説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】精緻な凹凸を有するパネルへの塗布性ないし印刷性に優れるとともに、少ない放射線照射量の光配向法によって良好な液晶配向性(プレチルト角発現性)を付与することができ、しかも焼き付き特性に優れる液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】上記液晶配向剤は、特定の感光性構造を有するポリオルガノシロキサン、ならびにテトラカルボン酸二無水物と、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンおよびカルボキシル基を有するジアミンを含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶配向剤および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子においては、液晶分子を基板面に対して所定の方向に配向するために、基板表面に液晶配向膜が設けられている。この液晶配向膜は、通常、基板表面に形成された有機膜表面をレーヨンなどの布材で一方向にこする方法(ラビング法)により形成される。このことは、横電界方式の液晶表示素子においても同様である。しかし、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、ラビング工程中にほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるという問題があるほか、TFT(Thin Film Transistor)素子を有する基板の場合には、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こって製品歩留まり低下の原因となるという問題もある。そこで、液晶セルにおいて液晶を配向する別の手段として、基板表面に形成した感放射線性の有機薄膜に偏光または非偏光の放射線を照射することによって液晶配向能を付与する光配向法が提案されている(特許文献1〜6参照)。この光配向法によると、工程中にほこりや静電気を発生させることなく均一な液晶配向を形成することができる。
【0003】
ところで、液晶表示素子としては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型などに代表される、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶を用いる水平配向モードの液晶表示素子のほか、負の誘電異方性を有するネマチック型液晶を用いる垂直(ホメオトロピック)配向モードのVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子が知られている。この動作モードでは、基板間に電圧を印加して液晶分子が基板に平行な方向に向かって傾く際に、液晶分子が基板法線方向から一定の方向に向かって傾くようにする必要がある。このための手段として、例えば基板表面に突起を設ける方法、透明電極にストライプを設ける方法、ラビング配向膜を用いることにより液晶分子を基板法線方向から基板面内の一方向に向けてわずかに傾けておく(プレチルトさせる)方法などが採用されている。上記の光配向法は、垂直配向モードの液晶表示素子において液晶分子の傾き方向を制御する方法としても有用である。すなわち、光配向法によって配向規制能およびプレチルト角発現性を付与した垂直配向性の液晶配向膜を用いることにより、電圧印加時の液晶分子の傾き方向を均一に制御できることが知られている(特許文献1、2および4〜6)。
このように、光配向法によって製造した液晶配向膜は、各種の液晶表示素子に有効に適用されうるものである。しかしながら、有機薄膜に光配向法によって液晶配向能を付与するためには、10,000J/m以上の強い放射線を照射することが必要であり、有機薄膜を構成する分子の切断による性能の劣化の問題が生ずるほか、放射線照射装置の経時劣化(例えば紫外線ランプの光照射強度の経時劣化)が激しく、液晶表示素子の製造コスト削減の観点からは問題がある。また、光配向法によって形成された液晶配向膜は、形成当初は所望のプレチルト角発現性を有していたとしても経時的にこれが変化する場合のあることが指摘されており、改善が求められている。
【0004】
この点、光配向法を適用したときに、極めて少ない放射線照射量で良好な液晶配向性能を発現しうる新規な液晶配向膜材料として、分子内に特定の感光性部位を導入したポリアミック酸またはポリイミドからなる材料が報告された(特許文献7〜9)。これらの文献に記載された液晶配向剤は、500〜3,000J/m程度の放射線照射によって良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を形成することのできる際めて優れた材料である。
しかし、近年の液晶表示素子の高精細化および高速応答性に対する需要者の要望は激化の一途を辿り、これに応えるために基板構成などのハード面における改良が継続されている。このため、基板面に不可避的に複雑な段差が生じるとともに、該段差部分においても良好な視認性を確保するため、液晶配向剤の塗布性ないし印刷性に対する要求は、従来に増して厳しいものとなりつつある。さらに、光配向法による液晶配向膜を具備する液晶表示素子においては、残像および焼き付きが問題となることがあり、その改良が望まれている。特に、上記のプレチルト角の経時的変化に起因して画面上に生じる輝度差が、観察者には焼き付きとして認識され、その改善は急務である。
以上のとおり、少ない放射線照射量によって光配向法の利点を有利に発現するとともに、改善された残像特性および焼き付き特性を示す液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤は未だ知られておらず、かかる液晶配向剤の提供が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−307736号公報
【特許文献2】特開2004−163646号公報
【特許文献3】特開2002−250924号公報
【特許文献4】特開2004−83810号公報
【特許文献5】特開平9−211468号公報
【特許文献6】特開2003−114437号公報
【特許文献7】国際公開第2009/25385号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2009/25386号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2009/25388号パンフレット
【特許文献10】特開昭63−291922号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vol. 19, p2013(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、精細な凹凸を有するパネルへの塗布性ないし印刷性に優れるとともに、少ない放射線照射量の光配向法によって良好な液晶配向性(プレチルト角発現性)を付与することができ、しかも焼き付き特性に優れる液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、上記液晶配向剤から形成された焼き付き特性に優れる液晶配向膜を具備し、長期信頼性に優れる液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに別の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的および利点は、第一に、
(A)下記式(A1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式(A1)中、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、aは0〜4の整数であり、「*」は結合手であることを示す。)
で表される構造を有するポリオルガオノシロキサン、ならびに
(B)テトラカルボン酸二無水物と
(b1)炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンおよび
(b2)カルボキシル基を有するジアミン
を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体
を含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶配向剤は、精細な凹凸を有するパネルへの塗布性ないし印刷性に優れるとともに、少ない放射線照射量の光配向法によって良好な液晶配向性(プレチルト角発現性)を付与することができ、しかも残像および焼き付き特性に優れる液晶配向膜を与えることができる。
かかる本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は焼き付き特性が改善された、長期信頼性に優れるものであり、長期間にわたり使用した場合にも表示性能が劣化することがない。従って、本発明の液晶表示素子は種々の装置に有効に適用することができ、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
上記のとおり、本発明の液晶配向剤は、
(A)上記式(A1)で表される構造を有するポリオルガオノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(A)」ともいう。)、ならびに
(B)テトラカルボン酸二無水物と
(b1)炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンおよび
(b2)カルボキシル基を有するジアミン
を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(B)」ともいう。)および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「ポリイミド(B)」ともいう。)よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体
を含有する。
【0013】
<ポリオルガノシロキサン(A)>
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)は、上記式(A1)で表される構造を有するポリオルガオノシロキサンである。
上記式(A1)におけるaとしては、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
上記式(A1)で表される構造としては、下記式(A1−1)および(A1−2)
【0014】
【化2】

【0015】
(式(A1−1)および(A1−2)中の、R、aおよび「*」は、それぞれ、上記式(A1)におけるのと同義であり;
式(A1−1)中のRは水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基または炭素数1〜40のアルキル基であり、ただし前記アルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子で置換されていてもよく、
は単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−(以上において、「+」を付した結合手がRと結合する。)であり、
は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、
は単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−(以上において、「+」を付した結合手がRと結合する。)であり、
bは0〜3の整数であり;
式(A1−2)中のRは水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基または炭素数1〜40のアルキル基であり、ただし前記アルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子で置換されていてもよく、
は酸素原子または2価の芳香族基であり、
は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、
は単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−(以上において、「+」を付した結合手がRと結合する。)であり、
cは0〜3の整数である。)
のそれぞれで表される基からなる構造を、好ましく例示することができる。
【0016】
上記式(A1−1)におけるRおよび上記式(A1−2)におけるRの脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基としては、例えばコレステニル基、コレスタニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。RおよびRの炭素数1〜40のアルキル基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基、ただしこのアルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子により置換されていてもよい、であることが好ましい。かかるアルキル基の例としては、例えばn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、4,4,4−トリフロロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基などを挙げることができる。
【0017】
上記式(A1−1)におけるRおよび上記式(A1−2)におけるRの2価の芳香族基としては、例えば1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基などを;
およびRの2価の複素環式基としては、例えば1,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、1,4−フラニレン基などを;
およびRの2価の縮合環式基としては、例えばナフチレン基など、をそれぞれ挙げることができる。
上記式(A1−1)で表される基として、好ましくは下記式
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
(上記式中、Rおよび「*」は、それぞれ、式(A1−1)におけるのと同義であり、dは1〜10の整数である。)
のそれぞれで表される基などを;
上記式(A1−2)で表される基として、好ましくは下記式
【0021】
【化5】

【0022】
(上記式中、Rおよび「*」は、それぞれ、式(A1−2)におけるのと同義である。)
のそれぞれで表される基などを、それぞれ挙げることができる。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)は、上記式(A1)で表される構造を、0.2〜6ミリモル/g有することが好ましく、0.3〜5ミリモル/g有することがより好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜500,000であることが好ましく、2,000〜200,000であることがより好ましい。
上記の如きポリオルガノシロキサン(A)は、好ましくは上記の範囲で上記式(A1)で表される構造を有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよいが、例えば
エポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(1)」という。)を含むシラン化合物の混合物を、好ましくは有機溶媒、水および触媒の存在下に加水分解縮合してエポキシ基とを有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体」という。)を先ず合成し、次いで
該ポリオルガノシロキサンを、上記式(A1)で表される構造およびエポキシ基と反応しうる基を有する化合物(以下、「化合物(A1)」という。)と反応させることにより合成することができる。このとき、化合物(A1)とともに、上記式(A1)で表される構造を有さず、且つエポキシ基と反応しうる基を有する化合物(以下、「他の反応性化合物」という。)を併用してもよい。
【0023】
上記シラン化合物(1)としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きシラン化合物(1)のみからなるものであってもよく、あるいは上記シラン化合物(1)のほかに、これら以外のシラン化合物(以下、「シラン化合物(2)」という。)を含むものであってもよい。
【0024】
ここで使用することのできるシラン化合物(2)としては、例えばテトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
【0025】
2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、
【0026】
(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジエメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシランなどのケイ素原子を1個有するシラン化合物のほか、
【0027】
商品名で、例えばKC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業(株)製);
【0028】
グラスレジン(昭和電工(株)製);SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);
FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー(株)製);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ(株)製);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学(株)製);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート(株)製);
GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工(株)製)などの部分縮合物を挙げることができる。
【0029】
これらのシラン化合物(2)のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランまたはジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0030】
本発明に好ましく用いられるポリオルガノシロキサン(A)の前駆体は、そのエポキシ当量が100〜10,000g/モルであることが好ましく、150〜1,000g/モルであることがより好ましく、特に150〜300g/モルであることが好ましい。したがって、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を合成するにあたっては、シラン化合物(1)とシラン化合物(2)との使用割合を、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の範囲になるように調製して設定することが好ましい。本発明で用いられるポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を合成するにあたっては、シラン化合物(1)のみを用い、他のシラン化合物を使用しないことが好ましい。
【0031】
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレンなどを;
上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどを;上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどを;
上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを;
上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部、より好ましくは50〜1,000重量部である。
【0032】
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モル、より好ましくは1〜30倍モルである。
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを用いることができる。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0033】
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物または有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物または有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環などの副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。また、触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いて合成された前駆体から製造されたポリオルガノシロキサン(A)を含有する本発明の液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、三次元構造の形成が促進され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。すなわち、かかるポリオルガノシロキサン(A)は、シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに(B)重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば全シラン化合物に対して好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
【0034】
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を製造する際の加水分解または加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴などにより加熱することにより実施することが好ましい。
加水分解・縮合反応時には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱するのが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下においてもよい。
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液などで洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブスなどの乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリオルガノシロキサン(A)の前駆体を得ることができる。
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、1,000〜1,000,000であることが好ましく、1,500〜300,000であることがより好ましい。
本発明においては、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体として、市販されているエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01,DMS−E12、DMS−E21,EMS−32(以上、チッソ(株)製)などを挙げることができる。
【0035】
本発明で使用される化合物(A1)は、上記式(A1)で表される構造およびエポキシ基と反応しうる基を有する化合物である。かかる化合物(A1)としては、上記式(A1−1)で表される構造を有するものとして好ましくは下記式(A1−1C)および(A1−2C)
【0036】
【化9】

【0037】
(上記式(A1−1C)中のR、R、R、X、X、aおよびbならびに
上記式(A1−2C)中のR、R、R、X、X、aおよびcは、それぞれ上記式(A1−1)または(A1−2)におけるのと同義であり;
上記式(A1−1C)中のXは単結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基または2価の芳香族基であり、
が単結合の時、eは1であって且つRは水素原子であり、
がメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基または2価の芳香族基のときはeは0または1であって且つRはカルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR(ただし前記Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)、−CH=CHまたは−SOClであり;
上記式(A1−2C)中のRは2価の芳香族基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Xは酸素原子、−COO−または−OCO−(ただし、以上において「+」を付した結合手がRと結合する。)であり、
fは0〜3の整数であり、
はカルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR(ただし前記Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)、−CH=CHまたは−SOClであり、Xは単結合、−OCO−(CHiまたは−O−(CHj(ただし、前記iおよびjは、それぞれ、0〜10の整数であり、「+」を付した結合手がRと結合する。)である。)
のそれぞれで表される化合物である。
【0038】
上記式(A1−1C)で表される化合物としては、上記式(A1−1C)においてXが単結合であってRがカルボキシル基である化合物であるか、または
がメチレン基、アルキレン基もしくは2価の芳香族基であってRがカルボキシル基である化合物が;
上記式(A1−2C)で表される化合物としては、上記式(A1−2C)においてRがカルボキシル基である化合物が、それぞれ好ましい。以下、カルボキシル基を有するこのような化合物(A1)を「カルボン酸(A1)」という。
このようなカルボン酸(A1)として、より好ましくは、上記式(A1−1C)で表される化合物として、例えば下記式
【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
(上記式中、Rは、それぞれ、式(A1−1)におけるのと同義であり、dは1〜10の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(A1−2)で表される化合物として、下記式
【0042】
【化8】

【0043】
(上記式中、Rは、それぞれ、式(A1−2)におけるのと同義である。)
のそれぞれで表される化合物などである。
上記他の反応性化合物としては、エポキシ基と反応しうる基としてカルボキシル基を有する化合物であることが好ましく、例えば
プレチルト角発現性構造を有するカルボン酸(以下、「他のカルボン酸(1)」という。)、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有するカルボン酸(以下、「他のカルボン酸(2)」という。)ならびに
上記以外の他のカルボン酸(以下、「他のカルボン酸(3)」という。)
などを挙げることができ、これらよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
上記他のカルボン酸(1)におけるプレチルト角発現性構造とは、例えば炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基または炭素数1〜21のフルオロアルキル基もしくはフルオロアルコキシル基または脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基からなる構造を挙げることができる。
このような構造を有する他のカルボン酸(1)としては、例えば下記式(C−1)〜(C−4)
【0044】
【化10】

【0045】
(式(C−1)中のhは1〜3の整数であり、iは3〜18の整数であり;
式(C−2)中のjは5〜20の整数であり;
式(C−3)中のkは1〜3の整数であり、mは0〜18の整数であり;そして
式(C−4)中のnは1〜18の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。これらのうち好ましくは、上記式(C−2)、(C−3)および(C−4)のそれぞれで表される化合物であり、より好ましくは、上記式(C−2)で表される化合物として例えば4−(n−ペンチル)安息香酸、4−(n−ヘキシル)安息香酸、4−(n−ヘプチル)安息香酸、4−(n−オクチル)安息香酸、4−(n−ノニル)安息香酸、4−(n−デシル)安息香酸、4−(n−ドデシル)安息香酸、4−(n−オクタデシル)安息香酸などを;
上記式(C−3)で表される化合物として例えば下記式(C−3−1)〜(C−3−3)
【0046】
【化11】

【0047】
のそれぞれで表される化合物などを;
上記式(C−4)で表される化合物として例えば4−(n−ブトキシ)安息香酸、4−(n−ペンチルオキシ)安息香酸、4−(n−ヘキシルオキシ)安息香酸、4−(n−ヘプチルオキシ)安息香酸、4−(n−オクチルオキシ)安息香酸、4−(n−ノニルオキシ)安息香酸、4−(n−デシルオキシ)安息香酸、4−(n−ドデシルオキシ)安息香酸、4−(n−オクタデシルオキシ)安息香酸などを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0048】
上記他のカルボン酸(2)における光増感機能とは、光の照射によって一重項励起状態となった後、速やかに項間交差を起こして三重項励起状態へ遷移し、この三重項励起状態において他の分子と衝突して相手を励起状態に変え、自らは基底状態に戻る機能をいう。この光増感機能は光照射によりラジカルを発生する機能と併存していてもよい。
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造としては、例えばベンゾフェノン構造、9,10−ジオキソジヒドロアントラセン構造、1,3−ジニトロベンゼン構造および1,4−ジオキソシクロヘキサ−2,5−ジエン構造、すなわち下記式(1)〜(4)
【0049】
【化12】

【0050】
のそれぞれで表される構造を挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種の構造であることができる。このような構造を有する他のカルボン酸(2)としては、例えば3−ベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル安息香酸、3−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、3−(2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2−(2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、4−(4−メチルベンゾイル)安息香酸、4−(3,4−ジメチルベンゾイル)安息香酸、3−(4−ベンゾイル−フェノキシ)プロピオン酸、9,10−ジオキソジヒドロアントラセン−2−カルボン酸(アントラキノン−2−カルボン酸)、3−(9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イル)プロピオン酸、[3−(4,5−ジメトキシ−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)プロポキシ]アセチル酸、3,5−ジニトロ安息香酸、4−メチル−3,5−ジニトロ安息香酸、3−(3,5−ジニトロフェノキシ)プロピオン酸、2−メチル−3,5−ジニトロ安息香酸などを挙げることができる。
上記他のカルボン酸(3)としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などを挙げることができる。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を製造するに際して使用されるカルボン酸(A1)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体の有するエポキシ基1モルに対して、0.001〜1モルとすることがより好ましく、0.1〜1モルとすることが好ましく、さらに0.2〜0.9モルとすることが好ましい。
【0051】
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を製造するに際して使用される他のカルボン酸(1)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体の有するエポキシ基1モルに対して、0.5モル以下とすることが好ましく、0.01〜0.3モルとすることがより好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を製造するに際して使用される他のカルボン酸(2)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体の有するエポキシ基1モルに対して、0.3モル以下とすることが好ましく、0.0001〜0.1モルとすることがより好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を製造するに際して使用される他のカルボン酸(3)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体の有するエポキシ基1モルに対して、0.3モル以下とすることが好ましく、0.0001〜0.2モルとすることがより好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を製造するに際してカルボン酸(A1)のほかに他のカルボン酸を併用する場合、カルボン酸(A1)は全部のカルボン酸の合計に対して10モル%以上使用することが好ましい。また、他のカルボン酸(2)を使用する場合、その使用割合は、より良好な残像特性を担保するため、全部のカルボン酸の合計に対して30モル%以下とすることが好ましく、15モル%以下とすることがより好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A)を製造するに際のカルボン酸の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体の有するエポキシ基1モルに対して、0.01〜1モルとすることがより好ましく、0.1〜0.75モルとすることがより好ましい。
【0052】
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体と、上記の如きカルボン酸との反応は、適当な触媒の存在下に、好ましくは適当な有機溶媒中で実施することができる。
ここで使用される触媒としては、有機塩基を使用することができるほか、エポキシ化合物とカルボン酸との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;および
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましく、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0053】
上記硬化促進剤としては、例えばベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミンの如き3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物の如きイミダゾール化合物;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニルの如き有機リン化合物;
【0054】
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートの如き4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、その有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドまたはアミンとエポキシ樹脂との付加物などのアミン付加型促進剤などの高融点分散型潜在性硬化促進剤;
前記イミダゾール化合物、有機リン化合物、4級フォスフォニウム塩などの硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩などの高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤などの潜在性硬化促進剤などを挙げることができる。
【0055】
これらのうち、好ましくはテトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩である。
触媒は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体100重量部に対して好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
【0056】
ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体と、カルボン酸との反応に際して使用される有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物などを挙げることができる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる量で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間、より好ましくは0.5〜20時間である。
本発明における好ましいポリオルガノシロキサン(A)は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを原料として用い、そのエポキシの開環付加により上記式(A1)で表される構造を導入している。この製造方法は簡便である。しかも、特に上記式(A1)で表される構造の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
【0057】
<ポリアミック酸(B)>
本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸(B)は、
テトラカルボン酸二無水物と
(b1)炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミン(以下、「ジアミン(b1)」という。)および
(b2)カルボキシル基を有するジアミン(以下、「ジアミン(b2)」という。)
を含むジアミンと
を反応させることによって得ることができる。
【0058】
ここで使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、
特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0059】
ポリアミック酸(B)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、さらに、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物または1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
ポリアミック酸(B)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物または1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物または1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなるものであることが、最も好ましい。
【0060】
上記ジアミン(b1)は、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンである。かかるジアミン(b1)としては、ここで、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンがさらに炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基または炭素数4〜20のアルコキシル基を有していてもよい。ここでステロイド構造を有する基としては、例えばコレスタン−3−イル基、コレスタン−5−エン−3−イル基、コレスタン−24−エン−3−イル基、コレスタン−5,24−ジエン−3−イル基、ラノスタン−3−イル基などを挙げることができる。
本発明におけるジアミン(b1)としては、例えば1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、下記式(b1−1)
【0061】
【化17】

【0062】
(式(b1−1)中、Xは単結合、メチレン基、炭素数2または3のアルキレン基、−O−、−COO−、−OCO−、−X’−R’’−、−R’’−X’−または−X’−R’’−X’−(ただし、X’は、それぞれ、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「+」はこれを付した結合手が式(3−1−1)の左方向に向くことを表す。)であり、R’’は、それぞれ、炭素数2または3のアルキレン基であり、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、n1は0〜2の整数であり、n2は0または1であり、n1+n2が2以上のときR’は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、n1+n2が0または1のときR’はステロイド構造を有する基、炭素数4〜20のアルキル基または炭素数4〜20のフルオロアルキル基である。)
で表される化合物などを挙げることができる。上記式(b1−1)におけるアルキル基およびフルオロアルキル基としては、それぞれ、直鎖のものが好ましい。
【0063】
本発明におけるジアミン(b1)としては、上記式(b1−1)で表される化合物が好ましく、その具体例として、例えばn−ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、n−ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、n−オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、下記式(b1−1−1)〜(b1−1−7)
【0064】
【化18】

【0065】
【化19】

【0066】
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記の如きジアミン(b1)を含むジアミンを用いて合成されたポリアミック酸(B)および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(B)を含有する液晶配向剤は、特にVA型液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために好適である。
上記ジアミン(b2)は、カルボキシル基を有するジアミンである。かかるジアミン(b2)として好ましくは下記式(b2−1)
【0067】
【化13】

【0068】
(式(b2−1)中、yは0〜2の整数であり;
xは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただしxが複数存在するとき、各xは同一であっても相違していてもよく;
は、それぞれ、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく;
は単結合、メチレン基、フルオロメチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4のフルオロアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−、−NHCO−(以上において「*」は、これを付した結合手が式(b2−1)の左方向に向くことを表す。)または下記式(X−1)
【0069】
【化14】

【0070】
(式(X−1)中、RIIは単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく;
IIIは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または基−RIVCOOH(ここで、RIVは単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよい。)である。)
で表される基であり、そして
式(b2−1)中のカルボキシル基の合計数は1〜4の整数である。)
で表される化合物である。
上記式(b2−1)におけるRとしては、それぞれ、メチレン基または炭素数2〜5のアルキレン基であることが好ましい。
上記式(b2−1)で表される化合物としては、上記式(b2−1)においてxのうちの少なくとも一つが1であって基Xが上記式(XI−1)で表される基ではない化合物であるか、または
上記式(b2−1)においてxのすべてが0であって基Xが上記式(XI−1)で表される基である化合物であることが好ましい。
上記式(b2−1)で表される化合物としてさらに好ましくは、例えば下記式(b2−1−1)〜(b2−1−5)
【0071】
【化15】

【0072】
(上記式中、Xは、それぞれ、上記式(b2−1)におけるXと同義であり;
IIIは炭素数1〜6のアルキル基であり;
xは、それぞれ1〜4の整数であり;
zは、それぞれ、1〜5の整数であり、
dは1〜4の整数である。)
のそれぞれで表される化合物である。上記式(b2−1−1)、(b2−1−2)および(b2−1−5)におけるxは、それぞれ、1であることが好ましい。
上記式(b2−1)で表される化合物としては、上記式(b2−1−1)、(b2−1−2)または(b2−1−5)で表される化合物が好ましく、これらの好ましい具体例としては、それぞれ、例えば3,5−ジアミノ安息香酸、下記式(b2−1−2−1)および(b2−1−5−1)
【0073】
【化16】

【0074】
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
本発明におけるジアミンとしては、上記の如きジアミン(1)およびジアミン(2)のみからなるものであってもよく、あるいはジアミン(1)およびジアミン(2)以外にこれら以外のジアミン(以下、「ジアミン(3)」という。)を含有していてもよい。
ここで使用することのできるジアミン(3)としては、例えばジアミン(1)およびジアミン(2)以外の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどであることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0075】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエートなどを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、
特願2009−157556号に記載のジアミンのうち、ジアミン(1)およびジアミン(2)に該当しないものを用いることができる。
【0076】
ポリアミック酸(B)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(1)を、全ジアミンに対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、30〜70モル%含むものであることがより好ましく、さらに35〜60モル%含むものであることが好ましく;
ジアミン(2)を、全ジアミンに対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、30〜70モル%含むものであることがより好ましく、さらに40〜65モル%含むものであることが好ましい。ポリアミック酸(B)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(3)を、全ジアミンに対して、80モル%以下の範囲で含むものであることができ、5〜40モル%の範囲で含むことが好ましい。
ポリアミック酸(B)を合成するために用いられるジアミンが上記の範囲でジアミン(1)を含むことにより、得られる液晶配向剤が良好な塗布性ないし印刷性を維持しつつ、耐焼き付き性と良好なプレチルト角発現性とが両立された液晶配向膜を形成できることとなり好ましい。また、上記の範囲でジアミン(2)を含むことにより、得られる液晶配向剤の良好な印刷性と形成される液晶配向膜の電気特性(特に電圧保持率)とのバランスに優れることとなり、好ましい。
ポリアミック酸(B)は、上記の如きテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって合成することができる。
【0077】
ポリアミック酸(B)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。 これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
【0078】
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒ならびにフェノールおよびその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、または前期第一群の有機溶媒から選択される1種以上とアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素および炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒および第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに30重量%以下であることが好ましい。
【0079】
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸(B)を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(B)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸(B)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸(B)を脱水閉環してポリイミド(B)とする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(B)を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸(B)を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸(B)の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0080】
<ポリイミド(B)>
本発明におけるポリイミド(B)は、上記の如くして合成されたポリアミック酸(B)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
本発明におけるポリイミド(B)は、その前駆体であるポリアミック酸(B)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミド(B)は、そのイミド化率が10〜90%であることが好ましく、20〜80%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸(B)の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸(B)を加熱する方法により、またはポリアミック酸(B)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0081】
上記ポリアミック酸(B)の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸(B)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミド(B)を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミド(B)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミド(B)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0082】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリオルガノシロキサン(A)と、ポリアミック酸(B)およびポリイミド(B)よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体と、を含有するが、本発明の効果を損なわない限り、任意的にその他の成分を含有してもよい。ここで使用することのできるその他の成分としては、上記ポリオルガノシロキサン(A)、ポリアミック酸(B)およびポリイミド(B)以外の重合体(以下、「他の重合体」という。)、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物、界面活性剤、光増感剤などを挙げることができる。
【0083】
[他の重合体]
上記他の重合体は、本発明の液晶配向剤の溶液特性および得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために使用することができる。かかる他の重合体としては、例えばポリオルガノシロキサン(A)以外のポリオルガノシロキサン(以下、「他のオルガノシロキサン」という。)、ポリアミック酸(B)以外のポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、ポリイミド(B)以外のポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のオルガノシロキサン、他のポリアミック酸、他のポリイミドが好ましく、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記他のポリオルガノシロキサンは、シラン化合物(1)および(2)よりなる群から選択される少なくとも1種を加水分解縮合することにより、得ることができる。ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体も、ここでいう他のポリオルガノシロキサンとして使用することができる。本発明における他のポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜100,000であることが好ましく、500〜10,000であることがより好ましい。
他のポリオリオルガノシロキサンの合成反応ならびに単離および精製が、ポリオルガノシロキサン(A)の例に準じて行いうることについては、当業者には自明であろう。
【0084】
他のポリアミック酸は、
テトラカルボン酸二無水物と、
上記ジアミン(b1)および(b3)よりなる群から選択される少なくとも1種のジアミンと
を反応させるか、あるいは
テトラカルボン酸二無水物と、
上記ジアミン(b2)および(b3)よりなる群から選択される少なくとも1種のジアミンと
を反応させることにより得ることができる。他のポリイミドは、上記の如き他のポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより、得ることができる。他のポリイミドのイミド化率は、30%以上であることが好ましく、40〜80%であることがより好ましい。
他のポリアミック酸および他のポリイミドの合成ならびに単離および精製は、ポリアミック酸(B)またはポリイミド(B)の例に準じて行うことができる。
【0085】
[硬化剤および硬化触媒ならびに硬化促進剤]
上記硬化剤および硬化触媒は、ポリオルガノシロキサン(A)の架橋反応をより強固にする目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができ、上記硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができる。
上記硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物またはエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化用として一般に用いられている硬化剤を用いることができ、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸などを例示することができる。
上記多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物およびその他の多価カルボン酸無水物を挙げることができる。
5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物などを挙げることができ、その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式
【0086】
【化20】

【0087】
(上記式中、mは1〜20の整数である。)
で表される化合物およびポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメンなどの共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物およびこれらの水素添加物などを挙げることができる。
上記硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナートなどを用いることができる。これらの触媒は加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;
4級リン化合物;
4級アミン化合物;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物の如きアミン付加型促進剤などの高融点分散型潜在性硬化促進剤;
4級フォスフォニウム塩などの表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩の如き高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤、などを挙げることができる。
【0088】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、分子内に分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であるが、上記ポリオルガノシロキサン(A)または他のポリオルガノシロキサンに該当するものは除かれる。
このようなエポキシ化合物は形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性をより向上する観点から本発明の液晶配向剤に含有されることができる。
かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを好ましいものとして挙げることができる。
本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどの塩基触媒を併用してもよい。
【0089】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができ、さらに特許文献10(特開昭63−291922号公報)に記載されている如き、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物などを挙げることができる。
【0090】
[界面活性剤]
上記界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤などを挙げることができる。
[光増感剤]
上記光増感剤としては、例えばジュレン、ベンゾニトリル、ブチロフェノン、プロピオフェノン、アセトフェノン、キサントン、4−メトキシアセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、アントロン、ベンズアルデヒド、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、フルオレン、トリフェニレン、ビフェニル、チオキサントン、アントラキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレン、ナフタレン、4−フェニルアセトフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2−ヨードナフタレン、アセナフテン、2−ナフトニトリル、1−ヨードナフタレン、1−ナフトニトリル、クリセン、コロネン、ベンジル、フルオランテン、ピレン、1,2−ベンゾアントラセン、アクリジン、アントラセン、テトラセン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジシアノナフタレン、9−シアノアントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、2,6,9,10−テトラシアノアントラセンなどを挙げることができる。
【0091】
<各成分の使用割合>
本発明の液晶配向剤における各成分の使用割合は以下のとおりである。
本発明の液晶配向剤が他のポリミック酸および他のポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである場合、これら他の重合体の使用割合は、ポリアミック酸およびポリイミドの合計(すなわち、ポリアミック酸(B)およびポリイミド(B)ならびに任意的に使用してもよい他のポリアミック酸および他のポリイミドの合計をいう。以下同じ。)に対して90重量%以下とすることが好ましく、70重量%以下とすることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、重合体として、
ポリオルガノシロキサン(A)と
ポリアミック酸(B)およびポリイミド(B)よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体と
を含有するが、これらの使用割合は、
ポリアミック酸およびポリイミドの合計100重量部に対するポリオルガノシロキサン(A)の使用割合として、0.1〜100重量部とすることが好ましく、1〜5重量部とすることがより好ましく、さらに5〜15重量部とすることが好ましい。この範囲の使用割合とすることにより、得られる液晶配向剤の良好な塗布性ないし印刷性を維持しつつ、適切なプレチルト角発現性を実現することができることとなり、好ましい。
【0092】
本発明の液晶配向剤が他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合、その使用割合は、ポリアミック酸およびポリイミドの合計100重量部に対して、100重量部以下とすることが好ましく、50重量部以下とすることがより好ましく、さらに20重量部以下とすることが好ましい。
本発明の液晶配向剤が硬化剤を含有するものである場合、その使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して、100重量部以下とすることが好ましい。
本発明の液晶配向剤が硬化触媒を含有するものである場合、その使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して、2重量部以下とすることが好ましい。
本発明の液晶配向剤が硬化促進剤を含有するものである場合、その使用割合はポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましい。
【0093】
本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有するものである場合、その使用割合は、ポリアミック酸およびポリイミドの合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは0.1〜30重量部である。また、エポキシ化合物とともに塩基触媒を使用する場合、その使用割合は、エポキシ化合物の100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは0〜2重量部である。
本発明の液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有するものである場合、その使用割合は、ポリアミック酸およびポリイミドの合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下である。
本発明の液晶配向剤が界面活性剤を含有するものである場合、その使用割合は、本発明の液晶配向剤の全体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
本発明の液晶配向剤が光増感剤を含有するものである場合、その使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下である。
【0094】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き重合体および任意的にその他の成分を含有し、好ましくは適当な有機溶媒に溶解された溶液組成物として調製される。
本発明の液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、ポリオルガノシロキサン(A)、ポリアミック酸(B)およびポリイミド(B)よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体および任意的に使用されるその他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。本発明の液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒としては、ポリオルガノシロキサン(A)、ポリアミック酸(B)およびポリイミド(B)の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
本発明の液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、上記した有機溶媒のうちの1種からなるか、または上記有機溶媒のうちの2種以上を組み合わせて得られるものであって、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、且つ液晶配向剤の表面張力が25〜45mN/mの範囲となるものである。
【0095】
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い場合がある。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは10℃〜60℃である。
【0096】
<液晶配向膜の形成方法>
本発明の液晶配向剤は、光配向法により液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。
液晶配向膜を形成する方法としては、例えば基板上に本発明の液晶配向膜を塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜に偏光または非偏光の放射線を照射してより液晶配向能を付与する方法を挙げることができる。
まず、パターン状の透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布する。そして、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
前記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、環状オレフィン樹脂の如きプラスチックからなる透明基板などを用いることができる。
前記透明導電膜としては、SnOからなるNESA(登録商標)膜、In−SnOからなるITO膜などを用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、公知の方法が用いられる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板または透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板および透明導電膜上に、予め官能性シラン化合物、チタネート化合物などを塗布しておいてもよい。
【0097】
次いで、前記塗膜に直線偏光もしくは部分偏光された放射線または非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10〜3,000J/mである。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下であっても良好な液晶配向能を付与することができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
【0098】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜は、特に垂直配向型の液晶表示素子に適用したときにその有利な効果を最大限に発揮することができ、好ましい。
本発明の液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、先ずそれぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法であり、これにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、次いで、用いた液晶が等方相をとる温度まで液晶セルを加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0099】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。ここで液晶配向膜が垂直配向性である場合には、液晶配向膜が形成された2枚の基板における配向容易軸の方向が平行となるようにセルを構成し、これに、偏光板をその偏光方向が配向容易軸と45°の角度をなすように貼り合わせることにより、垂直配向型液晶セルを有する液晶表示素子とすることができる。
前記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を好ましく用いることができる。
垂直配向型液晶セルの場合には、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、長期信頼性等の諸性能に優れるものである。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の実施例において重量平均分子量Mwは、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
エポキシ当量は、JIS C2105の「塩酸−メチルエチルケトン法」に準じて測定した。
重合体溶液の溶液粘度は、各合成例で指摘した重合体濃度20重量%の重合体溶液(溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)について、E型粘度計を用いて25℃において測定した値である。
ポリイミドのイミド化率は、各合成例で得られたポリイミド溶液を純水中に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で測定したH−NMRのスペクトルから、下記数式(1)による計算にて求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 (1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、
αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
なお、以下においては、原料化合物および重合体の合成を下記の合成スケールで必要に応じて繰り返すことにより、以降の合成に使用する必要量を確保した。
【0101】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体)の合成>
合成例E−1
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500gおよびトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。
このポリオルガノシロキサン(EPS−1)について、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
このポリオルガノシロキサン(EPS−1)の重量平均分子量Mwは2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
<カルボン酸(A1)の合成>
下記の合成例において、下記式(A−1)〜(A−8)
【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
のそれぞれで表される化合物を合成した。以下、上記式(A−1)〜(A−8)のそれぞれで表される化合物を、「化合物(A−1)」、「化合物(A−2)」などという。
合成例A−1
還流管を備えた200mLのナスフラスコに、n−デシルコハク酸無水物12g、4−アミノ桂皮酸8.2gおよび酢酸を100mLを仕込み、2時間還流下で反応を行った。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:クロロホルム/メタノール=8/2(体積比))で精製を行い、さらにエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶を行うことにより、化合物(A−1)の白色結晶(純度98.0%)を10g得た。
【0105】
合成例A−2
1Lのナス型フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸82g、炭酸カリウム304gおよびN−メチル−2−ピロリドン400mLを仕込み、室温で1時間攪拌を行った後、1−ブロモオクタン212gを加えて100℃で5時間攪拌した。その後、減圧にて溶剤を留去した。ここに水酸化ナトリウム48gおよび水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応後、反応系を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールから再結晶することにより、化合物(A−2)の白色結晶80gを得た。
【0106】
合成例A−3
107gの4−ブロモ桂皮酸を、83gの塩化チオニル中で4時間還流し、赤色透明溶液を得た。次いで、未反応の塩化チオニルを留去した後、残渣をトルエンから再結晶し、得られた結晶をn−ヘキサンで洗浄することにより、4−ブロモ桂皮酸クロリドの白色結晶85gを得た。
次に、25.0g(0.147モル)の4−アミルシクロヘキサノールを25mLのピリジンに溶解した。この溶液の温度を約3℃に保持しつつ、ここに上記で得た4−ブロモ桂皮酸クロリド43.3g(0.176モル)を350mLのピリジンに懸濁した液を滴下し、さらに3時間反応を行った。得られた反応混合物(懸濁液)を、1.3kgの塩酸酸性氷水中に投入し、生じた沈殿を回収して水洗し、乾燥することにより、4−ブロモ桂皮酸 4−n−ペンチルシクロヘキシルエステル粗精物(クリーム色粉末)50gを得た。
上記で得た4−ブロモ桂皮酸 4−n−ペンチルシクロヘキシルエステルの粗精物50g、0.28gの酢酸パラジウムおよび1.52gのトリ(o−トリル)ホスフィンの混合物に、窒素雰囲気下、125mLの乾燥トリエチルアミンを加えて反応を行った。4−ブロモ桂皮酸 4−n−ペンチルシクロヘキシルエステルの粗製物が完全に溶解した後、10.8gのアクリル酸をシリンジで注入し、さらに95℃で2時間反応を継続した。得られた暗緑色の反応混合物を1.3kgの塩酸酸性氷水中に投入し、生じた沈殿を回収した。得られた固体を500mLの酢酸エチルに溶解した溶液を1Nの塩酸および5重量%の炭酸水素ナトリウム溶液で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して上記式(A−3)で表される化合物の粗製物(黄色固体)56gを得た。この粗製物をエタノールから再結晶することにより、化合物(A−3)の黄色粉末30g(収率55%)を得た。
【0107】
合成例A−4
1Lのナス型フラスコに、4−ヒドロキシ安息香酸メチル91.3g、炭酸カリウム182.4gおよびN−メチル−2−ピロリドン320mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ヨード−4,4,4−トリフロロブタン157.1gを加え100℃で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を水中に投入して再沈殿を行った。次いで、得られた沈殿に水酸化ナトリウム48gおよび水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、反応混合物を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールから再結晶することにより、4−(4,4,4−トリフルオロブトキシ)安息香酸の白色結晶を110g得た。
この4−(4,4,4−トリフルオロブトキシ)安息香酸のうちの12.41gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル100mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド77μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて得た有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解して溶液とした。
次に、上記とは別の500mL三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸7.39g、炭酸カリウム13.82g、テトラブチルアンモニウム0.48g、テトラヒドロフラン50mLおよび水100mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷しつつ、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出して得た有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去した。得られた固体をエタノールから再結晶することにより化合物(A−4)の白色結晶を10.0g得た。
【0108】
合成例A−5
還流管、温度計および窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、1−ブロモ−4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼン31g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mLおよびN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層を、希塩酸で2回および水で3回順次に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。得られた固体を酢酸エチルおよびテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶することにより、化合物(A−5)の結晶を15g得た。
合成例A−6およびA−7
上記合成例A−5において、1−ブロモ−4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼンの代わりに、1−ブロモ−4−(4−n−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン28g(合成例A−6)および1−ブロモ−4−(4−n−ヘプチルシクロヘキシル)ベンゼン34g(合成例A−7)をそれぞれ使用したほかは合成例A−5と同様に実施して、化合物(A−6)の結晶13gおよび化合物(A−7)の結晶14gを、それぞれ得た。
【0109】
合成例A−8
還流管および窒素導入管を備えた300mLのナスフラスコに、4−n−ペンチル−4’−カルボキシビシクロヘキシル21g、塩化チオニル80mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド0.1mLを仕込んで80℃で1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物から塩化チオニルを留去し、次いで塩化メチレンを150mL加えて得た有機層を水で3回洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去して得た固体にテトラヒドロフラン400mLを加えた。
一方、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lの三口フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸16g、炭酸カリウム24g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.87g、水200mLおよびテトラヒドロフラン100mLを仕込んで5℃以下に氷冷した。ここに、上記テトラヒドロフラン溶液を3時間かけて滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に希塩酸を加えてpHを4以下にした後、トルエン3Lおよびテトラヒドロフラン1Lを加えて得た有機層を水で3回洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去して得た固体をエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶することにより、化合物(A−8)を21g得た。
【0110】
<ポリオルガノシロキサン(A)の合成>
合成例S−1
200mLの三口フラスコに、上記合成例E−1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS−1)5.0g、メチルイソブチルケトン46.4g、カルボン酸としてカルボン酸(A1)である上記合成例A−1で得た化合物(A−1)1.34g(EPS−1の有するエポキシ基に対して25モル%に相当する。)およびテトラブチルアンモニウムブロミド0.13gを仕込み、80℃で12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、該溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(A)であるポリオルガノシロキサン(S−1)の白色粉末2.3gを得た。
【0111】
合成例S−2〜S−33
上記合成例S−1において、使用したカルボン酸の種類および使用量を、それぞれ第1表に記載のとおりとした以外は合成例S−1と同様にして、第1表に示すポリオルガノシロキサン(S−2)〜(S−33)をそれぞれ合成した。
ここで、合成例S−3〜S−7、S−17およびS−21においては、カルボン酸としてカルボン酸(A1)とともに、表1に記載した種類および量の他のカルボン酸(1)および他のカルボン酸(2)を併用した。合成例S−31〜S−33においては、カルボン酸(A1)として2種類のカルボン酸を併用した。
第1表に記載のカルボン酸の使用量は、EPS−1の有するエポキシ基に対するモル%である。
【0112】
【表1】

【0113】
上記第1表におけるカルボン酸の略称は、それぞれ以下の意味である。
[カルボン酸(A1)]
A−1:上記合成例A−1で得た化合物(A−1)
A−2:上記合成例A−2で得た化合物(A−2)
A−3:上記合成例A−3で得た化合物(A−3)
A−4:上記合成例A−4で得た化合物(A−4)
A−5:上記合成例A−5で得た化合物(A−5)
A−6:上記合成例A−6で得た化合物(A−6)
A−7:上記合成例A−7で得た化合物(A−7)
A−8:上記合成例A−8で得た化合物(A−8)
[他のカルボン酸(1)]
B−1:ステアリン酸
B−2:1,4−ブタン二酸モノ(3−コレスタニル)エステル
B−3:4−(4,4,4−トリフルオロブトキシ)安息香酸
[他のカルボン酸(2)]
C−1:3,5−ジニトロ安息香酸
【0114】
<ポリイミド(B)の合成>
合成例P−1〜P−29
これらの合成例では、以下の操作によってポリイミド(B)である各重合体を合成した。
モノマーとしては、第2表に示した種類および量のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンをそれぞれ使用した。第2表における各モノマーの使用量は、テトラカルボン酸二無水物の使用量を100モル%とした場合のモル%単位で示した。
このようなテトラカルボン酸二無水物およびジアミンからなるモノマー混合物をN−メチル−2−ピロリドンに溶解してモノマー濃度20重量%の溶液とし、これを60℃で4時間反応させることにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を、それぞれ得た。各ポリアミック酸溶液の溶液粘度を第2表に示した。
次いで、得られた各ポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドンを追加してポリアミック酸濃度を10重量%に希釈し、さらにピリジンおよび無水酢酸を、それぞれポリアミック酸の有するアミック酸単位1モルに対して第2表に記載の倍モル数となるように添加した後、100℃において4時間脱水閉環反応を行った。その後、反応系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、ポリイミド(B)であるポリイミド(PI−1)〜(PI−29)をそれぞれ約20重量%含有する溶液を得た。これらの溶液に含有される各ポリイミドのイミド化率を第2表に合わせて示した。
【0115】
<他のポリアミック酸の合成>
合成例p−1〜p−5
上記ポリイミド(B)の合成において、第2表に示した種類および量のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを使用したほかはポリイミド(B)の合成におけるのと同様にして他のポリアミック酸であるポリアミック酸(pa−1)〜(pa−5)をそれぞれ20重量%含有する溶液を得た。各ポリアミック酸溶液の溶液粘度を第2表に示した。
これらのポリアミック酸溶液は、N−メチル−2−ピロリドンによる希釈および脱水閉環反応を行わず、そのまま液晶配向剤の調製に供した。
【0116】
<他のポリイミドの合成>
合成例p−6〜p−8
上記ポリイミド(B)の合成において、第2表に示した種類および量のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを使用したほかはポリイミド(B)の合成におけるのと同様にして各ポリアミック酸をそれぞれ20重量%含有する溶液を得た。各ポリアミック酸溶液の溶液粘度を第2表に示した。
次いで、各ポリアミック酸溶液を用いてポリイミド(B)の合成におけるのと同様にして他のポリイミドであるポリイミド(pi−1)〜(pi−3)をそれぞれ20重量%含有する溶液を得た。これらの溶液に含有される各ポリイミドのイミド化率を第2表に合わせて示した。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
上記第2表におけモノマーの略称は、それぞれ以下の意味である。
[テトラカルボン酸二無水物]
t1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
t2:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
t3:ピロメリット酸二無水物
[ジアミン]
−ジアミン(1)−
a:上記式(b1−1−4)で表される化合物
b:上記式(b1−1−7)で表される化合物
c:3、5−ジアミノ安息香酸−3−コレスタニル
d:2,4−ジアミノ−3−コレスタニルオキシベンゼン
−ジアミン(2)−
e:3,5−ジアミノ安息香酸
f:3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル
g:ビス(4−アミノフェニル)ビス(2−カルボキシエチル)メタン
−ジアミン(3)−
h:N−(2,4−ジアミノフェニル)ピペリジン
i:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
j:p−フェニレンジアミン
k:1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン
l:N,N’−ビス(4−アミノフェニル)ピペラジン
m:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
n:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
【0121】
<液晶配向剤の調製および評価>
実施例1
[液晶配向剤の調製]
上記合成例P−1で得たポリイミド(PI−1)を含有する溶液に、上記合成例S−1で得たポリオルガノシロキサン(S−1)を、ポリイミド溶液に含有されるポリイミドの100重量部に対して10重量部加え、さらにN−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=40:60(重量比)となるように加え、固形分濃度が6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、印刷性評価用液晶配向剤を調製した。
また、固形分濃度を3.5重量%としたほかは上記と同様にして、液晶表示素子製造用液晶配向剤を調製した。
[印刷性の評価]
6インチシリコンウエハー上に直径約4.1μmの樹脂スペーサー(積水化学工業(株)製、「ミクロパールEX−0041−AC4」)を散布し、120℃に設定したホットプレート上で10分間加熱処理を行い、固着スペーサーを有するシリコンウエハーを準備した。上記で調製した印刷性評価用液晶配向剤を用いて、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)によって上記固着スペーサー付きシリコンウエハー上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚800Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して印刷性の評価を行った。印刷ムラおよび固着スペーサー部分におけるハジキの有無により評価を実施し、印刷ムラと固着スペーサー部分のハジキが全く観察されなかった場合を印刷性「優良」、まれに塗布不良が観察されるがほぼ前記塗布不良がないと判断できた場合を印刷性「良好」、印刷ムラと固着スペーサー部分のはじきのいずれか一方でも多数観察された場合を印刷性「不良」として評価した。
【0122】
[液晶表示素子の製造]
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記で調製した液晶表示素子製造用液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線500J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
上記一対の基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向配置し、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子につき、以下の方法により評価した。液晶配向剤の組成および評価結果は第3表に示した。
【0123】
[液晶表示素子の評価]
1)プレチルト角の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、非特許文献1(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vol. 19, p2013(1980))に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角を測定した。
(2)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、60℃の環境温度で5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製、型式「VHR−1」を使用した。
(3)輝度差による焼き付き特性の評価
上記と同様にして2個の液晶表示素子を準備し、そのうち1つ(素子A)には交流電圧10V、もう1つ(素子B)には交流電圧1Vを60℃にて20時間印加した。その後、印加電圧を直流電圧2.5Vに切り替えたときに観測される素子Aと素子Bの輝度差を256階調で表した際に、その輝度差が10以下であった場合を焼き付き特性「良好」とし、10を超えた場合を焼き付き特性「不良」として評価した。
【0124】
実施例2〜129および比較例1〜7
上記実施例1において、使用した重合体の種類および量を第3表に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にして液晶表示素子製造用液晶配向剤および印刷性評価用液晶配向剤を調製して評価した。
評価結果は第3表に示した。
【0125】
【表5】

【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
【表8】

【0129】
【表9】

【0130】
【表10】

【0131】
【表11】

【0132】
【表12】

【0133】
なお、実施例31、32、41、42、84、85、86、91および101では、ポリオルガノシロキサン(A)をそれぞれ2種類ずつ使用し、比較例2および3では他の重合体をそれぞれ2種類ずつ使用した。
溶媒組成の欄における略称は、それぞれ以下の意味である。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
上記第3表において、実施例1〜129における本発明の液晶配向剤は、精緻な凹凸を有する基板表面に対しても優れた印刷性を示すことが確認された。また、これら本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜は、良好なプレチルト角発現性および高い電圧保持率を示すとともに、焼き付き特性にも優れることが明らかとなった。このことから、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、表示品位に優れるとともに、長期信頼性にも優れるものであることは、当業者には容易に推察されよう。
一方、比較例において調製された従来技術に属する液晶配向剤は、上記特性のすべてを同時に満足することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

(A)下記式(A1)
(式(A1)中、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、aは0〜4の整数であり、「*」は結合手であることを示す。)
で表される構造を有するポリオルガノシロキサン、ならびに
(B)テトラカルボン酸二無水物と
(b1)炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基を有するジアミンおよび
(b2)カルボキシル基を有するジアミン
を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体
を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【請求項2】
上記(A)ポリオルガノシロキサンが、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと
上記式(A1)で表される構造を有するカルボン酸と
の反応生成物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
上記(b2)ジアミンが下記式(b2−1)
【化13】

(式(b2−1)中、yは0〜2の整数であり;
xは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただしxが複数存在するとき、各xは同一であっても相違していてもよく;
は、それぞれ、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく;
は単結合、メチレン基、フルオロメチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4のフルオロアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−、−NHCO−(以上において「*」は、これを付した結合手が式(b2−1)の左方向に向くことを表す。)または下記式(X−1)
【化14】

(式(X−1)中、RIIは単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよく;
IIIは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または基−RIVCOOH(ここで、RIVは単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはシクロへキシレン基であり、ただし前記アルキレン基は途中がエーテル結合またはエステル結合によって中断されていてもよい。)である。)
で表される基であり、そして
式(b2−1)中のカルボキシル基の合計数は1〜4の整数である。)
で表される化合物である、請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記(b1)ジアミンがステロイド構造を有する基を有するジアミンである、請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射することを特徴とする、液晶配向膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−242427(P2011−242427A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111836(P2010−111836)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】