説明

深部散乱光を収集するための関節鏡検査装置及び方法

動脈壁の背後から散乱する光を収集するための分光器は、それぞれ第1及び第2ファイバと光学的に連通した第1及び第2ビーム方向転換器を含む。第1及び第2ビーム方向転換器は、それぞれ第1及び第2領域を照明するように配向されている。第2領域と第1領域との離間距離は、第1ビーム方向転換器と第2ビーム方向転換器との離間距離よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分光法に関し、特に、血管壁内における不安定性プラーク検出用の分光法に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症は、血管壁の変性を特徴とする血管疾患である。こうした変性は、患部血管の離散部位すなわちポケットで発生するとプラークと呼ばれる。ある種のプラークは、脳卒中又は心筋梗塞などの急性イベントに関係している。こうしたプラークは「不安定性プラーク」と呼ばれる。不安定性プラークは、典型的には、薄い線維性被膜により血液から分離した壊死性残屑からなる脂質を保持した貯留を含んでいる。線維性被膜は、内腔内の圧力上昇や血管痙攣に反応して破壊され、プラークの内部が血液流に曝されることがある。結果として生じる血栓は、虚血や塞栓の離脱に至ることがある。
【0003】
不安定性プラークの位置を特定する一つの方法としては、赤外線で動脈壁を透視するものがある。これを行うためには、カテーテルを動脈の内腔に挿入する。カテーテルには、赤外線を送出ミラーへ送る送出ファイバを含んでいる。赤外線は送出ミラーに反射して、動脈壁上のある箇所へ向かう。この赤外線の一部は動脈壁を通過して、動脈壁内部の構造体に当たって散乱し、内腔に再び入る。こうして再び入った光は収集ミラーに当たると、収集ミラーがこの光を収集ファイバに案内する。収集ミラー及び送出ミラーは、一定の間隔で互いから離間している。このカテーテルは血管内に入るよう十分細くする必要があるので、収集ミラー及び送出ミラーは典型的には軸方向に離間されている。
【0004】
送出ミラーと収集ミラーとの間の離間距離が、収集ミラーが収集するほとんどの光が散乱する深さを大きく左右する。壁内部の深部から散乱光を収集するには、収集ミラーと送出ミラーとの間の間隔を大きくすることになる。
【0005】
収集ミラーと送出ミラーは、カテーテルの遠位先端にある剛体ハウジングに取り付けられている。カテーテルが急な屈曲部を通り抜けできるように、剛体ハウジングはできるだけ短くするのが望ましい。こうすると2つのミラー間の最大間隔が制限されてしまい、従って散乱光を収集できる深さにも上限がある。
発明の概要
【0006】
本発明は、収集ビーム方向転換器及び送出ビーム方向転換器が光を差し向ける方向を調節することで、これら方向転換器を隔てる実効離間距離を増大できるという認識に基づいている。
【0007】
一様態では、本発明は第1及び第2ファイバを備えた分光器を提供する。第1及び第2ビーム方向転換器は、それぞれ第1及び第2ファイバと光学的に連通している。第1及び第2ビーム方向転換器は、それぞれ第1及び第2領域を照明するように配向されている。第2領域と第1領域との離間距離は、第1ビーム方向転換器と第2ビーム方向転換器との離間距離よりも大きい。
【0008】
一実施形態では、第1ビーム方向転換器はミラーを含む。しかし、第1ビーム方向転換器は、レンズ系又は回折要素でもよい。別法として、第1領域を照明するように第1ファイバを屈曲させると、第1ビーム方向転換器が第1ファイバの遠位端となる。
【0009】
別の実施形態では、第2離間距離を第1離間距離からどの程度大きくするかという選択を、第1領域から選択した距離に位置した目標から散乱する光の収集を増大するために行う。
【0010】
別の様態では、本発明は、動脈壁上の照明箇所を照明し、収集ビーム方向転換器を照明箇所から逸らして向け、且つ収集ビーム方向転換器に入射する散乱光を回収することによって、動脈壁の背後から散乱する光を収集する方法を提供する。
【0011】
本発明の幾つかの実施例では、収集ビーム方向転換器を逸らして向ける段階は、照明箇所から逸れた方向からの光を収集するために収集ミラーを配向する段階を含む。本発明の他の実施例では、収集ビーム方向転換器を逸らせて向ける段階は、照明箇所から逸れた方向から受け取った光を方向付けるためにレンズを設ける段階か、或いは、照明箇所から逸れた方向から光を受け取るために光ファイバの端部を配向する段階を含む。
【0012】
本発明の他の実施例では、収集ビーム方向転換器を逸らして向ける段階は、散乱光を受け取る元となる深さを選択する段階と、その深さから受け取る光量を増大する方向に収集ビーム方向転換器を向ける段階とを含む。
【0013】
本発明の別の様態は、動脈壁の背後から散乱する光を収集するための方法を提供する。この方法は、動脈壁上の収集箇所に収集ビーム方向転換器を向ける段階と、送出ビーム方向転換器を収集箇所から逸れた方向で動脈壁に向ける段階と、送出ビーム方向転換器を介して光を送る段階と、収集ビーム方向転換器に入射した散乱光を回収する段階とを含む。
【0014】
本発明の幾つかの実施例では、送出ビーム方向転換器を向ける段階は、光を収集箇所から逸れた方向に差し向けるために収集ミラーを配向する段階を含む。他の実施例は、収集箇所から逸れた方向に光を差し向けるためにレンズを提供することによって、或いは、照明箇所から逸れた方向に光を差し向けるために光ファイバの端部を配向することによって送出ビーム方向転換器を向ける段階を含む。
【0015】
更に別の実施例では、この方法は、散乱光を収集する元となる深さを選択する段階と、選択した深さから受け取る光量を増大する方向に送出ビーム方向転換器を向ける段階とを含む。
【0016】
他に特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語は、本発明が属する分野の通常の技能を備えた当業者が一般に理解する意味と同一である。本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に用いることができるが、適切な方法及び材料は後述する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の引用文献は、その全体を引用して援用する。矛盾が生じた場合は、定義も含めて本明細書が優先する。更に、これら材料、方法、及び例は、例示的なものであって限定する意図はない。
【0017】
本発明のその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
システムの概観
図1は、患者の動脈壁14中の不安定プラーク12を識別するための診断システム10を示す。この診断システムは、患者の選択した動脈、例えば、冠状動脈に挿入すべきカテーテル16を特徴とする。送出ファイバ18及び収集ファイバ20が、カテーテル16の遠位端22と近位端24との間に延在している。
【0019】
図2に示すように、このカテーテル16は、回転可能なトルク・ケーブル28を包囲する外装26を具備する。送出ファイバ18はトルク・ケーブル28の中心に沿って延び、収集ファイバ20は、送出ファイバ18に対して平行に延びるが、送出ファイバから半径方向に変位している。回転可能なトルク・ケーブル28は、毎秒約1回転と毎秒400回転との間の速度で回転する。
【0020】
カテーテル16の遠位端21では、トルク・ケーブル28に結合された先端組立体30が、送出ファイバ18を軸方向に進む光を動脈壁14上の照明箇所32に差し向ける。又、この先端組立体30は、動脈壁14上の収集箇所34からの光を収集し、且つその光を収集ファイバ20内に導く。
【0021】
先端組立体30は、典型的には赤外線を通す剛体ハウジングである。カテーテル16が血管系を通過する際に屈曲部を通り抜けできるように、先端組立体30は軸方向の延伸距離を短くするのが望ましい。
【0022】
モータ38によって駆動される多チャンネル・カプラ36が、トルク・ケーブル28の近位端24に係合している。モータ38が多チャンネル・カプラ36を回転させると、カプラ28、トルク・ケーブル19、及び先端組立体30が1つのユニットとして一緒に回転する。この特徴によって、診断システム10は、照明箇所32が位置した動脈壁14を円周方向に走査することが可能になる。
【0023】
トルク・ケーブル28を回転させる他に、この多チャンネル・カプラ36は、レーザ40(又は発光ダイオード、超放射発光ダイオード、若しくはアーク燈のような他の光源)からの光を送出ファイバ18の中に導き、且つ収集ファイバ20から出る光を1つ又は複数の検出器(図1に図示せず)の中に導く。
【0024】
これらの検出器は、アナログ/デジタル(「A/D」)変換器44に接続した増幅器42に光の強度を示す電気信号を供給する。このA/D変換器44は、動脈壁14の下に隠れた不安定プラーク12の存在を識別するために、このような信号を、プロセッサ46によって分析可能なデジタル・データに変換する。
光学台
【0025】
図3は、収集ファイバ20及び送出ファイバ18を取り付ける光学台48を示す。この光学台48は、ハウジング54の遠位端の第1側壁52Aと第2側壁52Bとの間の凹部50の中に収容されている。次いでハウジング54は、トルク・ケーブル28の遠位端に結合されている。この凹部50は、収集ファイバ20及び送出ファイバ18を互いに隣接して寄り添わせるのにちょうどよい幅を備えている。第1側壁52Aと第2側壁52Bとの間に延在し、且つ凹部50を横切って延びる床56は、送出ファイバ18と収集ファイバ20との両方を支持する。
【0026】
光学台48の一部が、送出ファイバ18の端部に隣接したその遠位端側に切頭体58を形成している。この切頭体58は、光学台48を横切って中途までしか横断方向に達せず、それによって収集ファイバ20は、送出ファイバ18の端部を越えて遠位方向に延伸できる。
【0027】
切頭台58は、送出ファイバ18の遠位端に面する傾斜面と、光学台48の遠位端に面する垂直面とを有する。この傾斜面は、床56に対して135度の角度を成す。しかし、送出ファイバ18からの光を向けるべき方向に応じて、その他の角度も選択可能である。傾斜面を被覆する反射材料がビーム方向転換器となるが、この場合は、これは送出ミラー60である。光が送出ファイバ18から軸方向に出ると、送出ミラー60はその光を遮って、それを半径方向外側へ動脈壁14に向けて方向転換する。他のビーム方向転換器の例には、プリズム、レンズ、回折格子、及びその組合せが含まれる。
【0028】
収集ファイバ20は、送出ファイバ18の端部を越えて延伸し、切頭台58の垂直面と同一平面上にある平面において終端となる。光学台48の一部が、収集ファイバ20の遠位端を僅かに越えたところに、光学台48を横断方向に交差して延び、且つ床56に対して135度より大きい角度を成す傾斜面を形成する。この傾斜面を被覆する反射材料が収集ミラー82を形成する。
【0029】
送出ファイバ・ストップ86が切頭台58の近位で光学台48に成形されているので、送出ミラー60に近位の所望箇所に送出ファイバ18を容易に配置できる。同様に、収集ミラー82のすぐ近位で、光学台48に成形した収集ファイバ・ストップ88によって、収集ミラー82に近位の所望箇所に収集ファイバ20を容易に配置できる。
散乱光の空間的分布
【0030】
図4を参照すると、光は送出ミラー60から半径方向外側に進み、動脈壁14上の照明箇所32に向かう。その過程で、光は内腔68を満たす血液に当たる。光は血液中の粒子により散乱するため、光子の多くは壁14に到達しない。このエネルギー損失は、ビームが壁14に近づくにつれて漸進的に細くすることにより概念的に示した。残りの光子61は最終的に動脈壁14に到達する。光子の一部は壁14から反射される。これらの鏡面反射した光子62は、動脈壁14の裏側にある構造体64に関する情報はほとんど或いは全く伝えることはなく、従ってほとんど有用性がない。壁を貫通する光子63の多くは吸収されてしまう。残り部分66は、壁の裏側の構造体64により散乱する。散乱した後、これら残りの光子66の幾つかは動脈壁14を再度通過して、内腔68に再び入る。元々は動脈壁に当たった光61のこの残り部分(本明細書では「再入光66」と呼ぶ)は、動脈壁14の裏側の構造体64に関するかなりの情報を伝達する。従って、収集ファイバ20内に案内すべきは、この再入光66である。
【0031】
図4で示唆したように、再入光66は、鏡面反射した光62から半径方向に離間した、同心の環状領域70A乃至Fに沿って内腔に再入する。図5に最もわかりやすく示したように、環状領域70Cなどの各再入領域は、壁14内の特定の深さから散乱した光が内腔68に再入する可能性が最も高い領域である。壁14を表面的にのみ貫通した後で散乱する光は、一般的に最も内部にある環状領域70D乃至Fを介して内腔68に再入する。壁14をより深く貫通してから散乱した光は、外側の再入領域70A乃至Bの何れかを介して内腔68に再入する傾向がある。
【0032】
図4及び5は、深部で散乱した光を収集するには、照明箇所32から比較的遠い環状領域70Cに位置する照明箇所34からの光を集めるのが望ましいことを示している。これを実現する一つの方法は、送出ミラー60と収集ミラー82との間の離間距離を大きくすることである。しかし、こうすると先端組立体30が長くなってしまう。代替手段として、図6に示したように、収集ミラー82に対して送出ミラー60に角度を付けることができる。
【0033】
図6では、送出ミラー60は、光をカテーテルから半径方向に遠ざかるよう差し向けるように配向されており、従って、この光をミラー60の真下にある照明箇所32へ送出する。しかし、収集ミラー82には角度が付けられていて、収集ミラー82と送出ミラー60との離間距離よりも照明箇所32から遠くに位置した収集箇所34を出た光を収集する。
【0034】
収集箇所34と照明箇所32との離間距離は、収集ミラー82を配向する以外の方法でも広げることができる。例えば、図7では、収集ファイバ20と収集箇所34との間の光学通路に設けた屈折システム83によって、収集箇所34を、収集ミラー82と送出ミラー60との離間距離よりも照明箇所32から遠くに配置できる。屈折システム83に替えて、回折システムなどの他の光学素子を使用することもできる。屈折システム83は、図7に示したように独立レンズ(原語:discrete
lens)、複数レンズの集合体、又は収集ファイバ20に一体形成されたレンズとすることができる。
【0035】
或いは、図8に示したように、収集ファイバ20及び送出ファイバ18を曲げることにより、収集箇所34、照明箇所32、或いはそれら両方を互いに対して変位させてもよい。
【0036】
収集箇所34と照明箇所32との離間を実現するには、図9に示したように送出ミラー60を配向させてもよいし、図10に示したように送出ミラー60と収集ミラー82との両方を配向させてもよい。図9及び10の両方で、照明箇所32を移動させるには、屈折システム83を用いたり、回折システムを使用したり、上述したようにファイバ18及び20を曲げたりすればよい。
【0037】
上述の全ての構成では、光がカテーテルを出る送出ビーム方向転換器と、散乱光がカテーテルに入る収集ビーム方向転換器とが設けられている。これらビーム方向転換器が、ミラー、レンズ、または屈曲したファイバの端部のいずれであっても、これら転換器は互いから空間的に離間することになる。
【0038】
図6乃至10は、1つの収集ファイバ20と1つの送出ファイバ18のみを備えた実施形態を示している。しかし、カテーテルには幾つかの収集ファイバ20及び/又は幾つかの送出ファイバ18を設け、それぞれが関連付けられたビーム方向転換要素を備えるようにもできる。異なる送出ファイバ及び/又は収集ファイバに関連付けられたビーム方向転換要素は、複数の異なる深さから光を収集できるように異なる角度で配向される。複数の収集ファイバ及び/又は送出ファイバを備えた実施形態では、ファイバ間の間隔は50マイクロメータと2500マイクロメータとの間である。ビーム方向転換要素は、最小の開口数を備えたファイバの開口数の四分の一で分離された角度で配向されている。
【0039】
ファイバを具体的に選択する場合、照明箇所32と収集箇所34との間の距離が、収集ミラー82に入射する光の平均貫通深さを決定する。この距離は、次の2つの独立した変数に依存する。すなわち、収集ミラー82と送出ミラー60とを分離する距離、及び送出ミラー60の角配向(原語:angular
orientation)に対する収集ミラー82の角配向である。図12に示した幾何学的配置に関して、図11の等高線プロットは、収集ミラー82で受け取る光の平均貫通深さと、収集ファイバ20と送出ファイバ18との離間距離と、図12に示した角度θとの関係を示す。
【0040】
図12では、送出ミラー60の配向によって、照明ビームは、カテーテルから半径方向に離れるように差し向けられている。収集ミラー82は、壁14への法線に対して角度θで配向されている。θの正値では、収集ミラー82が受け取る光が、収集ビーム方向転換要素と送出ビーム方向転換要素との離間距離よりも照明箇所32に近い位置にある収集箇所34からの光となるよう配向される。反対に、図12に示したようなθの負値では、収集ミラー82が受け取る光が、収集ミラー82と送出ミラー60との離間距離よりも照明箇所32から遠い位置にある収集箇所34からの光となるよう配向されている。
【0041】
収集ミラー82と送出ミラー60との間の所与の離間距離に関し、角度θを負の方向に増大することにより、壁14内部のより深い部分から光を収集できることが図11から明らかである。これにより、収集ミラー82と送出ミラー60との離間を必ずしも増大させることなく壁14の深い部分から離散した光を収集可能となる。結果的に、壁14の深い部分からの散乱光を検出する能力を必ずしも損なうことなく、先端組立体30を小さくできる。適切な角度θ(ピッチ角とも呼ぶ)の選択は、収集ファイバと送出ファイバの開口数に左右される。適切な選択肢の一例には、角度θがこれら開口数のアークサインの和となるものがある。
【0042】
図11及び12の説明は、ミラーを収集及び送出ビーム方向転換要素とした場合のものである。しかし、本明細書で開示したものなどの、他の種類の収集ビーム方向転換要素にも同様の原理が当てはまることは明らかなはずである。
【0043】
更に、図11及び12に関する説明では、収集ミラー82の角度のみが変更されている。しかし、送出ミラー60を適切に配向しても、或いは送出ミラー60と収集ミラー82の両方を配向しても同様の効果が得られる。
【0044】
幾つかの実施形態では、送出ファイバ18及び収集ファイバ20の長手方向軸の間に含まれるラジアン角(以降「ピッチ角」とよぶ)は、0ラジアンとπラジアンとの間である。この場合、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向の離間は、平均ファイバ直径より僅かに大きいが3ミリメートル未満である。本明細書では、あるものより「僅かに大きい」とは、それに比べ「概ね0.1ミリメートルを上回るほど大きい」ことを意味し、「平均ファイバ直径」とは、収集ファイバ20と送出ファイバ18の直径の平均を意味する。
【0045】
他の実施形態では、ピッチ角は、π/2と、送出ファイバ18及び収集ファイバ20の開口数のうち小さい方との間である。この場合、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向離間は、平均ファイバ直径より僅かに大きいが1.5ミリメートル未満である。
【0046】
他の実施形態では、ピッチ角は、送出ファイバ18及び収集ファイバ20の開口数のうち大きい方により定められる下界を持つ0.5ラジアン範囲内である。この場合、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向への離間距離は、平均ファイバ直径より僅かに大きい距離により定められる下界を持つ0.5ミリメートル範囲内である。
【0047】
更に別の実施形態では、ピッチ角は、送出及び収集ファイバ18の開口数の和を中心とした0.1ラジアン範囲である。この場合、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向離間は、平均ファイバ直径より0.35ミリメートル大きい下界を持つ0.1ミリメートル間隔以内である。
【0048】
更なる実施形態には、ピッチ角が0乃至π/2ラジアンであり、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向離間が0.25ミリメートル乃至3ミリメートルであるもの、ピッチ角が0.12ラジアン乃至π/2ラジアンであり、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向離間が0.25ミリメートル乃至1.5ミリメートルであるもの、ピッチ角が0.25ラジアン乃至0.75ラジアンであり、送出ファイバ18と収集ファイバ20との間の軸方向離間が0.25ミリメートル乃至0.75ミリメートルであるものが含まれる。
【0049】
送出ファイバ18として使用するのに適したファイバには、0.12ラジアンの開口数並びに、9マイクロメートル、100マイクロメートル、及び200マイクロメートルのコア径を備えたものが含まれる。収集ファイバ20として使用するのに適したファイバには、0.22ラジアンの開口数及び、100マイクロメートル又は200マイクロメートルのコア径を備えたものが含まれる。収集ファイバ20として使用するのに適したファイバには、0.275ラジアンの開口数及び、62.5マイクロメートルのコア径を備えたものも含まれる。
【0050】
送出及び収集ミラー60及び82の表面に、金、銀、又はアルミニウムのような、反射被膜を塗布してもよい。これらの被膜は、公知の蒸着技法を用いて塗布可能である。別法として、ある種のプラスチックでは、これらの表面に反射被膜を電気メッキで設けることも可能である。或いは、プラスチック自体の中に、金又はアルミニウム粉体のような反射充填物を混和することも可能である。
【0051】
光学台48は、プラスチックを型の中に射出成形することによって製造される。このような射出成形を用いれば、簡素で廉価である上に、光学台48の要素を単一の一体物に組み込み易くなり、且つ湾曲表面を有する構造体が形成し易くなる。適切なプラスチックの例としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニルスルホン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(「ABS」)、ポリアミド(「ナイロン」)、ポリエーテルスルホン、及びポリエーテルイミドが含まれる。別法として、光学台は、プラスチック若しくは金属のミクロ機械加工、リソグラフィー法、エッチング、シリコン光学台製造技法、又は金属の射出成形によっても製造可能である。プラスチック以外の材料を使用してハウジング54及び光学台48を製造することも可能である。このような材料には、金属、水晶若しくはガラス、及びセラミックが含まれる。
【0052】
例示した実施形態の床56はハウジング54と一体型である。しかし、床56は、光学台48の一部として作製することも可能である。
【0053】
本明細書で説明するように、ハウジング54及び光学台48は別々に製造してその後に接合する。しかし、ハウジング54及び光学台48を単一の一体構造として一緒に製造することも可能である。
【0054】
カテーテルの使用
使用に際して、遠位先端組立体30を血管、典型的には動脈中に挿入し、目的の箇所まで案内する。次いで、光を送出ファイバ18の中に差し向ける。この光は送出ファイバ18の遠位端から出て、送出及び収集ファイバ18、20を含む平面から離れる方向に、送出ミラー60から反射し、次いで動脈壁上の照明箇所32を照明する。動脈壁14を透過する光は、次に壁内部の構造体によって散乱される。このような散乱光の一部が、血管に再び進入し、上述の平面と収集ミラー82とに当たる。収集ミラー82は、この光を収集ファイバ20の中に差し向ける。
【0055】
別法として、壁14に入射する光は、壁14上の構造体から或いはその内部の構造体から蛍光を誘発させることも可能である。この蛍光の一部であって収集ミラー82に入射する蛍光は、収集ファイバ20の中に差し向けられる。
【0056】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明に関連して記載してきたが、上述の説明は例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。又、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲によって定義される。他の局面、利点、及び変更も次の特許請求の範囲に入る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】患者の不安定プラークを識別するためのシステムの略図である。
【図2】図1のカテーテルの断面図である。
【図3】図1のカテーテルの先端組立体における光学台の図である。
【図4】図1の送出ファイバから出る光の経路を示す概略図である。
【図5】図4に示した光の空間的分布の断面図である。
【図6】ビーム方向転換器の異なる実施形態の概略図である。
【図7】ビーム方向転換器の異なる実施形態の概略図である。
【図8】ビーム方向転換器の異なる実施形態の概略図である。
【図9】ビーム方向転換器の異なる実施形態の概略図である。
【図10】ビーム方向転換器の異なる実施形態の概略図である。
【図11】離間距離とビーム方向転換器の配向との関数である平均貫通深さの等高線プロットである。
【図12】図11の等高線プロットの元となる一対のビーム方向転換器の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2ファイバと、
前記第1ファイバと光学的に連通すると共に第1領域を照明するように配向された第1ビーム方向転換器と、
前記第2ファイバと光学的に連通すると共に第1離間距離で前記第1ビーム方向転換器から離間した第2ビーム方向転換器であって、前記第1離間距離を上回る第2離間距離で前記第1領域から離間されている第2領域を照明するように配向された第2ビーム方向転換器とを含む、分光器。
【請求項2】
前記第1ビーム方向転換器がミラーを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
前記第1ビーム方向転換器がレンズ系を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項4】
前記第1ビーム方向転換器が、前記レンズ系と光学的に連通したミラーを更に含む、請求項3に記載の分光器。
【請求項5】
前記第1ビーム方向転換器が前記第1ファイバの遠位部分を含み、該遠位部分が前記第1領域を照明するように屈曲している、請求項1に記載の分光器。
【請求項6】
前記第1ビーム方向転換器が回折要素を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項7】
前記第2離間距離を前記第1離間距離からどの程度大きくするかという選択を、前記第1領域から選択した距離に位置した目標から散乱する光の収集を増大するために行う、請求項1に記載の分光器。
【請求項8】
前記第1及び第2ファイバが内部に延在するカテーテルを更に含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項9】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が0ラジアンとπラジアンとの間であり、
前記第1離間距離が平均ファイバ直径より僅かに大きいが、3ミリメートル未満である、請求項1に記載の分光器。
【請求項10】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が、π/2ラジアンと前記第1及び第2ファイバの開口数の小さい方との間であり、
前記第1離間距離が平均ファイバ直径より僅かに大きいが、1.5ミリメートル未満である、請求項1に記載の分光器。
【請求項11】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が、前記第1及び第2ファイバの開口数のうち大きい方により定められる下界を持つ0.5ラジアン範囲内であり、
前記第1離間距離が、平均ファイバ直径より僅かに大きい距離により定められる下界を持つ0.5ミリメートル範囲内である、請求項1に記載の分光器。
【請求項12】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が、前記第1及び第2ファイバの開口数の和を中心とした0.1ラジアン範囲内であり、
前記第1離間距離が、平均ファイバ直径より0.35ミリメートル大きい下界を持つ0.1ミリメートル間隔以内である、請求項1に記載の分光器。
【請求項13】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が0ラジアンとπ/2ラジアンとの間であり、
前記第1離間距離が0.25ミリメートルと3ミリメートルとの間である、請求項1に記載の分光器。
【請求項14】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が0.12ラジアンとπ/2ラジアンとの間であり、
前記第1離間距離が0.25ミリメートルと1.5ミリメートルとの間である、請求項1に記載の分光器。
【請求項15】
前記第1及び第2ビーム方向転換器が、それらの間にピッチ角を定めるように配向され、該ピッチ角が0.25ラジアンと0.75ラジアンとの間であり、
前記第1離間距離が0.25ミリメートルと0.75ミリメートルとの間である、請求項1に記載の分光器。
【請求項16】
前記第1及び第2ファイバの少なくとも一方が、0.12ラジアンの開口数と、9マイクロメートル、100マイクロメートル、及び200マイクロメートルからなるグループから選択されたコア径とを備えた光ファイバを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項17】
前記第1及び第2ファイバの少なくとも一方が、0.22ラジアンの開口数と、100マイクロメートル又は200マイクロメートルからなるグループから選択されたコア径とを備えた光ファイバを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項18】
前記第1及び第2ファイバの少なくとも一方が、0.275ラジアンの開口数と、62.5マイクロメートルのコア径とを備えた光ファイバを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項19】
動脈壁の背後から散乱する光を収集する方法であって、
前記動脈壁上の照明箇所を照明する段階と、
収集ビーム方向転換器を前記照明箇所から逸らして向ける段階と、
前記収集ビーム方向転換器に入射する散乱光を回収する段階とを含む、方法。
【請求項20】
収集ビーム方向転換器を逸らして向ける前記段階が、前記照明箇所から逸れた方向からの光を収集するために収集ミラーを配向する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
収集ビーム方向転換器を逸らして向ける前記段階が、前記照明箇所から逸れた方向から受け取った光を方向付けるレンズを提供する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
収集ビーム方向転換器を逸らして向ける前記段階が、前記照明箇所から逸れた方向から光を受け取るために光ファイバの端部を配向する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
収集ビーム方向転換器を逸らして向ける前記段階が、
前記散乱光を収集する元となる深さを選択する段階と、
前記選択した深さから受け取る光量を増大する方向に前記収集ビーム方向転換器を向ける段階とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
動脈壁の背後から散乱する光を収集する方法であって、
前記動脈壁上の収集箇所に収集ビーム方向転換器を向ける段階と、
送出ビーム方向転換器を、前記収集箇所から逸れた方向で前記動脈壁に向ける段階と、
前記送出ビーム方向転換器を介して光を送る段階と、
前記収集ビーム方向転換器に入射する散乱光を回収する段階とを含む、方法。
【請求項25】
送出ビーム方向転換器を向ける前記段階が、前記収集箇所から逸れた方向に光を差し向けるために送出ミラーを配向する段階を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
送出ビーム方向転換器を向ける前記段階が、前記収集箇所から逸れた方向に光を差し向けるためにレンズを設ける段階を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
送出ビーム方向転換器を向ける前記段階が、前記収集箇所から逸れた方向に光を差し向けるために光ファイバの端部を配向する段階を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
送出ビーム方向転換器を向ける前記段階が、
前記散乱光を収集する元となる深さを選択する段階と、
前記選択した深さから受け取る光量を増大する方向に前記送出ビーム方向転換器を向ける段階とを含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−525248(P2007−525248A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514993(P2006−514993)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016768
【国際公開番号】WO2004/111700
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503440026)インフレアデックス, インク. (10)
【氏名又は名称原語表記】INFRAREDX, INC.
【Fターム(参考)】