説明

液滴吐出装置およびインクの検査方法

【課題】装置内におけるカラーフィルター用インク中に含まれる異物を検出することが可能な液滴吐出装置、および、インクの検査方法を提供すること。
【解決手段】液滴吐出装置100は、液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むインク2を吐出する液滴吐出装置100であって、インク2を貯留する1次インク貯留槽132と、1次インク貯留槽132から送液されたインク2を貯留する2次インク貯留槽150と、2次インク貯留槽150から送液されたインク2を吐出する液滴吐出ヘッド114と、超音波の伝播速度の度合いを測定することによってインク2中の異物を検出する異物検出手段152とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置およびインクの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造の過程で形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法では、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
顔料は、一般に、染料に比べて耐光性等に優れる等の特徴を有しているため、カラーフィルター用インクにおいては、着色剤として、顔料が広く用いられている。また、カラーフィルターの製造においては、通常、光の三原色(赤色、緑色、青色)に対応する3色のインク(カラーフィルター用インク)が用いられる。
【0004】
ところで、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、大量生産を行うため、大量の液滴を長時間にわたって連続で吐出することが求められる。このため、長時間にわたってインクを装置内に貯留することが行われる。しかしながら、インク中には、通常、着色剤や液性媒体の他に硬化性樹脂等の硬化性成分が含まれているため、長時間装置内に貯留すると、着色剤の分散が壊れて結晶状の析出物が発生したり、硬化性成分の一部が反応して固形やゲル状の異物が発生してしまうといった問題があった。その結果、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まりを起こしやすく、液滴の飛行曲がりを頻発する。このような場合、カラーフィルター用インクを所望の部位に、所望の量だけ付与することが困難となり、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、装置内におけるカラーフィルター用インク中に含まれる異物を検出することが可能な液滴吐出装置、および、インクの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むインクを吐出する液滴吐出装置であって、
前記インクを貯留する1次インク貯留槽と、
前記1次インク貯留槽から送液された前記インクを貯留する2次インク貯留槽と、
前記2次インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する液滴吐出ヘッドと、
超音波の伝播速度の度合いを測定することによって前記インク中の異物を検出する異物検出手段とを有することを特徴とする。
これにより、装置内におけるカラーフィルター用インク中に含まれる異物を検出することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0008】
本発明の液滴吐出装置では、前記異物検出手段は、前記2次インク貯留槽に設けられていることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドに近い位置でインクの状態を検知することができ、液滴吐出ヘッドの目詰まりをより確実に防止することができる。その結果、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうのを防止することができる。
【0009】
本発明の液滴吐出装置では、前記異物検出手段は、前記2次インク貯留槽の前記インクの出口近傍に設けられていることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドにより近い位置でインクの状態を検知することができ、液滴吐出ヘッドの目詰まりをより確実に防止することができる。その結果、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうのを防止することができる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置では、前記2次インク貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへ前記インクを搬送する搬送路を有し、
前記搬送路に前記異物検出手段が設けられていることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドにより近い位置でインクの状態を検知することができ、液滴吐出ヘッドの目詰まりをより確実に防止することができる。その結果、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうのを防止することができる。
本発明の液滴吐出装置では、前記液性媒体を貯留する液性媒体貯留槽と、
前記液性媒体貯留槽中の前記液性媒体に対して超音波を照射し、その超音波の伝播速度を測定する伝播速度測定手段とを有することが好ましい。
これにより、より精度高くインク中に異物を検出することが可能となる。
【0011】
本発明のインクの検査方法は、液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むインクを吐出する液滴吐出装置内のインクの検査方法であって、
前記液滴吐出装置は、前記インクを貯留する1次インク貯留槽と、
前記1次インク貯留槽から送液された前記インクを貯留する2次インク貯留槽と、
前記2次インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する液滴吐出ヘッドと、
超音波の伝播速度の変化を測定することによって前記インク中の異物を検出する異物検出手段とを有し、
前記異物検出手段によって前記液滴吐出装置中の前記インクに照射された前記超音波の伝播速度を測定することで前記インク中に異物が存在するかどうかを判断することを特徴とする。
これにより、容易にインク中の異物を検出することができる。その結果、液滴吐出ヘッドの目詰まりによる液滴の飛行曲がりを未然に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じるのを防止することができる。
【0012】
本発明のインクの検査方法では、前記液滴吐出装置は、さらに、前記液性媒体を貯留する液性媒体貯留槽と、
前記液性媒体貯留槽中の前記液性媒体に対して超音波を照射し、その超音波の伝播速度を検出する伝播速度測定手段とを有し、
前記液性媒体を含む基準溶液の前記超音波の伝播速度の度合いを基準とし、当該基準と、前記インクの前記超音波の伝播速度の変化を比較して、前記インク中に異物が存在するかどうかを判断することが好ましい。
これにより、容易にかつより精度よくインク中の異物を検出することができる。その結果、液滴吐出ヘッドの目詰まりによる液滴の飛行曲がりを未然に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置の好適な実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図3】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図4】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図5】図1に示す液滴吐出装置におけるインク貯留部の第1実施形態を示す模式図である。
【図6】図1に示す液滴吐出装置におけるインク貯留部の第2実施形態を示す模式図である。
【図7】図1に示す液滴吐出装置におけるインク貯留部の第3実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《第1実施形態》
<液滴吐出装置>
まず、本発明の液滴吐出装置の第1実施形態について説明する。
図1は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置の好適な実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図3は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図4は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図、図5は、図1に示す液滴吐出装置におけるインク貯留部の第1実施形態を示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2(以下単にインク2ともいう)を貯留するインク貯留部101と、インク貯留部101に接続されたインク搬送路110と、インク搬送路110を介してインク貯留部101からインク2が供給される吐出走査部102とを備える。なお、インク2は、着色剤と、樹脂材料と、着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むものである。
【0016】
吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。2次インク貯留槽150と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、インク搬送路110で連結されており、2次インク貯留槽150から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれにインク2が圧縮空気によって供給される。
【0017】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、インク2を付与すべきセルを有する基板をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0018】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0019】
図2に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0020】
図3に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50μm以上90μm以下とすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0021】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100μm以上180μm以下とすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図3の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0022】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0023】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からはインク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118がインク2を吐出するノズルとして機能する。
【0024】
図2に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0025】
図に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、2次インク貯留槽150から孔131を介して供給されるインク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0026】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129からインク2が供給される。
【0027】
また、ノズルプレート128のノズル118付近は、フッ化アルキル基を有するシリカ膜で表面付近が覆われている。これにより、ノズル118は、撥液性に優れたものとなり、インク2を特に好適にはじくことができる。特に、ノズルプレート128がこのようなシリカ膜を有することで、ノズル118付近での固形分の強固な付着を防ぐことができる。このため、確実に液滴吐出時の飛行曲がりの発生や、液滴量の変動、ノズル118の目詰まりを確実に防止することができ、極めて長期にわたって、インク2の液滴の吐出性を特に優れたものとすることができる。
【0028】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118からインク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向にインク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0029】
制御手段112(図1参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出されるインク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
【0030】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出する構成であってもよい。
【0031】
図5に示すように、インク貯留部101は、1次インク貯留槽132と、2次インク貯留槽150と、1次インク貯留槽132に貯留したインク2を2次インク貯留槽150に搬送するための搬送路(チューブ)134と、2次インク貯留槽150の側面に設けられた管路151と、インク2中の異物を検出する異物検出手段152とを有している。
1次インク貯留槽132には、インク2が貯留されている。液滴吐出時においては、チューブ134によって、2次インク貯留槽150へ、インク2が搬送される。そして、2次インク貯留槽150に搬送されたインク2は、貯留された後、上述した搬送路110を介して液滴吐出ヘッド114へと搬送される。
この1次インク貯留槽132は、インク2の温度安定やインク2中の残存ガスの除去等の目的のために設けられる槽である。
【0032】
2次インク貯留槽150は、液滴吐出時において、1次インク貯留槽132から送液されたインク2を一時的に貯留する機能を備えている。このように1次インク貯留槽132と2次インク貯留槽150とに分けることにより、カラーフィルターの製造時において、インク2の切り替えを容易にすることができるとともに、液滴吐出ヘッド114へ送液を調整することができる。
この2次インク貯留槽150は、インクを吐出するために一旦インクを高い位置に上げる、すなわち、水頭値の調整等を目的として設けられる槽である。
【0033】
図5に示すように、2次インク貯留槽150の側面には、管路151が設けられている。
管路151は、コ字状をなしており、図5に示すように、その両端が、2次インク貯留槽150のインク2が貯留されている部位に対応する側部に接続されている。
この管路151には、異物検出手段152が設けられている。この異物検出手段152は、管路151内のインク2中に超音波を照射し、インク2中を伝わった超音波の伝播速度を測定し、その変化の度合い(加速・減速)によってインク2中に異物があるかどうかを検出する機能を有する装置である。一般に、音波の伝播速度は密度に比例するため、インク中に固形やゲル状の高密度の析出物が発生した場合に伝播速度に変化が生じる。その結果インク中における異物の経時的は変化を検出することが可能となる。
【0034】
ところで、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、大量生産を行うため、大量の液滴を長時間にわたって連続で吐出することが求められる。このため、長時間にわたってインクを装置内に貯留することが行われる。しかしながら、インク中には、通常、着色剤や液性媒体の他に硬化性樹脂等の硬化性成分が含まれているため、長時間装置内に貯留すると、着色剤の分散が壊れて結晶状の析出物が発生したり、硬化性成分の一部が反応して固形状やゲル状の異物が発生してしまうといった問題があった。その結果、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まりを起こしやすく、液滴の飛行曲がりを頻発する。このような場合、カラーフィルター用インクを所望の部位に、所望の量だけ付与することが困難となり、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうという問題があった。
【0035】
これに対して、液滴吐出装置100は、上述したように、2次インク貯留槽150(管路151)内のインク2中の異物を超音波の伝播速度の変化によって検出する検出手段が設けられている。このため、インク2中の硬化性成分の一部が反応して固形状やゲル状の異物が発生してしまった場合、即時に検出することができ、そのようなインク2の排出、インク2の交換や液滴吐出装置100内の洗浄等の時期を容易に検知することができる。その結果、液滴吐出ヘッド114の目詰まりを防止し、液滴の飛行曲がりを防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうのを防止することができる。
【0036】
本実施形態では、異物検出手段152は、図5に示すように、2次インク貯留槽150のインク2の出口近傍に設けられている。これにより、液滴吐出ヘッド114に近い位置でインク2の状態を検知することができ、液滴吐出ヘッド114の目詰まりをより確実に防止することができる。その結果、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうのを防止することができる。
【0037】
また、管路151内の異物検出手段152によって超音波が照射される部位近傍にはメッシュ状のフィルタ(図示せず)が設けられている。当該部位にメッシュ状のフィルタを有することにより、フィルタに異物が引っかかることで、より高感度で異物の検出を行うことができる。
なお、異物検出手段152によって測定された超音波の伝播速度の結果は、図5に示す制御部153に送られ、その結果に基づいて当該制御部153によって液滴の吐出が制御される。
【0038】
なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、インク2を保持する2次インク貯留槽150、インク搬送路110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルターが有する複数色の着色部に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルターの製造においては、複数色のインク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
【0039】
<インクの検査方法>
本実施形態のインクの検査方法は、上述したような液滴吐出装置100内のインク2を検査する方法であって、異物検出手段152により、インク2に超音波を照射し、その超音波の伝播速度の度合いを測定する工程と、その測定結果に基づいて、インク2中に異物が存在するかどうかを判断する工程とを有する。
このような方法を用いることにより、容易にインク2中の異物を検出することができる。その結果、液滴吐出ヘッド114の目詰まりによる液滴の飛行曲がりを未然に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じるのを防止することができる。
【0040】
《第2実施形態》
<液滴吐出装置>
次に、液滴吐出装置の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、前述した第1実施形態と異なる点について説明し、同様な構成についてはその説明を省略する。
図6は、図1に示す液滴吐出装置におけるインク貯留部の第2実施形態を示す模式図である。
【0041】
本実施形態では、図6に示すように、液滴吐出装置100が、インク2を構成する液性媒体を含む基準溶液3を貯留する基準溶液貯留槽160と、基準溶液貯留槽160の側面に設けられた管路161と、基準溶液貯留槽160中の基準溶液3に対して超音波を照射し、その超音波の伝播速度を測定する伝播速度測定手段162とを有している点で、前述した第1実施形態と異なっており、他の構成については、前述した第1実施形態と同様である。
【0042】
基準溶液貯留槽160は、インク2を構成する基準溶液3を貯留する機能を有しており、上述した2次インク貯留槽150と同様の環境に設置されている。したがって、内部の基準溶液3は、2次インク貯留槽150内のインク2と同様の条件で貯留されている。
管路161は、コ字状をなしており、図6に示すように、その両端が、基準溶液貯留槽160の基準溶液3が貯留されている部位に対応する側部に接続されている。
この管路161には、伝播速度測定手段162が設けられている。この伝播速度測定手段162は、基準溶液貯留槽160中の基準溶液3に対して超音波を照射し、その超音波の伝播速度を測定し、その測定結果を制御部153に送る機能を備えている。
【0043】
本実施形態では、このような構成とすることにより、2次インク貯留槽150のインク2と同様の環境中に置かれた基準溶液3の超音波の伝播速度の度合いを基準とし、その基準と異物検出手段152よるインク2の超音波の伝播速度の度合いとを比較し、インク2中に異物が存在するかどうかを判断する。このため、より精度高くインク2中に異物を検出することが可能となる。
【0044】
<インクの検査方法>
本実施形態のインクの検査方法は、上述したような第2実施形態に係る液滴吐出装置100内のインク2を検査する方法であって、伝播速度測定手段162によって基準溶液貯留槽160中の基準溶液3に超音波を照射し、その超音波の伝播速度の度合いを測定する工程と、異物検出手段152によってインク2に超音波を照射し、その超音波の伝播速度の度合いを測定する工程と、基準溶液3の超音波の伝播速度の度合いを基準とし、当該基準とインク2の超音波の伝播速度の度合いとを比較して、インク2中に異物が存在するかどうかを判断する工程とを有している。すなわち、本実施形態では、2次インク貯留槽150のインク2と同様の環境中に置かれた基準溶液3の超音波の伝播速度の度合いをベースラインとして用いる点に特徴を有する。
【0045】
このような方法を用いることにより、温度などによる環境変化の影響を排除できるため容易にかつより精度よくインク2中の異物を検出することができる。その結果、液滴吐出ヘッド114の目詰まりによる液滴の飛行曲がりを未然に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じるのを防止することができる。
なお、本実施形態において、基準溶液には、インクを構成する液性媒体以外にも、インクを構成する硬化性樹脂材料以外の構成成分が含まれていてもよい。
【0046】
《第3実施形態》
<液滴吐出装置>
次に、液滴吐出装置の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、前述した第1、第2実施形態と異なる点について説明し、同様な構成についてはその説明を省略する。
図7は、図1に示す液滴吐出装置におけるインク貯留部の第3実施形態を示す模式図である。
本実施形態では、図7に示すように、異物検出手段152がインク2の搬送路110に設けられている点で、前述した第2実施形態と異なっており、他の構成については、前述した第2実施形態と同様である。
【0047】
このような構成とすることにより、液滴吐出ヘッド114により近い位置でインク2の状態を検知することができ、液滴吐出ヘッド114の目詰まりをより確実に防止することができる。その結果、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像において、色むら、濃度むら等を生じてしまうのを防止することができる。
【0048】
≪カラーフィルター用インク≫
次に、本発明の液滴吐出装置に好適に適用することが可能なカラーフィルター用インクの一例について説明する。
カラーフィルター用インクは、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるインクであり、本発明においては、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
カラーフィルター用インクは、顔料(着色剤)、樹脂材料、前記着色剤が溶解または分散する液性媒体等を含むものである。
【0049】
以下、カラーフィルター用インクの各構成成分について詳細に説明する。
[顔料]
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色部)を有している。顔料は、通常、形成すべき着色部の色調に応じて選択される。
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50,58;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、特に、カラーフィルター用インクが、顔料(緑色顔料)として、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(緑色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、C.I.ピグメントグリーン58は、明度に優れるという特徴を有しているものの、各種顔料の中でも、特に分散性の低い材料であるため、従来において液滴吐出に供するインクに適用する場合には、液滴吐出装置のインクの流路への付着、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まり等の問題を特に生じ易かった。これに対し、本発明では、カラーフィルター用インクがC.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、上記のような問題を好適に解消することができる。すなわち、カラーフィルター用インクがC.I.ピグメントグリーン58を含むものであると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0051】
カラーフィルター用インク中における顔料の含有率は、2wt%以上25wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。
カラーフィルター用インク中に含まれる顔料の平均粒径は、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、20nm以上180nm以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターインクの吐出安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性(耐光性等)を十分に優れたものとし、カラーフィルターにおける発色性、コントラスト等を特に優れたものとすることができる。
【0052】
[液性媒体]
液性媒体(カラーフィルター用インク液性媒体)としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
カラーフィルター用インク中における液性媒体の含有率は、50wt%以上98wt%以下であるのが好ましく、55wt%以上95wt%以下であるのがより好ましく、65wt%以上93wt%以下であるのがさらに好ましい。
【0053】
[樹脂材料]
カラーフィルター用インクは、形成される着色部の基盤に対する密着性向上等の目的で、通常、樹脂材料を含んでいる。
樹脂材料としては、一般に硬化性樹脂(硬化性成分)を用いる。
カラーフィルター用インクが硬化性樹脂を含むものであると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる等の効果が得られるが、長時間装置内に貯留すると、硬化性成分の一部が反応してゲル状の異物が発生してしまうといった問題があった。しかしながら、本発明の装置を用いることでこのような問題を解決することができる。
【0054】
硬化性樹脂は、例えば、エポキシ構造を有するものであるのが好ましい。
このような構造を有する硬化性樹脂を含むものであると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる等の効果が得られるが、カラーフィルター用インクが顔料に加え、硬化性樹脂を含むものであると、従来においては、液滴吐出装置のインクの流路への固形分の付着、液滴吐出ヘッドの吐出部の目詰まり等の問題を特に生じ易かった。これに対し、本発明では、カラーフィルター用インクが上記のような構造を有する硬化性樹脂を含む場合であっても、上記のような問題を好適に解消することができる。すなわち、カラーフィルター用インクが上記のような構造を有する硬化性樹脂を含むものであると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5wt%以上18wt%以下であるのが好ましく、1.0wt%以上15wt%以下であるのがより好ましく、3.0wt%以上12wt%以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
[分散剤]
カラーフィルター用インクは、分散剤を含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができ、より長期間にわたって安定的な液滴吐出を行うことができる。
分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。
【0056】
分散剤のより具体的な例としては、例えば、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、ヒノアクトKF−1000、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、カラーフィルター用インクは、分散剤として、所定の酸価を有する酸価分散剤と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤とを含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0057】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)、ヒノアクトKF−1000(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0058】
また、アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
上記のような分散剤(酸価分散剤およびアミン価分散剤)を用いることにより、形成される着色部の色味に悪影響を与えることなく、インク中における顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
【0059】
酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5KOHmg/g以上370KOHmg/g以下であるのが好ましく、20KOHmg/g以上270KOHmg/g以下であるのがより好ましく、30KOHmg/g以上135KOHmg/g以下であるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
また、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零であるのが好ましい。
【0060】
アミン価分散剤と酸価分散剤とを併用する場合、アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であるのが好ましく、25KOHmg/g以上170KOHmg/g以下であるのがより好ましく、30KOHmg/g以上130KOHmg/g以下であるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。なお、分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
また、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零であるのが好ましい。
【0061】
また、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、カラーフィルター用インク中における酸価分散剤の含有率をX[wt%]、当該カラーフィルター用インク中におけるアミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦X/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0062】
また、酸価分散剤の酸価をAV[KOHmg/g]、アミン価分散剤のアミン価をBV[KOHmg/g]、前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.01≦(AV×X)/(BV×X)≦1.9の関係を満足するのが好ましく、0.10≦(AV×X)/(BV×X)≦1.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
カラーフィルター用インク中における分散剤の含有率は、0.5wt%以上15wt%以下であるのが好ましく、0.6wt%以上8.0wt%以下であるのがより好ましい。
【0063】
[その他の成分]
カラーフィルター用インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、各種架橋剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、各種重合開始剤、酸架橋剤、界面活性剤、増感剤、光安定剤、各種染料、各種分散剤、発光材料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、各種重合促進剤、各種光安定化剤、ガラス、ジルコニア、アルミナ、酸化チタン等のセラミックス、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を用いることができる。
【0064】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4mPa・s以上12mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以上11mPa・s以下であるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの粘度が前記範囲内の値であると、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出されるカラーフィルター用インクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、カラーフィルター用インクの粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0065】
以上、本発明の液滴吐出装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、他の任意の機能を有する部材が付加されていてもよい。
また、液滴吐出装置内における異物検出手段の位置は、前述した実施形態に限定されず、いずれの位置にあってもよい。
【符号の説明】
【0066】
2…インク 3…基準溶液 11…基板 100…液滴吐出装置 101…インク貯留部 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…インク搬送路 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 132…1次インク貯留槽 134…チューブ 150…2次インク貯留槽 151…管路 152…異物検出手段 153…制御部 160…基準溶液貯留槽 161…管路 162…伝播速度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むインクを吐出する液滴吐出装置であって、
前記インクを貯留する1次インク貯留槽と、
前記1次インク貯留槽から送液された前記インクを貯留する2次インク貯留槽と、
前記2次インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する液滴吐出ヘッドと、
超音波の伝播速度の度合いを測定することによって前記インク中の異物を検出する異物検出手段とを有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記異物検出手段は、前記2次インク貯留槽に設けられている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記異物検出手段は、前記2次インク貯留槽の前記インクの出口近傍に設けられている請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記2次インク貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへ前記インクを搬送する搬送路を有し、
前記搬送路に前記異物検出手段が設けられている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記液性媒体を貯留する液性媒体貯留槽と、
前記液性媒体貯留槽中の前記液性媒体に対して超音波を照射し、その超音波の伝播速度を測定する伝播速度測定手段とを有する請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
液滴吐出方式によるカラーフィルターの製造に用いられ、着色剤と樹脂材料と前記着色剤を溶解または分散する液性媒体とを含むインクを吐出する液滴吐出装置内のインクの検査方法であって、
前記液滴吐出装置は、前記インクを貯留する1次インク貯留槽と、
前記1次インク貯留槽から送液された前記インクを貯留する2次インク貯留槽と、
前記2次インク貯留槽から送液された前記インクを吐出する液滴吐出ヘッドと、
超音波の伝播速度の変化を測定することによって前記インク中の異物を検出する異物検出手段とを有し、
前記異物検出手段によって前記液滴吐出装置中の前記インクに照射された前記超音波の伝播速度を測定することで前記インク中に異物が存在するかどうかを判断することを特徴とするインクの検査方法。
【請求項7】
前記液滴吐出装置は、さらに、前記液性媒体を貯留する液性媒体貯留槽と、
前記液性媒体貯留槽中の前記液性媒体に対して超音波を照射し、その超音波の伝播速度を検出する伝播速度測定手段とを有し、
前記液性媒体を含む基準溶液の前記超音波の伝播速度の度合いを基準とし、当該基準と、前記インクの前記超音波の伝播速度の変化を比較して、前記インク中に異物が存在するかどうかを判断する請求項6に記載のインクの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−2970(P2012−2970A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136850(P2010−136850)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】