液滴吐出ヘッド及びその製造方法
【課題】 高い信頼性で直接接合することができない。
【解決手段】 振動板10を設けた流路基板1と電極15を設けた電極基板3がいずれもシリコン基板からなり、流路基板1の振動板10の電極側面を研磨加工して絶縁膜20を形成し、流路基板1と電極基板3とを直接接合した。
【解決手段】 振動板10を設けた流路基板1と電極15を設けた電極基板3がいずれもシリコン基板からなり、流路基板1の振動板10の電極側面を研磨加工して絶縁膜20を形成し、流路基板1と電極基板3とを直接接合した。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液滴吐出ヘッド及びその製造方法に関し、特に静電型液滴吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(加圧液室、圧力室、吐出室、インク流路等とも称される。)と、液室の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向する電極とを備え、振動板を静電力で変形変位させて液室インクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる静電型インクジェットヘッドがある。
【0003】このような静電型インクジェットヘッドにおいては、振動板の機械的変位特性はインク摘吐出特性に大きく影響し、振動板の薄膜化、高精度化が必要になるとともに、振動板と電極との間の微小ギャップを高精度に確保しなければならない。
【0004】そこで、従来の静電型インクジェットヘッドにあっては、特開平6−23986号公報、特開平6−71882号公報あるいは特開平9−267479公報などに記載されているように、振動板を形成するシリコン基板にボロンを拡散した高濃度ボロン拡散層を形成し、このシリコン基板を異方性エッチングすることにより、高濃度ボロン拡散層でエッチングストップすることから、高濃度ボロン拡散層による振動板を形成し、この振動板を設けたシリコン基板と電極を設けたシリコン基板とを直接接合するようにしている。
【0005】また、特開平6−71882号公報に記載されているように、シリコン基板に酸化膜を形成した後、振動板の形状に相当する部分をフォトリソグラフィー及びエッチング技術により開口し、この開口部にのみ高濃度ボロンのドープを行って、電極を設けたシリコン基板との接合面にはボロンを拡散させないようにしたインクジェットヘッドもある。さらに、特開平10−44406号公報に記載されているようにSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて酸化膜(インシュレータ)をエッチングストップ層として振動板を形成するインクジェットヘッドもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、直接接合における接合面には極めて良好な表面性が要求されるが、上述したように、高濃度ボロン拡散層で振動板を形成した場合、高濃度ボロン拡散面を介した直接接合になるため、高信頼性の接合が困難になる。
【0007】すなわち、高濃度ボロンエッチストップ層の形成には、板状の拡散源(BNやB2O3)を用いた固体拡散法、BBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などがあるが、ボロン拡散されたシリコン面上の最表面にはガラス層(イオン注入法の場合はイオン注入前にバッファ酸化膜などが付けられる)が有り、ガラス層とシリコン層との間には合金(SiB4〜6)層が形成される。ガラス層はフッ酸水溶液で除去できるが、合金層を除去することはできない。この合金層は親水性を示しかつ表面荒れも大きく、直接接合が妨げられる。また、合金層をフッ硝酸水溶液などでエッチング除去することは可能であるが、合金層除去後のボロン拡散表面の表面粗さが大きいため、接合の信頼性が低くなる。
【0008】また、CVD法やスパッタ法などで形成される堆積面の表面は、直接接合法にて信頼性の高い強固な接合力を得るには困難なレベルの表面荒れを持つものが多く、これらの面を接合面として直接接合することは困難で、更に信頼性の高い直接接合は不可能である。
【0009】さらに、上述したようにシリコン基板に酸化膜を形成した後、振動板の形状に相当する部分をフォトリソグラフィー、エッチング技術により開口し、開口部にのみボロンドープを行って接合部にボロンを拡散させないこともできるが、これでは工程数増加によるプロセスコストの上昇を招き、また、接合時のアラインメントマージンなど余分な寸法を取らなければならず、高密度化が妨げられる。
【0010】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、高密度高信頼性を得られる液滴吐出ヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、請求項1の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0012】請求項2の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0013】請求項3の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0014】請求項4の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0015】請求項5の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0016】請求項6の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0017】請求項7の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0018】請求項8の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0019】請求項9の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0020】請求項10の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0021】請求項11の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0022】これらの絶縁膜を形成する工程を含む本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法においては、少なくとも第二シリコン基板との接合部の絶縁膜が除去されていることが好ましい。また、絶縁膜が熱酸化膜であることが好ましい。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことが好ましい。
【0023】また、上記の各発明の液滴吐出ヘッドの製造方法においては、高濃度P型不純物が高濃度ボロンであることが好ましい。また、研磨工程では、スラリー液に水酸基を有する水溶液を用いた化学的機械的研磨法で研磨することが好ましい。或いは、研磨工程では、スピンエッチング法で研磨することが好ましい。
【0024】本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二の基板がいずれもシリコン基板からなり、第一、第二基板は、少なくとも一方の研磨加工された面を接合面として、直接接合されている構成としたものである。
【0025】ここで、振動板の電極に対向する面には研磨面を有する絶縁膜が形成されていることが好ましい。また、振動板が高濃度P型不純物シリコン層から構成されていることが好ましい。さらに、研磨加工された面の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことが好ましい。
【0026】本発明に係る液滴吐出ヘッドは、少なくとも振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二基板とを重ねて接合した積層構造をなし、第一基板はシリコン基板からなりかつ研磨加工されたP型不純物拡散層を有し、振動板の電極に対向する面には、P型不純物拡散層の研磨面に形成された絶縁膜がある構成としたものである。
【0027】ここで、少なくとも第二基板との接合部の絶縁膜が除去されていることが好ましい。また、絶縁膜が熱酸化膜であることが好ましい。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第1実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル板を透過状態で示す上面説明図、図3は同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向に沿う模式的断面説明図である。
【0029】このインクジェットヘッドは、第一シリコン基板(第一基板)である流路基板1と、流路基板1の下側に設けた第二シリコン基板(第二基板)である電極基板3と、流路基板1の上側に設けた第三基板であるノズル板4とを重ねて接合した積層構造体であり、これらにより、複数のノズル5、各ノズル5が連通するインク流路である液室6、液室6に流体抵抗部7を介して連通する共通インク室8などを形成している。
【0030】流路基板1には、シリコン基板(第一シリコン基板)を用いて、液室6及びこの液室6の底部となる壁面を形成する振動板10、各液室6を隔てる隔壁11を形成する凹部、共通インク室8を形成する凹部などを形成している。
【0031】この流路基板1は、シリコン基板に振動板となる厚み(深さ)に高濃度P型不純物であるボロンを拡散し、この高濃度ボロン拡散層をエッチングストップ層として異方性エッチングを行うことにより液室6となる凹部等を形成するときに高濃度ボロン拡散層を残して所定の処理を施すことにより所望厚さの振動板10を得たものである。なお、高濃度P型不純物としては、ボロンの他、ガリウム、アルミニウム等も用いることができる。また、アルカリ異方性エッチングストップ層としてシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を用いて、振動板主材料に単結晶シリコン(この構造の基板は一般にSOI構造と呼ばれる。)や多結晶シリコンを用いることもできる。
【0032】また、振動板10の後述する電極15と対向する面に絶縁膜20を形成している。ここで、高濃度ボロン拡散層の電極側の表面は研磨加工面として、この絶縁膜20は、高濃度ボロン拡散層の研磨面上に熱酸化により形成した厚さ0.1μmのSiO2膜である。
【0033】このように絶縁膜20を設けることによって、駆動時の絶縁破壊、ショートに対する信頼性が向上するとともに、駆動が繰り返されることにより電極15上に形成された絶縁膜17が帯電することを抑制することができ、安定した振動板変位を得られる。
【0034】また、この絶縁膜20を熱酸化膜とすることで耐絶縁性及び信頼性(:電荷トラップの低減や耐吸湿性に優れることによる)を向上させることができる。さらに、絶縁膜20は研磨加工された極めて表面粗さの小さい高濃度B拡散層表面を酸化することにより形成しているので、絶縁膜20表面は極めて表面粗さの小さい良好な表面性(原子間力顕微鏡による測定で、Ra値は0.5nm以下)を有する。これにより、流路基板1と電極基板3とを直接接合することが容易になる。
【0035】電極基板3には、熱酸化法などで厚さ2μmの酸化膜3aを形成して、この酸化膜3aに深さ0.3μmの凹部14を形成して、この凹部14の底面に振動板10に所定(0.2μmとしている。)のギャップ16を置いて対向する電極15を形成し、この電極15と振動板10によって、振動板15を変位させて液室6の内容積を変化させるアクチュエータ部を構成している。
【0036】この電極基板3の電極15上には振動板10との接触によって電極15が破損するのを防止するため、例えば0.1μm厚のシリコン酸化膜などの絶縁膜(絶縁層)17を成膜している。なお、電極15には電極基板3の端部付近まで延設して外部駆動回路と接続手段を介して接続するためのリード部15a及び電極パッド部15bを形成している。
【0037】この電極基板3は、熱酸化膜3aを形成したシリコン基板(第二シリコン基板)上に、HF水溶液などでエッチングにより凹部14を形成し、この凹部14に窒化チタンなどの高耐熱性を有する電極材料をスパッタ、CVD、蒸着などの成膜技術で所望の厚さに成膜し、その後、フォトレジストを形成してエッチングすることにより、凹部14にのみ電極15を形成したものである。
【0038】ここでは、電極15は、シリコン基板にエッチングで形成した深さ0.4μmの凹部14内に窒化チタンを0.1μmの厚さにスパッタし形成している。また、前述したように、振動板10の電極15と対向する面には絶縁膜20(ここでは熱酸化膜で厚さ0.1μm)を形成している。したがって、このヘッドにおいては、電極基板3と流路基板1とを接合した後のギャップ16の長さ(振動板10と電極15との実効間隔)は、0.2μmとなっている。
【0039】そして、これらの第一シリコン基板である流路基板1と第二シリコン基板である電極基板2とは直接接合している。この場合、流路基板1の振動板10の電極側表面(接合面)は研磨加工を施して表面粗さをRa=0.5nm以下にしている。これにより、流路基板1と電極基板2とを強固に信頼性の高い接合を行うことができる。
【0040】また、ノズル板4は、厚さ50μmのステンレス材(SUS)を用いて、ノズル5、液体抵抗部7及び共通インク液室へ外部からインクを供給するためのインク供給口19を形成している。
【0041】このインクジェットヘッドにおいては、電極15に駆動回路(ドライバIC)によって0Vから35Vのパルス電位を印加し、電極15の表面がプラスに帯電すると、対応する振動板10の下面はマイナス電位に帯電する。したがって、振動板10は静電気の吸引作用により下方へ撓む。次いで、電極15の電位をOFFにすると、振動板10は復元する。これにより、加圧室6内の圧力が急激に上昇し、ノズル5よりインク滴が吐出される。次に、振動板10が再び電極15側へ撓むことにより、インクが共通液室8より流体抵抗部7を通じて加圧室6内に補給される。
【0042】この場合、振動板10が電極側絶縁膜17に当接するまで変位させる当接駆動方式で駆動したとき、振動板10の電極15と対向する面、すなわち絶縁膜17と接する面が極めて表面粗さの小さい良好な表面性を持つ研磨加工面であるため、絶縁膜17の絶縁破壊に対して高い信頼性を保証することができる。
【0043】次に、本発明に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の製造方法の第1実施形態について図5及び図6をも参照して説明する。なお、図5(a)、(b)と(c)以降とでは縮尺を異ならせて図示している。まず、図5(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。なお、拡散方法は、この他にBBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などを用いることもできる。
【0044】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41の形成の際、シリコン基板31の最表面に厚さが約150nmのガラス層43が形成され、ガラス層43と高濃度Bドープシリコン層41との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層42が形成された。なお、ガラス層は周知の通りフッ酸水溶液で除去可能であるが、合金層42はフッ酸水溶液で除去できず、また、合金層42は親水性を示し、この合金層42が露出した面では直接接合することができない。
【0045】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43表面側から、CMP(Chemical-MechaNical-POlishiNg)を行って、ガラス層43及び合金層42を完全に除去する。
【0046】このCMPでは、図6に示すように、所定のテーブル速度で回転する研磨プレート51に設けた研磨パッド52に対して、所定のキャリア速度で回転する研磨ヘッド53に取り付けたウエハW(ここでは第一シリコン基板31)の研磨する面を所定の加圧力で押し付け、スラリー液54を滴下しながら研磨する。
【0047】ここでは、スラリー液54としてコロイダルシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:5に希釈したものを用いた。希釈後のスラリー液のpH値は10.5であった。また、研磨パッド52にはシリコンウエハの鏡面研磨加工に用いられるソフト型の研磨パッドを用いた。
【0048】そして、研磨条件を、テーブル速度/キャリア速度=38rpm/25rpm、研磨加圧=100g/cm2研磨時間=5分(なお、研磨レートはガラス層において65nm/min.であった)
として、研磨を行った後、ウエハの洗浄(RCA洗浄)を行った。
【0049】このCMPによりガラス層43及び合金層42は完全に除去され、研磨後の研磨面(高濃度Bドープシリコン層41の表面)は撥水性を示した。研磨面は,原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得た。
【0050】そして、熱酸化膜(絶縁膜)20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。この熱酸化膜20表面は,原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0051】次いで、図5(c)に示すように、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。なお、第二シリコン基板32のギャップ寸法Gは0.2μmに形成されている。
【0052】この接合工程は、次のとおりである。第一、第二シリコン基板31、32を硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合したもの)で、温度100℃にて洗浄し、乾燥後、第一シリコン基板31と第二シリコン基板32を重ね合わせ、窒素雰囲気中にて900℃−2時間加熱処理を行う。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0053】その後、同図(d)に示すように、貼り合わされた基板33の第一シリコン基板31にLP−CVDによりシリコン窒化膜44を形成し、このシリコン窒化膜44に加圧室6及び共通液室8などの液室パターンをフォトリソグラフィー、エッチング技術によりパターニングする。
【0054】次いで、基板33をKOH(10wt/%)水溶液に浸し、シリコンをエッチングする。シリコン窒化膜44の開口部からエッチングが進み、ボロン濃度が1E2−/cm3である深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、高濃度ボロンドープシリコンからなる振動板10が形成される。振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.1μmのバラツキに抑えることができた。なお、このバラツキにはCMP工程時に起因したバラツキが±0.05μm入っている。
【0055】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層及びシリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、ガラス層及び合金層の除去及び接合面となる拡散面の直接接合可能な表面性の形成を一括して行うことができ、短工程で高信頼性の直接接合が可能になる。
【0056】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第2実施形態について図7をも参照して説明する。まず、第1実施形態と同様に、図7(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0057】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すようにCMPを行って合金層42を完全に除去する。なお、ここでのCMPは、スラリー液としてコロイダルシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:10に希釈したものを用い、また、研磨時間を2分間にした以外は、第1実施形態と同様にして行った。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0058】そして、同図(d)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0059】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0060】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。これにより、CMP工程時に起因したバラツキは±0.02μmに抑えられた。これはガラス層43を完全に除去してからCMPを施したためガラス層43の初期膜厚、及びガラス層43の研磨バラツキを排除できるためである。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0061】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0062】次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図8をも参照して説明する。まず、各実施形態と同様に、図8(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0063】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0064】そこで、同図(d)に示すように、フッ酸(HF:10%)水溶液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は第2実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0065】そして、同図(e)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0066】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0067】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0068】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して、CMP等の研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0069】次に、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図9をも参照して説明する。まず、図9(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、固体拡散工程によりボロンを拡散するとき、1150℃−1時間のドライブの内、最初の50分間を窒素ガス主体(ガス流量比O2:N2=0.25:1)のドライブ、残り10分間及び降温中(750℃迄3℃/min.で降温)を酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブとした結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41上に厚さが約200nmのガラス層43のみが形成される。
【0070】このとき、ガラス層43上に前述した合金層が形成されないのは、合金層は前記酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブ中に酸化され、ガラス層43の一部となるためである。
【0071】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、第3実施形態と同様にして、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は第2実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0072】そして、同図(c)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0073】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0074】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。なお、第3実施形態に比べて僅かにバラツキが増加するのは、合金層の酸化工程が拡散中の場合、ガス切り替え時にガスの流れに不安定さが生じるためであると考えられる。
【0075】このように、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、このガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して、高濃度P型不純物拡散面を研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0076】次に、本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図10を参照して説明する。まず、各実施形態と同様に、図10(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0077】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0078】そこで、同図(d)に示すように、HF:HNO3:H2Oの体積比1:100:100の混合液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は第2実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0079】そして、同図(e)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0080】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0081】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。
【0082】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去した後研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0083】なお、絶縁膜20は上述したように研磨面に熱酸化で形成することで直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られることを確認したが、その他の方法を用いることで直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.5nm以下)が得られないような場合には、絶縁膜20の表面をCMPなどで研磨することもできる。
【0084】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図、図12は同ヘッドの液室短手方向に沿う模式的断面説明図である。このインクジェットヘッドは、上記第1実施形態で振動板10の電極側表面に形成した絶縁膜(熱酸化膜)20のうちの電極基板3(第二シリコン基板)との接合部にあたる部分を除去したものである。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0085】このように流路基板1と電極基板3との接合部分で熱酸化膜20を除去することにより、パターニング工程などの追加が必要になるが、接合温度の低温化及び接合信頼性のさらなる向上が図れる。
【0086】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第3実施形態について図13及び図14を参照して説明する。なお、図13は同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図、図13は同ヘッドの液室短手方向に沿う模式的断面説明図である。このインクジェットヘッドは、上記第1実施形態における振動板10の電極側表面に絶縁膜(熱酸化膜)20を形成しないものである。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0087】この実施形態のヘッドの場合、振動板10が電極側絶縁膜17に当接するまで変位させる当接駆動方式で駆動したとき、振動板10の電極15と対向する面、すなわち絶縁膜17と接する面が極めて表面粗さの小さい良好な表面性を持つ研磨加工面であるため、絶縁膜17の絶縁破壊に対して高い信頼性を保証することができる。
【0088】そこで、この第3実施形態のインクジェットヘッドを製造する本発明に係る製造方法について図15以降を参照して説明する。先ず、本発明に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の製造方法の第6実施形態について図15をも参照して説明する。なお、図1515(a)、(b)と(c)以降とでは縮尺を異ならせて図示している。まず、図15(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。なお、拡散方法は、この他にBBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などを用いることもできる。
【0089】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41の形成の際、シリコン基板31の最表面に厚さが約150nmのガラス層43が形成され、ガラス層43と高濃度Bドープシリコン層41との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層42が形成された。なお、ガラス層は周知の通りフッ酸水溶液で除去可能であるが、合金層42はフッ酸水溶液で除去できず、また、合金層42は親水性を示し、この合金層42が露出した面では直接接合することができない。
【0090】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43表面側から、CMP(Chemical-MechaNical-POlishiNg)を行って、ガラス層43及び合金層42を完全に除去する。このCMPの方法は前述した図6で説明したと同様である。
【0091】このCMPによりガラス層43及び合金層42は完全に除去され、研磨後の研磨面(高濃度Bドープシリコン層41の表面)は撥水性を示した。研磨面は,原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得た。
【0092】次いで、図15(c)に示すように、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。なお、第二シリコン基板32のギャップ寸法Gは0.2μmに形成されている。
【0093】この接合工程は、次のとおりである。第一、第二シリコン基板31、32を硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合したもの)で、温度100℃にて洗浄し、乾燥後、第一シリコン基板31と第二シリコン基板32を重ね合わせ、窒素雰囲気中にて900℃−2時間加熱処理を行う。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0094】その後、同図(d)に示すように、貼り合わされた基板33の第一シリコン基板31にLP−CVDによりシリコン窒化膜44を形成し、このシリコン窒化膜44に加圧室6及び共通液室8などの液室パターンをフォトリソグラフィー、エッチング技術によりパターニングする。
【0095】次いで、基板33をKOH(10wt/%)水溶液に浸し、シリコンをエッチングする。シリコン窒化膜44の開口部からエッチングが進み、ボロン濃度が1E2−/cm3である深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、高濃度ボロンドープシリコンからなる振動板10が形成される。振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.1μmのバラツキに抑えることができた。なお、このバラツキにはCMP工程時に起因したバラツキが±0.05μm入っている。
【0096】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層及びシリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、ガラス層及び合金層の除去及び接合面となる拡散面の直接接合可能な表面性の形成を一括して行うことができ、短工程で高信頼性の直接接合が可能になる。
【0097】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第7実施形態について図16をも参照して説明する。まず、前記第6実施形態と同様に、図16(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0098】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すようにCMPを行って合金層42を完全に除去する。なお、ここでのCMPは、スラリー液としてコロイダルシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:10に希釈したものを用い、また、研磨時間を2分間にした以外は、第5実施形態(第1実施形態を引用)と同様にして行った。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0099】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0100】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。これにより、CMP工程時に起因したバラツキは±0.02μmに抑えられた。これはガラス層43を完全に除去してからCMPを施したためガラス層43の初期膜厚、及びガラス層43の研磨バラツキを排除できるためである。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0101】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0102】次に、本発明の第8実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図17をも参照して説明する。まず、前記各実施形態と同様に、図17(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0103】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0104】そこで、同図(d)に示すように、フッ酸(HF:10%)水溶液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は前記第7実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0105】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0106】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0107】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して、CMP等の研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0108】次に、本発明の第9実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図18をも参照して説明する。まず、図18(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、固体拡散工程によりボロンを拡散するとき、1150℃−1時間のドライブの内、最初の50分間を窒素ガス主体(ガス流量比O2:N2=0.25:1)のドライブ、残り10分間及び降温中(750℃迄3℃/min.で降温)を酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブとした結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41上に厚さが約200nmのガラス層43のみが形成される。
【0109】このとき、ガラス層43上に前述した合金層が形成されないのは、合金層は前記の酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブ中に酸化され、ガラス層43の一部となるためである。
【0110】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、前記第3実施形態と同様にして、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は前記第6実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0111】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0112】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。なお、第3実施形態に比べて僅かにバラツキが増加するのは、合金層の酸化工程が拡散中の場合、ガス切り替え時にガスの流れに不安定さが生じるためであると考えられる。
【0113】このように、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、このガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して、高濃度P型不純物拡散面を研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0114】次に、本発明の第10実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図19をも参照して説明する。まず、前記と同様に、図19(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0115】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43表面からCMPを行ってガラス層43を研磨する。なお、研磨時間は1分間とした。このとき、ガラス層43をウエハ全面に残存させる。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0116】そして、図19(c)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0117】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.05μmのバラツキに抑えることができた。ただし、ギャップ長(振動板10と電極15との間の距離)のバラツキは他の実施形態がウエハ面内で0.2±0.01μmであったのに対し、この実施形態では0.2±0.04μmと大きくなった。
【0118】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去して、第二シリコン基板と直接接合することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0119】次に、本発明の第11実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図20を参照して説明する。まず、前記各実施形態と同様に、図20(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0120】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0121】そこで、同図(d)に示すように、HF:HNO3:H2Oの体積比1:100:100の混合液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は前記第7実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0122】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0123】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。
【0124】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去した後研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0125】次に、本発明の第12実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について説明する。この実施形態は、前記第7実施形態(図16参照)における研磨工程で、CMPに代えて、スピンエッチング法(スピンエッチングとは、回転しているウエハに所望のエッチング液をかけ、全面にわたる均一な処理が可能な湿式処理法である。)による研磨を行ったものである。スピンエッチング法による研磨は、回転しているウエハにHF:HNO3:H2Oの体積比1:100:100の混合液をかけ、合金層42及び高濃度Bドープシリコン層41を約1μmのエッチングを行った。ウエハ全面にわたりエッチング量の均一性は±5%であり、エッチング後の高濃度Bドープシリコン層41の表面ラフネスはRa=0.50nmが得られた。その他の工程及び作用効果は第7実施形態と同様であるので省略する。
【0126】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第13実施形態について図21及び図22をも参照して説明する。まず、図21(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ500μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板61の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。なお、拡散方法は、この他にBBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などを用いることもできる。
【0127】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が1.5E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層71が得られ、高濃度Bドープシリコン層71の形成の際、シリコン基板61の最表面に厚さが約150nmのガラス層73が形成され、ガラス層73と高濃度Bドープシリコン層71との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層72が形成された。
【0128】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板61をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層73を除去した後、同図(c)に示すように第一シリコン基板61のガラス層73表面側からCMPを行って合金層72を完全に除去する。
【0129】このCMPでは、スラリー液としてヒュームドシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:2に希釈したものを用いた。希釈後のスラリー液のpH値は10.8であった。また、研磨パッドにはシリコンウエハの鏡面研磨加工に用いられるソフト型の研磨パッドを用いた。
【0130】なお、スラリーは被研磨材料によって研磨レートが異なってくるため、被研磨材料により最適なスラリーを選定することが好ましい。また、研磨パッドも研磨する基板によって使用するパッドを選定することが好ましい。例えば酸化化膜研磨用などによく使用されるIC1000/SUBAでもよいが、より表面粗さを小さくするにはシリコンウエハの鏡面研磨加工や仕上げ研磨用に用いられるソフト型の研磨パッド(サーフィンなど)を用いた方が好ましい。また、被研磨基板にパターニングが施されている場合、パッドが柔らかいことにより、凹パターンのボトム面も研磨され凹形状が変化してしまうことが許されない場合は、逆にIC1000/SUBAやそれ以上に硬いタイプのパッドを使用することにより接合面のみを研磨することが可能である。
【0131】そして、研磨条件として、テーブル速度/キャリア速度=38rpm/25rpm、研磨加圧=100g/cm2研磨時間=2分(なお、研磨レートはガラス層において45nm/min.であった)
として、研磨を行った後、ウエハの洗浄を行った。
【0132】この洗浄は、スクラブ洗浄を(1%HFディップ)1分間、純水リンスを20分間施した。さらにクリーン度を求めるなら、汚染物(contamination)除去として硫酸過水(H2SO4:H2O2::H2O=1:1:5)洗浄やアンモニア過水洗浄(NH4OH:H2O:H2O=1:1:5)などをこれに加えることが好ましい。
【0133】この研磨加工により、合金(SiB4〜6)層72を研磨除去すると共に、信頼性の高い直接接合が可能な表面粗さ(原子間力顕微鏡により測定した結果、表面粗さ(Ra=0.2nm:測定エリアは10μm□))をもつ高濃度Bドープシリコン層71が得られる。
【0134】この研磨加工では、合金層72とその下の高濃度Bドープシリコン層71の一部を研磨除去したことになるが、高濃度Bドープシリコン層71の研磨除去量(厚さ)の変動はそのまま振動板厚さの変動となるため、高い精度で研磨除去量を管理する必要がある。そのためには、研磨量を小さく(好ましくは2000Å以下に)抑える。ここでは、高濃度Bドープシリコン層71の研磨量(とり代)は900Åで研磨量のばらつきは±150Å以下であった。
【0135】次に、図22(a)に示すように、凹部14、電極15などを形成した第二シリコン基板62と、第一シリコン基板61の表面を研磨した高濃度ボロンドープシリコン層71を接合面として直接接合した。具体的には、第一及び第二シリコン基板61、62を硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合、温度100℃)にて洗浄し、乾燥後、第一及び第二シリコン基板61、62を減圧下(室温)で重ね合わせ、窒素雰囲気中にて900℃−1時間加熱処理を行い、両基板61、62を直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0136】次いで、同図(b)に示すように、厚さ500μmの第一シリコン基板61を厚さ100μmまで研磨によって薄くする。その後、同図(c)に示すように、接合した基板63全体にLP−CVDによりシリコン窒化膜74を形成し、シリコン窒化膜74上にレジストをコートし、露光、現像により吐出室6や共通インク室8などの液室形状のレジストパターンを形成する。このとき、第二シリコン基板62の電極15と吐出室のパターンの位置が一致するようにIR光によりアライメントする。そして、同図(d)に示すように、レジストの開口部のシリコン窒化膜74をドライエッチによりエッチング除去し、レジストを除去する。
【0137】そして、基板63をKOH(10wt%)水溶液に浸し、シリコンをエッチングする。パターニングした側の開口部からエッチングが進みボロン濃度が1E20/cm3である深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、同図(e)に示すように、高濃度ボロンドープシリコン層から成る振動板10及び吐出室6等が形成される。
【0138】このようにして形成された振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.1μmのバラツキに抑えることができた。なお、このバラツキにはCMP工程時に起因したバラツキ(±0.015μm)が含まれている。
【0139】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第14実施形態について図23をも参照して説明する。まず、同図(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ500μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板61の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。
【0140】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が1.5E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層71が得られ、高濃度Bドープシリコン層71の形成の際、シリコン基板61の最表面に厚さが約150nmのガラス層73が形成され、ガラス層73と高濃度Bドープシリコン層71との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層72が形成された。
【0141】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板61をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層73を除去した後、同図(c)に示すように、合金層72及びその下の結晶欠陥を多く含むシリコン層を酸化して酸化膜75を形成する。酸化条件は、800℃(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)60分で行った。この酸化工程は800℃以下の低温で酸化することが好ましい。これにより、後工程のアルカリ異方性エッチングのストップ位置に影響を与えるボロン濃度プロファイルが変化することを抑制し、かつ高温で起こりやすい結晶欠陥の伝播を抑制することができる。ここでは、1200Åの酸化膜75が形成された。そこで、この酸化膜75をフッ酸(HF:10%)水溶液で除去し、表面粗さ(Ra=0.9nm:測定エリアは10μm□)をもつ高濃度Bドープシリコン層71が得られる。
【0142】このままでは、まだ信頼性の高い直接接合を行えるレベルの表面粗さにないため、前記第13実施形態とほぼ同様の手順で表面を研磨加工する。酸化工程により合金層72及び欠陥層を除去しているため、研磨レートを極めて安定に保つことができ、第8実施形態よりも研磨加工精度を向上させることができる。ここでの研磨条件は、スラリー液にはヒュームドシリカを含有するKOHベースのスラリー(SEMI-SPRESE25:商品名)を脱イオン水にて1:1に希釈したものを用いた。
【0143】ここでの研磨条件は、次のとおりとした。
テーブル速度/キャリア速度=38rpm/25rpm研磨加圧=125g/cm2研磨時間=1分(なお、研磨レートは70nm/min.であった。)
【0144】この研磨加工により、信頼性の高い直接接合が可能な表面粗さ(原子間力顕微鏡により測定した結果、表面粗さ(Ra=0.15nm:測定エリアは10μm□))をもつ高濃度Bドープシリコン層71が得られた。また、本実施形態では、研磨量(とり代)は700Åで研磨時間は1分間であるが、研磨量のばらつきはウエハ面内にて±50Å以下であった。
【0145】以下、第13実施形態と同様(図22参照)にして振動板を形成した。
【0146】
【0147】なお、上記各実施形態においては本発明を静電型インクジェットヘッドに適用した例で説明したが、インク滴を吐出するインクジェットヘッド以外にも、例えば液体レジストを吐出するための液滴吐出ヘッドなどにも同様に適用することができる。
【0148】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去するので、短工程で高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0149】請求項2の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を研磨除去するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上する。
【0150】請求項3の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して酸化層を除去し、高濃度P型不純物拡散面を研磨するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドのヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0151】請求項4の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して研磨するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0152】請求項5の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去し、この研磨面を接合面とするので、極めて高精度に振動板厚さを制御できて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0153】請求項6の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去して研磨するので、高信頼性の直接接合が可能になり、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上する。
【0154】請求項7の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去し、研磨面に絶縁膜を形成するので、短工程で高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0155】請求項8の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を研磨除去し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0156】請求項9の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して酸化層を除去し、高濃度P型不純物拡散面を研磨し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドのヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0157】請求項10の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して研磨し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0158】請求項11の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去して研磨し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高信頼性の直接接合が可能になり、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0159】これらの絶縁膜を形成する工程を含む本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法において、少なくとも第二シリコン基板との接合部の絶縁膜を除去することで、接合温度の低温化及び接合信頼性の更なる向上を図れる。また、絶縁膜が熱酸化膜であることで、耐絶縁性及び更なる信頼性の向上を図れる。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことで、高い信頼性での直接接合が容易になる。
【0160】これらの各発明の液滴吐出ヘッドの製造方法においては、高濃度P型不純物として高濃度ボロンを用いることで、製造工程が容易になる。また、研磨工程では、スラリー液に水酸基を有する水溶液を用いた化学的機械的研磨法で研磨することにより、高精度の表面性を得ることができる。また、研磨工程では、スピンエッチング法で研磨することにより、簡易で安価のプロセスとなり、ヘッドの低コスト化を図れる。
【0161】本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二の基板がいずれもシリコン基板からなり、第一、第二基板は、少なくとも一方の研磨加工された面を接合面として、直接接合されている構成としたので、高信頼性の直接接合が可能になって、ヘッドの高精度化、高密度化を図れ、高信頼性を向上することができる。
【0162】ここで、振動板の電極に対向する面には研磨面を有する絶縁膜を形成することにより、絶縁破壊、ショートに対する信頼性が向上し、安定した振動板変位特性を得ることができる。また、振動板が高濃度P型不純物シリコン層から構成されていることで、高精度に振動板厚さを制御することができる。さらに、研磨加工された面の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことで、高い信頼性で直接接合することができる。
【0163】本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、少なくとも振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二基板とを重ねて接合した積層構造をなし、第一基板はシリコン基板からなりかつ研磨加工されたP型不純物拡散層を有し、振動板の電極に対向する面には、P型不純物拡散層の研磨面に形成された絶縁膜がある構成としたので、高信頼性の直接接合が可能になって、絶縁破壊、ショートに対する信頼性が向上し、ヘッドの高精度化、高密度化を図れ、信頼性を向上することができる。
【0164】ここで、少なくとも第二シリコン基板との接合部の絶縁膜が除去されていることで、接合温度の低温化及び接合信頼性が更に向上する。また、絶縁膜が熱酸化膜であることで、耐絶縁性及び信頼性が更に向上する。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことで、高い信頼性での直接接合が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第1実施形態を示す分解斜視説明図
【図2】同ヘッドのノズル板を透過状態で示す上面説明図
【図3】同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図
【図4】同ヘッドの振動板短手方向に沿う模式的断面説明図
【図5】本発明に係るヘッドの製造方法の第1実施形態の説明に供する説明図
【図6】図5の研磨工程の説明に供する説明図
【図7】本発明に係るヘッドの製造方法の第2実施形態の説明に供する説明図
【図8】本発明に係るヘッドの製造方法の第3実施形態の説明に供する説明図
【図9】本発明に係るヘッドの製造方法の第4実施形態の説明に供する説明図
【図10】本発明に係るヘッドの製造方法の第5実施形態の説明に供する説明図
【図11】本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第2実施形態を示す振動板長手方向に沿う模式的断面説明図
【図12】同ヘッドの振動板短手方向に沿う模式的断面説明図
【図13】本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第3実施形態を示す振動板長手方向に沿う模式的断面説明図
【図14】同ヘッドの振動板短手方向に沿う模式的断面説明図
【図15】本発明に係るヘッドの製造方法の第6実施形態の説明に供する説明図
【図16】本発明に係るヘッドの製造方法の第7実施形態の説明に供する説明図
【図17】本発明に係るヘッドの製造方法の第8実施形態の説明に供する説明図
【図18】本発明に係るヘッドの製造方法の第9実施形態の説明に供する説明図
【図19】本発明に係るヘッドの製造方法の第10実施形態の説明に供する説明図
【図20】本発明に係るヘッドの製造方法の第11実施形態の説明に供する説明図
【図21】本発明に係るヘッドの製造方法の第13実施形態の説明に供する説明図
【図22】図21に続く工程の説明に供する説明図
【図23】本発明に係るヘッドの製造方法の第14実施形態の説明に供する説明図
【符号の説明】
1…流路基板、3…電極基板、4…ノズル板、5…ノズル、6…液室、10…振動板、15…電極、20…絶縁膜、31、61…第一シリコン基板、32、62…第二シリコン基板、41、71…高濃度ボロンドープシリコン層、42、72…シリコン−ボロン合金層、43、73…ガラス層。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液滴吐出ヘッド及びその製造方法に関し、特に静電型液滴吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(加圧液室、圧力室、吐出室、インク流路等とも称される。)と、液室の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向する電極とを備え、振動板を静電力で変形変位させて液室インクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる静電型インクジェットヘッドがある。
【0003】このような静電型インクジェットヘッドにおいては、振動板の機械的変位特性はインク摘吐出特性に大きく影響し、振動板の薄膜化、高精度化が必要になるとともに、振動板と電極との間の微小ギャップを高精度に確保しなければならない。
【0004】そこで、従来の静電型インクジェットヘッドにあっては、特開平6−23986号公報、特開平6−71882号公報あるいは特開平9−267479公報などに記載されているように、振動板を形成するシリコン基板にボロンを拡散した高濃度ボロン拡散層を形成し、このシリコン基板を異方性エッチングすることにより、高濃度ボロン拡散層でエッチングストップすることから、高濃度ボロン拡散層による振動板を形成し、この振動板を設けたシリコン基板と電極を設けたシリコン基板とを直接接合するようにしている。
【0005】また、特開平6−71882号公報に記載されているように、シリコン基板に酸化膜を形成した後、振動板の形状に相当する部分をフォトリソグラフィー及びエッチング技術により開口し、この開口部にのみ高濃度ボロンのドープを行って、電極を設けたシリコン基板との接合面にはボロンを拡散させないようにしたインクジェットヘッドもある。さらに、特開平10−44406号公報に記載されているようにSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて酸化膜(インシュレータ)をエッチングストップ層として振動板を形成するインクジェットヘッドもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、直接接合における接合面には極めて良好な表面性が要求されるが、上述したように、高濃度ボロン拡散層で振動板を形成した場合、高濃度ボロン拡散面を介した直接接合になるため、高信頼性の接合が困難になる。
【0007】すなわち、高濃度ボロンエッチストップ層の形成には、板状の拡散源(BNやB2O3)を用いた固体拡散法、BBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などがあるが、ボロン拡散されたシリコン面上の最表面にはガラス層(イオン注入法の場合はイオン注入前にバッファ酸化膜などが付けられる)が有り、ガラス層とシリコン層との間には合金(SiB4〜6)層が形成される。ガラス層はフッ酸水溶液で除去できるが、合金層を除去することはできない。この合金層は親水性を示しかつ表面荒れも大きく、直接接合が妨げられる。また、合金層をフッ硝酸水溶液などでエッチング除去することは可能であるが、合金層除去後のボロン拡散表面の表面粗さが大きいため、接合の信頼性が低くなる。
【0008】また、CVD法やスパッタ法などで形成される堆積面の表面は、直接接合法にて信頼性の高い強固な接合力を得るには困難なレベルの表面荒れを持つものが多く、これらの面を接合面として直接接合することは困難で、更に信頼性の高い直接接合は不可能である。
【0009】さらに、上述したようにシリコン基板に酸化膜を形成した後、振動板の形状に相当する部分をフォトリソグラフィー、エッチング技術により開口し、開口部にのみボロンドープを行って接合部にボロンを拡散させないこともできるが、これでは工程数増加によるプロセスコストの上昇を招き、また、接合時のアラインメントマージンなど余分な寸法を取らなければならず、高密度化が妨げられる。
【0010】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、高密度高信頼性を得られる液滴吐出ヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、請求項1の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0012】請求項2の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0013】請求項3の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0014】請求項4の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0015】請求項5の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0016】請求項6の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0017】請求項7の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0018】請求項8の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0019】請求項9の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0020】請求項10の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0021】請求項11の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして振動板を形成する工程とを含む構成としたものである。
【0022】これらの絶縁膜を形成する工程を含む本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法においては、少なくとも第二シリコン基板との接合部の絶縁膜が除去されていることが好ましい。また、絶縁膜が熱酸化膜であることが好ましい。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことが好ましい。
【0023】また、上記の各発明の液滴吐出ヘッドの製造方法においては、高濃度P型不純物が高濃度ボロンであることが好ましい。また、研磨工程では、スラリー液に水酸基を有する水溶液を用いた化学的機械的研磨法で研磨することが好ましい。或いは、研磨工程では、スピンエッチング法で研磨することが好ましい。
【0024】本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二の基板がいずれもシリコン基板からなり、第一、第二基板は、少なくとも一方の研磨加工された面を接合面として、直接接合されている構成としたものである。
【0025】ここで、振動板の電極に対向する面には研磨面を有する絶縁膜が形成されていることが好ましい。また、振動板が高濃度P型不純物シリコン層から構成されていることが好ましい。さらに、研磨加工された面の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことが好ましい。
【0026】本発明に係る液滴吐出ヘッドは、少なくとも振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二基板とを重ねて接合した積層構造をなし、第一基板はシリコン基板からなりかつ研磨加工されたP型不純物拡散層を有し、振動板の電極に対向する面には、P型不純物拡散層の研磨面に形成された絶縁膜がある構成としたものである。
【0027】ここで、少なくとも第二基板との接合部の絶縁膜が除去されていることが好ましい。また、絶縁膜が熱酸化膜であることが好ましい。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第1実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル板を透過状態で示す上面説明図、図3は同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向に沿う模式的断面説明図である。
【0029】このインクジェットヘッドは、第一シリコン基板(第一基板)である流路基板1と、流路基板1の下側に設けた第二シリコン基板(第二基板)である電極基板3と、流路基板1の上側に設けた第三基板であるノズル板4とを重ねて接合した積層構造体であり、これらにより、複数のノズル5、各ノズル5が連通するインク流路である液室6、液室6に流体抵抗部7を介して連通する共通インク室8などを形成している。
【0030】流路基板1には、シリコン基板(第一シリコン基板)を用いて、液室6及びこの液室6の底部となる壁面を形成する振動板10、各液室6を隔てる隔壁11を形成する凹部、共通インク室8を形成する凹部などを形成している。
【0031】この流路基板1は、シリコン基板に振動板となる厚み(深さ)に高濃度P型不純物であるボロンを拡散し、この高濃度ボロン拡散層をエッチングストップ層として異方性エッチングを行うことにより液室6となる凹部等を形成するときに高濃度ボロン拡散層を残して所定の処理を施すことにより所望厚さの振動板10を得たものである。なお、高濃度P型不純物としては、ボロンの他、ガリウム、アルミニウム等も用いることができる。また、アルカリ異方性エッチングストップ層としてシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を用いて、振動板主材料に単結晶シリコン(この構造の基板は一般にSOI構造と呼ばれる。)や多結晶シリコンを用いることもできる。
【0032】また、振動板10の後述する電極15と対向する面に絶縁膜20を形成している。ここで、高濃度ボロン拡散層の電極側の表面は研磨加工面として、この絶縁膜20は、高濃度ボロン拡散層の研磨面上に熱酸化により形成した厚さ0.1μmのSiO2膜である。
【0033】このように絶縁膜20を設けることによって、駆動時の絶縁破壊、ショートに対する信頼性が向上するとともに、駆動が繰り返されることにより電極15上に形成された絶縁膜17が帯電することを抑制することができ、安定した振動板変位を得られる。
【0034】また、この絶縁膜20を熱酸化膜とすることで耐絶縁性及び信頼性(:電荷トラップの低減や耐吸湿性に優れることによる)を向上させることができる。さらに、絶縁膜20は研磨加工された極めて表面粗さの小さい高濃度B拡散層表面を酸化することにより形成しているので、絶縁膜20表面は極めて表面粗さの小さい良好な表面性(原子間力顕微鏡による測定で、Ra値は0.5nm以下)を有する。これにより、流路基板1と電極基板3とを直接接合することが容易になる。
【0035】電極基板3には、熱酸化法などで厚さ2μmの酸化膜3aを形成して、この酸化膜3aに深さ0.3μmの凹部14を形成して、この凹部14の底面に振動板10に所定(0.2μmとしている。)のギャップ16を置いて対向する電極15を形成し、この電極15と振動板10によって、振動板15を変位させて液室6の内容積を変化させるアクチュエータ部を構成している。
【0036】この電極基板3の電極15上には振動板10との接触によって電極15が破損するのを防止するため、例えば0.1μm厚のシリコン酸化膜などの絶縁膜(絶縁層)17を成膜している。なお、電極15には電極基板3の端部付近まで延設して外部駆動回路と接続手段を介して接続するためのリード部15a及び電極パッド部15bを形成している。
【0037】この電極基板3は、熱酸化膜3aを形成したシリコン基板(第二シリコン基板)上に、HF水溶液などでエッチングにより凹部14を形成し、この凹部14に窒化チタンなどの高耐熱性を有する電極材料をスパッタ、CVD、蒸着などの成膜技術で所望の厚さに成膜し、その後、フォトレジストを形成してエッチングすることにより、凹部14にのみ電極15を形成したものである。
【0038】ここでは、電極15は、シリコン基板にエッチングで形成した深さ0.4μmの凹部14内に窒化チタンを0.1μmの厚さにスパッタし形成している。また、前述したように、振動板10の電極15と対向する面には絶縁膜20(ここでは熱酸化膜で厚さ0.1μm)を形成している。したがって、このヘッドにおいては、電極基板3と流路基板1とを接合した後のギャップ16の長さ(振動板10と電極15との実効間隔)は、0.2μmとなっている。
【0039】そして、これらの第一シリコン基板である流路基板1と第二シリコン基板である電極基板2とは直接接合している。この場合、流路基板1の振動板10の電極側表面(接合面)は研磨加工を施して表面粗さをRa=0.5nm以下にしている。これにより、流路基板1と電極基板2とを強固に信頼性の高い接合を行うことができる。
【0040】また、ノズル板4は、厚さ50μmのステンレス材(SUS)を用いて、ノズル5、液体抵抗部7及び共通インク液室へ外部からインクを供給するためのインク供給口19を形成している。
【0041】このインクジェットヘッドにおいては、電極15に駆動回路(ドライバIC)によって0Vから35Vのパルス電位を印加し、電極15の表面がプラスに帯電すると、対応する振動板10の下面はマイナス電位に帯電する。したがって、振動板10は静電気の吸引作用により下方へ撓む。次いで、電極15の電位をOFFにすると、振動板10は復元する。これにより、加圧室6内の圧力が急激に上昇し、ノズル5よりインク滴が吐出される。次に、振動板10が再び電極15側へ撓むことにより、インクが共通液室8より流体抵抗部7を通じて加圧室6内に補給される。
【0042】この場合、振動板10が電極側絶縁膜17に当接するまで変位させる当接駆動方式で駆動したとき、振動板10の電極15と対向する面、すなわち絶縁膜17と接する面が極めて表面粗さの小さい良好な表面性を持つ研磨加工面であるため、絶縁膜17の絶縁破壊に対して高い信頼性を保証することができる。
【0043】次に、本発明に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の製造方法の第1実施形態について図5及び図6をも参照して説明する。なお、図5(a)、(b)と(c)以降とでは縮尺を異ならせて図示している。まず、図5(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。なお、拡散方法は、この他にBBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などを用いることもできる。
【0044】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41の形成の際、シリコン基板31の最表面に厚さが約150nmのガラス層43が形成され、ガラス層43と高濃度Bドープシリコン層41との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層42が形成された。なお、ガラス層は周知の通りフッ酸水溶液で除去可能であるが、合金層42はフッ酸水溶液で除去できず、また、合金層42は親水性を示し、この合金層42が露出した面では直接接合することができない。
【0045】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43表面側から、CMP(Chemical-MechaNical-POlishiNg)を行って、ガラス層43及び合金層42を完全に除去する。
【0046】このCMPでは、図6に示すように、所定のテーブル速度で回転する研磨プレート51に設けた研磨パッド52に対して、所定のキャリア速度で回転する研磨ヘッド53に取り付けたウエハW(ここでは第一シリコン基板31)の研磨する面を所定の加圧力で押し付け、スラリー液54を滴下しながら研磨する。
【0047】ここでは、スラリー液54としてコロイダルシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:5に希釈したものを用いた。希釈後のスラリー液のpH値は10.5であった。また、研磨パッド52にはシリコンウエハの鏡面研磨加工に用いられるソフト型の研磨パッドを用いた。
【0048】そして、研磨条件を、テーブル速度/キャリア速度=38rpm/25rpm、研磨加圧=100g/cm2研磨時間=5分(なお、研磨レートはガラス層において65nm/min.であった)
として、研磨を行った後、ウエハの洗浄(RCA洗浄)を行った。
【0049】このCMPによりガラス層43及び合金層42は完全に除去され、研磨後の研磨面(高濃度Bドープシリコン層41の表面)は撥水性を示した。研磨面は,原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得た。
【0050】そして、熱酸化膜(絶縁膜)20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。この熱酸化膜20表面は,原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0051】次いで、図5(c)に示すように、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。なお、第二シリコン基板32のギャップ寸法Gは0.2μmに形成されている。
【0052】この接合工程は、次のとおりである。第一、第二シリコン基板31、32を硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合したもの)で、温度100℃にて洗浄し、乾燥後、第一シリコン基板31と第二シリコン基板32を重ね合わせ、窒素雰囲気中にて900℃−2時間加熱処理を行う。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0053】その後、同図(d)に示すように、貼り合わされた基板33の第一シリコン基板31にLP−CVDによりシリコン窒化膜44を形成し、このシリコン窒化膜44に加圧室6及び共通液室8などの液室パターンをフォトリソグラフィー、エッチング技術によりパターニングする。
【0054】次いで、基板33をKOH(10wt/%)水溶液に浸し、シリコンをエッチングする。シリコン窒化膜44の開口部からエッチングが進み、ボロン濃度が1E2−/cm3である深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、高濃度ボロンドープシリコンからなる振動板10が形成される。振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.1μmのバラツキに抑えることができた。なお、このバラツキにはCMP工程時に起因したバラツキが±0.05μm入っている。
【0055】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層及びシリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、ガラス層及び合金層の除去及び接合面となる拡散面の直接接合可能な表面性の形成を一括して行うことができ、短工程で高信頼性の直接接合が可能になる。
【0056】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第2実施形態について図7をも参照して説明する。まず、第1実施形態と同様に、図7(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0057】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すようにCMPを行って合金層42を完全に除去する。なお、ここでのCMPは、スラリー液としてコロイダルシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:10に希釈したものを用い、また、研磨時間を2分間にした以外は、第1実施形態と同様にして行った。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0058】そして、同図(d)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0059】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0060】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。これにより、CMP工程時に起因したバラツキは±0.02μmに抑えられた。これはガラス層43を完全に除去してからCMPを施したためガラス層43の初期膜厚、及びガラス層43の研磨バラツキを排除できるためである。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0061】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0062】次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図8をも参照して説明する。まず、各実施形態と同様に、図8(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0063】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0064】そこで、同図(d)に示すように、フッ酸(HF:10%)水溶液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は第2実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0065】そして、同図(e)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0066】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0067】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0068】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して、CMP等の研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0069】次に、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図9をも参照して説明する。まず、図9(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、固体拡散工程によりボロンを拡散するとき、1150℃−1時間のドライブの内、最初の50分間を窒素ガス主体(ガス流量比O2:N2=0.25:1)のドライブ、残り10分間及び降温中(750℃迄3℃/min.で降温)を酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブとした結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41上に厚さが約200nmのガラス層43のみが形成される。
【0070】このとき、ガラス層43上に前述した合金層が形成されないのは、合金層は前記酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブ中に酸化され、ガラス層43の一部となるためである。
【0071】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、第3実施形態と同様にして、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は第2実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0072】そして、同図(c)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0073】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0074】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。なお、第3実施形態に比べて僅かにバラツキが増加するのは、合金層の酸化工程が拡散中の場合、ガス切り替え時にガスの流れに不安定さが生じるためであると考えられる。
【0075】このように、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、このガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して、高濃度P型不純物拡散面を研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0076】次に、本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図10を参照して説明する。まず、各実施形態と同様に、図10(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0077】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0078】そこで、同図(d)に示すように、HF:HNO3:H2Oの体積比1:100:100の混合液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は第2実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0079】そして、同図(e)に示すように、熱酸化膜20を900℃でウエット酸化(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)により高濃度ボロンドープシリコン層41上に膜厚500Åで形成した。熱酸化膜20表面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られた。
【0080】その後、第1実施形態と同様(図5(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0081】次に、第1実施形態と同様(図5(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。
【0082】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去した後研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0083】なお、絶縁膜20は上述したように研磨面に熱酸化で形成することで直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.19nm)が得られることを確認したが、その他の方法を用いることで直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.5nm以下)が得られないような場合には、絶縁膜20の表面をCMPなどで研磨することもできる。
【0084】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図、図12は同ヘッドの液室短手方向に沿う模式的断面説明図である。このインクジェットヘッドは、上記第1実施形態で振動板10の電極側表面に形成した絶縁膜(熱酸化膜)20のうちの電極基板3(第二シリコン基板)との接合部にあたる部分を除去したものである。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0085】このように流路基板1と電極基板3との接合部分で熱酸化膜20を除去することにより、パターニング工程などの追加が必要になるが、接合温度の低温化及び接合信頼性のさらなる向上が図れる。
【0086】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの第3実施形態について図13及び図14を参照して説明する。なお、図13は同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図、図13は同ヘッドの液室短手方向に沿う模式的断面説明図である。このインクジェットヘッドは、上記第1実施形態における振動板10の電極側表面に絶縁膜(熱酸化膜)20を形成しないものである。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0087】この実施形態のヘッドの場合、振動板10が電極側絶縁膜17に当接するまで変位させる当接駆動方式で駆動したとき、振動板10の電極15と対向する面、すなわち絶縁膜17と接する面が極めて表面粗さの小さい良好な表面性を持つ研磨加工面であるため、絶縁膜17の絶縁破壊に対して高い信頼性を保証することができる。
【0088】そこで、この第3実施形態のインクジェットヘッドを製造する本発明に係る製造方法について図15以降を参照して説明する。先ず、本発明に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の製造方法の第6実施形態について図15をも参照して説明する。なお、図1515(a)、(b)と(c)以降とでは縮尺を異ならせて図示している。まず、図15(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。なお、拡散方法は、この他にBBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などを用いることもできる。
【0089】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41の形成の際、シリコン基板31の最表面に厚さが約150nmのガラス層43が形成され、ガラス層43と高濃度Bドープシリコン層41との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層42が形成された。なお、ガラス層は周知の通りフッ酸水溶液で除去可能であるが、合金層42はフッ酸水溶液で除去できず、また、合金層42は親水性を示し、この合金層42が露出した面では直接接合することができない。
【0090】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43表面側から、CMP(Chemical-MechaNical-POlishiNg)を行って、ガラス層43及び合金層42を完全に除去する。このCMPの方法は前述した図6で説明したと同様である。
【0091】このCMPによりガラス層43及び合金層42は完全に除去され、研磨後の研磨面(高濃度Bドープシリコン層41の表面)は撥水性を示した。研磨面は,原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得た。
【0092】次いで、図15(c)に示すように、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。なお、第二シリコン基板32のギャップ寸法Gは0.2μmに形成されている。
【0093】この接合工程は、次のとおりである。第一、第二シリコン基板31、32を硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合したもの)で、温度100℃にて洗浄し、乾燥後、第一シリコン基板31と第二シリコン基板32を重ね合わせ、窒素雰囲気中にて900℃−2時間加熱処理を行う。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0094】その後、同図(d)に示すように、貼り合わされた基板33の第一シリコン基板31にLP−CVDによりシリコン窒化膜44を形成し、このシリコン窒化膜44に加圧室6及び共通液室8などの液室パターンをフォトリソグラフィー、エッチング技術によりパターニングする。
【0095】次いで、基板33をKOH(10wt/%)水溶液に浸し、シリコンをエッチングする。シリコン窒化膜44の開口部からエッチングが進み、ボロン濃度が1E2−/cm3である深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、高濃度ボロンドープシリコンからなる振動板10が形成される。振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.1μmのバラツキに抑えることができた。なお、このバラツキにはCMP工程時に起因したバラツキが±0.05μm入っている。
【0096】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層及びシリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、ガラス層及び合金層の除去及び接合面となる拡散面の直接接合可能な表面性の形成を一括して行うことができ、短工程で高信頼性の直接接合が可能になる。
【0097】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第7実施形態について図16をも参照して説明する。まず、前記第6実施形態と同様に、図16(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0098】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すようにCMPを行って合金層42を完全に除去する。なお、ここでのCMPは、スラリー液としてコロイダルシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:10に希釈したものを用い、また、研磨時間を2分間にした以外は、第5実施形態(第1実施形態を引用)と同様にして行った。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0099】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0100】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。これにより、CMP工程時に起因したバラツキは±0.02μmに抑えられた。これはガラス層43を完全に除去してからCMPを施したためガラス層43の初期膜厚、及びガラス層43の研磨バラツキを排除できるためである。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0101】このように、高濃度P型不純物拡散後、ガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をCMPなどの研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0102】次に、本発明の第8実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図17をも参照して説明する。まず、前記各実施形態と同様に、図17(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0103】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0104】そこで、同図(d)に示すように、フッ酸(HF:10%)水溶液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は前記第7実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0105】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0106】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.07μmのバラツキに抑えることができた。
【0107】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して、CMP等の研磨法で研磨除去することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0108】次に、本発明の第9実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図18をも参照して説明する。まず、図18(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、固体拡散工程によりボロンを拡散するとき、1150℃−1時間のドライブの内、最初の50分間を窒素ガス主体(ガス流量比O2:N2=0.25:1)のドライブ、残り10分間及び降温中(750℃迄3℃/min.で降温)を酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブとした結果、ピーク値が2E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層41が得られ、高濃度Bドープシリコン層41上に厚さが約200nmのガラス層43のみが形成される。
【0109】このとき、ガラス層43上に前述した合金層が形成されないのは、合金層は前記の酸素ガス主体(ガス流量比O2:N2=1:0)のドライブ中に酸化され、ガラス層43の一部となるためである。
【0110】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、前記第3実施形態と同様にして、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は前記第6実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0111】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0112】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。なお、第3実施形態に比べて僅かにバラツキが増加するのは、合金層の酸化工程が拡散中の場合、ガス切り替え時にガスの流れに不安定さが生じるためであると考えられる。
【0113】このように、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、このガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して、高濃度P型不純物拡散面を研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0114】次に、本発明の第10実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図19をも参照して説明する。まず、前記と同様に、図19(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0115】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43表面からCMPを行ってガラス層43を研磨する。なお、研磨時間は1分間とした。このとき、ガラス層43をウエハ全面に残存させる。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0116】そして、図19(c)に示すように、第一シリコン基板31のガラス層43と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0117】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.05μmのバラツキに抑えることができた。ただし、ギャップ長(振動板10と電極15との間の距離)のバラツキは他の実施形態がウエハ面内で0.2±0.01μmであったのに対し、この実施形態では0.2±0.04μmと大きくなった。
【0118】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去して、第二シリコン基板と直接接合することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0119】次に、本発明の第11実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について図20を参照して説明する。まず、前記各実施形態と同様に、図20(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ200μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板31の片側に、例えば固体拡散法(気相拡散法、イオン注入法、塗布拡散法などでも良い。)によりボロン(B)を拡散する。
【0120】次いで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板31をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層43を除去した後、同図(c)に示すように、合金層42を熱酸化する(酸素及び水蒸気雰囲気、750℃−1hrの条件)することにより、合金層42は酸化(B2O3及びSiO2)され、フッ酸水溶液でエッチング除去可能な酸化層45となる。
【0121】そこで、同図(d)に示すように、HF:HNO3:H2Oの体積比1:100:100の混合液にて酸化層45を除去し、高濃度Bドープシリコン層41を露出させ、高濃度Bドープシリコン層41の表面からCMPを行って研磨した。なお、CMPの条件は前記第7実施形態で説明したのと同様である。これにより、研磨面は、原子間力顕微鏡により測定した結果、高信頼度の直接接合が可能な表面ラフネス値(Ra=0.17nm)を得られた。
【0122】そして、第6実施形態と同様(図15(c)参照)にして、第一シリコン基板31の高濃度Bドープシリコン層41と、電極15が形成された第二シリコン基板32を向かい合わせて直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0123】次に、第6実施形態と同様(図15(d)、(e)参照)にして振動板10を形成した。この結果、振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.09μmのバラツキに抑えることができた。
【0124】このように、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去した後研磨することにより、高精度な振動板厚さの制御、高信頼性の直接接合が可能になる。
【0125】次に、本発明の第12実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について説明する。この実施形態は、前記第7実施形態(図16参照)における研磨工程で、CMPに代えて、スピンエッチング法(スピンエッチングとは、回転しているウエハに所望のエッチング液をかけ、全面にわたる均一な処理が可能な湿式処理法である。)による研磨を行ったものである。スピンエッチング法による研磨は、回転しているウエハにHF:HNO3:H2Oの体積比1:100:100の混合液をかけ、合金層42及び高濃度Bドープシリコン層41を約1μmのエッチングを行った。ウエハ全面にわたりエッチング量の均一性は±5%であり、エッチング後の高濃度Bドープシリコン層41の表面ラフネスはRa=0.50nmが得られた。その他の工程及び作用効果は第7実施形態と同様であるので省略する。
【0126】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第13実施形態について図21及び図22をも参照して説明する。まず、図21(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ500μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板61の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。なお、拡散方法は、この他にBBr3を用いた気相拡散法、イオン注入法、B2O3を有機溶媒に分散させウエハ上にスピンコートする塗布拡散法などを用いることもできる。
【0127】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が1.5E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層71が得られ、高濃度Bドープシリコン層71の形成の際、シリコン基板61の最表面に厚さが約150nmのガラス層73が形成され、ガラス層73と高濃度Bドープシリコン層71との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層72が形成された。
【0128】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板61をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層73を除去した後、同図(c)に示すように第一シリコン基板61のガラス層73表面側からCMPを行って合金層72を完全に除去する。
【0129】このCMPでは、スラリー液としてヒュームドシリカを含有するKOHベースのスラリーを脱イオン水にて1:2に希釈したものを用いた。希釈後のスラリー液のpH値は10.8であった。また、研磨パッドにはシリコンウエハの鏡面研磨加工に用いられるソフト型の研磨パッドを用いた。
【0130】なお、スラリーは被研磨材料によって研磨レートが異なってくるため、被研磨材料により最適なスラリーを選定することが好ましい。また、研磨パッドも研磨する基板によって使用するパッドを選定することが好ましい。例えば酸化化膜研磨用などによく使用されるIC1000/SUBAでもよいが、より表面粗さを小さくするにはシリコンウエハの鏡面研磨加工や仕上げ研磨用に用いられるソフト型の研磨パッド(サーフィンなど)を用いた方が好ましい。また、被研磨基板にパターニングが施されている場合、パッドが柔らかいことにより、凹パターンのボトム面も研磨され凹形状が変化してしまうことが許されない場合は、逆にIC1000/SUBAやそれ以上に硬いタイプのパッドを使用することにより接合面のみを研磨することが可能である。
【0131】そして、研磨条件として、テーブル速度/キャリア速度=38rpm/25rpm、研磨加圧=100g/cm2研磨時間=2分(なお、研磨レートはガラス層において45nm/min.であった)
として、研磨を行った後、ウエハの洗浄を行った。
【0132】この洗浄は、スクラブ洗浄を(1%HFディップ)1分間、純水リンスを20分間施した。さらにクリーン度を求めるなら、汚染物(contamination)除去として硫酸過水(H2SO4:H2O2::H2O=1:1:5)洗浄やアンモニア過水洗浄(NH4OH:H2O:H2O=1:1:5)などをこれに加えることが好ましい。
【0133】この研磨加工により、合金(SiB4〜6)層72を研磨除去すると共に、信頼性の高い直接接合が可能な表面粗さ(原子間力顕微鏡により測定した結果、表面粗さ(Ra=0.2nm:測定エリアは10μm□))をもつ高濃度Bドープシリコン層71が得られる。
【0134】この研磨加工では、合金層72とその下の高濃度Bドープシリコン層71の一部を研磨除去したことになるが、高濃度Bドープシリコン層71の研磨除去量(厚さ)の変動はそのまま振動板厚さの変動となるため、高い精度で研磨除去量を管理する必要がある。そのためには、研磨量を小さく(好ましくは2000Å以下に)抑える。ここでは、高濃度Bドープシリコン層71の研磨量(とり代)は900Åで研磨量のばらつきは±150Å以下であった。
【0135】次に、図22(a)に示すように、凹部14、電極15などを形成した第二シリコン基板62と、第一シリコン基板61の表面を研磨した高濃度ボロンドープシリコン層71を接合面として直接接合した。具体的には、第一及び第二シリコン基板61、62を硫酸過水(硫酸と過酸化水素水を体積比2:1で混合、温度100℃)にて洗浄し、乾燥後、第一及び第二シリコン基板61、62を減圧下(室温)で重ね合わせ、窒素雰囲気中にて900℃−1時間加熱処理を行い、両基板61、62を直接接合した。その結果、ボイドが無く、ギャップ寸法を高精度に保つ、強固な接合状態が得られた。
【0136】次いで、同図(b)に示すように、厚さ500μmの第一シリコン基板61を厚さ100μmまで研磨によって薄くする。その後、同図(c)に示すように、接合した基板63全体にLP−CVDによりシリコン窒化膜74を形成し、シリコン窒化膜74上にレジストをコートし、露光、現像により吐出室6や共通インク室8などの液室形状のレジストパターンを形成する。このとき、第二シリコン基板62の電極15と吐出室のパターンの位置が一致するようにIR光によりアライメントする。そして、同図(d)に示すように、レジストの開口部のシリコン窒化膜74をドライエッチによりエッチング除去し、レジストを除去する。
【0137】そして、基板63をKOH(10wt%)水溶液に浸し、シリコンをエッチングする。パターニングした側の開口部からエッチングが進みボロン濃度が1E20/cm3である深さに達した時エッチングがストップ(エッチレートが極端に下がり)し、同図(e)に示すように、高濃度ボロンドープシリコン層から成る振動板10及び吐出室6等が形成される。
【0138】このようにして形成された振動板10の厚さはウエハ面内において2μm±0.1μmのバラツキに抑えることができた。なお、このバラツキにはCMP工程時に起因したバラツキ(±0.015μm)が含まれている。
【0139】次に、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法の第14実施形態について図23をも参照して説明する。まず、同図(a)に示すように、両面鏡面研磨した、厚さ500μm、結晶面方位(110)の第一シリコン基板61の片側に、例えば固体拡散法によりボロン(B)を拡散する。
【0140】この固体拡散として、1150℃(O2:N2=0.25:1)で1時間の拡散を行った結果、ピーク値が1.5E20/cm3、深さ2.0μmで1E20/cm3である高濃度Bドープシリコン層71が得られ、高濃度Bドープシリコン層71の形成の際、シリコン基板61の最表面に厚さが約150nmのガラス層73が形成され、ガラス層73と高濃度Bドープシリコン層71との間には厚さが約30nmのシリコン−ボロン合金(SiB4〜6)層72が形成された。
【0141】そこで、同図(b)に示すように、第一シリコン基板61をフッ酸(HF:10%)水溶液に15分間浸してガラス層73を除去した後、同図(c)に示すように、合金層72及びその下の結晶欠陥を多く含むシリコン層を酸化して酸化膜75を形成する。酸化条件は、800℃(O2ガス6sccm、H2ガス9sccm)60分で行った。この酸化工程は800℃以下の低温で酸化することが好ましい。これにより、後工程のアルカリ異方性エッチングのストップ位置に影響を与えるボロン濃度プロファイルが変化することを抑制し、かつ高温で起こりやすい結晶欠陥の伝播を抑制することができる。ここでは、1200Åの酸化膜75が形成された。そこで、この酸化膜75をフッ酸(HF:10%)水溶液で除去し、表面粗さ(Ra=0.9nm:測定エリアは10μm□)をもつ高濃度Bドープシリコン層71が得られる。
【0142】このままでは、まだ信頼性の高い直接接合を行えるレベルの表面粗さにないため、前記第13実施形態とほぼ同様の手順で表面を研磨加工する。酸化工程により合金層72及び欠陥層を除去しているため、研磨レートを極めて安定に保つことができ、第8実施形態よりも研磨加工精度を向上させることができる。ここでの研磨条件は、スラリー液にはヒュームドシリカを含有するKOHベースのスラリー(SEMI-SPRESE25:商品名)を脱イオン水にて1:1に希釈したものを用いた。
【0143】ここでの研磨条件は、次のとおりとした。
テーブル速度/キャリア速度=38rpm/25rpm研磨加圧=125g/cm2研磨時間=1分(なお、研磨レートは70nm/min.であった。)
【0144】この研磨加工により、信頼性の高い直接接合が可能な表面粗さ(原子間力顕微鏡により測定した結果、表面粗さ(Ra=0.15nm:測定エリアは10μm□))をもつ高濃度Bドープシリコン層71が得られた。また、本実施形態では、研磨量(とり代)は700Åで研磨時間は1分間であるが、研磨量のばらつきはウエハ面内にて±50Å以下であった。
【0145】以下、第13実施形態と同様(図22参照)にして振動板を形成した。
【0146】
【0147】なお、上記各実施形態においては本発明を静電型インクジェットヘッドに適用した例で説明したが、インク滴を吐出するインクジェットヘッド以外にも、例えば液体レジストを吐出するための液滴吐出ヘッドなどにも同様に適用することができる。
【0148】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去するので、短工程で高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0149】請求項2の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を研磨除去するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上する。
【0150】請求項3の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して酸化層を除去し、高濃度P型不純物拡散面を研磨するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドのヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0151】請求項4の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して研磨するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0152】請求項5の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去し、この研磨面を接合面とするので、極めて高精度に振動板厚さを制御できて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上する。
【0153】請求項6の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去して研磨するので、高信頼性の直接接合が可能になり、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上する。
【0154】請求項7の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去し、研磨面に絶縁膜を形成するので、短工程で高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0155】請求項8の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を研磨除去し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0156】請求項9の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層を酸化して酸化層を除去し、高濃度P型不純物拡散面を研磨し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドのヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0157】請求項10の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化し、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去して研磨し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高精度に振動板厚さを制御できるとともに、高信頼性の直接接合を行うことができて、ヘッドの高密度化を図れ、信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0158】請求項11の発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去し、シリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去して研磨し、研磨面に絶縁膜を形成するので、高信頼性の直接接合が可能になり、ヘッドの高密度化を図れ、ヘッドの信頼性が向上するとともに、絶縁破壊、ショートに対する信頼性も向上して安定した振動板変位特性が得られる。
【0159】これらの絶縁膜を形成する工程を含む本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法において、少なくとも第二シリコン基板との接合部の絶縁膜を除去することで、接合温度の低温化及び接合信頼性の更なる向上を図れる。また、絶縁膜が熱酸化膜であることで、耐絶縁性及び更なる信頼性の向上を図れる。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことで、高い信頼性での直接接合が容易になる。
【0160】これらの各発明の液滴吐出ヘッドの製造方法においては、高濃度P型不純物として高濃度ボロンを用いることで、製造工程が容易になる。また、研磨工程では、スラリー液に水酸基を有する水溶液を用いた化学的機械的研磨法で研磨することにより、高精度の表面性を得ることができる。また、研磨工程では、スピンエッチング法で研磨することにより、簡易で安価のプロセスとなり、ヘッドの低コスト化を図れる。
【0161】本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二の基板がいずれもシリコン基板からなり、第一、第二基板は、少なくとも一方の研磨加工された面を接合面として、直接接合されている構成としたので、高信頼性の直接接合が可能になって、ヘッドの高精度化、高密度化を図れ、高信頼性を向上することができる。
【0162】ここで、振動板の電極に対向する面には研磨面を有する絶縁膜を形成することにより、絶縁破壊、ショートに対する信頼性が向上し、安定した振動板変位特性を得ることができる。また、振動板が高濃度P型不純物シリコン層から構成されていることで、高精度に振動板厚さを制御することができる。さらに、研磨加工された面の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことで、高い信頼性で直接接合することができる。
【0163】本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、少なくとも振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二基板とを重ねて接合した積層構造をなし、第一基板はシリコン基板からなりかつ研磨加工されたP型不純物拡散層を有し、振動板の電極に対向する面には、P型不純物拡散層の研磨面に形成された絶縁膜がある構成としたので、高信頼性の直接接合が可能になって、絶縁破壊、ショートに対する信頼性が向上し、ヘッドの高精度化、高密度化を図れ、信頼性を向上することができる。
【0164】ここで、少なくとも第二シリコン基板との接合部の絶縁膜が除去されていることで、接合温度の低温化及び接合信頼性が更に向上する。また、絶縁膜が熱酸化膜であることで、耐絶縁性及び信頼性が更に向上する。さらに、絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことで、高い信頼性での直接接合が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第1実施形態を示す分解斜視説明図
【図2】同ヘッドのノズル板を透過状態で示す上面説明図
【図3】同ヘッドの振動板長手方向に沿う模式的断面説明図
【図4】同ヘッドの振動板短手方向に沿う模式的断面説明図
【図5】本発明に係るヘッドの製造方法の第1実施形態の説明に供する説明図
【図6】図5の研磨工程の説明に供する説明図
【図7】本発明に係るヘッドの製造方法の第2実施形態の説明に供する説明図
【図8】本発明に係るヘッドの製造方法の第3実施形態の説明に供する説明図
【図9】本発明に係るヘッドの製造方法の第4実施形態の説明に供する説明図
【図10】本発明に係るヘッドの製造方法の第5実施形態の説明に供する説明図
【図11】本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第2実施形態を示す振動板長手方向に沿う模式的断面説明図
【図12】同ヘッドの振動板短手方向に沿う模式的断面説明図
【図13】本発明に係る液滴吐出ヘッドとしての静電型インクジェットヘッドの第3実施形態を示す振動板長手方向に沿う模式的断面説明図
【図14】同ヘッドの振動板短手方向に沿う模式的断面説明図
【図15】本発明に係るヘッドの製造方法の第6実施形態の説明に供する説明図
【図16】本発明に係るヘッドの製造方法の第7実施形態の説明に供する説明図
【図17】本発明に係るヘッドの製造方法の第8実施形態の説明に供する説明図
【図18】本発明に係るヘッドの製造方法の第9実施形態の説明に供する説明図
【図19】本発明に係るヘッドの製造方法の第10実施形態の説明に供する説明図
【図20】本発明に係るヘッドの製造方法の第11実施形態の説明に供する説明図
【図21】本発明に係るヘッドの製造方法の第13実施形態の説明に供する説明図
【図22】図21に続く工程の説明に供する説明図
【図23】本発明に係るヘッドの製造方法の第14実施形態の説明に供する説明図
【符号の説明】
1…流路基板、3…電極基板、4…ノズル板、5…ノズル、6…液室、10…振動板、15…電極、20…絶縁膜、31、61…第一シリコン基板、32、62…第二シリコン基板、41、71…高濃度ボロンドープシリコン層、42、72…シリコン−ボロン合金層、43、73…ガラス層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項9】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項12】 請求項7乃至11のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、少なくとも第二シリコン基板との接合部の前記絶縁膜が除去されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】 請求項7乃至12のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記絶縁膜が熱酸化膜であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】 請求項7乃至13のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】 請求項1乃至14のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記高濃度P型不純物が高濃度ボロンであることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】 請求項1乃至15のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記研磨工程では、スラリー液に水酸基を有する水溶液を用いた化学的機械的研磨法で研磨することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】 請求項1乃至16のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記研磨工程では、スピンエッチング法で研磨することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板を設けた第一基板と前記電極を設けた第二の基板がいずれもシリコン基板からなり、第一、第二基板は、少なくとも一方の研磨加工された面を接合面として、直接接合されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項19】 請求項18に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板の電極に対向する面には研磨面を有する絶縁膜が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項20】 請求項18又は19に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板が高濃度P型不純物シリコン層から構成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項21】 請求項18乃至20のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記研磨加工された面の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項22】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも前記振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二基板とを重ねて接合した積層構造をなし、第一基板はシリコン基板からなりかつ研磨加工されたP型不純物拡散層を有し、前記振動板の電極に対向する面には、前記P型不純物拡散層の研磨面に形成された絶縁膜があることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項23】 請求項22に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも第二基板との接合部の前記絶縁膜が除去されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項24】 請求項22又は23に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記絶縁膜が熱酸化膜であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項25】 請求項22乃至24のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項1】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層の一部を研磨除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層と前記電極を設けた第二シリコン基板とを向かい合わせて直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を研磨除去する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項9】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、このシリコン−ボロン合金層の酸化層を除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成しながらかつシリコン−ボロン合金層を酸化する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層及びシリコン−ボロン合金層を酸化した層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法において、第一シリコン基板の片側に高濃度P型不純物拡散層を形成する工程と、この第一シリコン基板の高濃度P型不純物拡散層表面のガラス層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散層表面に形成されたシリコン−ボロン合金層をウエットエッチングで除去する工程と、前記高濃度P型不純物拡散面を研磨する工程と、この高濃度P型不純物拡散層表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第一シリコン基板と電極を設けた第二シリコン基板とを直接接合により貼り合わせる工程と、第二シリコン基板と貼り合わせられた第一シリコン基板をアルカリ異方性エッチングして前記振動板を形成する工程とを含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項12】 請求項7乃至11のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、少なくとも第二シリコン基板との接合部の前記絶縁膜が除去されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】 請求項7乃至12のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記絶縁膜が熱酸化膜であることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】 請求項7乃至13のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】 請求項1乃至14のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記高濃度P型不純物が高濃度ボロンであることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】 請求項1乃至15のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記研磨工程では、スラリー液に水酸基を有する水溶液を用いた化学的機械的研磨法で研磨することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】 請求項1乃至16のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記研磨工程では、スピンエッチング法で研磨することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板を設けた第一基板と前記電極を設けた第二の基板がいずれもシリコン基板からなり、第一、第二基板は、少なくとも一方の研磨加工された面を接合面として、直接接合されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項19】 請求項18に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板の電極に対向する面には研磨面を有する絶縁膜が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項20】 請求項18又は19に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板が高濃度P型不純物シリコン層から構成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項21】 請求項18乃至20のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記研磨加工された面の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項22】 液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室と、この液室の壁面を形成する振動板と、この振動板を変位変形をさせることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも前記振動板を設けた第一基板と電極を設けた第二基板とを重ねて接合した積層構造をなし、第一基板はシリコン基板からなりかつ研磨加工されたP型不純物拡散層を有し、前記振動板の電極に対向する面には、前記P型不純物拡散層の研磨面に形成された絶縁膜があることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項23】 請求項22に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも第二基板との接合部の前記絶縁膜が除去されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項24】 請求項22又は23に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記絶縁膜が熱酸化膜であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項25】 請求項22乃至24のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記絶縁膜の表面粗さがRa=0.5nmを越えないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図10】
【図15】
【図16】
【図18】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図10】
【図15】
【図16】
【図18】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2002−96480(P2002−96480A)
【公開日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−172127(P2001−172127)
【出願日】平成13年6月7日(2001.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年6月7日(2001.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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