説明

混合フルオロアルキル−アルキル界面活性剤

式1
(Rf−A)a−Q−([B]k−R)b 式1
[式中、
aおよびbは、それぞれ独立して1又は2であり;
fは、任意に少なくとも1個の酸素で中断されている、2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
Rは、C1〜C20直鎖、分岐鎖若しくは環式のアルキル、又はC6〜C10アリールであり;
Bは−(CH2CHR1O)x−であり、
kは0又は1であり、xは1〜約20であり、
Aは、−(CH2m[(CHR1CH2O)]s−[(CH2m(CH)tCHOH(CH2me−であり、
(式中、
各mは、独立して0〜3であり、sは0〜約30であり、tは0又は1であり、eは0又は1であり、
1はH又はCH3である)
Qは、−OP(O)(O-+)(O)−、
−O−、
−S−(CH2m−C(O)−O−、
−SO2−O−、
−CH2CH2O−C(O)CH2C(OH)(V)CH2C(O)O−、
−(CH2CH2O)xCH2CH(OH)−(CH2CH2O)x−(CH2m−Si[OSi(R232−、
−SO2NR2−、
−(CH2CH2O)zC(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−(式中、zは1〜約15である)、又は
sが正の整数であるとき、結合であり、
Vは−C(O)OR3であり、R3は、H、CH3またはRfであり;
2はC1〜C4アルキルであり、
+は、1族金属であるか又はアンモニウム(NHx2y+カチオンであり(式中、x+y=4であり、R2はC1〜C4アルキルである)、
但し、Qが−OP(O)(O-+)(O)−であるとき又はQが−(CH2CH2O)z−C(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−であるとき、s又はeの少なくとも1つは正の整数である]
の界面活性剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、フルオロケミカル界面活性剤、特に連結親水性部分によって連結されたパーフルオロアルキル基と炭化水素基とを含有するフルオロケミカル界面活性剤である。
【背景技術】
【0002】
フルオロケミカル鎖を有する界面活性剤および表面処理剤では、パーフルオロアルキル鎖が長いほど、所与の濃度でフッ素含有率が高く、性能がより良好である。しかし、フッ素化材料はより高価である。従って、フッ素含有量を低減しつつ、同等又はそれより高い性能を発揮することが望ましい。フッ素含有量を低減するとコストが削減されるが、製品の性能を維持することが必要である。
【0003】
国際公開第2005/113488号パンフレットは、構造Rf−Z1−CH[(O)rSO3M]−Z2−Rh(式中、Rfは、エーテル結合を有してもよいフルオロアルキル基であり;Rhはアルキル基であり;rは1又は0であり;rが0であるとき、Z1およびZ2はそれぞれ、−(CH2n1−(X1p1−および−(X2q1−であり、rが1であるとき、Z1およびZ2はそれぞれ、−(CH2Y)p2−CH2−および−(CH2Y)q2−であり、ここで、X1およびX2は同じものか又は異なるものであり、それぞれ2価の連結基であり;p1は0又は1であり;q1は0又は1であり;n1は1〜10の整数であり;YはO、S、又はNRであり(ここで、RはH又はC1〜C4のn−、イソ−、第二級−、又はt−アルキル基であり);p2およびq2はそれぞれ、0又は1であるが、同時に全てが0ではなく;MはH、アルカリ金属、半分のアルカリ土類金属、又はアンモニウムである)フルオロアルキル/アルキル(対の末端を有する)界面活性剤を記載した。これらの構造体は、二酸化炭素中で界面活性剤活性を有するが、他の媒体では界面活性剤活性を全く持たないと開示されている。
【0004】
界面活性剤の性能、特に水性系における表面張力を低く改善すること、およびフッ素有効性を増加させること、即ち、界面活性剤の有効性又は性能を向上させ、同レベルの性能を達成するのに必要な高価なフッ素成分の割合がより低くて済むようにすること、又は同レベルのフッ素を使用してより優れた性能を有するようにすることが望ましい。とりわけ望ましいのは、現在の市販の製品と類似の性能を有するが、より短いパーフルオロアルキル基により、より少ないフッ素が存在する界面活性剤である。本発明は、このような界面活性剤を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式1
(Rf−A)a−Q−([B]k−R)b 式1
[式中、
aおよびbは、それぞれ独立して1又は2であり;
fは、任意に少なくとも1個の酸素で中断されている、2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
Rは、C1〜C20直鎖、分岐鎖若しくは環式のアルキル、又はC6〜C10アリールであり;
Bは−(CH2CHR1O)x−であり、
kは0又は1であり、xは1〜約20であり、
Aは、−(CH2m[(CHR1CH2O)]s−[(CH2m(CH)tCHOH(CH2me−であり、
(式中、
各mは、独立して0〜3であり、sは0〜約30であり、tは0又は1であり、eは0又は1であり、
1はH又はCH3である)
Qは、−OP(O)(O-+)(O)−、
−O−、
−S−(CH2m−C(O)−O−、
−SO2−O−、
−CH2CH2O−C(O)CH2C(OH)(V)CH2C(O)O−、
−(CH2CH2O)xCH2CH(OH)−(CH2CH2O)x−(CH2m−Si[OSi(R232−、
−SO2NR2−、
−(CH2CH2O)zC(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−(式中、zは1〜約15である)、又は
sが正の整数であるとき、結合であり、
Vは−C(O)OR3であり、R3は、H、CH3又はRfであり;
2はC1〜C4アルキルであり、
+は、1族金属であるか又はアンモニウム(NHx2y+カチオンであり(式中、x+y=4であり、R2はC1〜C4アルキルである)、
但し、Qが−OP(O)(O-+)(O)−であるとき又はQが−(CH2CH2O)z−C(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−であるとき、s又はeの少なくとも1つは正の整数である]
の界面活性剤を含む。
【0006】
本発明は、更に、媒体を前述の式1の組成物と接触させる工程を含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
商標は、本明細書では大文字で示される。
【0008】
本明細書で「対の末端を有する界面活性剤」の用語は、2つの疎水性基が連結親水性基に結合した界面活性剤を記載するために使用される。2つの疎水性基は同じものであり、本明細書では「対称的な対の末端を有する界面活性剤」として示すことができる。或いは、2つの疎水性基は異なるものであり、「対の末端を有する混成界面活性剤」として示すことができる。
【0009】
本発明は、より低いフッ素含有率を有するが、秀でた性能効果を保持する対の末端を有する混成界面活性剤を含む。本発明において、炭化水素(又はアルキルシリル)疎水性部がフルオロカーボン疎水性部(疎油性部)につながれているとき、表面張力値および臨界ミセル濃度値は完全フッ素化界面活性剤とおおよそ同じものであることが分かった。
【0010】
本発明は、式1
(Rf−A)a−Q−([B]k−R)b 式1
[式中、
aおよびbは、それぞれ独立して1又は2であり;
fは、任意に少なくとも1個の酸素で中断されている、2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
Rは、C1〜C20直鎖、分岐鎖若しくは環式のアルキル、又はC6〜C10アリールであり;
Bは−(CH2CHR1O)x−であり、
kは0又は1であり、xは1〜約20であり、
Aは、−(CH2m[(CHR1CH2O)]s−[(CH2m(CH)tCHOH(CH2me−であり、
(式中、
各mは、独立して0〜3であり、sは0〜約30であり、tは0又は1であり、eは0又は1であり、
1はH又はCH3である)
Qは、−OP(O)(O-+)(O)−、
−O−、
−S−(CH2m−C(O)−O−、
−SO2−O−、
−CH2CH2O−C(O)CH2C(OH)(V)CH2C(O)O−、
−(CH2CH2O)xCH2CH(OH)−(CH2CH2O)x−(CH2m−Si[OSi(R232−、
−SO2NR2−、
−(CH2CH2O)zC(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−(式中、zは1〜約15である)、又は
sが正の整数であるとき、結合であり、
Vは−C(O)OR3であり、R3は、H、CH3またはRfであり;
2はC1〜C4アルキルであり、
+は、1族金属であるか又はアンモニウム(NHx2y+カチオンであり(式中、x+y=4であり、R2はC1〜C4アルキルである)、
但し、Qが−OP(O)(O-+)(O)−であるとき又はQが−(CH2CH2O)z−C(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−であるとき、s又はeの少なくとも1つは正の整数である]
の混成フルオロアルキル/アルキル界面活性剤を含む。
【0011】
式1の対の末端を有する混成界面活性剤の具体例としては、式2〜9:
式2: Rf−(CH2n−O−P(O)(OR)(O-+)、
式3: RfCH2CH(OH)CH2O(CHR1CH2O)xR、
式4: Rf(CH22S(CH22C(O)O(CHR1CH2O)xR、
式5: Rf(CH22S(O2)O(CHR1CH2O)xR、
式6: Rf(CH22O(CHR1CH2O)xC(O)CH2C(OH)(C(O)OH)CH2C(O)O(CHR1CH2O)xR、
式7: Rf(CH22O(CHR1CH2O)xCH2CH(OH)[(CH23O]x(CH22Si(CH3)[OSi(CH332
式8: Rf(CH22S(O2)N(R3)(CHR1CH2O)xR、および
式9: RfCH2CH2O(CHR1CH2O)xC(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCHR1CH2yOR、
(ここで、Rf、n、M+、R、R1、およびR3は、式1について定義された通りであり、各xは、独立して1〜約20であり、R3は、H又はC1〜C4アルキル基である)
が挙げられる。
【0012】
上式の具体例は、下記の実施例に登場する。
【0013】
本発明の組成物は、極めて低い表面張力(約18ダイン/cm=18mN/m)が必要とされる、水性配合物に使用するための界面活性剤である。本発明の界面活性剤は、「フッ素効率」を付与する。「フッ素効率」の用語は、同じレベルの性能を達成するために、又は同じレベルのフッ素を使用してより良好な性能を手にするために、より低い割合の高価なフッ素成分が必要とされるように、界面活性剤の効率を上げるか又は性能を向上させることを意味する。本発明の界面活性剤のフッ素含有率は、従来のフッ素化界面活性剤のフッ素含有率と比較して約50%以下である。
【0014】
理論に結び付けられることを望まないが、フルオロアルキル界面活性剤と炭化水素界面活性剤との物理的混合物は多数の用途において相乗効果を生み出すと考えられる。このような混合物では「競合」が存在し、それによって表面活性物質は界面を奪い合う。より強く疎水性のフルオロアルキル基は界面で疎水性があまり強くないアルキル基と優先的に置換すると考えられる。しかし、フルオロアルキル疎水性基とアルキル疎水性基とが同じ分子中に一緒に存在するとき、アルキル親水性基は置換されることができず、界面活性剤特性はそれによって改善される。更に、本発明の界面活性剤においては、フルオロアルキル基およびアルキル基は両方とも、高度の移動の自由を有し、界面で制限されない配向を可能にする。対照的に、Guoらは、J.Phys.Chem.、1992、10068−10074ページ、上記参照において、フルオロアルキル基、アルキル基、および親水性基が全て単一の炭素原子に結合している、フルオロアルキル/アルキル界面活性剤を調製した。炭素原子の四面体構造は、フルオロアルキルおよびアルキル基の配向で分離を強いる(結合角は、対称的な四面体メタン分子におけるH−C−H角度については109.5°である)。Guoの実施例の大部分は、18mN/mほどに低い表面張力結果を示さなかった。混成フルオロアルキルおよびアルキル基が配向で制限されず、最も有利なように自ら位置を調整することができる、上記の式2〜9の構造と比較して、約110°の強制分離は、Guoの実施例におけるフルオロアルキル/アルキル組み合わせの有効性を減少させる可能性があると考えられる。更に、Guoの実施例と比較して、本発明の界面活性剤は、調製するのがはるかに容易であり、より高い収率で得られ、改善された加水分解安定性を付与する。
【0015】
本発明の界面活性剤は、多数の常法によって都合良く調製することができる。例えば、式2の界面活性剤は、フルオロアルキルアルコールとアルキルアルコールとの混合物を五酸化リンで処理し、反応マスのその後の加水分解およびアルカリ中和処理によって調製される。さらなる詳細は、米国特許第3,083,224号明細書に記載されている。或いは、フルオロアルキルおよびアルキルアルコールとオキシ塩化リン(又は、例えば塩化ピロホスホリル)との順次反応の後、加水分解および中和は、所望の材料を生成することができる。
【0016】
式3又は7の本発明の混成界面活性剤は、フルオロアルキルエポキシド(このようなエポキシドは、米国特許第3,145,222号明細書および同第4,489,006号明細書におけるように都合よく調製される)と活性水素を有する化合物(例えば、アルコール、アルコールアルコキシレート、又はアミン)とのルイス(Lewis)酸触媒縮合から一段階反応で調製することができる。触媒としては、ランタン族トリフレート又は三フッ化ホウ素エーテラートが挙げられるが、それらに限定されない。この反応の逆、即ち、フルオロアルキル置換アルコール(又はアルコキシレート)と炭化水素−又はアルキルシリル−置換エポキシドとの縮合反応も同等にうまくいく。
【0017】
式4又は6の混成界面活性剤は、アルコール又はアルコールアルコキシレートでのカルボン酸の酸触媒エステル化によって調製される。この反応は、フルオロカーボン酸および炭化水素アルコール、又は炭化水素酸およびフルオロカーボンアルコールを使用することができる。更に、この反応は、本発明のエステルを与えるためのアルコールとカルボン酸無水物又は酸塩化物との反応によって達成される。上記のように、(例えば、米国特許第4,784,809号明細書又は同第3,172,910号明細書におけるように調製される)フルオロアルキル酸誘導体と炭化水素アルコールとで、又は炭化水素酸誘導体とフルオロアルキル置換アルコールとで、このタイプの界面活性剤を製造することが可能である。
【0018】
式5の混成界面活性剤は、(仏国特許第1600425号明細書におけるように調製される)ハロゲン化フルオロアルキルスルホニルと炭化水素アルコール又はアルコールアルコキシレートとの縮合反応から容易に調製される。
【0019】
本発明は、更に、媒体を前述の式1の組成物と接触させることを含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。様々な媒体のいずれも本発明の方法に使用するのに好適である。通常、媒体は液体である。好ましくは、水性、炭化水素、およびハロカーボン系である。好適な媒体の例としては、例えば、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤(release agent)、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤(film evaporation inhibitor)、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤(grinding agent)、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、半田剤(soldering agent)、分散助剤、微生物剤、パルプ剤、すすぎ助剤(rinsing aid)、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤が挙げられる。本発明の組成物を媒体に添加すると、本発明の組成物の界面活性特性のため、媒体の表面張力が低下する。本発明の組成物は、通常、単に媒体とブレンドされるか又は媒体に添加される。約0.1重量%の低濃度の界面活性剤が約24mN/m未満、好ましくは約22mN/m未満、最も好ましくは約20mN/m未満に表面張力を低下させるのに十分である。本発明の多くの界面活性剤については、0.01重量%の濃度の界面活性剤が約22mN/m未満の表面張力を達成するのに有効である。
【0020】
本発明は、更に、基材に堆積する前に、前述の式(I)の1つ以上の化合物を含む組成物をコーティングベースに添加することを含む、コーティングされる基材に湿潤およびレベリングを付与する方法を含む。本明細書で「コーティングベース」の用語で称される、好適なコーティング組成物としては、アルキドコーティング、タイプIウレタンコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、又は水−分散コーティングの組成物、典型的には液体配合物が挙げられ、それらは参照により本明細書に援用される、Outlines of Paint Technology(Halstead Press,New York,NY,Third edition,1990)並びにSurface CoatingsVol.I,Raw Materials and Their Usage(Chapman and Hall,New York,NY,Second Edition,1984)に記載されている。このようなコーティングベースは、基材表面に耐久性皮膜を作り出すために基材に塗布される。これらは、従来の塗料、ステイン、床磨き剤、および類似のコーティング組成物である。
【0021】
「水分散コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、水相中に分散した皮膜形成材料の乳濁液、ラテックス、又は懸濁液などの、水を必須分散成分として構成される基材の装飾又は保護を目的としたコーティングを意味する。「水分散コーティング」は、多数の配合物を表す一般的な分類であり、様々な分類として前述の分類の要素を含む。水分散コーティングは、一般に、他の一般的なコーティング成分を含有する。水分散コーティングの例としては、ラテックス塗料などの顔料コーティング、ウッドシーラー、ステイン、仕上剤、磨き剤などの非顔料コーティング、メーソンリーおよびセメント用のコーティング、並びに水をベースにするアスファルト乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。水分散コーティングは、任意に、界面活性剤、保護コロイドおよび増粘剤、顔料および体質顔料、防腐剤、殺真菌剤、凍解安定剤、消泡剤、pH調整剤、融合助剤(coalescing aids)、および他の成分を含有する。ラテックス塗料では、皮膜形成材は、アクリレート、アクリル、ビニル−アクリル、ビニル、又はこれらの混合物のラテックスポリマーである。このような水分散コーティング組成物は、C.R.Martensによって「Emulsion and Water−Soluble Paints and Coatings」(Reinhold Publishing Corporation, New York, NY, 1965)に記載されている。
【0022】
「乾燥コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、コーティング組成物が乾燥、固化又は硬化した後に得られる最終的な装飾および/又は保護皮膜を意味する。このような最終皮膜は、例えば、硬化、融合(coalescing)、重合、相互侵入、放射線硬化、紫外線硬化、又は蒸発によって得ることができるが、これらに限定されない。最終皮膜は、また、ドライコーティングにおけるように乾燥した最終的な状態で塗布することもできる。
【0023】
床ワックス、磨き剤、又は仕上げ剤(本明細書では以下「床仕上げ剤」)は、一般に水をベースにする又は溶剤をベースにするポリマー乳濁液である。本発明の式Iの界面活性剤は、このような床仕上げ剤に使用するのに好適である。市販されている床仕上げ剤組成物は典型的には、1つ以上の有機溶媒、可塑剤、コーティング助剤、消泡剤、界面活性剤、ポリマー乳濁液、金属錯化剤、およびワックスを含む水性乳濁液をベースにするポリマー組成物である。ポリマーの粒度範囲および固形分は通常、生成物粘度、皮膜硬度および耐劣化性を制御するために通常コントロールされる。極性基を含有するポリマーは溶解性を高めるように機能し、かつまた、湿潤剤又はレベリング剤としての機能を果たし、高い光沢および反射画像の明確さなどの良好な光学特性を付与する。
【0024】
床仕上げ剤に使用するための好ましいポリマーとしては、アクリルポリマー、環式エーテルから誘導されるポリマー、およびビニル置換芳香族化合物から誘導されるポリマーが挙げられる。アクリルポリマーとしては、様々なポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ヒドロキシル置換ポリ(アルキルアクリレート)およびポリ(アルキルメタクリレート)が挙げられる。床仕上げ剤に使用される、市販されているアクリルコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸(MMA/BA/MAA)コポリマー;メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸(MMA/BA/AA)コポリマーなどが挙げられる。市販されているスチレン−アクリルコポリマーとしては、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸(S/MMA/BA/MMA)コポリマー;スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸(S/MMA/BA/AA)コポリマーなどが挙げられる。環式エーテルから誘導されるポリマーは通常、任意のアルキル基が環上に置換された環中に2〜5個の炭素原子を含有する。例としては、様々なオキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、トリオキサン、およびカプロラクトンが挙げられる。ビニル置換芳香族化合物から誘導されるポリマーとしては、例えば、スチレン、ピリジン、共役ジエンから製造されるもの、およびこれらのコポリマーが挙げられる。ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリシロキサンもまた床仕上げ剤に使用される。
【0025】
床仕上げ剤に使用されるワックス又はワックスの混合物としては、植物、動物、合成、および/又は鉱物起源のワックスが挙げられる。代表的なワックスとしては、例えば、カルナバ、キャンデリラ、ラノリン、ステアリン、蜜蝋、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレン乳濁液、ポリプロピレン、エチレンとアクリルエステルとのコポリマー、水素ココナツオイル又は大豆油、およびパラフィン若しくはセレシンなどの鉱物ワックスが挙げられる。ワックスは典型的には、仕上げ剤組成物の重量を基準にして0〜約15重量パーセント、好ましくは約2〜約10重量パーセントの範囲である。
【0026】
コーティングベース又は床仕上げ剤への添加剤として使用されるとき、上に定義されたような式(I)の本発明の組成物は、室温又は周囲温度でそれを十分に撹拌することによって組成物に効果的に導入される。振盪機を使用するか又は熱若しくは他の方法を提供するなどの、より念入りな混合を用いることができる。コーティングベース又は床仕上げ剤への添加剤として使用されるとき、本発明の組成物は一般に、湿潤組成物中の本発明の組成物の乾燥重量で約0.001重量%〜約5重量%添加される。好ましくは約0.01重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%が使用される。
【0027】
式Iの化合物は、それらの界面活性剤特性のために多くの追加の用途で有用である。改善された界面活性剤特性はまた、発泡特性の改善、炭化水素又はハロカーボン溶媒との界面張力の低下、コーティングのレベリングの改善、動的表面張力の改善(時間の関数としての表面張力の低下)を提供する。
【0028】
幾つかの用途の例としては、次のものが挙げられる。
【0029】
本発明の式Iで表される化合物は、消火組成物に使用するのに、例えば湿潤剤、乳化剤および/又は分散剤として好適である。それらはまた、水性皮膜形成消火剤中の成分として、およびエアゾール型消火器でのドライケミカル消火剤への添加剤として、およびスプリンクラー水用の湿潤剤としても有用である。
【0030】
本発明の式Iの化合物は、農業組成物に使用するのに好適である。例としては、除草剤、殺真菌剤、殺雑草剤、寄生虫駆除剤、殺虫剤、殺菌剤(germicide)、殺細菌剤(bactericide)、殺線虫剤、殺菌剤(microbiocide)、枯れ葉剤、肥料およびホルモン成長調整剤用の湿潤剤、乳化剤および/又は分散剤としてが挙げられる。式Iの化合物はまた、群葉用、家畜浸漬用および家畜皮を湿らすための湿潤剤として;殺菌、変色およびクリーニング組成物における成分として;ならびに防虫組成物に好適である。式1の化合物はまた、紙および合板ベニヤの製造のための湿潤剤、乳化剤および/又は分散剤としても有用である。式Iの化合物はまた、紙、木材、皮革、皮、金属、織物、石、およびタイル用の撥グリース剤/撥油剤として、ならびに防腐剤含浸用の浸透剤としても好適である。
【0031】
本発明の式Iで表される化合物はまた、重合反応、特にフルオロモノマーの重合用の湿潤剤、乳化剤および/又は分散剤として使用するのに好適である。これらの化合物はまた、ラテックス安定剤として;拡がり、クローリングおよび縁部積み上げを制御するための発泡体用途向け添加剤として;発泡剤として;金型離型剤として又は離型剤として;ポリオレフィン用の内部帯電防止剤およびブロッキング防止剤として;ホットメルトの押出、拡がり、一様性、クレーター形成防止のための流動性改良剤として;ならびにプラスチックおよびゴム工業における可塑剤の移行又は蒸発の抑制剤としても好適である。
【0032】
本発明の式Iの化合物は、更に、石油産業において油井処理、掘削泥水用の湿潤剤として;ガソリン、ジェット燃料、溶媒、および炭化水素用の皮膜蒸発抑制剤(film evaporation inhibitor)として;浸透時間を改良するための潤滑油または切削油改良剤として;石油流出収集剤として;および三次油井回収率を向上させるための添加剤として使用するのに好適である。
【0033】
本発明の式Iの化合物は、更に、繊維工業および皮革工業において湿潤剤、消泡剤、浸透剤若しくは乳化剤として;又は織物、不織布および皮革処理用の滑剤として;拡がり、および一様性のための繊維仕上げ剤向けに;乾燥用の湿潤剤として;不織布におけるバインダとして;および漂白剤用の浸透剤として使用するのに好適である。本発明の式Iの化合物は更に、以下における使用において好適である。鉱業および金属加工業、製薬工業、自動車、建物保守およびクリーニング、家庭、化粧品およびパーソナル製品、ならびに写真および
【0034】
式1の化合物は、水溶液および水性乳濁液において界面活性剤およびレベリング剤として有用である。それらは、更に、このような媒体の表面特性を変えるために有用である。本発明の組成物は、現在市販されている製品と比較して高いフッ素有効性を有する。本発明の組成物は、同レベルの性能を達成するのに、より少ないフッ素を使用して表面特性を変えるという利点を提供する、又は従来技術の組成物と同レベルのフッ素を使用して、より優れた性能を付与する。
【0035】
試験方法および材料
本明細書の実施例では、次の試験方法および材料を使用した。
【0036】
試験方法1−湿潤およびレベリング試験
湿潤およびレベリング能力におけるサンプルの性能を試験するため、サンプルを床磨き剤(Rohm & Haas(Philadelphia,PA])から入手可能な、RHOPLEX 3829、配合物N−29−1)に添加し、完全にきれいにした12インチ×12インチ(30.36cm×30.36cm)の(Estrie(Sherbrooke,QC Canada)によってInterfuse Vinyl Tilesから入手可能な)ビニルタイルの半分に塗布した。タイルは、タイルを湿らせ、粉状の酸素漂白剤クレンザーを添加し、3M Company(St.Paul MN)から入手可能な、グリーンSCOTCH−BRITE研磨パッドを使用してこすり磨くことによって完全にきれいにする。このこすり磨き手順を使用してタイル上に既存のコーティングを除去した。タイルは当初は一様な輝く仕上げを有し;一様な光沢のない仕上げはコーティング除去を示唆する。タイルを次に一夜風乾させる。脱イオン水で希釈することによって、試験される界面活性剤の1重量%溶液を調製した。樹脂製造業者のプロトコルに従って、RHOPLEX 3829配合物100g分を調製した後、1重量%の界面活性剤溶液0.75gを添加して試験床磨き剤を得た。
【0037】
タイルの中心に試験磨き剤3mL分を付け、チーズクロスアプリケータを使用して上から下まで広げ、最後に、該アプリケータを使用してタイル全体に大きい「X」を描くことによって、試験床磨き剤をタイルに塗布した。「X」はその後、評価工程でレベリングの目に見える証拠を提供する。アプリケータは、8層パッドへ2回折り重ねた、(VWR(West Chester,PA)製の)2層18×36インチ(46×91cm)シートのチーズクロスから調製した。パッドの1コーナーを次にアプリケータとして使用した。タイルを30分間乾燥させ、各コーティングが乾燥された後にX試験を行って、合計5層のコーティング(コーティング#1〜5)を塗布し、乾燥させた。各コーティングの後、タイル表面における磨き剤の湿潤およびレベリングを促進する界面活性剤の能力について、タイルを1〜5のスケール(1は最低であり、5は最高である)で評価した。以下のタイル評価スケール(Tile Rating Scale)を使用して、界面活性剤が添加されていない床磨き剤で処理されたタイルの比較に基づいて評価を決定した。
【0038】
【表1】

【0039】
試験方法2−表面張力測定
表面張力は、KRUSS K11張力計(KRUSS USA(Matthews,NC))でWilhelmyプレート法を使用して、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)ASTM#D1331−56に従って測定した。結果はmN/m(N・m×10-7)(ダイン/cm)単位である。この張力計は、製造業者の推奨に従って使用した。
【0040】
試験方法3−水滴形状による界面張力
界面張力は、(KRUSS USA(Matthews,NC)から入手可能な)KRUSS DSA−100表面分析システムでペンダントドロップ法(KRUSS DSA−100ペンダントドロップ法、DSA1水滴形状分析ソフトウェアSW3203)を使用してシクロヘキサンとの界面で測定した。
【0041】
試験方法4−臨界ミセル濃度(CMC)
臨界ミセル濃度は、界面活性剤の濃度に対して界面活性剤/水混合物の表面張力をプロットし、もはや界面活性剤濃度が表面張力に対して認められるいかなる影響も及ぼさないポイントを決定することによって測定した。
【0042】
試験方法5−Ross−Miles泡試験測定
発泡特性は、米国材料試験協会試験方法ASTM#D1173−53を使用して決定した。泡の深さはmm単位で測定した。
【0043】
試験方法6−(フッ素分析のための)Wickboldトーチ法
フッ素化化合物の定量的な無機化のための効率的な方法は、Wickboldトーチ燃焼法である。(Angew.Chem.66(1954)173ページに詳細に記載されている)この方法は、フッ素含有化合物については化合物に依存しないことが実証された。この方法では、分析サンプルをセラミック容器に入れ、典型的には、激しい酸素流れの中で外部加熱によってサンプルを完全に燃焼させた。燃焼が完全になるように、ガス状反応生成物を過剰酸素の補助水素/酸素火炎に通した。ガス状流出物を次に凝縮させ、分析のために集められる水性流れにフッ化物を可溶化させた。典型的にはフッ化物イオン選択的電極を使用して、水性フッ化物を次に容易に測定した。
【0044】
試験方法7−建築用ラテックス塗料の耐ブロッキング性
本明細書に記載の試験方法は、参照により本明細書に明示的に援用されるASTM D4946−89、建築用塗料の耐ブロッキング性の標準試験方法(Standard Test Method for Blocking Resistance of Architectural Paints)の変更である。試験される塗料の向かい合わせでの耐ブロッキング性をこの試験で評価した。ブロッキングは、この試験の目的では、塗装された2つの表面が押し合わせられたときの又は長時間互いに接触して配置されたときの望ましくない付着と定義される。
【0045】
試験される塗料を、アプリケータブレードを使用してポリエステル試験パネル上に流延した。塗装されたパネルは全て、油脂、油、指紋、塵埃などの表面汚染から保護された。通常、塗料を流延してから24時間後に結果を調べた。所望の時間、ASTM試験方法に規定されているように、制御された温度および湿度の空調された室内でパネルを調整した後、塗装された試験パネルから6つの正方形(3.8cm×3.8cm)を切り取った。試験される各塗料について、切り取った部分(3対)を塗料面が向かい合うようにして配置した。向かい合わせにした試験片を50℃のオーブン内の大理石のトレイに載せた。直径の小さい方が試験片と接触するようにして8番の栓を上に載せた後、1000gの重りを栓の上に載せた。この結果、試験片に1.8psi(12,400パスカル)の圧力がかかった。試験される各試験片について、1つの重りと栓を使用した。ちょうど30分後に栓と重りを試験片から取り除き、オーブンから取り出し、ブロッキングに対する抵抗性を決定する前に30分間空調された室内で冷却した。
【0046】
冷却後、ゆっくりとした一定の力で剥離することにより、試験片を分離した。耐ブロッキング性を、この方法の実施者によって決定される主観的タック評価(塗装された試験片の分離時に出る音)又は封着(塗装された2つの表面の完全な接着)に対応する0〜10で評価した。タックの程度が実際に聞こえるように試験片を耳の近くに置いた。評価システムを下記の耐ブロッキング性の数値評価と題された表に記載する。試験片の外観と接着する塗料表面の分率から封着の程度を評価した。塗料が試験パネル支持体から剥離するのは封着を示す。数値が大きいほど耐ブロッキング性が良好であることを示した。
【0047】
【表2】

【0048】
材料
本明細書の実施例では、次の材料を使用した。
1)C8〜C14パーフルオロアルキルエタノール[F(CF2CF2n(CH2CH2)OH](ここで、nは3〜6である)の混合物は、本件特許出願人(Wilmington,DE)から入手可能である。この組成物のアルコールは本明細書では「テロマーBアルコール」と称される。
2)TERGITOL 15−S−シリーズ(15−S−n、R(OCH2CH2nOH)は、Dow Chemical(Midland,MI)から市販されている。
3)RHOPLEX 3829、配合物N−29−1床磨き剤は、Rohm & Haas(Philadelphia,PA)から入手可能である。
4)85度で84%光沢のアクリル半光沢樹脂を有するVISTA 6400塗料は、Vista Paints(Fullerton,CA)から入手可能である。
【実施例】
【0049】
実施例1
テロマーBアルコール[F(CF2n(CH2CH2)OH、n=平均7、70.6g、0.17mol、75モル%]、1−オクタノール[C817OH、7.4g、0.057mol、25モル%]および無水リン酸[P25、14.2g、0.10mol、モル%]を反応させた。混合物を僅かに過剰の5%水性アンモニアでpH8.5に中和し、水[44.6g、2.5mol]と2−プロパノール[(CH32CHOH、93.9g、1.6mol]との混合物に溶解させ、パーフルオロアルキルエチル−オクチルホスフェートエステルのアンモニウム塩(式2)の溶液をもたらした。表面張力を試験方法2によって測定し、表1に示す。
【0050】
実施例2〜4
実施例2については、50モル%のテロマーBアルコールおよび50モル%の1−オクタノールを;実施例3については、25モル%のテロマーBアルコールおよび75モル%の1−オクタノール(実施例3)を;並びに実施例4については、12.5モル%のテロマーBアルコールおよび87.5モル%の1−オクタノールを使用して実施例1におけるようにパーフルオロアルキルエチル−オクチルホスフェートエステルのアンモニウム塩の溶液を調製した。様々な重量%での脱イオン水中のこれらの混合ホスフェートの表面張力を試験方法2によって測定し、表1に示す。
【0051】
比較例A
比較例Aは、100モル%のテロマーBアルコールを使用し、1−オクタノールを全く使用しないで実施例1におけるように調製した。様々な重量%での脱イオン水中の比較例Aについての試験方法2による表面張力測定は、表1に示す通りである。
【0052】
【表3】

【0053】
表1は、実施例(混合パーフルオロアルキルエチル/オクチルホスフェートエステル)が全て比較例A(オクチルエステル基なしのパーフルオロアルキルエチルエステル)と比較してより低い表面張力を示したことを示す。50:50モル比のパーフルオロアルキルエチル/オクチルホスフェートエステルの実施例2が最も低い表面張力を有する。最も低いフルオロアルコール含有率(12.5モル%)の実施例4でさえも、全75モル%のフルオロアルコールについて3つのパーフルオロアルキルホスフェートアンモニウム塩(1:1:1)、3〜7重量%;(1:1:2)、17〜21重量%;および(2:1:1)、11〜15重量%を含有する、比較例Aより小さい表面張力を有した。
【0054】
実施例5
混成スルホエトキシレート(式5)の合成は、パーフルオロヘキシルエチルスルホニルクロライドの2段階調製の後、Dow Chemical(Midland,MI)から市販されている、TERGITOL 15−S−シリーズ(15−S−n、R(OCH2CH2nOH)との縮合反応によって達成した。TERGITOL 15−S−シリーズ製品名および構造における「n」に関連した数は、第二級アルコールエトキシレートのエチレンオキシド鎖の平均数である。
【0055】
パーフルオロヘキシルエチルアイオダイド[C613CH2CH2I、沸点138〜210℃、301g、0.63mol]、酢酸[CH3COOH、沸点118℃、3.4g、0.06mol]、エタノール[CH3CH2OH、沸点78℃、112g、2.44mol]およびチオシアン酸カリウム[KSCN、沸点500℃、75.7g、0.78mol]を、磁気撹拌しながら80℃で12時間還流させ、そのとき残存する未反応アイオダイドは、GC分析によって確認されるように、0.5%より下であった。混合物を60℃に冷却し、15インチHg(50.7kPa)の僅かな減圧下に中程度のフリットガラスフィルタ漏斗によって固形分を除去した。暖かい固体フィルタケーキを100gの暖かい(60℃)エタノールで洗浄した。エタノール溶媒をろ液から蒸留し、パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート生成物を、暖かい(55℃)脱イオン水で洗浄した。パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート生成物は、室温で黄橙色固体であった(C613CH2CH2SCN、230g、収率90%)。
【0056】
(FIDを備えたAgilent Technologies 6850ガスクロマトグラフを使用して、50〜300℃(8℃/分)の温度範囲にわたってキャピラリーカラム[HP−1(30m×0.32mm)]を用いて行われる)GCクロマトグラフィー分析は、チオシアネート[保持時間4.305分]が99%純度であることを示した。1H NMR(500MHz;MeOD)δ2.70−2.80(m,2H),δ4.45−4.50(m,2H)。
【0057】
上記の通り調製したパーフルオロヘキシルエチルチオシアネート[C613CH2CH2SCN、沸点<300℃、224g、0.55mol]および酢酸[CH3COOH、沸点118℃、116g、1.94mol]を油浴で45℃に加熱し、機械攪拌機でかき混ぜた。パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート1モル当たり塩素の0.002モル/分の速度で塩素[沸点−34℃、130g、1.85mol]を反応物中へバブリングさせ、自動注射器によって10時間にわたってチオシアネート試薬1モル当たり脱イオン水の0.004モル/分の速度で脱イオン水[44g、2.47mol]を同時に滴々添加した。パーフルオロヘキシルエチルチオシアネート出発原料の濃度がGC分析によって測定されるように0.5%より下になるまでこの酸化反応を行った。生成物を100mLの70℃脱イオン水、次に100mLの60℃3.5%NaCl溶液で洗浄した。パーフルオロヘキシルエチルスルホニルクロライド生成物(C613CH2CH2SO2Cl、242g、収率99%)は黄色液体であった。ガスクロマトグラフィー分析は、パーフルオロヘキシルスルホニルクロライド(保持時間4.542分)が99%純度であることを示した。1H NMR(500MHz;CH3OD)δ2.70−2.80(m,2H)、δ4.45−4.50(m,2H)。
【0058】
上記の通り調製したパーフルオロヘキシルエチルスルホニルクロライド[C613CH2CH2SO2Cl、沸点>200℃、10g、0.02mol]およびTERGITOL 15−S−12[C1327(OCH2CH212OH、沸点>200℃、17.8g、0.02mol]を油浴で加熱し、磁気回転棒でかき混ぜた。窒素掃引を液体表面でバブリングさせた。反応の温度が75℃に達したときに、反応物は均一におよび透明になった。温度を80℃に7時間保持した。生成物は、透明な、黄褐色の液体(C613CH2CH2SO2(OCH2CH212OC1327、25.5g、収率100%)であった。1H NMR(500MHz;CDCl3)δ0.80(5,2H)、δ1.00−1.05(d,2H)、δ1.20(m,2H)、δ1.30−1.40(m,2H)、δ2.90−3.00(m,2H)、δ3.45−3.50(t,3H)、δ3.50−3.60(m,2H)、δ3.70−3.80(m,2H)、δ4.45−4.50(m,2H)。
【0059】
実施例6
式3の混成エトキシレートの合成は、パーフルオロヘキシルプロピレンオキシドとTERGITOL(登録商標)15−S−シリーズ界面活性剤(例えば、15−S−n、R(OCH2CH2nOH)で代表されるアルコールエトキシレートとのルイス(Lewis)酸触媒反応によって形成した。
【0060】
マグネチックスターラーで穏やかにかき混ぜ、窒素掃引しながらパーフルオロヘキシルアイオダイド[C613I、沸点117℃、1500g、3.36mol]およびトリスアリルボレート[B(OCH2CHCH23、171℃、306g、1.68mol]を油浴で64℃に加熱した。反応の温度を60〜70℃に保った。VAZO 64(本件特許出願人(Wilmington,DE)から入手可能な、プロパンニトリル、2−メチル、2,2’−アゾビス、NCC(CH32NNC(CH32CN、融点102℃、11g、0.07mol)を、3時間毎に2g増分で添加した。発熱が第1および第2のVAZO 64添加後に観察された。合計10gのVAZO 64を反応物に添加してしまった後は発熱反応は全くなかった。暖かい60℃の脱イオン水[H2O、750g、41.6mol]および塩[NaCl、35g、0.6mol]を添加してボレートエステルを加水分解した。反応物を次に加熱して共沸蒸留を実施し、揮発性有機化合物(大部分はアリルアルコール)を除去した。反応物を冷却し、水層および有機層を分離した。冷却後、ヨードヒドリン生成物(C613CH2CH(I)CH2OH、1500g、収率99%)は白色固体であった。ガスクロマトグラフィー分析は、FIDを備えたAgilent Technologies 6850ガスクロマトグラフを使用して、50〜300℃(8℃/分)の温度範囲にわたってキャピラリーカラム[HP−1(30m×0.32mm)]を用いて行った。GC分析は、パーフルオロヘキシルヨードヒドリン[保持時間8.932分]が98.5%純度であることを示した。1H NMR(500MHz;CDCl3)δ2.6−2.8(m,2H)、δ2.8−3.0(m,H)、δ3.7−3.8(m,2H)、δ4.2−4.4(m,H)。
【0061】
上に調製したパーフルオロヘキシルヨードヒドリン[C613CH2CH(I)CH2OH、沸点>200℃、750g、1.5mol]および無水メタノール[CH3OH、沸点65℃、150g、0.19mol]を機械撹拌機によってかき混ぜ、5℃より下に冷却した。水酸化カリウム[KOH、91g、1.09mol]を脱イオン水で50%(w/w)に希釈し、反応温度を6℃より下に保ちながら3時間の期間にわたって反応物に滴々添加した。出発ヨードヒドリンの濃度が0.5%より下になるまで反応を続けた(GC分析によって監視した)。反応物を室温に暖め、次に10%硫酸水素塩溶液[NaHSO4、400g、2.94mol]で中和した。パーフルオロヘキシルプロピレンオキシド生成物(C613CH2CHOCH2、沸点154℃)を減圧下に蒸留した。集められた生成物(456g、収率81%)は透明な無色液体であった。GC分析は、パーフルオロヘキシルプロピレンオキシド(保持時間3.352分)が92.4%純度であることを示した。1H NMR(500MHz;CDCl3)δ2.2−2.5(m,2H)、δ2.6−2.7(m,H)、δ2.8−2.9(m,2H)。
【0062】
上記の通り調製したパーフルオロヘキシルプロピレンオキシド[C613CH2CHOCH2、沸点154℃、25g、0.07mol]、TERGITOL(登録商標)15−S−12[R(OCH2CH212OH、沸点>200℃、50.8g、0.07mol]、および三フッ化ホウ素エーテラート[BF3(C252O、沸点125℃、0.15g、1.06mmol]を油浴で90℃に暖め、1時間にわたって乾燥窒素雰囲気中磁気撹拌棒でかき混ぜた。温度が85℃に達したとき、反応物は均一で透明になった。温度を90℃で4時間保持した。縮合生成物は、底部に少量の沈降物ありで透明な橙色液体であった(C613CH2CHOHCH2(OCH2CH212OC1327、77g、収率100%)。GC分析は、混成エトキシレート(保持時間7.101分)が78.0%純度であることを示した。1H NMR(500MHz;CDCl3)δ0.80(5,2H)、δ1.00−1.05(d,2H)、δ1.20(m,2H)、δ1.30−1.40(m,2H)、δ2.15−2.25(m,H)、δ2.30−2.40(m,2H)、δ3.40−3.50(m,3H)、δ3.55−3.65(m,2H)、δ3.70−3.80(m,2H)、δ4.05−4.15(m,2H)。
【0063】
比較例B
比較例Bは、テロマーBアルコールとエチレンオキシドとの反応によって調製される、フルオロエトキシレート(RfCH2CH2(CH2CH2O)nH、nは約7である)であった。周囲圧力で不活性窒素雰囲気中、かき混ぜ機およびドライアイス冷却器、表面下ガス注入管をガラスフラスコに備え付けた。次のおおよその分布(mの4%は2〜4であり、mの35%は6であり、mの30%は8であり、mの17%は10であり、mの8%は12であり、mの6%は14以上である)を有する、F(CF2mCH2CH2OHのフッ素化アルコール(244g、約0.55モル)をフラスコに仕込み、次に不活性ガスのスパージング下に80℃に加熱することによって脱水した。水素化ホウ素ナトリウム(1.02g、0.027モル)およびヨウ素(1.8g、0.007モル)を添加し、混合物を撹拌し、140〜145℃に加熱した。ガス注入管を通してガスを反応物表面下にバブリングさせることによってエチレンオキシドの仕込みを開始し、エチレンオキシドの遅い還流が冷却器中で観察されるように添加の速度を維持した。生じたフロオロアルキルエトキシレート生成物は、1分子当たり平均して約7個のエチレンオキシド単位を有した。試験方法2によって表面張力測定を行った。試験方法4に従って臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。結果を表2に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表2は、両方ともパーフルオロアルキル基および炭化水素基が存在する、実施例5および6が、比較例B(パーフルオロアルキルエチルエトキシレート)と比較して類似の臨界ミセル濃度(CMC)を有したことを示す。即ち、本発明の界面活性剤は、完全フッ素化界面活性剤と比較したときでさえ、非常に低い濃度で表面張力を低下させるのに有効である。
【0066】
実施例6の混成界面活性剤を使用して水と炭化水素溶媒(例えば、シクロヘキサン)との間の界面張力および動的界面張力(即ち、時間の関数としての界面張力)を低下させた。この現象は、コーティングの改善、乳濁液の生成に、および消火用途に有用である。実施例6および比較例Bの界面張力測定(mN/m)は、脱イオン水中0.01%濃度で実施した。界面張力は、試験方法3を使用してシクロヘキサンとの界面で測定した。結果を表3に記載する。
【0067】
【表5】

【0068】
表3は、実施例6が比較例Bよりもシクロヘキサンと低い界面張力を一貫して有したことを示す。水とハロゲン化液体との間の界面での界面張力は、実施例6を使用して低下した。これは、例えばテトラフルオロエチレンの重合を行う目的で水性媒体中でハロゲン化材料の乳濁液を生成するのに特に有用である。
【0069】
本件特許出願人(Wilmington,DE)から入手可能な、CF3CHFCHFCF2CF3との界面で、脱イオン水中0.01%濃度で対の末端を有する混成界面活性剤実施例6の界面張力(mN/m)を測定した。試験方法3に従って界面張力を測定した。結果を表4に記載する。
【0070】
【表6】

【0071】
表4は、フルオロカーボン/炭化水素混成(実施例6)が完全フッ素化比較例Bよりも一貫して良好に界面張力を低下させたことを示す。
【0072】
試験方法5によって、脱イオン水で0.1%活性成分での混成界面活性剤実施例5および6並びに比較例Bの起泡性を測定した。結果を表5に記載する。
【0073】
【表7】

【0074】
表5のデータは、実施例6のフルオロカーボン/炭化水素混成エトキシレートが、例えば、発泡が望ましくない特質であるコーティング用途においてそれを有用なものにして、完全フッ素化比較例Bより低い起泡性を有したことを示す。実施例5のフルオロカーボン/炭化水素混成エトキシレートは、例えば、それを消火用途において泡「ブランケット」を発生させるのに有用なものにして、完全フッ素化比較例Bより大きい起泡性を有した。
【0075】
Rohm & Haas(Philadelphia,PA)から入手可能な、RHOPLEX 3829、配合物N−29−1、床磨き剤に、1.0%の活性成分の量で、比較例Bおよび実施例6を添加し、試験方法1に従って湿潤およびレベリングを試験した。結果を表6に記載する。
【0076】
【表8】

【0077】
50%のフッ素含有率の比較例Bを含有する、実施例6は、ブランクと比較してレベリングにおいて秀でており、完全フッ素化された比較例Bと比較して類似のレベリング性能を有した。このように、フルオロアルキルおよび炭化水素基を含有する本発明の界面活性剤は意外にも、完全フッ素化界面活性剤と比較したときでさえ、非常に低い濃度で優れたレベリングを示す。
【0078】
比較例Cおよび実施例7
アルコールエトキシレートおよびフルオロアルコールエトキシレートを使用する、クエン酸のエステル化を行って式6の混合エステルを生成した。攪拌機、Dean−Starkトラップ付き冷却器、およびサーモスタットコントロラ−付き加熱マントルを備えた、2つの別個の500mLの丸底4つ口フラスコに、表7に記載する試薬を仕込んだ。
【0079】
【表9】

【0080】
乾燥窒素下に反応器を穏やかな還流に加熱した。沸騰が約111℃〜112℃で始まった。沸騰温度は、次の2時間にわたって115℃〜166℃まで徐々に上昇し、少量の水がDean−Starkトラップに集まり始めた。約3時間後に、約1mLの水がいずれの場合にも捕捉された。温度を次に沸点より下に下げ、0.3gのp−トルエンスルホン酸一水和物を各反応器に添加した。加熱を再開し、内容物を一夜還流させた。
【0081】
トラップを次に検査した;比較例Cは約1.4mLの水を有し、実施例7は約1.9mLの水を有し、それぞれが約20mLのトルエンを有した。還流をもう8時間続け、その時間の間にトラップをもう4回排水させた。次に、トルエンを留去し、各容器から約65mLの追加のトルエンを得た。容器を次に一夜放冷した。
【0082】
かき混ぜながら各容器に室温で炭酸水素ナトリウム(25mLの水中0.34gの溶液10mL)を添加した。発泡は少なかった。生成物の両方を別個の500mLの1口丸底フラスコに添加し、ロータリーエバポレーターでトルエンを生成物からストリッピングした。各フラスコへの15gの2−プロパノールの添加によって発泡を制御した。50%水/2−プロパノールの追加のアリコートを添加し、トルエンの臭いが残っていなくなるまでトルエンのストリッピングを続けた。得られた生成物は次の通りであった:
比較例C:HOC(CH2CO2X)2CO2X、 X=(CH2CH2O)7CH2CH2ff平均=C715
実施例7(混合エステル):
12.5% HOC(CH2CO2X)2CO2X、
12.5% HOC(CH2CO2Y)2CO2
25% HOC(CH2CO2X)(CH2CO2Y)CO2
25% HOC(CH2CO2X)(CH2CO2Y)CO2
ここで、
X=(CH2CH2O)7CH22fおよび
Y=(CH2CH2O)10(CH215CH3(Rf平均=C715
【0083】
試験方法2に従って、比較例Cおよび実施例7の表面張力を測定した。結果を表8に記載する。
【0084】
【表10】

【0085】
実施例7の混成界面活性剤は、2倍ほど多くのフッ素化エトキシレートで調製された、比較例Cと比較して同等の性能を有した。このように実施例7は、フッ素効率の増大を付与して、50%のフッ素含有率で匹敵する性能を実証した。
【0086】
実施例8
機械攪拌機アセンブリ、熱電対、および窒素ラインに連結された還流冷却器を備えた250mLの3つ口フラスコに、RfCH2CH2(CH2CH2O)7H、[Rf平均=C715、150.0g、205mmol]を仕込んだ後、粉状の水酸化カリウム[KOH、90%、18.4g、329mmol]を仕込んだ。苛性の添加は僅かな発熱および生成懸濁液の暗色化をもたらした。混合物を10分間撹拌し、0℃に冷却し、エピクロロヒドリン[CH2OCHCH2Cl、27.5mL、350mmol]を滴々添加した。完全に添加すると、反応混合物を周囲温度に暖まるに任せ、更に55℃で12時間撹拌した。ジエチルエーテル(200mL)を反応混合物に添加し、懸濁液をろ過した。固形分をジエチルエーテル(50mL)で洗浄した。減圧(200mbar)下に最初は周囲温度で、最後には70℃で集めたろ液を十分に乾燥させた。式7のパーフルオロアルキルプロピレンオキシド生成物は、粘稠な琥珀色オイルであった(RfCH2CH2Q(CH2CH2O)nCH2CHOCH2、Rf平均=C715、Q=O、n平均=8、178g、98%)。1H NMR(CDCl3)δ2.31(m,2H,CF2CH2)、2.49(m,1H,CH2CH(O)CH2)、2.67(m,1H,CH2CH(O)CH2)、3.05(m,1H,CH2CH(O)CH2)、3.32(m,1H,CH2CH(O)CH2)、3.05(m,1H,CH2CH(O)CH2)、3.40−3.65(m,32H,OCH2)、3.68(m,3H,CH2CH(O)CH2およびCF2CH2CH2O)。
【0087】
機械攪拌機アセンブリ、熱電対、および窒素ラインに連結された還流冷却器を備えた250mLの3つ口フラスコに、上記の通り調製したパーフルオロアルキルプロピレンオキシド[RfCH2CH2Q(CH2CH2O)nCH2CHOCH2、138.5g、176mmol]およびDow Q2−5211[HO(CH2CH2O)mCH2CH2CH2Si(CH33O[Si(CH3)]xOSi(CH33、109g、176mmol]を仕込んだ。三フッ化ホウ素エーテラート[BF3(C252O、2.5g、18mmol]を添加し、反応混合物を50℃で5時間撹拌した。Amberlyst A−21(18mmol)およびメタノール(CH3OH、50mL)を添加した。30分の撹拌後、混合物をろ過した。減圧(200mbar)下に全揮発分を除去した。ヘプタメチルトリシロキサン付加生成物は、式7、
fCH2CH2Q(CH2CH2O)nCH2CHOHCH2O(CH2CH2O)mCH2CH2CH22の琥珀色オイルであった。
1H NMR(CDCl3)δ−0.08(s,3H,SiCH3)、−0.01(s,18H,SiCH3)、0.35(m,2H,SiCH2)、0.85(m,1H)、1.53(m,3H,SiCH2CH2)、2.33(m,2H,SiCH2CH2CH2)、3.32(m,2H,SiC39OCH2)、3.40−3.65(m,32H,OCH2)、3.68(m,3H,CH2CH(O)CH2およびCF2CH2CH2O)。
【0088】
試験方法2を使用して実施例8および比較例Bの表面張力を測定した。結果を表9に記載する。
【0089】
【表11】

【0090】
表9のデータは、比較例Bより50%少ないフッ素を含有する実施例8が、約0.10%以上の濃度で比較例Bに匹敵する性能を有することを示す。
【0091】
実施例9
熱電対およびマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコで、POCl3(1.3g、8.6ミリモル)を25mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解させた。氷浴を使用して溶液を0℃に冷却した。15mLの乾燥テトラヒドロフラン中にフッ素化アルコール、C613CH2CH2OH(3.1g、8.6ミリモル)およびトリエチルアミン(2.1g、21ミリモル)を含有する別個の溶液を反応器にゆっくり添加した。反応を0℃で1〜2時間進行させた。次に、15mLの乾燥テトラヒドロフラン中の炭化水素アルコール、1−オクタノール(1.1g、8.6ミリモル)の溶液を反応マスにゆっくり添加した。反応物を周囲温度で一夜撹拌した。次に、固形分をろ過し、ロトバプ(rotovap)を使用して溶媒を蒸発させた。生じたオイルを10mLのテトラヒドロフランに希釈し、1mLの水に溶解させた0.34g(8.6mmol)のNaOHを反応マスに添加した。混合物を室温で一夜撹拌した。次に、ロトバプを使用して溶媒を蒸発させ、生じた固形分を50mLのクロロホルムで洗浄し、ろ過した。真空オーブン内で120℃および150mmHg(20kPa)で最終生成物を乾燥させた。生成物は、式1(式中、RfはC613であり、AはCH2CH2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O-+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、RはC817であり、bは1である)の化合物であった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表11に記載する。
【0092】
実施例10〜16
表10に記載するような量で異なる炭化水素アルコールを使用して、実施例9の方法を用いた。生成物は、式1(式中、RfはC613であり、AはCH2CH2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O-+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1であり、そして実施例10についてはRはC817であり、実施例11についてはRはC49であり、実施例12についてはRはC511であり、実施例13についてはRはC715であり、実施例14についてはRはC919であり、実施例15についてはRはC1021であり、実施例16についてはRは(CH22613である)の化合物であった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表11に記載する。
【0093】
実施例17〜20
実施例9の方法を以下を変更して用いた。実施例17においては、フッ素化アルコールおよび1−オクタノールを一緒に混合し、一工程で添加した。実施例18においては、1−オクタノールを先ず添加し、フッ素化アルコールを第2工程で添加した。実施例19および20においては、表10に示されるような、異なる量のフッ素化アルコールおよびi−オクタノールを用いた。得られた生成物は、実施例9と同じものであった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表11に記載する。
【0094】
比較例D
2倍量のフッ素化アルコールを反応させ、炭化水素アルコールを全く使用しなかったことを除いて、実施例9の方法を用いた。得られた生成物は、式1に類似のものあったが、Rの代わりに第2のRf基を含有し、その結果、各RfはC613であり、AはCH2CH2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O-+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1である。
【0095】
比較例E
2倍量の炭化水素アルコール、1−オクタノールを反応させ、フッ素化アルコールを全く使用しなかったことを除いて、実施例9の方法を用いた。得られた生成物は、式1に類似のものあったが、Rfの代わりに第2のR基を含有し、その結果、各RはC817であり、AはCH2CH2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O-+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1である。
【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
表11は、実施例9〜20並びに比較例DおよびEについての表面張力結果を示す。平均結果および標準偏差は、界面活性剤の3つの異なる溶液の個々の試験から得られた。表11に明記されるような各界面活性剤のフッ素含有率は、乾燥した界面活性剤についてであり、試験方法6によって測定した。概して、実施例9〜20は全て、溶液中0.5、0.1および0.05重量%の濃度で、より低いフッ素含有率を有するのに、比較例Dに類似のまたはそれより秀でた性能を実証した。実施例の幾つかは、溶液中0.01重量%の濃度で秀でた性能を実証した。実施例9、16、17、18および19の性能はそれそれ、水の表面張力を20ダイン/cm(mN/m)より下に低下させるために溶液中にたったの0.05重量%を必要とした。
【0099】
実施例21〜27
フッ素化アルコールが表12に示される量のC49CH2CH2OHであり、炭化水素アルコールが表12に示される量で示される通りであったことを除いて、実施例9の方法を用いた。生成物は、式1(式中、RfはC49であり、AはCH2CH2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O-+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1であり、そして実施例21についてはRはC49であり、実施例22についてはRはC511であり、実施例23についてはRはC613であり、実施例24についてはRはC715であり、実施例25についてはRはC817であり、実施例26についてはRはC919であり、実施例27についてはRはC1021である)の化合物であった。試験方法2を使用して表面張力を測定した。結果を表13に記載する。
【0100】
比較例F
2倍量のフッ素化アルコールを反応させ、炭化水素アルコールを全く使用しなかったことを除いて、実施例9の方法を用いた。得られた生成物は、式1に類似のものあったが、Rの代わりに第2のRf基を含有し、その結果、各RfはC49であり、AはCH2CH2であり(sおよびeはそれぞれ0であり、mは2であり)、QはOP(O)(O-+)(O)であり、MはNaであり、kは0であり、bは1である。
【0101】
【表14】

【0102】
【表15】

【0103】
表13は、実施例21〜27の混成ホスフェートについての表面張力結果を示す。混成界面活性剤を非混成比較例Fに対して比較した。各界面活性剤のフッ素含有率は、表13に明記されるように合成のために使用された試薬の量から計算した。概して、実施例21〜27は、より低いフッ素含有率を有するのに、比較例Fに類似の性能を実証した。実施例25〜27は概して、秀でた性能を実証した。より短い炭化水素基Rをそれぞれ含有する、実施例21〜24は、より長鎖の炭化水素基Rをそれぞれ含有する、実施例25〜27ほど有効ではなく、フッ素が減少するにつれて、より長い炭化水素テールが望ましいことを示唆した。フッ素効率の最も顕著な向上は、実施例26および27について観察された。これらの2つの界面活性剤は、比較例Fよりはるかに少ないフッ素を使用しながら水の表面張力を20ダイン/cm(mN/m)より下に低下させることができた。
【0104】
塗料での試験
実施例15、18、および比較例Dの5重量%水性分散液を調製した。表14に記載される量でこれらのそれぞれを100gのVISTA 6400塗料に添加して70ppm(マイクログラム/g)のフッ素を付与した。0.28gの量でこれらのそれぞれを100gのVISTA 6400塗料に添加して表15に記載されるようなフッ素含有率を付与した。この塗料をポリエステル試験パネルに塗布し、試験方法7に従ってブロッキングを試験した。得られたデータを表14および15に示す。
【0105】
【表16】

【0106】
表14は、同じフッ素含有率で実施例15および18に対して比較例Dのブロッキング性能を比較する。試験は、試験サンプルを0〜10で評価する試験方法7に従って実施した。より高いブロッキング評点は、より良好なブロッキング性能を表す。実施例15および18の両方は、比較例Dより秀でた性能を実証した。これらの2つの実施例はまた、同じレベルのフッ素濃度でのそれらのより高いブロッキング評点によって実証されるようにフッ素効率を向上させる。
【0107】
【表17】

【0108】
表15は、同じ重量含有率で実施例15および18に対して比較例Dのブロッキング性能を比較する。試験は、試験サンプルを0〜10で評価する試験方法7に従って実施した。より高いブロッキング評点は、より良好なブロッキング性能を表す。実施例15および18の両方は、比較例Dよりかなり低いフッ素含有率で秀でた性能を実証した。これらの結果は、実施例の混成性によって付与されるフッ素効率の向上と一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
(Rf−A)a−Q−([B]k−R)b 式1
[式中、
aおよびbは、それぞれ独立して1又は2であり;
fは、任意に少なくとも1個の酸素で中断されている、2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基であり;
Rは、C1〜C20直鎖、分岐鎖若しくは環式のアルキル、又はC6〜C10アリールであり;
Bは−(CH2CHR1O)x−であり、
kは0又は1であり、xは1〜約20であり、
Aは、−(CH2m[(CHR1CH2O)]s−[(CH2m(CH)tCHOH(CH2me−であり、
(式中、
各mは、独立して0〜3であり、sは0〜約30であり、tは0又は1であり、eは0又は1であり、
1はH又はCH3である)
Qは、−OP(O)(O-+)(O)−、
−O−、
−S−(CH2m−C(O)−O−、
−SO2−O−、
−CH2CH2O−C(O)CH2C(OH)(V)CH2C(O)O−、
−(CH2CH2O)xCH2CH(OH)−(CH2CH2O)x−(CH2m−Si[OSi(R232−、
−SO2NR2−、若しくは
−(CH2CH2O)zC(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−(式中、zは1〜約15である)、又は
sが正の整数であるとき、結合であり、
Vは−C(O)OR3であり、R3は、H、CH3またはRfであり;
2はC1〜C4アルキルであり、
+は、1族金属であるか又はアンモニウム(NHx2y+カチオンであり(式中、x+y=4であり、R2はC1〜C4アルキルである)、
但し、Qが−OP(O)(O-+)(O)−であるとき又はQが−(CH2CH2O)z−C(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCH2CH2z−であるとき、s又はeの少なくとも1つは正の整数である]
の界面活性剤。
【請求項2】
次式
f−(CH2n−O−P(O)(OR)(O-+
(式中、
f、n、R1、およびMは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
次式
fCH2CH(OH)CH2O(CHR1CH2O)x
(式中、
f、R1、xおよびRは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項4】
次式
f(CH22S(CH22C(O)O(CHR1CH2O)x
(式中、
f、R1、xおよびRは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項5】
次式
f(CH22S(O2)O(CHR1CH2O)x
(式中、
f、R1、xおよびRは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項6】
次式
f(CH22O(CHR1CH2O)xC(O)CH2C(OH)(C(O)OH)CH2C(O)O(CHR1CH2O)x
(式中、
f、R1、xおよびRは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項7】
次式
f(CH22O(CHR1CH2O)xCH2CH(OH)[(CH23O]x(CH22Si(CH3)[OSi(CH332
(式中、
f、R1、およびxは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項8】
次式
f(CH22S(O2)N(R3)(CHR1CH2O)x
(式中、
f、R1、R3、xおよびRは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項9】
次式
fCH2CH2(OCHR1CH2O)xC(O)CH(SO3-+)CH2C(O)(OCHR1CH2yOR
(式中、
f、R1、x、M、yおよびRは、請求項1で定義された通りである)
を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項10】
媒体を請求項1に記載の式1の組成物と接触させることを含む、媒体の表面張力を低下させる方法。
【請求項11】
基材に堆積する前に、請求項1に記載の式1の化合物をコーティングベースに添加する工程を含む、コーティングされる基材に耐ブロッキング性を付与する方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法に従って処理された基材。

【公表番号】特表2010−535791(P2010−535791A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520240(P2010−520240)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072082
【国際公開番号】WO2009/020906
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】