説明

液晶表示装置

【課題】本発明は、テレビ受像機や電子機器の表示部に用いられる液晶表示装置に関し、特に液晶材料に混入した重合性材料を重合させて液晶材料にプレチルト角を付与する液晶表示装置に関し、斜め方向の階調輝度特性が改善されると共に、輝度低下が抑制された液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】液晶表示装置は、対向配置されたTFT基板2及び対向基板4と、両基板2、4間に封止された、液晶材料とポリマーとを含む液晶組成物30とを有している。液晶表示装置の画素領域は、接続電極11を介してTFT10のソース電極10bに電気的に接続された第1の画素電極21が形成された第1の副画素20と、接続電極11との間に保護膜27を挟んで制御容量を形成し、第1の画素電極21から分離された第2の画素電極23、25が形成された第2の副画素22、24とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ受像機や電子機器の表示部に用いられる液晶表示装置に関し、特に液晶材料に混入した重合性材料を重合させて液晶材料にプレチルト角を付与する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示パネルを有する液晶表示装置は表示画面の大型化が図られ、テレビ受像機の表示部として使用されるようになっている。このため、液晶表示装置はより高い表示品位が求められている。しかし、かつて主流であったTN(Twisted Nematic)方式の液晶表示装置は視角特性が狭く、テレビ受像機の表示部として必要な特性が得られ難い。そこで現在では、広視野角な特性を得るため、液晶表示装置にはTN方式以外の技術が用いられるようになっている。その一つにMVA(Multi−domain Vertical Alignment)方式と呼ばれる技術がある。MVA方式の液晶表示装置では、対向して貼り合わせた2枚の基板間に封止した液晶層中の液晶分子を基板に垂直に配向させ、基板に形成された突起あるいは透明電極(ITO)に設けられたスリットによって液晶分子の配向が規定されている。
【0003】
一般に、液晶分子を基板に垂直に配向させる垂直配向方式では、表示画面の法線方向に対し、斜め方向から測定した光学特性は、当該法線方向の光学特性とは異なることが知られている。図11は、垂直配向方式の液晶表示装置の入力階調に対する輝度特性(階調輝度特性)を示すグラフである。横軸は入力階調(gray scale)を表し、縦軸は白表示時の輝度(Twhite)で規格化した輝度(T/Twhite)を表わしている。図中実線で示す曲線は、表示画面に対し垂直な方向(以下、「正面方向」という)での階調輝度特性を示し、図中▲印を結ぶ曲線は、表示画面に対して方位角90°、極角60°の方向(以下、「斜め方向」という)での階調輝度特性を示している。ここで、方位角は、表示画面の右方向を基準として反時計回りに計った角度とする。また極角は、表示画面の中心に立てた垂線となす角とする。
【0004】
図11に示すように、特に偏光軸方向の斜め方向から見た階調輝度特性は正面の階調輝度特性と大きくずれてしまう。例えば、0乃至210階調程度の範囲においては斜め方向の輝度が正面方向の輝度より高くなっているが、210乃至255階調程度以上の範囲においては斜め方向の輝度が正面方向の輝度より低くなっている。この結果、斜め方向から見た場合には、入力階調間での輝度差が小さくなってしまい、正面方向から見たときと比較して画像の色が白っぽく変化してしまう。
【0005】
この問題を解決するために、画素用の薄膜トランジスタ(TFT)のソース電極に電気的に接続された画素電極と、当該画素電極から分割され、ソース電極と絶縁された画素電極とを備えた画素構造を有する液晶表示装置が知られている。当該液晶表示装置では、ソース電極と絶縁された画素電極、ソース電極及び両電極間に挟まれた絶縁膜により静電容量が形成されている。ソース電極と絶縁された画素電極は当該静電容量によって駆動される。
【0006】
図12は、分割された2つの画素電極を備えた画素構造を有する液晶表示装置の1画素の構成を示している。図12に示すように、ゲートバスライン106と、不図示の絶縁膜を介してゲートバスライン106に交差して形成された複数のドレインバスライン108とがガラス基板103上に形成されている。ゲートバスライン106及びドレインバスライン108の交差位置近傍には、画素毎に形成されたTFT110が配置されている。ゲートバスライン106の一部はTFT110のゲート電極110cとして機能する。ゲートバスライン106上には、絶縁膜を介してTFT110の動作半導体層、及びチャネル保護膜(共に不図示)が形成されている。ゲート電極110c上であってTFT110のチャネル保護膜上には、ドレイン電極110a及びその下層のn型不純物半導体層(不図示)と、ソース電極110b及びその下層のn型不純物半導体層(不図示)とが所定の間隙を介して対向して形成されている。
【0007】
また、ゲートバスライン106及びドレインバスライン108により画定された画素領域を横切って、ゲートバスライン106に並列して延びる蓄積容量バスライン114が形成されている。蓄積容量バスライン114上には、絶縁膜を介して蓄積容量電極(中間電極)116が画素毎に形成されている。蓄積容量電極116は、接続電極111を介してTFT110のソース電極110bに電気的に接続されている。蓄積容量バスライン114、蓄積容量電極116及びそれらの間に挟まれた絶縁膜により蓄積容量Csが形成される。
【0008】
ゲートバスライン106及びドレインバスライン108により画定された画素領域は、副画素120と副画素122とに分割されている。例えば、台形状の副画素120は画素領域の中央部左寄りに配置され、副画素122は画素領域のうち副画素120の領域を除いた上部、下部及び中央部右側端部に配置されている。画素領域内の副画素120、122の配置は、例えば、蓄積容量バスライン114に対しほぼ線対称になっている。副画素120には画素電極121が形成され、副画素122には画素電極121から分離された画素電極123が形成されている。画素電極121、123は、共にITO等の透明導電膜により形成されている。画素電極121は、保護膜(不図示)が開口されたコンタクトホール118を介して、蓄積容量電極116及びTFT110のソース電極110bに電気的に接続されている。画素電極123は、保護膜及び絶縁膜を介して接続電極111に重なる領域を有している。当該領域において、接続電極111、画素電極123及び両電極111、123間に挟まれた保護膜により静電容量Ccが形成される。
【0009】
ガラス基板103に対向配置された対向ガラス基板(不図示)上には不図示の共通電極が形成されている。対向ガラス基板から突出し、図中斜めに延伸する接続電極111に対向する位置に、液晶の配向方位を規制する配向規制用構造物としての線状突起112aが形成されている。また、蓄積容量バスライン114に対しほぼ線対称となる位置に、対向ガラス基板から突出して形成された線状突起112bが形成されている。さらに、画素領域の中央部左寄りで画素電極121上に配置されたV字状の線状突起112cが形成されている。線状突起112cは蓄積容量バスライン114に対しほぼ線対称になっている。
【0010】
副画素120では、画素電極121、共通電極及び両電極間に挟まれた液晶によって液晶容量Clc1が形成される。副画素122では、画素電極123、共通電極及び両電極間に挟まれた液晶によって液晶容量Clc2が形成される。ガラス基板103と対向ガラス基板との間で、液晶容量Clc2は静電容量Ccと直列に接続されている。
【0011】
TFT110がON状態になると、ソース電極110b及び接続電極111はデータバスライン108に印加された階調電圧Vと同電位になり、同時に電気的に接続された画素電極121も階調電圧Vと同電位になる。液晶容量Clc1には、画素電極121と共通電極との間に印加された電位差に基づく電圧が印加される。例えば、共通電極に印加された電圧を0Vとすると、液晶容量Clc1に印加される電圧は、階調電圧V(=V−0V)になる。一方、電気的に絶縁された画素電極123には、液晶容量Clc2と静電容量Ccとの比に基づいて、階調電圧Vが分割された電圧が印加される。画素電極123に印加される電圧Vは以下のように表すことができる。
=V×{Cc/(Clc2+Cc)} ・・・(1)
【0012】
このように、ソース電極110bに電気的に接続された画素電極121と、絶縁された画素電極123との間には閾値差が生じる。この結果、斜め方向の階調輝度特性は大幅に改善される。図11に示すように、正面方向の階調輝度特性を示す曲線は下に凸になっている。一方、従来のMVAの斜め方向の階調輝度特性を示す曲線は、大きく上に凸になる範囲(0乃至210階調の範囲)と、下に凸になる範囲(210乃至255階調の範囲)とが混在している。このため、表示される階調データによって、階調つぶれや階調広がりが生じて画像の色が変化してしまう。図12に示す画素構造の液晶表示装置によれば、斜め方向の階調輝度特性を示す曲線に凹凸がほぼなくなり、階調特性を大幅に改善することができる。
【特許文献1】特開2003−149647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図12の画素構造を有する液晶表示装置は斜め方向の階調輝度特性を改善することができる。しかし、式(1)に示すように、副画素122の液晶容量Clc2に印加される電圧V1は、階調電圧Vより低下する。このため、当該画素構造を有しない液晶表示装置に比べて、当該液晶表示装置は斜め方向の輝度の絶対値が低下してしまう。また、当該液晶表示装置は画素領域を2つの領域に分割しているため、線状突起(土手状構造物)や画素電極のスリット(画素電極121、123の間隙)の配置が複雑であり、実質的に開口率が低下して、輝度が低下してしまうという問題を有している。
【0014】
本発明の目的は、斜め方向の階調輝度特性が改善されると共に、輝度低下が抑制された液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、基板と、前記基板に対向配置された対向基板と、前記基板と前記対向基板間に封止された、光又は熱により重合性材料が重合したポリマーと、液晶材料とを含む液晶組成物と、前記対向基板に形成された、前記液晶材料の配向方位を規制する配向規制用構造物と、前記基板に形成されたゲートバスラインと、前記ゲートバスラインに絶縁膜を介して交差して形成されたドレインバスラインと、前記ゲートバスラインに電気的に接続されたゲート電極と、前記ドレインバスラインに電気的に接続されたドレイン電極と、前記ゲート電極上で前記ドレイン電極と所定の間隙を設けて対向配置されたソース電極とを備えた画素用トランジスタと、接続電極を介して前記ソース電極に電気的に接続された第1の画素電極が形成された第1の副画素と、前記接続電極との間に絶縁膜を挟んで所定の電気容量を形成し、前記第1の画素電極から分離された第2の画素電極が形成された第2の副画素とを備えた画素領域とを有することを特徴とする液晶表示装置によって達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、斜め方向の階調輝度特性が改善されると共に、輝度低下が抑制された液晶表示装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態による液晶表示装置について図1乃至図5を用いて説明する。まず、本実施の形態による液晶表示装置の概略の構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、例えば、MVA方式の液晶表示装置は、画素電極やTFT等が画素領域毎に形成されたTFT基板2と、CF層等が形成された対向基板4とを対向させて貼り合わせ、負の誘電率異方性を有する液晶材料をその間に封止した構造の液晶表示パネルを有している。両基板2、4の対向面には、液晶材料中の液晶分子を例えば基板面に垂直な方向に配向させる垂直配向膜が形成されている。
【0018】
TFT基板2には、複数のゲートバスラインを駆動するドライバICが実装されたゲートバスライン駆動回路80と、複数のドレインバスラインを駆動するドライバICが実装されたドレインバスライン駆動回路82とが設けられている。両駆動回路80、82は、制御回路84から出力された所定の信号に基づいて、走査信号やデータ信号を所定のゲートバスラインあるいはドレインバスラインに出力するようになっている。
【0019】
TFT基板2の素子形成面と反対側の表面には、偏光板87が貼り付けられている。偏光板87のTFT基板2と反対側には、例えば線状の一次光源と面状導光板とからなるバックライトユニット88が配置されている。一方、対向基板4の樹脂CF層形成面と反対側の表面には、偏光板86が貼り付けられている。
【0020】
図2は、本実施の形態による液晶表示装置の1画素の構成を示している。図2(a)は、ガラス基板3を法線方向に見た、マトリクス状に複数形成された画素のうちの1画素の構成を示している。図2(b)は、図2(a)に一点鎖線で示すA−A線で切断した断面を示している。図2(b)に示すように、液晶表示装置は、対向配置されたTFT基板2及び対向基板4と、両基板2、4間に封止された液晶組成物30とを有している。液晶組成物30は、電圧無印加時に基板面にほぼ垂直に配向し、負の誘電率異方性を有する液晶材料と、光又は熱により重合性材料(モノマーやオリゴマー)が重合したポリマーとを含んでいる。例えば、液晶組成物30には、重合性材料としてジアクリレートモノマーが0.3wt%混合されている。また、図示は省略するが、TFT基板2及び対向基板4のそれぞれの対向面には、垂直配向性の配向膜が形成されている。
【0021】
図2(a)及び図2(b)に示すように、TFT基板2は、ガラス基板3上に形成されたゲートバスライン6と、絶縁膜26を介してゲートバスライン6に交差して形成された複数のドレインバスライン8とを有している。ゲートバスライン6及びドレインバスライン8の交差位置近傍には、画素毎に形成されたTFT(画素用トランジスタ)10が配置されている。
【0022】
TFT10は、ゲートバスライン6に電気的に接続されたゲート電極10cと、ドレインバスライン8に電気的に接続されたドレイン電極10aと、ゲート電極10c上でドレイン電極10aと所定の間隙を設けて対向配置されたソース電極10bとを有している。ゲートバスライン6の一部はTFT10のゲート電極10cとして機能する。ゲートバスライン6上には、絶縁膜26を介してTFT10の動作半導体層、及びチャネル保護膜(共に不図示)が形成されている。ゲート電極10c上であってTFT10のチャネル保護膜上には、ドレイン電極10a及びその下層のn型不純物半導体層(不図示)と、ソース電極10b及びその下層のn型不純物半導体層(不図示)とが所定の間隙を介して対向して形成されている。
【0023】
また、ゲートバスライン6及びドレインバスライン8により画定された画素領域を横切って、ゲートバスライン6に並列して延びる蓄積容量バスライン14が形成されている。また、画素領域のほぼ中央をドレインバスライン8に並列して延びて、蓄積容量バスライン14に交差し、ソース電極10bに電気的に接続された接続電極11が形成されている。ドレイン電極10a、ソース電極10b及び接続電極はドレインバスライン8と同層に形成されている。蓄積容量バスライン14上には、絶縁膜26を介して蓄積容量電極(中間電極)16が画素毎に形成されている。蓄積容量電極16は、接続電極11を介してTFT10のソース電極10bに電気的に接続されている。蓄積容量バスライン14、蓄積容量電極16及びそれらの間に挟まれた絶縁膜26により蓄積容量Csが形成されている。
【0024】
ゲートバスライン6及びドレインバスライン8により画定された画素領域は、ドレインバスライン8の延伸方向に並んで配置された、第1の副画素20と、2つの第2の副画素22、24とを有している。第1の副画素20は、ほぼ正方形状に形成された第1の画素電極21を有している。第1の画素電極21は、ITO等の透明導電膜により形成されている。第1の画素電極21は、画素領域上に形成された保護膜27が開口されたコンタクトホール18を介して、接続電極11、蓄積容量電極16及びTFT10のソース電極10bに電気的に接続されている。
【0025】
第2の副画素22は、ほぼ正方形状に形成された第2の画素電極23を有している。第2の副画素24は、ほぼ正方形状に形成された第2の画素電極25を有している。第2の画素電極23、25は、ITO等の透明導電膜により形成されている。第2の画素電極23、25は、第1の画素電極21から分離されて形成され、フローティング状態になっている。第2の画素電極23、接続電極11及び両電極11、23間に挟まれた保護膜(絶縁膜)27によって制御容量(所定の電気容量)Cc1が形成されている。同様に、第2の画素電極25、接続電極11及び両電極11、25間に挟まれた保護膜(絶縁膜)27によって制御容量(所定の電気容量)Cc1’が形成されている。第2の画素電極23、25はドレインバスライン8の延伸方向に、第1の画素電極21を挟んで並んで配置されている。
【0026】
対向基板4はガラス基板5上に、透明導電膜により形成された共通電極28を有している。対向基板4は、ガラス基板5から突出して形成された、液晶材料中の液晶分子32の配向方位を規制する配向規制用構造物としての線状突起(土手状構造物)12を有している。線状突起12は高さhが約0.7μmに形成されている。図2(a)に示すように、線状突起12は幹部12a、第1の枝部12b及び第2の枝部12c、12dを有している。幹部12aは画素領域のほぼ中央をドレインバスライン8にほぼ平行に並列して延伸し、第1及び第2の副画素20、22、24に跨って形成されている。第1の枝部12bは幹部12aにほぼ直交し、第1の副画素20の形成領域に形成されている。第2の枝部12c、12dは幹部12aにほぼ直交し、第2の副画素22、24の形成領域にそれぞれ形成されている。幹部12aは、接続電極11が形成されている位置に対向して配置されている。幹部12aはガラス基板3を法線方向に見て、接続電極11と重なるように形成されている。
【0027】
第1及び第2の枝部12b及び12c、12dはゲートバスライン9にほぼ並列して延伸し、隣接するドレインバスライン8に跨って形成されている。第1の副画素20の形成領域に形成された第1の枝部12bは、ガラス基板3を法線方向に見て、蓄積容量バスライン14に重なるように形成されている。画素領域内で幹部12a及び第1の枝部12bをこのように配置することにより、開口率の低下を防止することができる。
【0028】
第1の副画素20は、ガラス基板3を法線方向に見て、幹部12a、第1の枝部12b及び第1の画素電極21の外周部により4分割された分割領域20a、20b、20c、20dを有している。同様に、第2の副画素22は、ガラス基板3を法線方向に見て、幹部12a、第2の枝部12c及び第2の画素電極23の外周部により4分割された分割領域22a、22b、22c、22dを有している。同様に、第2の副画素24は、ガラス基板3を法線方向に見て、幹部12a、第2の枝部12d及び第2の画素電極25の外周部により4分割された分割領域24a、24b、24c、24dを有している。
【0029】
第1及び第2の画素電極21及び23、25と共通電極28との間に電圧を印加すると、第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部と線状突起12とにより、液晶組成物30に印加される電界に歪みが生じる。この電界歪みにより第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部並びに線状突起12近傍の液晶分子32の配向が規制されて、分割領域20a〜20d毎、分割領域22a〜22d毎及び分割領域24a〜24d毎に液晶分子32の傾斜する方向が異なる。例えば、図2(b)に示す切断面内において、液晶分子32はTFT基板2に対して垂直な方向から、分割領域22aでは時計回りに傾斜し、分割領域22bでは反時計回りに傾斜する。このように、本実施形態による液晶表示装置はMVA方式を採用することにより、視野角特性の向上を図ることができる。
【0030】
第1の副画素20では、第1の画素電極21、共通電極28及び両電極21、28間に挟まれた液晶組成物30によって液晶容量Clc1が形成される。第2の副画素22では、第2の画素電極23、共通電極28及び両電極23、28間に挟まれた液晶組成物30によって液晶容量Clc2が形成される。ガラス基板3とガラス基板5との間で、液晶容量Clc2は制御容量Cc1と直列に接続される。同様に、第2の副画素24では、第2の画素電極25、共通電極28及び両電極25、28間に挟まれた液晶組成物30によって液晶容量Clc2’が形成される。ガラス基板3とガラス基板5との間で、液晶容量Clc2’は制御容量Cc1’と直列に接続される。
【0031】
TFT10がON状態になると、ソース電極10b及び接続電極11はデータバスライン8に印加された階調電圧Vと同電位になり、同時に電気的に接続された第1の画素電極21も階調電圧Vと同電位になる。液晶容量Clc1には、第1の画素電極21と共通電極28との間に印加された電位差に基づく電圧が印加される。例えば、共通電極28に印加された電圧を0Vとすると、液晶容量Clc1に印加される電圧は、階調電圧V(=V−0V)になる。一方、接続電極11に容量結合された第2の画素電極23には、液晶容量Clc2と制御容量Cc1との容量比に基づいて、階調電圧Vを容量分割した電圧が印加される。第2の画素電極23に印加される電圧Vは以下のように表すことができる。
V=V×{Cc1/(Clc2+Cc1)} ・・・(2)
【0032】
同様に、第2の画素電極25には、液晶容量Clc2’と制御容量Cc1’との容量比に基づいて、階調電圧Vを容量分割した電圧が印加される。第2の画素電極25に印加される電圧V’は以下のように表すことができる。
V’=V×{Cc1’/(Clc2’+Cc1’)} ・・・(3)
【0033】
このように、1つの画素領域内を異なる電圧で駆動することができるので、液晶表示装置の斜め方向の階調輝度特性の改善を図ることができる。第2の画素電極23、25にそれぞれ印加される電圧V、V’は同じ電圧値でもよいが、異なる電圧値にすると、1つの画素領域内に異なる階調輝度特性が3種類共存することになるので、さらに液晶表示装置の視角特性を改善することができる。
【0034】
次に、液晶表示装置の製造方法について図1乃至図3を用いて説明する。図3は、ガラス基板3を法線方向に見た、第2の副画素22を拡大して示している。図3(a)は、モノマーを重合する前の状態を示している。図3(b)は、モノマーを重合した後の状態を示している。図2(b)に示すように、TFT基板2及び対向基板4の対向面に配向膜(垂直配向膜)を印刷、焼成し、両基板2、4の一方の外周部にシール材を塗布して貼り合わせ、液晶組成物30を注入し、その後切断、面取りすることにより液晶表示パネルが作製される。
【0035】
液晶組成物30注入後、両基板2、4間に電圧を印加すると、図3(a)に示すように、液晶分子32は線状突起12又は第2の画素電極23外周部に対して垂直な方向に倒れ始める。第2の画素電極23外周部は幹部12a及び第2の枝部12cとほぼ90°の角度でそれぞれ交差している。第2の副画素22中央部で各々の方向に倒れた液晶分子32同士が衝突し、最終的には図3(b)に示すように、線状突起12又は第2の画素電極23外周部に対してほぼ45°方向で安定する。
【0036】
この状態で紫外線を照射すると液晶組成物30中に混合されたジアクリレートモノマーが重合し、液晶分子32の配向方向が固定される。モノマーがポリマー化された後(紫外線照射後)に、両基板2、4間に電圧を印加すると、液晶分子32は直ちに線状突起12又は第2の画素電極23外周部に対してほぼ45°方向に倒れるようになる。
【0037】
次に、線状突起12又は第2の画素電極23外周部に対して偏光板86、87(図1参照)の偏光軸が平行または垂直になるようクロスニコルに両基板2、4の外側表面に貼付する。次いで、図1に示すように、ゲートバスライン駆動回路80及びドレインバスライン駆動回路82並びに制御回路84を液晶表示パネルに実装する。次に、偏光板87のTFT基板2と反対側にバックライトユニット88を配置する。これにより、ノーマリーブラックの液晶表示装置が完成する。
【0038】
図3(b)に示すように、第2の副画素22は4つの分割領域22a、22b、22c、22dを有している。分割領域22a、22b、22c、22dにおいて、液晶分子32はそれぞれ異なる方向に傾斜している。幹部12aと第2の枝部12cとの交差部を回転軸として、分割領域22bの液晶分子32は、第2の枝部12cに対して反時計回りに約45°回転した方向にほぼ平行に傾斜しており、分割領域22aの液晶分子32は、同方向に約135°回転した方向にほぼ平行に傾斜しており、分割領域22cの液晶分子32は、同方向に約225°回転した方向にほぼ平行に傾斜しており、分割領域22dの液晶分子32は、同方向に約315°回転した方向にほぼ平行に傾斜している。図示は省略するが、第1の副画素20の分割領域20a〜20d及び第2の副画素24の分割領域24a〜24dの液晶分子32も第2の副画素22の分割領域22a〜22bと同様の方向にそれぞれ傾斜している。これにより、液晶表示装置は、広視野角特性を実現できる。
【0039】
次に、線状突起12の高さhについて図4を用いて説明する。図4は、線状突起12の高さhが最適でない状態の第2の副画素22を示している。図4(a)は、ガラス基板3を法線方向に見た、第2の副画素22を拡大して示している。図4(b)は、第2の副画素22の断面を示している。図4(c)は、顕微鏡付写真機で撮影した第2の副画素22の表示状態を示している。図4(a)及び図4(b)は、理解を容易にするため、接続電極11を省略して示している。
【0040】
図4(a)に示すように、線状突起12の幹部12aはドレインバスライン8近傍に並列して形成されている。第2の枝部12cは幹部12aにほぼ直交し、ゲートバスライン6近傍の第2の画素電極23外周部に対向する外周部上に形成されている。図4(b)に示すように、線状突起12の高さhを0.35μmと最適な高さh=0.7μmより低く形成すると、線状突起12の電界による液晶分子32の配向規制力は第2の画素電極23外周部の電界による配向規制力より弱くなる。このため、両基板2、4間に電圧を印加した際に、図中に破線の楕円で示すように、液晶分子32が想定した方向(図4(b)において、右側に示された5つの液晶分子32の傾斜している方向)とは逆方向に倒れてしまい、液晶分子32の配向が乱れてしまう。
【0041】
一方、線状突起12の高さhを1.4μmと最適な高さh=0.7μmより高く形成すると、線状突起12の電界による液晶分子32の配向規制力は第2の画素電極23外周部の電界による配向規制力より強くなる。このため、図4(a)に破線の楕円で示すように、線状突起12近傍の液晶分子32が線状突起12に対して45°の方向に傾くことができなくなる。これにより、図4(c)に示すように、第2の副画素22の外周部に光が透過しない暗部34が生じてしまう。また、線状突起12が形成されていない側の第2の画素電極23外周部も透過率が低下して、暗部34が生じてしまう。このように、線状突起12の高さhは、高すぎても低すぎても液晶表示装置の表示特性を劣化させてしまう。本願発明者らの研究により、線状突起12の高さhは0.7μm程度が最適であることが判明し、本実施の形態による液晶表示装置の線状突起12は0.7μmの高さに形成されている。
【0042】
上述したように、液晶表示装置は1つの画素領域内を異なる電圧で駆動することができる。本実施の形態による液晶表示装置では、第1の副画素20と第2の副画素22、24との間に1Vの閾値差が生じるように各容量Clc1、Clc2、Cc1、Clc2’、Cc1’の各容量値が設定されている。また、第1の副画素20と第2の副画素22、24との面積比は4:6に設定されている。閾値差及び面積比はこの値に限られず、これらの値を変えることにより、液晶表示装置の階調輝度特性を所望の特性に設定することが可能となる。
【0043】
図5は、本実施の形態による液晶表示装置の入力階調に対する輝度特性(階調輝度特性)を示すグラフである。横軸は入力階調(gray scale)を表し、縦軸は白表示時の輝度(Twhite)で規格化した輝度(T/Twhite)を表わしている。図中実線で示す曲線は、本実施の形態による液晶表示装置の正面方向での階調輝度特性を示し、本実施の形態による液晶表示装置の図中■印を結ぶ曲線は、斜め方向での階調輝度特性を示し、図中▲印を結ぶ曲線は、従来の液晶表示装置の斜め方向での階調輝度特性を示している。
【0044】
図5に示すように、本実施の形態による液晶表示装置の斜め方向の階調輝度特性は従来の階調輝度特性に対して大幅に改善されている。正面方向の階調輝度特性は入力階調が大きくなるに従い輝度が単調に増加し、当該特性を示す曲線は下に凸になっている。これに対し、従来の斜め方向の階調輝度特性は0乃至210階調程度の範囲においては斜め方向の輝度が正面方向の輝度より高くなるが、210階調程度以上の範囲においては斜め方向の輝度が正面方向の輝度より低くなる。当該特性を示す曲線には、大きく上に凸になる部分と下に凸になる部分とが混在している。この結果、従来の液晶表示装置の表示画面を斜め方向から見た場合、入力階調間での輝度差が小さくなってしまい、階調によっては、階調つぶれや階調広がりが生じて、例えば画像の色が白っぽく変化してしまう。
【0045】
ところが、本実施の形態による液晶表示装置の斜め方向の階調輝度特性は、全階調に亘って正面方向の輝度より高い輝度を有している。当該特性を示す曲線には、従来の階調輝度特性を示す曲線のように大きく上に凸になる部分と下に凸になる部分とが混在していない。このため、液晶表示装置の表示画面を斜め方向から見ても、階調つぶれや階調広がりが発生せず、画像の色が白っぽく変化することを防止できる。
【0046】
ところで、図2に示すように、本実施の形態による液晶表示装置では、蓄積容量Csは、ソース電極10bに接続電極11を介して電気的に接続された第1の画素電極21を有する第1の副画素20のみに設けられている。蓄積容量Csを形成する蓄積容量バスライン14はゲートバスライン6にほぼ平行に並列して画素領域のほぼ中央部を横切るように配置されている。蓄積容量Csは蓄積容量バスライン14と蓄積容量電極16との重なり部分に形成されている。蓄積容量電極16と接続電極11とは一体的に形成され、ガラス基板3を法線方向に見て、十字状に形成されていてもよい。
【0047】
接続電極11と容量結合された第2の画素電極23、25を有する第2の副画素22、24のそれぞれの形成領域に蓄積容量バスラインをゲートバスライン6と平行に設けると、画素領域の光透過領域の一部が隠されてしまうので、液晶表示装置の透過率が低下してしまう。このため、本実施の形態による液晶表示装置では、第2の副画素22、24の形成領域には蓄積容量バスラインが設けられていない。液晶表示装置の透過率が若干低下してしまうものの、例えば、接続電極11と一体的に形成された蓄積容量電極を第2の副画素22、24の形成領域に設けて、当該蓄積容量電極と対向するように蓄積容量バスラインを配置して、蓄積容量を形成することは可能である。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態による液晶表示装置は、同一の階調電圧Vに対して異なる電圧で駆動できる、第1の副画素20と第2の副画素22、24とを1つの画素領域内に有している。これにより、液晶表示装置は斜め方向の階調輝度特性を改善することができる。また、画素領域は、正方形状の第1及び第2の副画素20及び22、24が線状突起12によりそれぞれマトリクス状に4分割された単純な構造を有している。このため、第1及び第2の副画素20及び22、24の配置が容易で、画素領域の面積に対する、第1及び第2の画素電極21及び23、25の面積の比率を従来の液晶表示装置の画素電極121、123の面積の比率より大きくすることができる。これにより、本実施の形態による液晶表示装置は従来の液晶表示装置に比べて開口率を向上させることができ、表示画面の高輝度化を図ることができる。
【0049】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態による液晶表示装置について図6乃至図9を用いて説明する。本実施の形態による液晶表示装置の概略の構成は上記第1の実施の形態による液晶表示装置と同様であるため説明は省略する。図6は、ガラス基板3を法線方向に見た、本実施の形態による液晶表示装置の、マトリクス状に複数形成された画素のうちの1画素の構成を示している。図6に示すように、本実施の形態による液晶表示装置は液晶材料の倒れる方向とほぼ平行な方向に形成されたスリット部21bを外周部に備えた第1の画素電極21と、スリット部21bと同様の効果を奏するスリット部23b、25bを外周部にそれぞれ備えた第2の画素電極23、25とを備えた点に特徴を有している。
【0050】
第1の画素電極21は、中央に配置されたべた部21aと、べた部21aの外周部に配置された櫛歯状に形成されたスリット部21bとを有している。スリット部21bは、べた部21aから延びる複数の線状電極部21cと、隣接する線状電極部21c間に形成された切り込み部21dとを備えている。線状電極部21cは、分割領域20a〜20d毎に異なる4方向に延びている。図において、分割領域20aの線状電極部21cは左上方向に延び、分割領域20bの線状電極部21cは右上方向に延びている。分割領域20cの線状電極部21cは左下方向に延び、分割領域20dの線状電極部21cは右下方向に延びている。液晶分子は、線状電極部21cの延びる方向に平行に、且つべた部21aに向かって傾斜する。これにより、液晶組成物は第1の副画素20内で4方向に配向分割される。
【0051】
同様に、第2の画素電極23は、中央に配置されたべた部23aと、べた部23aの外周部に配置された櫛歯状に形成されたスリット部23bとを有している。スリット部23bは、べた部23aから延びる複数の線状電極部23cと、隣接する線状電極部23c間に形成された切り込み部23dとを備えている。また同様に、第2の画素電極25は、中央に配置されたべた部25aと、べた部25aの外周部に配置された櫛歯状に形成されたスリット部25bとを有している。スリット部25bは、べた部25aから延びる複数の線状電極部25cと、隣接する線状電極部25c間に形成された切り込み部25dとを備えている。液晶分子は、線状電極部23c、25cの延びる方向に平行に、且つべた部23a、25aに向かって傾斜する。これにより、液晶組成物は第2の副画素22、24内で4方向にそれぞれ配向分割される。
【0052】
上記第1の実施の形態による液晶表示装置では、分割領域20a〜20d、22a〜22d、24a〜24dは、線状突起12と第1及び第2の画素電極21及び23、25外周部によって区画されている。第1及び第2の画素電極21及び23、25外周部近傍では電気力線が急激に曲がっているため、当該外周部の延びる方向に対して90°の方向に液晶分子を倒す力が強い。このため、液晶分子は当該外周部の延びる方向に対して45°の方向を向けず、第1及び第2の副画素20及び22、24に円弧状に透過率が低下する領域が生じる(図4(c)参照)。第1及び第2の画素電極21及び23、25外周部の長さが長いほど当該円弧状の面積が大きくなるので、液晶表示装置の透過率の低下は大きくなる。
【0053】
上記第1の実施の形態による液晶表示装置では、当該円弧状の領域の発生を防止するため、液晶材料とポリマーとを含む液晶組成物30が用いられている。本実施の形態による液晶表示装置は、図6に示すように、スリット部21b、23b、25bを有する第1及び第2の画素電極21及び23、25を形成することにより、液晶分子を外周部の延びる方向に対して45°方向に配向させる配向規制力が補助されている。スリット部21b、23b、25bのピッチPは7μm、切り込み部21d、23d、25dの幅dは3μm、切り込み部21d、23d、25dの長さLは7μmに形成されている。切り込み部21d、23d、25dの長さLがあまりに長いと、プロセスの微妙な変動により、幅dが変動して液晶表示パネルに微妙な輝度ムラが発生して表示品位の低下をもたらす。このため、スリット部21b、23b、25bの面積は第1及び第2の画素電極21及び23、25の総面積の半分を超えない範囲に設定することが望ましい。切り込み部21d、23d、25dの幅dは2μm以上5μm以下になり、長さLが3μm以上10μm以下になるように形成されているとよい。
【0054】
本実施の形態による液晶表示装置は、第1及び第2の画素電極21及び23、25にスリット部21b、23b、25bを形成することにより、透過率の低い円弧状の領域がほとんど生じなくなる。これにより、本実施の形態による液晶表示装置は、上記第1の実施形態による液晶表示装置に対し、透過率が15%向上し、表示画面の高輝度化を図ることができる。
【0055】
また、スリット部21b、23b、25bにより液晶分子の配向規制力が大きくなっている。このため、液晶表示装置は、線状突起12に代えて、例えば、幹部12aと第1及び第2の枝部12b及び12c、12dの交差部にそれぞれ点状突起を有していても、同様の効果が得られる。
【0056】
次に、本実施の形態による液晶表示装置の変形例について図7及び図8を用いて説明する。図7は、ガラス基板3を法線方向に見た、本変形例による液晶表示装置の1画素の構成を示している。本変形例による液晶表示装置は第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部の少なくとも一部にスリット部21b、23b、25bが形成されている点に特徴を有している。図7に示すように、本変形例による液晶表示装置では、ゲートバスライン6及びドレインバスライン8近傍の第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部のみにスリット部21b、23b、25bが形成されている。第1の画素電極21と第2の画素電極23、25とが隣接する外周部には、スリット部21b、23b、25bは形成されていない。
【0057】
図8は、画素領域を切断した断面を示している。図8(a)は、第1及び第2の画素電極21、23間を相対的に広くした状態を示している。図8(b)は、第1及び第2の画素電極21、23間を相対的に狭くした状態を示している。図8は、理解を容易にするため、線状突起12や液晶分子32等を省略して示している。図8(a)及び図8(b)に示すように、第1及び第2の画素電極21、23間隙の幅が狭い程、当該間隙近傍の、図において破線で示す電気力線の曲がりが弱くなる。このため、第1及び第2の画素電極21、23の外周部の延びる方向に対して90°方向に液晶分子を倒す力は小さくなる。従って、第1及び第2の画素電極21、23の間隙を狭くする程、液晶分子は第1及び第2の画素電極21、23の外周部の延びる方向に対して45°方向に、最終的に向きやすくなる。これにより、第1及び第2の副画素20及び22、24に円弧状の暗部は殆ど生じなくなる。
【0058】
本変形例による液晶表示装置では、第1の画素電極21と第2の画素電極23、25との間隙は4μmに形成されている。これにより、第1の画素電極21と第2の画素電極23、25とが隣接する外周部には、スリット部21b、23b、25bが不要になり、プロセス上の微妙な変動による輝度ムラ発生の危険性が低下する。従って、本変形例による液晶表示装置は、本実施の形態の液晶表示装置と同様の効果が得られる。
【0059】
次に、本実施の形態による液晶表示装置の他の変形例について図9を用いて説明する。図9は、ガラス基板3を法線方向に見た、本変形例による液晶表示装置の1画素の構成を示している。液晶表示装置は第1又は第2の画素電極21又は23、25の少なくともいずれかは、外周部の少なくとも一部にスリット部21b、23b、25bが形成されている点に特徴を有している。図9に示すように、本変形例による液晶表示装置では、ゲートバスライン6近傍の第2の画素電極23、25の外周部のみにスリット部23b、25bが形成されている。従って、第1の画素電極21にはスリット部21bは形成されていない。
【0060】
本変形例による液晶表示装置では、第1及び第2の画素電極21及び23、25の間隙は上記変形例の当該間隙より狭く形成されている。さらに、本変形例による液晶表示装置では、第1及び第2の画素電極21及び23、25とドレインバスライン8との間隙が上記変形例の当該間隙より狭く形成されている。これにより、第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部に導電性材料が近接して配置される。ジアクリレートモノマーの重合時には、第1の画素電極21とドレインバスライン8との電圧をほぼ同電位にする。ゲートバスライン6に隣接する第2の画素電極23、25の外周部を除き、第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部から共通電極28に向かう電気力線の曲がりは弱くなる(図8参照)。これにより、液晶分子は第1及び第2の画素電極21及び23、25の外周部の延びる方向に対して45°方向に向きやすくなり、第1及び第2の副画素20及び22、24の円弧状の暗部の発生を防止することができる。
【0061】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態による液晶表示装置について図10を用いて説明する。本実施の形態による液晶表示装置の概略の構成は上記第1の実施の形態による液晶表示装置と同様であるため説明は省略する。図10は、本実施の形態による液晶表示装置の1画素の構成を示している。図10(a)は、ガラス基板3を法線方向に見た、マトリクス状に複数形成された画素のうちの1画素の構成を示している。図10(b)は、図10(a)の図中に示す仮想線A−Aで切断した断面を示している。図10(a)及び図10(b)に示すように、本実施の形態による液晶表示装置は、対向基板4に代えて、ガラス基板3から突出して、第1及び第2の画素電極21及び23、25の下層に透明誘電体をパターニングして形成された線状突起(配向規制構造物)12を備えた点に特徴を有している。
【0062】
上記第1及び第2の実施の形態による液晶表示装置では、TFT基板2と対向基板4との貼り合せずれを考慮して、対向基板4上に形成された線状突起12はあらかじめ画素領域の中央部に設ける必要がある。例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、線状突起12を第2の画素電極23の外周部の直上に配置する場合には、図4(b)において、線状突起12の頂部は第2の画素電極23の外周部の右側に配置されていなければならない。線状突起12の頂部が第2の画素電極23の外周部の左側に配置されると、線状突起12の高さhが低く形成された状態と等しくなり、液晶分子の配向が乱れてしまう。しかし、線状突起12を画素領域の中央部に設けると、液晶表示装置の開口率は実質的に低下してしまう。
【0063】
そこで、本実施の形態による液晶表示装置では、図10に示すように、線状突起12はTFT基板2側に形成されている。第1及び第2の画素電極21及び23、25は少なくとも線状突起12の頂部を覆うように重ねて形成されている。図10(b)に示すように、線状突起12の幹部12a上の第2の画素電極23表面の斜面は配向膜36等によって均される。このため、図10(b)において、配向膜36表面の法線と対向基板4の法線との成す角θ1は、配向膜36表面を突き抜ける電気力線αの方向と対向基板4の法線との成す角θ2より小さくなる。このため、両基板2、4間に電圧が印加されると、液晶分子32の配向方向は電気力線αの方向と異なり、液晶分子32は線状突起12の幹部12aに向かって倒れる。図10(b)に示す切断面内において、液晶分子32はTFT基板2に対して垂直な方向から、分割領域22aでは時計回りに傾斜し、分割領域22bでは反時計回りに傾斜する。このように、分割領域22a、22b毎に液晶分子32の傾斜方向を変えることができるので、本実施形態による液晶表示装置は、上記実施の形態による液晶表示装置と同様の効果が得られる。
【0064】
以上説明した実施の形態による液晶表示装置は、以下のようにまとめられる。
(付記1)
基板と、
前記基板に対向配置された対向基板と、
前記基板と前記対向基板間に封止された、光又は熱により重合性材料が重合したポリマーと、液晶材料とを含む液晶組成物と、
前記対向基板に形成された、前記液晶材料の配向方位を規制する配向規制用構造物と、
前記基板に形成されたゲートバスラインと、
前記ゲートバスラインに絶縁膜を介して交差して形成されたドレインバスラインと、
前記ゲートバスラインに電気的に接続されたゲート電極と、前記ドレインバスラインに電気的に接続されたドレイン電極と、前記ゲート電極上で前記ドレイン電極と所定の間隙を設けて対向配置されたソース電極とを備えた画素用トランジスタと、
接続電極を介して前記ソース電極に電気的に接続された第1の画素電極が形成された第1の副画素と、前記接続電極との間に絶縁膜を挟んで所定の電気容量を形成し、前記第1の画素電極から分離された第2の画素電極が形成された第2の副画素とを備えた画素領域と
を有することを特徴とする液晶表示装置。
(付記2)
付記1記載の液晶表示装置において、
前記配向規制用構造物は、前記基板を法線方向に見て、前記ドレインバスラインにほぼ平行で前記第1及び第2の副画素を跨って形成された幹部と、前記幹部にほぼ直交し、前記第1の副画素の形成領域に形成された第1の枝部と、前記幹部にほぼ直交し、前記第2の副画素の形成領域に形成された第2の枝部とを有し、前記対向基板から突出して形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記3)
付記2記載の液晶表示装置において、
前記第1の副画素は、前記基板を法線方向に見て、前記幹部、前記第1の枝部及び前記第1の画素電極の外周部により4分割された分割領域を有することを特徴とする液晶表示装置。
(付記4)
付記3記載の液晶表示装置において、
前記液晶材料は、前記基板を法線方向に見て、前記第1の副画素の前記分割領域毎に傾斜する方向が異なっていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記5)
付記2乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第2の副画素は、前記基板を法線方向に見て、前記幹部、前記第2の枝部及び前記第2の画素電極の外周部により4分割された分割領域を有することを特徴とする液晶表示装置。
(付記6)
付記5記載の液晶表示装置において、
前記液晶材料は、前記基板を法線方向に見て、前記第2の副画素の前記分割領域毎に傾斜する方向が異なっていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記7)
付記1乃至6のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記画素領域は、前記第2の画素電極を2つ有し、
2つの前記第2の画素電極は、前記ドレインバスラインの延伸方向に、前記第1の画素電極を挟んで並んで配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記8)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第1及び第2の画素電極は、前記基板を法線方向に見て、ほぼ正方形状に形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記9)
付記1乃至8のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第1又は第2の画素電極の少なくともいずれかは、前記外周部の少なくとも一部に、前記液晶材料の倒れる方向とほぼ平行な方向に形成されたスリット部を有することを特徴とする液晶表示装置。
(付記10)
付記9記載の液晶表示装置において、
前記スリット部は、切り込みの幅が2μm以上5μm以下になり、切り込みの長さが3μm以上になるように形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記11)
付記9又は10に記載の液晶表示装置において、
前記スリット部は、前記ゲートバスライン近傍の前記外周部に形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記12)
付記11記載の液晶表示装置において、
前記スリット部は、前記ドレインバスライン近傍の前記外周部に形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記13)
付記9乃至12のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記スリット部は、前記第1及び第2の画素電極が隣接する外周部には形成されていないことを特徴とする液晶表示装置。
(付記14)
付記1乃至13のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記配向規制用構造物は、前記対向基板に代えて、前記基板から突出して、前記第1及び第2の画素電極の下層に形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記15)
付記14記載の液晶表示装置において、
前記基板は、前記第1及び第2の画素電極上に形成された、前記液晶材料の配向を制御する配向制御膜を有し、
前記配向規制用構造物上に位置する前記配向制御膜の傾斜面近傍の前記液晶材料の配向方向は、電圧印加時に生じる電気力線の方向と異なっており、
前記液晶材料は、前記配向規制用構造物に向かって傾斜していることを特徴とする液晶表示装置。
(付記16)
付記1乃至15のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶材料は、前記基板を法線方向に見て、電圧印加時に、前記第1及び第2の画素電極上で前記配向規制用構造物に対してほぼ45°の方向に傾斜していることを特徴とする液晶表示装置。
(付記17)
付記1乃至16のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記接続電極は、前記基板を法線方向に見て、前記幹部と重なるように前記ドレインバスラインにほぼ平行に延伸して形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記18)
付記1乃至17のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記基板は、前記ゲートバスラインにほぼ平行に形成された蓄積容量バスラインを有し、
前記第1の枝部は、前記基板を法線方向に見て、前記蓄積容量バスラインに重なっていることを特徴とする液晶表示装置。
(付記19)
付記1乃至18のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶材料は、負の誘電率異方性を有し、電圧無印加時に前記基板面にほぼ垂直に配向していることを特徴とする液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態による液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による液晶表示装置の1画素の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による液晶表示装置の第2の副画素22を拡大して示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による液晶表示装置の線状突起12の高さhについて説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による液晶表示装置の階調輝度特性を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による液晶表示装置の1画素の構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による液晶表示装置の変形例の1画素の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による液晶表示装置の変形例の画素領域の切断面を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による液晶表示装置の他の変形例の1画素の構成を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態による液晶表示装置の1画素の構成を示す図である。
【図11】従来の液晶表示装置の階調輝度特性を示す図である。
【図12】従来の液晶表示装置の1画素の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
2 TFT基板
3、5、103 ガラス基板
4 対向基板
6、106 ゲートバスライン
8、108 ドレインバスライン
10、110 TFT
10a、110a ドレイン電極
10b、110b ソース電極
10c、110c ゲート電極
11、111 接続電極
12、112a、112b、112c 線状突起
12a 幹部
12b 第1の枝部
12c、12d 第2の枝部
14、114 蓄積容量バスライン
16、116 蓄積容量電極(中間電極)
18、118 コンタクトホール
20 第1の副画素
20a〜20d、22a〜22d,24a〜24d 分割領域
21 第1の画素電極
21a、23a、25a ベタ部
21b、23b、25b スリット部
21c、23c、25c 線状電極部
21d、23d、25d 切り込み部
22、24 第2の副画素
23、25 第2の画素電極
26 絶縁膜
27 保護膜
28 共通電極
30 液晶組成物
32 液晶分子
34 暗部
36 配向膜
80 ゲートバスライン駆動回路
82 ドレインバスライン駆動回路
84 制御回路
86、87 偏光板
88 バックライトユニット
120、122 副画素
121、123 画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に対向配置された対向基板と、
前記基板と前記対向基板間に封止された、光又は熱により重合性材料が重合したポリマーと、液晶材料とを含む液晶組成物と、
前記対向基板に形成された、前記液晶材料の配向方位を規制する配向規制用構造物と、
前記基板に形成されたゲートバスラインと、
前記ゲートバスラインに絶縁膜を介して交差して形成されたドレインバスラインと、
前記ゲートバスラインに電気的に接続されたゲート電極と、前記ドレインバスラインに電気的に接続されたドレイン電極と、前記ゲート電極上で前記ドレイン電極と所定の間隙を設けて対向配置されたソース電極とを備えた画素用トランジスタと、
接続電極を介して前記ソース電極に電気的に接続された第1の画素電極が形成された第1の副画素と、前記接続電極との間に絶縁膜を挟んで所定の電気容量を形成し、前記第1の画素電極から分離された第2の画素電極が形成された第2の副画素とを備えた画素領域と
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示装置において、
前記配向規制用構造物は、前記基板を法線方向に見て、前記ドレインバスラインにほぼ平行で前記第1及び第2の副画素を跨って形成された幹部と、前記幹部にほぼ直交し、前記第1の副画素の形成領域に形成された第1の枝部と、前記幹部にほぼ直交し、前記第2の副画素の形成領域に形成された第2の枝部とを有し、前記対向基板から突出して形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の液晶表示装置において、
前記第1の副画素は、前記基板を法線方向に見て、前記幹部、前記第1の枝部及び前記第1の画素電極の外周部により4分割された分割領域を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の液晶表示装置において、
前記液晶材料は、前記基板を法線方向に見て、前記第1の副画素の前記分割領域毎に傾斜する方向が異なっていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第2の副画素は、前記基板を法線方向に見て、前記幹部、前記第2の枝部及び前記第2の画素電極の外周部により4分割された分割領域を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の液晶表示装置において、
前記液晶材料は、前記基板を法線方向に見て、前記第2の副画素の前記分割領域毎に傾斜する方向が異なっていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記画素領域は、前記第2の画素電極を2つ有し、
2つの前記第2の画素電極は、前記ドレインバスラインの延伸方向に、前記第1の画素電極を挟んで並んで配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第1又は第2の画素電極の少なくともいずれかは、前記外周部の少なくとも一部に、前記液晶材料の倒れる方向とほぼ平行な方向に形成されたスリット部を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項8記載の液晶表示装置において、
前記スリット部は、前記ゲートバスライン近傍の前記外周部に形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の液晶表示装置において、
前記スリット部は、前記第1及び第2の画素電極が隣接する外周部には形成されていないことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−201451(P2006−201451A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12680(P2005−12680)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】