説明

混合および圧力降下を最適化するための微小構造設計

マイクロリアクタ内のミキサのための一群の設計であって、その設計の原理が、少なくとも2つの流体が、最初に上流で接触する連続流路内の少なくとも1つの注入区域(410)および流路内に一連のミキサ要素(430)を収容する効果的な混合区域(すなわち、適切な流体の流動および最適な圧力降下)を含む設計が提供される。各ミキサ要素に、障害物(450)が配置されている(それによって、チャンバの典型的な内寸が減少している)各端部にあるチャンバおよびチャンネル区域内の随意的な制限要素(460)が設計されることが好ましい。これらの障害物は、円柱体であることが好ましいが、ある寸法範囲内で任意の形状を有していて差し支えなく、所望の流量、混合および圧力降下を提供するために、流路に沿って並列または直列になっていてもよい。注入区域は、二つ以上の界面を有していてもよく、また混合前に流体を調節するための1つ以上のコアを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、マイクロリアクタ装置および装置に関し、より詳しくは、マイクロリアクタ装置内に用いられるミキサのための一群の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの多相流体用途には、混合または界面区域を少なくとも増大させることが必要である。微小流体装置において、典型的な寸法は、1mm未満であり、そのために、混合および/または撹拌が最優先の課題となっている。実際に、これらの用途に含まれることの多い一般的な流動は、2つの初めの混和性または非混和性流体がそれら自体で激しく混ざる(大規模流体装置において混合を達成するために、流体流中の乱流が通常用いられている)クリープ流である。2つの流体間の界面区域を増大させること、または外部撹拌や機械的作用がなく非常に小規模で混合を行うことは、特に、ほぼ二次元の形状について、伴うレイノルズ数が小さいために非常に難しい。したがって、反応プロセスは、大体は、拡散が限られている。
【0003】
流路内で液体を混合することの概念では、マイクロリアクタ装置において、より具体的には、マイクロリアクタ装置内のミキサ設計またはモジュールにおいて、適切な流体流を生じさせる必要がある。一般に、上流の流れのために注入区域に反応体を供給するための少なくとも複数の流体連結部または反応体の供給源がある。一般に、当該技術分野における液体としては、水、水溶液および有機溶液が挙げられる。
【0004】
多くの者により、マイクロ装置において混合を行うためのいくつかのタイプのミキサが開発されてきた。どのような混合溶液が選択されるにせよ、ミキサは、完成したマイクロ装置内に導入されるであろう。したがって、ミキサに要求される特性は、混合効率以外に及び、それによって、ミキサの寸法は、圧力降下に影響を与えるが、混合効率には影響を与えないか、または少なくとも混合効率への影響が最小であるように変えられることが好ましい。
【0005】
したがって、そのようなマイクロリアクタ装置において、非常に低い圧力降下で最大の効率を持つミキサを作製することが望ましい。さらに、流路の構造体内で適切な混合を行えることが望ましい。
【0006】
従来技術において公知の上述した所望の能力を発揮するための従来技術の手法には、以下の実例がある。
【0007】
例えば、一般的な分割・再結合(split and recombine)溶液が、図1に示されており、「Device for Mixing Small Quantities of Liquids」と題する特許文献1に記載されている。この特許文献において、反応体が拡散する必要のある長さを減少させるために、入口の反応体流が、多層構造体内で、分離され、再結合される。
【0008】
さらに、この原理の従来技術の実施がIMMにより開示されている(非特許文献1)。ここで、キャタピラ・ミキサのIMM混合分割・再結合概念は、2つの新たな領域が形成され、さらに下流で再結合されるように分割された2つの未混合の流体流を含む。4つの領域全ては、元の形状が再構成されるように互いに交互に隣り合って順序付けられている。
【0009】
また、カオトロピック溶液を示す従来技術の三次元流動もある。これらの設計では、可動のミキサ要素を使用する必要なく、横断流動を生成することによって、混合の問題を解決する。別の類似の従来技術のカオトロピックミキサが、例えば、ハーバード大学の学長および理事に譲渡された「Laminar Mixing Apparatus and Methods」と題する特許文献2に見られる。ここでは、螺旋流が、チャンネルの壁の形状のわずかな変化によって、またはチャンネル壁に画成された溝によって形成され、100未満のレイノルズ数を持つ流体の混合が可能になり、それによって、マイクロ領域で流動する流体がうまく混合される。類似の従来技術の構造体が図2に示されている。
【0010】
ドイツ国の会社であるセルラ・プロセス・ケミストリー(CPC: Cellular Process Chemistry)社により、図3に示すような、2001年8月16日に発行された、「Miniaturized Reaction Apparatus」と題する特許文献3における液状スラグおよび減圧室を用いた設計が挙げられた。
【0011】
これら従来技術の解決策の欠点の概要が、以下に説明されている。例えば、最初の従来技術の手法に関して、分割・再結合の設計には、これらの設計の製造のために、かなりの寸法精度が必要である。このため、再結合の前に、各サブチャンネル内で上流の流れが等しく分割することを確実にし、したがって、混合される液体の流量比が、ユーザにより設定された入口での比と等しい必要がある。
【0012】
三次元すなわちカオトロピック流動を用いた第2の手法にはいくつかの欠点がある。1つは、チャンネルの高さと幅のアスペクト比であり、もう1つは、高く付く技術であり、さらにもう1つは、それが液体のみに有用であって、気液系には有用ではないことである。
【0013】
第3の従来技術の手法である、液体スラグ装置にも、同様に、上述した手法の欠点の全てがある。唯一の利点は、並列化と減圧による低い圧力降下によって、寸法が効率的に減少することである。
【特許文献1】米国特許第5904424号明細書
【特許文献2】国際公開第03/011443A2号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第1123734A2号明細書
【非特許文献1】インターネットURL:http://imm.mediadialog24.de/v0/vvseitene/vvleistung/misch2.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した装置の全てでは、低い圧力降下を達成するのが非常に難しい。これは、従来技術の設計の試みで、混合効率を向上させるために寸法を減少させた結果、それによって、圧力降下を劇的に増加させてしまうことによって生じたものと一般に考えられる。このことは不利益である。
【0015】
上述した従来技術の解決策のいずれの欠点をも好ましく解決した新たな手法であって、内寸を調整することによる最適な圧力降下;流路構造体内の幾何学障害物と制限部での局所化された液体流;障害物による、また局所寸法を減少させることによる、流路構造体内に生じた混合;障害物間の完全に三次元の流動;注入部での最初の接触領域での調節;および流体に関する効率の頑強性を提供する新たな手法が必要とされている。
【0016】
流体という用語は、ここでは、混和性および非混和性の液液、気液および固体を含むものと定義される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
マイクロリアクタ内のミキサのための一群の設計であって、その設計の原理が、2つ以上の流体が最初に上流で接触する1つ以上の界面とコアを持つ注入区域、および流路内に一連のミキサ要素を含む効果的な混合区域を含み、各ミキサ要素が、チャンネル区画内で典型的な内寸を減少させるために柱などの障害物が端部に配置されているチャンバおよびチャンネル区画内の随意的な制限部を有するように設計されたミキサの設計が提供される。さらに、好ましい実施の形態は、例えば、それによって、追加の流体混合がさらに下流で行われるという注入−混合−注入の概念を含むことができるような、その設計に多くの変更を持つことができる。
【0018】
本発明のある実施の形態は、複数の流体が最初に接触する、連続流路の少なくとも1つの注入区域、および流路内の少なくとも1つのミキサ要素を有するミキサ装置であって、少なくとも1つのミキサ要素が、流路を通る流体を効率的に混合するミキサ装置に関する。ミキサ要素の各々は、チャンネル区画およびチャンネル区画の端部に配置されたチャンバを含み、各チャンバはさらに、少なくとも1つの障害物を含む。
【0019】
本発明の別の実施の形態は、流路内のどこかに位置する少なくとも1つの障害物に関する。
【0020】
本発明の別の実施の形態は、さらに少なくとも1つの制限部を含むチャンネル区画であって、その区画が、100μmから5000μmの範囲の半径、100μmから5000μmの範囲の高さ、100μmから10000μmの範囲の幅、および200μmから10000μmの範囲の長さを有し、制限部は、100μmから5000μmの範囲の高さおよび50μmから2500μmの範囲の幅を有する区画に関する。
【0021】
本発明の別の実施の形態は、少なくとも1つの障害物の存在により減少したチャンバの内寸であって、障害物の寸法が増加すると、混合効率が増加するものに関する。
【0022】
本発明の別の実施の形態は、50μmから4000μmの範囲の半径および100μmから5000μmの範囲の高さを持つ任意の形状を有する少なくとも1つの障害物であって、少なくとも1つの障害物が存在するチャンバの内寸が、100μmから5000μmの範囲の半径、600μmから30mmの周囲長さ、3mm2から80mm2の表面積、0.3mm3から120mm3の容積、および100μmから5000μmの範囲の高さによりさらに特徴付けられる障害物に関する。
【0023】
本発明の別の実施の形態は、少なくとも1つのコアを有する少なくとも1つの注入区域であって、少なくとも1つのコア内の流体が、複数の界面に向かって流動する注入区域に関する。
【0024】
本発明の別の実施の形態は、反応体流体源、ポンプ、滞留時間区域および出口フィルタの内の少なくとも1つを含むマイクロリアクタ装置内に埋め込まれたミキサ装置に関する。
【0025】
本発明の実施の形態の別の態様は、ガラス、セラミックまたはガラスセラミックの基板材料から製造されることが好ましいミキサ装置に関する。
【0026】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者にとっては容易に明白であり、または記載された説明とその特許請求の範囲、並びに添付の図面に示されたように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0027】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に本発明の例示であって、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解する上での概要または構成を提供することを意図したものであることが理解されよう。
【0028】
添付の図面は、本発明をさらに理解するために含められ、この明細書に包含され、その一部を構成する。それらの図面は、本発明の1つ以上を実施の形態を示しており、説明と共に、本発明の原理および動作を説明するように働く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ここで、本発明の現在好ましい実施の形態を詳しく参照する。その実施例が添付の図面に示されている。できる限り、同じまたは同様の部品を称するために、図面全部に亘り、同じ参照番号が用いられる。
【0030】
図4を参照する。ミキサ400の立体図が、本発明の好ましい実施の形態にしたがって、2種類以上の流体または反応体(図示せず)が最初に接触し、矢印420で示されるように上流に流れるであろう注入区域410を含むのが示されている。いくぶん蛇行する形状を形成している場合、一連のミキサ要素430は、1)ほとんど矩形のチャンネル区画435(角がわずかに丸まっている)、および2)チャンネル区画の各端部にあるチャンバ440を含むのが示されており、ミキサ400の本発明の好ましい実施の形態によるチャンバの内部には、障害物450が配置されている。本発明の好ましい実施の形態の別の態様によれば、障害物450は、チャンバ440内に配置された円柱またはポストであり、それによって、チャンバ440の内寸442が減少する。
【0031】
さらに、本発明の代わりの好ましい実施の形態において、窪み状の制限部460が、区画435の片側または両側に存在していてもよい。さらに代わりの好ましい実施の形態において、追加の流体混合がさらに下流で行われる注入−混合−注入のレイアウト(図示せず)が提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態によれば、障害物450の寸法範囲は、50μmから4000μmの半径または関連寸法および100μmから5000μmの高さを含む。
【0033】
チャンネル区画435の範囲は、本発明の好ましい実施の形態によれば、100μmから5000μmの半径、100μmから5000μmの高さ、100μmから10000μmの幅、および200μmから10000μmの長さを含む。
【0034】
制限部460の寸法範囲は、本発明の好ましい実施の形態によれば、50μmから2500μmの幅および100μmから5000μmの高さを含む。
【0035】
障害物450の存在するチャンバ440の内寸442は、本発明の好ましい実施の形態によれば、100μmから5000μmの範囲にある半径を有し、周囲長さが600μmから30mmに及び、表面積が3mm2から80mm2に及び、容積が0.3mm3から120mm3に及ぶ(高さが100μmと5000μmの間にある)。
【0036】
反応が生じる(拡散プロセスに関して)長さが減少するように内寸を減少させることが一般に望ましい。図示されていないが、所望の効率が達成されるのであれば、各チャンバ440内の複数の障害物450があってもよいと考えられる。さらに、一連のミキサ要素430の好ましい実施の形態において、流体流中に、もし存在すれば、固体粒子は、ミキサ要素を通ってうまく流動するであろう。並列化(例えば、反応体流が1つの上流チャンネルと多数の下流チャンネルに分割されるところ)後に減少した寸法を使用する設計には、一般に、固体粒子流に関してさらに他の問題があり、それによって、ミキサの効率が減少する。
【0037】
図5は、本発明による、図4に支柱として示された、障害物450の断面図を示している。支柱450は、液体または反応体がその中を流動する蛇行路を形成し、それによって、適切な流れが生じ、これには、減少した内寸のために、液体または反応体の流れを局部的に加速させることが含まれるであろう。図5は、矢印510および520による、チャンバ440の空洞512内のこの蛇行流を示している。
【0038】
この流れは典型的に層流のままであるが、制限部内と支柱450の周りの速度は、混合が行われるほど著しく速い。図5の構造体に関して、レイノルズ数(水−20℃)は、1ml/分から100ml/分に及ぶ液体の流量について、それぞれ、20から2000に及ぶ。
【0039】
混合は、本発明の好ましいこの実施の形態において、少なくとも3つの明白な理由のために生じる。1)流動は、本発明の流量の範囲を包含する約20より大きいレイノルズ数で、円柱を過ぎた後に不安定である。そのような複雑な形状についての正確な値はないが、その大きさは50と500の間にあることに留意すべきである。2)蛇行流路により、慣性が役割を果たし、流体を適切に混合することができる。3)流体がその中を循環するチャンネルであって、拡散が生じるべき長さを減少させる効果のあるチャンネルの内寸を減少させることにより反応体流の厚さが減少し、それによって、拡散に必要とされる特徴的な時間が減少する。
【0040】
その結果が実質的に同じである多くの他のミキサ要素の実施の形態が本発明により考えられ、様々なミキサ要素の構造体の形状が、混合能力を向上させるために、設計で選択される。円柱形状の支柱が、図4において障害物450にとって好ましい実施の形態であると記載されているが、表面に溝や他の輪郭を持つものや持たないものの、可能な範囲内で任意の他の幾何学形状(三角形、斜方形、菱形など)が、本発明の範囲に含まれるものと考えられる。1つのミキサ400内の障害物450の全てが必ずしも同じ形状を有するものではないことも考えられる。それらの障害物は、特定のミキサ設計について、適切で所望の混合に適したどのような様式でも、全ての異なる形状とサイズが、交互になっている、および/または区画内の場所を占めることが必要であるかもしれない。さらに、チャンネル区画435の形状は、図4(および図5のそれぞれの断面)に示した角が丸まったおおよそ矩形の形状に制限されない。他の形状の区画435も、当業者により用いられ、本発明の範囲にそれでもまだ含まれるものと本発明により考えられる。同様に、制限部460について、窪み状以外の代わりの形状も考えられる。それゆえ、図5に示された断面は、もちろん、図4のミキサ要素の異なる形状に応じて異なる。さらに、連続して配置されるミキサ要素の数は、1つから、所望の混合効率を生じる要素の最小数までに及んで差し支えない。多くの例において、ミキサ要素をより多く加えることは、混合効率を必ずしも増加させることにはならない。それに加え、先に述べられ、例えば、図7Aおよび7Bに後に示すように、各ミキサ要素の寸法は、本発明の新規の態様により、所望の混合効率に応じて、様々な範囲を有していても差し支えない。
【0041】
本発明の代わりの好ましい実施の形態において、連続した局所的な流路の組合せにより、制限部460の有無にかかわらず、チャンバ440内のチャンネルの端部でというよりもむしろ、チャンネル区画435の中央か他のどこかに支柱または円柱ポスト450(または他のタイプの障害物)が配置され、それでも、流路を通って流れる液体の加速または所望の混合と適切な流れが生じるであろう。その上、本発明のさらに別の代わりの好ましい実施の形態において、流体が初めて相互作用する、注入区域と界面区域または接触領域の新規の制御がある。この後者の制御は、図6A、6B、図8および8Aに関して、後に詳しく説明される。
【0042】
ここに記載した好ましい実施の形態の全てにおいて、実際のミキサ構造体により生じる圧力降下および混合品質は、設計の寸法をしかるべく変更することによって、最適な性能を達成するために、当業者により所望のバランスに調節できることを強調すべきである。
【0043】
混合は一般に「x−y」平面で生じ、それゆえ、通常、水平面における寸法変化が混合品質に影響を与える。高さは、垂直の「z」平面の寸法であり、一般に、圧力降下に一次的影響を、混合品質に二次的影響を与え、混合品質は、先に記載されたミキサ要素430によってより影響を受ける。
【0044】
ここで、図6Aおよび6Bを参照する。本発明のミキサの原理の範囲に含まれる、ミキサ400に関するいくつかの好ましい設計構造体610から680が示されている。ミキサ400の各層が、3つの矩形形状により示されている。例えば、610aおよび610bは、それぞれ、ミキサ要素の最上層と最下層を示しており、一方で、610cは、本発明の好ましい実施の形態によって最下層610bの上に組み立てられた最上層610aにより形成された1つの単独の微小構造ミキサの最終的に組み立てられた構造体を示している。図6Aおよび6Bに示された層は、ガラス、セラミックまたはガラスセラミックの基板材料から製造されることが好ましい。各ミキサの設計はウェハー上に形成されることが好ましい。
【0045】
それぞれ、675および676で、最上層と最下層のみが示されているミキサ680を除いて、この最上層、最下層および組立3層の一覧図は、図6Aおよび6Bに示されたミキサの全てを代表している。
【0046】
上述したように、本発明の好ましい実施の形態において、製造は、2つの層を一緒にして3番目の組立層を形成することによって行われる。しかしながら、他の設計の実施の形態に関して、1つのマイクロパターン形成層を、裸のまたは被覆されたガラス、セラミック、またはガラスセラミックの基板と一緒にすることも可能である。
【0047】
好ましい実施の形態610,615,620,625,630,635,640,645,650,655,665,670および672(図6Aおよび6Bに示された実施の形態の大半を表す)において、構造体は、連続構造のミキサ要素を示している。二連のミキサ要素を並列に配置すること(図6Bに660および680で示されている)は、同じ設計原理で可能であるが、各分岐662aおよび662b内の流体または反応体の流量(入口でのその値から)間の比の潜在的な偏差のためにそれほど望ましくはないであろう。この実施の形態において、660で、混合効率は各分岐662aおよび662b内で適切であるが、化学量論は保存できない。しかしながら、このタイプの流動分離は、全体の圧力降下を減少させるための有用な方法である。
【0048】
多くの構造上のミキサ設計の詳細が、ミキサ要素の数とサイズ、注入区域の設計および区画内の制限部における変形物を含めるために、図6Aおよび6Bの好ましいミキサの実施の形態に示されている。ミキサ要素の数を増加させると、後の図9〜11のプロットに示されるように、ミキサにより生じる圧力降下が増加する。これは、混合の完全性(または効率)を増加させることも示されている。
【0049】
ここで、ミキサ680を参照する。最上層675と最下層676の領域685および690は、本発明の好ましい実施の形態による注入区域の領域を示している。これらの注入区域の領域685および690は、これらの区域685および690から来る2つの界面を形成することによって、混合を向上させるように改良されている。流体の間の界面は、最上層675および最下層676の組立てが行われるときに、コア677および678中のコア流体によって形成される。これらの流体は、本発明の好ましい実施の形態により第1の相互作用で制御される。この実施の形態において、どれほど多くの追加の流体があるかに応じて、2種類の流体に2つの界面があるが、流体間の界面の数は増えてもよい。さらに、界面および1つのまたは多数のコアを含む注入区域を、図8および8Aを参照して、後に説明する。
【0050】
ここで、図7Aおよび7Bを参照する。図6Aおよび6Bに示した実施の形態を製造するために用いられるミキサ要素の対応する好ましい寸法が、本発明の好ましい態様にしたがって示されている。例えば、710では、図6Aおよび6Bのミキサ要素611,646,656または666の半径、長さなどの寸法のデータが図に示されており、以下も同様である。720では、図6Bの実施の形態660の注入区域661の好ましい寸法が列挙されている。さらに、730では、図6Aおよび6Bのミキサ要素616または657の好ましい寸法が描かれており、740では、図6Aのミキサ要素621の好ましい寸法が記されており、750では、図6Aのミキサ要素626の好ましい寸法が定義されており、760では、図6Aのミキサ要素631の好ましい寸法が示されており、770では、図6Aのミキサ要素636の好ましい寸法が記されており、780では、図6Aのミキサ要素641の好ましい寸法が定義されており、790では、図6Aのミキサ要素651の好ましい寸法が定義されており、792および794では、図6Bのミキサ要素671と673の好ましい寸法が定義されている。
【0051】
2種類の混和性液体の混合品質を数値で示すために用いられる試験方法が、Villermaux J., et al., Use of Parallel Competing Reactions to Characterize Micro Mixing Efficiency, AlChE Symp. Ser. 88 (1991) 6, p.286に記載されている。典型的な試験プロセスは、室温で、酸塩化物の溶液およびKI(ヨウ化カリウム)と混合された酢酸カリウムの溶液を調製することであろう。これらの流体または反応体は、シリンジポンプによって、ミキサまたはリアクタ(すなわち、混合に関して試験すべきもの)中に連続的に注入されるであろう。定量化が350nmでの透過測定により行われるフロースルーセルまたはキュベット(10μl)を通ってミキサから流出する連続流体がある。任意の異質の流体が廃液として収集されるであろう。
【0052】
ここに記載した構造体に室温でこの試験方法を用いた場合、本発明に関する混合の品質は、100%の値が理想である。22℃の水および蠕動ポンプを用いて、圧力降下データが得られる。総流量は、圧力トランスデューサを用い、上流の絶対圧値を測定することによって、図4に示されたミキサまたはリアクタ430の出口で測定される。ここで、ミキサ430の出口(すなわち、後に示されるようなマイクロリアクタ装置内に埋め込まれるミキサ)は大気圧に対して開放されている。
【0053】
図8は、本発明の代わりの好ましい実施の形態による、700μmから1300μmに及ぶ半径を持つ一群のミキサを示している。前出の図6Aと6Bおよび図7Aと7Bに示されたミキサは、生じた圧力降下が適度であり、混合効率が適切であるような寸法を持つ設計を示したが、図8は、混合効率の増加および圧力降下の増加を示すために、寸法、特に、障害物の半径が増加している設計を示している。図8において、コア要素822aは、接触領域の調節部としての機能を果たし、ここで、流体が初めて相互作用する。ミキサ822,823,824,826,827および828にもコア(標識付けられていない)があるが、図8の残りのミキサには、このコアの特徴が示されていない。
【0054】
図8Aを参照する。本発明の代わりの好ましい実施の形態において、2つのコア801と802を持つ多重コア注入区域の設計800が示されている。図8Aの向きを示す矢印により示されるように、流体は右から左に流動する。コア流体804は、コア801内で右から左に、界面区域807に向かい、そこを通って流動する。コア流体805は、コア801とコア802の境界内で右から左に、界面区域808に向かい、そこを通って流動する。コア流体806は、環状流体領域803とコア802の内部で右から左に、界面区域809に向かって流動する。
【0055】
コア流体804,805および806は、ミキサ822(図8に示された)の入口区域822bに到達するまで、分離されたままである。入口区域822bから流路内の最初のミキサ要素800までの距離は、図8の単一コアの注入区域の設計に示されるように、一般に1950μmである。図8および8Aに示された実施の形態は、コア流体がミキサに極めて近くなるまでそれらの間の接触を防ぐことによって、コア流体を効果的に制御しており、流体は、ミキサに入ると、接触し、混ざる。
【0056】
図9は、図8の異なる設計を比較したグラフを示しており、本発明の代わりの実施の形態による圧力降下対混合効率の関係を明らかに表している。図8の様々なミキサ設計の構造体の圧力降下を増大させると、混合効率も対応して増加することを示すのが分かる。同様に、図10において、プロットは、障害物の半径が1200μm(図8のミキサ827におけるように)〜1300μm(図8のミキサ828におけるように)であるミキサに関する混合効率の増加(90%を超えて)を示している。さらに、図11のプロットは、障害物の半径が増加するにつれ、圧力降下が相対的に増加することを示している。
【0057】
図12は、リアクタ構造体1200内の図4のミキサ400の立体分割図を示している。本発明によれば、流体が、最初にリアクタ構造体1200に導入され、接触区域1220に流動する入口1210が示されている。ミキサ400の最上区域1230と最下区域1235も示されている。流体が出口1250から流出する前に、所望の流量に基づいてマイクロチャンネル内に流体がある滞留時間に亘り存在できる滞留時間区域または地帯1240が示されている。
【0058】
ミキサ設計1200の層は、本発明の好ましい実施の形態のさらなる態様にしたがって、反応体の流体の適切な熱条件を提供するために、マイクロリアクタ内の熱交換層(図示せず)と組み合わせてもよいと考えられる。
【0059】
ここで図13を参照する。本発明によるマイクロリアクタ装置1300内に置かれているミキサ400のブロック図が示されている。ミキサ400および滞留時間区域1240は、図12に先に示したように、構造体1200を表す。ミキサ400は、反応体の供給源1311と1312および2つのポンプ1313と1314を有する。滞留時間区域1240は、所望の流量に基づいてマイクロチャンネル内に流体がある滞留時間に亘り存在できる1つの通路を一般に有するマイクロ流体装置である。滞留時間区域1240の出口に位置するフィルタ1330は、生成物1340および副生成物1350を生成し得る。
【0060】
先に説明した全ての図面は、実際のサイズのものではなく、本発明の好ましい実施の形態の正確な解釈および構造ブロック図を表したものであることに留意すべきである。
【0061】
以下に限られないが、水性液体および有機液体の両方の混合を含み、これらの液体が混和性および非混和性である用途、および反応性ガスを液体と混合し、1つの液体反応体を不活性または反応性ガスにより置換する用途などの、いくつかの商業用途が、本発明の実施の形態と共に使用されることが考えられる。さらに、液体は、適切な溶媒中に溶解された、または前出の液体中に分散された固体から構成しても差し支えない。そのような液体のいくつかの非限定的例としては、
1) 均一系気相反応:
炭化水素(気体または蒸気)を、選択的酸化反応のための触媒作用区域内で後に反応させるために、空気と混合しても差し支えない(アクロレインを生成するためのプロピレン、無水マレイン酸を生成するためのブタン)。炭化水素(気体または蒸気)を、反応させ、ハロゲン化炭化水素を生成させるためにハロゲン化化合物と混合して差し支えない(ベンゼンと塩素)。
【0062】
2) 均一系液相反応:
水中のアルデヒド/ケトンを、反応させ、アルドール縮合生成物を生成するために、水酸化ナトリウム水溶液と混合しても差し支えない(プロピオンアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン)。水中のフェノールを、反応させ、ニトロ化生成物を生成するために、硝酸水溶液と混合しても差し支えない。
【0063】
3) 不均一系液相反応:
液体炭化水素を、反応させ、ニトロ化生成物を生成するために、硫酸と硝酸の混合物と混合しても差し支えない(トルエン、ナフタレン等)。過酸化水素を、選択的酸化生成物を生成するために、液体炭化水素と混合しても差し支えない(ヒドロキノン、カテコールへのフェノール酸化)。
【0064】
4) ガスを、溶解させ、次いで、捕捉(水酸化ナトリウム水溶液中のSO2)または反応(オレウムを生成し、次いで、スルホン化反応を行うための硫酸中のSO3)させるために、液体と混合しても差し支えない。次いで、炭化水素溶液中のオゾン(空気、酸素)に、均一系触媒反応(シクロヘキサンまたはパラキシレン酸化)または不均一系触媒反応(フェノール、クメン)であるかに応じて、選択的な酸化反応を行わせる。
【0065】
さらに、反応によって、混合され、第3アミン溶媒の存在下でアミンおよびアシルクロライド炭化水素と反応させられる固体である1種類以上の生成物が生じる場合に、この後者の解決策を使用することができる。これによって、対応するアミドおよび混合物中に不溶性である第4アンモニウム塩が生成される。
【0066】
本発明の様々な好ましい実施の形態を説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明に様々な改変および変更を行えることが当業者には明らかであろう。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に含まれるという条件で、包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、従来技術の分割・再結合ミキサの例である。
【図2】図2は、従来技術のカオトロピックミキサの例である。
【図3】図3は、従来技術のスラグ減圧ミキサの例である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施の形態によるミキサの立体的な説明図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい実施の形態によるミキサポストの中心の図4の断面図である。
【図6−1】図6Aは、本発明の好ましい実施の形態によるミキサ設計の層の平面図である。
【図6−2】図6Bは、本発明の好ましい実施の形態によるミキサ設計の層の平面図である。
【図7−1】図7Aは、本発明の好ましい実施の形態による図6Aのミキサ設計の典型的な寸法を示す。
【図7−2】図7Bは、本発明の好ましい実施の形態による図6Bのミキサ設計の典型的な寸法を示す。
【図8−1】図8は、本発明の好ましい実施の形態による、寸法が大きくなった代わりのミキサ設計の平面図である。
【図8−2】図8Aは、本発明の代わりの好ましい実施の形態による多重コア注入区域を示す。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施の形態による、様々な寸法の図8の様々なミキサ設計の圧力降下およびミキサ品質のプロットである。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施の形態による、様々な寸法の図8の様々なミキサ設計の圧力降下およびミキサ品質のプロットである。
【図11】図11は、本発明の好ましい実施の形態による、様々な寸法の図8の様々なミキサ設計の圧力降下およびミキサ品質のプロットである。
【図12】図12は、本発明の好ましい実施の形態によるミキサリアクタ構造体に埋め込まれたミキサの平面図を示す。
【図13】図13は、本発明の好ましい実施の形態によるマイクロリアクタ装置における図12のミキサのブロック図を示す。
【符号の説明】
【0068】
400 ミキサ
410 注入区域
430 ミキサ要素
440 チャンバ
450 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ装置であって、
複数の流体が最初に接触する連続流路の少なくとも1つの注入区域、および
前記流路内にある少なくとも1つのミキサ要素であって、前記流路を通る前記複数の流体を効率的に混合するミキサ要素、
を備えたミキサ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのミキサ要素の各々が、チャンネル区画および該チャンネル区画の端部に配置されたチャンバにより特徴付けられ、前記チャンバの各々が少なくとも1つの障害物をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のミキサ装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの障害物が前記流路内のどこかに位置していることを特徴とする請求項1記載のミキサ装置。
【請求項4】
前記チャンネル区画が少なくとも1つの制限部によりさらに特徴付けられ、前記区画が、100μmから5000μmの範囲の半径、100μmから5000μmの範囲の高さ、100μmから10000μmの範囲の幅、および200μmから10000μmの範囲の長さを有し、前記制限部は、50μmから2500μmの範囲の半径および100μmから5000μmの範囲の高さを有することを特徴とする請求項2または3記載のミキサ装置。
【請求項5】
前記チャンバの内寸が、前記少なくとも1つの障害物が存在することにより減少し、前記障害物の内寸が増加すると前記混合の効率が増加することを特徴とする請求項2から4いずれか1項記載のミキサ装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの障害物が、50μmから4000μmの範囲の半径および100μmから5000μmの範囲の高さを持つ任意の外形を有することによりさらに特徴付けられ、前記少なくとも1つの障害物が存在する前記チャンバの内寸が、100μmから5000μmの範囲の半径、600μmから30mmの周囲長さ、3mm2から80mm2の表面積、0.3mm3から120mm3の容積、および100μmから5000μmの範囲の高さを特徴とする請求項5記載のミキサ装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの注入区域がさらに少なくとも1つのコアを含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のミキサ装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの注入区域が、複数の界面を通ってそこに向かって流動する前記少なくとも1つのコア内の前記流体を制御することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のミキサ装置。
【請求項9】
前記ミキサ装置がマイクロリアクタ装置と組み合わされ、該装置が、反応体流体源、ポンプ、滞留時間区域および出口フィルタの内の少なくとも1つのによりさらに特徴付けられることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のミキサ装置。
【請求項10】
ガラス、セラミックまたはガラスセラミック基板材料から製造されることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のミキサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8−1】
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【図8A】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−501517(P2008−501517A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526312(P2007−526312)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006265
【国際公開番号】WO2005/120690
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】