説明

液晶装置、電気光学装置および液晶装置の駆動方法

【課題】液晶素子を交流駆動して表示を行う場合に、フリッカーをより効果的に抑制すること。
【解決手段】画素電極と、該画素電極との間で電界を発生する共通電極とを有し、前記画素電極と共通電極との間に交流電圧を印加して、液晶を駆動する液晶パネルと、前記共通電極に共通電圧を印加する駆動回路と、前記液晶パネルに照射されている光の強さを検出する光検出手段と、前記光検出手段の検出結果に対応して、前記駆動回路によって前記共通電極に印加する共通電圧を変化させる共通電圧変化手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子によって表示を行う液晶装置、電気光学装置および液晶装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置として、例えば、液晶素子を交流駆動して表示を行う液晶装置を備えたものが知られている。
液晶素子を交流駆動して表示を行う液晶装置は、共通電極に印加する共通電圧に対し、画素電極を高電圧として液晶を駆動する状態と、画素電極を低電圧として液晶を駆動する状態とを交互に繰り返すことにより、液晶の劣化を防ぎつつ、画像の表示を行っている。
【0003】
このように液晶素子を交流駆動する場合、共通電極に印加する共通電圧として、画素電極が高電圧となる状態および低電圧となる状態が切り換わっても、フリッカーが最小となる電圧が選択されている。
ところで、近年、表示のダイナミックレンジを向上させるために、液晶装置に備えられたバックライトの輝度に応じて、画像信号を変化させる技術が用いられている。
例えば、特許文献1に記載された技術では、バックライトの輝度と液晶表示パネルの階調とを制御することで、高輝度側あるいは低輝度側において階調を狭めることなく適切に表示画像を表示するものとしている。
【特許文献1】特開2002−287686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を含め、従来の技術においては、液晶パネル等に備えられるスイッチング素子が半導体素子を含むことから、バックライトの輝度を変化させた場合に、スイッチング素子の特性が変化し、液晶素子の駆動電圧と表示階調の関係にずれが生じることとなる。
そのため、液晶素子を交流駆動して表示を行う液晶装置において、画素電極の電圧が高電圧となる状態と低電圧となる状態とで切り換わった場合に、フリッカーが増大する事態を招いていた。
本発明の課題は、液晶素子を交流駆動して表示を行う場合に、フリッカーをより効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る液晶装置は、
画素電極と、該画素電極との間で電界を発生する共通電極とを有し、前記画素電極と共通電極との間に交流電圧を印加して、液晶を駆動する液晶パネルと、前記共通電極に共通電圧を印加する駆動回路と、前記液晶パネルに照射されている光の強さを検出する光検出手段と、前記光検出手段の検出結果に対応して、前記駆動回路によって前記共通電極に印加する共通電圧を変化させる共通電圧変化手段とを備えることを特徴とする。
このような構成により、液晶パネルに照射されている光の強さに応じて共通電圧を変化させることができるため、共通電圧と正極電圧および負極電圧との関係が変化したとしても、フリッカーを効果的に抑制することができる。
【0006】
ここで、液晶パネルとしては、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Virtical Alignment)モードあるいはIPS(In-Place-Switching)モード等、各種モードの液晶パネルを採用することが可能であるが、例えば、液晶を挟む一対の基板のうち、一方の基板に絶縁膜を挟んで共通電極と画素電極とを形成し、共通電極と画素電極との間に印加される横方向の電界で液晶を駆動するFFS(Fringe-Field Switching)モードの液晶パネルに本発明を適用すると、その効果が顕著である。
これは、FFSモードの液晶パネルにおいては、画素電極に交流電圧を印加した場合に、正極電圧の印加時と負極電圧の印加時とで電界経路に非対称性が生じるためである。また、光の照射によって、この非対称性の影響はより大きいものとなる。
共通電圧を変化させるために、例えば、ユーザの任意の操作によって共通電圧を変化させる構成とすることが可能であるが、液晶パネルに照射されている光の強さと共通電圧との関係を示す変換テーブルを記憶しておき、その変換テーブルに基づいて共通電圧を決定すると、出力する共通電圧を自動的に変化させることができるため好適である。
【0007】
また、液晶パネルに照射されている光の強さを検出する方法としては、例えば、以下の形態とすることができる。
(1)液晶パネルを照射する照明装置の制御信号が示す光の強さ(例えば、PWM信号のデューティー比等)を検出し、変換テーブルに、制御信号が示す光の強さと共通電極に印加する共通電圧との関係を格納しておく。
(2)液晶パネルを照射する照明装置の駆動電流を検出し、変換テーブルに、照明装置の駆動電流の強さと共通電極に印加する共通電圧との関係を格納しておく。
(3)液晶パネルに照射される光の強さを光センサによって検出し、変換テーブルに、液晶パネルに照射される光の強さと共通電極に印加する共通電圧との関係を記憶しておく。
【0008】
また、本発明に係る電気光学装置は、
第1の電極と第2の電極との間に交流電圧を印加して液晶を駆動する液晶パネルと、光の強さを可変として前記液晶パネルに光を照射する照明装置と、照射される光の強さに応じて変化する前記液晶パネルの特性変化に基づいて定められた補正データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された補正データに基づく駆動信号を前記液晶パネルに出力する駆動回路とを備えることを特徴とする。
このような構成により、液晶パネルに照射されている光の強さに応じて、液晶パネルの特性変化に基づく補正データを用いて、液晶パネルの駆動信号を変化させることができるため、光の照射によって液晶パネルの特性が変化したとしても、フリッカーを効果的に抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る液晶装置の駆動方法は、
照射された光の強さに応じて変化する液晶パネルの特性に基づいて、液晶を駆動する電極間に印加する交流電圧を補正して表示を行うことを特徴とする。
これにより、光の照射によって液晶パネルの特性が変化したとしても、その変化を考慮した交流電圧に補正して液晶を駆動することができるため、フリッカーを効果的に抑制して表示を行うことができる。
このように、本発明によれば、液晶素子を交流駆動して表示を行う場合に、フリッカーをより効果的に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明に係る液晶装置、それを備えた電気光学装置および液晶装置の駆動方法の実施の形態を説明する。
(構成)
まず、構成を説明する。
図1は、本発明に係る電気光学装置1の外観構成を示す図である。
図1において、電気光学装置1は、液晶装置1Aと、バックライト1Bとを備えている。
液晶装置1Aは、FFSモードによって液晶の配向制御を行う装置であり、素子基板10と、対向基板20と、FPC(Flexible Printed Circuit)30と、遮光膜40と、光センサ50とを備えている。なお、素子基板10と対向基板20との間には、液晶が封入されており、これらは液晶パネルを構成している。
【0011】
素子基板10は、対向基板20と比べて液晶装置1Aの長手方向(図1の上下方向)に大きく形成されており、対向基板20と対向しない領域を備える。この素子基板10のうち対向基板20と対向しない領域には、後述するFPC30が接続されている。
また、素子基板10は、ガラス基板を有しており、ガラス基板の液晶に面する側に、共通電極および走査線が形成された共通電極層を有している。
さらに、素子基板10は、共通電極層の上に絶縁層を介して、画素のピッチに相当する間隔で、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電材料からなる画素電極が形成された画素電極層を有している。
【0012】
素子基板10の画素電極層には、各画素の画素電極をスイッチングするためのTFT(Thin Film Transistor)が形成されている。TFTは、走査線駆動回路から延びる走査線がゲートに接続され、データ線駆動回路から延びるデータ線がソースに接続され、画素電極がドレインに接続されている。
対向基板20は、ガラス基板を有しており、ガラス基板の液晶に面する側において、画素電極に対向する領域には、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタ(後述)が形成されている。また、カラーフィルタが形成されている領域以外の領域には、ブラックマトリクスとしての遮光膜40が形成されている。
ここで、対向基板20のガラス基板における遮光膜40の一部には、遮光膜40を開口させた入光口40aが設けられており、電気光学装置1周辺の外光が、入光口40aを通過して液晶装置1A内部に到達する構造となっている。
【0013】
FPC30は、走査線駆動回路およびデータ線駆動回路を含むドライバIC31と、バックライト1Bの発光を制御するバックライト制御用IC32と、液晶装置1Aのフリッカー抑制制御を行うフリッカー制御用IC33とを備えている。
ドライバIC31は、電気光学装置1全体を制御するCPU(Central Processing Unit)(不図示)からの指示信号に基づいて、走査線駆動回路によって走査線に電圧を印加すると共に、データ線駆動回路によってデータ線に電圧を印加する。また、ドライバIC31は、走査線およびデータ線に電圧を印加して画素の駆動を行う際に、共通電極に、フリッカー制御用IC33から入力された電圧(共通電圧VCOM)を印加する。
【0014】
バックライト制御用IC32は、CPUからの指示信号に基づいて、バックライト1Bに備えられたLEDに駆動電流を出力する。
具体的には、バックライト制御用IC32は、CPUからLEDの点灯輝度を指示するPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力されると、PWM信号によって示される電流をLEDに出力する。
フリッカー制御用IC33は、光センサ50によって検出される輝度値と、フリッカーが最小となる共通電圧VCOMとの対応関係を示す共通電圧補正テーブルを記憶している。
また、フリッカー制御用IC33には、光センサ50から、所定時間間隔(例えば、0.1msec毎等)で、検出された輝度値が入力されている。
【0015】
そして、フリッカー制御用IC33は、光センサ50によって検出された輝度値が入力されると、共通電圧補正テーブルを参照し、その輝度値に対応する共通電圧VCOMをドライバIC31に出力する。
遮光膜40は、対向基板20におけるカラーフィルタが形成されている領域以外の領域に形成され、制御されない液晶領域を覆うブラックマトリクスとして機能する。
光センサ50は、バックライト1Bによって液晶装置1Aに照射された光および電気光学装置1の外光として入光口40aを介して液晶装置1Aに照射された光を検出する光センサを有しており、液晶装置1Aに照射される光の照度(輝度値)をフリッカー制御用IC33に出力する。
バックライト1Bは、光源としてLEDを備えており、LEDから出力された光を、導光板を介して、対向配置されている液晶パネル1Aに照射する。
また、バックライト1BのLEDには、バックライト制御用IC32によって駆動電流が流される。
【0016】
次に、電気光学装置1における表示領域の断面構造について説明する。
図2は、電気光学装置1における表示領域の断面構造を示す図である。
液晶装置1Aは、素子基板10と、素子基板10と対向配置された対向基板20と、素子基板10と対向基板20との間に挟持された液晶層61と、素子基板10の外面側(液晶層61と反対側)に設けられた偏光板62と、対向基板20の外面側に設けられた偏光板63とを備えている。
そして、液晶装置1Aは、素子基板10の外面側から照明光が照射される構成となっている。
また、液晶装置1Aには、素子基板10と対向基板20とが対向する領域の縁端に沿ってシール材(不図示)が設けられており、このシール材、素子基板10および対向基板20によって液晶層61が封止されている。
【0017】
素子基板10は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料からなる基板本体64と、基板本体64の内側(液晶層61側)の表面に順に積層されたゲート絶縁膜65、層間絶縁膜66および配向膜67とを備えている。
また、素子基板10は、基板本体64の内側の表面に配置された走査線68、各画素領域に対応して設けられた共通電極69および各共通電極69を接続する共通線70と、ゲート絶縁膜65の内側の表面に配置されたデータ線(不図示)、半導体層71、ソース72およびドレイン73と、層間絶縁膜66の内側の表面に配置された画素電極74とを備えている。なお、半導体層71、ソース72およびドレイン73は画素電極74をスイッチングするためのTFT75を構成している。
ゲート絶縁膜65は、窒化シリコンや酸化シリコンなどのような絶縁性を有する透光性材料で構成されており、基板本体64上に形成された走査線68、共通線70および共通電極69を覆うように設けられている。
【0018】
層間絶縁膜66は、ゲート絶縁膜65と同様に、窒化シリコンや酸化シリコンなどの絶縁性を有する透光性材料で構成されており、ゲート絶縁膜65上に形成された半導体層71、ソース72およびドレイン73を覆うように設けられている。そして、層間絶縁膜66のうち平面視で画素電極74の枠部と重なる部分には、画素電極74とTFT75との導通を図るための貫通孔であるコンタクトホール76が形成されている。
配向膜67は、例えばポリイミドなどの有機材料で構成されており、層間絶縁膜66上に形成された画素電極74を覆うように設けられている。そして、配向膜67の上面には、液晶層61を構成する液晶分子を配向規制するための配向処理が施されている。この配向膜67の配向方向は、対向基板20に備えられる偏光板63の透過軸と同方向となっている。
【0019】
対向基板20は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で構成された基板本体77と、基板本体77の内側(液晶層61側)の表面に順に積層されたカラーフィルタ層78および配向膜79とを備えている。
カラーフィルタ層78は、各画素領域に対応して配置されており、例えばアクリルなどで構成されて各画素領域で表示する色に対応する色材を含有している。
配向膜79は、例えばポリイミドなどの有機材料やシリコン酸化物などの無機材料で構成されており、その配向方向が配向膜67の配向方向と同方向となっている。
偏光板62、63は、それぞれの透過軸が互いに直交するように設けられている。すなわち、偏光板62の透過軸は、偏光板63の透過軸および配向膜67,79の配向方向(図2において紙面に垂直な方向)と直交する方向(図2において平面視左右方向)となっている。
【0020】
次に、電気光学装置1の回路構成について説明する。
図3は、電気光学装置1の回路構成を示すブロック図である。
液晶装置1Aは、所定間隔おきに設けられた走査線Yと、この走査線Yに交差するように設けられたデータ線Xとを備えている。
各走査線Yおよび各データ線Xの交差部分には、画素Pが設けられている。画素Pは、TFT75、画素電極74、および、画素電極74に対向して設けられた共通電極69で構成される。
画素電極74および共通電極69は、電気光学材料としての誘電体である液晶(図示せず)を挟持し、画素容量を構成する。
【0021】
TFT75のゲートには走査線Yが接続され、ソースにはデータ線Xが接続され、TFT75のドレインには、画素電極74が接続されている。
したがって、このTFT75は、走査線Yから電圧が印加されるとオン状態となり、データ線Xと画素電極74とを導通した状態となる。
走査線駆動回路は、TFT75をオン状態にするための電圧を複数の走査線Yに順次印加する。
例えば、ある走査線Yに選択電圧を供給すると、この走査線Yに接続されたTFT75が全てオン状態となり、この走査線Yに係る画素が全て選択される。
データ線駆動回路は、画像信号をデータ線Xに出力し、オン状態のTFT75を介して、この画像信号に基づく画像電圧を画素電極74に印加する。
【0022】
このような構成により、電気光学装置1は、画素の駆動に関して、以下のように動作する。すなわち、走査線駆動回路から走査線Yに電圧を順次供給することで、各走査線Yに係る全てのTFT75を順次オン状態にして、各走査線Yに係る全ての画素を順次選択する。
そして、これら画素の選択に同期して、データ線駆動回路からデータ線Xに画像信号を供給する。
すると、走査線駆動回路で選択した全ての画素に、データ線駆動回路からデータ線Xおよびオン状態のTFT75を介して画像信号が供給され、この画像信号に基づく画像電圧が画素電極74に印加される。
これにより、画素電極74と共通電極69との間に電位差が生じて、駆動電圧が液晶に印加される。
液晶に駆動電圧が印加されると、液晶の配向や秩序が変化し、液晶を透過するバックライト1Bからの光が変化して、階調表示が行われる。
【0023】
図4は、光センサ50の回路構成を示すブロック図である。
図4において、光センサ50は、バックライト1Bの照射光および外光を受光する第1のPIN型ダイオード51と、バックライト1Bの照射光および外光が遮断される第2のPIN型ダイオード52と、照度検出回路53とを備えている。
第1のPIN型ダイオード51のカソードは、高電位側電源VHHに接続され、第1のPIN型ダイオード51のアノードは、端子Mを介して、第2のPIN型ダイオード52のカソードに接続されている。
第2のPIN型ダイオード52のアノードは、低電位側電源VLLに接続されている。すなわち、第1のPIN型ダイオード51と、第2のPIN型ダイオード52とは、端子Mを介して、直列に接続されており、第1のPIN型ダイオード51および第2のPIN型ダイオード52には、逆バイアス電圧が印加されている。
【0024】
第1のPIN型ダイオード51は、外光の照度のほか、PIN型ダイオード自体の温度などに応じて、カソードからアノードに向かって電流を出力する。一方、第2のPIN型ダイオード52は、光が遮断されているので、PIN型ダイオード自体の温度といった光の照度以外の影響に応じて、カソードからアノードに向かって電流を出力する。
したがって、端子Mから、第1のPIN型ダイオード51が出力した電流と、第2のPIN型ダイオード52が出力した電流との差分の電流を取り出すことができる。
この電流は、第1のPIN型ダイオード51が出力する電流から、PIN型ダイオード自体の温度といった外光の照度以外の影響を除去した電流であり、外光の照度のみに応じた電流である。
照度検出回路53は、光検知回路54、カウンタ55、およびルックアップテーブル(以下、LUTと称する。)56を備えている。
【0025】
この照度検出回路53は、端子Mに流れる電流に基づいて、外光の照度を示す信号(輝度値)をフリッカー制御用IC33に出力する。
光検知回路54は、コンデンサ54a、スイッチング素子54b、および、インバータ54cを備えている。
この光検知回路54は、端子Mに流れる電流に基づいて、光検知信号を出力する。
コンデンサ54aは、端子Mに流れる電流に基づいて充電される。具体的には、コンデンサ54aの一方の電極は、端子Mに接続され、コンデンサ54aの他方の電極は、基準電位電源の電圧GNDに接続されている。端子Mに流れる電流がコンデンサ54aの一方の電極に供給されると、この電流に基づいて、コンデンサ54aには、電荷が徐々に充電される。
【0026】
すると、このコンデンサ54aの一方の電極からは、充電された電荷に応じた電圧が出力される。このため、コンデンサ54aの一方の電極に接続された端子Mの電圧は、コンデンサ54aに充電された電荷に応じた電圧となる。
スイッチング素子54bは、コンデンサ54aに充電された電荷を放電する。具体的には、スイッチング素子54bの一端は、コンデンサ54aの一方の電極に接続され、スイッチング素子54bの他端は、基準電位電源の電圧GNDに接続されている。
スイッチング素子54bをオン状態にすると、このオン状態のスイッチング素子54bを介して、コンデンサ54aに充電された電荷が基準電位電源の電圧GNDに移動する。
これにより、コンデンサ54aに充電された電荷を放電する。
【0027】
インバータ54cは、端子Mの電圧を反転して出力する。具体的には、インバータ54cの入力端は、端子Mに接続され、インバータ54cの出力端は、端子Nに接続されている。インバータ54cは、端子Mの電圧が、所定の電圧よりも電位が低ければ、電圧VDDを出力し、所定の電圧よりも電位が高ければ、光検知信号として電圧GNDを出力する。このため、インバータ54cの出力端に接続された端子Nの電圧は、インバータ54cから出力される電圧となる。
カウンタ55は、スイッチング素子54bがオフ状態になってから、インバータ54cから光検知信号が出力されるまでの時間を計測する。
カウンタ55の入力端は、端子Nに接続され、カウンタ55の出力端は、LUT56の入力端に接続されている。このカウンタ55は、スイッチング素子54bがオフ状態になると、時間の計測を開始し、端子Nの電圧が電圧GNDになると、時間の計測を終了する。
【0028】
LUT56は、カウンタ55で計測した時間に基づいて、液晶装置1Aに照射される光の照度を示す信号を出力する。具体的には、LUT56の入力端は、カウンタ55の出力端に接続される。
このLUT56は、カウンタ55で計測した時間に基づいて、液晶装置1Aに照射される光の光量を判定する。例えば、LUT56は、カウンタ55で計測した時間が長いほど、端子Mに流れる光の照度のみに応じた電流が小さいということなので、照射光の光量が少ないと判定する。
一方、LUT56は、カウンタ55で計測した時間が短いほど、端子Mに流れる光の照度のみに応じた電流が大きいということなので、照射光の光量が多いと判定する。
そして、LUT56は、判定した光の光量に基づいて、照射光の照度を検出して、照射光の照度を示す信号(輝度値)を出力端からフリッカー制御用IC33に出力する。
【0029】
図5は、フリッカー制御用IC33の回路構成を示すブロック図である。
フリッカー制御用IC33は、基準共通電圧記憶部33aと、補正共通電圧記憶部33bと、加算部33cと、可変電圧源33dと、バッファ33eとを備えている。
基準共通電圧記憶部33aは、予め定められた標準の使用環境において、フリッカーが最小となる共通電圧VCOMの値を記憶しており、記憶している共通電圧VCOMの値を加算部33cに出力する。
補正共通電圧記憶部33bは、液晶装置1Aに照射される光の照度(輝度値)と、共通電圧VCOMに対する補正値との対応関係を格納した共通電圧補正テーブルを記憶している。この補正値は、液晶装置1Aに照射される光の照度が変化した場合に、TFT72や各基板等に対して電荷が蓄積し、フリッカーが最小となる共通電圧が変化することから、この変化を解消する値がキャリブレーション等によって予め取得されたものである。
【0030】
そして、補正共通電圧記憶部33bは、光センサ50から入力された輝度値(液晶装置1Aに照射される光の照度)に応じて、共通電圧補正テーブルから補正値を読み出し、読み出した共通電圧VCOMの補正値を加算部33cに出力する。
加算部33cは、基準共通電圧記憶部33aから入力された共通電圧VCOMの値と、補正共通電圧記憶部33bから入力された補正値とを加算し、加算結果を可変電圧源33dに出力する。
可変電圧源33dは、加算部33cから入力された共通電圧の値を指令値として受け取り、入力された値の電圧信号を生成してバッファ33eに出力する。
バッファ33eは、可変電圧源33dから入力された電圧信号を保持し、同期タイミングに合わせて、保持している電圧信号を共通電極69に出力する。
このような構成により、液晶装置1Aに照射される光の照度(輝度値)に応じた補正電圧が基準共通電圧に加算されて、共通電極69に印加される。
【0031】
(動作)
次に、動作を説明する。
電気光学装置1には、不図示のCPUから画像を表示するための指示信号が入力される。
この指示信号は、ドライバ用IC31に入力され、ドライバ用IC31によって、各走査線が順次選択されると共に、選択された画素に対するデータの書き込みが行われる。
このとき、光センサ50によって、液晶装置1Aに照射されている光の照度(輝度値)が検出され、フリッカー制御用IC33によって、液晶装置1Aにおける光の輝度値に応じた共通電圧の補正値が基準共通電圧に加算された上で、共通電極69の共通電圧が印加される。
【0032】
また、電気光学装置1の外光が変化した場合、あるいは、不図示のCPUからのPWM信号によってバックライト1Bの輝度値が変化した場合にも、液晶装置1Aに照射されている光の照度(輝度値)が、随時、光センサ50によって検出され、共通電圧に補正が加えられる。
この結果、液晶装置1Aにおいては、照射される光の照度が種々変化した場合にも、常に、フリッカーが最小となる共通電圧が選択されて、液晶の駆動が行われることとなる。
以上のように、本実施形態に係る電気光学装置1は、液晶装置1Aによる表示を行う際に、光センサ50によって、液晶装置1Aに照射されている光の照度(輝度値)を検出する。
【0033】
そして、標準の使用環境においてフリッカーが最小となるよう設定された基準共通電圧に対し、検出された輝度値に応じた補正を加えた上で、現在の使用環境に合わせた共通電圧を生成し、その共通電圧によって、液晶を駆動する。
したがって、バックライト1Bの輝度が変化された場合や、外光の状況が変化した場合であっても、常に、フリッカーが最小となる共通電圧に補正されて液晶が駆動されるため、フリッカーが増大する事態を抑制することができる。
即ち、本実施形態に係る電気光学装置1によれば、液晶素子を交流駆動して表示を行う場合に、フリッカーをより効果的に抑制することが可能となる。
【0034】
また、このような効果は、共通電極および画素電極が1つの基板上に積層され、これらの電極間に発生する電界によって液晶を駆動するFFSモードにおいて特に有効である。これは、FFSモードを用いた液晶装置では、液晶層に対して共通電極と画素電極とが一方(例えば下側)に位置していることから、画素電極に交流電圧を印加した場合に、正極電圧の印加時と負極電圧の印加時とで電界経路に非対称性が生じるためである。また、光の照射によって、この非対称性の影響はより大きいものとなる。
ただし、本発明は、FFSモードの電気光学装置にも適用することが可能であり、この場合にも、液晶を交流駆動する際にフリッカーの増大を抑制することができるものである。
【0035】
(応用例1)
上記実施形態においては、フリッカー制御用IC33の補正共通電圧記憶部33bに、共通電圧補正テーブルとして、液晶装置1Aに照射される光の照度(輝度値)と、共通電圧VCOMに対する補正値との対応関係を格納しておくものとして説明したが、液晶装置1Aに照射される光の輝度に相当する指標であれば、他の指標と、共通電圧VCOMに対する補正値との対応関係を格納しておくことが可能である。
例えば、外光に比して、バックライト1Bの輝度の影響が十分に大きい場合には、バックライト1Bの輝度のみを補正要因と見なし、バックライト1BのLEDを制御するPWM信号のデューティー比と、共通電圧VCOMに対する補正値との対応関係を共通電圧補正テーブルに格納しておくことが可能である。
また、LEDの駆動電流を検出する電流計を備えておき、この電流計を流れる駆動電流と、共通電圧VCOMに対する補正値との対応関係を共通電圧補正テーブルに格納しておくこともできる。
【0036】
(応用例2)
上記実施形態においては、画素を駆動する際に、共通電圧を一定として、画素電極に交流電圧を印加するものとして説明したが、画素電極に正極電圧を印加する場合と、負極電圧を印加する場合とで、共通電圧を切り換える場合にも、本発明を適用することができる。
この場合、基準共通電圧として、正極電圧印加時の基準値と負極電圧印加時の基準値とをそれぞれ記憶しておき、それらの基準値に対して、液晶装置1Aに照射される光の輝度値に応じた補正値を加算することで、本発明の効果を奏するものとなる。
【0037】
(応用例3)
上記実施形態においては、光センサ50によって検出した光の照度に応じて、基準共通電圧に対する補正値を加算するものとして説明したが、ユーザが手動で共通電圧を調整させることで、フリッカーを抑制することとしても良い。
この場合、共通電圧を昇降させるスイッチを液晶装置1Aに備えておき、ユーザがこのスイッチを操作することで、フリッカーが最小となる共通電圧に調整することができる。
また、スイッチに代えて、電気光学装置1において、液晶装置1Aに対する共通電圧の調整コマンドを入力可能としておき、メニュー画面からユーザが共通電圧の調整コマンドを入力することで、フリッカーが最小となる共通電圧に調整することとしても良い。
【0038】
(応用例4)
上記実施形態に係る電気光学装置1は、液晶装置を備えた各種電子機器に適用可能である。
例えば、電気光学装置1が適用される電子機器として、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、情報携帯端末、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した液晶装置が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る電気光学装置1の外観構成を示す図である。
【図2】電気光学装置1における表示領域の断面構造を示す図である。
【図3】電気光学装置1の回路構成を示すブロック図である。
【図4】光センサ50の回路構成を示すブロック図である。
【図5】フリッカー制御用IC33の回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1 電気光学装置、1A 液晶装置、1B バックライト、10 素子基板、20 対向基板、30 FPC、31 ドライバIC(駆動回路)、32 バックライト制御用IC、33 フリッカー制御用IC(共通電圧変化手段)、33a 基準共通電圧記憶部、33b 補正共通電圧記憶部、33c 加算部、33d 可変電圧源、33e バッファ、40 遮光膜、40a 入光口、50 光センサ(光検出手段)、51,52 PIN型ダイオード、53 照度検出回路、54 光検知回路、54a コンデンサ、54b スイッチング素子、54c インバータ、55 カウンタ、56 LUT、61 液晶層、62,63 偏光板、64,77 基板本体、65 ゲート絶縁膜、66 層間絶縁膜、67,79 配向膜、68 走査線、69 共通電極、70 共通線、71 半導体層、72 ソース、73 ドレイン、74 画素電極、75 TFT、76 コンタクトホール、78 カラーフィルタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と、該画素電極との間で電界を発生する共通電極とを有し、前記画素電極と共通電極との間に交流電圧を印加して、液晶を駆動する液晶パネルと、
前記共通電極に共通電圧を印加する駆動回路と、
前記液晶パネルに照射されている光の強さを検出する光検出手段と、
前記光検出手段の検出結果に対応して、前記駆動回路によって前記共通電極に印加する共通電圧を変化させる共通電圧変化手段と、
を備えることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記光検出手段の検出結果と、前記共通電極に印加する共通電圧との関係を示す変換テーブルを有し、
前記共通電圧変化手段は、前記変換テーブルに基づいて、前記共通電極に印加する共通電圧を決定することを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
照射する光の強さを示す制御信号に応じて、前記液晶パネルに光を照射する照明装置を備え、
前記光検出手段は、前記制御信号が示す光の強さを前記液晶パネルに照射されている光の強さとして検出することを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
【請求項4】
駆動電流に応じた光の強さで、前記液晶パネルに光を照射する照明装置を備え、
前記光検出手段は、前記駆動電流を前記液晶パネルに照射されている光の強さとして検出することを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
【請求項5】
前記光検出手段は、前記液晶パネルに照射される光を検出する光センサによって構成されることを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
【請求項6】
第1の電極と第2の電極との間に交流電圧を印加して液晶を駆動する液晶パネルと、
光の強さを可変として前記液晶パネルに光を照射する照明装置と、
照射される光の強さに応じて変化する前記液晶パネルの特性変化に基づいて定められた補正データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された補正データに基づく駆動信号を前記液晶パネルに出力する駆動回路と、
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
照射された光の強さに応じて変化する液晶パネルの特性に基づいて、液晶を駆動する電極間に印加する交流電圧を補正して表示を行うことを特徴とする液晶装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145811(P2010−145811A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323938(P2008−323938)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】