説明

液状試料のサンプリング量測定手段

【課題】 液状試料14を規定量分注するサンプリング作業において、そのサンプリング量を正確に測定し、サンプリング量が規定量の許容範囲内であることを簡単に判定可能な測定手段を提案する。
【解決手段】 液状試料14を収容した試料容器30から他の検査容器32へ規定量分注するサンプリング作業における液状試料のサンプリング量測定手段であって、発振波長1400〜1700nmの間のレイザーダイオードを光源に用いた発光器20と、この発光器20に対向して配置した受光器22との間を、試料容器30から液状試料14を吸引した吸引体12を上下動移動させ、発光器20が投光して受光器22が受光し、吸引体12を透過した受光量の変動を測定し、液状試料14の液面位置を検出することでサンプリング量を測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液や試薬等の液状試料を規定量分注するサンプリング作業における液状試料のサンプリング量測定手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野における各種の成分分析検査の前作業として、血液や試薬等の液状試料を収容した試料容器から他の検査容器へ規定量分注するサンプリング作業が行われ、その代表的なものが血液検査における血清14のサンプリング作業である。一般的な血液検査は血液中の血清を対象とするため、被検者から採血した血液を遠心分離による比重の差で血清と血球とに分離し、吸引ノズルに装着した吸引体(ディスポチップ)を試料容器(採血管)内上層の血清に浸漬して所要量を吸引し、これを他の検査容器へ分注するサンプリング作業が行なわれ、ディスポチップは他人の血清とのコンタミネーションを防ぐため、検体毎に取り替えられている。
【0003】
一方、こうした液状試料のサンプリング作業において、サンプリング量はシリンジの体積変化で制御されるが、特に微量成分分析では、分析結果の信頼性を確保するためにサンプリング量が規定され、規定量の許容範囲内の分注が行われたことを確認する判定作業が必要とされる。従来、この判定のためのサンプリング量測定手段として、吸引体をCCDカメラで撮影して画像解析処理し、液状試料の体積を算出する手段や、吐出中の液状試料の投影像からサンプリング量を算出する手段(特許文献1参照)等が提案されているが、装置が複雑となって測定コストが高価であった。
【特許文献1】特開平5−2025公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、液状試料を規定量分注するサンプリング作業において、そのサンプリング量を正確に測定し、サンプリング量が規定量の許容範囲内であることを簡単に判定可能な測定手段を提案し、この測定手段を自動分注装置に適用し、装置の簡素化と測定コストの大幅な低廉化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
こうした課題を解決するため、この発明は、液状試料14を収容した試料容器30から他の検査容器32へ規定量分注するサンプリング作業における液状試料のサンプリング量測定手段であって、発振波長1400〜1700nmの間のレイザーダイオードを光源に用いた発光器20と、この発光器20に対向して配置した受光器22との間を、試料容器30から液状試料14を吸引した吸引体12を上下動移動させ、発光器20が投光して受光器22が受光し、吸引体12を透過した受光量の変動を測定し、液状試料14の液面位置を検出することでサンプリング量を測定することを特徴とするものである。
【0006】
また、この液状試料のサンプリング量測定手段を用い、規定量より多量の液状試料14を試料容器30から吸引し、分注前の液面位置Xと分注後の液面位置Yとを検出してサンプリング量を測定することを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明の液状試料のサンプリング量測定手段は、血液検査における血清14のサンプリング作業に特に適用するものである。
【0008】
また、この発明の液状試料のサンプリング量測定手段を自動分注装置に適用する場合、分注ヘッドに、分注工程に伴う吸引体12の昇降行程の途中に発光器20及び受光器22を設けるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の液状試料のサンプリング量測定手段は、水分を含む液状試料14において、水分子が波長1450nm付近の光を吸収する光吸収特性を利用するもので、発光器20と受光器22との間を液状試料14を吸引した吸引体12を上下動移動させ、発光器20から投光して吸引体12を透過した受光量を測定するもので、吸引体12内の上層部の液状試料14が滞留しない中空層では投光はそのまま透過し、液状試料14の滞留層に至ると、液状試料14成分中の水分に吸収されて受光量が激減する。したがって、吸引体12の通過に伴う受光量の変動を測定することで、液状試料14の液面位置を正確に検出することができ、吸引体12の形状が既知であるから液状試料14の体積が簡単に算出される。検査容器32へ全量分注の場合はこれがサンプリング量となる。
【0010】
また、規定量より多量の液状試料14を試料容器30から吸引し、分注前の液面位置Xと分注後の液面位置Yとを検出すれば、減少した体積を算出して液状試料14のサンプリング量を正確に測定することができる。この測定手段は、吸引体12の先端細径部が検出位置とならないように設定することができるので測定精度に優れるとともに、分注前後の液面位置X、Yを検出するので、吸引体12の目詰まり等による誤判定も防止され、液状試料14の小分け分注においてもサンプリング量を測定可能である。
【0011】
また、レイザーダイオードによる投光、その受光は繰り返し精度に優れるとともに、分注ヘッドに、分注工程に伴う吸引体12の昇降行程の途中に発光器20及び受光器22を設けることで、分注工程に伴う吸引体12の昇降時に液状試料14の液面位置が検出され、サンプリング量測定のために特別な工程や操作を必要とせず、自動分注装置に適用して装置の簡素化と測定コストの大幅な低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
図1は、この発明の液状試料のサンプリング量測定手段の基本的構成を示し、血液検査の前作業としての血清14のサンプリング作業における実施例で、シリンジに接続した分注ノズル10の先端にディスポチップ(吸引体)12が装着され、試料容器(採血管)内上層の血清(液状試料)14に浸漬して所要量を吸引し、これを他の検査容器へ規定量分注するものである。図1(a)はディスポチップ12内に規定量より多量の血清14を吸引した状態、(b)は分注後の状態を示す。
【0013】
レイザーダイオードを光源に用いた発光器20と、発光器20が投光したレーザ光を受光する受光器22が対向して設けられている。図に示すように、発光器20、受光器22は間隔を設けてヘッド面を相対峙するように設置され、ディスポチップ12は、血清14の吸引、分注の各工程で発光器20と受光器22との間を上下動移動する。
【0014】
このサンプリング量測定手段の仕様を具体的に説明する。
1)レイザーダイオードは、発振波長1400〜1700nmの間のものを使用する。本例では光通信媒体として汎用されている発振波長1550nmのレイザーダイオード(定格10mW以下)を用いている。
2)受光器22の受光素子は、フォトセンサー(反応域 0.9〜1.7μm)を用いる。
3)必要に応じ、平行光線を投光するためにコリメートレンズ(Collimating
lens)を発光器20に使用する。
4)光量調節及び測定対象物の外径等の条件に応じ、発光器20と受光器22との間にスリットを挿入する。スリットの形状は外径1.2mm程度の円形形状のものを用いるが、条件に応じて5.0mm以下の範囲で調節する。
5)光量調節のため、必要に応じて発光器20及び受光器22のヘッド面にフィルターを挿入する。
6)発光器20と受光器22との間隔は5mm程度に設定するが、測定対象物の外径に応じて20mm以下の範囲で調節する。
7)発光器20から受光器22への光軸とディスポチップ12の軸が直交するように配置する。
8)ディスポチップ12は汎用のものを用いるが、水検知限界値チップ外径2.5mmを満たすものを使用する。一般的には300μLのディスポチップを用いるが、サンプリング量に応じて適切な容量のディスポチップを選択する。
【0015】
次に、このサンプリング量測定手段の手順を説明する。
図1(a)に示す血清14を吸引したディスポチップ12を、発光器20と受光器22との間を上下動移動させる。この間発光器20から投光して受光器22が受光し、ディスポチップ12を透過した受光量を測定し、受光素子の電位変化をA−Dコンバーターでデジタル数値化し、その数値の増減を解析する。ディスポチップ12内の上層部の血清14が滞留しない中空層2では投光はそのまま透過し、血清14の滞留層3に至ると、水分子の光吸収特性により血清成分中の水分に吸収され、受光量が激減して測定数値も激減し、この測定数値の減衰から血清14の液面位置Xを検出する。図2は、受光素子の測定数値とディスポチップ12の側壁位置との関係を示すグラフで、(a)に示す位置Xが血清14の液面として検出される。
【0016】
次に、図1(b)に示す分注後のディスポチップ12を、同じく発光器20と受光器22との間を上下動移動させる。この間発光器20から投光し、同様にして受光器22の受光素子の測定数値の減衰から血清14の液面位置Yを検出し、図2(b)に示す位置Yが血清14の液面として検出される。こうして分注前後の液面位置Xと液面位置Yとを検出し、減少した体積を算出して血清14のサンプリング量が測定される。このサンプリング量が規定量の許容範囲内から外れる場合はNGと判定される。
【0017】
図3は、この発明の液状試料のサンプリング量測定手段を、血清の自動分注装置に適用した実施例で、その分注ヘッドを示す。図3(a)に示すように、先端にディスポチップ12を装着した分注ノズル10はアーム24に把持され、シャフト25の回転でこれに螺合したアーム24を昇降させ、ディスポチップ12の上下動移動を制御するように構成され、発光器20及び受光器22は、分注工程に伴うディスポチップ12の昇降行程の途中に設けられている。
【0018】
試料容器30内の血液は、遠心分離による比重の差で分離材15を介して上層の血清14と底部の血球16とに予め分離され、新たなディスポチップ12を分注ノズル10に装着した分注ヘッドは、検体である当該試料容器30の上方位置へと移動される。ここで、シャフト25の回転でアーム24を降下させ、ディスポチップ12の先端を試料容器30内上層の血清14に浸漬して所要量を吸引する(bの状態)。
【0019】
次に、シャフト25の回転でアーム24を上昇させ、ディスポチップ12は発光器20と受光器22との間を通過し、この間発光器20から投光して上記測定手段により血清14の液面位置Xを検出する(cの状態)。
【0020】
次に、分注ヘッドは当該検査容器32の上方位置へ移動され、シャフト25の回転でアーム24を降下させ、規定量の血清14を分注する(dの状態)。次に、シャフト25の回転でアーム24を上昇させ、ディスポチップ12は発光器20と受光器22との間を通過し、この間発光器20から投光して上記測定手段により血清14の液面位置Yを検出し、血清14のサンプリング量を測定する(eの状態)。このように、本装置において、分注工程に伴うディスポチップ12の昇降時に血清14の液面位置X、Yが検出され、サンプリング量測定のために特別な工程や操作は不要である。
【0021】
以上、血液検査における血清14のサンプリング作業に適用した実施例について説明したが、この発明は、水分を含む液状試料14を規定量分注するサンプリング作業に適合し、サンプリング作業に用いる吸引体としては、検体毎に取り替えるディスポチップの他、サンプリングノズル、ピペット等で光を透過するガラス製、樹脂製の材質であれば適合する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の基本的構成を示す説明図。
【図2】受光素子の測定数値と吸引体の側壁位置との関係を示すグラフ。
【図3】血清の自動分注装置に適用した実施例の説明図。
【符号の説明】
【0023】
12 吸引体
14 液状試料
20 発光器
22 受光器
30 試料容器
32 検査容器
X 液面位置
Y 液面位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状試料14を収容した試料容器30から他の検査容器32へ規定量分注するサンプリング作業における液状試料のサンプリング量測定手段であって、
発振波長1400〜1700nmの間のレイザーダイオードを光源に用いた発光器20と、この発光器20に対向して配置した受光器22との間を、試料容器30から液状試料14を吸引した吸引体12を上下動移動させ、発光器20が投光して受光器22が受光し、吸引体12を透過した受光量の変動を測定し、液状試料14の液面位置を検出することでサンプリング量を測定することを特徴とした液状試料のサンプリング量測定手段。
【請求項2】
請求項1に記載の液状試料のサンプリング量測定手段を用い、規定量より多量の液状試料14を試料容器30から吸引し、分注前の液面位置Xと分注後の液面位置Yとを検出してサンプリング量を測定することを特徴とした液状試料のサンプリング量測定手段。
【請求項3】
サンプリング作業が血液検査における血清14のサンプリング作業である請求項1又は2に記載の液状試料のサンプリング量測定手段。
【請求項4】
分注ヘッドに、分注工程に伴う吸引体12の昇降行程の途中に発光器20及び受光器22を設けた請求項1、2又は3に記載の液状試料のサンプリング量測定手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−180644(P2008−180644A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15225(P2007−15225)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503409137)株式会社エステック (1)
【Fターム(参考)】