液量測定方法、液量測定装置、および電気光学装置の製造方法
【課題】被吐出領域に滴下された液滴の液量を短時間で測定する技術が望まれていた。
【解決手段】被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置D1,D2,D3において、この3つの位置のうちの一つの位置D1における前記液滴の液面高さを基準として他の2つの位置D2,D3における前記液滴の液面高さ△H1,△H2を計測する計測工程と、計測された他の2つの位置D2,D3における液滴の液面高さと3つの位置D1,D2,D3とから、短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径Rを演算し、演算した曲率半径Rから液滴の液量を測定する測定工程と、を備えた。
【解決手段】被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置D1,D2,D3において、この3つの位置のうちの一つの位置D1における前記液滴の液面高さを基準として他の2つの位置D2,D3における前記液滴の液面高さ△H1,△H2を計測する計測工程と、計測された他の2つの位置D2,D3における液滴の液面高さと3つの位置D1,D2,D3とから、短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径Rを演算し、演算した曲率半径Rから液滴の液量を測定する測定工程と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液量測定方法、液量測定装置、および電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型の自発光素子であるエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を表示素子として用いた表示装置が多く使われるようになってきた。EL素子は、発光材料によって形成された発光層に電流を流すことによって、所望する明るさの発光光を射出するものである。発光層の形成は、例えば、所定の基板上にバンク(隔壁)によって区画形成された被吐出領域(画素領域)に対して、基板と相対移動する吐出ヘッドから液状体を吐出する所謂インクジェット法を用い、発光材料を含む液状体を吐出することによって、所定の量の液滴を滴下する。その後、真空乾燥や加熱乾燥などの乾燥処理によって、吐出された液状体を固化することによって行われる。
【0003】
ところで、周知のように、発光光の輝度は形成された発光層の厚さに依存する。このため、形成される発光層の厚さのばらつきがそのまま輝度のばらつきになってしまう。従って、各被吐出領域内において形成される発光層の厚さが一定になるように、被吐出領域に吐出して滴下された液状体の液量が所定の量となるようにすることが重要である。
【0004】
しかしながら、インクジェット法を用いて、基板面に形成された被吐出領域に液状体を吐出して滴下する場合、吐出ヘッドを構成する機能部品(例えば圧電素子)の性能ばらつきや形状ばらつきなどに起因して、吐出ヘッドに設けられたノズル毎に、液状体の吐出量にばらつきが存在する場合が多い。このため、ノズルから吐出され、被吐出領域に滴下された液状体の液量を精度よく測る必要があり、例えば、特許文献1に、微小な液滴の体積を精度よく測定する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−121401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、水平面上に滴下した液滴の中心から液滴の外周とを結ぶ線分を液滴の径方向に走査しながら複数箇所で液面の輪郭(高さ)を計測する技術である。従って、液量を精度良く測定するためには、測定個所を多くする必要がある。特に、実際に基板面に形成される被吐出領域は、長円形状など一方が長手方向を有する形状で形成されることが多く、このような場合、多くの方向の線分において測定を行う必要が生ずるため、測定箇所が更に多くなる。
【0007】
しかしながら、このように測定個所を多くすると、測定時間が長くなってしまうことになり、この結果、ノズルからの液状体の吐出量を補正するまでに要する時間が長くなってしまう。すると、既に被吐出領域に滴下された液状体が乾燥(自然乾燥)を開始してしまうことが生じ、その後の真空乾燥や加熱乾燥などの乾燥処理において、乾燥条件が一様にならず、延いては被吐出領域内において固化した発光層の厚さが均一にならないという課題が生じる。このため、被吐出領域に滴下された液滴の液量を短時間で測定する技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定方法であって、前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として他の2つの位置における前記液滴の液面高さを計測する計測工程と、計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
被吐出領域が長手方向を有する場合、長手方向と直交する短手方向では、液面は凡そ円弧形状を呈し、その円弧の曲率半径が液滴の液量を代表すると考えてよい場合がある。このような場合、液滴の液面が呈する円弧の曲率半径を演算して求めることによって、被吐出領域に滴下された液滴の液量を測定することができる。このとき、この測定方法によれば、液面の高さを測定する測定点は短手方向の3つの位置で済むので、短時間で液量を測定することができる。この結果、被吐出領域において滴下された液滴の液量を、素早く補正することが可能となる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、3つの位置における液面高さとを1つの位置を基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。
【0011】
[適用例2]上記液量測定方法であって、前記計測工程は、前記短手方向に沿う線分の位置を、前記長手方向の略中心位置とすることを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、短手方向における液面形状のばらつきが少ない状態で液面高さを計測できる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0013】
[適用例3]上記液量測定方法であって、前記計測工程は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0015】
[適用例4]上記液量測定方法であって、前記計測工程は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0017】
[適用例5]上記液量測定方法であって、前記測定工程は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、演算処理に伴う負荷が軽減されるので、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、短時間で測定することができる。
【0019】
[適用例6]上記液量測定方法であって、前記被吐出領域について、形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得工程と、前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記被吐出領域について前記3つの位置を算出する算出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、基板面に形成された被吐出領域の形状や配置が異なる場合においても、被吐出領域についての形状と位置に関する情報を取得し、被吐出領域の形状中心位置と短手方向とを算出することができる。
【0021】
[適用例7]上記液量測定方法であって、前記取得工程は、前記基板面に形成された前記被吐出領域を光学的に読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、基板面に形成された被吐出領域の形状や配置が異なる場合においても、基板面に形成された被吐出領域の形状と基板面における位置を、光学的に直接読み取って取得することができる。
【0023】
[適用例8]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定装置であって、前記液滴の液面高さを計測する計測手段と、前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として、他の2つの位置における前記液滴の液面高さを、前記計測手段を用いて計測する計測部と、計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
液面が凡そ円弧形状を呈する場合、円弧の曲率半径が液滴の液量を表すと考えてよいことから、液滴が呈する円弧の曲率半径を演算して求めることによって液滴量を測定することができる。従って、この方法によれば、測定点は短手方向の3つの位置で済むので、短時間で測定することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早く補正することが可能となる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、3つの位置における液面高さとを1つの位置を基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。
【0025】
[適用例9]上記液量測定装置であって、前記計測手段を前記基板面に対して面内方向に相対移動する移動手段と、前記被吐出領域の形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得部と、取得された前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記3つの位置を算出する算出部と、を備え、前記計測部は、前記移動手段を用いて、算出された前記3つの位置に移動して計測することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、計測手段を、短手方向の3つの位置とに相対移動させて、液面の位置を測定することができる。
【0027】
[適用例10]上記液量測定装置であって、前記基板面において形成された前記被吐出領域を光学的に読み取る読取手段を備え、前記取得部は、前記読取手段を用いて前記被吐出領域を読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、基板面に形成された被吐出領域が基板毎に異なっていても、被吐出領域の形状と位置に関する情報を取得するので、短手方向の3つの位置を取得することができる。
【0029】
[適用例11]上記液量測定装置であって、前記計測部は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0031】
[適用例12]上記液量測定装置であって、前記計測部は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0033】
[適用例13]上記液量測定装置であって、前記測定部は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、演算処理に伴う負荷が軽減されるので、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、短時間で測定することができる。
【0035】
[適用例14]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、前記滴下した前記液滴の液量を、上記液量測定方法を用いて測定する測定工程と、前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、を含むことを特徴とする。
【0036】
この方法によれば、被吐出領域に滴下された液量を短時間で測定することができる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、2つの位置における液面高さとを形状中心位置の液面高さを基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早くかつ的確に補正することが可能となる。
【0037】
[適用例15]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、前記滴下した前記液滴の液量を、上記液量測定装置を用いて測定する測定工程と、前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、を含むことを特徴とする。
【0038】
この方法によれば、被吐出領域に滴下された液量を短時間で測定することができる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、2つの位置における液面高さとを形状中心位置の液面高さを基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早くかつ的確に補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、以降の説明において用いる図面は、各寸法が説明の都合上必要に応じて誇張されている場合もあり、実際の寸法とは必ずしも一致していないことは言うまでもない。
【0040】
(第1の実施形態:液量測定装置)
図1は、本発明の一実施形態としての液量測定装置100の概略構成を示す模式図である。液量測定装置100は、図示するように、X軸方向に移動するテーブル105aと、X軸方向と直交するY軸方向に移動するテーブル105bと、からなる移動手段としてのXYテーブル105と、読取手段としてのカメラ20と、計測手段としての計測器30と、液量測定装置100を制御するコントロール装置10とを備えている。
【0041】
テーブル105aは、直線的に設けられた一対のガイドレール101と、ガイドレール101の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示せず)とを有し、コントロール装置10によって1つの直線軸方向つまりX軸方向に移動する。テーブル105bは、直線的に設けられた一対のガイドレール102と、ガイドレール102の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示せず)とを有し、コントロール装置10によって1つの直線軸方向つまりY軸方向に移動する。テーブル105aには、基板Pを載置するための図示しない吸着手段(例えばエアー吸着)が備えられ、テーブル105a上に基板Pを吸着固定できる構成となっている。なお、XYテーブル105は、例えばモーターとボールネジとの組み合わせなど、他の構成によってX軸方向およびY軸方向に移動するようにしてもよい。
【0042】
カメラ20および計測器30は、XYテーブル105に吸着される基板Pに対して略法線方向であって、基板Pから所定の距離をおいて図示しない支持部材によって固定されている。カメラ20は、撮像素子(例えばCCD素子)を内蔵し、基板Pに形成された液滴の被吐出領域を光学的に読み取る。計測器30は、被吐出領域に滴下された液滴の液面高さを計測する。
【0043】
なお、本実施形態では、カメラ20あるいは計測器30を固定して、XYテーブル105を移動するように構成したが、逆に、XYテーブル105を固定し、カメラ20あるいは計測器30を移動する構成としても差し支えない。
【0044】
ところで、本実施形態における計測器30は、液面高さを精度良く測定するため、3次元非接触表面計測器(例えば、日本バイナリー株式会社、商品名「Nano Station 200」)を用いる。この計測器30は、白色光の持つ軸方向の色収差を応用して、その波長分布から高さ情報を得る方式のものである。また、この計測器30は、白色光の光強度を弱くしても測定可能であり、液面測定時において液滴の性能に与える影響を抑制できる利点を有する。もとより、反射するレーザー光の発射から戻りまでの時間から、液面の高さ情報を得るレーザー方式の計測器(所謂レーザー式距離計測器)を用いることとしてもよい。
【0045】
コントロール装置10は、上述したXYテーブル105を移動制御するとともに、カメラ20が撮像した被吐出領域の画像から、基板Pに形成された被吐出領域の形状と位置のデータを取得する。また、計測器30が計測した被吐出領域に滴下された液滴の液面高さのデータを取得する。
【0046】
次に、コントロール装置10について、図2を参照して詳しく説明する。図2は、コントロール装置10の概略構成を示すブロック図である。このコントロール装置10は、コンピューター機能を有し、バスラインで相互に接続されたCPU11、RAM12、ROM13、インターフェイス部18、およびテーブルメモリー15を備えている。
【0047】
CPU11は、RAM12をワーキングメモリーとして使用しながら、ROM13に格納された測定プログラムに従って動作することによって、取得部111、算出部112、計測部113、測定部114として機能する。また、インターフェイス部18は、コントロール装置10と、XYテーブル105、計測器30、およびカメラ20との間でデータをやり取りするためのインターフェイスとして機能する。
【0048】
本実施形態の液量測定装置100では、取得部111は、カメラ20が撮像した被吐出領域の形状と位置のデータを、インターフェイス部18を介して取得する。算出部112は、取得した被吐出領域の形状と位置のデータから、被吐出領域の長手方向の中心位置と、長手方向と直交する短手方向を算出する。計測部113は、インターフェイス部18を介して、算出された短手方向における3つの位置に計測器30の計測位置がくるようにXYテーブル105を移動させ、この3つの位置において計測器30が計測する液面高さのデータをインターフェイス部18を介して取得し、1つの位置を基準として残る2つの位置の相対的な高さを計測する。測定部114は、2つの位置の相対的な高さと、3つの位置とから、液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した曲率半径から、テーブルメモリー15を用いて、被吐出領域に滴下された液滴の液量を測定する。
【0049】
次に、本実施形態において、基板Pに形成された被吐出領域に滴下された液滴に対して、短手方向の3つの位置における液面高さを用いて演算した曲率半径によって、画素領域に滴下された液滴の液量を測定できる理由について、以下図3〜図6を用いて説明する。
【0050】
図3は、基板Pと、基板Pに画素領域として形成された被吐出領域に、機能液を吐出する様子を示した説明図である。従って、以降、被吐出領域を画素領域と称することにする。図示するように、本実施形態では、説明を簡単にするため、基板PにはY軸方向(図面縦方向)に4画素、X軸方向(図面横方向)に6画素の計24個(G1〜G24)の画素領域が形成されているものとする。もとより、実際には、X軸、Y軸それぞれの方向に数百画素といった多くの画素が形成されていることは言うまでもない。
【0051】
なお、本実施形態では、画素形状はY軸方向に長手方向を有する長円形状であるものとした。もとより、一方方向に長手方向を有する形状であれば、これに限らず、矩形形状や角丸の矩形形状であってもよいし、楕円形状であっても、ひし形形状であっても差し支えない。
【0052】
本実施形態では、基板Pに形成した画素領域に有機EL素子を形成するものとする。従って、所定の溶質と溶媒とを含む機能液が、図示するように吐出ヘッド200に設けられたノズル列200nから各画素領域に吐出されることによって、各画素領域に機能液が所定量滴下される。例えば、本実施形態では、基板Pに対してX軸方向に吐出ヘッドが相対移動することによって、吐出ヘッド200に設けられたノズル列200nから、基板P上に形成された各画素領域に対して機能液を吐出するという具合である。
【0053】
図4は吐出ヘッド200の構成を示した模式図である。図示するように、ノズル列200nは、微小な開口を有し、所定のピッチで通常数十個〜数百個のノズルが吐出ヘッド200に穿設されて形成されている。穿設されたノズル列200nには、ノズル毎に吐出機構がそれぞれ形成され、吐出ヘッド200内の液状体に圧力を発生させて、所定量の機能液をそれぞれのノズルから吐出するように構成されている。もとより、吐出機構は、総てのノズルについて同様な構造を有している。
【0054】
吐出機構は、本実施形態では図4の吹出し部に示した構造を有し、圧電素子2を駆動体(アクチュエーター)とするものである。すなわち、圧電素子2は、その両端の電極COMとGNDとの間に電圧波形が印加されると、電歪性によって収縮あるいは伸長変形し、振動板3を矢印方向に撓ませて流路途中に形成された加圧室4に存在する機能液を加圧する。この結果、加圧された機能液は、ノズルプレート8に穿設されたノズルから、液滴9として吐出されるのである。なお、吐出機構は、例えば、駆動体として加熱素子を用いた所謂サーマル方式などであってもよい。
【0055】
なお、吐出ヘッド200に穿設されたノズル列200nは、2列など複数のノズル列数を有する場合もあり、例えば2列の場合は、ノズルの穿設位置が、ノズル列間で互いに半ピッチずれた千鳥配列をなす関係となる場合もある。さらに吐出ヘッド200を複数備えることもある。このように、画素領域の形成数や形成範囲、あるいは基板Pの大きさに応じて、必要な数の吐出ヘッド200やノズル列200nが備えられるのである。
【0056】
以上の説明から解かるように、ノズル列200nにおいて、穿設された各ノズルの開口径のばらつきや、圧電素子2の電歪性のばらつきなどによって、各ノズルから吐出される液滴の液量が異なることが生じるのである。
【0057】
こうして各画素領域に対して、吐出ヘッド200から機能液を吐出して、有機EL素子をそれぞれ形成する。なお、ここでは有機EL素子は、基板Pに対して表示素子の形成面側から光を射出するトップエミッション構造を有しているものとする。もとより、有機EL素子は、トップエミッション構造でなく、基板Pに対して表示素子の形成面側と反対側から光を射出するボトムエミッション構造であっても差し支えない。
【0058】
次に、形成する有機EL素子の具体的な構成について図5を用いて説明する。図5は、有機EL素子が有する機能層の構成を示す模式図である。図5(a)は、図3に示した各画素領域のうち、X軸方向(図面横方向)に3つの画素が並んだ表示部分を示した平面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるE−E断面を示した模式断面図で、有機EL素子の形成が終了した状態を示している。また、図5(c)は、同じく図5(a)におけるE−E断面を示した模式断面図で、有機EL素子の機能層を機能液の吐出によって塗布して形成する様子を示した模式図である。
【0059】
各画素領域は、図5(a)に示したように、エッチングなどによって形成された絶縁有機材料(例えばアクリル樹脂やポリイミド樹脂)からなるバンク(図中ハッチング部分)によって区画された画素領域を有し、それぞれ長円形状を呈している。そして各画素領域には発光可能な有機EL素子が形成されている。
【0060】
発光可能な有機EL素子は、図5(b)に示したように、陽極と陰極との間に形成された正孔注入層と発光層によって構成されている。ちなみに、本実施形態では、正孔注入層は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を溶質とし、エチレングリコールを溶媒とした機能液を、液状体として画素領域に吐出後、真空乾燥などによって乾燥処理を行い、溶媒を除去して所定の厚さのPEDOT/PSS膜を形成したものである。また、発光層は、蛍光材料(例えば、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン))を溶質とし、1,3,5−トリメチルベンゼンを溶媒とした機能液を、液状体として各画素領域に吐出し、以降真空乾燥などによって乾燥処理を行って、それぞれ所定の厚さの蛍光材料膜を形成したものである。
【0061】
ところで、バンクと陽極との間には、長円形状の画素領域の外周に沿って所定幅が画素領域内に露出するように、無機絶縁膜が形成されている。これは、正孔注入層や発光層を形成する機能液との親液性を高め、正孔注入層や発光層がバンク近傍まで形成されることによって、陽極と陰極との短絡を防止するようにするためである。もとより、正孔注入層や各発光層がバンク近傍まで形成できる場合は、無機絶縁膜は形成する必要はない。
【0062】
また、本実施形態の有機EL素子は、トップエミッション方式であることから、発光光が陰極側から射出するように、陽極の基板Pと対向する面側には、反射層が形成されている。もとより、陽極が反射層を兼ねる場合は、反射層を形成する必要はない。なお、ここでは図示しないが、有機EL素子を発光駆動するための駆動素子が、基板Pと有機EL素子との間に形成されている。
【0063】
さて、本実施形態では正孔注入層と発光層について、それぞれ所定の液量の機能液を各画素領域に吐出して塗布することによって形成する。具体的には、図5(c)に示したように、吐出ヘッド200に設けられたノズルから、それぞれの画素領域に、有機EL素子を形成する正孔注入層の機能液および発光層の機能液をそれぞれ所定の順序で吐出することによって滴下する。そして、滴下の都度、前述したように乾燥処理を行って各画素領域における正孔注入層および発光層を形成するのである。
【0064】
さて、このように形成された有機EL素子について、各画素領域での発光輝度は、形成される発光層の厚さ、あるいは、発光層を流れる電流の大きさに依存する。従って、基板Pに形成された総ての画素領域について、陽極と陰極との間に挟持される発光層の厚さを各画素領域間で均一にすることが重要である。均一化することによって発光層が呈する電気抵抗は各画素領域に渡って均一になり、この結果、発光層を流れる電流も各画素領域間において均一になるからである。
【0065】
また、発光層に流れる電流に差異が生じないようにするためには、発光層以外の正孔注入層についても同様である。正孔注入層の厚さを、基板Pに形成された総ての画素領域について、画素領域間において正孔注入層の厚さを均一にすることによって、発光層に流れる電流を、画素領域間で一定にすることができるからである。従って、各画素領域間において、例えば陽極と陰極との間に挟持された発光層および正孔注入層の膜厚に差があると、そのまま輝度ムラになってしまうことになる。
【0066】
本実施形態の液量測定装置100による測定方法によれば、画素領域に滴下された機能液の液量を精度良く、且つ短時間に測定することによって、正孔注入層および発光層として滴下される機能液の液量が所定の液量になるように直ちに補正することができるようになるのである。
【0067】
(液量測定方法)
次に、図6を用いて、その液量測定方法についてその概要を説明する。なお、本実施形態では、機能層として発光層を形成するものとして説明する。もとより、以下の説明は、正孔注入層についても同様に適用可能である。なお、図6は、図3に示した画素領域の一つにおいて、発光層を形成する材料を溶質としこれを溶媒に溶融した機能液が所定の量滴下された状態を示す模式図であり、図面下側はX軸方向の中心断面図、図面右側はY軸方向の中心断面図である。
【0068】
図6に示すように、バンクで囲まれた画素領域に対して、所定の液量の機能液が滴下されると、画素領域の短手方向(X軸方向)となる幅Aにおいては、液面の形状はほぼ円形になることが判明した。なお、バンクの少なくとも平面部分に撥液処理を施すことによって液面はより顕著に円形を呈することも判明した。また、このとき、短手方向の幅Aにおいて形成される液面の外形の曲率半径は、画素領域に滴下された機能液の液量に応じて変化することが確認された。従って、短手方向についてその液面が呈する円形の曲率半径Rを測定すれば、画素領域に滴下された機能液の液量を測定することが可能である。
【0069】
一方、画素領域の長手方向(Y軸方向)となる幅Bにおいては、液面の形状は、中心部分の曲率が大きく、端部ほど曲率が小さい凡そ楕円形状または蒲鉾形状になることが判明した。従って、長手方向における中心位置からの距離△Yに応じた液面の高さの変化△Hは小さいことから、短手方向が呈する円形の曲率半径は、長手方向(Y軸方向)の幅Bの中心位置付近では大きく変化しないことが解かる。言い換えれば、画素領域において、長手方向の凡そ中心位置であれば、短手方向の円形の曲率半径Rをほぼ正確に測定することができるのである。
【0070】
このような液面が呈する形状を用いて行う液量測定装置100の測定方法について、図7に示した液量測定処理S30のフローチャートを用い、図2を参照しながら説明する。
【0071】
この処理が開始されると、まずステップS31にて、カメラを基板上、X軸方向およびY軸方向に操作処理する。具体的に、コントロール装置10内において、CPU11はインターフェイス部18を介してXYテーブル105を移動制御し、カメラ20を基板Pに対して相対移動させる。
【0072】
次に、ステップS32にて、画素領域の形状と位置を取得処理する。CPU11は、カメラ20が撮影した画像領域の画像を、例えば輪郭抽出処理といった画像処理によって画像領域の形状データを生成し、生成した形状データを、図示しない基準座標に対する位置データを付帯してRAM12に記憶することによって取得する。
【0073】
次に、ステップS33にて、画素領域の長手方向の中心位置を算出処理する。CPU11は、記憶した形状データを用いて、画素領域の長手方向の幅Bを算出したのち、この中心位置を演算して算出する。
【0074】
続いて、ステップS34にて、画素領域の短手方向の幅を算出処理する。ここでは、CPU11は、ステップS33にて算出した長手方向の中心位置を含む短手方向の線分に沿う位置における短手方向の幅を、記憶した形状データを用いて算出する。なお、短手方向の幅は、図6に示したように長手方向に沿って一定幅部分を有するように形成される場合は、この一定幅部分であればよく、必ずしも長手方向の中心位置において短手方向の幅を算出する必要はない。
【0075】
次に、ステップS35にて、短手方向の3つの位置を設定処理する。ここでは、CPU11は、算出した短手方向の幅から短手方向の中心位置を算出して1つの位置とし、短手方向の幅における線分上の位置であって、この短手方向の中心位置から、両側に短手方向の幅の1/4以上離れた2つの位置を、残る2つの位置として設定する。
【0076】
続いて、ステップS36にて、設定した3つの位置に計測器を移動処理する。CPU11は、インターフェイス部18を介してXYテーブル105を駆動し、計測器30を設定した3つの位置に相対移動する。
【0077】
そして、ステップS37にて、1つの位置を基準とした2つの位置の液面高さを計測処理する。具体的に、CPU11は、まず、1つの位置つまり短手方向の中心位置における液面の高さデータをインターフェイス部18を介して取得する。次に、2つの位置における液面の高さデータをインターフェイス部18を介して取得する。そして、短手方向の中心位置における液面の高さデータと2つの位置における液面の高さデータとの差分データを算出するのである。
【0078】
ここで、ステップS35〜ステップS37における処理について、図8を用いて補足説明する。図8は、1つの画素領域に滴下された機能液の液面の高さを計測する様子を示した模式図である。図示するように、黒丸で示した3つの位置D1,D2,D3において、液面の高さをそれぞれ測定する。位置D1は、短手方向(X軸方向)の幅Aの中心位置である。位置D2は、位置D1から短手方向の幅Aの1/4以上の距離△X1離れた位置であり、位置D3は、位置D2と反対側に、位置D1から短手方向の幅Aの1/4以上の距離△X2離れた位置である。
【0079】
このように位置D1、位置D2、および位置D3を設定することによって、精度良く液面の高さを計測することができる。例えば、図示するように、位置D2において計測器30によって計測される液面の高さは、計測器30の光軸方向(図面上下方向)における色収差の変化量が顕著になるので、精度良く液面の高さを計測することができるのである。また位置D3についても同様である。
【0080】
なお、位置D1の液面の高さは、X軸方向において検出位置にずれが生じても、この位置における液面の高さは大きく変化しない。従って、位置D1における液面の高さを基準とすることによって、位置D2における位置D1からの液面の差分高さ△H1、および位置D3における位置D1からの液面の差分高さ△H2は、精度の良い値となる。
【0081】
次に、図7に戻って、ステップS38にて、曲率半径の演算処理を行う。CPU11は、3つの位置と、2つの位置における液面の高さの差分データと、を用いて、曲率半径Rを演算する。ここでは詳細な説明を行わないが、位置D1、位置D2、位置D3は、図8において、位置D1を原点(0,0)とすると、位置D2、位置D3がそれぞれ座標(−△X1,−△H1)、(△X2,−△H2)で表されることから、これらの座標値を、周知の円の公式に適用することによって、容易に算出することができる。このように液面の高さの差分データ(△H1、△H2)を用いれば、基板Pにおいて生ずるうねりや、XYテーブルの移動時において生ずる基板Pの法線方向への上下移動などによって、計測器30と液面の相対距離が変化しても、曲率半径を正しく演算することができる。
【0082】
そして、続くステップS39にて、テーブルを用いて液量を測定処理する。CPU11は、テーブルメモリー15に格納されたテーブルを用いて、画素領域に滴下された機能液の液量を測定する。格納されたテーブルTBの一例を図9に示す。テーブルTBは、画素領域の形状を表す短手方向の幅Aおよび長手方向の幅Bと、曲率半径Rと、に対応する液量Cを規定したものである。例えば、画素領域の短手方向の幅Aが寸法A1で長手方向の幅Bが寸法B2であり、曲率半径Rが寸法R3であれば、液量Cは値C23であることを示している。従って、CPU11は、算出した短手方向の幅Aと長手方向の幅B、および演算した曲率半径Rとから、テーブルTBを用いて液量の値Cを読み出すことで測定する。
【0083】
なお、算出した短手方向の幅Aと長手方向の幅B、および演算した曲率半径RがテーブルTBにおいて用意された値と異なる場合は、最も近い値を用いることとしても良いし、近接する値を用いて補間演算して用いることとしてもよい。もとより、液量Cを、短手方向の幅Aと長手方向の幅B、および曲率半径Rを変数とする演算式で規定することとしてもよい。演算処理負荷が増加するものの、正確に液量を算出することができる。
【0084】
以上、一つの画素領域について滴下された機能液の液量測定処理S30について説明したが、もとより、この液量測定処理S30は、基板Pに形成された総ての画素領域が対象となる。ところで、本実施形態では、吐出ヘッド200をX軸方向に走査してノズル列200nから機能液を吐出するようにした。従って、X軸方向に並ぶ画素領域間(例えば、画素G1,G5,G9,G13,G17,G21)では、同じノズルから機能液が吐出されるので、画素領域に滴下される機能液の液量はほぼ同じであると考えてよい。そこで、本実施形態では、Y軸方向に並ぶ一列の画素領域について液量測定処理を行うことにする。こうすれば、総ての画素領域についての機能液の液量を測定するよりも速く液量を測定することができる。その一例について図10を用いて説明する。
【0085】
図10は、基板Pに対して相対移動される計測器30の軌跡を示した説明図である。図示するように、本実施形態では、基板Pに形成された画素領域のうち、Y軸方向に並ぶ画素領域G1,G2,G3,G4について、これらの画素領域に滴下された機能液の液量を測定するべく、計測器30を相対移動する。
【0086】
例えば、図10(a)に示したように、鋸歯状に移動する。こうすれば、計測器30の移動距離を短くできるとともに、計測器30をX軸方向において常に同じ方向から画素領域を走査するので、例えばXYテーブル105が有する機構ガタの影響による位置ずれを回避することができる。あるいは、図10(b)に示したように、コの字状に移動するようにしてもよい。こうすれば、計測器30の移動距離を最も短くすることができるので、画素領域についての機能液の液量の測定を最も速くすることができる。
【0087】
上述したように、本実施形態の液量測定装置100によれば、液面が凡そ円弧形状を呈する場合、円弧の曲率半径が液滴の液量を表すと考えてよいことから、液滴の液面が呈する円弧の曲率半径を演算して求めることによって液量を測定することができる。従って、測定点は短手方向の3つの位置で済むので、短時間で液量を測定することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早く補正することが可能となる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、3つの位置における液面高さとを1つの位置を基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。
【0088】
(第2の実施形態:電気光学装置の製造方法)
上記実施形態では、本発明を液量測定装置100とし、電気光学装置の一つとなる有機ELパネルを構成する有機EL素子を、基板Pに形成された画素領域に形成するものとして説明したが、他の実施形態として、本発明を電気光学装置の一つである有機ELパネルの製造方法として捉えることもできる。本実施形態による製造方法について、その工程を、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0089】
まず、ステップS10にて、基板の画素領域に機能液を吐出する。ここでの工程では、有機EL素子が形成される画素領域に、機能層(正孔注入層や発光層)を形成する溶質を含む溶媒液である機能液を、基板Pに形成された画素領域に対して、吐出ヘッド(図4参照)から所定量吐出して滴下する。
【0090】
次に、ステップS20にて、基板を液量測定装置に移動する。ここでの工程では、画素領域に機能液が滴下された基板Pを、搬送装置もしくは手作業によって液量測定装置100に移動する。
【0091】
次に、ステップS30にて、液量測定処理を行う。ここでの工程では、上記実施形態における液量測定装置100によって、上述した液量測定処理S30が行われる。従って、各画像領域に滴下された機能液の液量が、短時間で精度良く測定される。
【0092】
そこで、次のステップS40にて、基板を吐出装置に移動し、続くステップS50にて、機能液の補正量を画素領域に吐出処理する。これらの工程では、画素領域に滴下された機能液の液量が測定された基板Pを、搬送装置もしくは手作業によって再び吐出装置に移動し、測定された機能液の液量に応じて定まる補正量の機能液を、それぞれの画素領域に吐出することが行われる。
【0093】
このように、本実施形態によれば、画素領域に機能液が滴下されてから、短時間で、滴下された機能液の液量を測定するので、例えば画素領域に滴下された機能液が自然乾燥する前に機能液の液量を補正することができる。この結果、以降の乾燥処理工程において乾燥条件を総ての画素領域において同一とすることができるので、同一厚さの機能膜を形成することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、吐出装置は液量測定装置と別体で存在する態様として説明しているが、吐出装置が液量測定装置と一体化した態様としてもよい。こうすれば、基板Pの移動工程を省略できる。この場合、コントロール装置10では、吐出ヘッド200を制御するヘッドドライバーをインターフェイス部18に備え、CPU11が、このヘッドドライバーを介して、ノズル列200nからの機能液の吐出制御を行うように構成される。
【0095】
以上、本発明について、2つの実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0096】
(第1の変形例)
上記実施形態の液量測定方法では、画素領域の短手方向において、短手方向の中心位置と、この中心位置から両側にそれぞれ短手方向の幅Aの1/4以上離れた2つの位置との3つの位置において液面の高さを計測することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。前述したように、円弧形状の曲率半径は、3つの座標位置から演算できる。従って、短手方向の幅Aにおける線上の位置であれば、どの3つの位置であっても、同様に曲率半径を演算することができる。
【0097】
本変形例の一例を、図12に示した。図12は、位置D1が短手方向の幅Aの中心位置からずれた位置である場合を示している。また、位置D2、位置D3もそれぞれX軸方向における任意の位置である。このような任意の3つの位置であっても、液面の外形線上に位置する3点であれば、各液面の高さの差分「△H1、△H2」とX軸方向の距離差「△X1、△X2」によって定まるそれらの座標位置から、容易に曲率半径Rを演算することができる。
【0098】
さらに、本変形例の変形として、短手方向の線分上に設定される3つの位置は、長手方向の幅Bの必ずしも略中心位置でなくてもよい。長手方向の幅Bにおいて、液面の円弧形状が、画素領域に滴下された機能液の液量を代表している位置であれば、その位置において短手方向の線分上に3つの位置を設定すればよい。
【0099】
(その他の変形例)
上記実施形態の液量測定装置では、カメラ20によって基板Pに形成された画素領域の位置と形状のデータを取得することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、カメラ20を備えないこととしてもよい。画素領域の位置および形状が、予め判明している場合は、コントロール装置10において、ROMなどのメモリーにそれらのデータを格納しておけばよい。CPU11は、格納された画素領域の位置および形状データを読み出して処理すればよい。この場合は、取得部111が不要である。さらに画素領域の長手方向の幅Bと短手方向の幅Aも予め判明している場合は、算出部112も不要である。
【0100】
また、上記実施形態の製造方法では、電気光学装置の一例として有機ELパネルを形成することとして説明したが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、カラーフィルターを形成するものとしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、有機EL素子を形成することとし、液滴の噴射によって塗布して形成する機能層が、正孔注入層と発光層であることとして説明したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、陰極とは別に電子注入層を形成する場合は、この電子注入層を機能液の吐出によって形成する機能層としてもよい。あるいは発光層が正孔注入層を兼用する場合は、発光層のみが機能液の吐出によって塗布形成される機能層であることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態としての液量測定装置の概略構成を示す模式図。
【図2】コントロール装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】基板に形成された被吐出領域に機能液を吐出する様子を示した説明図。
【図4】吐出ヘッドの構成を示した模式図。
【図5】有機EL素子が有する機能層の構成を示す模式図で、(a)は3つの画素が並んだ表示部分を示した平面図、(b)はその模式断面図、(c)は有機EL素子の機能層を機能液の吐出によって塗布して形成する様子を示した模式断面図。
【図6】機能液が所定の量滴下された状態を示す模式図。
【図7】第1の実施形態における液量測定方法の処理フローチャート。
【図8】画素領域に滴下された機能液の液面の高さを計測する様子を示した模式図。
【図9】液量測定時に用いるテーブルの一例。
【図10】基板に対して相対移動される計測器の軌跡を示した説明図。
【図11】第2の実施形態における電気光学装置の製造方法の工程フローチャート。
【図12】第1の変形例を説明するための画素領域の液面の断面図。
【符号の説明】
【0103】
10…コントロール装置、11…CPU、12…RAM、13…ROM、15…テーブルメモリー、18…インターフェイス部、20…カメラ、30…計測器、100…液量測定装置、101…ガイドレール、102…ガイドレール、105…XYテーブル、105a…テーブル、105b…テーブル、111…取得部、112…算出部、113…計測部、114…測定部、200…吐出ヘッド、200n…ノズル列。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液量測定方法、液量測定装置、および電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型の自発光素子であるエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を表示素子として用いた表示装置が多く使われるようになってきた。EL素子は、発光材料によって形成された発光層に電流を流すことによって、所望する明るさの発光光を射出するものである。発光層の形成は、例えば、所定の基板上にバンク(隔壁)によって区画形成された被吐出領域(画素領域)に対して、基板と相対移動する吐出ヘッドから液状体を吐出する所謂インクジェット法を用い、発光材料を含む液状体を吐出することによって、所定の量の液滴を滴下する。その後、真空乾燥や加熱乾燥などの乾燥処理によって、吐出された液状体を固化することによって行われる。
【0003】
ところで、周知のように、発光光の輝度は形成された発光層の厚さに依存する。このため、形成される発光層の厚さのばらつきがそのまま輝度のばらつきになってしまう。従って、各被吐出領域内において形成される発光層の厚さが一定になるように、被吐出領域に吐出して滴下された液状体の液量が所定の量となるようにすることが重要である。
【0004】
しかしながら、インクジェット法を用いて、基板面に形成された被吐出領域に液状体を吐出して滴下する場合、吐出ヘッドを構成する機能部品(例えば圧電素子)の性能ばらつきや形状ばらつきなどに起因して、吐出ヘッドに設けられたノズル毎に、液状体の吐出量にばらつきが存在する場合が多い。このため、ノズルから吐出され、被吐出領域に滴下された液状体の液量を精度よく測る必要があり、例えば、特許文献1に、微小な液滴の体積を精度よく測定する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−121401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、水平面上に滴下した液滴の中心から液滴の外周とを結ぶ線分を液滴の径方向に走査しながら複数箇所で液面の輪郭(高さ)を計測する技術である。従って、液量を精度良く測定するためには、測定個所を多くする必要がある。特に、実際に基板面に形成される被吐出領域は、長円形状など一方が長手方向を有する形状で形成されることが多く、このような場合、多くの方向の線分において測定を行う必要が生ずるため、測定箇所が更に多くなる。
【0007】
しかしながら、このように測定個所を多くすると、測定時間が長くなってしまうことになり、この結果、ノズルからの液状体の吐出量を補正するまでに要する時間が長くなってしまう。すると、既に被吐出領域に滴下された液状体が乾燥(自然乾燥)を開始してしまうことが生じ、その後の真空乾燥や加熱乾燥などの乾燥処理において、乾燥条件が一様にならず、延いては被吐出領域内において固化した発光層の厚さが均一にならないという課題が生じる。このため、被吐出領域に滴下された液滴の液量を短時間で測定する技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定方法であって、前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として他の2つの位置における前記液滴の液面高さを計測する計測工程と、計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
被吐出領域が長手方向を有する場合、長手方向と直交する短手方向では、液面は凡そ円弧形状を呈し、その円弧の曲率半径が液滴の液量を代表すると考えてよい場合がある。このような場合、液滴の液面が呈する円弧の曲率半径を演算して求めることによって、被吐出領域に滴下された液滴の液量を測定することができる。このとき、この測定方法によれば、液面の高さを測定する測定点は短手方向の3つの位置で済むので、短時間で液量を測定することができる。この結果、被吐出領域において滴下された液滴の液量を、素早く補正することが可能となる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、3つの位置における液面高さとを1つの位置を基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。
【0011】
[適用例2]上記液量測定方法であって、前記計測工程は、前記短手方向に沿う線分の位置を、前記長手方向の略中心位置とすることを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、短手方向における液面形状のばらつきが少ない状態で液面高さを計測できる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0013】
[適用例3]上記液量測定方法であって、前記計測工程は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0015】
[適用例4]上記液量測定方法であって、前記計測工程は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0017】
[適用例5]上記液量測定方法であって、前記測定工程は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、演算処理に伴う負荷が軽減されるので、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、短時間で測定することができる。
【0019】
[適用例6]上記液量測定方法であって、前記被吐出領域について、形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得工程と、前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記被吐出領域について前記3つの位置を算出する算出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、基板面に形成された被吐出領域の形状や配置が異なる場合においても、被吐出領域についての形状と位置に関する情報を取得し、被吐出領域の形状中心位置と短手方向とを算出することができる。
【0021】
[適用例7]上記液量測定方法であって、前記取得工程は、前記基板面に形成された前記被吐出領域を光学的に読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、基板面に形成された被吐出領域の形状や配置が異なる場合においても、基板面に形成された被吐出領域の形状と基板面における位置を、光学的に直接読み取って取得することができる。
【0023】
[適用例8]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定装置であって、前記液滴の液面高さを計測する計測手段と、前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として、他の2つの位置における前記液滴の液面高さを、前記計測手段を用いて計測する計測部と、計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
液面が凡そ円弧形状を呈する場合、円弧の曲率半径が液滴の液量を表すと考えてよいことから、液滴が呈する円弧の曲率半径を演算して求めることによって液滴量を測定することができる。従って、この方法によれば、測定点は短手方向の3つの位置で済むので、短時間で測定することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早く補正することが可能となる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、3つの位置における液面高さとを1つの位置を基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。
【0025】
[適用例9]上記液量測定装置であって、前記計測手段を前記基板面に対して面内方向に相対移動する移動手段と、前記被吐出領域の形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得部と、取得された前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記3つの位置を算出する算出部と、を備え、前記計測部は、前記移動手段を用いて、算出された前記3つの位置に移動して計測することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、計測手段を、短手方向の3つの位置とに相対移動させて、液面の位置を測定することができる。
【0027】
[適用例10]上記液量測定装置であって、前記基板面において形成された前記被吐出領域を光学的に読み取る読取手段を備え、前記取得部は、前記読取手段を用いて前記被吐出領域を読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、基板面に形成された被吐出領域が基板毎に異なっていても、被吐出領域の形状と位置に関する情報を取得するので、短手方向の3つの位置を取得することができる。
【0029】
[適用例11]上記液量測定装置であって、前記計測部は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0031】
[適用例12]上記液量測定装置であって、前記計測部は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、曲率半径を精度よく演算することができる。この結果、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、的確に測定することが可能となる。
【0033】
[適用例13]上記液量測定装置であって、前記測定部は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、演算処理に伴う負荷が軽減されるので、被吐出領域に滴下された液滴の液量を、短時間で測定することができる。
【0035】
[適用例14]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、前記滴下した前記液滴の液量を、上記液量測定方法を用いて測定する測定工程と、前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、を含むことを特徴とする。
【0036】
この方法によれば、被吐出領域に滴下された液量を短時間で測定することができる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、2つの位置における液面高さとを形状中心位置の液面高さを基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早くかつ的確に補正することが可能となる。
【0037】
[適用例15]基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、前記滴下した前記液滴の液量を、上記液量測定装置を用いて測定する測定工程と、前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、を含むことを特徴とする。
【0038】
この方法によれば、被吐出領域に滴下された液量を短時間で測定することができる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、2つの位置における液面高さとを形状中心位置の液面高さを基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早くかつ的確に補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、以降の説明において用いる図面は、各寸法が説明の都合上必要に応じて誇張されている場合もあり、実際の寸法とは必ずしも一致していないことは言うまでもない。
【0040】
(第1の実施形態:液量測定装置)
図1は、本発明の一実施形態としての液量測定装置100の概略構成を示す模式図である。液量測定装置100は、図示するように、X軸方向に移動するテーブル105aと、X軸方向と直交するY軸方向に移動するテーブル105bと、からなる移動手段としてのXYテーブル105と、読取手段としてのカメラ20と、計測手段としての計測器30と、液量測定装置100を制御するコントロール装置10とを備えている。
【0041】
テーブル105aは、直線的に設けられた一対のガイドレール101と、ガイドレール101の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示せず)とを有し、コントロール装置10によって1つの直線軸方向つまりX軸方向に移動する。テーブル105bは、直線的に設けられた一対のガイドレール102と、ガイドレール102の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示せず)とを有し、コントロール装置10によって1つの直線軸方向つまりY軸方向に移動する。テーブル105aには、基板Pを載置するための図示しない吸着手段(例えばエアー吸着)が備えられ、テーブル105a上に基板Pを吸着固定できる構成となっている。なお、XYテーブル105は、例えばモーターとボールネジとの組み合わせなど、他の構成によってX軸方向およびY軸方向に移動するようにしてもよい。
【0042】
カメラ20および計測器30は、XYテーブル105に吸着される基板Pに対して略法線方向であって、基板Pから所定の距離をおいて図示しない支持部材によって固定されている。カメラ20は、撮像素子(例えばCCD素子)を内蔵し、基板Pに形成された液滴の被吐出領域を光学的に読み取る。計測器30は、被吐出領域に滴下された液滴の液面高さを計測する。
【0043】
なお、本実施形態では、カメラ20あるいは計測器30を固定して、XYテーブル105を移動するように構成したが、逆に、XYテーブル105を固定し、カメラ20あるいは計測器30を移動する構成としても差し支えない。
【0044】
ところで、本実施形態における計測器30は、液面高さを精度良く測定するため、3次元非接触表面計測器(例えば、日本バイナリー株式会社、商品名「Nano Station 200」)を用いる。この計測器30は、白色光の持つ軸方向の色収差を応用して、その波長分布から高さ情報を得る方式のものである。また、この計測器30は、白色光の光強度を弱くしても測定可能であり、液面測定時において液滴の性能に与える影響を抑制できる利点を有する。もとより、反射するレーザー光の発射から戻りまでの時間から、液面の高さ情報を得るレーザー方式の計測器(所謂レーザー式距離計測器)を用いることとしてもよい。
【0045】
コントロール装置10は、上述したXYテーブル105を移動制御するとともに、カメラ20が撮像した被吐出領域の画像から、基板Pに形成された被吐出領域の形状と位置のデータを取得する。また、計測器30が計測した被吐出領域に滴下された液滴の液面高さのデータを取得する。
【0046】
次に、コントロール装置10について、図2を参照して詳しく説明する。図2は、コントロール装置10の概略構成を示すブロック図である。このコントロール装置10は、コンピューター機能を有し、バスラインで相互に接続されたCPU11、RAM12、ROM13、インターフェイス部18、およびテーブルメモリー15を備えている。
【0047】
CPU11は、RAM12をワーキングメモリーとして使用しながら、ROM13に格納された測定プログラムに従って動作することによって、取得部111、算出部112、計測部113、測定部114として機能する。また、インターフェイス部18は、コントロール装置10と、XYテーブル105、計測器30、およびカメラ20との間でデータをやり取りするためのインターフェイスとして機能する。
【0048】
本実施形態の液量測定装置100では、取得部111は、カメラ20が撮像した被吐出領域の形状と位置のデータを、インターフェイス部18を介して取得する。算出部112は、取得した被吐出領域の形状と位置のデータから、被吐出領域の長手方向の中心位置と、長手方向と直交する短手方向を算出する。計測部113は、インターフェイス部18を介して、算出された短手方向における3つの位置に計測器30の計測位置がくるようにXYテーブル105を移動させ、この3つの位置において計測器30が計測する液面高さのデータをインターフェイス部18を介して取得し、1つの位置を基準として残る2つの位置の相対的な高さを計測する。測定部114は、2つの位置の相対的な高さと、3つの位置とから、液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した曲率半径から、テーブルメモリー15を用いて、被吐出領域に滴下された液滴の液量を測定する。
【0049】
次に、本実施形態において、基板Pに形成された被吐出領域に滴下された液滴に対して、短手方向の3つの位置における液面高さを用いて演算した曲率半径によって、画素領域に滴下された液滴の液量を測定できる理由について、以下図3〜図6を用いて説明する。
【0050】
図3は、基板Pと、基板Pに画素領域として形成された被吐出領域に、機能液を吐出する様子を示した説明図である。従って、以降、被吐出領域を画素領域と称することにする。図示するように、本実施形態では、説明を簡単にするため、基板PにはY軸方向(図面縦方向)に4画素、X軸方向(図面横方向)に6画素の計24個(G1〜G24)の画素領域が形成されているものとする。もとより、実際には、X軸、Y軸それぞれの方向に数百画素といった多くの画素が形成されていることは言うまでもない。
【0051】
なお、本実施形態では、画素形状はY軸方向に長手方向を有する長円形状であるものとした。もとより、一方方向に長手方向を有する形状であれば、これに限らず、矩形形状や角丸の矩形形状であってもよいし、楕円形状であっても、ひし形形状であっても差し支えない。
【0052】
本実施形態では、基板Pに形成した画素領域に有機EL素子を形成するものとする。従って、所定の溶質と溶媒とを含む機能液が、図示するように吐出ヘッド200に設けられたノズル列200nから各画素領域に吐出されることによって、各画素領域に機能液が所定量滴下される。例えば、本実施形態では、基板Pに対してX軸方向に吐出ヘッドが相対移動することによって、吐出ヘッド200に設けられたノズル列200nから、基板P上に形成された各画素領域に対して機能液を吐出するという具合である。
【0053】
図4は吐出ヘッド200の構成を示した模式図である。図示するように、ノズル列200nは、微小な開口を有し、所定のピッチで通常数十個〜数百個のノズルが吐出ヘッド200に穿設されて形成されている。穿設されたノズル列200nには、ノズル毎に吐出機構がそれぞれ形成され、吐出ヘッド200内の液状体に圧力を発生させて、所定量の機能液をそれぞれのノズルから吐出するように構成されている。もとより、吐出機構は、総てのノズルについて同様な構造を有している。
【0054】
吐出機構は、本実施形態では図4の吹出し部に示した構造を有し、圧電素子2を駆動体(アクチュエーター)とするものである。すなわち、圧電素子2は、その両端の電極COMとGNDとの間に電圧波形が印加されると、電歪性によって収縮あるいは伸長変形し、振動板3を矢印方向に撓ませて流路途中に形成された加圧室4に存在する機能液を加圧する。この結果、加圧された機能液は、ノズルプレート8に穿設されたノズルから、液滴9として吐出されるのである。なお、吐出機構は、例えば、駆動体として加熱素子を用いた所謂サーマル方式などであってもよい。
【0055】
なお、吐出ヘッド200に穿設されたノズル列200nは、2列など複数のノズル列数を有する場合もあり、例えば2列の場合は、ノズルの穿設位置が、ノズル列間で互いに半ピッチずれた千鳥配列をなす関係となる場合もある。さらに吐出ヘッド200を複数備えることもある。このように、画素領域の形成数や形成範囲、あるいは基板Pの大きさに応じて、必要な数の吐出ヘッド200やノズル列200nが備えられるのである。
【0056】
以上の説明から解かるように、ノズル列200nにおいて、穿設された各ノズルの開口径のばらつきや、圧電素子2の電歪性のばらつきなどによって、各ノズルから吐出される液滴の液量が異なることが生じるのである。
【0057】
こうして各画素領域に対して、吐出ヘッド200から機能液を吐出して、有機EL素子をそれぞれ形成する。なお、ここでは有機EL素子は、基板Pに対して表示素子の形成面側から光を射出するトップエミッション構造を有しているものとする。もとより、有機EL素子は、トップエミッション構造でなく、基板Pに対して表示素子の形成面側と反対側から光を射出するボトムエミッション構造であっても差し支えない。
【0058】
次に、形成する有機EL素子の具体的な構成について図5を用いて説明する。図5は、有機EL素子が有する機能層の構成を示す模式図である。図5(a)は、図3に示した各画素領域のうち、X軸方向(図面横方向)に3つの画素が並んだ表示部分を示した平面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるE−E断面を示した模式断面図で、有機EL素子の形成が終了した状態を示している。また、図5(c)は、同じく図5(a)におけるE−E断面を示した模式断面図で、有機EL素子の機能層を機能液の吐出によって塗布して形成する様子を示した模式図である。
【0059】
各画素領域は、図5(a)に示したように、エッチングなどによって形成された絶縁有機材料(例えばアクリル樹脂やポリイミド樹脂)からなるバンク(図中ハッチング部分)によって区画された画素領域を有し、それぞれ長円形状を呈している。そして各画素領域には発光可能な有機EL素子が形成されている。
【0060】
発光可能な有機EL素子は、図5(b)に示したように、陽極と陰極との間に形成された正孔注入層と発光層によって構成されている。ちなみに、本実施形態では、正孔注入層は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を溶質とし、エチレングリコールを溶媒とした機能液を、液状体として画素領域に吐出後、真空乾燥などによって乾燥処理を行い、溶媒を除去して所定の厚さのPEDOT/PSS膜を形成したものである。また、発光層は、蛍光材料(例えば、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン))を溶質とし、1,3,5−トリメチルベンゼンを溶媒とした機能液を、液状体として各画素領域に吐出し、以降真空乾燥などによって乾燥処理を行って、それぞれ所定の厚さの蛍光材料膜を形成したものである。
【0061】
ところで、バンクと陽極との間には、長円形状の画素領域の外周に沿って所定幅が画素領域内に露出するように、無機絶縁膜が形成されている。これは、正孔注入層や発光層を形成する機能液との親液性を高め、正孔注入層や発光層がバンク近傍まで形成されることによって、陽極と陰極との短絡を防止するようにするためである。もとより、正孔注入層や各発光層がバンク近傍まで形成できる場合は、無機絶縁膜は形成する必要はない。
【0062】
また、本実施形態の有機EL素子は、トップエミッション方式であることから、発光光が陰極側から射出するように、陽極の基板Pと対向する面側には、反射層が形成されている。もとより、陽極が反射層を兼ねる場合は、反射層を形成する必要はない。なお、ここでは図示しないが、有機EL素子を発光駆動するための駆動素子が、基板Pと有機EL素子との間に形成されている。
【0063】
さて、本実施形態では正孔注入層と発光層について、それぞれ所定の液量の機能液を各画素領域に吐出して塗布することによって形成する。具体的には、図5(c)に示したように、吐出ヘッド200に設けられたノズルから、それぞれの画素領域に、有機EL素子を形成する正孔注入層の機能液および発光層の機能液をそれぞれ所定の順序で吐出することによって滴下する。そして、滴下の都度、前述したように乾燥処理を行って各画素領域における正孔注入層および発光層を形成するのである。
【0064】
さて、このように形成された有機EL素子について、各画素領域での発光輝度は、形成される発光層の厚さ、あるいは、発光層を流れる電流の大きさに依存する。従って、基板Pに形成された総ての画素領域について、陽極と陰極との間に挟持される発光層の厚さを各画素領域間で均一にすることが重要である。均一化することによって発光層が呈する電気抵抗は各画素領域に渡って均一になり、この結果、発光層を流れる電流も各画素領域間において均一になるからである。
【0065】
また、発光層に流れる電流に差異が生じないようにするためには、発光層以外の正孔注入層についても同様である。正孔注入層の厚さを、基板Pに形成された総ての画素領域について、画素領域間において正孔注入層の厚さを均一にすることによって、発光層に流れる電流を、画素領域間で一定にすることができるからである。従って、各画素領域間において、例えば陽極と陰極との間に挟持された発光層および正孔注入層の膜厚に差があると、そのまま輝度ムラになってしまうことになる。
【0066】
本実施形態の液量測定装置100による測定方法によれば、画素領域に滴下された機能液の液量を精度良く、且つ短時間に測定することによって、正孔注入層および発光層として滴下される機能液の液量が所定の液量になるように直ちに補正することができるようになるのである。
【0067】
(液量測定方法)
次に、図6を用いて、その液量測定方法についてその概要を説明する。なお、本実施形態では、機能層として発光層を形成するものとして説明する。もとより、以下の説明は、正孔注入層についても同様に適用可能である。なお、図6は、図3に示した画素領域の一つにおいて、発光層を形成する材料を溶質としこれを溶媒に溶融した機能液が所定の量滴下された状態を示す模式図であり、図面下側はX軸方向の中心断面図、図面右側はY軸方向の中心断面図である。
【0068】
図6に示すように、バンクで囲まれた画素領域に対して、所定の液量の機能液が滴下されると、画素領域の短手方向(X軸方向)となる幅Aにおいては、液面の形状はほぼ円形になることが判明した。なお、バンクの少なくとも平面部分に撥液処理を施すことによって液面はより顕著に円形を呈することも判明した。また、このとき、短手方向の幅Aにおいて形成される液面の外形の曲率半径は、画素領域に滴下された機能液の液量に応じて変化することが確認された。従って、短手方向についてその液面が呈する円形の曲率半径Rを測定すれば、画素領域に滴下された機能液の液量を測定することが可能である。
【0069】
一方、画素領域の長手方向(Y軸方向)となる幅Bにおいては、液面の形状は、中心部分の曲率が大きく、端部ほど曲率が小さい凡そ楕円形状または蒲鉾形状になることが判明した。従って、長手方向における中心位置からの距離△Yに応じた液面の高さの変化△Hは小さいことから、短手方向が呈する円形の曲率半径は、長手方向(Y軸方向)の幅Bの中心位置付近では大きく変化しないことが解かる。言い換えれば、画素領域において、長手方向の凡そ中心位置であれば、短手方向の円形の曲率半径Rをほぼ正確に測定することができるのである。
【0070】
このような液面が呈する形状を用いて行う液量測定装置100の測定方法について、図7に示した液量測定処理S30のフローチャートを用い、図2を参照しながら説明する。
【0071】
この処理が開始されると、まずステップS31にて、カメラを基板上、X軸方向およびY軸方向に操作処理する。具体的に、コントロール装置10内において、CPU11はインターフェイス部18を介してXYテーブル105を移動制御し、カメラ20を基板Pに対して相対移動させる。
【0072】
次に、ステップS32にて、画素領域の形状と位置を取得処理する。CPU11は、カメラ20が撮影した画像領域の画像を、例えば輪郭抽出処理といった画像処理によって画像領域の形状データを生成し、生成した形状データを、図示しない基準座標に対する位置データを付帯してRAM12に記憶することによって取得する。
【0073】
次に、ステップS33にて、画素領域の長手方向の中心位置を算出処理する。CPU11は、記憶した形状データを用いて、画素領域の長手方向の幅Bを算出したのち、この中心位置を演算して算出する。
【0074】
続いて、ステップS34にて、画素領域の短手方向の幅を算出処理する。ここでは、CPU11は、ステップS33にて算出した長手方向の中心位置を含む短手方向の線分に沿う位置における短手方向の幅を、記憶した形状データを用いて算出する。なお、短手方向の幅は、図6に示したように長手方向に沿って一定幅部分を有するように形成される場合は、この一定幅部分であればよく、必ずしも長手方向の中心位置において短手方向の幅を算出する必要はない。
【0075】
次に、ステップS35にて、短手方向の3つの位置を設定処理する。ここでは、CPU11は、算出した短手方向の幅から短手方向の中心位置を算出して1つの位置とし、短手方向の幅における線分上の位置であって、この短手方向の中心位置から、両側に短手方向の幅の1/4以上離れた2つの位置を、残る2つの位置として設定する。
【0076】
続いて、ステップS36にて、設定した3つの位置に計測器を移動処理する。CPU11は、インターフェイス部18を介してXYテーブル105を駆動し、計測器30を設定した3つの位置に相対移動する。
【0077】
そして、ステップS37にて、1つの位置を基準とした2つの位置の液面高さを計測処理する。具体的に、CPU11は、まず、1つの位置つまり短手方向の中心位置における液面の高さデータをインターフェイス部18を介して取得する。次に、2つの位置における液面の高さデータをインターフェイス部18を介して取得する。そして、短手方向の中心位置における液面の高さデータと2つの位置における液面の高さデータとの差分データを算出するのである。
【0078】
ここで、ステップS35〜ステップS37における処理について、図8を用いて補足説明する。図8は、1つの画素領域に滴下された機能液の液面の高さを計測する様子を示した模式図である。図示するように、黒丸で示した3つの位置D1,D2,D3において、液面の高さをそれぞれ測定する。位置D1は、短手方向(X軸方向)の幅Aの中心位置である。位置D2は、位置D1から短手方向の幅Aの1/4以上の距離△X1離れた位置であり、位置D3は、位置D2と反対側に、位置D1から短手方向の幅Aの1/4以上の距離△X2離れた位置である。
【0079】
このように位置D1、位置D2、および位置D3を設定することによって、精度良く液面の高さを計測することができる。例えば、図示するように、位置D2において計測器30によって計測される液面の高さは、計測器30の光軸方向(図面上下方向)における色収差の変化量が顕著になるので、精度良く液面の高さを計測することができるのである。また位置D3についても同様である。
【0080】
なお、位置D1の液面の高さは、X軸方向において検出位置にずれが生じても、この位置における液面の高さは大きく変化しない。従って、位置D1における液面の高さを基準とすることによって、位置D2における位置D1からの液面の差分高さ△H1、および位置D3における位置D1からの液面の差分高さ△H2は、精度の良い値となる。
【0081】
次に、図7に戻って、ステップS38にて、曲率半径の演算処理を行う。CPU11は、3つの位置と、2つの位置における液面の高さの差分データと、を用いて、曲率半径Rを演算する。ここでは詳細な説明を行わないが、位置D1、位置D2、位置D3は、図8において、位置D1を原点(0,0)とすると、位置D2、位置D3がそれぞれ座標(−△X1,−△H1)、(△X2,−△H2)で表されることから、これらの座標値を、周知の円の公式に適用することによって、容易に算出することができる。このように液面の高さの差分データ(△H1、△H2)を用いれば、基板Pにおいて生ずるうねりや、XYテーブルの移動時において生ずる基板Pの法線方向への上下移動などによって、計測器30と液面の相対距離が変化しても、曲率半径を正しく演算することができる。
【0082】
そして、続くステップS39にて、テーブルを用いて液量を測定処理する。CPU11は、テーブルメモリー15に格納されたテーブルを用いて、画素領域に滴下された機能液の液量を測定する。格納されたテーブルTBの一例を図9に示す。テーブルTBは、画素領域の形状を表す短手方向の幅Aおよび長手方向の幅Bと、曲率半径Rと、に対応する液量Cを規定したものである。例えば、画素領域の短手方向の幅Aが寸法A1で長手方向の幅Bが寸法B2であり、曲率半径Rが寸法R3であれば、液量Cは値C23であることを示している。従って、CPU11は、算出した短手方向の幅Aと長手方向の幅B、および演算した曲率半径Rとから、テーブルTBを用いて液量の値Cを読み出すことで測定する。
【0083】
なお、算出した短手方向の幅Aと長手方向の幅B、および演算した曲率半径RがテーブルTBにおいて用意された値と異なる場合は、最も近い値を用いることとしても良いし、近接する値を用いて補間演算して用いることとしてもよい。もとより、液量Cを、短手方向の幅Aと長手方向の幅B、および曲率半径Rを変数とする演算式で規定することとしてもよい。演算処理負荷が増加するものの、正確に液量を算出することができる。
【0084】
以上、一つの画素領域について滴下された機能液の液量測定処理S30について説明したが、もとより、この液量測定処理S30は、基板Pに形成された総ての画素領域が対象となる。ところで、本実施形態では、吐出ヘッド200をX軸方向に走査してノズル列200nから機能液を吐出するようにした。従って、X軸方向に並ぶ画素領域間(例えば、画素G1,G5,G9,G13,G17,G21)では、同じノズルから機能液が吐出されるので、画素領域に滴下される機能液の液量はほぼ同じであると考えてよい。そこで、本実施形態では、Y軸方向に並ぶ一列の画素領域について液量測定処理を行うことにする。こうすれば、総ての画素領域についての機能液の液量を測定するよりも速く液量を測定することができる。その一例について図10を用いて説明する。
【0085】
図10は、基板Pに対して相対移動される計測器30の軌跡を示した説明図である。図示するように、本実施形態では、基板Pに形成された画素領域のうち、Y軸方向に並ぶ画素領域G1,G2,G3,G4について、これらの画素領域に滴下された機能液の液量を測定するべく、計測器30を相対移動する。
【0086】
例えば、図10(a)に示したように、鋸歯状に移動する。こうすれば、計測器30の移動距離を短くできるとともに、計測器30をX軸方向において常に同じ方向から画素領域を走査するので、例えばXYテーブル105が有する機構ガタの影響による位置ずれを回避することができる。あるいは、図10(b)に示したように、コの字状に移動するようにしてもよい。こうすれば、計測器30の移動距離を最も短くすることができるので、画素領域についての機能液の液量の測定を最も速くすることができる。
【0087】
上述したように、本実施形態の液量測定装置100によれば、液面が凡そ円弧形状を呈する場合、円弧の曲率半径が液滴の液量を表すと考えてよいことから、液滴の液面が呈する円弧の曲率半径を演算して求めることによって液量を測定することができる。従って、測定点は短手方向の3つの位置で済むので、短時間で液量を測定することができる。この結果、滴下する液滴の液量を、素早く補正することが可能となる。また、基板のうねりなどに起因して被吐出領域に滴下された液滴の液面全体の高さが変動しても、3つの位置における液面高さとを1つの位置を基準とした相対的な高さとして計測するので、基板のうねりなどが液量の測定値に与える影響を回避することができる。
【0088】
(第2の実施形態:電気光学装置の製造方法)
上記実施形態では、本発明を液量測定装置100とし、電気光学装置の一つとなる有機ELパネルを構成する有機EL素子を、基板Pに形成された画素領域に形成するものとして説明したが、他の実施形態として、本発明を電気光学装置の一つである有機ELパネルの製造方法として捉えることもできる。本実施形態による製造方法について、その工程を、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0089】
まず、ステップS10にて、基板の画素領域に機能液を吐出する。ここでの工程では、有機EL素子が形成される画素領域に、機能層(正孔注入層や発光層)を形成する溶質を含む溶媒液である機能液を、基板Pに形成された画素領域に対して、吐出ヘッド(図4参照)から所定量吐出して滴下する。
【0090】
次に、ステップS20にて、基板を液量測定装置に移動する。ここでの工程では、画素領域に機能液が滴下された基板Pを、搬送装置もしくは手作業によって液量測定装置100に移動する。
【0091】
次に、ステップS30にて、液量測定処理を行う。ここでの工程では、上記実施形態における液量測定装置100によって、上述した液量測定処理S30が行われる。従って、各画像領域に滴下された機能液の液量が、短時間で精度良く測定される。
【0092】
そこで、次のステップS40にて、基板を吐出装置に移動し、続くステップS50にて、機能液の補正量を画素領域に吐出処理する。これらの工程では、画素領域に滴下された機能液の液量が測定された基板Pを、搬送装置もしくは手作業によって再び吐出装置に移動し、測定された機能液の液量に応じて定まる補正量の機能液を、それぞれの画素領域に吐出することが行われる。
【0093】
このように、本実施形態によれば、画素領域に機能液が滴下されてから、短時間で、滴下された機能液の液量を測定するので、例えば画素領域に滴下された機能液が自然乾燥する前に機能液の液量を補正することができる。この結果、以降の乾燥処理工程において乾燥条件を総ての画素領域において同一とすることができるので、同一厚さの機能膜を形成することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、吐出装置は液量測定装置と別体で存在する態様として説明しているが、吐出装置が液量測定装置と一体化した態様としてもよい。こうすれば、基板Pの移動工程を省略できる。この場合、コントロール装置10では、吐出ヘッド200を制御するヘッドドライバーをインターフェイス部18に備え、CPU11が、このヘッドドライバーを介して、ノズル列200nからの機能液の吐出制御を行うように構成される。
【0095】
以上、本発明について、2つの実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0096】
(第1の変形例)
上記実施形態の液量測定方法では、画素領域の短手方向において、短手方向の中心位置と、この中心位置から両側にそれぞれ短手方向の幅Aの1/4以上離れた2つの位置との3つの位置において液面の高さを計測することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。前述したように、円弧形状の曲率半径は、3つの座標位置から演算できる。従って、短手方向の幅Aにおける線上の位置であれば、どの3つの位置であっても、同様に曲率半径を演算することができる。
【0097】
本変形例の一例を、図12に示した。図12は、位置D1が短手方向の幅Aの中心位置からずれた位置である場合を示している。また、位置D2、位置D3もそれぞれX軸方向における任意の位置である。このような任意の3つの位置であっても、液面の外形線上に位置する3点であれば、各液面の高さの差分「△H1、△H2」とX軸方向の距離差「△X1、△X2」によって定まるそれらの座標位置から、容易に曲率半径Rを演算することができる。
【0098】
さらに、本変形例の変形として、短手方向の線分上に設定される3つの位置は、長手方向の幅Bの必ずしも略中心位置でなくてもよい。長手方向の幅Bにおいて、液面の円弧形状が、画素領域に滴下された機能液の液量を代表している位置であれば、その位置において短手方向の線分上に3つの位置を設定すればよい。
【0099】
(その他の変形例)
上記実施形態の液量測定装置では、カメラ20によって基板Pに形成された画素領域の位置と形状のデータを取得することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、カメラ20を備えないこととしてもよい。画素領域の位置および形状が、予め判明している場合は、コントロール装置10において、ROMなどのメモリーにそれらのデータを格納しておけばよい。CPU11は、格納された画素領域の位置および形状データを読み出して処理すればよい。この場合は、取得部111が不要である。さらに画素領域の長手方向の幅Bと短手方向の幅Aも予め判明している場合は、算出部112も不要である。
【0100】
また、上記実施形態の製造方法では、電気光学装置の一例として有機ELパネルを形成することとして説明したが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、カラーフィルターを形成するものとしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、有機EL素子を形成することとし、液滴の噴射によって塗布して形成する機能層が、正孔注入層と発光層であることとして説明したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、陰極とは別に電子注入層を形成する場合は、この電子注入層を機能液の吐出によって形成する機能層としてもよい。あるいは発光層が正孔注入層を兼用する場合は、発光層のみが機能液の吐出によって塗布形成される機能層であることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態としての液量測定装置の概略構成を示す模式図。
【図2】コントロール装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】基板に形成された被吐出領域に機能液を吐出する様子を示した説明図。
【図4】吐出ヘッドの構成を示した模式図。
【図5】有機EL素子が有する機能層の構成を示す模式図で、(a)は3つの画素が並んだ表示部分を示した平面図、(b)はその模式断面図、(c)は有機EL素子の機能層を機能液の吐出によって塗布して形成する様子を示した模式断面図。
【図6】機能液が所定の量滴下された状態を示す模式図。
【図7】第1の実施形態における液量測定方法の処理フローチャート。
【図8】画素領域に滴下された機能液の液面の高さを計測する様子を示した模式図。
【図9】液量測定時に用いるテーブルの一例。
【図10】基板に対して相対移動される計測器の軌跡を示した説明図。
【図11】第2の実施形態における電気光学装置の製造方法の工程フローチャート。
【図12】第1の変形例を説明するための画素領域の液面の断面図。
【符号の説明】
【0103】
10…コントロール装置、11…CPU、12…RAM、13…ROM、15…テーブルメモリー、18…インターフェイス部、20…カメラ、30…計測器、100…液量測定装置、101…ガイドレール、102…ガイドレール、105…XYテーブル、105a…テーブル、105b…テーブル、111…取得部、112…算出部、113…計測部、114…測定部、200…吐出ヘッド、200n…ノズル列。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定方法であって、
前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として他の2つの位置における前記液滴の液面高さを計測する計測工程と、
計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定工程と、
を備えたことを特徴とする液量測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液量測定方法であって、
前記計測工程は、前記短手方向に沿う線分の位置を、前記長手方向の略中心位置とすることを特徴とする液量測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液量測定方法であって、
前記計測工程は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする液量測定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液量測定方法であって、
前記計測工程は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする液量測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液量測定方法であって、
前記測定工程は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする液量測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか一項に記載の液量測定方法であって、
前記被吐出領域について、形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得工程と、
前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記被吐出領域について前記3つの位置を算出する算出工程と、
を備えたことを特徴とする液量測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の液量測定方法であって、
前記取得工程は、前記基板面に形成された前記被吐出領域を光学的に読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする液量測定方法。
【請求項8】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定装置であって、
前記液滴の液面高さを計測する計測手段と、
前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として、他の2つの位置における前記液滴の液面高さを、前記計測手段を用いて計測する計測部と、
計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定部と、
を備えたことを特徴とする液量測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液量測定装置であって、
前記計測手段を前記基板面に対して面内方向に相対移動する移動手段と、
前記被吐出領域の形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得部と、
取得された前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記3つの位置を算出する算出部と、
を備え、
前記計測部は、前記移動手段を用いて、算出された前記3つの位置に移動して計測することを特徴とする液量測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液量測定装置であって、
前記基板面において形成された前記被吐出領域を光学的に読み取る読取手段を備え、
前記取得部は、前記読取手段を用いて前記被吐出領域を読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする液量測定装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか一項に記載の液量測定装置であって、
前記計測部は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする液量測定装置。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか一項に記載の液量測定装置であって、
前記計測部は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする液量測定装置。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか一項に記載の液量測定装置であって、
前記測定部は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする液量測定装置。
【請求項14】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、
前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、
前記滴下した前記液滴の液量を、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液量測定方法を用いて測定する測定工程と、
前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、
前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、
前記滴下した前記液滴の液量を、請求項8ないし13のいずれか一項に記載の液量測定装置を用いて測定する測定工程と、
前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項1】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定方法であって、
前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として他の2つの位置における前記液滴の液面高さを計測する計測工程と、
計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定工程と、
を備えたことを特徴とする液量測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液量測定方法であって、
前記計測工程は、前記短手方向に沿う線分の位置を、前記長手方向の略中心位置とすることを特徴とする液量測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液量測定方法であって、
前記計測工程は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする液量測定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液量測定方法であって、
前記計測工程は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする液量測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液量測定方法であって、
前記測定工程は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする液量測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか一項に記載の液量測定方法であって、
前記被吐出領域について、形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得工程と、
前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記被吐出領域について前記3つの位置を算出する算出工程と、
を備えたことを特徴とする液量測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の液量測定方法であって、
前記取得工程は、前記基板面に形成された前記被吐出領域を光学的に読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする液量測定方法。
【請求項8】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、滴下された前記液滴の液量を測定する液量測定装置であって、
前記液滴の液面高さを計測する計測手段と、
前記被吐出領域の長手方向と直交する短手方向に沿う線分上の異なる3つの位置において、前記3つの位置のうちの1つの位置における前記液滴の液面高さを基準として、他の2つの位置における前記液滴の液面高さを、前記計測手段を用いて計測する計測部と、
計測された前記他の2つの位置における前記液滴の液面高さと前記3つの位置とから、前記短手方向に沿った前記液滴の液面形状を近似する円弧の曲率半径を演算し、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定する測定部と、
を備えたことを特徴とする液量測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液量測定装置であって、
前記計測手段を前記基板面に対して面内方向に相対移動する移動手段と、
前記被吐出領域の形状と前記基板面における位置に関する情報を取得する取得部と、
取得された前記形状と前記位置に関する情報を用いて、前記3つの位置を算出する算出部と、
を備え、
前記計測部は、前記移動手段を用いて、算出された前記3つの位置に移動して計測することを特徴とする液量測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液量測定装置であって、
前記基板面において形成された前記被吐出領域を光学的に読み取る読取手段を備え、
前記取得部は、前記読取手段を用いて前記被吐出領域を読み取ることによって、前記被吐出領域の前記形状と前記位置に関する情報を取得することを特徴とする液量測定装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか一項に記載の液量測定装置であって、
前記計測部は、前記1つの位置を、前記被吐出領域の短手方向の略中心位置とすることを特徴とする液量測定装置。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか一項に記載の液量測定装置であって、
前記計測部は、前記他の2つの位置を、前記短手方向の中心位置から前記被吐出領域の短手方向の幅の1/4以上離れた位置とすることを特徴とする液量測定装置。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか一項に記載の液量測定装置であって、
前記測定部は、前記被吐出領域の形状に応じて前記液滴の液量と前記曲率半径との対応関係を予め定めたテーブルを用い、演算した前記曲率半径から前記液滴の液量を測定することを特徴とする液量測定装置。
【請求項14】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、
前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、
前記滴下した前記液滴の液量を、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液量測定方法を用いて測定する測定工程と、
前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
基板面に一方向が長い長手方向を有するように領域形成された液滴の被吐出領域に対して、前記液滴を所定量滴下することによって表示素子が形成される電気光学装置の製造方法であって、
前記被吐出領域に対して、吐出装置を用いて前記液滴を吐出することによって、前記被吐出領域に前記液滴を滴下する滴下工程と、
前記滴下した前記液滴の液量を、請求項8ないし13のいずれか一項に記載の液量測定装置を用いて測定する測定工程と、
前記測定した前記液滴の液量に基づいて、前記吐出装置が吐出する前記液滴の滴下量が前記所定量になるように前記吐出装置の吐出量を補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−169608(P2010−169608A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13872(P2009−13872)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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