説明

液滴吐出装置

【課題】液滴の着弾位置を精密にコントロール可能な液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】吐出ヘッド8と被着体20の移動を検出してパルス信号を出力するパルス信号出力手段、パルス信号出力手段からの信号をカウントするカウンタ18と、各塗布目標位置付近を前記移動方向に沿って複数に等分割して、予め入力された各オリフィス毎の液滴塗布開始位置データとカウンタ18からのカウントに基いて、当該オリフィス25の位置が各塗布目標位置に最も近づくまでのオリフィス毎塗布タイミング信号の発生遅延時間を設定する遅延制御部19と、遅延制御部19から出力されるオリフィス毎塗布タイミング信号に同期して、各オリフィス25から液滴を吐出するヘッドドライバ7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出装置に係り、特にインクジェット記録装置の原理を応用した液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は記録媒体に対して非接触で液滴(インク滴)を付着することができるため、このインクジェット記録装置の原理を応用した液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンスなどの各種ディスプレイの製造装置(液滴吐出装置)が開発されている。
【0003】
一方、液晶表示装置では、2枚の液晶基板の隙間を一定に維持するために、微粒子状のスペーサを前記液晶基板の間に介在している。そしてスペーサを分散させた塗布液を前記液滴吐出装置を用いて液晶基板に向けて吐出して、スペーサを液晶基板の所定位置に付着する方法が採られている。
【0004】
この液滴吐出装置によれば、所定の位置にほぼ必要個数のスペーサを配置することができ、また多数のオリフィスを有する吐出ヘッドを用いれば、多数の指定位置に同時にスペーサを配置することができ、生産効率が高められるなどの特長を有している。
【0005】
インクジェット記録装置では、記録媒体に対する記録画素の位置精度はさほど厳しくなく、0.1mm程度の精度があればよい。これに対してディスプレイ製造装置では、被着体である液晶基板上はすでに精細にパターニングされており、各パターンに対するスペーサの位置精度は約1μmと非常に厳しい。この約1μmの位置精度を実現するためには、デジタル画像データの解像度を高める必要があり、そのためにデータ量が必然的に多くなる。
【0006】
このデジタル画像データ量の増大を抑制するため、スペーサの打ち始めだけ高精度に位置決めして、それ以降はディスプレイ画素の間隔に合わせて正確に繰り返してスペーサを吐出する方法がある。
【0007】
なお、この種のインクジェット塗布装置に関しては例えば下記のような特許文献1を挙げることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−230379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この方法によればデジタル画像データ量の増大を抑制することができるが、次のような問題がある。ディスプレイ製造装置の生産性を高めるために、一辺が1m程度の大型の基板素材上に間隔をおいて複数のディスプレイセルを並べて形成し、このディスプレイセル上に多数のオリフィスを等間隔に列設した吐出ヘッドを用いて連続して液滴を吐出するようになっている。
【0010】
図13は、そのときの液滴の吐出状態を説明するための一部説明図である。同図に示すようにガラス板からなる大型の基板素材100上に第1のディスプレイセル101aと第2のディスプレイセル101bが所定の間隔Lをおいて形成されている。各ディスプレイセル101上にはR,G,Bのディスプレイ画素102が規則正しくパターンニングされており、各ディスプレイ画素102の所定位置上にスペーサが付着される。
【0011】
このスペーサの吐出は、多数のオリフィス103を列設した吐出ヘッド104を用いて各オリフィス103から同時になされる。各オリフィス103のピッチはスペーサ付着位置のピッチと同じになっており、液滴吐出装置(図示せず)に搭載している前記吐出ヘッド104に対して前記基板素材100を搭載した搬送ステージ(図示せず)が矢印A方向に往復移動することにより、各ディスプレイセル101上スペーサが連続的に付着される。図中の各ディスプレイセル101上において●印105aはすでにスペーサを付着した位置を、〇印105bはスペーサを今から付着する位置を示している。
【0012】
同図は、第1のディスプレイセル101aの終わり部分と第2のディスプレイセル101bの始め部分に対して、前記吐出ヘッド104により同時にスペーサを吐出する状態を示している。このとき同図に示すように、両ディスプレイセル101a,101bはともにディスプレイ画素間隔は同じでも、両ディスプレイセル101a,101bの間隔Lが移動方向Aのディスプレイ画素間隔(オリフィス間隔)の倍数でない場合、第1のディスプレイセル101aへのスペーサの吐出から次の第2のディスプレイセル101bに移ったとき、第2のディスプレイセル101b上でのディスプレイ画素102に対するスペーサの着弾位置がずれることになり、このまま第2のディスプレイセル101bへのスペーサの塗布が続行されると、第2のディスプレイセル101b全体においてスペーサの着弾位置がずれることになる。
【0013】
このような問題を解消するため、前記特許文献1に記載されているような提案がなされている。この特許文献に記載されているインクジェット塗布装置は、複数のノズルが等間隔列状に配置されたインクジェットヘッドを用いて、塗布媒体上の塗布目標画素にインクを塗布するものにおいて、前記塗布目標画素のパターンを記述するパターンデータから塗布データおよびタイミング制御データを生成するデータ生成手段と、前記タイミング制御データに従って駆動波形発生信号を生成する駆動波形発生信号生成手段と、前記タイミング制御データに従って塗布データ転送信号を生成する塗布データ転送信号生成手段と、前記塗布データ転送信号に従って塗布データを転送する塗布データ転送手段と、前記駆動波形および前記塗布データに基き各ノズルのインクの吐出を制御するノズル制御手段とを備えている。
【0014】
本発明の目的は、この提案されたインクジェット塗布装置よりも更に精密に液滴の着弾が可能な液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、複数のオリフィスを設けた吐出ヘッドと液滴を着弾する例えば後述の基板素材などからなる被着体とを相対的に移動させながら、前記被着体上の各オリフィスに対応した各塗布目標位置に対して前記各オリフィスから液滴を吐出して、各塗布目標位置付近に液滴を着弾する液滴吐出装置を対象とするものである。
【0016】
そして前記吐出ヘッドと被着体の相対的な移動を検出してパルス信号を出力する例えばエンコーダなどのパルス信号出力手段と、
そのパルス信号出力手段からのパルス信号をカウントするカウンタと、
前記各塗布目標位置付近を前記移動方向に沿って複数に等分割して、予め入力された前記各オリフィス毎の液滴塗布開始位置データと前記カウンタからのカウント信号に基いて、当該オリフィスの位置が前記各塗布目標位置に最も近づくまでのオリフィス毎塗布タイミング信号の発生遅延時間を設定する遅延制御部と、
その遅延制御部から出力されるオリフィス毎塗布タイミング信号に同期して、前記各オリフィスから液滴を吐出するヘッドドライバとを備えていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記各塗布目標位置付近が1つのディスプレイ画素で構成され、その1つのディスプレイ画素上が前記移動方向に沿って複数に等分割されるとともに、当該ディスプレイ画素上にスペーサの塗布目標位置が定められており、スペーサ粒子を含有する塗布液が各オリフィスから前記塗布目標位置に向けて吐出されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は前述のような構成になっており、各塗布目標位置付近を複数に分割することにより、精密な液滴の着弾が可能であり、この時分割数を増すことにより液滴の着弾位置の精度が更に高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明の実施形態を図と共に説明する。図1は本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体の概略構成図である。
【0020】
まず、この液滴吐出装置の概略構成を図1とともに説明する。同図に示すように液滴吐出装置は、大きく分けて主制御部1と吐出装置本体2とから構成されている。前記主制御部1は、制御用コンピュータ3と画像展開メモリ4とタイミング制御回路5などを備え、前記吐出装置本体2は駆動波形生成回路6とヘッドドライバ7と吐出ヘッド8と搬送ステージ9とエンコーダ付きステージモータ10などを備えており、各部は図に示すような接続関係になっている。
【0021】
前記制御用コンピュータ3はデータ変換ソフトとステージ制御ソフトを内蔵しており、前記データ変換ソフトはキーボード(図示せず)を介して入力されたパターンデータに基いて塗布条件設定データとタイミング制御データとを生成し、これらデータ(塗布条件の設定に関するデータ17)のうちの必要なものを図に示すよう画像展開メモリ4とタイミング制御回路5と駆動波形生成回路6に送信する。前記ステージ制御ソフトは、搬送ステージ9の動作を制御するものである。
【0022】
前記画像展開メモリ4へは、前記制御用コンピュータ3から具体的には後述する塗布ピッチならびに塗布ドット数などの塗布条件の設定に関するデータ17が入力設定される。
【0023】
前記タイミング制御回路5へは、前記制御用コンピュータ3から具体的には塗布開始位置タイミング制御データなどの塗布条件の設定に関するデータ17が入力設定されるとともに、ステージモータ10のエンコーダから搬送ステージ速度を表すエンコーダパルス信号11のカウントデータが入力される。
【0024】
このタイミング制御回路5では、設定された塗布開始位置や搬送ステージ速度に基いて各オリフィスが塗布を開始するように、エンコーダパルス信号11をカウントし、各オリフィス毎の塗布タイミング信号12を前記画像展開メモリ4へ送信する。またエンコーダパルス信号11のカウントによるタイミングを元に、駆動波形生成回路6へ駆動波形生成信号13が送信されて駆動波形の電圧や形状が設定される。
【0025】
前記画像展開メモリ4では、塗布ピッチならびに塗布ドット数の設定を元に画像展開を行ない、オリフィスの配列に合わせてデータの並び替えを行う。並び替えられた塗布データ14はオリフィス毎塗布タイミング信号12に同期してヘッドドライバ7へ転送される。
【0026】
前記駆動波形生成回路6では、前記タイミング制御回路5からの駆動波形生成信号13に基いて駆動波形信号15を生成し、それを吐出ヘッド8に出力する。またヘッドドライバ7では、前記画像展開メモリ4からの塗布データ14に基いてドライブ信号16を生成し、それを吐出ヘッド8に出力する。
【0027】
図2は、前記タイミング制御回路5のブロック図である。タイミング制御回路5は同図に示すように前記ステージモータ10からのエンコーダパルス信号11をカウントするカウンタ18と、そのカウンタ18からの出力データと前記制御用コンピュータ3からの塗布条件の設定に関するデータ17とがそれぞれ入力される複数の遅延制御部19a,19b,19c,・・・が設けられている。各遅延制御部19a,19b,19c,・・・は吐出ヘッドに形成されている複数のオリフィスと対応しており、各遅延制御部19a,19b,19c・・・からオリフィス毎の塗布タイミング信号12a,12b,12c,が出力される。
【0028】
吐出ヘッドには複数のオリフィスが形成されており、例えばオリフィスNo.1と対応している遅延制御部19aからオリフィス毎塗布タイミング信号12aが出力されてから他のオリフィス(例えばその隣のオリフィスNo.2)の塗布タイミング信号12bが出力されるまでの遅延時間を、遅延制御部19bにおいて、塗布条件の塗布開始位置データ(塗布条件の設定に関するデータ17)を元にしてエンコーダパルス信号11をカウントして制御する。他の遅延制御部19においても同様である。
【0029】
図3は、各信号ならびに駆動波形のタイミングチャートである。図中の(a)はカウンタ18に入力されるエンコーダパルス信号11、(b)はタイミング制御回路5から出力される駆動波形生成信号13、(c)はその駆動波形生成信号13に基いて駆動波形生成回路6から出力される駆動波形、(d)は例えば前記オリフィスNo.1と対応している遅延制御部19aから出力されるオリフィス毎塗布タイミング信号12a、(e)は例えば前記オリフィスNo.2と対応している遅延制御部19bから出力されるオリフィス毎塗布タイミング信号12b、(f)は例えばオリフィスNo.3と対応している遅延制御部19cから出力されるオリフィス毎塗布タイミング信号12c、(g)は前記遅延制御部19bで演算されたオリフィス毎塗布タイミング信号12bの遅延時間、(h)は前記遅延制御部19cで演算されたオリフィス毎塗布タイミング信号12cの遅延時間である。
【0030】
同図に示すように塗布タイミング信号12bは塗布タイミング信号12aが出力されてから遅延時間t1経過後に出力され、塗布タイミング信号12cは塗布タイミング信号12aが出力されてから遅延時間t2経過後に出力される。各塗布タイミング信号12の出力周期Tは一定で、前述のタイミングをもって繰り返し出力される。
【0031】
図4は、吐出ヘッド20とスペーサの塗布位置21との関係を示す平面図である。同図に示すようにスペーサを塗布すべきディスプレイセル22の表面にはR,G,Bのディスプレイ画素23が規則正しく配列されている。本実施形態の場合、各ディスプレイ画素23の中央位置に複数(例えば3〜5個程度)のスペーサからなるスペーサ集合体24が着弾(付着)される。ディスプレイの種類などによっては、ディスプレイ画素23とディスプレイ画素23の間に形成されている網目状の遮光膜の交叉部分にスペーサ集合体24を着弾(付着)する場合もある。
【0032】
図に示すように、吐出ヘッド20には複数のオリフィス25がP1のピッチで一直線上に等間隔に形成されているのに対して、ディスプレイセル22上に付着されるスペーサ集合体24の搬送ステージ移動方向Aと直交する方向のピッチP2は、ディスプレイの種類などによって異なることが多々ある。そのため液滴塗布装置上での吐出ヘッド20の傾斜角度θを調整して、スペーサ集合体24のピッチP2に合わせるようになっている。
【0033】
前記ディスプレイセル22を複数所定の間隔をおいて形成した大型の基板素材20を図1に示すように搬送ステージ9上に搭載して位置決めし、前記ディスプレイセル22の前記ピッチP2に合わせて吐出ヘッド20の傾斜角度θを調整する。そして吐出ヘッド20に対して搬送ステージ9を矢印A方向に移動するとともに、図4に示すようにディスプレイセル22上の塗布位置21に対して吐出ヘッド20の各オリフィス25から液滴を吐出することにより、ディスプレイセル22上に連続してスペーサ集合体24を着弾(付着)することができる。
【0034】
図5は、基板素材20が矢印A方向に移動し、その上に間隔Lをおいて形成されている第1のディスプレイセル22aから第2のディスプレイセル22bにかけて、吐出ヘッド8からスペーサを含む液滴を吐出する状態を示した平面図である。なお、前記間隔Lは同図に示すように、搬送ステージ移動方向Aの間隔であって、第1のディスプレイセル22aにおける最後のスペーサ塗布位置21の中心から、第2のディスプレイセル22bにおける最初のスペーサ塗布位置21の中心までの距離のことである。
【0035】
同図は、第1のディスプレイセル22aの図面から見て下より第1〜4段目のスペーサ集合体24の付着は終了し、第5段目が吐出ヘッド20のオリフィスNo.5であるオリフィス25eで、第6段目が吐出ヘッド20のオリフィスNo.6であるオリフィス25fで、それぞれスペーサ集合体24の付着が行なわれるとともに、吐出ヘッド20の先端部にあるオリフィスNo.1のオリフィス25aが次の第2のディスプレイセル22bの第1段目に到達しており、そのオリフィス25aからスペーサ集合体24の付着が行なわれる状態を示している。なおこの状態のとき、オリフィス25b〜25dはディスプレイセル22と対応していないため、これらオリフィス25b〜25dからの吐出は停止している。
【0036】
図5の状態のとき、オリフィスNo.1のオリフィス25aの到達位置が第2のディスプレイセル22bの第1段目のスペーサの塗布位置21と一致しておれば問題はないが、第1のディスプレイセル22aと第2のディスプレイセル22bの間隔Lによっては、オリフィス25aの位置とスペーサの塗布位置21とがずれることがある。
【0037】
本発明ではこの間隔Lに基くずれを補正するため、ディスプレイセル22(本実施形態では第2のディスプレイセル22b)に対して最初に液滴を吐出するオリフィス25(本実施形態ではオリフィスNo.1のオリフィス25a)の塗布ピッチを複数分割する時分割シフト制御を用いる。
【0038】
図6ならびに図7は、この時分割シフト制御例を説明するための図である。この例は1つのディスプレイ画素23における搬送ステージ移動方向Aでの塗布ピッチ26を3等分に分割した例を示しており、この塗布ピッチ26はスペーサの塗布位置21の間隔と等しく、搬送ステージ移動方向Aに沿って一定間隔である。符号27は3分割したときの各時分割シフト間隔(等間隔)を示しており、搬送ステージ移動方向Aに沿って一定間隔でシフトするようになっている。塗布ピッチ26は具体的には例えば100μm〜200μm程度であり、その間が例えば10〜50程度に時分割され、従って時分割シフト間隔27は例えば2μm〜20μm程度であり、極微小な時分割シフト制御となり、結局、2μm〜20μm程度の位置精度で液滴を着弾することができる。
【0039】
これらの図で各シフトタイミングにおけるオリフィスの位置28を点線で示しており、実線で示している目標のスペーサ塗布位置21にオリフィスの位置28が最も近づいたシシフト位置(フトタイミング)で液滴をオリフィス25から吐出するような制御となっている。
【0040】
図7は、その時分割シフト制御を具体的に説明するための図である。前述のオリフィスNo.1にあたるオリフィス25a(図5参照)が図7に示す「a1」の位置で液滴を吐出した後、次に吐出するまでの時間(オリフィス25aが図7に示す「l1」の位置に到達するまでの時間)は遅延制御29にてタイミングを決める。この遅延制御29は、具体的には例えば図2に示す遅延制御部19aにて行なわれる。
【0041】
またオリフィスNo.2にあたるオリフィス25b(図5参照)は「f2」の位置に来るまで(すなわちオリフィスNo.1にあたるオリフィス25aが図に示す「f1」の位置に来るまで)一定間隔で塗布のための駆動波形を生成し、「f2」の位置で液滴を吐出し終えてから前述と同様に遅延制御29を行なう。
【0042】
このようにして各オリフィス25a〜25f毎の塗布タイミング信号の発生周期(すなわち遅延時間)が決定すると、後はその各オリフィス25a〜25f毎の塗布タイミング信号の発生周期T(図3参照)に合わせて、各オリフィス25a〜25fから液滴の吐出が順次行なわれる。
【0043】
スペーサ粒子の径は例えばVA方式やTN方式のように液晶表示装置の種類などによって異なるが、通常、2μm〜5μm程度のものが用いられ、吐出ヘッド8のオリフィス25から吐出可能な径である。このスペーサ粒子は、有機液体、水あるいは有機液体と水との混合液などの分散液に、例えば0.5重量%〜20重量%程度の濃度で分散される。
【0044】
本実施形態では、水とエチレングリコールを混合して安定吐出が可能なように粘度を10mPa・s程度に調整した分散液を用い、これに直径が3.5μmのガラスビーズを1.2重量%分散させたものを使用する。必要に応じてスペーサ粒子の分散性を良好に維持するための分散剤、あるいはスペーサ粒子を基板表面に接着する接着剤などを添加することもできる。
【0045】
図8ならびに図9は、本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の正面図ならびに側面図である。
これらの図に示すように、塗布ステージ51上には2本平行に延びたX軸リニアレール52が敷設、固定され、その上に2つのX軸リニアガイド53が取り付けられている。X軸リニアガイド53の上にステージベース54を介してテーブル55が固定されている。
【0046】
テーブル55上には、スペーサ微粒子(ビーズ)を塗布する基板素材20がディスプレイセル側を上にして載置され、例えば空気吸引機構などの位置決め手段(図示せず)によってテーブル55上の所定位置に固定されている。
【0047】
塗布ステージ51の左右両側面から上方に向けて支柱56,56が延びており、支柱56,56の上端部にガイド支持部材57が架設されている。ガイド支持部材57の前面に2本の平行に延びたY軸リニアガイド58が水平方向に固定されて、そのY軸リニアガイド58にY軸ベース59が摺動可能に支持されている。さらにY軸ベース59上に、垂直方向に延びるZ軸ベース60が固定され、Z軸ベース60上にZ軸リニアガイド61(図8参照)が摺動可能に支持されている。
【0048】
前記Y軸ベース59ならびにZ軸ベース60上には、図9に示すように塗布液吐出機構62が搭載されている。この塗布液吐出機構62中の塗布液供給ボックス63はY軸ベース59上に搭載され、塗布液供給ボックス63は図8に示すように塗布液を収容した交換可能なカートリッジ部41と、そのカートリッジ部41から吐出ヘッド8に塗布液を供給し、吐出で余った塗布液を再びカートリッジ部41に戻す塗布液循環供給部42とを有している。一方、塗布液吐出機構62中の吐出ヘッド8は、ヘッドブロック64を介して前記Z軸リニアガイド61(Z軸ベース60)上に搭載されている。
【0049】
前記基板素材20を搭載したテーブル55は、エンコーダ付きモータ(図示せず)を駆動源として前記X軸リニアレール52上を往復移動する。前記Z軸ベース60を搭載したY軸ベース59は、エンコーダ付きモータ(図示せず)を駆動源として前記Y軸リニアガイド58上を往復移動する。また前記吐出ヘッド8を搭載したZ軸リニアガイド61は、エンコーダ付きモータ(図示せず)を駆動源として前記Z軸ベース60上を往復移動する。
【0050】
これらの図に示されているように、塗布液供給ボックス63(カートリッジ部41、塗布液循環供給部42)は吐出ヘッド8よりも高い位置に設置されており、従ってカートリッジ部41から塗布液循環供給部42を経由し塗布液供給管(例えばフレキシブルチューブ)を通って吐出ヘッド8内に塗布液が自然に供給されるとともに、吐出ヘッド8内の塗布液はカートリッジ部41との液面差を利用して常に加圧状態となる。そのため吐出ヘッド8において塗布液の漏れが生じる虞があるから、図示しない減圧手段によってカートリッジ部41内を減圧状態にコントロールしている。
【0051】
吐出ヘッド8と基板素材20との距離は、Z軸ベース60上でのZ軸リニアガイド61の位置調整により適正に設定される。そして基板素材20を搭載したテーブル55が往復移動する間に、初期に設定された吐出タイミングにより吐出ヘッド8から塗布液が液滴となって基板素材20の所定位置に吐出され、着弾した液滴内には所定個数のスペーサ微粒子が含まれている。
【0052】
1回の基板素材20の往復移動により必要個所に液滴が着弾されると、塗布液吐出機構62はY軸上を次の塗布領域まで移動する。これらの動作の繰り返しにより、基板素材20の各ディスプレイセルにスペーサ微粒子を含有した液滴が着弾されて、スペーサ微粒子の接着が行なわれてから、液晶表示装置の次の組立て工程に搬送される。
【0053】
図10ないし図12はオンデマンド型ヘッド部の詳細を示す図で、図10はヘッド部の分解斜視図、図11はヘッド部の組立後の断面図、図12は図11A−A線上の断面図である。
【0054】
これらの図において符号25はオリフィス、72はオリフィスプレート、73は圧力室、74は圧力室プレート、75はリストリクタ、76はリストリクタプレート、77はダイヤフラム、78はフィルタ、79はダイヤフレームプレート、80は穴部、81はサポートプレート、82は共通液通路、83はハウジング、84は接着剤、85は圧電アクチュエータ、86は圧電振動子、87は外部電極、88は導電性接着剤、89は支持基板、90は個別電極、91は共通電極、92はスルーホール、93は液導入パイプである。
【0055】
このオンデマンド型のヘッド部は図10に示すように、オリフィスプレート72、圧力室プレート74、リストリクタプレート76、ダイヤフレームプレート79、サポートプレート81、ハウジング83、圧電アクチュエータ85などから構成されている。
【0056】
一列に多数のオリフィス25を形成したオリフィスプレート72は、ニッケル材の電鋳加工法、ステンレス鋼材などの精密プレス加工法またはレーザ加工法などによって製作される。圧力室プレート74には、前記オリフィス25に対応した個数の圧力室73が形成され、前記オリフィス25と連通している。リストリクタプレート76は図11に示すように共通液通路82と前記圧力室73を連通し、圧力室73への液流入量を制御するリストリクタ75が形成されている。圧力室プレート74とリストリクタプレート76は、ステンレス鋼材のエッチング加工法またはニッケル材の電鋳加工法などによって製作される。
【0057】
ダイヤフレームプレート79には圧電振動子86の圧力を効率良く圧力室73に伝達するためのダイヤフラム77と、共通液通路82からリストリクタ75に流入する液中のゴミなどを除くフィルタ78が形成されている。ダイヤフレームプレート79は、ステンレス鋼材のエッチング加工法またはニッケル材の電鋳加工法などによって製作される。
【0058】
サポートプレート81はダイヤフラム77と圧電振動子86を接着剤84で固定するとき、ダイヤフラム77の振動系固定端の位置を規制し、かつ接着個所からはみ出した接着剤がダイヤフラム77の上で広がるのを規制する穴部80が形成されている。サポートプレート81は、ステンレス鋼材のエッチング加工法またはニッケル材の電鋳加工法などによって製作される。金属または合成樹脂で製作されるハウジング83には共通液通路82が設けられており、この共通液通路82に前述の塗布液供給管20あるいはヘッド接続管39が接続されている。
【0059】
塗布液供給管20あるいはヘッド接続管39から供給された塗布液は、ヘッドの共通液通路82の途中でフィルタ78を通過して、リストリクタ75、圧力室73、オリフィス25へと順に流れる。個別電極90と共通電極91との間に所定のパルス電圧を印加することにより圧電振動子86が伸縮し、パルス電圧の印加を止めると圧電振動子86は伸縮前の状態に戻る。このような圧電振動子86の変形により圧力室73内の塗布液に瞬間的に圧力が加わり、オリフィス25から塗布液が液滴となって基板素材20上に着弾する。
【0060】
前記実施形態では図2に示すように、タイミング制御回路5内に各オリフィスに対応して複数の遅延制御部19a,19b,19c,・・・を設けたが、1つの遅延制御部を設けて、その中で各オリフィスに対応したオリフィス毎塗布タイミング信号を個別に出力することも可能である。
【0061】
前記実施形態では第1のディスプレイセルから第2のディスプレイセルに移る際の時分割シフト制御について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば液滴の試験打ち領域から正規の塗布領域に移る際にも適用可能である。
【0062】
前記実施形態では液晶表示装置の製造の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばエレクトロルミネッセンスの製造、あるいは酸化チタン粒子を含有したインクを印刷するプリント配線基板の製造、沈降や凝集しやすい高濃度の電子部品用インクを使用して製造する積層セラミック電子部品や高周波電子部品の如き電子部品の製造など他の技術分野においても適用可能である。
【0063】
また実施形態では固体微粒子を混合分散した塗布液を吐出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばインクジェット記録装置などの固体微粒子を含有しない塗布液を吐出する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体の概略構成図である。
【図2】その液滴吐出装置に用いられるタイミング制御回路のブロック図である。
【図3】その液滴吐出装置における各信号ならびに駆動波形のタイミングチャートである。
【図4】吐出ヘッドとスペーサの塗布位置との関係を示す平面図である。
【図5】第1のディスプレイセルから第2のディスプレイセルにかけて吐出ヘッドから液滴を吐出する状態を示した平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の時分割シフト制御例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の時分割シフト制御例を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の正面図である。
【図9】その液滴吐出装置の側面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るヘッド部の分解斜視図である。
【図11】そのヘッド部の組立後の断面図である。
【図12】図11A−A線上の断面図である。
【図13】従来の液滴塗布装置による液滴塗布の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1:主制御部、2:吐出装置本体、3:制御用コンピュータ、4:画像展開メモリ、5:タイミング制御回路、6:駆動波形生成回路、7:ヘッドドライバ、8:吐出ヘッド、9:搬送ステージ、10:ステージモータ、11:エンコーダパルス信号、12:オリフィス毎塗布タイミング信号、13:駆動波形生成信号、14:塗布データ、15:駆動波形信号、16:ドライブ信号、17:塗布条件の設定に関するデータ、18:カウンタ、19:遅延制御部、20:基板素材、21:スペーサの塗布位置、22a:第1のディスプレイセル、22b:第2のディスプレイセル、23:ディスプレイ画素、24:スペーサ集合体、25:オリフィス、26:塗布ピッチ、27:時分割シフト間隔、28:オリフィスの位置、29:遅延制御、A:搬送ステージ移動方向、L:ディスプレイセルの間隔、θ:吐出ヘッドの傾斜角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のオリフィスを設けた吐出ヘッドと液滴を着弾する被着体とを相対的に移動させながら、前記被着体上の各オリフィスに対応した各塗布目標位置に対して前記各オリフィスから液滴を吐出して、各塗布目標位置付近に液滴を着弾する液滴吐出装置において、
前記吐出ヘッドと被着体の相対的な移動を検出してパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、
そのパルス信号出力手段からのパルス信号をカウントするカウンタと、
前記各塗布目標位置付近を前記移動方向に沿って複数に等分割して、予め入力された前記各オリフィス毎の液滴塗布開始位置データと前記カウンタからのカウント信号に基いて、当該オリフィスの位置が前記各塗布目標位置に最も近づくまでのオリフィス毎塗布タイミング信号の発生遅延時間を設定する遅延制御部と、
その遅延制御部から出力されるオリフィス毎塗布タイミング信号に同期して、前記各オリフィスから液滴を吐出するヘッドドライバとを備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出装置において、前記各塗布目標位置付近が1つのディスプレイ画素で構成され、その1つのディスプレイ画素上が前記移動方向に沿って複数に等分割されるとともに、当該ディスプレイ画素上にスペーサの塗布目標位置が定められており、スペーサ粒子を含有する塗布液が各オリフィスから前記塗布目標位置に向けて吐出されることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−253063(P2007−253063A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80767(P2006−80767)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】