説明

液晶表示装置

【課題】有機物からなる一軸の形状異方性粉体を含む液晶材料を用いた液晶表示装置において、短絡による表示不良の改善。
【解決手段】第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板の間に配置された液晶層,画素電極、及び共通電極とを有し、前記液晶層において、有機物で一軸の形状異方性を有するカーボンナノチューブが含有されており、前記カーボンナノチューブの長軸は、前記液晶層の厚さ、及び前記画素電極から前記共通電極までの距離のうち、どちらか短い距離以下であり、前記カーボンナノチューブの表面は、アモルファス状態を有することを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶パネル製造技術の進歩により、従来ブラウン管が大勢を占めていたテレビ用のディスプレイとして液晶表示素子が用いられるようになっている。従来、液晶表示素子としては、ツイステッドネマチック(TN)表示方式が知られていたが、この方式においては、コントラストや視野角特性,応答特性(=応答時間)の向上が課題であった。特にテレビ用途においては、前述の動画質の支配因子である応答特性がブラウン管に対して劣るために、改善が強く望まれてきた。
【0003】
この応答特性に関しては、非特許文献1に記載されるように、液晶材料の粘度,弾性定数が制御因子であることが知られている。一方で、ディスプレイとして液晶材料を使用するにあたっては、光学特性として屈折率異方性,温度特性として液晶相−等方相相転移温度,電気特性として誘電率異方性などのパラメータと粘度,弾性定数のバランスが必要であるが、いずれかのパラメータを変化させると、他のパラメータも変化してしまうことがある。このため応答特性改善のために粘度,弾性定数を大きく変化させると、他のパラメータとのバランスを調整することが非常に困難となる。
【0004】
これまでは、粘度及び弾性定数の改善だけでなく、表示方式や、駆動方式によっても、応答の改善を図らざるを得なかったが、近年、液晶中に非液晶成分であるナノ粒子を添加することにより応答の改善が図れることが報告された。例えば、有機物のナノ粒子として、非特許文献2,3のような一軸の形状異方性を有する材料を液晶中に添加して液晶表示装置の応答時間を改善した結果が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本化学会編、液晶の化学、46頁、1994年
【非特許文献2】Sang Youn Jeon他、IDW予稿集、167−170頁、2005年
【非特許文献3】Scott J. Woltman他、SIDダイジェスト、752−755頁、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ナノ粒子を添加した液晶について従来の液晶と異なる性質が開明されてきているが、この液晶材料を適用したデバイスの構造と材料として必要な特徴については十分に検討がなされていない。
【0007】
有機物で一軸的な形状異方性を有する材料は、導電性があるため、長さによっては、電気的な短絡による表示不良という問題がある。また、有機物で一軸的な形状異方性を有する材料は、表面の結晶性が高いために、それ自身で凝集しやすく、凝集物が短絡を起こし、表示不良という問題が発生する。
【0008】
本発明は、液晶表示装置として、短絡による表示不良を起こさせないナノ粒子材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第一の基板と第二の基板との間に配置される液晶層,画素電極、及び共通電極を有し、液晶層に有機物からなる一軸の形状異方性を有する粒体を含有し、粒体の長軸は、液晶層の厚さ、及び前記画素電極から前記共通電極までの距離のうち、どちらか短い距離以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
高速応答性を有する液晶表示パネル、及び液晶表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における本発明のデバイス構成の例を表す図である。
【図2】実施例1における本発明のデバイス構成の例を表す図である。
【図3−a】実施例1における液晶表示装置への液晶材料の注入方法を説明する図である。
【図3−b】実施例1における液晶表示装置への液晶材料の注入方法を説明する図である。
【図4】実施例2で実施の本発明のデバイス構成の例を表す図である。
【図5】実施例2で実施の本発明のデバイス構成の例を表す図である。
【図6】実施例2における液晶表示装置への液晶材料の注入方法を説明する図である。
【図7−a】実施例3で使用したカーボンナノチューブ表面の模式図である。
【図7−b】実施例3で使用したカーボンナノチューブ表面の模式図である。
【図8】カーボンナノチューブの添加量と応答時間の関係を示す図である。
【図9−a】カーボンナノチューブを0重量%添加した液晶材料の観察写真である。
【図9−b】カーボンナノチューブを5×10-4重量%添加した液晶材料の観察写真である。
【図9−c】カーボンナノチューブを10-1重量%、添加した液晶材料の観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、表示素子内における画素群の構成の一例を示したものである。映像信号線DLの映像信号は、ゲート信号線GLにより制御された薄膜トランジスタTFTを介して、画素電極PXに供給される。この画素電極PXと共通電極CTの間に電界を形成し、液晶層を駆動することで表示を行う。
【0014】
図2は、図1のA−A′の線でとった断面図を表している。カラーフィルタCFは、横方向で隣接する画素同士では色の異なるものとなるため、それぞれ別の色となっている。一方下側の基板SUB1は、各画素において平板上に形成された共通電極CTを有する。共通電極CT上には、保護膜PASが設けられ、画素ごとの共通電極CTの間に対応するように、映像信号線DLが設けられる。更に、この映像信号線上には、保護膜PASが設けられ、その上に画素電極PXが配置する。共通電極CTは、透明表示用の素子で、例えばITOのような透明電極で形成されている。本実施例においては、基板として厚みが0.7mmの透明なガラス基板を2枚用いた。これらの基板において、一方の基板SUB1上に、薄膜トランジスタTFT,ゲート信号線GL、及び映像信号線DLを形成した。なお、薄膜トランジスタ及び配線電極からなるマトリクス素子は、一般的なアクティブ・マトリクス駆動ができるものであれば何でも良い。
【0015】
画素の表示領域においては、基板SUB1上層にベタ状の共通電極CTを、ITO(インジウムチンオキサイド)からなる透明導電層として形成し、さらに、その上層に窒化シリコンから保護膜PASを形成した。本実施例では、ITOからなるベタ状の共通電極CT,保護膜PASの膜厚は、550nmとした。
【0016】
次に、保護膜PASの上に、櫛歯状の画素電極PXを、膜厚77nmのITO電極層として形成した。画素電極PXから共通電極CTまでの電極間距離Lは5μmである。ここで、本実施例におけるLは、基盤面法線方向における画素電極PXから共通電極CTまでの距離をいう。
【0017】
他方の基板SUB2には、カラーフィルタCFおよびオーバーコート膜OCなどを形成した。これら基盤上にポリイミドからなる配向膜ALを形成し、この後、ラビング処理を行った。ラビング方向は、図1においてゲート信号線GLと水平の方向に実施した。さらに、SUB2には、柱状スペーサ(4ミクロン)を形成し、基板SUB1の外周部にシール剤を形成した。
【0018】
次に、液晶層LCに用いる液晶を調整した。まず、母体となる液晶(メルク社製ZLI4792)に、例として、平均長軸長さ500nmのカーボンナノチューブ(アルドリッチ社製)を10-3重量%添加した。このカーボンナノチューブを液晶に均一に分散させるため、超音波洗浄器を用いて、約6時間振とうした。この液晶をさらに、孔径0.5μmのメンブレンフィルタを通した。この後、減圧下で、図3−aのように、基板SUB1上にカーボンナノチューブを拡散した液晶の上澄みを必要量滴下し、基板SUB1の配向膜ALの面と、基板SUB2の配向膜ALの面が相対し、かつ、基板SUB1及びSUB2のラビング方向が一致するように、図3−bのように気泡が入らないようにして押し重ね組み合わせた。
【0019】
次に、このパネルを2枚の偏光板PL1,PL2(日東電工社製SEG1224DU)で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を他方のそれに直交させるように配置した。この時,偏光板の偏光透過軸は、基板SUB1,SUB2のラビング方向に対してPL1は0度とし、PL2は90度をなす方向とした。
【0020】
次に、上記画素電極PX、及び共通電極CTに交流駆動電圧が加わるように駆動回路を接続、その後、バックライトなどを接続したモジュール化し、液晶表示装置を得た。
【0021】
カーボンナノチューブは、一軸形状異方性を有しており、本実施例において使用した平均長軸長さは、0.5μm、直径は1〜2nmの円筒状である。また、これを分散した液晶を0.5μmの孔径のフィルタを通したことにより、カーボンナノチューブの長軸長さを0.5μm以下とした。これは、液晶層の厚さD、及び画素電極PXから共通電極CTまでの電極間距離Lに対して十分短いものであり、カーボンナノチューブによる短絡不良が見られなかった。また、カーボンナノチューブ、及びその凝集物による液晶層の厚さ増大による表示特性の変化は非常に少なく、良好な表示を実現できた。
【0022】
なお、一軸の形状異方性を有する材料であるならば、カーボンナノチューブに限らず、良好な表示を実現することが出来る。一軸の形状異方性を有する分子、及び分子集合体の具体的な構造として、「棒状」,「柱状」,「円筒状」、及び「繊維状」等があり、このような構造の例としては、両親媒性分子により形成される柱状ミセル構造,中空繊維状有機ナノチューブ,グルコサミン系高分子ナノチューブ,フェノール系高分子ナノチューブ、及びタバコモザイクウイルス等が上げられるが、この限りではない。
【0023】
今回の使用したカーボンナノチューブの長軸長さ0.5μmは、平均長軸長さであり、実際には、0.5μmよりも短いカーボンナノチューブが含まれる。一軸の形状異方性を有する材料について、その長軸長さが、液晶層の厚さ、及び画素電極から共通電極までの距離のうち、いずれか短い距離以下である材料が含有されていれば、本発明の効果を達成することができる。また、液晶層の厚さ、及び画素電極から共通電極までの距離のうち、いずれか短い距離以下である一軸の形状異方性を有する材料のみが含有されていても、同様の効果が期待できる。
【実施例2】
【0024】
図4は、第一の発明に係る表示素子内の画素群の構成で、実施例1とは異なる形態の例を示したものである。映像信号線DLの映像信号は、ゲート信号線GLにより制御された薄膜トランジスタTFTを介して、画素電極PXに供給される。この画素電極PXと共通電極CTの間に電界を形成し、液晶層を駆動することで表示を行う。図5は、図4のBB′の線でとった断面図を表している。これらに示される構成は、実施例1とおおよそ同様であるが、画素電極PX及び共通電極CXの双方が櫛歯状に形成される点で異なる。この構成を、基板SUB1及びSUB2上に形成した。このとき、画素電極PX、及び共通電極の幅は、ともに7μm、画素電極PXから共通電極までの距離を10μmとし、保護膜PASは、窒化シリコンで500nmとして形成した。ここで、本実施例におけるLは、基盤面平面方向における画素電極PXから共通電極CTまでの距離をいう。これら基盤上に、ポリイミドからなる配向膜ALを形成し、この後、ラビング処理を行った。ラビング方向は、図4において、映像信号線DLと水平の方向に実施した。さらに、基板SUB2には、柱状スペーサ(4ミクロン)を形成、さらに基板SUB1の外周部にシール剤と液晶注入口を形成し、配向膜ALが相対するようにかつ、基板SUB1及びSUB2のラビング方向が一致するよう組み合わせた。
【0025】
次に、図6のように、真空チャンバ中で組み立てた表示装置LCDの注入口を液晶皿LB中に蓄えた液晶層LCに接触させ、真空チャンバを徐々に常圧に戻すことで液晶を注入した。このとき使用した液晶材料は、実施例1に用いたカーボンナノチューブを分散させた液晶材料を用いた。
【0026】
次に、このパネルを2枚の偏光板PL1,PL2(日東電工社製SEG1224DU)で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を、他方のそれに直交させるように配置した。この時、偏光板の偏光透過軸は、基板SUB1,SUB2のラビング方向に対してPL1は0度とし、PL2は90度をなす方向とした。
【0027】
次に、画素電極PX及び共通電極CTに交流駆動電圧が加わるように駆動回路を接続、その後、バックライトなどを接続したモジュール化し、液晶表示装置を得た。カーボンナノチューブの長軸長さは、液晶層の厚さD、及び画素電極PXから共通電極CTまでの電極間距離Lに対して十分短いものであり、実施例1と同様に、カーボンナノチューブによる短絡不良は見られなかった。また、カーボンナノチューブ、およびその凝集物による液晶層の厚さ増大による表示特性の変化は非常に少なく、良好な表示を実現できた。なお、一軸の形状異方性を有する材料であるならば、カーボンナノチューブに限らず、良好な表示を実現することが出来る。一軸の形状異方性を有する分子及び分子集合体の具体的な構造として、「棒状」,「柱状」,「円筒状」、及び「繊維状」等があり、このような構造の例としては、両親媒性分子により形成される柱状ミセル構造,中空繊維状有機ナノチューブ,グルコサミン系高分子ナノチューブ,フェノール系高分子ナノチューブ、及びタバコモザイクウイルス等が上げられるが、この限りではない。
【実施例3】
【0028】
図7−aは、アルドリッチ社から購入可能な、表面を化学修飾したカーボンナノチューブ表面の概念図である。表面には、カルボキシル基が共有結合的に結合している。非特許文献4(向井淳二,金城徳幸“技術者のための実学高分子”講談社サイエンティフィク、44頁、1981年)の情報に則り、表面のカルボキシル基の溶解度パラメータを求めると、20.0(cal/cm)0.5となる。一方で、この計算方法を用い、非特許文献5(液晶便覧編集委員会編、液晶便覧、324−329頁、2000年)に記載の一般的なネマチック液晶分子の溶解度パラメータをもとめると、おおよそ8から12である。この結果をもとに、図7−aの化合物とアルコール(本実施例では、n−プロピルアルコール)をもとに、一般的なエステル化反応により図7−bの化合物を合成した。得られた化合物は、溶媒を留去,真空乾燥した。図7−bにおいては、カーボンナノチューブの表面に結合している分子団の溶解度パラメータを計算して求めると、10.0(cal/cm)0.5となった。
【0029】
この図7−bの化合物を、化1(シーベルヘグナー社製),化2(アルドリッチ社製)、および非特許文献6(液晶若手研究会編,液晶材料研究の基礎と新展開、106−109頁、1998年)を参考に、合成の化3,化4を等量ずつ混合して得た液晶組成物に10-3重量%添加した。
【0030】
これら化合物の溶解度パラメータを、上述の方法により計算して求めると、化1:10.1(cal/cm)0.5,化2:11.0(cal/cm)0.5,化3:9.1(cal/cm)0.5,化4:9.1(cal/cm)0.5となった。
【0031】
この図7−bを添加した液晶組成物を、超音波洗浄機を用いて6時間振とうした。この液晶組成物の上澄みを、実施例2と同様に電極,画素構造を形成した基板SUB1及びSUB2からなる表示装置LCDの注入口に接触させ、真空チャンバを徐々に常圧に戻すことで液晶を注入した。以後、偏光板の貼付等の工程は、実施例2と同様である。
【0032】
得られた液晶表示装置は、短絡等による表示不良が無く、基板内でのカーボンナノチューブ自身の凝集が少なく、すぐれたコントラストを実現することが出来た。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
なお、一軸の形状異方性を有する材料であるならば、カーボンナノチューブに限らず、良好な表示を実現することが出来る。一軸の形状異方性を有する分子及び分子集合体の具体的な構造として、「棒状」,「柱状」,「円筒状」、及び「繊維状」等があり、このような構造の例としては、両親媒性分子により形成される柱状ミセル構造,中空繊維状有機ナノチューブ,グルコサミン系高分子ナノチューブ,フェノール系高分子ナノチューブ、及びタバコモザイクウイルス等が上げられるが、この限りではない。
【実施例4】
【0038】
平均長軸長さが500nmのカーボンナノチューブ(アルドリッチ社製)を、非特許文献7(佐野正人、カーボンナノチューブの分散性向上と高導電率化、15−17頁、2006年)及び非特許文献8(田路和幸、カーボンナノチューブの分散性向上と高導電率化14−21頁、2006年)を参考に、精製を行った。本発明は、精製法および合成法に関するものではないので、詳細は記載しないが、本実施例では、10%過酸化水素/純水にカーボンナノチューブを分散したのち、大気下で還流過熱撹拌を約3時間程度実施した。この精製カーボンナノチューブをフィルタで集め、純水にて洗浄後、乾燥した。これを、ラマン分光測定したところ、精製前に比べて、1593cm-1付近に現れるG−Bandが鋭くなった一方で、1350cm-1付近及び1600cm-1付近にアモルファス由来のD−Bandの強度が強くなったことを確認した。
【0039】
この精製後のカーボンナノチューブを液晶材料(メルク社製ZLI4792)に10-3重量%添加した。この後、超音波洗浄機を用いて6時間、振とうし、その上澄みを、実施例2と同様に電極,画素構造を形成した基板SUB1,SUB2からなる表示装置LCDの注入口に接触させ、真空チャンバを徐々に常圧に戻すことで液晶を注入した。以後、偏光板の貼付等の工程は実施例2と同様である。
【0040】
得られた液晶表示装置は、基板内でのカーボンナノチューブ自身の凝集が非常に少なく、すぐれたコントラストを実現することが出来た。なお、一軸の形状異方性を有する材料であるならば、カーボンナノチューブに限らず、良好な表示を実現することが出来る。一軸の形状異方性を有する分子及び分子集合体の具体的な構造として、「棒状」,「柱状」,「円筒状」、及び「繊維状」等があり、このような構造の例としては、両親媒性分子により形成される柱状ミセル構造,中空繊維状有機ナノチューブ,グルコサミン系高分子ナノチューブ,フェノール系高分子ナノチューブ、及びタバコモザイクウイルス等が上げられるが、この限りではない。
【実施例5】
【0041】
平均長軸長さが500nmのカーボンナノチューブ(アルドリッチ社製)を、液晶材料(メルク社製ZLI4792)に10-5重量%,5×10-5重量%,5×10-4重量%、10-1重量%添加した。これらをそれぞれ、超音波洗浄機を用いて6時間、振とうし、その上澄みを、実施例2と同様に、電極及び画素構造を形成した基板SUB1及びSUB2からなる表示装置LCDの注入口に接触させ、真空チャンバを徐々に常圧に戻すことで、液晶を注入した。以後、偏光板の貼付等の工程は、実施例2と同様である。
【0042】
得られた液晶表示装置について、25℃において応答時間測定をした。結果は、図8のようになった。この図から判るように、非特許文献4に記載の通り、カーボンナノチューブ添加により、応答時間の高速化が確認できた。しかし、10-1重量%添加した材料は、カーボンナノチューブの凝集,沈降がひどく液晶表示装置内に注入するに至らなかった。
【0043】
ここで、表示装置LCDに、注入前の液晶材料についてそれぞれ、偏光顕微鏡下において観察した。図9−a,b、及びcはそれぞれ、カーボンナノチューブを0重量%,5×10-4重量%,10-1重量%、添加した液晶材料の観察写真である。ここから判るように、カーボンナノチューブ濃度の増大に伴い、カーボンナノチューブの凝集物が形成されることが判る。特に、10-1重量%では、SUB2に形成した柱状スペーサの高さよりも大きな20ミクロンの凝集体が形成されており、均一に、カーボンナノチューブが分散されないことが判った。また、本検討のなかで、添加量増大に伴って、応答時間の増大が明らかとなった。
【0044】
以上のカーボンナノチューブの凝集および応答時間の増大という結果から、添加量の上限として、10-1重量%以下、望ましくは10-2重量%であることが明らかとなった。また、カーボンナノチューブを添加していくと、おおよそ10-4重量%付近で応答時間の極小を示し、10-4重量%付近までは、濃度増大に伴って応答時間が低減する。このことから、カーボンナノチューブは、10-4重量%以下のきわめて少量の添加においても、高速応答化の効果が期待できる。以上から、カーボンナノチューブの添加量は、0重量%より大きいことが望ましい。
【0045】
一方で、添加量の制御を鑑みると、正確な秤量から、10-7重量%以上、あるいは10-6重量%以上とすることが望ましい。これらによって、カーボンナノチューブ自身の凝集が少なく、また凝集物による液晶層の厚さ増大による光学特性変化がなく、すぐれたコントラストと高速応答性を実現することが出来た。なお、一軸の形状異方性を有する材料であるならば、カーボンナノチューブに限らず、良好な表示を実現することが出来る。一軸の形状異方性を有する分子及び分子集合体の具体的な構造として、「棒状」,「柱状」,「円筒状」、及び「繊維状」等があり、このような構造の例としては、両親媒性分子により形成される柱状ミセル構造,中空繊維状有機ナノチューブ,グルコサミン系高分子ナノチューブ,フェノール系高分子ナノチューブ、及びタバコモザイクウイルス等が上げられるが、この限りでない。
【0046】
なお、液晶材料に一軸の形状異方性分子が含有していることの確認方法についてであるが、まず、孔径の小さなフィルタで液晶を濾過する。このとき、孔径はより小さいものが望ましいが、一般的に購入できる0.2μmのものを用いてもよい。この後、適当な溶媒で洗浄、及び乾燥を行い、一軸の形状異方性分子を分離する。この際、後の分析手法に依っては、大量に分離する必要があることから、一軸の形状異方性分子が含有されている液晶材料を大量に用意する場合がある。
【0047】
分離した一軸の形状異方性分子は、透過型電子顕微鏡の観察により、その形状と長さを確認できる。ナノ粒子の粒径を測定する方法として光散乱を用いた方法が知られているが、形状異方性を有する粒体では測定精度が高くないため、前述の透過電子顕微鏡観察で長さを確認することが望ましい。
【0048】
実施例1から5において、本発明を横電界方式の液晶表示装置を用いて実施したが、カーボンナノチューブの凝集による、液晶層厚変動,凝集物周辺部の光漏れによるコントラスト低下,カーボンナノチューブによる電極間の短絡は、他の表示モード、たとえばバーティカルアライメント(VA)方式,ツイステッドネマチック(TN)方式,電界制御複屈折(ECB)方式などにおいても共通の課題である。本発明の構成を採用することにより、VA方式,ECB方式,TN方式等、表示方式依らず、優れた表示性能を示すことができる。
【符号の説明】
【0049】
PX 画素電極、CT 共通電極、CL 共通信号線、GL ゲート信号線、TFT 薄膜トランジスタ、DL 映像信号線、CF カラーフィルタ、SUB1,SUB2 基板、PL1,PL2 偏光板、PAS 保護膜、EL 電界、LC 液晶層、OC オーバーコート膜、LB 液晶皿、LCD 表示装置、SI シール材、D 液晶層厚、L 電極間距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と、
第二の基板と、
前記第一の基板と前記第二の基板の間に配置された液晶層,画素電極、及び共通電極と
を有し、
前記液晶層において、有機物で一軸の形状異方性を有するカーボンナノチューブが含有されており、
前記カーボンナノチューブの長軸は、前記液晶層の厚さ、及び前記画素電極から前記共通電極までの距離のうち、どちらか短い距離以下であり、
前記カーボンナノチューブの表面は、アモルファス状態を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
前記カーボンナノチューブは、前記液晶中に、0重量%より大きく、10−1重量%以下含有されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
前記カーボンナノチューブは、前記液晶中に、10−7重量%以上、10−1重量%以下含有されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
前記カーボンナノチューブは、前記液晶中に、10−6重量%以上、10−2重量%以下含有されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
前記カーボンナノチューブの表面は、カルボキシル基が共有的結合的に結合している、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5いずれか一項に記載の液晶表示装置において、
前記カーボンナノチューブは、酸化処理により得られることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6いずれか一項に記載の液晶表示装置において、
前記第一の基板上に前記共通電極が形成され、
前記共通電極上に保護膜が設けられ、
前記保護膜上に前記画素電極が配置され、
前記画素電極は櫛歯状に形成される、
ことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−a】
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【図3−b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−a】
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【図7−b】
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【図8】
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【図9−a】
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【図9−b】
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【図9−c】
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【公開番号】特開2011−242807(P2011−242807A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184847(P2011−184847)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2007−326661(P2007−326661)の分割
【原出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】