説明

液滴噴射ヘッド

【課題】ノズル数の増加による大型化を防止することができる液滴噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】液滴噴射ヘッドにおいて、一列に並ぶ複数のノズル6b及び複数のノズル6bにそれぞれ連通して同一方向に伸びる複数の液体流路6aを有するノズルプレート6と、複数の液体流路6a上に複数の液体流路6aにそれぞれ連通する複数の液室5aを有する液室プレートと、複数の液室5aに各々の一端を対向させてそれぞれ設けられた複数の圧電素子3aとを備え、所定のノズル6bと隣接する他のノズル6bに各々連通する液室5aのノズル6bとの距離が周期的に変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を噴射する液滴噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液滴噴射装置は、画像情報の印刷のほか、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置、電子放出表示装置、プラズマ表示装置及び電気泳動表示装置等の様々な平面型表示装置を製造する際、例えば、カラーフィルタやブラックマトリクス、導電膜等の形成工程に用いられている。この液滴噴射装置は、複数のノズルからインク等の液体を液滴として噴射する液滴噴射ヘッド(例えば、インクジェットヘッド)を備えており、その液滴噴射ヘッドにより塗布対象物に液滴を着弾させ、所定パターンのドット列を順次形成し、様々な塗布体を製造する。
【0003】
液滴噴射ヘッドは、複数の圧電素子(例えば、ピエゾ素子)により、液体を収容する複数の液室の各々の容積を変化させ、それらの液室内の液体を各ノズル、すなわちノズル口(オリフィス)からそれぞれ噴射する。液滴噴射ヘッドは、各液室を有する液室プレート(中間プレート)と、それらの液室と各ノズル口とをそれぞれ連通する複数の液体流路を有するノズルプレートとを備えている(例えば、特許文献1参照)。なお、各圧電素子は二列の直線上に配置されて設けられており、隣接する各圧電素子は互いに干渉しないために必要な最小距離だけ離間させて配置されている。
【特許文献1】特開2005−270743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のように各圧電素子がそれぞれ必要な最小距離だけ離間させて二列の直線上に配置されている場合には、ノズル数を増やす際、隣接する各圧電素子の間に新たに圧電素子を設けることができず、ノズル口のピッチを狭くすることは不可能である。このため、ノズル数を増加させた場合には、液滴噴射ヘッドはノズル口が並ぶ方向に伸びてしまうので、液滴噴射ヘッドが大型化してしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノズル数の増加による大型化を防止することができる液滴噴射ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る特徴は、液滴噴射ヘッドにおいて、一列に並ぶ複数のノズル及び複数のノズルにそれぞれ連通して同一方向に伸びる複数の液体流路を有するノズルプレートと、複数の液体流路上に複数の液体流路にそれぞれ連通する複数の液室を有する液室プレートと、複数の液室に各々の一端を対向させてそれぞれ設けられた複数の圧電素子とを備え、所定のノズルと隣接する他のノズルに各々連通する液室のノズルとの距離が周期的に変化していることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズル数の増加による大型化を防止することができる液滴噴射ヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る液滴噴射ヘッド1は、本体ベースとなるベース部材2と、そのベース部材2の内部に設けられ複数の圧電素子3aを保持する保持部材3と、各圧電素子3aにより振動する振動プレート(ダイヤフラムプレート)4と、インク等の液体をそれぞれ収容し振動プレート4により容積が変化する複数の液室5aを有する液室プレート5と、各液室5aにそれぞれ連通する複数の液体流路6a及びそれらの液体流路6aにそれぞれ連通する複数のノズル6bを有するノズルプレート6と、各液室5aにそれぞれ対応する複数のオリフィス7aを有するオリフィスプレート7と、そのオリフィスプレート7を露出させる開口部8aを有してノズルプレート6を覆うホルダプレート8と、そのホルダプレート8とノズルプレート6との間に設けられた緩衝部材9と、ベース部材2、振動プレート4、液室プレート5及びホルダプレート8を締結する複数のネジ10とを備えている。
【0010】
ベース部材2は、例えばステンレス等の金属材料により形成されている。このベース部材2には、各圧電素子3aがそれぞれ挿入される2つの挿入口2a及び各ネジ10がそれぞれ挿入される複数のネジ穴N1が形成されている。各挿入口2aは、例えば長方形状にそれぞれ形成されており、ベース部材2の表面の略中央に並べて設けられている。また、各ネジ穴N1は、ベース部材2の周縁部にそれぞれ設けられている。これらのネジ穴N1の内部には、例えば雌ネジのネジ溝が形成されている。
【0011】
保持部材3は、ベース部材2と同様に、例えばステンレス等の金属材料により形成されている。この保持部材3には、図2及び図3に示すように、各圧電素子3aが四列に並べて千鳥配列されて設けられている。これらの圧電素子3aは、図1に示すように、それぞれの先端が振動プレート4に接触するようにベース部材2の各挿入口2aに挿入され、保持部材3と共にベース部材2の内部に設けられている。なお、各圧電素子3aの先端部は、振動プレート4に接着固定されている。このような圧電素子3aには、電圧印加用の配線が接続されており、各圧電素子3aに電圧が印加されると、各圧電素子3aの伸縮により振動プレート4は振動する。
【0012】
振動プレート4には、各ネジ10がそれぞれ挿入される複数のネジ穴N2が形成されている。これらのネジ穴N2は、振動プレート4をそれぞれ貫通する貫通孔であり、振動プレート4の周縁部に設けられている。なお、ネジ穴N2は、ネジ穴N1と同一直線上に位置付けて形成されている。振動プレート4は、各圧電素子3aの伸縮により変形し、液室プレート5の各液室5aの容積を各々増減させる。これにより、各液室5a内の液体が液体流路6aを介して各オリフィス7aから液滴として噴射される。
【0013】
液室プレート5は、例えば金属やセラミック等の材料により形成されている。この液室プレート5には、液体をそれぞれ収容する各液室5a、それらの液室5aに連通するマニホールド等のメイン流路5b及び各ネジ10がそれぞれ挿入される複数のネジ穴N3が形成されている。メイン流路5bは、液室プレート5の略中央に直線状に設けられている。各液室5aは、メイン流路5bから供給される液体を収容する収容部であり、メイン流路5bを挟むように四列に並べてそれぞれ設けられている。これらの液室5aの内壁の一部は、振動プレート4により形成されている。メイン流路5bには、外部の液体タンクからチューブ等の供給径路(図示せず)を介して液体が供給される。各ネジ穴N3は、液室プレート5をそれぞれ貫通する貫通孔であり、液室プレート5の周縁部に設けられている。なお、ネジ穴N3は、ネジ穴N1と同一直線上に位置付けて形成されている。
【0014】
ノズルプレート6は、例えばガラス、セラミック又は樹脂等の材料により形成されている。このノズルプレート6は、ホルダプレート8の開口部8aから突出するように形成されている。すなわち、ノズルプレート6には、ホルダプレート8の開口部8aに挿入される凸部6cが設けられている。また、ノズルプレート6には、各液室5aにそれぞれ連通する複数の液体流路6aと、それらの液体流路6a及び各オリフィス7aにそれぞれ連通する複数のノズル6bとが設けられている。なお、オリフィス7aはノズル口として機能する。
【0015】
オリフィスプレート7は、例えばステンレスやSi等の材料により形成されている。このオリフィスプレート7には、各オリフィス7aが、各圧電素子3aが並ぶ列方向に例えば一列状に設けられている。このオリフィス7aから液滴が噴射される。オリフィスプレート7は、各オリフィス7aが対応する液体流路6aに連通するようにノズルプレート6の凸部6c上に設けられる。
【0016】
ここで、図4に示すように、各圧電素子3aは、ピッチ(離間距離)L1で四列に千鳥状(ジグザグ状)に配置されている(図3も参照)。ここで、ピッチL1はオリフィス7aのピッチであり、例えば0.7mm程度である。詳述すると、各圧電素子3aは、各オリフィス7aを通過する直線を中心として二列ずつ合計四列に配置されている。このとき、二列に並ぶ各圧電素子3aはピッチ(離間距離)L2で三角波状に周期的に設けられており、それらの列は離間距離L3だけ離して配設されている。また、各液室5aも、各圧電素子3aに対応させて四列に千鳥状(ジグザグ状)に配置されている。詳述すると、各液室5aは、各圧電素子3aと同様に、各オリフィス7aを通過する直線を中心として二列ずつ合計四列に配置されている。このとき、二列に並ぶ各液室5aはピッチL2で三角波状に周期的に設けられており、それらの列は離間距離L3だけ離して配設されている。また、各液体流路6aは、図4に示すように、一列に並ぶ複数の第1弧状壁面H1と、三角波状に周期的に配列された複数の第2弧状壁面H2と、各第1弧状壁面と各第2弧状壁面とを連続面でそれぞれ接続する複数の壁面H3とによりそれぞれ構成されている。加えて、各液体流路6aは、ノズルプレート6の平面内でノズル口6c(ノズル6b)に向かって徐々に細くなるようにそれぞれ形成されている。すなわち、各液体流路6aは、液体が流れる方向に徐々に細くなるように形成されている。これにより、ノズルピッチが狭い液滴噴射ヘッド1を製造する場合でも、各液体流路6aが干渉することを防止することができる。
【0017】
図1に戻り、ホルダプレート8は、ノズルプレート6よりも圧縮強度が高くなる材料、例えば金属等の材料により形成されている。このホルダプレート8には、オリフィスプレート7が露出するように形成された開口部8a及び各ネジ10がそれぞれ挿入される複数のネジ穴N4が形成されている。開口部8aは、ホルダプレート8の略中央に設けられており、オリフィスプレート7を露出させる形状、例えば長方形状に形成されている。また、各ネジ穴N4は、ホルダプレート8をそれぞれ貫通する貫通孔であり、ホルダプレート8の周縁部に設けられている。これらのネジ穴N4は、例えば座グリ加工により形成されている。なお、ネジ穴N4は、ネジ穴N1と同一直線上に位置付けて形成されている。
【0018】
緩衝部材9は、例えば環状に形成されており、ノズルプレート6の凸部6cの周囲に設けられている。この緩衝部材9は、ノズルプレート6とホルダプレート8との当接を防止している。この緩衝部材9としては、例えば弾性部材等を用いる。弾性部材の材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:四フッ化エチレン樹脂)やシリコーン、カルレッツ等を用いる。
【0019】
各ネジ10は、例えば棒状に形成されており、各ネジ穴N1、N2、N3、N4にそれぞれ挿入されている。これらのネジ10は、ベース部材2に対して振動プレート4、液室プレート5及びホルダプレート8を固定する。このとき、ノズルプレート6も、液室プレート5及びホルダプレート8により挟持されて固定される。各ネジ10には、例えば雄ネジのネジ溝が形成されている。この各ネジ10により、ベース部材2、振動プレート4、液室プレート5及びホルダプレート8が締結されている。
【0020】
前述の液滴噴射ヘッド1では、電圧が各圧電素子3aにそれぞれ印加されると(印加電圧オン)、各圧電素子3aが縮み、振動プレート4を変形させて、対応する液室5aの容積を増大させる。このとき、容積が増大した液室5aには、メイン流路5bから液体が補充される。その後、電圧が各圧電素子3aに印加されなくなると(印加電圧オフ)、振動プレート4が元の形状に復帰し、対応する液室5aの容積も元に戻る。このとき、液室5a内の液体が圧迫され、その液体が液体流路6aを介してオリフィス7aから液滴として噴射される。
【0021】
このような液滴噴射ヘッド1では、各圧電素子3a及び各液室5aは三角波状に周期的に設けられており、所定のノズル6bと隣接する他のノズル6bに各々連通する各液室5aにおけるノズル6bとの距離が周期的に変化している。これにより、ノズル数(オリフィス7aの数)を増加させた場合でも、隣接する各圧電素子3aが互いに干渉しないために必要な最小離間距離(L1×2)を維持しつつ、オリフィス7aのピッチを狭くすることが可能になるので、液滴噴射ヘッド1がオリフィス7aの整列方向(オリフィス7aが並ぶ方向)に伸びてしまうことを防止することができる。
【0022】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、三角波状に周期的に各圧電素子3a及び各液室5aを配列することによって、ノズル数を増加させた場合でも、隣接する各圧電素子3aが互いに干渉しないために必要な最小離間距離(L1×2)を維持しつつ、圧電素子3aの数を増やし、オリフィス7aのピッチを狭くすることが可能になるので、液滴噴射ヘッド1がオリフィス7aの整列方向に伸びてしまうことを防止することができる。その結果、ノズル数の増加による液滴噴射ヘッド1の大型化を防止することができ、加えて、液滴噴射ヘッド1の重量が増加することも防止することができる。特に、液滴噴射ヘッド1の小型化を実現することによって、液滴噴射装置に対する液滴噴射ヘッド1の設置自由度を向上させることができる。
【0023】
さらに、各液体流路6aは液体が流れる方向に徐々に細くなるように形成されていることから、ノズルピッチが狭くなった場合でも、各液体流路6aが干渉することを防止することが可能になるので、ノズルピッチが狭い液滴噴射ヘッド1を製造することができる。
【0024】
また、前述の液滴噴射ヘッド1と、この液滴噴射ヘッド1を保持すると共に液滴噴射ヘッド1にインク等の液体を供給する本体とを用いて液滴噴射装置を構成することによって、小型の液滴噴射ヘッド1を保持すればよく、液滴噴射ヘッド1を保持する保持機構の簡略化や補強の不必要化等を実現することができる。
【0025】
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0026】
例えば、前述の実施の形態においては、各圧電素子3aを四列に並べているが、これに限るものではなく、例えば三列や五列に並べるようにしてもよく、各液室5aも四列に並べているが、これに限るものではなく、例えば三列や五列に並べるようにしてもよい。
【0027】
また、前述の実施の形態においては、ネジ10によりベース部材2と液室プレート5との間に振動プレート4を固定しているが、これに限るものではなく、例えば、ネジ10に加え、接着剤によりベース部材2と液室プレート5との間に振動プレート4を接着固定するようにしてもよい。
【0028】
さらに、前述の実施の形態においては、緩衝部材9を環状に形成し、ノズルプレート6上に1つの緩衝部材9を設けているが、これに限るものではなく、例えば、緩衝部材9を長方体形状や円板形状に形成し、ノズルプレート6上に複数の緩衝部材9を設けるようにしてもよい。
【0029】
最後に、前述の実施の形態においては、ネジ穴N4の内部に雌ネジのネジ溝を形成していないが、これに限るものではなく、例えば、ネジ穴N4の内部に雌ネジのネジ溝を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の一形態に係る液滴噴射ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す液滴噴射ヘッドが備える各圧電素子及び保持部材の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示す各圧電素子及び保持部材の概略構成を示す平面図である。
【図4】図1に示す液滴噴射ヘッドにおけるノズル口、液室及び圧電素子の位置関係を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1…液滴噴射ヘッド、3a…圧電素子、5…液室プレート、5a…液室、6…ノズルプレート、6a…液体流路、6b…ノズル、H1…第1弧状壁面、H2…第2弧状壁面、H3…壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に並ぶ複数のノズル及び前記複数のノズルにそれぞれ連通して同一方向に伸びる複数の液体流路を有するノズルプレートと、
前記複数の液体流路上に前記複数の液体流路にそれぞれ連通する複数の液室を有する液室プレートと、
前記複数の液室に各々の一端を対向させてそれぞれ設けられた複数の圧電素子と、
を備え、
所定の前記ノズルと隣接する他のノズルに各々連通する前記液室の前記ノズルとの距離が周期的に変化していることを特徴とする液滴噴射ヘッド。
【請求項2】
前記複数の液体流路は、一列に並ぶ複数の第1弧状壁面と、三角波状に周期的に配列された複数の第2弧状壁面と、前記複数の第1弧状壁面と前記複数の第2弧状壁面とを連続面でそれぞれ接続する複数の壁面とによりそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項1記載の液滴噴射ヘッド。
【請求項3】
前記複数の液体流路は、前記液体が流れる方向に徐々に細くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴噴射ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78398(P2009−78398A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248135(P2007−248135)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】