を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記所定期間を、前記第2のリフレッシュ動作を行う期間よりも長く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記所定期間は、人間の目が色の変化として認識し難いくらい長く、かつ表示する画像の焼き付きが発生しないくらい短い時間であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−223995(P2010−223995A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68142(P2009−68142)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(503141075)統寶光電股▲ふん▼有限公司 (155)
【氏名又は名称原語表記】TPO Displays,Corp.
【住所又は居所原語表記】No.12,Ke Jung Rd,Science−Based Industrial Park,Chu−Nan 350,Miao−Li County,Taiwan,R.O.C.
【Fターム(参考)】