説明

液状口腔用組成物

【課題】優れた使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観、pH、粘度)を有し、薬用成分を配合した場合に口腔内滞留性の向上効果が高い液状口腔用組成物の提供。
【解決手段】(A)20℃における1.0質量%水溶液の粘度が5〜100mPa・sで、D−マンヌロン酸〔M〕とL−グルロン酸〔G〕の含有比率が質量比で0.5〜2.0であるアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%、(B)エーテル化度が0.8〜1.6のカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜1.2質量%、(C)式(1) Mn3-nPO4 (1)(MはNa又はK、nは1,2又は3。)で表されるリン酸塩を0.05〜0.5質量%、(D)水分を45〜90質量%含有し、(A)/(B)の質量比が0.5〜6.0、pHが6.0〜8.5である液状口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用性及び保存安定性が良好で、かつ口腔内に適用時にはカルシウムイオンによる増粘効果が発揮され、更には薬用成分の口腔内滞留性の向上効果に優れ、特に、歯間ブラシによって適用される歯間部用、又は指によって適用される歯頚部又は歯肉塗布用として好適な液状口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、練歯磨の粘結剤、液体組成物の増粘剤や粘度調整剤、食品の安定化剤等の目的のために水溶性高分子が使用されており、代表的なものとしてアルギン酸ナトリウムやカルボキシメチルセルロースナトリウム(以後、CMCと略す。)等が挙げられる。
【0003】
アルギン酸は、カジメ,アラメ,昆布,マクロシステイス,アスコフィラム,エクロニアマキシマ,レッソニア等の褐藻類を化学的な操作によって抽出、精製して得られた親水性高分子で、化学的にはβ−1,4結合するD−マンヌロン酸〔M〕と、α−1,4結合するL−グルロン酸〔G〕の重合体であって、アルギン酸の重合度や分子内のD−マンヌロン酸とL−グルロン酸の含有比率(以後、M/G比と略す。)は、原料の種類や部位、あるいは抽出方法等によって異なる。
【0004】
CMCは、セルロースに苛性ソーダを作用させてアルカリセルロースを作製し(アルカリ化)、これにモノクロール酢酸が反応し(エーテル化)、セルロースの水酸基にカルボキシメチル基が導入された水溶性の高分子化合物であり、セルロース単位当たりの持つ3個の水酸基がカルボキシメチル基に置換されたエーテル化度は、調製法によって異なる。
【0005】
アルギン酸又はその塩を洗口剤、液体歯磨剤等の液体口腔組成物に配合した技術として、アルギン酸ナトリウムによる歯垢の形成を抑制する組成物(特許文献1:特開平1−213222号公報)、M/G比が0.2〜1であるアルギン酸又はその塩を配合することにより歯垢の形成を抑制し、更に平均重合度が800〜1,500であるアルギン酸又はその塩を配合することにより優れた細菌付着阻止効果を有する組成物(特許文献2:特開平4−36228号公報)、あるいはトリクロサンを配合した口腔用組成物において、マンヌロン酸とグルロン酸との質量比(M/G比)が1以下であるアルギン酸、並びにこれらの塩類等の水溶性高分子を配合することによりトリクロサンの口腔内滞留性を高めた組成物(特許文献3:特開平4−139118号公報)、研磨剤無配合の洗口液にアルギン酸ナトリウムを配合することによりメントールの口腔内滞留性を高めた組成物(特許文献4:特開平8−333227号公報)、研磨剤を含有する液体組成物に50〜55重量%のソルビトールと沈殿防止剤としてのアルギン酸塩を配合した透明性に優れた液体組成物(特許文献5:特表平9−510192号公報)、タラガムとアルギン酸ナトリウムを組み合わせて配合することにより、清掃実感が高く、かつ洗口後のベタツキを抑えて嗜好性を向上させた液体口腔用組成物(特許文献6:特開2004−217570号公報)が知られている。
【0006】
また、アルギン酸ナトリウムとCMCを併用した組成物として、アルギン酸ナトリウムと特定のCMCを配合してピリチオン類の口腔内残留性を高めた組成物(特許文献7:特開2001−322922号公報)、M/G比が0.2〜1であるアルギン酸塩とCMCを配合した組成物(特許文献2:特開平4−36228号公報、実施例1記載)等が知られている。
【0007】
しかしながら、従来から練歯磨等の口腔用製品に使用されてきた中粘度〜高粘度(具体的には20℃における粘度が200〜500mPa・s程度)のアルギン酸又はその塩を粘度調整剤として液状口腔用組成物に使用した場合、その液状口腔用組成物の粘度が保存中に著しく低下してしまい、とりわけ、pH調整剤が含まれず、pHが中性付近に維持されない組成物では、保存中に粘度の低下が一段と顕著に起こり、製剤の品質上の大きな問題となる。
【0008】
更に、アルギン酸ナトリウムとCMCを併用した液状組成物でリン酸塩やクエン酸塩等を適量含まない場合、保存中に水溶性高分子の沈殿が起こったり、適度な粘度が発現しないといった品質上の大きな問題が発生する。
【0009】
また、アルギン酸塩等の粘度調整ポリマー物質を配合し、有効pHが4.5以下になるように調整された酸性口腔用組成物(特許文献8:特表2002−524401号公報)が公知である。しかし、このようにアルギン酸塩を含有する液体組成物のpHが6.0より低い場合には粘度低下が顕著に起こり、品質上大きな問題となる。更には、アスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体とアルギン酸又はその塩を含有し、組成物のpHを8.0以上にした歯磨組成物(特許文献9:特開2001−302476号公報)が知られているが、アルギン酸又はその塩を含有しpHが8.0以上である液状組成物では、保存中に着色・変色が顕著に見られたり、口腔粘膜への為害作用が生じる等の品質上の大きな問題となる。
【0010】
一方、アルギン酸又はその塩は、カルシウム等の金属イオンとの架橋反応によりゲル化(増粘)することが一般的に知られているが、この機能を生かし口腔内で薬用成分を滞留化させることが可能である。また、アルギン酸のゲル化能力やゲル強度は、D−マンヌロン酸〔M〕とL−グルコン酸〔G〕の含有比率及び配列の仕方で大きく影響され、G比率が高い場合にはゲル強度が高くなることが知られている(非特許文献1:FRAGRANCE JOURNAL 1994−4,76−84)。また、分子量の影響に関しては、M/G比、濃度、G含量が同じ場合、分子量が大きくなるにつれてゲル化能力やゲル強度が高くなることも知られている。このようなアルギン酸のゲル化能を特徴とした組成物としては、M/G比が1.0以下であるアルギン酸誘導体と、リン酸及びその塩を配合する技術が知られており、これは涙や唾液等の生体由来の液体と接触したときに組成物の増粘化が起こり、適用部位での薬用成分の滞留化を可能とした技術である(特許文献10:特開2002−332248号公報)。また、研磨剤無配合の洗口液にアルギン酸ナトリウムとリン酸塩を配合した洗口液組成物(特許文献4:特開平8−333227号公報、実施例20,21記載)、水溶性リン酸水素化合物、炭酸水素化合物、硫酸水素化合物を1種又は2種以上配合することにより、研磨剤の分散安定性が向上し、優れた清掃効果を発揮する洗口剤組成物(特許文献11:特開平10−167940号公報)等が知られている。
【0011】
しかしながら、アルギン酸又はその塩を含有する液体組成物にリン酸塩を配合し、製剤pHを中性付近に維持させることで液体組成物の粘度低下をある程度抑制することは可能であるが、中粘度〜高粘度のアルギン酸又はその塩を用いた場合には、保存中での粘度低下を完全に抑制することはできず品質上の大きな問題となる。
【0012】
更には、アルギン酸又はその塩を含有する液体組成物にリン酸塩を高濃度で配合した場合、口腔内へ適用時に組成物のゲル化(増粘)が起こらず、その結果、口腔内での薬用成分の滞留性を十分に高めることはできない。
【0013】
また、例えば20℃における粘度が5〜100mPa・s程度である低粘度のアルギン酸又はその塩を単独に使用する場合、組成物に適度な粘性を持たせて使用性を付与するためには、アルギン酸又はその塩を高濃度で配合する必要がある。しかしながら、このようなアルギン酸又はその塩が過剰に存在する組成物では、口腔内へ適用時におけるゲル化(増粘)が顕著に阻害されたり、あるいは発現しなかったりする。その結果、口腔内での薬用成分の滞留性を満足に高めることはできない。
【0014】
また、研磨剤無配合の洗口液にアルギン酸ナトリウムとクエン酸及びクエン酸塩を配合した洗口液組成物(特許文献4:特開平8−333227号公報、実施例6,14〜17,21記載)、平均M/G比が0.2〜1であるアルギン酸又はその塩と水溶性ポリリン酸を配合した組成物(特許文献12:特開平5−39213号公報)、平均分子量が1,000〜100,000のアルギン酸ナトリウム等のアニオン性多糖類とポリリン酸塩を配合した組成物(特許文献13:特開平8−40859号公報)、水溶性ポリリン酸塩、オルトリン酸塩及び両性界面活性剤を配合してなる組成物において粘結剤としてアルギン酸又はその塩を配合した液状歯磨(特許文献14:特開平9−12437号公報、実施例5参照)等が知られているが、クエン酸又はその塩やポリリン酸塩を高濃度で配合した組成物では、ゲル化(増粘)が顕著に阻害されたり、あるいは発現しなかったりする。その結果、口腔内での薬用成分の滞留性を満足に高めることはできない。
【0015】
また、平均分子量が1,000〜100,000のアルギン酸ナトリウム等のアニオン性多糖類とマグネシウム、亜鉛イオン等の二価金属イオンとを含有した組成物(特許文献15:特開平9−175968号公報)が知られているが、このような二価金属イオンを配合した組成物は、保存中に部分的なゲル化物が生じたり、渇変が顕著に見られたりという性状あるいは外観安定性上の大きな問題となる。
【0016】
このようにアルギン酸又はその塩は、口腔用組成物に配合することで歯垢形成抑制効果、薬用成分の口腔内滞留性の向上効果等を発揮することが知られているが、上記のように製剤の使用性、保存安定性などに問題があり、更に薬用成分の口腔内滞留性についても十分に満足できるとは言い難いものであった。
【0017】
【特許文献1】特開平1−213222号公報
【特許文献2】特開平4−36228号公報
【特許文献3】特開平4−139118号公報
【特許文献4】特開平8−333227号公報
【特許文献5】特表平9−510192号公報
【特許文献6】特開2004−217570号公報
【特許文献7】特開2001−322922号公報
【特許文献8】特表2002−524401号公報
【特許文献9】特開2001−302476号公報
【特許文献10】特開2002−332248号公報
【特許文献11】特開平10−167940号公報
【特許文献12】特開平5−39213号公報
【特許文献13】特開平8−40859号公報
【特許文献14】特開平9−12437号公報
【特許文献15】特開平9−175968号公報
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL 1994−4,76−84
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、使用性及び保存安定性が良好で、かつカルシウムイオンによる増粘効果が十分に発現し、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果が十分に発揮される液状口腔用組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記目的を達成すべく、アルギン酸塩を含有する液状口腔用組成物に対して検討を行った結果、20℃における1.0質量%水溶液の粘度が5〜100mPa・sである低粘度のアルギン酸塩、及び下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩を配合し、かつ25℃におけるpHを6.0〜8.5の範囲にすることで、高温保存下においても粘度の低下を効果的に抑制できることを見い出した。
【0020】
更に、このような粘度調整剤として低粘度のアルギン酸塩を単独で配合した組成物では、口腔内に適用時には、カルシウム等の二価金属イオンとの架橋反応による増粘効果(以後、Caイオンによる増粘効果と略す。)が十分発揮されるが、製剤の粘度が低すぎるために製剤を歯刷子等に適量出すことが困難であったり、製剤を適用部位に運ぶまでに垂れ落ちたりという使用性の面での不具合が生じ、また、低粘度のアルギン酸塩を高濃度に配合して目的の粘度を持たせるようにした場合は、上記使用性の問題は改善されるが、このようにアルギン酸塩を高濃度に含有する組成物では、Caイオンによる増粘効果は十分に発揮されず、更には、薬用成分の口腔内滞留性における向上効果が十分に発揮されないものであった。
【0021】
そこで、本発明者は、上記課題を解決し、低粘度のアルギン酸塩を含有する液状口腔用組成物において、使用性及び保存安定性が良好で、かつ優れたCaイオンによる増粘効果が発揮され、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果が十分に発揮される組成物を開発するため、更に鋭意検討を行った結果、(A)20℃における1.0質量%水溶液の粘度が5〜100mPa・sで、かつ分子内のD−マンヌロン酸〔M〕とL−グルロン酸〔G〕の含有比率(M/G比)が0.5〜2.0(質量比)のアルギン酸塩、(B)エーテル化度が0.8〜1.6のカルボキシメチルセルロースナトリウム、(C)下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩、及び(D)水を配合し、かつ25℃におけるpHを6.0〜8.5の範囲とすること、更に、組成物全体に対して、(A)アルギン酸塩を0.5〜2.0質量%、(B)カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜1.2質量%、更に、(C)上記一般式(1)で表されるリン酸塩を0.05〜0.5質量%配合し、(D)水分含量を45〜90質量%とし、かつ、上記(A)成分/(B)成分の質量比が0.5〜6.0の範囲であることにより、使用性及び保存安定性が良好で、かつ口腔内に適用時には優れたCaイオンによる増粘効果が発現し、更には、薬用成分を配合した場合、薬用成分の口腔内滞留性における向上効果を十分に発揮することができる液状口腔用組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0022】
従って、本発明は、
(A)20℃における1.0質量%水溶液の粘度が5〜100mPa・sで、かつ分子内のD−マンヌロン酸〔M〕とL−グルロン酸〔G〕の含有比率(M/G比)が質量比で0.5〜2.0であるアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%、
(B)エーテル化度が0.8〜1.6のカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜1.2質量%、
(C)下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩を0.05〜0.5質量%、
(D)水分を45〜90質量%
含有し、かつ(A)成分/(B)成分の質量比が0.5〜6.0の範囲であり、25℃におけるpHが6.0〜8.5の範囲であることを特徴とする液状口腔用組成物
を提供する。
【0023】
この場合、本発明の液状口腔用組成物は、更に、(F)フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムから選ばれるフッ素化合物及び/又は(G−1)トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸塩から選ばれる水溶性の抗炎症剤の少なくとも1種を含有すること、更には、(G−2)グリチルレチン酸、酢酸dl−α−トコフェノールから選ばれる水難溶性の抗炎症剤及び/又は(H)イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンから選ばれる殺菌剤を含有し、かつ(I)ノニオン性界面活性剤及び/又は(J)エタノールを含有することが好ましい。
また、本発明の液状口腔用組成物は、歯間ブラシによって適用される歯間部用製品、又は指によって適用される歯頚部又は歯肉塗布用製品として調製することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の液状口腔用組成物は、優れた使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観、pH、粘度)を有し、口腔内に適用時にはCaイオンによる増粘効果を発揮し、更には、薬用成分を配合した場合、薬用成分の口腔内滞留性の向上効果が高く、十分に発揮されるもので、特に歯間ブラシによって適用される歯間部用製品、又は指によって適用される歯頚部又は歯肉塗布用製品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の液状口腔用組成物は、
(A)アルギン酸塩、
(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、
(C)リン酸塩、
(D)水
を必須成分として含有するものであり、更に好ましくは、
(E)キサンタンガム、
(F)フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムから選ばれるフッ素化合物
(G)抗炎症剤
(H)殺菌剤
(I)ノニオン性界面活性剤
(J)エタノール
を含有する。
【0026】
ここで、(A)成分のアルギン酸塩の具体的なものとしては、アルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。アルギン酸塩は水溶性のものが好ましく、特に、水溶性のアルギン酸アルカリ金属塩で、市販されているアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムを用いることが好ましく、とりわけアルギン酸ナトリウムを用いることがより好ましい。
【0027】
アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カリウムとしては、例えば(株)紀文フードケミファ、(株)キミカ、富士化学工業(株)、ケルコ社、Sigma社、PRONOVA biopolymer社等から市販されている。
【0028】
本発明の液状口腔用組成物における(A)成分のアルギン酸塩は、適量を容器から吐出したり、歯間ブラシや指の上で保持させたりするという使用性、製剤の保存安定性(外観、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、20℃における1.0質量%水溶液の粘度がブルックフィールド型粘度計(BM型粘度計、ローターNo.1、回転数30rpm、回転60秒後)で測定した場合に5〜100mPa・sのものであり、好ましくは8〜50mPa・s、より好ましくは10〜30mPa・sのものである。粘度が100mPa・sを超えるものは、Caイオンによる増粘効果は優れているが、高温保存における分解が顕著に起こったりするために外観安定性及び粘度安定性上の問題となる。また、5mPa・s未満のものは、Caイオンによる増粘効果が十分に発揮されず、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない。
【0029】
更に、本発明におけるアルギン酸塩は、製剤の保存安定性(外観、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、M/G比が0.5〜2.0のものを使用する。好ましくはM/G比が0.6〜1.7、より好ましくはM/G比が0.7〜1.5のものを使用する。M/G比が2.0を超えるものは、保存安定性(外観、粘度)及びCaイオンによる増粘効果が低く、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない。M/G比が0.5未満のものは、Caイオンによる増粘効果は高くなるが、カルボキシメチルセルロースナトリウムと併用した液状組成物で保存中に部分的なゲル化が生じたり、外観安定性上の問題となる場合がある。
【0030】
なお、アルギン酸ナトリウムのM/G比は、例えば既知の方法(Carbohydrate Research,32(1974)、217−225に記載の方法)に準じて測定することができる。
アルギン酸を構成する2種類のウロン酸(M:マンヌロン酸、G:グルロン酸)は、その並び方から3タイプのブロックに分類することができる。マンヌロン酸同士が重合したホモポリマー(MM画分)、グルロン酸同士が重合したホモポリマー(GG画分)、マンヌロン酸とグルロン酸が交互に重合したヘテロポリマー(MG画分)である。これらのブロックは、それぞれ加水分解に対する抵抗性、pHに対する溶解性が異なることから、その性質を利用して、例えばMM画分、GG画分、MG画分に切断されるような条件で分解した後、各画分を常法に従って分画し、次いで、得られた各画分の糖量をフェノール硫酸法で測定し、下記に示す式よりM/G比を算出することができる。
M/G=(MM画分の糖量+(MG画分の糖量/2))/(GG画分の糖量+(MG画分の糖量/2))
【0031】
このような(A)成分のアルギン酸塩としては、粘度及びM/G比が異なるものを(株)紀文フードケミファ、(株)キミカ等から入手可能である。例えば、粘度が10〜20mPa・sでM/G比が0.7〜0.9、粘度が15〜25mPa・sでM/G比が0.7〜0.9、粘度が40〜50mPa・sでM/G比が0.7〜0.9、粘度が70〜100mPa・sでM/G比が0.7〜0.9、粘度が10〜30mPa・sでM/G比が1.2〜1.4、粘度が20〜50mPa・sでM/G比が1.2〜1.4、粘度が50〜80mPa・sでM/G比が1.2〜1.4のアルギン酸ナトリウムを入手することができる。ここで、本発明の粘度及びM/G比を満たすアルギン酸ナトリウムで一般に市販されているものとしては、(株)紀文フードケミファ社製のダックアルギンNSPLL、SL−20、FF−SL−10、(株)キミカ社製のキミカアルギンIL−2、IL−6等がある。
【0032】
(A)成分のアルギン酸塩の配合量は、製剤の外観安定性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、組成物全体の0.5〜2.0質量%であり、好ましくは0.6〜1.7質量%がよく、より好ましくは0.7〜1.4質量%である。配合量が0.5質量%に満たないと、液状組成物のCaイオンによる増粘効果が十分に発揮されず、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。また、配合量が2.0質量%を超えると、上記効果が満足に得られないばかりか、カルボキシメチルセルロースナトリウムとの併用組成で、水溶性高分子の沈殿が起こるなどの外観安定性上の問題が発生する。
【0033】
本発明の液状口腔用組成物における(B)成分のカルボキシメチルセルロースナトリウム(以後、CMCと略す。)は、液状組成物の保存安定性(外観)及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、エーテル化度が0.8〜1.6のもの、好ましくは0.9〜1.5、より好ましくは1.0〜1.4のものを使用する。エーテル化度が1.6を超えるものはCaイオンによる増粘効果が低く、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない。エーテル化度が0.8未満のものは、保存における外観安定性及び粘度安定性が低く、品質上の問題となる。
【0034】
また、本発明に用いるCMCとしては、ブルックフィールド型粘度計(BL型粘度計、25℃、ローターNo.3又はNo.4、回転数60rpm、回転60秒後)で測定した時に500〜5,000mPa・sとなるものを用いることが好ましい。粘度が500mPa・s未満では、組成物に十分な粘度を持たせることが困難であり、適量を容器から吐出したり、歯間ブラシや指の上で保持させたりするという使用性の点で不具合が生じる場合がある。また、5,000mPa・sを超える場合には、適量を容器から吐出するという使用性、あるいは口腔内でのベタツキ等の使用感の面で不具合が生じる場合がある。
【0035】
このようなCMCは、エーテル化度、粘度が異なるものがダイセル化学工業(株)、日本製紙ケミカル(株)等から市販されており、例えば、ダイセル化学工業(株)製のCMCダイセル<1290>(エーテル化度:0.8〜1.0、粘度:1,000〜2,000mPa・s)、CMCダイセル<1380>(エーテル化度:1.0〜1.5、粘度:1,000〜2,000mPa・s)、CMCダイセル<1390>(エーテル化度:1.0〜1.5、粘度:2,500〜4,500mPa・s)、CMCダイセル<2200>(エーテル化度:0.8〜1.0、粘度:1,500〜2,500mPa・s)、CMCダイセル<2450>(エーテル化度:1.1〜1.3、粘度:2,500〜5,000mPa・s)や、日本製紙ケミカル(株)製のサンローズF300HC(エーテル化度:0.85〜0.95、粘度:2,500〜3,500mPa・s)、サンローズH−300H(エーテル化度:0.8〜1.0、粘度:2,500〜3,500mPa・s)等が挙げられる。
【0036】
本発明において、(B)成分であるCMCの配合量は、適量を容器から吐出したり、歯間ブラシや指の上で保持させたりするという使用性、製剤の外観安定性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、組成物全体の0.2〜1.2質量%であり、好ましくは0.4〜1.0質量%、より好ましくは0.5〜0.8質量%である。配合量が0.2質量%未満では、(A)成分の低粘度のアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%の範囲で併用した製剤の粘度が極端に低いために、使用性(吐出性、保持性)の面で不具合が生じ、またCaイオンによる増粘効果は十分に発揮されるが、粘度が極端に低いために唾液が存在する口腔内環境下で即座に洗い流されてしまう場合がある。1.2質量%を超える場合には、適量を容器から吐出するという使用性の面で不具合が生じるとともに、組成物のCaイオンによる増粘効果が顕著に損なわれる場合があり、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。また、アルギン酸塩と併用する液状組成物でCMCの配合量が1.2質量%を超えると、水溶性高分子の沈殿が起こるなどの品質上の問題が発生する場合がある。
【0037】
更に、(A)アルギン酸塩及び(B)CMCの配合量は、使用性(吐出性、保持性)、使用感、製剤の外観安定性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から(A)成分/(B)成分の質量比が0.5〜6.0、好ましくは0.7〜4.0、より好ましくは0.9〜2.5となる範囲とする。(A)/(B)比が0.5未満では使用感が悪かったり、Caイオンによる増粘効果が十分に発揮されず、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない。6.0を超える場合には、水溶性高分子の沈殿が起こるなどの外観安定性上の大きな問題が発生したり、Caイオンによる増粘効果が十分に発揮されず、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。また、低粘度のアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%の範囲で併用した製剤においては使用性(吐出性、保持性)の面で不具合が生じたりする場合がある。
【0038】
本発明の液状口腔用組成物における(C)成分は、下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩である。
【0039】
式(1)のリン酸塩としては、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム等が具体的に挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの中では、特にリン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムを用いることが好ましい。
【0040】
本発明において式(1)のリン酸塩の配合量は、製剤の保存安定性(外観、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、組成物全体の0.05〜0.5質量%であり、好ましくは0.07〜0.4質量%、より好ましくは0.09〜0.2質量%である。配合量が0.05質量%未満では、pH安定性が低く、その結果、組成物の粘度が顕著に低下してしまったり、アルギン酸塩とCMCを併用した製剤において粘度が発現しないために使用性(吐出性、保持性)の面で不具合が生じたり、保存中に水溶性高分子が不溶化して析出したりして、品質上の問題が生じる場合がある。0.5質量%を超える場合には、高温保存下で組成物が顕著に変色したりして、外観安定性上の問題が生じたり、組成物のCaイオンによる増粘効果が顕著に損なわれ、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。
【0041】
本発明の液状口腔用組成物における(D)水分含量は、製剤の外観安定性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、組成物全体の45〜90質量%、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは55〜75質量%である。水分含量が45質量%未満では、保存中に水溶性高分子の沈殿が起こるなどの品質上の問題が発生したり、組成物のCaイオンによる増粘効果が十分に発揮されなかったり、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。90質量%を超えると外観安定性上の問題が生じたり、品質上の問題が生じる場合がある。
【0042】
本発明の液状口腔用組成物の25℃における3分後のpHは、製剤の保存安定性(外観、pH、粘度)の点から6.0〜8.5の範囲であり、好ましくは6.3〜8.0、より好ましくは6.6〜7.7の範囲である。pHが6.0未満では、組成物の粘度安定性が著しく低下し、品質上の大きな問題となり、更には5.5未満では歯牙が脱灰する可能性が高くなり好ましくない。8.5を超える場合には、組成物の変色が顕著になり、外観安定性上の問題が生じる。また、香料成分を配合した組成物では香味の劣化が顕著に起こるなどの品質上の問題が出たり、口腔粘膜への障害を起こす場合があり好ましくない。
【0043】
ここで、pHを6.0〜8.5の範囲に調整する手段としては、上記式(1)のリン酸塩を単独で又は2種以上併用して上記配合量の範囲内で配合して調整する方法、上記式(1)のリン酸塩に加えて、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の他のpH調整剤を併用して調整する方法が挙げられる。特に、リン酸一水素ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの併用系、リン酸一水素ナトリウム又はリン酸三ナトリウムと塩酸の併用系、リン酸二水素ナトリウムと水酸化ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムの併用系が好ましく、特にリン酸一水素ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの併用系がより好ましい。
【0044】
本発明の液状口腔用組成物においては、特にCMCの配合量が0.2〜0.8質量%の場合には、更に(E)キサンタンガムを配合することが好ましく、キサンタンガムの配合により、使用性(保持性)、製剤の保存安定性(外観、粘度)をより向上させることができる。キサンタンガムは、炭化水素をキサントモナス属菌(Xanthomonas campestiris)を用いて発酵させて得られる多糖類で、主としてD−グルコース、D−マンノース及びD−グルクロン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム塩からなり、例えばケルコ社からエコーガム、モナートガム、ケルデント、ケルトロール等の商品名で市販されている。中でも、モナートガムDA、ケルデント、エコーガムT、ケルトロールTを用いることが好ましく、モナートガムDA、ケルデントを用いることがより好ましい。
本発明に用いるキサンタンガムとしては、医薬品添加物規格2003「キサンタンガム」の項に定める方法で粘度を測定(ブルックフィールド型粘度計、25℃、ローターNo.3、回転数60rpm、回転30秒後)した時に600〜2,000mPa・sとなるものが好適である。600mPa・s未満では、組成物に十分な粘度を持たせることが困難な場合があり、適量を容器から吐出したり、歯間ブラシや指の上で保持させたりするという使用性の点で不具合が生じる場合がある。また、2,000mPa・sを超える場合には、適量を容器から吐出するという使用性、あるいは口腔内でのベタツキ等の使用感の面で不具合が生じる場合がある。
【0045】
(E)成分のキサンタンガムを配合する場合、その配合量は、適量を容器から吐出したり、歯間ブラシや指の上で保持させたりするという使用性、製剤の外観安定性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、組成物全体の0.1〜0.4質量%、特に0.1〜0.3質量%が好ましい。
更に、キサンタンガムを配合する場合の(B)成分のCMCと(E)成分のキサンタンガムとの合計配合量は、使用性(保持性)、製剤の保存安定性(外観、粘度)及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から組成物全体の0.3〜1.2質量%となる範囲内で配合することが好ましく、特に0.5〜1.0質量%となることがより好ましい。
【0046】
本発明組成物には、更に、(F)フッ素化合物、(G)抗炎症剤、(H)殺菌剤を配合することができる。本発明においては、これら薬用成分の配合により、薬用成分の優れた口腔内滞留性を発揮させることができる。即ち、本発明の液状口腔用組成物は、口腔内唾液成分との反応により増粘化し、薬用成分が口腔内で滞留化するために、適用部位で薬用成分の作用を持続的に発揮させることが可能となる。
【0047】
更に、本発明の液状口腔用組成物は、薬用成分の滞留化による有効性を向上させることが可能となることから、有効性向上に相当する分の組成物への薬用成分の配合量を低減することが可能となる。その結果、内容物のコストを下げることができるだけでなく、薬用成分の安定化を図るために配合する成分の配合量を低減でき、原料由来の香味(苦味等)の改善に繋がる効果を発揮することもできる。
【0048】
(F)フッ素化合物としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等が挙げられ、特にモノフルオロリン酸ナトリウムを用いることが好ましい。フッ素化合物の配合量は、有効性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、適正な配合量の範囲内に設定することが重要であり、組成物全体に対して0.01〜0.2質量%とすることが好ましい。
【0049】
フッ化ナトリウムを配合する場合には、その配合量は組成物全体の0.01〜0.2質量%が好ましく、0.02〜0.1質量%がより好ましく、0.03〜0.08質量%が更に好ましい。0.01質量%未満の場合には有効性の面で満足できず、また0.2質量%を超えると組成物のCaイオンによる増粘効果が十分に発揮されない場合があり、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。
【0050】
モノフルオロリン酸ナトリウムを配合する場合には、その配合量は、組成物全体の0.04〜0.8質量%が好ましく、0.07〜0.4質量%がより好ましく、0.1〜0.25質量%が更に好ましい。0.04質量%未満の場合には有効性の面で満足できず、また0.8質量%を超えると組成物のCaイオンによる増粘効果が十分に発揮されない場合があり、更には薬用成分の口腔内滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。
【0051】
本発明の液状組成物では、(F)フッ素化合物を配合することにより、粘度安定性をより向上させることも可能である。
【0052】
(G)抗炎症剤としては、水溶性又は水難溶性の抗炎症剤のいずれをも配合でき、(G−1)水溶性の抗炎症剤としては、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸ジカリウム等のグリチルリチン酸塩類などが挙げられ、(G−2)水難溶性の抗炎症剤としては、グリチルレチン酸、酢酸dl−α−トコフェノール(ビタミンE)等が挙げられる。抗炎症剤としては、特にトラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸を用いることが好ましく、特にグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸を用いることがより好ましい。
【0053】
(G)抗炎症剤を配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.005〜1.0質量%がよく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.02〜0.2質量%が更に好ましい。
【0054】
(H)殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン等が挙げられ、中でもイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムを用いることが好ましく、特に、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化セチルピリジニウムを用いることがより好ましい。
【0055】
(H)殺菌剤を配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.005〜0.5質量%がよく、0.01〜0.3質量%がより好ましく、0.02〜0.1質量%が更に好ましい。
【0056】
本発明の組成物において、(F)フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムから選ばれるフッ素化合物、(G−1)トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸塩から選ばれる水溶性の抗炎症剤のいずれかの成分又は両成分を含有する組成物においては、ノニオン性界面活性剤及び/又はエタノールを配合しなくても、本発明の効果は発揮される。
【0057】
一方、(G−2)グリチルレチン酸、酢酸dl−α−トコフェノール(ビタミンE)から選ばれる水難溶性の抗炎症剤、(H)イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンから選ばれる殺菌剤のいずれかの成分又は両成分を配合する場合には、(I)ノニオン性界面活性剤及び/又は(J)エタノールを配合することが望ましい。グリチルレチン酸等の水難溶性抗炎症剤、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン等の水難溶性殺菌剤を製剤中で可溶化させたり、容器中栓等の容器材へ吸着するのを防止したり、あるいは塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤がアルギン酸塩及びキサンタンガムを含有する製剤中で白濁化するのを防止することができる。
【0058】
(I)のノニオン性界面活性剤としては、従来公知の各種のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0059】
ノニオン性界面活性剤としては、特に、水難溶性の抗炎症剤、殺菌剤、更には香料成分を可溶化し、その結果、薬用成分の滞留効果を発揮させるとともに、保存安定性(外観安定性)を良好にする目的と味の点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数が30〜300及びプロピレンオキサイドの平均付加モル数が30〜70のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜120であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル基の炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜50のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることが好ましく、とりわけエチレンオキサイドの平均付加モル数が200及びプロピレンオキサイドの平均付加モル数が70のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、エチレンオキサイドの平均付加モル数が60〜100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル基の炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が20〜50のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることがより好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、BASF社等から市販されており、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は日光ケミカルズ(株)、日本エマルジョン(株)等から市販されている。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは日本エマルジョン(株)、ライオン化学(株)等から市販されている。
【0060】
なお、ノニオン性界面活性剤を配合する場合、その配合量は、液状口腔用組成物の効果を損ねない程度に、通常、組成物全体の0.1〜5.0質量%、特に0.2〜4.0質量%であることが好ましい。例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が200及びプロピレンオキサイドの平均付加モル数が70のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いる場合には、0.2〜2.0質量%配合することが好ましい。エチレンオキサイドの平均付加モル数が60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いる場合には、0.1〜1.5質量%配合することが好ましい。エチレンオキサイドの平均付加モル数が100であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いる場合には、0.3〜4.0質量%配合することが好ましい。アルキル基の炭素鎖長が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が20〜50のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いる場合には、0.2〜2.0質量%配合することが好ましい。
ノニオン性界面活性剤の配合量が0.1質量%未満では外観安定性を維持することが難しくなる場合があり、5.0質量%を超えると、殺菌剤及び/又は抗炎症剤の作用を阻害したり、味が悪く、使用感が著しく損なわれる場合がある。
【0061】
(J)成分のエタノールの配合量は、通常、組成物全体の0〜15質量%が好ましく、より好ましくは2〜12質量%、特に好ましくは3〜8質量%である。15質量%を超えると、アルギン酸塩、CMC等の水溶性高分子が不溶化したり、外観及び性状安定性上の問題が発生する場合がある。また、刺激が強く、使用感が著しく損なわれる場合がある。なお、エタノールの配合量には調合香料中の少量のエタノールも含まれる。
【0062】
本発明の液状口腔用組成物は、通常の歯磨き用の液状歯磨、歯間ブラシやデンタルフロスに取って適用する歯間部用液状歯磨等の液状製品、指や不織布等のシート剤に取って歯頚部や歯肉等に適用する塗布剤、先が細いノズルを取り付けた容器にて歯間部、歯周ポケット等の部位に直接投与するタイプの塗布用製品、使用する前に水等で希釈して使用する濃縮タイプの洗口剤やうがい薬等の製品に応用することができるが、特に歯間ブラシによって適用される歯間部用液状製品、指によって適用される歯頚部又は歯肉塗布用製品として有効である。
【0063】
本発明組成物を上記各種剤型に調製する際には、口腔用組成物に通常使用されている各種の成分を配合することができるが、剤型によって必要とする製剤の粘度、配合成分及びその配合量が異なるので、その成分及び配合量の選択は従前の場合と同様に行われると共に本発明の効果を妨げない範囲で行うことが必要である。
【0064】
例えば、液状歯磨の場合であれば、研磨剤、湿潤剤、粘度調整剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、着色剤、pH調整剤、有効成分、清掃助剤等を水と混和し、常法に従って製造することができる。
【0065】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム(2水和物あるいは無水物)、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ゼオライト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸チタニウム、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられ、中でもシリカ系研磨剤を使用することが好ましい。その配合量は、通常、組成物全体の0〜30質量%である。
【0066】
湿潤剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール、パラチノース、トレハロース、平均分子量が190〜9,300のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、糖アルコール等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、ソルビット、グリセリンを使用することが好ましい。湿潤剤の合計配合量は、通常、組成物全体の5〜40質量%、好ましくは8〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%である。5質量%未満では、口腔内での使用感が悪くなり、40質量%を超える場合には、組成物のCaイオンによる増粘効果を顕著に損ねる場合があり、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果が十分に発揮されない場合がある。
【0067】
本発明には、上記の(I)ノニオン性界面活性剤以外に、水難溶性の香料成分を可溶化するために他の界面活性剤を液状口腔用組成物の本発明の効果を損ねない程度に配合することもできる。具体的には、アルキル硫酸塩、N−アシルサルコシン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。その配合量は、通常、組成物全体の0〜3質量%、特に0〜2質量%とすることが好ましい。3質量%を超えると口腔粘膜を刺激する恐れがある。
この場合、上記の(I)ノニオン性界面活性剤との合計配合量は、組成物全体の0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
【0068】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペルラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等がある。
【0069】
香料として、スペアミント油、ペパーミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、シンナモンバーク油等の天然香料及びメントール、メントン、カルボン、エチルブチレート、バニリン、エチルマルトール、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、チモール、シネオール、オイゲノール、エチルバニリン、マルトール、リモネン、シトロネロール、リナロール、リナリールアセテート、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、ジンジャーオレオレジン、クレオソール、dl−カンファー等の単品香料、更に、エチルアセテート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール等の単品香料及び/又は天然香料も含む各種調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料を使用することができ、実施例の香料に限定されない。また、配合量も特に限定されないが、多くの公知例のように、一香料素材は、組成中に0.01〜1質量%配合することが好ましい。
【0070】
なお、歯間ブラシによって適用される歯間部用、あるいは指によって適用される歯頚部又は歯肉塗布用の液状組成物の場合には、適用部位での清涼感、サッパリ感等の使用実感を満足させるために、特に香料としてハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油、クローブ油、メントール、メントン、アネトール、オイゲノール、チモール、シネオール、dl−カンファーから選ばれる香料成分を配合することが好ましい。これら香料成分の配合量は、通常、組成物全体の0.1〜0.8質量%が好ましく、0.2〜0.7質量%がより好ましく、0.3〜0.6質量%が特に好ましい。0.1質量%未満の場合には適用部位での清涼感、サッパリ感等が不十分であるために使用実感の面で満足できず、また0.8質量%を超えると適用部位での刺激感が強く、使用感が悪くなることがある。
【0071】
着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号等の法定色素、カラメル色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、コチニール色素、アナトー色素、雲母チタン、酸化チタン等が挙げられる。
【0072】
防腐剤としては、上記の(H)殺菌剤以外に、必要に応じて安息香酸及びその塩、サリチル酸及びそのエステルもしくは塩、パラベン類、フェノール等を用いることができる。
【0073】
有効成分としては、例えばアスコルビン酸及びその塩、アラントイン及びその誘導体、グリチルリチン酸、酢酸dl−α−トコフェノール以外のトコフェロール類、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、アズレンスルホン酸ナトリウム、ジクロフェナックナトリウム、インドメタシン、アセメタシン、スリンダク、イブプロフェン、フルルブプロフェン、プラノプロフェン、ケトプロフェン、フェナセチン、アセトアミノフェン、メフェナム酸、塩酸テトラヒドロゾリン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、酢酸ヒドロコルチゾン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ミコナゾール、アミノ安息香酸エチルや、オウバク、オウレン、オウゴン、ハマメリス、チョウジ、カミツレ、ラタニア、ミルラ、トウキ、ローズマリー、ベニバナ等の植物抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、塩化リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキシドジスムターゼ等の酵素、オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、塩酸ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、クリンダマイシン等の抗生物質、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩等の塩類、α−ビサボロール、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン、トリクロロカルバニリド、アラニン、グリシン、プロリン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸ナトリウム、トリメチルグリシン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化デカリニウム、ラウロイルサルコシンナトリウム等を1種又は2種以上配合し得る。上記有効成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0074】
なお、本発明の液状口腔用組成物においては、カルシウム、マグネシウム等の水可溶性二価金属塩を配合した組成では保存中にゲル化したり、著しい変色が起こったりする場合があるために、外観及び性状安定性上の点からカルシウム、マグネシウム等の水可溶性二価金属塩を配合しないか、あるいは極微量含有する程度(具体的には組成物全体に対して0〜0.1質量%程度の含有量)にすることが好ましい。また、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩はCaイオンによる増粘効果を顕著に損ねてしまうために配合しないことが好ましい。
【0075】
更に、本発明の液状口腔用組成物の25℃における粘度は、適量を容器から吐出したり、歯間ブラシや指の上で保持させたりするという使用性及びCaイオンによる増粘効果、更には薬用成分の口腔内滞留性における向上効果の点から、ブルックフィールド型粘度計(BL型粘度計、ローターはNo.1〜No.3、回転数12rpm、回転2分後)を用いて測定した場合、400〜8,000mPa・sの範囲であることが好ましく、600〜5,000mPa・sであることがより好ましく、800〜3,000mPa・sであることが更に好ましい。組成物の粘度が400mPa・s未満では、使用性(吐出性、保持性)の点で不具合が生じる場合がある。8,000mPa・sを超えると、使用性(吐出性)の面で不具合が生じたり、組成物のCaイオンによる増粘効果が十分に発揮されない場合がある。更には、薬用成分の滞留性において十分な向上効果が発揮されない場合がある。また、口腔内に適用した場合に製剤の分散性が悪く、使用感が悪くなることがある。
【0076】
また、本発明の液状口腔用組成物を収容する容器としては特に制限はなく、通常、口腔用組成物に適用されている容器に充填して用いることができる。このような容器として具体的には、ポリエチレン層、エチレンメタクリル酸共重合体層、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム層、ガラス蒸着層、ポリビニルアルコール層、エチレンビニルアルコール共重合体層、アクリロニトリル共重合体層、紙、リサイクルプラスチック層等からなるラミネート容器、又はポリエチレン容器、ポリエチレンテレフタレート容器、ポリプロピレン容器等が使用でき、チューブ状容器、機械的又は差圧によるディスペンサー容器、ピロー包装等のフィルム包装容器等、口腔用組成物として通常使用される各種容器を使用可能である。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明の液状口腔用組成物に該当する組成例(実施例)及び該当しない組成例(比較例)を用いた使用性、保存安定性、Caイオンによる増粘効果、及び薬用成分の滞留性における向上効果を示し、本発明の特徴及び優れた効果を具体的に説明するが、本発明はこの実施例により制限されるものではない。
なお、アルギン酸ナトリウムの粘度、M/G比は下記方法により測定した。
【0078】
(I)アルギン酸ナトリウムの粘度の測定
アルギン酸ナトリウムの粘度測定は、ブルックフィールド型粘度計を用いた既知の方法に準じて測定した。試料の調製法は以下の通りである。
300mLビーカーに精製水198mLを注ぎ、マグネティックスターラーで強撹拌しながら、アルギン酸ナトリウム原体2.00gを少しずつ投入した。30分撹拌を続けた後(ここで、30分で溶解しない場合は、溶解するまで撹拌を続けた。また、大きなママコがある場合は、竹べらなどでつぶして溶けやすくしておく。)、ビーカーをスターラーから外し、溶液を粘度測定用トールビーカー(φ4.2cm)に適量移した。棒状温度計で液温を測りながら、氷水や温湯につけて液温を約20℃に調整した。この時、液温が不均一にならないように、よくかき混ぜながら調整した。液温が約20℃になったら、約20℃に設定した恒温水槽中に20〜40分静置した。20〜40分後、ビーカー内の溶液を軽く撹拌して液温が20℃であることを確認し、BM型粘度計(東機産業(株)製)を用いて粘度を測定した。回転数を30rpmとし、60秒後の読み値を測定値とし、粘度(mPa・s)を算出した。なお、下記に示す粘度範囲に応じて使用するローターを変えた。
(回転数:30rpm)
ローターNo.1:粘度が2〜160mPa・sまでの範囲
ローターNo.2:160を超えて1,000mPa・sまでの範囲
【0079】
(II)アルギン酸ナトリウムのM/G比の測定
アルギン酸ナトリウムのM/G比は既知の方法(Carbohydrate Research,32(1974)、217−225に記載の方法)に準じて測定した。
即ち、アルギン酸を構成する2種類のウロン酸(M:マンヌロン酸、G:グルロン酸)は、その並び方から3タイプのブロックに分類することができる。マンヌロン酸同士が重合したホモポリマー(MM画分)、グルロン酸同士が重合したホモポリマー(GG画分)、マンヌロン酸とグルロン酸が交互に重合したヘテロポリマー(MG画分)である。これらのブロックは、それぞれ加水分解に対する抵抗性、pHに対する溶解性が異なることから、その性質を利用してMM画分、GG画分、MG画分に分解した後、各画分を常法に従って分画した(図1に示す実験フローチャートを参照。)。次いで、得られた各画分の糖量をフェノール硫酸法で測定し、下記に示す式よりM/G比を算出した。
M/G=(MM画分の糖量+(MG画分の糖量/2))/(GG画分の糖量+(MG画分の糖量/2))
【0080】
また、試験液状組成物は下記方法で調製した。
試験液状組成物の調製法:
以下の方法に従って真空乳化釜により調製した。
まず、イオン交換水を加え、pH調整剤(リン酸塩等)、水溶性の薬用成分(モノフルオロリン酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、グリチルリチン酸ジカリウム等)、色素、防腐剤(安息香酸ナトリウム)等の水溶性成分を配合し、混合、撹拌により溶解させた。次に、ソルビット液、グリセリン等の湿潤剤を配合した後、混合、撹拌した。次いで、別の容器に取ったプロピレングリコール中にアルギン酸塩及び/又はCMCを配合し、撹拌により分散させた後、上記水溶液中に徐々に加え、混合、撹拌を十分に行って溶解させた。更に、ノニオン性界面活性剤、アルコール、水難溶性の薬用成分(イソプロピルメチルフェノール、グリチルレチン酸等)、香料等の水難溶性成分は原料の物性を参考に配合した。全成分を配合し、混合、撹拌を十分に行って溶解させた後の製剤を製造直後品とした。
【0081】
[実施例1〜6、比較例1〜16]
表1〜3に示す組成の試験液状組成物を上記の方法に従って調製し、製造直後品の使用性(吐出性、保持性)、pH、粘度及びCaイオンによる増粘効果を以下に示す方法に従って評価した。更に、製剤をPET製透明容器(250mL)に充填した後、−5℃及び50℃の恒温槽内で1ヶ月間保存し、1日間室温下で放置した各保存品について、下記に示す方法に従って保存安定性(外観、pH、粘度)を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0082】
なお、アルギン酸塩としてのアルギン酸ナトリウムは、(株)紀文フードケミファ製又は(株)キミカ製の粘度及びM/G比が異なるものを使用した。また、CMCとしてダイセル化学工業(株)製のエーテル化度が異なるもの(粘度は共に1,600mPa・s)を使用した。リン酸塩としてリン酸一水素ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムは、いずれも太平化学産業(株)製のものを使用した。
【0083】
(1)歯間ブラシ用の液状組成物の使用性(吐出性、保持性)評価
(a)吐出性
(判定基準)
○:適度な力を加えることで歯間ブラシ上に製剤を適量出すことができる。
×:適度な力を加えるだけで歯間ブラシ上に製剤が過剰に出る、あるいは、適度な力を
加えるだけでは製剤を歯間ブラシ上に適量出すことができない。
(b)保持性
(判定基準)
○:歯間ブラシ上に製剤を適量出し、歯間部をブラッシングするまでに製剤が歯間ブラ
シから垂れ落ちない。
×:歯間ブラシ上に製剤を適量出し、歯間部をブラッシングするまでに製剤が歯間ブラ
シから垂れ落ちる。
【0084】
(2)pH
ガラス製容器に移したサンプルについてpH計(東亜電波工業(株)製、HM−30V)及びpH電極(東亜電波工業(株)製、GST−5421C)にて25℃における3分後の値を測定した。
(判定基準)
○:製造直後品及び50℃保存品のpHが共に5.5〜8.5の範囲であり、かつ保存
によるpHの変化が0〜0.5の範囲であった場合。
△:製造直後品及び50℃保存品のpHが共に5.5〜8.5の範囲であり、かつ保存
によるpHの変化が0.5を超えて1.0までの範囲であった場合。
×:製造直後品及び50℃保存品のいずれかのpHが5.5〜8.5の範囲外であった
場合、あるいは保存によるpHの変化が1.0を超えた場合。
【0085】
(3)粘度
サンプルをガラス製スクリュー管瓶(100mL、マルエムNo.8)に移し、キャップにて密封した後、25℃の水浴中で30分間放置した。BL型粘度計(東機産業(株)製)を使用し、回転数を12rpmとし、2分後の読み値から粘度(mPa・s)を算出した。なお、下記に示す粘度範囲に応じて使用するローターを変えた。
(回転数:12rpm)
ローターNo.1:粘度が5〜400mPa・sまでの範囲
ローターNo.2:粘度が400を超えて2,000mPa・sまでの範囲
ローターNo.3:粘度が2,000を超えて10,000mPa・sまでの範囲
(判定基準)
◎:製造直後品の粘度に対する50℃保存品の粘度の変化率が0〜10%までの範囲で
あった場合。
○:製造直後品の粘度に対する50℃保存品の粘度の変化率が10%を超えて20%ま
での範囲であった場合。
△:製造直後品の粘度に対する50℃保存品の粘度の変化率が20%を超えて30%ま
での範囲であった場合。
×:製造直後品の粘度に対する50℃保存品の粘度の変化率が30%を超えた場合。
【0086】
(4)外観安定性
保存品について製造直後品に対する製剤の外観変化(不溶物の析出、ゲル化、二相分離、変色)の有無を観察し、以下の基準に従って評価した。
(判定基準)
○:不溶物の析出、ゲル化、二相分離及び変色のすべてにおいて変化がほとんど認めら
れなかった。
△:不溶物の析出、ゲル化、二相分離及び変色の1項以上において少しの変化が認めら
れた。
×:不溶物の析出、ゲル化、二相分離及び変色の1項以上において顕著な変化が認めら
れた。
【0087】
(5)Caイオンによる増粘効果
サンプル80gをガラスビーカー(100mL)に移し、25.5mol/Lの塩化カルシウム水溶液20gを撹拌しながら徐々に加えた。塩化カルシウム水溶液添加後のビーカーを25℃の水浴中で30分間放置した後、BL型粘度計を用いて粘度(A1)を測定した。別に、塩化カルシウム水溶液の代わりにイオン交換水20gを加えた場合の粘度(A2)についても同様に測定し、Caイオンによる増粘効果の指標として粘度上昇率(倍)を次の式より得た。
粘度上昇率(倍)=A1/A2
【0088】
以下の基準に従い、Caイオンによる増粘効果を評価した。なお、塩化カルシウム水溶液添加後のサンプルの粘度は回転数6rpm、イオン交換水添加後の粘度は回転数12rpmとし、下記に示す粘度範囲に応じて使用するローターを変えた。
(回転数:6rpm)
ローターNo.1:粘度が10〜800mPa・sまでの範囲
ローターNo.2:粘度が800を超えて4,000mPa・sまでの範囲
ローターNo.3:粘度が4,000を超えて16,000mPa・sまでの範囲
ローターNo.4:粘度が16,000を超えて100,000mPa・sまでの範囲
(回転数:12rpm)
ローターNo.1:粘度が5〜400mPa・sまでの範囲
ローターNo.2:粘度が400を超えて2,000mPa・sまでの範囲
ローターNo.3:粘度が2,000を超えて10,000mPa・sまでの範囲
(判定基準)
◎:粘度上昇率が15倍以上
○:粘度上昇率が7倍以上15倍未満
△:粘度上昇率が2倍以上7倍未満
×:粘度上昇率が2倍未満
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
表1に示す結果から明らかなように、(A)1.0質量%水溶液の粘度が5〜100mPa・sで、かつM/G比が質量比で0.5〜2.0のアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%、(B)エーテル化度が0.8〜1.6のカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜1.2質量%、(C)下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩を0.05〜0.5質量%、(D)水分を45〜90質量%含有し、かつ、上記(A)/(B)の質量比が0.5〜6.0の範囲であり、更に25℃におけるpHが6.0〜8.5の範囲である液状口腔用組成物(実施例1〜6)は、使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観変化、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果のいずれの点において優れた効果を発揮した。一方、表2,3に示す結果から明らかなように、上記本発明の必須要件のいずれかを満たさない比較例1〜16においては、使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観変化、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果のいずれかの点で満足な効果が発揮されなかった。
【0093】
[実施例7〜16]
表4に示す組成の歯間ブラシ用又は歯頸部塗布用の試験液状口腔用組成物を上記と同様にして調製し、上記実施例と同様の方法により使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果を評価した。また、下記に示す方法に従って、各組成物の薬用成分の滞留性における向上効果を評価した。
なお、歯頸部塗布用液状組成物の使用性は、液状組成物(製剤)を容量が20mL、直径1mmの吐出口を持つボトル容器(容器材質:ポリエチレンテレフタレート製、中栓材質:ポリエチレン製)に充填し、製剤を容器から指の上に適量を出すときの吐出性、及び製剤を出した後に歯頚部へ塗布するまでの保持性を以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。
【0094】
なお、代表的な原料は以下のメーカーのものを使用した。また、香料は表6に示すタイプA〜Fのいずれかを使用した。
・アルギン酸ナトリウム;(株)紀文フードケミファ製又は(株)キミカ製(粘度及びM/G比が異なるもの)
・CMC;ダイセル化学工業(株)製(エーテル化度が異なるもの)(粘度は共に1,600mPa・s)
・リン酸一水素ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム;太平化学産業(株)製
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数60);日光ケミカルズ(株)
製(商品名:HCO−60)
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数100);日本エマルジョン(
株)製(商品名:EMALEX HC−100)
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(EO平均付加モル数20);日本エマルジョン(
株)製(商品名:EMALEX 120)
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(EO平均付加モル数200、PO平均付加モル数が70);BASF社製(商品名:ルトロールF−127)
・エタノール:日本アルコール販売(株)製
・モノフルオロリン酸ナトリウム;ローディア日華(株)製
・フッ化ナトリウム;ステラ ケミファ(株)製
・塩化セチルピリジニウム;和光純薬工業(株)製
・イソプロピルメチルフェノール;大阪化成(株)製
・グリチルレチン酸;丸善製薬(株)製
・グリチルリチン酸ジカリウム;丸善製薬(株)製
【0095】
(1)歯頸部塗布用の液状組成物の使用性(吐出性、保持性)評価
(a)吐出性
(判定基準)
○:適度な力を加えることで指の上に製剤を適量出すことができる。
×:適度な力を加えるだけで指の上に製剤が過剰に出る。又は、適度な力を加えるだけ
では製剤を適量出すことができない。
(b)保持性
(判定基準)
○:指の上に製剤を適量出し、歯頚部に塗布するまでに製剤が指から垂れ落ちない。
×:指の上に製剤を適量出し、歯頚部に塗布するまでに製剤が指から垂れ落ちる。
【0096】
(2)薬用成分(フッ素化合物)の滞留性における向上効果
コラーゲンコート6穴マイクロプレート(品番:IWAKI、Collagen Type I−Coated MICROPLATE 6 Well With Lid)上に、下記に示す組成の人工唾液1mLを加え、しばらく放置した後に上層の溶液をマイクロピペットにより回収し、廃棄した。次に、評価サンプル0.5gをコラーゲンコートプレート上に採取し、できる限り均一になるように広げた。次に、イオン交換水(25℃)5mLをサンプル上に加え、しばらく放置した後に上層の溶液をマイクロピペットにより回収し、廃棄した。次に、人工唾液(37℃)1mLをサンプル上に加え、30秒間放置した後に上層の溶液をマイクロピペットにより回収し、廃棄した。この人工唾液による操作を洗浄1回とし、この洗浄操作を5回繰り返した後の各プレート内に残存するフッ素化合物を抽出溶媒(イオン交換水)にて回収した。つまり、イオン交換水5mLを加え、ピペッティングにより分散させた後、この溶液全量を回収した。この抽出及び回収操作をもう1回繰り返し、それぞれの回収溶液をイオン交換水にて20mLにメスアップし、遠心分離(3,000rpm、10分間)により得られた上澄液を薬用成分(フッ素化合物)の定量用のサンプル溶液(S1)とした。また、上記操作において人工唾液(37℃)の代わりにイオン交換水(37℃)にて同様の操作を施した場合の対照サンプルをサンプル溶液(S2)とした。
【0097】
得られた各サンプル溶液(S1、S2)について、下記に示す方法に従い、フッ素イオン濃度を測定した。
各サンプル溶液15mLを共栓付試験管に正確に量り、1mol/L硫酸5mLを正確に加えて混和し、栓をして約5分間加熱した。冷却後、この液3mLを正確に量り、栓をして約5分間加熱した。冷却後、酢酸緩衝溶液(pH5.3)9mLを正確に加えて混和し、プラスチック製容器に移して試料溶液とした。
フッ素測定用フッ素標準液(100ppm)(サーモオリオン社製)を用いて、同様の操作を行い、2.5ppm、0.25ppm、0.05ppm、0.0125ppmフッ素標準溶液を作製した。
試料溶液及びフッ素標準溶液につき、イオン電極法により試験を行った。フッ素標準溶液の濃度を対数軸に、測定した電位の読み(mV)を等分軸にプロットして検量線を作成した。次に測定した試料溶液の電位の読み(mV)から作成した検量線を用いて試料溶液のフッ素(F)濃度を算出した。
【0098】
(3)薬用成分(抗炎症剤、殺菌剤)の滞留性における向上効果
上記の方法に従って洗浄操作を5回繰り返した後の各プレート内に残存する薬用成分(抗炎症剤、殺菌剤)を抽出溶媒(80%エタノール)により回収した後、20mLにメスアップし、遠心分離(3,000rpm、10分間)により得られた各サンプル溶液(S1、S2)をメンブランフィルターでろ過した後、下記に示す方法に従い、HPLC分析し、サンプル中の薬用成分の濃度を別に調製した標準溶液のピーク面積値と濃度の関係式から算出した。なお、塩化セチルピリジニウムを定量分析する場合には、得られたサンプル溶液1mLと移動相1mLを混合したものをサンプルとして使用した。
【0099】
なお、同条件下で調製して得た3つのサンプルについて分析した。得られた3つのデータの平均値を算出し、薬用成分(フッ素化合物、抗炎症剤、殺菌剤)の滞留性向上率(%)を次の式より得た。ここで、薬用成分(フッ素化合物、抗炎症剤、殺菌剤)の滞留性における向上効果は以下の基準に従って評価した。
滞留性向上率(%)=(S1の薬用成分濃度/S2の薬用成分濃度)×100
(判定基準)
◎:滞留性向上率が250%以上
○:滞留性向上率が175%以上250%未満
△:滞留性向上率が100%以上175%未満
×:滞留性向上率が100%未満
【0100】
ここで、人工唾液の調製法は以下の通りである。1Lビーカーにイオン交換水を950mL加え、塩化カルシウム、塩化カルシウム(2水和物)、リン酸二水素カリウム、塩化マグネシウム(6水和物)を下記の濃度になるように添加し、混合して溶解させた。次に、1mol/L水酸化カリウム溶液にてpHを7.0に調整した後、イオン交換水を加えて全量を1Lとした。
【0101】
人工唾液組成:
塩化カルシウム 50.0 mmol/L
塩化カルシウム(2水和物) 2.0 mmol/L
リン酸二水素カリウム 1.0 mmol/L
塩化マグネシウム(6水和物) 0.1 mmol/L
水酸化カリウム 適量(pH7.0)
イオン交換水 残
合計 1L
【0102】
(HPLC装置)
ポンプ:日本分光(株)製(型番:PU−980)
試料導入部:協和精密(株)製(型番:KSP−100X)
検出器:日本分光(株)製(型番:UV−970)
記録装置:ステムインスツルメント(株)製(型番:Chromatocoder21J

カラム恒温槽:(株)センシュー科学製(型番:SSC−2100)
【0103】
(1)塩化セチルピリジニウムのHPLC分析方法
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:265nm)
カラム:Inertsil ODS−2カラム(内径4mm、長さ150mm)
(ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:アセトニトリル750mLとリン酸緩衝液(リン酸二水素ナトリウム2水和物;
7.8g、リン酸;3.4mL)250mLを混合し、更にラウリル硫酸ナトリ
ウム1.2gを加えて溶解した後に、フィルターろ過したもの。
流量:1.0mL/min
サンプリング量:50μL
【0104】
(2)イソプロピルメチルフェノールのHPLC分析方法
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:285nm)
カラム:YMC−Pack ODS−A A−303
(内径4.6mm、長さ250mm)((株)ワイエムシィ製)
カラム温度:45℃付近の一定温度
移動相:アセトニトリル600mLと水400mLと酢酸10mLを混合し、フィルター
ろ過したもの。
流量:0.8mL/min
サンプリング量:50μL
【0105】
(3)グリチルレチン酸のHPLC分析方法
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:250nm)
カラム:YMC−Pack ODS−A A−303
(内径4.6mm、長さ250mm)((株)ワイエムシィ製)
カラム温度:45℃付近の一定温度
移動相:アセトニトリル600mLと水400mLと酢酸10mLを混合し、フィルター
ろ過したもの
流量:1.1mL/min
サンプリング量:50μL
【0106】
(4)グリチルリチン酸ジカリウムのHPLC分析方法
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:250nm)
カラム:Partisil−10 ODS−3カラム
(内径4.6mm、長さ250mm)(ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:トリエタノールアミン5gに水1,000mLを加えて溶かし、この液にリン酸
をpH3.0になるまで加えて調製したリン酸−トリエタノールアミン緩衝液6
70mLとアセトニトリル330mLを混合し、フィルターろ過したもの
流量:1.0mL/min
サンプリング量:50μL
【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
表5に示す結果から、(A)1.0%水溶液の粘度が5〜100mPa・sで、かつM/G比が0.5〜2.0のアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%、(B)エーテル化度が0.8〜1.6のカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜1.2質量%、(C)下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩を0.05〜0.5質量%、(D)水分を45〜90質量%含有し、かつ、上記(A)/(B)の質量比が0.5〜6.0の範囲であり、更に25℃におけるpHが6.0〜8.5の範囲である歯頸部塗布用又は歯間部用の液状組成物(実施例7〜16)は、使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観変化、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果のいずれの点においても優れた効果を発揮し、更に薬用成分(フッ素化合物、抗炎症剤、殺菌剤)の滞留性における向上効果を十分に発揮することがわかった。
【0110】
以下、実施例17〜22を示す。なお、アルギン酸ナトリウムは(株)紀文フードケミファ製又は(株)キミカ製の粘度及びM/G比が異なるものを使用した。CMC、リン酸塩、エタノール、ノニオン性界面活性剤、フッ素化合物、抗炎症剤、殺菌剤で下記以外は上記のものを使用した。香料は表6に示したものを用いた。これらの実施例のいずれにおいても、使用性(吐出性、保持性)、保存安定性(外観変化、pH、粘度)及びCaイオンによる増粘効果に優れ、更に薬用成分(フッ素化合物、抗炎症剤、殺菌剤)の滞留性における向上効果が十分に発揮される液状口腔用組成物が得られた。
【0111】
トラネキサム酸;第一製薬(株)製
イプシロンアミノカプロン酸;第一化学薬品(株)製
塩化ベンザルコニウム;日本油脂(株)製
トリクロサン;和光純薬工業(株)製
ヒノキチオール;和光純薬工業(株)製
塩化ベンゼトニウム;和光純薬工業(株)製
グルコン酸クロルヘキシジン(20%);和光純薬工業(株)製
酢酸dl−α−トコフェノール;ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)製
【0112】
[実施例17]歯間部用歯磨
(A)アルギン酸ナトリウム(粘度;15mPa・s、M/G比;1.3)
0.8質量%
(B)CMC(エーテル化度;0.9、粘度;1,600mPa・s) 0.6
(C)リン酸一水素ナトリウム 0.25
(C)リン酸二水素ナトリウム 0.05
(H)塩化セチルピリジニウム 0.05
(H)イソプロピルメチルフェノール 0.03
(G)グリチルレチン酸 0.03
(J)エタノール 5.0
(I)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数100) 3.5
プロピレングリコール 3.0
グリセリン(85%) 12.0
ソルビット液(70%) 15.0
香料C 0.55
青色1号 0.001
黄色4号 0.0001
カラメル色素 0.002
精製水 バランス
合計 100質量%
(D)水分量 66質量%
(A)アルギン酸塩/(B)CMCの質量比 1.3
pH 7.2
【0113】
なお、アルギン酸ナトリウムとして粘度が15mPa・sでM/G比が0.8、又は粘度が50mPa・sでM/G比が0.8のものを使用しても同様の結果が得られた。また、CMCとしてエーテル化度が1.4で粘度が1,600mPa・sのものを使用しても同様の結果が得られた。更に、香料Cの代りに香料A、B、D、E、Fを用いても同様の結果が得られた。
【0114】
[実施例18]液状歯磨
(A)アルギン酸ナトリウム(粘度;30mPa・s、M/G比;0.8)
1.0質量%
(B)CMC(エーテル化度;1.4、粘度;1,600mPa・s) 0.5
(C)リン酸一水素ナトリウム 0.1
(C)リン酸二水素ナトリウム 0.1
(E)キサンタンガム 0.15
(F)フッ化ナトリウム 0.05
(G)イプシロンアミノカプロン酸 0.03
(H)トリクロサン 0.05
(H)グルコン酸クロルヘキシジン(20%) 0.10
(J)エタノール 8.0
(I)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数60) 1.0
プロピレングリコール 2.0
ポリエチレングリコール600 3.0
グリセリン(85%) 15.0
香料D 0.6
黄色4号 0.001
精製水 バランス
合計 100質量%
(D)水分量 71質量%
(A)アルギン酸塩/(B)CMCの質量比 2.0
pH 6.9
【0115】
なお、アルギン酸ナトリウムとして粘度が15mPa・sでM/G比が0.8、又は粘度が50mPa・sでM/G比が1.3のものを使用しても同様の結果が得られた。また、CMCとしてエーテル化度が0.9で粘度が1,600mPa・sのものを使用しても同様の結果が得られた。更に、香料Dの代りに香料A、B、C、E、Fを用いても同様の結果が得られた。
【0116】
[実施例19]歯頸部及び歯肉塗布剤
(A)アルギン酸ナトリウム(粘度;50mPa・s、M/G比;0.8)
0.8質量%
(B)CMC(エーテル化度;0.9、粘度;1,600mPa・s) 0.5
(C)リン酸一水素ナトリウム 0.2
(C)リン酸二水素ナトリウム 0.04
(G)トラネキサム酸 0.05
(H)塩化ベンゼトニウム 0.03
(H)ヒノキチオール 0.05
(J)エタノール 2.0
(I)ポリオキシエチレンセチルエーテル(EO平均付加モル数20) 0.5
プロピレングリコール 3.0
グリセリン(85%) 15.0
ソルビット液(70%) 10.0
アラントイン 0.03
硝酸カリウム 0.02
香料D 0.4
精製水 バランス
合計 100質量%
(D)水分量 73質量%
(A)アルギン酸塩/(B)CMCの質量比 1.6
pH 7.2
【0117】
なお、アルギン酸ナトリウムとして粘度が15mPa・sでM/G比が1.3、又は粘度が50mPa・sでM/G比が0.8のものを使用しても同様の結果が得られた。また、CMCとしてエーテル化度が1.4で粘度が1,600mPa・sのものを使用しても同様の結果が得られた。更に、香料Dの代りに香料A、B、C、E、Fを用いても同様の結果が得られた。
【0118】
[実施例20]液状歯磨
(A)アルギン酸ナトリウム(粘度;10mPa・s、M/G比;1.3)
1.0質量%
(B)CMC(エーテル化度;1.4、粘度;1,600mPa・s) 0.4
(C)リン酸二水素ナトリウム 0.2
(E)キサンタンガム 0.3
(F)モノフルオロリン酸ナトリウム 0.20
(G)グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
(G)酢酸dl−α−トコフェノール 0.03
(H)トリクロサン 0.03
(H)塩化ベンザルコニウム 0.05
(J)エタノール 4.0
(I)ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(70)
1.0
プロピレングリコール 2.0
グリセリン(85%) 20.0
ソルビット液(70%) 10.0
炭酸水素ナトリウム 0.1
香料E 0.5
青色1号 0.001
精製水 バランス
合計 100質量%
(D)水分量 66質量%
(A)アルギン酸塩/(B)CMCの質量比 2.5
pH 7.5
【0119】
なお、アルギン酸ナトリウムとして粘度が30mPa・sでM/G比が0.8、又は粘度が50mPa・sでM/G比が0.8のものを使用しても同様の結果が得られた。また、CMCとしてエーテル化度が0.9で粘度が1,600mPa・sのものを使用しても同様の結果が得られた。更に、香料Eの代りに香料A、B、C、D、Fを用いても同様の結果が得られた。
【0120】
[実施例21]液状歯磨
(A)アルギン酸ナトリウム(粘度;80mPa・s、M/G比;0.8)
1.2質量%
(B)CMC(エーテル化度;0.9、粘度;1,600mPa・s) 0.7
(C)リン酸一水素ナトリウム 0.2
(C)リン酸二水素ナトリウム 0.1
(G)トラネキサム酸 0.05
(G)グリチルレチン酸 0.03
(H)塩酸クロルヘキシジン 0.02
(J)エタノール 2.0
(I)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数60) 0.5
(I)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数100) 2.0
無水ケイ酸 5.0
プロピレングリコール 3.0
グリセリン(85%) 12.0
ソルビット液(70%) 15.0
キシリトール 5.0
香料F 0.5
フッ化第一スズ 0.05
黄色4号 0.001
カラメル色素 0.003
精製水 バランス
合計 100質量%
(D)水分量 59質量%
(A)アルギン酸塩/(B)CMCの質量比 1.7
pH 7.0
【0121】
なお、アルギン酸ナトリウムとして、粘度が30mPa・sでM/G比が0.8、又は粘度が50mPa・sでM/G比が1.3のものを使用しても同様の結果が得られた。また、CMCとしてエーテル化度が1.4で粘度が1,600mPa・sのものを使用しても同様の結果が得られた。更に、香料Fの代りに香料A、B、C、D、Eを用いても同様の結果が得られた。
【0122】
[実施例22]液状歯磨
(A)アルギン酸ナトリウム(粘度;15mPa・s、M/G比;1.3)
0.9質量%
(B)CMC(エーテル化度;1.4、粘度;1,600mPa・s) 0.5
(C)リン酸一水素ナトリウム 0.23
(C)リン酸二水素ナトリウム 0.04
(E)キサンタンガム 0.15
(F)モノフルオロリン酸ナトリウム 0.25
(H)イソプロピルメチルフェノール 0.03
(H)塩化セチルピリジニウム 0.05
(G)グリチルレチン酸 0.03
(J)エタノール 6.0
(I)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO平均付加モル数100) 3.0
プロピレングリコール 3.0
グリセリン(85%) 10.0
ソルビット液(70%) 15.0
香料A 0.6
青色1号 0.001
精製水 バランス
合計 100質量%
(D)水分量 66質量%
(A)アルギン酸塩/(B)CMCの質量比 1.8
pH 7.1
【0123】
なお、アルギン酸ナトリウムとして、粘度が15mPa・sでM/G比が0.8、又は粘度が30mPa・sでM/G比が0.8又は1.3のものを使用しても同様の結果が得られた。また、CMCとしてエーテル化度が0.9で粘度が1,600mPa・sのものを使用しても同様の結果が得られた。更に、香料Aの代りに香料B、C、D、E、Fを用いても同様の結果が得られた。
【0124】
【表6】

【0125】
【表7】

【0126】
【表8】

【0127】
【表9】

【0128】
【表10】

【0129】
【表11】

【0130】
【表12】

【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】アルギン酸ナトリウムをMM画分、GG画分、MG画分に分画する実験フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)20℃における1.0質量%水溶液の粘度が5〜100mPa・sで、かつ分子内のD−マンヌロン酸〔M〕とL−グルロン酸〔G〕の含有比率(M/G比)が質量比で0.5〜2.0であるアルギン酸塩を0.5〜2.0質量%、
(B)エーテル化度が0.8〜1.6のカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜1.2質量%、
(C)下記一般式(1)
n3-nPO4 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは1,2又は3である。)
で表されるリン酸塩を0.05〜0.5質量%、
(D)水分を45〜90質量%
含有し、かつ(A)成分/(B)成分の質量比が0.5〜6.0の範囲であり、25℃におけるpHが6.0〜8.5の範囲であることを特徴とする液状口腔用組成物。
【請求項2】
更に、(E)キサンタンガムを含有することを特徴とする請求項1記載の液状口腔用組成物。
【請求項3】
更に、(F)フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムから選ばれるフッ素化合物及び/又は(G−1)トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸塩から選ばれる水溶性の抗炎症剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の液状口腔用組成物。
【請求項4】
更に、(G−2)グリチルレチン酸、酢酸dl−α−トコフェノールから選ばれる水難溶性の抗炎症剤及び/又は(H)イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンから選ばれる殺菌剤を含有し、かつ(I)ノニオン性界面活性剤及び/又は(J)エタノールを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液状口腔用組成物。
【請求項5】
歯間ブラシによって適用される歯間部用製品、又は指によって適用される歯頚部又は歯肉塗布用製品であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の液状口腔用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−7413(P2008−7413A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176117(P2006−176117)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】