液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの配置方法
【課題】吐出対象物上にて液状体の重量均一性を向上させる液滴吐出ヘッドの配置方法、及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】第1吐出重量分布L1aと、第1吐出重量分布L1aを複数の異なるシフト量でシフトさせた第2吐出重量分布L2aとを作成し、第1吐出重量分布L1aと各第2吐出重量分布L2aとの重ね合わせにより、複数の合成重量分布Laveを作成する。そして、各合成重量分布Laveに基づいて、液滴の重量偏差が最小となるシフト量を最適シフト量として決定し、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の副走査方向におけるずれを最適シフト量にした。
【解決手段】第1吐出重量分布L1aと、第1吐出重量分布L1aを複数の異なるシフト量でシフトさせた第2吐出重量分布L2aとを作成し、第1吐出重量分布L1aと各第2吐出重量分布L2aとの重ね合わせにより、複数の合成重量分布Laveを作成する。そして、各合成重量分布Laveに基づいて、液滴の重量偏差が最小となるシフト量を最適シフト量として決定し、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の副走査方向におけるずれを最適シフト量にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置及びその液滴吐出ヘッドを対象物に対して配置する液滴吐出ヘッドの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術を用いた液滴吐出装置においては、複数の液滴吐出ヘッドが吐出対象物に対して相対的に走査され、各液滴吐出ヘッドから吐出される液滴が吐出対象物上の所望位置に着弾することにより、所望形状の膜パターンが吐出対象物上に形成される。この種の液滴吐出ヘッドにおいては、液状体を貯留する複数のキャビティの各々に圧電素子が設けられ、この圧電素子が収縮・伸張してキャビティ内の液状体を振動させることにより、該キャビティと連通するノズルから液状体が液滴として吐出される。
【0003】
上記のキャビティ内に誘起される振動は、一般的に、キャビティの剛性やキャビティの容積等に応じてその振動特性を変化させる。こうしたキャビティごとの固有の振動特性は、ノズルから吐出する液滴の重量を大きく左右するため、1つの液滴吐出ヘッド内であっても、各ノズルからの液滴の重量に対し、各キャビティの剛性や容積等の個体差に応じたばらつきを発生させてしまう。上記液滴吐出ヘッド内における吐出重量のばらつきは、吐出対象物上の膜パターンに、走査方向に沿う筋状のむらを形成してしまう。例えば、ノズル列の端部で吐出重量が高くなる場合には、ノズル列端部の走査領域に厚い膜パターンが形成されてしまう。
【0004】
そこで、上記液滴吐出装置では、従来から、こうした筋状のむらを抑制すべく各種の提案がなされている。特許文献1では、1つのノズル列の端部の走査位置に、他のノズル列の端部を走査しないようにする。すなわち、走査方向と交わる副走査方向において複数のノズル列の位置をずらし、各ノズル列が吐出対象物に対して走査されるときに、各ノズル列端部の走査位置がずれるようにする。これにより、ノズル列の端部の走査位置、すなわち吐出重量が高くなる位置を分散させて、膜パターンにおけるむらを抑制している。
【特許文献1】特許第3988645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記キャビティごとの固有の振動特性は、キャビティの剛性やキャビティの容量の他、圧電素子の吐出周波数や液状体の粘度等、各種の吐出条件に応じて変化する。そして、1つのノズル列における吐出重量の分布は、こうした吐出条件の違いにより、ノズル列の中央以外において大幅に低下したり、ノズル列端部以外において大幅に増加したりする。そのため、複数のノズル列からの液滴によりパターンを形成する方法では、ノズル列における吐出重量の分布に応じたノズル列の配置、すなわち液滴吐出ヘッドの配置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであって、その目的は、吐出対象物上にて液状体の重量均一性を向上させる液滴吐出ヘッドの配置方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出装置は、一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた複数の液滴吐出ヘッドを走査方向に並置した状態で搭載して対象物に対し前記走査方向に相対的に移動するキャリッジと、前記各ノズルから吐出した液滴の重量
を測定する重量測定装置とを備えた液滴吐出装置であって、前記重量測定装置からの測定結果に基づいて、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを作成すると共に、前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成するプロファイル作成部と、前記プロファイル作成部が前記シフト量を変化させて作成した複数の異なる前記第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定するシフト量決定部と、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記液滴吐出ヘッドを前記一方向へシフトするシフト機構とを備えた。
【0008】
本発明の液滴吐出装置によれば、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッド間では、配列方向おけるノズル列のずれが最適シフト量に設定される。したがって、複数の液滴吐出ヘッドと対象物とを走査方向に沿って相対移動させるとき、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドからは、配列方向における重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を向上させることができる。
【0009】
この液滴吐出装置において、前記シフト量決定部は、前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を前記ピッチだけ繰り返し変化させて前記シフト量ごとに前記合成プロファイルを作成する構成が好ましい。
【0010】
この液滴吐出装置によれば、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドが同走査方向から見て重なり得る全範囲において、最適シフト量を決定できる。したがって、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を、より一層に向上させることができる。
【0011】
この液滴吐出装置において、前記シフト機構は、前記走査方向において隣接する一対の前記液滴吐出ヘッドの一方を固定して他方をシフトする構成が好ましい。
この液滴吐出装置によれば、一方の液滴吐出ヘッドを固定する分だけ、シフト機構の複雑化を抑制できる。
【0012】
本発明である液滴吐出ヘッドの配置方法は、一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた液滴吐出ヘッドを用い、対象物に対して走査方向に相対的に移動するキャリッジに複数の前記液滴吐出ヘッドを配置する液滴吐出ヘッドの配置方法であって、前記各ノズルから吐出した液滴の重量を測定して、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを取得する工程と、前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成する工程と、前記シフト量を変化させて作成した複数の異なる前記第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定する工程と、前記複数の液滴吐出ヘッドを前記走査方向へ並置すると共に、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記複数の液滴吐出ヘッドを配置する工程とを備えた。
【0013】
本発明である液滴吐出ヘッドの配置方法によれば、走査方向において隣接する液滴吐出
ヘッド間では、配列方向おけるノズル列のずれが最適シフト量に設定される。したがって、複数の液滴吐出ヘッドと対象物とを走査方向に沿って相対移動させるとき、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドからは、配列方向における重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を向上させることができる。
【0014】
この液滴吐出ヘッドの配置方法において、前記シフト量を決定する工程は、前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を前記ピッチだけ繰り返し変化させる構成が好ましい。
【0015】
この液滴吐出ヘッドの配置方法によれば、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドが同走査方向から見て重なり得る全範囲において、最適シフト量を決定できる。したがって、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を、より一層に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図8に従って説明する。図1は、液滴吐出装置10の全体斜視図である。
【0017】
図1において、液滴吐出装置10は、一つの方向に延びる基台11の上に、基台11の長手方向へ往復移動可能なステージ12を搭載している。ステージ12は、基板S1の一つの面(以下単に、吐出面SAと言う。)を上に向けた状態で該基板S1を位置決め固定し、基台11に設けられたY軸モータMYの正逆回転に伴って基台11の長手方向に沿って基板S1を搬送する。基板S1としては、グリーンシート、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板、樹脂フィルム、紙等の各種の基板を用いることができる。
【0018】
本実施形態では、基板S1が搬送される方向であって、図1において左上方向に向かう方向(図1においてY方向)を、主走査方向という。また、主走査方向と直交する方向であって、図1において右上方向に向かう方向(図1においてX方向)を、副走査方向とし、基板S1の上方向の法線を、Z方向という。
【0019】
液滴吐出装置10は、基台11を跨ぐ門型のガイド部材13と、ガイド部材13上側に配設されるインクタンク14とを有する。インクタンク14は、インクIkを貯留するとともに、貯留するインクIkを所定の圧力で導出する。
【0020】
ガイド部材13は、副走査方向へ往復移動可能なキャリッジ15を支持している。キャリッジ15は、ガイド部材13に設けられたX軸モータMXの正逆回転に伴って副走査方向へ往復移動される。キャリッジ15の下側に設けられた支持プレート17は、吐出面SAと平行に配設されてヘッドユニット20(図2参照)を搭載している。本実施形態では、基板S1を主走査方向に往復して搬送する動作を主走査とし、キャリッジ15を副走査方向に往復して搬送する動作を副走査という。また、基板S1を主走査する速度を、主走査速度Vsという。
【0021】
また、液滴吐出装置10は、ガイド部材13の下方であってステージ12の移動と干渉しない位置に液滴測定装置としての重量測定装置19を有している。重量測定装置19は、その上面にガイド部材13を移動するキャリッジ15の支持プレート17が相対向されるようになっている。重量測定装置19には、液滴の重量を測定する重量測定天秤の受液容器(図示せず)が設けられ、キャリッジ15及び重量測定装置19が適宜移動することにより、前記受液容器がキャリッジ15の直下に配置されるようになっている。
【0022】
次に、図2〜図4を参照して、上記ヘッドユニット20について以下に説明する。図2は、ヘッドユニット20をステージ12側から見た斜視図である。図3は、ヘッドユニット20をステージ12から見た平面図であり、図4は、ヘッドユニット20の吐出動作を示す側面図である。
【0023】
図2において、ヘッドユニット20は、前記支持プレート17に設置されて副走査方向に延びるヘッド基板21と、ヘッド基板21の下面21b(図2において上側)に配置されて副走査方向に延びる一対の液滴吐出ヘッド(以下単に、固定ヘッド22及び移動ヘッド25)とを有する。また、ヘッドユニット20は、そのヘッド基板21の下面21bに固定ヘッド22と並行に設けられたレール24と、該レール24に案内されて固定ヘッド22と並行に往復移動が可能な移動ヘッド25とを有する。移動ヘッド25は、ヘッド基板21の下面21bと対向する側の長手方向全幅にラックギアRGが設けられている。ラックギアRGは、ヘッド基板21の上面21a(図2において下側)に設けられたギアGBを介してヘッドモータMHに接続されている。すなわち、ヘッドモータMHの正逆回転に伴って、移動ヘッド25がレール24に案内されて固定ヘッド22と並行に往復移動するようになっている。本実施形態においては、これらレール24、ラックギアRG、ギアGB及びヘッドモータMHによってシフト機構が構成されている。
【0024】
ヘッド基板21は、その上面21a(図2において下側)の一側端に入力端子21cを有するとともに、入力端子21cに入力される駆動波形信号を、ヘッド基板21の下面21bの固定ヘッド22及び移動ヘッド25に出力する。
【0025】
固定ヘッド22及び移動ヘッド25には、基板S1と対向する側にノズルプレート23がそれぞれ設けられ、各ノズルプレート23には、基板S1と相対向する面にノズル形成面23aがそれぞれ形成されている。各ノズル形成面23aは、ヘッドユニット20が基板S1と対向するときに、それぞれ吐出面SAと略平行に配置される。このとき、ノズル形成面23aと吐出面SAとの間の距離をプラテンギアップといい、このプラテンギアップは、例えば数百μmであり、十分に短い距離に設定されることによって、以下で説明する液滴D(図4参照)の着弾位置の精度を向上させる。
【0026】
各ノズル形成面23aは、その副走査方向の全幅にわたってi個(iは2以上の整数であって、例えば180個)のノズルNを有する。各ノズルNは、Z方向に沿ってノズルプレート23に貫通形成され、副走査方向に沿って所定のピッチで配列されている。すなわち固定ヘッド22のノズルプレート23は、これらi個のノズルNからなる一列の第1ノズル列NL1を有し、移動ヘッド25のノズルプレート23は、これらi個のノズルNからなる一列の第2ノズル列NL2を有する。なお、本実施形態では、各ノズルNのピッチをノズルピッチDxといい、各ノズル列NL1,NL2の副走査方向における幅をノズル列幅Dwという。
【0027】
図3に示すように、支持プレート17には、副走査方向に延びる第1の貫通溝18aと、同副走査方向において第1の貫通溝18aよりも長い第2の貫通溝18bとが貫通形成されている。第1の貫通溝18aには、固定ヘッド22を支持プレート17のキャリッジ15側から嵌合可能な大きさに形成されている。第2の貫通溝18bは移動ヘッド25を支持プレート17のキャリッジ15側から挿通可能、かつレール24に案内されて副走査方向に移動可能な大きさに形成されている。なお、移動ヘッド25は、少なくともその第2ノズル列NL2が固定ヘッド22の第1ノズル列NL1と走査方向において完全に(100%)重畳するように並ぶ位置から、第2ノズル列NL2が第1ノズル列NL1と走査方向において半分だけ(50%)重畳するように並ぶ位置までを往復移動可能に構成されている。すなわち、第2ノズル列NL2は、第1ノズル列NL1に対して100%重畳す
る全重畳位置から、その全重畳位置に対して左右にノズル列幅Dwの半分の長さだけシフトして、第1ノズル列NL1に対して50%重畳する半重畳位置までの範囲を移動できる。
【0028】
図4において、固定ヘッド22は、各ノズルNの上側にキャビティ26、振動板27及び圧電素子PZを有している。各キャビティ26は、共通するインクタンク14に接続され、インクタンク14から供給される液状体としてのインクIkを収容し、そのインクIkをノズルNに供給する。振動板27は、各キャビティ26に対向する領域をZ方向に振動することによって、該キャビティ26の容積を拡大及び縮小させて、ノズルNのメニスカスを振動させる。各圧電素子PZは、入力端子21cからの駆動波形信号を受けるとき、Z方向に収縮して伸張し、振動板27をZ方向に振動させる。各キャビティ26は、それぞれの振動板27がZ方向に振動するとき、収容するインクIkの一部を液滴DにしてノズルNから吐出させる。吐出される液滴Dは、ノズルNと対向する吐出面SA上の位置、すなわち第1目標点T1に向けて飛行し、第1目標点T1に着弾する。第1目標点T1に着弾した液滴Dは、基板S1の主走査によって基板S1とともに主走査方向に移動する。
【0029】
固定ヘッド22は、各キャビティ26の剛性や容積、インクIkの種類や駆動周波数等、各種の吐出条件に応じて、各ノズルNから吐出する液滴の吐出重量にばらつきを持つ。例えば、本実施形態では、液滴Dの目標重量は1ngであり、第1ノズル列NL1の端部のノズルNにおける吐出重量は目標重量よりも1%〜2%程度だけ高い1.01ng〜1.02ngである。また、第1ノズル列NL1の中央のノズルNにおける吐出重量は目標重量よりも1%〜2%程度だけ低い0.99ng〜0.98ngである。
【0030】
移動ヘッド25は、固定ヘッド22の場合と同様の内部構成からなり、インクIkの一部を液滴DにしてノズルNから吐出させ、ノズルNと対向する吐出面SA上の第2目標点T2に向けて飛行させ着弾させる。これにより、吐出面SAにあって第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが重ねて走査される範囲には、第1ノズル列NL1からの液滴Dと、第2ノズル列NL2からの液滴Dとの2つの液滴Dが着弾する。
【0031】
また、本実施形態では、固定ヘッド22と移動ヘッド25とを同じロットで製作された部品を用いて構成するなどして、移動ヘッド25の第2ノズル列NL2における液滴Dの吐出重量の分布が、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1における吐出重量の分布と実質的に同じとなるようにされている。すなわち、移動ヘッド25の第2ノズル列NL2における吐出重量の偏差と、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1における吐出重量の偏差との差異は、基板S1にパターンを形成する設計ルール上において許容される誤差の範囲にあり、実質的に同じである。
【0032】
図3に示すように、基板S1の吐出面SAは、一点鎖線で示すようにドットパターン格子によって仮想分割されている。ドットパターン格子は、その主走査方向の格子間隔と副走査方向の格子間隔とがそれぞれ液滴Dの吐出間隔によって規定される。主走査方向の吐出間隔である吐出ピッチDyは、駆動波形信号に基づく液滴Dの吐出周波数と、基板S1の主走査速度Vsとによって定められる。また、副走査方向の吐出間隔は、ノズルピッチDxによって定められる。そして、液滴Dを吐出するか否かの選択は、このドットパターン格子の格子点T毎に定められる。これにより、液滴の吐出処理を実行するとき、主走査方向に配列される一群の格子点Tは、キャリッジ15の副走査と基板S1の主走査とによって、共通する一つのノズルNの直下を通過する。
【0033】
すなわち、本実施形態では、各ノズル列NL1,NL2が走査方向で100%重畳するように並んでいる場合には、各格子点Tには、固定ヘッド22及び移動ヘッド25のノズ
ルNからそれぞれの液滴D(例えば略1ng)が吐出される。なお、図3においては、説明の便宜上、ノズルNの数量を省略している。
【0034】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成を図5に従って説明する。
図5において、演算部としての制御装置40は、CPU、ROM、RAMなどを有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、メモリに格納されている各種データ及び各種制御プログラムに基づき、ステージ12及びキャリッジ15を移動させるとともに、移動ヘッド25及び各圧電素子PZを駆動制御する。
【0035】
制御装置40には、起動スイッチ、停止スイッチなどの操作スイッチを有した入力装置41が接続されている。入力装置41は、吐出面SAに対するパターン形成領域の位置座標に関する情報を既定形式の描画情報Iaとして制御装置40に入力する。制御装置40は、入力装置41からの描画情報Iaを受け、第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とを生成する。第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて固定ヘッド22の各圧電素子PZと移動ヘッド25の各圧電素子PZのオンあるいはオフを規定するデータである。第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とは、各第1目標点T1と各第2目標点T2とに、それぞれ液滴Dを吐出するか否かを規定したデータである。すなわち、第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とは、パターン形成領域に規定される各格子点Tに液滴Dを吐出させるためのものである。
【0036】
制御装置40には、重量測定装置19が接続されており、制御装置40からこの重量測定装置19に対して測定指令が出力されることより、重量測定装置19は、その測定指令に応答してノズルN毎の液滴Dの重量を測定する。また、重量測定装置19は、測定したノズルN毎の液滴の重量を測定ノズルの位置に関する情報(以下単に、ノズル座標と言う。)とともに制御装置40に出力する。すなわち、制御装置40は、重量測定装置19からのノズル毎の液滴Dの重量とノズル座標とに基づいて、第1ノズル列NL1のノズル座標における重量を示した第1プロファイルである第1吐出重量分布L1aを算出する。そして、算出された第1吐出重量分布L1aは、メモリの吐出プロファイルPFの領域に第1ノズル列NL1の情報として保存される。
【0037】
また、制御装置40は、吐出プロファイルPFの領域から第1吐出重量分布L1aを読み出し、第1吐出重量分布L1aにおけるノズル座標をノズル列方向に所定のシフト量でシフトさせた第2プロファイルである第2吐出重量分布L2aを算出する。そして、算出された第2吐出重量分布L2aは、メモリの吐出プロファイルPFの領域に第2ノズル列NL2の情報として保存される。さらに、制御装置40は、吐出プロファイルPFの領域から第1吐出重量分布L1a及び第2吐出重量分布L2aを読み出し、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとを重畳させた合成プロファイルとしての合成重量分布Laveを算出する。そして、算出された合成重量分布Laveは、メモリの吐出プロファイルPFの領域に合成重量の情報として保存される。
【0038】
制御装置40には、X軸モータ駆動回路42が接続されており、制御装置40からこのX軸モータ駆動回路42に対して駆動指令が出力されることにより、X軸モータ駆動回路42は、その駆動指令に応答してキャリッジ15を移動させるためのX軸モータMXを正転又は逆転させる。また、このX軸モータMXの回転角度を検出するX軸エンコーダXEからの回転角度信号がX軸モータ駆動回路42を介して制御装置40に入力される。すなわち制御装置40は、X軸エンコーダXEからの回転角度信号に基づいて吐出面SAに対するキャリッジ15の移動方向及び移動量を検出するとともにフィードバック制御する。
【0039】
制御装置40には、Y軸モータ駆動回路43が接続されており、制御装置40からこの
Y軸モータ駆動回路43に対して駆動指令が出力されることにより、Y軸モータ駆動回路43は、その駆動指令に応答してステージ12を移動させるためのY軸モータMYを正転又は逆転させる。また、このY軸モータMYの回転角度を検出するY軸エンコーダYEからの回転角度信号がY軸モータ駆動回路43を介して制御装置40に入力される。すなわち制御装置40は、Y軸エンコーダYEからの回転角度信号に基づいてステージ12(吐出面SA)の移動方向及び移動量を検出するとともにフィードバック制御する。また、制御装置40は、Y軸モータ駆動回路43からの信号に基づいて、吐出面SAに対する各第1目標点T1及び各第2目標点T2の相対位置を演算し、各第1目標点T1が格子点Tに位置するときに第1吐出タイミング信号LP1を生成する。また、制御装置40は、各第2目標点T2が格子点Tに位置するときに第2吐出タイミング信号LP2を生成する。
【0040】
制御装置40には、ヘッドモータ駆動回路44が接続されており、制御装置40からこのヘッドモータ駆動回路44に対して駆動指令が出力されることにより、ヘッドモータ駆動回路44は、その駆動指令に応答して移動ヘッド25を移動させるためのヘッドモータMHを正転又は逆転させる。また、このヘッドモータMHの回転角度を検出するヘッドエンコーダHEからの回転角度信号がヘッドモータ駆動回路44を介して制御装置40に入力される。すなわち制御装置40は、ヘッドエンコーダHEからの回転角度信号に基づいて固定ヘッド22の第1ノズル列NL1に対する移動ヘッド25の第2ノズル列NL2の移動方向及び移動量を検出するとともにフィードバック制御する。
【0041】
制御装置40には、吐出ヘッド駆動回路45が接続されている。制御装置40は、第1吐出タイミング信号LP1及び第2吐出タイミング信号LP2を生成するとき、吐出ヘッド駆動回路45に対して圧電素子PZを駆動するための圧電素子駆動電圧COMを出力する。また、制御装置40は、第1ドットマップデータDM1を利用して、吐出周期毎における固定ヘッド22の全ての圧電素子PZに対するオンあるいはオフを規定した第1吐出制御信号SI1を生成し、この第1吐出制御信号SI1を所定の転送クロック信号で吐出ヘッド駆動回路45にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路45は、上記第1吐出制御信号SI1を固定ヘッド22の全ての圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換して、第1目標点T1に対応する上記第1吐出タイミング信号LP1を受けるときにシリアル/パラレル変換された前記第1吐出制御信号SI1をラッチする。そして、吐出ヘッド駆動回路45は、そのラッチされた第1吐出制御信号SI1により選択される固定ヘッド22の全ての圧電素子PZにそれぞれ圧電素子駆動電圧COMを供給する。
【0042】
さらに、制御装置40は、第2ドットマップデータDM2を利用して、吐出周期毎における移動ヘッド25の全ての圧電素子PZに対するオンあるいはオフを規定した第2吐出制御信号SI2を生成し、この第2吐出制御信号SI2を所定の転送クロック信号で吐出ヘッド駆動回路45にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路45は、上記第2吐出制御信号SI2を移動ヘッド25の全ての圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換して、第2目標点T2に対応する上記第2吐出タイミング信号LP2を受けるときにシリアル/パラレル変換された前記第2吐出制御信号SI2をラッチする。そして、吐出ヘッド駆動回路45は、そのラッチされた第2吐出制御信号SI2により選択される移動ヘッド25の全ての圧電素子PZにそれぞれ圧電素子駆動電圧COMを供給する。
【0043】
次に、液滴吐出装置10における液滴吐出ヘッドの配置方法について説明する。なお、図6は液滴吐出ヘッドの配置方法を示す工程図である。
図6において、液滴吐出ヘッドの配置方法では、まず、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1の第1吐出重量分布L1aを取得する(吐出重量分布取得工程:ステップS10)。次いで、第1吐出重量分布L1aを用い、異なるシフト量で複数の第2吐出重量分布L2aが作成され、第1吐出重量分布L1aと各第2吐出重量分布L2aとを重畳させた合成重量分布Laveがシフト量ごとに算出される(吐出重量分布合成工程:ステップS1
1)。また、この液滴吐出ヘッドの配置方法では、全ての合成重量分布Laveの中から吐出重量の偏差が最小となるときの前記シフト量が最適シフト量として決定される(重畳率選択工程:ステップS12)。次いで、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間のノズル列方向におけるずれが前記最適シフト量となるように、移動ヘッド25が移動する(ノズル列移動工程:ステップS13)。
【0044】
吐出重量分布取得工程では、制御装置40が、固定ヘッド22が重量測定装置19の上面の直上へ移動される。すなわち、制御装置40は、重量測定装置19の重量測定天秤の受液容器に固定ヘッド22の第1ノズル列NL1の各ノズルNから吐出された液滴Dが着弾するようにする。そして、制御装置40は、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1の各ノズルNから重量測定装置19の受液容器へ液滴Dを吐出させて、受液容器に着弾した液滴Dの重量と当該液滴Dに関わるノズル座標とを重量測定装置19から取得する。制御装置40は、重量測定装置19より取得した液滴Dの重量と、当該液滴Dに関わるノズル座標とに基づいて、図7(b)に示すように、第1ノズル列NL1から吐出された各液滴Dの重量の分布を示す第1吐出重量分布L1aを作成する。第1吐出重量分布L1aは、第1ノズル列NL1の各液滴Dの目標重量(例えば1ng:目標値B0)に対する偏差を示すものである。第1吐出重量分布L1aは、大きな傾向として、ノズル座標が第1ノズル列NL1の端部になるほど重量が高くなる、いわゆるV字形状であるものの、第1ノズル列NL1の中央部より右寄りで最低の重量を示し、左端からノズル列幅Dwの1/5程度の位置において重量が急激に増加する。目標重量が1ngのとき、第1吐出重量分布L1aの最大値は1.01ng〜1.02ngとなり目標重量より1%〜2%程度大きい値となり、第1吐出重量分布L1aの最小値は0.99ng〜0.98ngとなり目標重量より1%〜2%程度小さい値となる。
【0045】
次に、吐出重量分布合成工程では、制御装置40が、吐出プロファイルPFから前記第1吐出重量分布L1aを読み出し、第1吐出重量分布L1aのノズル座標をノズル列方向に所定のシフト量だけシフトさせた変換座標に変換して第2吐出重量分布L2aを作成する。また、制御装置40は、前記シフト量が前記ノズル列幅Dwの半分になるまで前記シフト量を前記ノズルピッチDxだけ繰り返し変化させて前記シフト量ごとの第2吐出重量分布L2aを作成する。そして、制御装置40は、第1吐出重量分布L1aと各第2吐出重量分布L2aとを重畳させ、重畳する範囲において合成される合成重量分布Laveをシフト量ごとに算出する。
【0046】
すなわち、制御装置40は、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとが完全に重畳する全重畳位置(シフト量=0)から、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとが半分だけ重畳する半重畳位置(シフト量=Dw/2)までの範囲で、シフト量がノズルピッチDxだけ増加するごとに、合成重量分布Laveを算出する。そして、制御装置40は、各合成重量分布Laveと、当該合成重量分布Laveを得るためのシフト量に関する情報をメモリの吐出プロファイルPFの領域に保存する。
【0047】
なお、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとを重畳させて得た合成重量分布Laveは、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとが重ね合わされた座標領域LN2に対して求められ、合成重量分布Laveにおける重量は、第1吐出重量分布L1aにおける重量と第2吐出重量分布L2aにおける重量との合成である。例えば、第1吐出重量分布L1aにおける重量が0.98ng〜1.02ngである場合、合成重量分布Laveにおける重量は最大で1.96ng〜2.04ngの範囲で変化する。図7(b)においては、各吐出重量分布を説明する便宜上、合成重量分布Laveにおける重量を半分にして示す。なお、図7においても、説明の便宜上、ノズルNの数量を省略している。
【0048】
重畳率選択工程では、制御装置40が、シフト量ごとの合成重量分布Laveに関する情報を読み出し、重量の偏差が最小となるシフト量、すなわち合成重量分布Laveの波形の変動振幅が最も小さくなるときのシフト量を最適シフト量として決定する。なお、本実施形態では、最適シフト量をDsoとするとき、[(Dw−Dso)/Dw]×100を最適重畳率と言う。
【0049】
例えば、図7(b)を参照して、シフト量がDw/2の場合、合成重量分布Laveは、座標領域LN2の左端部では第1吐出重量分布L1aの目標値B0に対するマイナス量と、第2吐出重量分布L2aの目標値B0に対するプラス量とが加算されて、合成重量分布Laveにおける重量の偏差が略「0」に近い値となる。また、座標領域LN2の中央部では第1吐出重量分布L1aの目標値B0に対する略「0」の偏差量と、第2吐出重量分布L2aの目標値B0に対する少しのプラスの偏差量とが加算されて、合成重量分布Laveにおける重量に若干の正偏差がある。また、座標領域LN2の右端部では第1吐出重量分布L1aの目標値B0に対する大きなプラス量と、第2吐出重量分布L2aの目標値B0に対するマイナス量とが加算されて、合成重量分布Laveにおける重量に若干の正偏差がある。制御装置40は、上記シフト量を0〜Dw/2の範囲でノズルピッチDxごとに変化させ、上記合成重量分布Laveにおける重量の偏差が最小となるシフト量を最適シフト量として決定する。
【0050】
ちなみに、合成重量分布Laveは、第1吐出重量分布L1aがノズル列方向で対称の単純なV字形状の分布である場合、シフト量がDw/2(最適重畳率が50%)になることで、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとの相殺により、その重量の偏差を最小の0にできる。また、合成重量分布Laveは、第1吐出重量分布L1aがノズル列方向で対称の単純なW字形状の分布である場合、シフト量がDw/4(最適重畳率が75%)になることで、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとの相殺により、その重量の偏差を最小の0にできる。そして、本実施形態における液滴吐出装置10によれば、第1吐出重量分布L1aが上記単純形状でない場合であっても、合成重量分布Laveにおける重量の偏差が最小となるように、最適シフト量を決定できる。
【0051】
ノズル移動工程では、制御装置40が、ヘッドモータMHの駆動制御を介して第2ノズル列NL2を第1ノズル列NL1に対して副走査方向に移動させる。そして、制御装置40は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の副走査方向におけるずれが前記最適シフト量となるように、すなわち第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが走査方向から見て前記最適重畳率で重なり合うように配置される。
【0052】
上述のように第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが前記最適重畳率で配置されると、制御装置40は、キャリッジ15に対して基板S1の吐出面SAを走査して、基板S1の吐出面SAに各ノズル列NL1,NL2から液滴Dを吐出させる。
【0053】
このとき、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが重畳する座標領域LN2では、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との協働により、目標値B0の2倍に相当するインクIkが副走査方向で平均化されて吐出される。一方、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが重畳しない各座標領域LN1,LN3では、それぞれ目標値B0に相当するインクが第1吐出重量分布L1a及び第2吐出重量分布L2aで吐出されてしまう。
【0054】
このような場合、図8に示すように、1回目の走査P1で第1ノズル列NL1のみから液滴Dが配置された座標領域LN3に、2回目の走査P2で第2ノズル列NL2のみから液滴Dが配置されるようにする。すなわち、1回目の走査P1の後に、キャリッジ15の移動にしたがって第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とをノズル列幅Dwだけ副走
査方向に移動させる。この副走査方向への移動により、2回目の走査P2で座標領域LN3〜LN5の範囲に第1ノズル列NL1からは第1吐出重量分布L1aと同じ吐出重量分布L1bにて、第2ノズル列NL2からは第2吐出重量分布L2aと同じ吐出重量分布L2bにて液滴Dが吐出される。これにより、1回目の走査P1で第2ノズル列NL2のみが液滴Dを配置した座標領域LN3に、2回目の走査P2で第1ノズル列NL1のみが液滴Dを配置するようにするようになることで、座標領域LN3には第1ノズル列NL1の左側と第2ノズル列NL2の右側とから2つの液滴Dが配置される。
【0055】
このとき、第1ノズル列NL1の左側は第2ノズル列NL2の左側と同じ吐出重量の分布であり、第2ノズル列NL2の右側は第1ノズル列NL1の右側とこれも同じ吐出重量の分布であり、座標領域LN2において重畳する第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との関係と同様となる。このことから、座標領域LN3における第1ノズル列NL1の左側と第2ノズル列NL2の右側との合成重量分布Laveは、座標領域LN2の場合と同様となり、座標領域LN3にも座標領域LN2と同じ重量均一性で液滴Dが配置されることになる。また座標領域LN4は、上述した座標領域LN2と同じ均一性で液滴Dが配置される。このように第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2を副走査方向に移動させながら吐出面SAを走査させることで、液滴吐出装置10は吐出面SAに高い重量均一性で液滴Dを配置することがきる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば以下のような効果が得られるようになる。
(1)本実施形態によれば、主走査方向において隣接する固定ヘッド22と移動ヘッド25の間では、各ノズル列NL1,NL2の配列方向おけるずれが最適シフト量に設定された。これにより、固定ヘッド22及び移動ヘッド25と基板S1とを主走査方向に沿って相対移動させるとき、主走査方向において固定ヘッド22と移動ヘッド25とが重畳する座標領域LN2においては、各ノズル列NL1,NL2の配列方向における重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、主走査方向と各ノズル列NL1,NL2の配列方向とで形成される基板S1上の吐出面SAにおいて、インクIkの重量均一性を向上させることができる。
【0057】
(2)本実施形態によれば、主走査方向において固定ヘッド22と移動ヘッド25が同主走査方向から見て重なるシフト量0〜Dw/2の範囲において、最適シフト量(最適重畳率)が決定された。これにより、主走査方向と各ノズル列NL1,NL2の配列方向とで形成される基板S1上の吐出面SAにおいて、インクIkの重量均一性を、より一層に向上させることができる。
【0058】
(3)本実施形態によれば、固定ヘッド22を固定して、移動ヘッド25のみが移動するようにした。これにより、固定ヘッド22を固定する分だけ、シフト機構の複雑化を抑制できる。
【0059】
(4)本実施形態によれば、1回目の走査P1で第1ノズル列NL1のみから液滴Dが配置された座標領域LN3に、2回目の走査P2で第2ノズル列NL2のみから液滴Dが配置されるようにした。これにより、複数の走査を要するものの、2つのノズル列NL1,NL2であれ、基板S1上の吐出面SAの広い範囲に重量均一性が向上されたインクIkを配置することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図9に、本発明を具体化した第2の実施形態についてその概略図を示す。なお、この第2の実施形態は、第1の実施形態におけるキャリッジ15に2つの移動ヘッド(第1の移動ヘッド25A及び第2の移動ヘッド25B)を搭載したものである。そのため、以下では主に、先の第1の実施形態との相違点を中心に、各移動ヘッド25A,25Bの配置方
法について説明する。また、第1の実施形態と同様の部材には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0061】
第1の移動ヘッド25A及び第2の移動ヘッド25Bの各吐出重量分布は、前記固定ヘッド22と同様である。固定ヘッド22と第1の移動ヘッド25Aとの間、及び第1の移動ヘッド25Aと第2の移動ヘッド25Bとの間では、副走査方向におけるずれを最適シフト量とすることで、すなわち各ノズル列を最適重畳率で重ね合わせることで、合成重量分布Laveにおける重量の偏差を最小にできる。本実施形態においては、最適シフト量がDw/2であり、最適重畳率が50%である。
【0062】
そこでまず、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが最適重畳率である50%で重なり合うように、第1ノズル列NL1の右側半分と第2ノズル列NL2の左側半分とが走査方向から見て重畳して配置される。次いで、第2ノズル列NL2とノズル列NL3とが最適重畳率である50%で重なり合うように、第2ノズル列NL2の右側半分とノズル列NL3の左側半分とが走査方向から見て重畳して配置される。この配置により、副走査方向に連続する座標領域LN2と座標領域LN3とにおいて、重量の偏差が最小となる高い均一性で液滴Dが配置されるようになる。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態によっても先の第1の実施形態の前記(1)〜(4)の効果と同等もしくはそれに準じた効果が得られるとともに、次のような効果が得られるようになる。
【0064】
(5)本実施形態によれば、キャリッジ15に3つの液滴吐出ヘッド(固定ヘッド22、第1の移動ヘッド25A及び第2の移動ヘッド25B)を搭載した。これにより、固定ヘッド22と第1の移動ヘッド25Aとが重畳する座標領域LN2、及び、第1の移動ヘッド25Aと第2の移動ヘッド25Bとが重畳する座標領域LN3において一回の走査P1aで重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、主走査方向と各ノズル列NL1,NL2,NL3の配列方向とで形成される広い範囲の基板S1上の吐出面SAにおいて、インクIkの重量均一性を向上させることができる。
【0065】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第1吐出重量分布L1aが目標値B0に対してプラス方向及びマイナス方向にそれぞれ1%〜2%の変化をする、すなわち2%〜4%程度の変動振幅を有するものとしたが、変動振幅の幅は2%〜4%よりも大きくても小さくてもよい。また、第1吐出重量分布L1aは、目標値B0を中心に分布するものとしたが、目標値B0を中心として分布する場合には限られず、目標値B0に対して、全体的に重量が高い方向もくしは低い方向にシフトしているような分布でもよい。
【0066】
・第1の実施形態において、最適重畳率が50%より大きく100%以下になる場合は、図10に示すように、まず第1の走査P1で座標領域LN21〜LN23に液滴Dを配置する。このとき座標領域LN22には第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とから液滴Dが配置され、座標領域LN21には第1ノズル列NL1のみから、座標領域LN23には第2ノズル列NL2のみから液滴Dが配置される。次に、第2の走査P2を行うために第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とを副走査方向に移動させる。このとき、第1の走査P1を行った第2ノズル列NL2と、第2の走査P2を行う第1ノズル列NL1とが最適重畳率で重なるように移動させる構成が好ましい。
【0067】
このような配置により、第2の走査P2を行う第1ノズル列NL1と第1の走査P1を行った第2ノズル列NL2とが液滴を配置する座標領域LN23においても高い重量均一性の下で液滴を配置できる。
【0068】
なお、この場合、第2の走査P2をする第1ノズル列NL1の一部領域LN23aが座標領域LN22と重複し、第2ノズル列NL2の一部領域LN23aが座標領域LN23と重複する。そこで、第2の走査P2では第1ノズル列NL1の一部領域LN23a及び第2ノズル列NL2の一部領域LN23aからはそれぞれ液滴Dを吐出させないようにする。これにより、第1の走査P1と第2の走査P2により座標領域LN22から座標領域LN24の間に高い重量均一性の下で液滴Dを配置できる。
【0069】
・第2の実施形態では、最適重畳率が50%である場合について説明したが、これに限らず、最適重畳率は50%以外であってもよい。また、最適重畳率が50%より大きく100%以下の間である場合には、第1ノズル列NL1とノズル列NL3とが重畳する範囲に限り、ノズル列NL3からの液滴の吐出をさせない構成が好ましい。
【0070】
・第1の実施形態では、各液滴吐出ヘッドはそれぞれ一列のノズル列NL1,NL2を有し、上記第2の実施形態では、各液滴吐出ヘッドはそれぞれ一列のノズル列NL1,NL2,NL3を有した。これに限らず、各液滴吐出ヘッドは複数のノズル列を有してもよい。この場合は、例えば、液滴吐出ヘッドごとに吐出重量分布を算出し、その吐出重量分布に基づいて合成重量分布を算出して最適重畳率を選択するようにしてもよい。
【0071】
・第1の実施形態では、固定ヘッド22に対して移動ヘッド25を左右に移動可能にした。これに限らず、液滴吐出ヘッドをどちらか一方のみにずれるようにしてもよい。特に、各液滴吐出ヘッドの吐出重量分布が同様の特性である場合には、どちらか一方のみにずれるようにすれば必ず合成重量分布の均一性の高い重畳率とすることができる。
【0072】
・上記実施形態では、移動しない固定ヘッド22と移動する移動ヘッド25(25A,25B)を設けた。しかしこれに限らず、すべての液滴吐出ヘッドが移動可能であってもよい。
【0073】
・第2の実施形態では、キャリッジ15には3つの液滴吐出ヘッドを設けたが、キャリッジの有する液滴吐出ヘッドの数は3つより多くてもよい。
・上記実施形態では、固定ヘッド22の第1吐出重量分布L1aのみを測定した。しかしこれに限らず、各液滴吐出ヘッドの吐出重量の分布を測定するようにして、各液滴吐出ヘッドの各吐出重量の分布を合わせて形成した波形から均一性の最も高い重畳率を算出するようにしてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、固定ヘッド22の第1吐出重量分布L1aと移動ヘッド25,25A,25Bの各第2吐出重量分布L2a,L3aは同様の分布としたが、各吐出重量分布はそれぞれ異なる分布の態様であってもよい。各吐出重量分布が相違する場合であれ、合成重量分布の変動振幅を小さくする重畳率が取得できればよい。
【0075】
・上記実施形態では、ヘッドユニット20を圧電素子駆動方式に具体化した。これに限らず、液滴吐出ヘッドを、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐出ヘッドに具体化してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、吐出重量分布を用いたが、対象物に吐出されたインクの均一性を判断できる指標となるものであれば、吐出重量分布を吐出液量などに基づいて算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】液滴吐出装置の一実施形態を示す全体斜視図。
【図2】吐出ヘッドを下側から見た底面図。
【図3】液滴吐出ヘッドの配置を示す底面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの吐出動作を示す側面図。
【図5】液滴吐出装置の電気的構成を示すブロック図。
【図6】液滴吐出ヘッドの配置方法の手順を示す工程図。
【図7】(a)は重畳した2つのノズル列を示す模式図、(b)は各種吐出重量分布を示すグラフ。
【図8】(a)は重畳した2つのノズル列の走査を示す模式図、(b)は2つのノズル列の2回走査で得られる各種吐出重量分布を示すグラフ。
【図9】(a)は重畳した3つのノズル列を示す模式図、(b)は3つのノズル列における各種吐出重量分布を示すグラフ。
【図10】重畳させた2つのノズル列の走査方法の一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0078】
10…液滴吐出装置、11…基台、12…ステージ、13…ガイド部材、14…インクタンク、15…キャリッジ、17…支持プレート、18a…第1の貫通溝、18b…第2の貫通溝、19…重量測定装置、20…ヘッドユニット、21…ヘッド基板、21a…上面、21b…下面、21c…入力端子、22…固定ヘッド、23…ノズルプレート、23a…ノズル形成面、24…レール、25,25A,25B…移動ヘッド、26…キャビティ、27…振動板、40…プロファイル作成部及びシフト量決定部を構成する制御装置、D…液滴、N…ノズル、GB…ギア、MH…ヘッドモータ、MX…X軸モータ、MY…Y軸モータ、PZ…圧電素子、RG…ラックギア、S1…基板、SA…吐出面、NL1,NL2,NL3…ノズル列。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置及びその液滴吐出ヘッドを対象物に対して配置する液滴吐出ヘッドの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術を用いた液滴吐出装置においては、複数の液滴吐出ヘッドが吐出対象物に対して相対的に走査され、各液滴吐出ヘッドから吐出される液滴が吐出対象物上の所望位置に着弾することにより、所望形状の膜パターンが吐出対象物上に形成される。この種の液滴吐出ヘッドにおいては、液状体を貯留する複数のキャビティの各々に圧電素子が設けられ、この圧電素子が収縮・伸張してキャビティ内の液状体を振動させることにより、該キャビティと連通するノズルから液状体が液滴として吐出される。
【0003】
上記のキャビティ内に誘起される振動は、一般的に、キャビティの剛性やキャビティの容積等に応じてその振動特性を変化させる。こうしたキャビティごとの固有の振動特性は、ノズルから吐出する液滴の重量を大きく左右するため、1つの液滴吐出ヘッド内であっても、各ノズルからの液滴の重量に対し、各キャビティの剛性や容積等の個体差に応じたばらつきを発生させてしまう。上記液滴吐出ヘッド内における吐出重量のばらつきは、吐出対象物上の膜パターンに、走査方向に沿う筋状のむらを形成してしまう。例えば、ノズル列の端部で吐出重量が高くなる場合には、ノズル列端部の走査領域に厚い膜パターンが形成されてしまう。
【0004】
そこで、上記液滴吐出装置では、従来から、こうした筋状のむらを抑制すべく各種の提案がなされている。特許文献1では、1つのノズル列の端部の走査位置に、他のノズル列の端部を走査しないようにする。すなわち、走査方向と交わる副走査方向において複数のノズル列の位置をずらし、各ノズル列が吐出対象物に対して走査されるときに、各ノズル列端部の走査位置がずれるようにする。これにより、ノズル列の端部の走査位置、すなわち吐出重量が高くなる位置を分散させて、膜パターンにおけるむらを抑制している。
【特許文献1】特許第3988645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記キャビティごとの固有の振動特性は、キャビティの剛性やキャビティの容量の他、圧電素子の吐出周波数や液状体の粘度等、各種の吐出条件に応じて変化する。そして、1つのノズル列における吐出重量の分布は、こうした吐出条件の違いにより、ノズル列の中央以外において大幅に低下したり、ノズル列端部以外において大幅に増加したりする。そのため、複数のノズル列からの液滴によりパターンを形成する方法では、ノズル列における吐出重量の分布に応じたノズル列の配置、すなわち液滴吐出ヘッドの配置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであって、その目的は、吐出対象物上にて液状体の重量均一性を向上させる液滴吐出ヘッドの配置方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出装置は、一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた複数の液滴吐出ヘッドを走査方向に並置した状態で搭載して対象物に対し前記走査方向に相対的に移動するキャリッジと、前記各ノズルから吐出した液滴の重量
を測定する重量測定装置とを備えた液滴吐出装置であって、前記重量測定装置からの測定結果に基づいて、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを作成すると共に、前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成するプロファイル作成部と、前記プロファイル作成部が前記シフト量を変化させて作成した複数の異なる前記第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定するシフト量決定部と、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記液滴吐出ヘッドを前記一方向へシフトするシフト機構とを備えた。
【0008】
本発明の液滴吐出装置によれば、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッド間では、配列方向おけるノズル列のずれが最適シフト量に設定される。したがって、複数の液滴吐出ヘッドと対象物とを走査方向に沿って相対移動させるとき、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドからは、配列方向における重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を向上させることができる。
【0009】
この液滴吐出装置において、前記シフト量決定部は、前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を前記ピッチだけ繰り返し変化させて前記シフト量ごとに前記合成プロファイルを作成する構成が好ましい。
【0010】
この液滴吐出装置によれば、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドが同走査方向から見て重なり得る全範囲において、最適シフト量を決定できる。したがって、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を、より一層に向上させることができる。
【0011】
この液滴吐出装置において、前記シフト機構は、前記走査方向において隣接する一対の前記液滴吐出ヘッドの一方を固定して他方をシフトする構成が好ましい。
この液滴吐出装置によれば、一方の液滴吐出ヘッドを固定する分だけ、シフト機構の複雑化を抑制できる。
【0012】
本発明である液滴吐出ヘッドの配置方法は、一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた液滴吐出ヘッドを用い、対象物に対して走査方向に相対的に移動するキャリッジに複数の前記液滴吐出ヘッドを配置する液滴吐出ヘッドの配置方法であって、前記各ノズルから吐出した液滴の重量を測定して、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを取得する工程と、前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成する工程と、前記シフト量を変化させて作成した複数の異なる前記第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定する工程と、前記複数の液滴吐出ヘッドを前記走査方向へ並置すると共に、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記複数の液滴吐出ヘッドを配置する工程とを備えた。
【0013】
本発明である液滴吐出ヘッドの配置方法によれば、走査方向において隣接する液滴吐出
ヘッド間では、配列方向おけるノズル列のずれが最適シフト量に設定される。したがって、複数の液滴吐出ヘッドと対象物とを走査方向に沿って相対移動させるとき、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドからは、配列方向における重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を向上させることができる。
【0014】
この液滴吐出ヘッドの配置方法において、前記シフト量を決定する工程は、前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を前記ピッチだけ繰り返し変化させる構成が好ましい。
【0015】
この液滴吐出ヘッドの配置方法によれば、走査方向において隣接する液滴吐出ヘッドが同走査方向から見て重なり得る全範囲において、最適シフト量を決定できる。したがって、走査方向と配列方向とで形成される対象物上の平面において、液状体の重量均一性を、より一層に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図8に従って説明する。図1は、液滴吐出装置10の全体斜視図である。
【0017】
図1において、液滴吐出装置10は、一つの方向に延びる基台11の上に、基台11の長手方向へ往復移動可能なステージ12を搭載している。ステージ12は、基板S1の一つの面(以下単に、吐出面SAと言う。)を上に向けた状態で該基板S1を位置決め固定し、基台11に設けられたY軸モータMYの正逆回転に伴って基台11の長手方向に沿って基板S1を搬送する。基板S1としては、グリーンシート、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板、樹脂フィルム、紙等の各種の基板を用いることができる。
【0018】
本実施形態では、基板S1が搬送される方向であって、図1において左上方向に向かう方向(図1においてY方向)を、主走査方向という。また、主走査方向と直交する方向であって、図1において右上方向に向かう方向(図1においてX方向)を、副走査方向とし、基板S1の上方向の法線を、Z方向という。
【0019】
液滴吐出装置10は、基台11を跨ぐ門型のガイド部材13と、ガイド部材13上側に配設されるインクタンク14とを有する。インクタンク14は、インクIkを貯留するとともに、貯留するインクIkを所定の圧力で導出する。
【0020】
ガイド部材13は、副走査方向へ往復移動可能なキャリッジ15を支持している。キャリッジ15は、ガイド部材13に設けられたX軸モータMXの正逆回転に伴って副走査方向へ往復移動される。キャリッジ15の下側に設けられた支持プレート17は、吐出面SAと平行に配設されてヘッドユニット20(図2参照)を搭載している。本実施形態では、基板S1を主走査方向に往復して搬送する動作を主走査とし、キャリッジ15を副走査方向に往復して搬送する動作を副走査という。また、基板S1を主走査する速度を、主走査速度Vsという。
【0021】
また、液滴吐出装置10は、ガイド部材13の下方であってステージ12の移動と干渉しない位置に液滴測定装置としての重量測定装置19を有している。重量測定装置19は、その上面にガイド部材13を移動するキャリッジ15の支持プレート17が相対向されるようになっている。重量測定装置19には、液滴の重量を測定する重量測定天秤の受液容器(図示せず)が設けられ、キャリッジ15及び重量測定装置19が適宜移動することにより、前記受液容器がキャリッジ15の直下に配置されるようになっている。
【0022】
次に、図2〜図4を参照して、上記ヘッドユニット20について以下に説明する。図2は、ヘッドユニット20をステージ12側から見た斜視図である。図3は、ヘッドユニット20をステージ12から見た平面図であり、図4は、ヘッドユニット20の吐出動作を示す側面図である。
【0023】
図2において、ヘッドユニット20は、前記支持プレート17に設置されて副走査方向に延びるヘッド基板21と、ヘッド基板21の下面21b(図2において上側)に配置されて副走査方向に延びる一対の液滴吐出ヘッド(以下単に、固定ヘッド22及び移動ヘッド25)とを有する。また、ヘッドユニット20は、そのヘッド基板21の下面21bに固定ヘッド22と並行に設けられたレール24と、該レール24に案内されて固定ヘッド22と並行に往復移動が可能な移動ヘッド25とを有する。移動ヘッド25は、ヘッド基板21の下面21bと対向する側の長手方向全幅にラックギアRGが設けられている。ラックギアRGは、ヘッド基板21の上面21a(図2において下側)に設けられたギアGBを介してヘッドモータMHに接続されている。すなわち、ヘッドモータMHの正逆回転に伴って、移動ヘッド25がレール24に案内されて固定ヘッド22と並行に往復移動するようになっている。本実施形態においては、これらレール24、ラックギアRG、ギアGB及びヘッドモータMHによってシフト機構が構成されている。
【0024】
ヘッド基板21は、その上面21a(図2において下側)の一側端に入力端子21cを有するとともに、入力端子21cに入力される駆動波形信号を、ヘッド基板21の下面21bの固定ヘッド22及び移動ヘッド25に出力する。
【0025】
固定ヘッド22及び移動ヘッド25には、基板S1と対向する側にノズルプレート23がそれぞれ設けられ、各ノズルプレート23には、基板S1と相対向する面にノズル形成面23aがそれぞれ形成されている。各ノズル形成面23aは、ヘッドユニット20が基板S1と対向するときに、それぞれ吐出面SAと略平行に配置される。このとき、ノズル形成面23aと吐出面SAとの間の距離をプラテンギアップといい、このプラテンギアップは、例えば数百μmであり、十分に短い距離に設定されることによって、以下で説明する液滴D(図4参照)の着弾位置の精度を向上させる。
【0026】
各ノズル形成面23aは、その副走査方向の全幅にわたってi個(iは2以上の整数であって、例えば180個)のノズルNを有する。各ノズルNは、Z方向に沿ってノズルプレート23に貫通形成され、副走査方向に沿って所定のピッチで配列されている。すなわち固定ヘッド22のノズルプレート23は、これらi個のノズルNからなる一列の第1ノズル列NL1を有し、移動ヘッド25のノズルプレート23は、これらi個のノズルNからなる一列の第2ノズル列NL2を有する。なお、本実施形態では、各ノズルNのピッチをノズルピッチDxといい、各ノズル列NL1,NL2の副走査方向における幅をノズル列幅Dwという。
【0027】
図3に示すように、支持プレート17には、副走査方向に延びる第1の貫通溝18aと、同副走査方向において第1の貫通溝18aよりも長い第2の貫通溝18bとが貫通形成されている。第1の貫通溝18aには、固定ヘッド22を支持プレート17のキャリッジ15側から嵌合可能な大きさに形成されている。第2の貫通溝18bは移動ヘッド25を支持プレート17のキャリッジ15側から挿通可能、かつレール24に案内されて副走査方向に移動可能な大きさに形成されている。なお、移動ヘッド25は、少なくともその第2ノズル列NL2が固定ヘッド22の第1ノズル列NL1と走査方向において完全に(100%)重畳するように並ぶ位置から、第2ノズル列NL2が第1ノズル列NL1と走査方向において半分だけ(50%)重畳するように並ぶ位置までを往復移動可能に構成されている。すなわち、第2ノズル列NL2は、第1ノズル列NL1に対して100%重畳す
る全重畳位置から、その全重畳位置に対して左右にノズル列幅Dwの半分の長さだけシフトして、第1ノズル列NL1に対して50%重畳する半重畳位置までの範囲を移動できる。
【0028】
図4において、固定ヘッド22は、各ノズルNの上側にキャビティ26、振動板27及び圧電素子PZを有している。各キャビティ26は、共通するインクタンク14に接続され、インクタンク14から供給される液状体としてのインクIkを収容し、そのインクIkをノズルNに供給する。振動板27は、各キャビティ26に対向する領域をZ方向に振動することによって、該キャビティ26の容積を拡大及び縮小させて、ノズルNのメニスカスを振動させる。各圧電素子PZは、入力端子21cからの駆動波形信号を受けるとき、Z方向に収縮して伸張し、振動板27をZ方向に振動させる。各キャビティ26は、それぞれの振動板27がZ方向に振動するとき、収容するインクIkの一部を液滴DにしてノズルNから吐出させる。吐出される液滴Dは、ノズルNと対向する吐出面SA上の位置、すなわち第1目標点T1に向けて飛行し、第1目標点T1に着弾する。第1目標点T1に着弾した液滴Dは、基板S1の主走査によって基板S1とともに主走査方向に移動する。
【0029】
固定ヘッド22は、各キャビティ26の剛性や容積、インクIkの種類や駆動周波数等、各種の吐出条件に応じて、各ノズルNから吐出する液滴の吐出重量にばらつきを持つ。例えば、本実施形態では、液滴Dの目標重量は1ngであり、第1ノズル列NL1の端部のノズルNにおける吐出重量は目標重量よりも1%〜2%程度だけ高い1.01ng〜1.02ngである。また、第1ノズル列NL1の中央のノズルNにおける吐出重量は目標重量よりも1%〜2%程度だけ低い0.99ng〜0.98ngである。
【0030】
移動ヘッド25は、固定ヘッド22の場合と同様の内部構成からなり、インクIkの一部を液滴DにしてノズルNから吐出させ、ノズルNと対向する吐出面SA上の第2目標点T2に向けて飛行させ着弾させる。これにより、吐出面SAにあって第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが重ねて走査される範囲には、第1ノズル列NL1からの液滴Dと、第2ノズル列NL2からの液滴Dとの2つの液滴Dが着弾する。
【0031】
また、本実施形態では、固定ヘッド22と移動ヘッド25とを同じロットで製作された部品を用いて構成するなどして、移動ヘッド25の第2ノズル列NL2における液滴Dの吐出重量の分布が、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1における吐出重量の分布と実質的に同じとなるようにされている。すなわち、移動ヘッド25の第2ノズル列NL2における吐出重量の偏差と、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1における吐出重量の偏差との差異は、基板S1にパターンを形成する設計ルール上において許容される誤差の範囲にあり、実質的に同じである。
【0032】
図3に示すように、基板S1の吐出面SAは、一点鎖線で示すようにドットパターン格子によって仮想分割されている。ドットパターン格子は、その主走査方向の格子間隔と副走査方向の格子間隔とがそれぞれ液滴Dの吐出間隔によって規定される。主走査方向の吐出間隔である吐出ピッチDyは、駆動波形信号に基づく液滴Dの吐出周波数と、基板S1の主走査速度Vsとによって定められる。また、副走査方向の吐出間隔は、ノズルピッチDxによって定められる。そして、液滴Dを吐出するか否かの選択は、このドットパターン格子の格子点T毎に定められる。これにより、液滴の吐出処理を実行するとき、主走査方向に配列される一群の格子点Tは、キャリッジ15の副走査と基板S1の主走査とによって、共通する一つのノズルNの直下を通過する。
【0033】
すなわち、本実施形態では、各ノズル列NL1,NL2が走査方向で100%重畳するように並んでいる場合には、各格子点Tには、固定ヘッド22及び移動ヘッド25のノズ
ルNからそれぞれの液滴D(例えば略1ng)が吐出される。なお、図3においては、説明の便宜上、ノズルNの数量を省略している。
【0034】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成を図5に従って説明する。
図5において、演算部としての制御装置40は、CPU、ROM、RAMなどを有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、メモリに格納されている各種データ及び各種制御プログラムに基づき、ステージ12及びキャリッジ15を移動させるとともに、移動ヘッド25及び各圧電素子PZを駆動制御する。
【0035】
制御装置40には、起動スイッチ、停止スイッチなどの操作スイッチを有した入力装置41が接続されている。入力装置41は、吐出面SAに対するパターン形成領域の位置座標に関する情報を既定形式の描画情報Iaとして制御装置40に入力する。制御装置40は、入力装置41からの描画情報Iaを受け、第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とを生成する。第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて固定ヘッド22の各圧電素子PZと移動ヘッド25の各圧電素子PZのオンあるいはオフを規定するデータである。第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とは、各第1目標点T1と各第2目標点T2とに、それぞれ液滴Dを吐出するか否かを規定したデータである。すなわち、第1ドットマップデータDM1と第2ドットマップデータDM2とは、パターン形成領域に規定される各格子点Tに液滴Dを吐出させるためのものである。
【0036】
制御装置40には、重量測定装置19が接続されており、制御装置40からこの重量測定装置19に対して測定指令が出力されることより、重量測定装置19は、その測定指令に応答してノズルN毎の液滴Dの重量を測定する。また、重量測定装置19は、測定したノズルN毎の液滴の重量を測定ノズルの位置に関する情報(以下単に、ノズル座標と言う。)とともに制御装置40に出力する。すなわち、制御装置40は、重量測定装置19からのノズル毎の液滴Dの重量とノズル座標とに基づいて、第1ノズル列NL1のノズル座標における重量を示した第1プロファイルである第1吐出重量分布L1aを算出する。そして、算出された第1吐出重量分布L1aは、メモリの吐出プロファイルPFの領域に第1ノズル列NL1の情報として保存される。
【0037】
また、制御装置40は、吐出プロファイルPFの領域から第1吐出重量分布L1aを読み出し、第1吐出重量分布L1aにおけるノズル座標をノズル列方向に所定のシフト量でシフトさせた第2プロファイルである第2吐出重量分布L2aを算出する。そして、算出された第2吐出重量分布L2aは、メモリの吐出プロファイルPFの領域に第2ノズル列NL2の情報として保存される。さらに、制御装置40は、吐出プロファイルPFの領域から第1吐出重量分布L1a及び第2吐出重量分布L2aを読み出し、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとを重畳させた合成プロファイルとしての合成重量分布Laveを算出する。そして、算出された合成重量分布Laveは、メモリの吐出プロファイルPFの領域に合成重量の情報として保存される。
【0038】
制御装置40には、X軸モータ駆動回路42が接続されており、制御装置40からこのX軸モータ駆動回路42に対して駆動指令が出力されることにより、X軸モータ駆動回路42は、その駆動指令に応答してキャリッジ15を移動させるためのX軸モータMXを正転又は逆転させる。また、このX軸モータMXの回転角度を検出するX軸エンコーダXEからの回転角度信号がX軸モータ駆動回路42を介して制御装置40に入力される。すなわち制御装置40は、X軸エンコーダXEからの回転角度信号に基づいて吐出面SAに対するキャリッジ15の移動方向及び移動量を検出するとともにフィードバック制御する。
【0039】
制御装置40には、Y軸モータ駆動回路43が接続されており、制御装置40からこの
Y軸モータ駆動回路43に対して駆動指令が出力されることにより、Y軸モータ駆動回路43は、その駆動指令に応答してステージ12を移動させるためのY軸モータMYを正転又は逆転させる。また、このY軸モータMYの回転角度を検出するY軸エンコーダYEからの回転角度信号がY軸モータ駆動回路43を介して制御装置40に入力される。すなわち制御装置40は、Y軸エンコーダYEからの回転角度信号に基づいてステージ12(吐出面SA)の移動方向及び移動量を検出するとともにフィードバック制御する。また、制御装置40は、Y軸モータ駆動回路43からの信号に基づいて、吐出面SAに対する各第1目標点T1及び各第2目標点T2の相対位置を演算し、各第1目標点T1が格子点Tに位置するときに第1吐出タイミング信号LP1を生成する。また、制御装置40は、各第2目標点T2が格子点Tに位置するときに第2吐出タイミング信号LP2を生成する。
【0040】
制御装置40には、ヘッドモータ駆動回路44が接続されており、制御装置40からこのヘッドモータ駆動回路44に対して駆動指令が出力されることにより、ヘッドモータ駆動回路44は、その駆動指令に応答して移動ヘッド25を移動させるためのヘッドモータMHを正転又は逆転させる。また、このヘッドモータMHの回転角度を検出するヘッドエンコーダHEからの回転角度信号がヘッドモータ駆動回路44を介して制御装置40に入力される。すなわち制御装置40は、ヘッドエンコーダHEからの回転角度信号に基づいて固定ヘッド22の第1ノズル列NL1に対する移動ヘッド25の第2ノズル列NL2の移動方向及び移動量を検出するとともにフィードバック制御する。
【0041】
制御装置40には、吐出ヘッド駆動回路45が接続されている。制御装置40は、第1吐出タイミング信号LP1及び第2吐出タイミング信号LP2を生成するとき、吐出ヘッド駆動回路45に対して圧電素子PZを駆動するための圧電素子駆動電圧COMを出力する。また、制御装置40は、第1ドットマップデータDM1を利用して、吐出周期毎における固定ヘッド22の全ての圧電素子PZに対するオンあるいはオフを規定した第1吐出制御信号SI1を生成し、この第1吐出制御信号SI1を所定の転送クロック信号で吐出ヘッド駆動回路45にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路45は、上記第1吐出制御信号SI1を固定ヘッド22の全ての圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換して、第1目標点T1に対応する上記第1吐出タイミング信号LP1を受けるときにシリアル/パラレル変換された前記第1吐出制御信号SI1をラッチする。そして、吐出ヘッド駆動回路45は、そのラッチされた第1吐出制御信号SI1により選択される固定ヘッド22の全ての圧電素子PZにそれぞれ圧電素子駆動電圧COMを供給する。
【0042】
さらに、制御装置40は、第2ドットマップデータDM2を利用して、吐出周期毎における移動ヘッド25の全ての圧電素子PZに対するオンあるいはオフを規定した第2吐出制御信号SI2を生成し、この第2吐出制御信号SI2を所定の転送クロック信号で吐出ヘッド駆動回路45にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路45は、上記第2吐出制御信号SI2を移動ヘッド25の全ての圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換して、第2目標点T2に対応する上記第2吐出タイミング信号LP2を受けるときにシリアル/パラレル変換された前記第2吐出制御信号SI2をラッチする。そして、吐出ヘッド駆動回路45は、そのラッチされた第2吐出制御信号SI2により選択される移動ヘッド25の全ての圧電素子PZにそれぞれ圧電素子駆動電圧COMを供給する。
【0043】
次に、液滴吐出装置10における液滴吐出ヘッドの配置方法について説明する。なお、図6は液滴吐出ヘッドの配置方法を示す工程図である。
図6において、液滴吐出ヘッドの配置方法では、まず、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1の第1吐出重量分布L1aを取得する(吐出重量分布取得工程:ステップS10)。次いで、第1吐出重量分布L1aを用い、異なるシフト量で複数の第2吐出重量分布L2aが作成され、第1吐出重量分布L1aと各第2吐出重量分布L2aとを重畳させた合成重量分布Laveがシフト量ごとに算出される(吐出重量分布合成工程:ステップS1
1)。また、この液滴吐出ヘッドの配置方法では、全ての合成重量分布Laveの中から吐出重量の偏差が最小となるときの前記シフト量が最適シフト量として決定される(重畳率選択工程:ステップS12)。次いで、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間のノズル列方向におけるずれが前記最適シフト量となるように、移動ヘッド25が移動する(ノズル列移動工程:ステップS13)。
【0044】
吐出重量分布取得工程では、制御装置40が、固定ヘッド22が重量測定装置19の上面の直上へ移動される。すなわち、制御装置40は、重量測定装置19の重量測定天秤の受液容器に固定ヘッド22の第1ノズル列NL1の各ノズルNから吐出された液滴Dが着弾するようにする。そして、制御装置40は、固定ヘッド22の第1ノズル列NL1の各ノズルNから重量測定装置19の受液容器へ液滴Dを吐出させて、受液容器に着弾した液滴Dの重量と当該液滴Dに関わるノズル座標とを重量測定装置19から取得する。制御装置40は、重量測定装置19より取得した液滴Dの重量と、当該液滴Dに関わるノズル座標とに基づいて、図7(b)に示すように、第1ノズル列NL1から吐出された各液滴Dの重量の分布を示す第1吐出重量分布L1aを作成する。第1吐出重量分布L1aは、第1ノズル列NL1の各液滴Dの目標重量(例えば1ng:目標値B0)に対する偏差を示すものである。第1吐出重量分布L1aは、大きな傾向として、ノズル座標が第1ノズル列NL1の端部になるほど重量が高くなる、いわゆるV字形状であるものの、第1ノズル列NL1の中央部より右寄りで最低の重量を示し、左端からノズル列幅Dwの1/5程度の位置において重量が急激に増加する。目標重量が1ngのとき、第1吐出重量分布L1aの最大値は1.01ng〜1.02ngとなり目標重量より1%〜2%程度大きい値となり、第1吐出重量分布L1aの最小値は0.99ng〜0.98ngとなり目標重量より1%〜2%程度小さい値となる。
【0045】
次に、吐出重量分布合成工程では、制御装置40が、吐出プロファイルPFから前記第1吐出重量分布L1aを読み出し、第1吐出重量分布L1aのノズル座標をノズル列方向に所定のシフト量だけシフトさせた変換座標に変換して第2吐出重量分布L2aを作成する。また、制御装置40は、前記シフト量が前記ノズル列幅Dwの半分になるまで前記シフト量を前記ノズルピッチDxだけ繰り返し変化させて前記シフト量ごとの第2吐出重量分布L2aを作成する。そして、制御装置40は、第1吐出重量分布L1aと各第2吐出重量分布L2aとを重畳させ、重畳する範囲において合成される合成重量分布Laveをシフト量ごとに算出する。
【0046】
すなわち、制御装置40は、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとが完全に重畳する全重畳位置(シフト量=0)から、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとが半分だけ重畳する半重畳位置(シフト量=Dw/2)までの範囲で、シフト量がノズルピッチDxだけ増加するごとに、合成重量分布Laveを算出する。そして、制御装置40は、各合成重量分布Laveと、当該合成重量分布Laveを得るためのシフト量に関する情報をメモリの吐出プロファイルPFの領域に保存する。
【0047】
なお、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとを重畳させて得た合成重量分布Laveは、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとが重ね合わされた座標領域LN2に対して求められ、合成重量分布Laveにおける重量は、第1吐出重量分布L1aにおける重量と第2吐出重量分布L2aにおける重量との合成である。例えば、第1吐出重量分布L1aにおける重量が0.98ng〜1.02ngである場合、合成重量分布Laveにおける重量は最大で1.96ng〜2.04ngの範囲で変化する。図7(b)においては、各吐出重量分布を説明する便宜上、合成重量分布Laveにおける重量を半分にして示す。なお、図7においても、説明の便宜上、ノズルNの数量を省略している。
【0048】
重畳率選択工程では、制御装置40が、シフト量ごとの合成重量分布Laveに関する情報を読み出し、重量の偏差が最小となるシフト量、すなわち合成重量分布Laveの波形の変動振幅が最も小さくなるときのシフト量を最適シフト量として決定する。なお、本実施形態では、最適シフト量をDsoとするとき、[(Dw−Dso)/Dw]×100を最適重畳率と言う。
【0049】
例えば、図7(b)を参照して、シフト量がDw/2の場合、合成重量分布Laveは、座標領域LN2の左端部では第1吐出重量分布L1aの目標値B0に対するマイナス量と、第2吐出重量分布L2aの目標値B0に対するプラス量とが加算されて、合成重量分布Laveにおける重量の偏差が略「0」に近い値となる。また、座標領域LN2の中央部では第1吐出重量分布L1aの目標値B0に対する略「0」の偏差量と、第2吐出重量分布L2aの目標値B0に対する少しのプラスの偏差量とが加算されて、合成重量分布Laveにおける重量に若干の正偏差がある。また、座標領域LN2の右端部では第1吐出重量分布L1aの目標値B0に対する大きなプラス量と、第2吐出重量分布L2aの目標値B0に対するマイナス量とが加算されて、合成重量分布Laveにおける重量に若干の正偏差がある。制御装置40は、上記シフト量を0〜Dw/2の範囲でノズルピッチDxごとに変化させ、上記合成重量分布Laveにおける重量の偏差が最小となるシフト量を最適シフト量として決定する。
【0050】
ちなみに、合成重量分布Laveは、第1吐出重量分布L1aがノズル列方向で対称の単純なV字形状の分布である場合、シフト量がDw/2(最適重畳率が50%)になることで、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとの相殺により、その重量の偏差を最小の0にできる。また、合成重量分布Laveは、第1吐出重量分布L1aがノズル列方向で対称の単純なW字形状の分布である場合、シフト量がDw/4(最適重畳率が75%)になることで、第1吐出重量分布L1aと第2吐出重量分布L2aとの相殺により、その重量の偏差を最小の0にできる。そして、本実施形態における液滴吐出装置10によれば、第1吐出重量分布L1aが上記単純形状でない場合であっても、合成重量分布Laveにおける重量の偏差が最小となるように、最適シフト量を決定できる。
【0051】
ノズル移動工程では、制御装置40が、ヘッドモータMHの駆動制御を介して第2ノズル列NL2を第1ノズル列NL1に対して副走査方向に移動させる。そして、制御装置40は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の副走査方向におけるずれが前記最適シフト量となるように、すなわち第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが走査方向から見て前記最適重畳率で重なり合うように配置される。
【0052】
上述のように第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが前記最適重畳率で配置されると、制御装置40は、キャリッジ15に対して基板S1の吐出面SAを走査して、基板S1の吐出面SAに各ノズル列NL1,NL2から液滴Dを吐出させる。
【0053】
このとき、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが重畳する座標領域LN2では、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との協働により、目標値B0の2倍に相当するインクIkが副走査方向で平均化されて吐出される。一方、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが重畳しない各座標領域LN1,LN3では、それぞれ目標値B0に相当するインクが第1吐出重量分布L1a及び第2吐出重量分布L2aで吐出されてしまう。
【0054】
このような場合、図8に示すように、1回目の走査P1で第1ノズル列NL1のみから液滴Dが配置された座標領域LN3に、2回目の走査P2で第2ノズル列NL2のみから液滴Dが配置されるようにする。すなわち、1回目の走査P1の後に、キャリッジ15の移動にしたがって第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とをノズル列幅Dwだけ副走
査方向に移動させる。この副走査方向への移動により、2回目の走査P2で座標領域LN3〜LN5の範囲に第1ノズル列NL1からは第1吐出重量分布L1aと同じ吐出重量分布L1bにて、第2ノズル列NL2からは第2吐出重量分布L2aと同じ吐出重量分布L2bにて液滴Dが吐出される。これにより、1回目の走査P1で第2ノズル列NL2のみが液滴Dを配置した座標領域LN3に、2回目の走査P2で第1ノズル列NL1のみが液滴Dを配置するようにするようになることで、座標領域LN3には第1ノズル列NL1の左側と第2ノズル列NL2の右側とから2つの液滴Dが配置される。
【0055】
このとき、第1ノズル列NL1の左側は第2ノズル列NL2の左側と同じ吐出重量の分布であり、第2ノズル列NL2の右側は第1ノズル列NL1の右側とこれも同じ吐出重量の分布であり、座標領域LN2において重畳する第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との関係と同様となる。このことから、座標領域LN3における第1ノズル列NL1の左側と第2ノズル列NL2の右側との合成重量分布Laveは、座標領域LN2の場合と同様となり、座標領域LN3にも座標領域LN2と同じ重量均一性で液滴Dが配置されることになる。また座標領域LN4は、上述した座標領域LN2と同じ均一性で液滴Dが配置される。このように第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2を副走査方向に移動させながら吐出面SAを走査させることで、液滴吐出装置10は吐出面SAに高い重量均一性で液滴Dを配置することがきる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば以下のような効果が得られるようになる。
(1)本実施形態によれば、主走査方向において隣接する固定ヘッド22と移動ヘッド25の間では、各ノズル列NL1,NL2の配列方向おけるずれが最適シフト量に設定された。これにより、固定ヘッド22及び移動ヘッド25と基板S1とを主走査方向に沿って相対移動させるとき、主走査方向において固定ヘッド22と移動ヘッド25とが重畳する座標領域LN2においては、各ノズル列NL1,NL2の配列方向における重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、主走査方向と各ノズル列NL1,NL2の配列方向とで形成される基板S1上の吐出面SAにおいて、インクIkの重量均一性を向上させることができる。
【0057】
(2)本実施形態によれば、主走査方向において固定ヘッド22と移動ヘッド25が同主走査方向から見て重なるシフト量0〜Dw/2の範囲において、最適シフト量(最適重畳率)が決定された。これにより、主走査方向と各ノズル列NL1,NL2の配列方向とで形成される基板S1上の吐出面SAにおいて、インクIkの重量均一性を、より一層に向上させることができる。
【0058】
(3)本実施形態によれば、固定ヘッド22を固定して、移動ヘッド25のみが移動するようにした。これにより、固定ヘッド22を固定する分だけ、シフト機構の複雑化を抑制できる。
【0059】
(4)本実施形態によれば、1回目の走査P1で第1ノズル列NL1のみから液滴Dが配置された座標領域LN3に、2回目の走査P2で第2ノズル列NL2のみから液滴Dが配置されるようにした。これにより、複数の走査を要するものの、2つのノズル列NL1,NL2であれ、基板S1上の吐出面SAの広い範囲に重量均一性が向上されたインクIkを配置することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図9に、本発明を具体化した第2の実施形態についてその概略図を示す。なお、この第2の実施形態は、第1の実施形態におけるキャリッジ15に2つの移動ヘッド(第1の移動ヘッド25A及び第2の移動ヘッド25B)を搭載したものである。そのため、以下では主に、先の第1の実施形態との相違点を中心に、各移動ヘッド25A,25Bの配置方
法について説明する。また、第1の実施形態と同様の部材には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0061】
第1の移動ヘッド25A及び第2の移動ヘッド25Bの各吐出重量分布は、前記固定ヘッド22と同様である。固定ヘッド22と第1の移動ヘッド25Aとの間、及び第1の移動ヘッド25Aと第2の移動ヘッド25Bとの間では、副走査方向におけるずれを最適シフト量とすることで、すなわち各ノズル列を最適重畳率で重ね合わせることで、合成重量分布Laveにおける重量の偏差を最小にできる。本実施形態においては、最適シフト量がDw/2であり、最適重畳率が50%である。
【0062】
そこでまず、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが最適重畳率である50%で重なり合うように、第1ノズル列NL1の右側半分と第2ノズル列NL2の左側半分とが走査方向から見て重畳して配置される。次いで、第2ノズル列NL2とノズル列NL3とが最適重畳率である50%で重なり合うように、第2ノズル列NL2の右側半分とノズル列NL3の左側半分とが走査方向から見て重畳して配置される。この配置により、副走査方向に連続する座標領域LN2と座標領域LN3とにおいて、重量の偏差が最小となる高い均一性で液滴Dが配置されるようになる。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態によっても先の第1の実施形態の前記(1)〜(4)の効果と同等もしくはそれに準じた効果が得られるとともに、次のような効果が得られるようになる。
【0064】
(5)本実施形態によれば、キャリッジ15に3つの液滴吐出ヘッド(固定ヘッド22、第1の移動ヘッド25A及び第2の移動ヘッド25B)を搭載した。これにより、固定ヘッド22と第1の移動ヘッド25Aとが重畳する座標領域LN2、及び、第1の移動ヘッド25Aと第2の移動ヘッド25Bとが重畳する座標領域LN3において一回の走査P1aで重量を均一化された液滴群が吐出される。この結果、主走査方向と各ノズル列NL1,NL2,NL3の配列方向とで形成される広い範囲の基板S1上の吐出面SAにおいて、インクIkの重量均一性を向上させることができる。
【0065】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第1吐出重量分布L1aが目標値B0に対してプラス方向及びマイナス方向にそれぞれ1%〜2%の変化をする、すなわち2%〜4%程度の変動振幅を有するものとしたが、変動振幅の幅は2%〜4%よりも大きくても小さくてもよい。また、第1吐出重量分布L1aは、目標値B0を中心に分布するものとしたが、目標値B0を中心として分布する場合には限られず、目標値B0に対して、全体的に重量が高い方向もくしは低い方向にシフトしているような分布でもよい。
【0066】
・第1の実施形態において、最適重畳率が50%より大きく100%以下になる場合は、図10に示すように、まず第1の走査P1で座標領域LN21〜LN23に液滴Dを配置する。このとき座標領域LN22には第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とから液滴Dが配置され、座標領域LN21には第1ノズル列NL1のみから、座標領域LN23には第2ノズル列NL2のみから液滴Dが配置される。次に、第2の走査P2を行うために第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とを副走査方向に移動させる。このとき、第1の走査P1を行った第2ノズル列NL2と、第2の走査P2を行う第1ノズル列NL1とが最適重畳率で重なるように移動させる構成が好ましい。
【0067】
このような配置により、第2の走査P2を行う第1ノズル列NL1と第1の走査P1を行った第2ノズル列NL2とが液滴を配置する座標領域LN23においても高い重量均一性の下で液滴を配置できる。
【0068】
なお、この場合、第2の走査P2をする第1ノズル列NL1の一部領域LN23aが座標領域LN22と重複し、第2ノズル列NL2の一部領域LN23aが座標領域LN23と重複する。そこで、第2の走査P2では第1ノズル列NL1の一部領域LN23a及び第2ノズル列NL2の一部領域LN23aからはそれぞれ液滴Dを吐出させないようにする。これにより、第1の走査P1と第2の走査P2により座標領域LN22から座標領域LN24の間に高い重量均一性の下で液滴Dを配置できる。
【0069】
・第2の実施形態では、最適重畳率が50%である場合について説明したが、これに限らず、最適重畳率は50%以外であってもよい。また、最適重畳率が50%より大きく100%以下の間である場合には、第1ノズル列NL1とノズル列NL3とが重畳する範囲に限り、ノズル列NL3からの液滴の吐出をさせない構成が好ましい。
【0070】
・第1の実施形態では、各液滴吐出ヘッドはそれぞれ一列のノズル列NL1,NL2を有し、上記第2の実施形態では、各液滴吐出ヘッドはそれぞれ一列のノズル列NL1,NL2,NL3を有した。これに限らず、各液滴吐出ヘッドは複数のノズル列を有してもよい。この場合は、例えば、液滴吐出ヘッドごとに吐出重量分布を算出し、その吐出重量分布に基づいて合成重量分布を算出して最適重畳率を選択するようにしてもよい。
【0071】
・第1の実施形態では、固定ヘッド22に対して移動ヘッド25を左右に移動可能にした。これに限らず、液滴吐出ヘッドをどちらか一方のみにずれるようにしてもよい。特に、各液滴吐出ヘッドの吐出重量分布が同様の特性である場合には、どちらか一方のみにずれるようにすれば必ず合成重量分布の均一性の高い重畳率とすることができる。
【0072】
・上記実施形態では、移動しない固定ヘッド22と移動する移動ヘッド25(25A,25B)を設けた。しかしこれに限らず、すべての液滴吐出ヘッドが移動可能であってもよい。
【0073】
・第2の実施形態では、キャリッジ15には3つの液滴吐出ヘッドを設けたが、キャリッジの有する液滴吐出ヘッドの数は3つより多くてもよい。
・上記実施形態では、固定ヘッド22の第1吐出重量分布L1aのみを測定した。しかしこれに限らず、各液滴吐出ヘッドの吐出重量の分布を測定するようにして、各液滴吐出ヘッドの各吐出重量の分布を合わせて形成した波形から均一性の最も高い重畳率を算出するようにしてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、固定ヘッド22の第1吐出重量分布L1aと移動ヘッド25,25A,25Bの各第2吐出重量分布L2a,L3aは同様の分布としたが、各吐出重量分布はそれぞれ異なる分布の態様であってもよい。各吐出重量分布が相違する場合であれ、合成重量分布の変動振幅を小さくする重畳率が取得できればよい。
【0075】
・上記実施形態では、ヘッドユニット20を圧電素子駆動方式に具体化した。これに限らず、液滴吐出ヘッドを、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐出ヘッドに具体化してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、吐出重量分布を用いたが、対象物に吐出されたインクの均一性を判断できる指標となるものであれば、吐出重量分布を吐出液量などに基づいて算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】液滴吐出装置の一実施形態を示す全体斜視図。
【図2】吐出ヘッドを下側から見た底面図。
【図3】液滴吐出ヘッドの配置を示す底面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの吐出動作を示す側面図。
【図5】液滴吐出装置の電気的構成を示すブロック図。
【図6】液滴吐出ヘッドの配置方法の手順を示す工程図。
【図7】(a)は重畳した2つのノズル列を示す模式図、(b)は各種吐出重量分布を示すグラフ。
【図8】(a)は重畳した2つのノズル列の走査を示す模式図、(b)は2つのノズル列の2回走査で得られる各種吐出重量分布を示すグラフ。
【図9】(a)は重畳した3つのノズル列を示す模式図、(b)は3つのノズル列における各種吐出重量分布を示すグラフ。
【図10】重畳させた2つのノズル列の走査方法の一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0078】
10…液滴吐出装置、11…基台、12…ステージ、13…ガイド部材、14…インクタンク、15…キャリッジ、17…支持プレート、18a…第1の貫通溝、18b…第2の貫通溝、19…重量測定装置、20…ヘッドユニット、21…ヘッド基板、21a…上面、21b…下面、21c…入力端子、22…固定ヘッド、23…ノズルプレート、23a…ノズル形成面、24…レール、25,25A,25B…移動ヘッド、26…キャビティ、27…振動板、40…プロファイル作成部及びシフト量決定部を構成する制御装置、D…液滴、N…ノズル、GB…ギア、MH…ヘッドモータ、MX…X軸モータ、MY…Y軸モータ、PZ…圧電素子、RG…ラックギア、S1…基板、SA…吐出面、NL1,NL2,NL3…ノズル列。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた複数の液滴吐出ヘッドを走査方向に並置した状態で搭載して対象物に対し前記走査方向に相対的に移動するキャリッジと、前記各ノズルから吐出した液滴の重量を測定する重量測定装置とを備えた液滴吐出装置であって、
前記重量測定装置からの測定結果に基づいて、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを作成すると共に、前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成するプロファイル作成部と、
前記シフト量を変化させて前記プロファイル作成部に複数の異なる前記第2プロファイルを作成させ、前記複数の第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定するシフト量決定部と、
前記キャリッジに設けられて、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記液滴吐出ヘッドを前記一方向へシフトするシフト機構とを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載する液滴吐出装置であって、
前記シフト量決定部は、
前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を前記ピッチだけ繰り返し変化させて前記シフト量ごとに前記合成プロファイルを作成することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する液滴吐出装置であって、
前記シフト機構は、前記走査方向において隣接する一対の前記液滴吐出ヘッドの一方を固定して他方をシフトすることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた液滴吐出ヘッドを用い、対象物に対して走査方向に相対的に移動するキャリッジに複数の前記液滴吐出ヘッドを配置する液滴吐出ヘッドの配置方法であって、
前記各ノズルから吐出した液滴の重量を測定して、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを取得する工程と、
前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成する工程と、
前記シフト量を変化させて作成した複数の異なる前記第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定する工程と、
前記複数の液滴吐出ヘッドを前記走査方向へ並置すると共に、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記複数の液滴吐出ヘッドを配置する工程とを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの配置方法。
【請求項5】
請求項4に記載する液滴吐出ヘッドの配置方法であって、
前記シフト量を決定する工程は、
前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を
前記ピッチだけ繰り返し変化させることを特徴とする液滴吐出ヘッドの配置方法。
【請求項1】
一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた複数の液滴吐出ヘッドを走査方向に並置した状態で搭載して対象物に対し前記走査方向に相対的に移動するキャリッジと、前記各ノズルから吐出した液滴の重量を測定する重量測定装置とを備えた液滴吐出装置であって、
前記重量測定装置からの測定結果に基づいて、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを作成すると共に、前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成するプロファイル作成部と、
前記シフト量を変化させて前記プロファイル作成部に複数の異なる前記第2プロファイルを作成させ、前記複数の第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定するシフト量決定部と、
前記キャリッジに設けられて、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記液滴吐出ヘッドを前記一方向へシフトするシフト機構とを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載する液滴吐出装置であって、
前記シフト量決定部は、
前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を前記ピッチだけ繰り返し変化させて前記シフト量ごとに前記合成プロファイルを作成することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する液滴吐出装置であって、
前記シフト機構は、前記走査方向において隣接する一対の前記液滴吐出ヘッドの一方を固定して他方をシフトすることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
一方向に同一ピッチで配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられた液滴吐出ヘッドを用い、対象物に対して走査方向に相対的に移動するキャリッジに複数の前記液滴吐出ヘッドを配置する液滴吐出ヘッドの配置方法であって、
前記各ノズルから吐出した液滴の重量を測定して、前記ノズルの位置であるノズル座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第1プロファイルを取得する工程と、
前記ピッチで規格化したシフト量だけ前記一方向へ前記ノズル座標を移動させた変換座標を用い、前記ノズル座標の移動先である前記変換座標に対して当該ノズル座標における重量を示した第2プロファイルを作成する工程と、
前記シフト量を変化させて作成した複数の異なる前記第2プロファイルの各々と前記第1プロファイルとを重ね合わせることにより複数の合成プロファイルを作成し、前記各合成プロファイルにおける前記重量の偏差に基づいて、前記偏差が最小になるときの前記シフト量である最適シフト量を決定する工程と、
前記複数の液滴吐出ヘッドを前記走査方向へ並置すると共に、前記走査方向において隣接する前記液滴吐出ヘッド間の前記一方向におけるずれが前記最適シフト量になるように前記複数の液滴吐出ヘッドを配置する工程とを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの配置方法。
【請求項5】
請求項4に記載する液滴吐出ヘッドの配置方法であって、
前記シフト量を決定する工程は、
前記シフト量が前記ノズル列の前記一方向における幅の半分になるまで前記シフト量を
前記ピッチだけ繰り返し変化させることを特徴とする液滴吐出ヘッドの配置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−248480(P2009−248480A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100326(P2008−100326)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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