説明

混合水栓

【課題】筒形の接続部材にて内ハウジング側通水開口と外ハウジング側通水開口とを接続して成る2重ハウジング構造の混合水栓において、通水用開口の存在している部分で万一内ハウジングが破断することがあったとしても、内ハウジングの一部が外ハウジングから軸方向に抜けるのを確実に防止するようにする。
【解決手段】金属製の外ハウジング30と樹脂製の内ハウジング32とにそれぞれ形成した混合水の流出用開口64,74と60,70とを接続部材248にて水密に接続するとともに、内ハウジング32には、流出用開口60,70の側から接続部材248の軸端の開口を通じて接続部材248の内部に突出し、接続部材248の内面に対して内ハウジング32の軸方向に対向する、内ハウジング32の抜止用の掛止突起296を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は混合水栓に関し、詳しくは筒形の外ハウジングと内ハウジングとの2重ハウジング構造をなして、それらの間に流路を形成する混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、湯水混合水栓は水栓の本体ボデーをなすハウジングを金属の鋳物にて一体に構成し、その内壁面に水側,湯側の1次側流路や2次側の混合水の流路等を形成する流路壁を一体に設け、そしてその内部に、湯水の混合比率を変化させて混合水の温度調節を行う混合弁ユニットや、流路切替えをなす切替弁ユニット等を納めた構造のものが一般的であった。
【0003】
しかしながらこの湯水混合水栓の場合、金属製のハウジングを製造する際に複雑な構造の流路壁を内壁面に一体に設けなければならず、製造の工程数が多くなり、また技術的にも多くの困難を伴うといった問題がある。
【0004】
このような事情の下で、水栓のハウジングを筒形の外ハウジングと内ハウジングとの2重ハウジング構造となして、それらハウジング間に1次側流路としての水側流路,湯側流路を形成し、更に2次側流路として混合水の流出流路をシール部材の配置パターンによって形成するようになした混合水栓が下記特許文献1に提案されている。
【0005】
この特許文献1に開示のものでは、内ハウジングの筒壁外面に複数のシール保持部を所定パターンで突出形成して、そこにOリング等の弾性シール部材を装着して保持させ、そしてそれらシール部材を、内ハウジングの筒壁の外面と外ハウジングの筒壁の内面とでハウジング径方向に挟み込むことで、シール部材の配置パターンにて画定される流路を内ハウジングと外ハウジングとの間に形成するようにしている。
【0006】
しかしながらこの場合、内ハウジングが外ハウジングとともにシール部材をそれらの径方向に挟み込んでシールを行うことから、内ハウジングの形状、特に太さに大きな制約が生じるとともに、突出形状のシール保持部を部分的に厚肉の偏肉部として形成しておかなければならないといった問題がある。
【0007】
また内ハウジングの筒壁の外面と外ハウジングの筒壁の内面とでシール部材を径方向に挟む関係上、シール部材が必然的に長く、大きくなってしまい、シール部材をハウジングの径方向に弾性圧縮変形させる状態に外ハウジングと内ハウジングとを組み付ける際の組付性が悪く、更に内ハウジングを外ハウジングに軸方向に挿入して組付けを行うに際してシール部材を噛み込んでしまう恐れがある。
また場合によって、シール部材の噛込みを防ぐためにシール部材を冷凍した上で組み付けることが必要であるなどの問題がある。
【0008】
そこで内ハウジングの筒壁の外面と外ハウジングの筒壁の内面との間の空間を、それらの間に挟み込んだシール部材により1次側流路としての水側流路及び湯側流路、更に2次側流路としての混合水の流出流路等の複数の流路に区画するといったことをせずに、内ハウジングと外ハウジングとの間の空間を単一の流路とするとともに、外ハウジングには、その筒壁を貫通する外ハウジング側通水開口を設ける一方、内ハウジングには、外ハウジング側通水開口に対して径方向に対向する位置に、内ハウジングの筒壁を貫通する内ハウジング側通水開口を設けて、それら外ハウジング側通水開口と内ハウジング側通水開口とを接続部材にて水密に接続して、その接続部材の内部に、上記外ハウジングの筒壁と内ハウジングの筒壁との間の流路とは隔絶された流路を形成するといったことが考えられる。
【0009】
このようにすれば、接続部材を、外ハウジングに対する内ハウジングの固定部材を兼ねて構成することができるとともに、外ハウジングの筒壁と内ハウジングの筒壁との間に複数の流路を区画形成するためのシール部材を設けたりしなくても、所要の複数の流路を形成することが可能となる。
【0010】
但し外ハウジングと内ハウジングとの固定を接続部材だけで行うようにすると、外ハウジングと内ハウジングとの固定個所が接続部材を配置した個所だけとなってしまい、内ハウジングを樹脂等の金属に対して強度的に弱い材料で形成した場合、水圧の作用による内ハウジングの万一の破断の際に、内ハウジング及びそれに付属する部品が勢いよく飛び出すのを防ぐために、内ハウジングを外ハウジングに対し抜止めを図っておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2695364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、筒形の接続部材にて内ハウジング側通水開口と外ハウジング側通水開口とを接続するとともに、内ハウジングをその接続部材にて外ハウジングに固定する場合において、水圧等の作用により通水用開口の存在している部分で万一内ハウジングが破断することがあったとしても、内ハウジングが外ハウジングから軸方向に抜け、離脱してしまうのを確実に防止することのできる2重ハウジング構造の混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、筒形の外ハウジングと内ハウジングとの2重ハウジング構造をなし、該外ハウジングと内ハウジングとの間に流路を形成する混合水栓において、前記外ハウジングには、該外ハウジングの筒壁を貫通する外ハウジング側通水開口を設ける一方、前記内ハウジングには、該外ハウジング側通水開口に対して径方向に対向する位置に、該内ハウジングの筒壁を貫通する内ハウジング側通水開口を設けて、それら外ハウジング側通水開口と内ハウジング側通水開口とを接続部材にて水密に接続するとともに、該接続部材にて該内ハウジングを該外ハウジングに固定し、該内ハウジングには、前記内ハウジング側通水開口の側から前記接続部材の軸端の開口を通じて該接続部材の内部に突出し、該接続部材の内面に対して前記内ハウジングの軸方向に対向する、該内ハウジングの抜止用の掛止突起を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記掛止突起が、前記内ハウジング側通水開口を横切る状態に設けたリブ状のブリッジ部に設けてあることを特徴とする。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記外ハウジング側通水開口及び内ハウジング側通水開口が、前記外ハウジング及び内ハウジングのそれぞれの軸方向中間部に設けられた、混合水を流出させる流出用開口であることを特徴とする。
【0016】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記外ハウジングの軸方向の端部側には、前記外ハウジング側通水開口としての水又は湯の流入用開口及び該流入用開口から外部に突出する筒形の流入口部が設けてあり、該流入口部の内部に、前記内ハウジングの抜止用の掛止突起を有する抜止部材が挿入してある一方、該内ハウジングには、筒壁の外面から該掛止突起の側に突出し、該掛止突起に対して内ハウジングの抜け方向に対向し該掛止突起を掛止させる被掛止部が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、内ハウジングに、内ハウジング側通水開口の側から接続部材の軸端の開口を通じてその内部に突出し、接続部材の内面に対して内ハウジングの軸方向に対向する、内ハウジングの抜止用の掛止突起を設けたものである。
【0018】
本発明によれば、内ハウジングを金属に対して強度的に弱い樹脂等で形成した場合において、万一内ハウジングが通水用開口の部分で軸方向に破断を生じることがあっても、接続部材に対する掛止突起の掛止作用で破断した内ハウジングが外ハウジングから軸方向に抜け、離脱するといったことを防止することができる。
【0019】
この場合において上記の掛止突起を、内ハウジング側通水開口を横切る状態に設けたリブ状のブリッジ部に設けておくことができる(請求項2)。
【0020】
本発明では、外ハウジング及び内ハウジングのそれぞれの軸方向中間部に設けられた、混合水を流出させる流出用開口を上記の外ハウジング側通水開口及び内ハウジング側通水開口として、そこに上記の掛止突起を含む内ハウジングの抜止構造を設けておくことができる(請求項3)。
【0021】
一方請求項4は、外ハウジングの軸方向の端部側に、外ハウジング側通水開口としての水又は湯の流入用開口及びその流入用開口から外部に突出する筒形の流入口部を設けて、その流入口部の内部に、内ハウジングの抜止用の掛止突起を有する抜止部材を挿入し、また一方内ハウジングには筒壁の外面から突出して掛止突起に対し内ハウジングの抜け方向に対向し、掛止突起を掛止させる被掛止部を設けたもので、この請求項4によれば、内ハウジングの軸方向の抜けをより一層確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の混合水栓の斜視図である。
【図2】図1の混合水栓の一部を水平方向で切り欠いて示した部分断面図である。
【図3】図1の混合水栓の垂直方向の断面図である。
【図4】図3の混合弁ユニットを周辺部とともに拡大して示した図である。
【図5】図4の混合弁ユニットの一部を分解して示した図である。
【図6】図4の混合弁ユニットと温調ハンドルとの接続部分を分解して示した図である。
【図7】図3の切替弁ユニットを周辺部とともに拡大して示した図である。
【図8】同実施形態における内ハウジングの図である。
【図9】同実施形態における外ハウジングと内ハウジングとを分解して示した断面図である。
【図10】同実施形態の外ハウジング側の湯流入用開口と内ハンジングの湯流入用開口との接続部分の分解斜視図である。
【図11】同実施形態における外ハウジング側の湯流入用開口と内ハウジングの湯流入用開口との接続部分の断面図である。
【図12】同実施形態におけるスペーサ部材の図である。
【図13】同実施形態における接続部材の図である。
【図14】同実施形態における固定クリップの図である。
【図15】同実施形態の混合水栓の組付手順を示した図である。
【図16】同実施形態における内ハウジングの要部を拡大して示した斜視図である。
【図17】同実施形態の混合水栓の組付状態の要部を拡大して示した断面図である。
【図18】同実施形態の混合水栓の組付状体における図17とは異なる要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の壁付きの混合水栓で、図中左右方向に長手形状をなす水栓本体12を有している。
水栓本体12の下面からは、先端に吐水口14を備えた略L字状をなす吐水管16が延び出しており、また背面からはシャワー側の流出口部76が後方に突出して、そこにシャワーエルボ20が接続されている。
このシャワーエルボ20には、図示を省略するシャワーヘッドが可撓性のシャワーホースを介して接続される。
【0024】
水栓本体12の長手方向の一端側(図中左端側)には、温調ハンドル(温度調節ハンドル)22が設けられており、また他端側(図中右端側)には、吐水管16の側とシャワー側とで流路の切替えを行い、且つ吐水の流量調節を行う切替ハンドル24が設けられている。
ここで切替ハンドル24は吐水から止水若しくはその逆への切替えも行う。
【0025】
水栓本体12からはまた、給水管を兼ねた水側のクランク脚26、及び給湯管を兼ねた湯側のクランク脚28がそれぞれ後方に延び出している。
本実施形態の混合水10は、これら一対のクランク脚26,28によって後方の壁に取り付けられている。
【0026】
図2に示しているように、水栓本体12は横断面の内面形状が円形をなす略円筒状の金属製の外ハウジング30を本体ボデーとして有しており、またその内側において、同じく横断面の内面形状が円形をなす樹脂製の略円筒状の内ハウジング32を有している。
即ちこの実施形態の水栓10は、水栓本体12が2重ハウジング構造をなしている。
ここで外ハウジング30の内面は、図9(A)に示すように基本的に凹凸を有しない平滑な面とされていて、そこには複数の流路を区画形成するための流路壁は突出形成されていない。
【0027】
またこの実施形態において、外ハウジング30と内ハウジング32との間の空間は、軸方向の両端部で弾性を有する環状のシール部材34でシールされているが、軸方向の中間部ではシール部材によるシールはなされておらず、外ハウジング30と内ハウジング32との間に形成される空間は、基本的に軸方向の一端から他端にかけて単一の空間を形成している。
この実施形態では、これら外ハウジング30と内ハウジング32との間に形成される空間はその全体が単一の流路、ここでは1次側の水側流路36を形成している。
【0028】
外ハウジング30の背面(図2中上面)且つ図中右端側には、水を外ハウジング30の内部、つまり外ハウジング30と内ハウジング32との間の水側流路36に流入させる水流入用開口(外ハウジング側通水開口)38が設けられており、そしてこの水流入用開口38から、外ハウジング30に一体に構成された筒形(円筒形)の水流入口部40が後方(図中上方)に突出していて、この水流入口部40に対し、給水管を兼ねた水側のクランク脚26が締結ナット46にてねじ結合されている。
【0029】
クランク脚26を通じて供給された水は、この水流入口部40,水流入用開口38を通じて上記の水側流路36へと流入する。
尚、クランク脚26と水流入口部40との接続部の内部には、クランク脚26から水流入用開口38に向けての水の流れのみを許容し、逆方向の流れを阻止する、弁体42を備えた一方向性の逆止弁44が設けられている。
【0030】
一方内ハウジング32の図中左端側の前面(図中下面)には、水側流路36に流入した水を内ハウジング32内に流入させる、内ハウジング32側の水流入用開口(内ハウジング側通水開口)48が筒壁を貫通して設けられている。
クランク脚26を通じて供給された水は、外ハウジング30の内側の水側流路36に流入した後、この内ハウジング32側の水流入用開口48を通じて内ハウジング32内に流入する。
【0031】
図中左端側において、内ハウジング32には背面側(図中上面側)に、湯流入用開口(内ハウジング側通水開口)50が筒壁を貫通して設けられている。
またこれに対し径方向に対向する位置において、外ハウジング30には湯流入用開口(外ハウジング側通水開口)52が設けられて、それらが後に詳述する接続部材54にて水密に接続されている。
【0032】
この外ハウジング30側の湯流入用開口52からは、円筒形状をなす湯流入口部55が外ハウジング30から一体に突出しており、そしてその湯流入口部55に対し、湯側のクランク脚28が締結ナット46にてねじ結合されている。
この湯流入口部55の側においても、これとクランク脚28との接続部の内部に、弁体42を有する逆止弁44が設けられている。
この湯側の逆止弁44は、クランク脚28から湯流入用開口52に向けての湯の流れのみを許容し、逆方向の流れを阻止する。
【0033】
而してクランク脚28から外ハウジング30の湯流入用開口52に流入した湯は、接続部材54による連絡によって、そのまま外ハウジング30と内ハウジング32との間の水側流路36を横切って、内ハウジング32側の湯流入用開口50へと到り、更にこれを通過して内ハウジング32内部へと流入する。
【0034】
そして内ハウジング32の内部に流入した水と湯とは、図3に示しているように内ハウジング32の内部に軸方向に挿入されて組み付けられた混合弁ユニット56により、温調ハンドル22の操作により設定された比率で混合されて設定温度の混合水とされ、続いて同じく内ハウジング32の内部に軸方向に挿入されて組み付けられた切替弁ユニット58による流路切替えによって、図1の吐水管16側又はシャワー側へと案内されて、そこから外部に流出せしめられる。
【0035】
詳しくは、図3及び図7に示しているように内ハウジング32の軸方向中間部の下面には、内ハウジング32内の混合水を流出させるための流出用開口(内ハウジング側通水開口)60と、図8に示すように筒壁の外面から突出して流出用開口60を取り囲む環状壁から成る連結口部62が設けられている。
【0036】
一方外ハウジング30側には、流出用開口60及び連結口部62に対し径方向に対向する位置に、混合水を外部に流出させる流出用開口(外ハウジング側通水開口)64が設けられおり、そこに流出口部66を構成する筒形の接続部材248が、下部を外ハウジング30から下向きに突出させる状態に差し込まれ、外ハウジング30に取り付けられている。
そしてこの外ハウジング30とは別体をなす筒形の接続部材248によって、内ハウジング32側の流出用開口60と、外ハウジング30側の流出用開口64とが水密に接続されている。
尚、接続部材248と内ハウジング32側の流出用開口60及び外ハウジング30側の流出用開口64とは、接続部材248の軸心周りに配置されたOリングから成る環状のシール部材を介して水密シール状態に結合されている。
流出口部66は、外ハウジング30から下向きに突出しており、そしてその突出した部分に対して、図1に示す吐水管16が締結ナット68により回転可能にねじ結合されている。
【0037】
内ハウジング32にはまた、軸方向のほぼ同じ位置において、図2に示しているようにシャワー側の混合水の流出用開口(内ハウジング側通水開口)70が、筒壁を貫通して設けられており、更に内ハウジング32には、図2及び図7に示すように筒壁の外面から環状に突出して流出用開口70を取り囲む環状壁から成る連結口部72が設けられている。
【0038】
更にこれら流出用開口70及び連結口部72に対し径方向に対向する位置において、外ハウジング30には対応する流出用開口(外ハウジング側通水開口)74が設けられており、そして内ハウジング32側の流出用開口70と、外ハウジング30側の流出用開口74とが、流出口部76を構成する、外ハウジング30とは別体の筒形の接続部材250にて水密に接続されている。
ここで接続部材250は、その後部(図2中上部)を外ハウジング30から突出させる状態に、流出用開口74に差し込まれ、外ハウジング30にねじ結合にて取り付けられている。
尚流出用開口64に差し込まれ、外ハウジング30にねじ結合されて取り付けられている点では図3及び図7の上記の流出口部66を構成する接続部材248も同様である。
【0039】
接続部材250は、流出用開口74に対してOリングから成る弾性を有する環状のシール部材を介し水密に内嵌状態に嵌合(結合)しており、また先端部が流出用開口70に対し、具体的にはこれを取り囲む連結口部72に対し、Oリングから成る弾性を有する環状のシール部材を介し水密に内嵌状態に嵌合(結合)している。
このシャワー側の接続部材250には、シャワーエルボ20が嵌入口部80をシール部材を介して水密に嵌入させる状態にねじ結合されている。
【0040】
この実施形態において、上記吐水管16側の外ハウジング30の流出用開口64及びシャワー側の流出用開口74は、何れも外観上目立ち難い水栓本体12の下面と背面に位置していることから、ここでは接続部材248及び250として、一部が外部に突出して流出口部66,76を構成するものが用いられている。
【0041】
図3,図4の混合弁ユニット56から図7の切替弁ユニット58に到った混合水は、切替弁ユニット58の流路切替作用により、内ハウジング32側の流出用開口60から流出口部66内へと流出して流出口部66の内部流路を流通した後、吐水口16から外部に流出するか、又は同じく内ハウジング32側の流出開口70から流出口部76内へと到って、その内部流路を通じた後シャワーエルボ20を経てシャワーヘッドへと送られ、そこから外部へと流出(吐水)せしめられる。
【0042】
内ハウジング32に設けた上記の湯流入用開口50は、図8及び図10に示しているように平面展開形状が周方向に長い矩形状をなしている。即ち全体として周方向に長い大きな開口をなしており、その周方向長は、後述する円筒形状の接続部材54の内径よりも大きなものとされている。
【0043】
但し、湯流入用開口50の位置で接続部材54の先端を内ハウジング32の筒壁の外面に直接当てるようにすると、湯流入用開口50の有効な流路面積が、接続部材54の先端で囲まれた内側の部分の面積だけとなり、必然的に湯流入用開口50の有効面積が小さいものとなって、十分な流量を確保することが難しい。
そこでこの実施形態では、湯流入用開口50を大きな開口となした上で、接続部材54を次のようにして湯流入用開口50に接続するようになしている。
【0044】
即ちこの実施形態では、内ハウジング32の筒壁の外面から環状(平面視矩形状)に突出して、湯流入用開口50を取り囲む環状壁を設けて、これを連結口部82と成し、そして接続部材54の内ハウジング32側の端部をこの連結口部82に対して、リング状のスペーサ部材84を介して内嵌させるようにしている。そしてこのようにすることで、接続部材54の内ハウジング32側の端部及びスペーサ部材84と、内ハウジング32の筒壁外面との間にスペース形成するようになしている。
【0045】
詳しくは、図11に示しているように連結口部82には周方向両端の付根位置に段付部86を設けて、そこにリング状のスペーサ部材84を当接させる状態に、スペーサ部材84を連結口部82に対して内嵌状態に嵌合させ、更にそのスペーサ部材84に対し、円筒形状をなす接続部材54の先端部を同じく内嵌状態に嵌合させることにより、それら接続部材54及びスペーサ部材84と内ハウジング32の筒壁外面との間にスペース形成する状態に、接続部材54を組み付け、以て内ハウジング側通水開口としての湯流入用開口50と外ハウジング側通水開口としての湯流入用開口52とを、スペーサ部材84及び連結口部82を介して接続部材54にて水密に接続するようになしている。
尚、周方向長の長い上記の湯流入用開口50は、図11に示しているように連結口部82に到るまで周方向に延びている。
【0046】
上記リング状をなすスペーサ部材84は、図12(A)に示しているように平面視形状が4角形状で、円形の嵌合孔99を有しており、また図12(B)に示しているように側面視における下面形状が図中上向きに凹の湾曲形状をなしている。
更に外周面には環状溝88を有していて、そこに弾性を有するOリングから成るシール部材90を保持している。
スペーサ部材84は、その外面(外周面)をこのシール部材90を介して連結口部82の内面(内周面)に水密に嵌合させている。
【0047】
一方円筒形状をなす接続部材54は、図13に示しているように軸方向の各端部の外面(外周面)に環状溝92,94を有していて、それら環状溝92,94においてOリングから成るシール部材96,98を保持している。
【0048】
接続部材54は、Oリング96を介して軸方向の端部(図11中下端部)を、スペーサ部材84の内面に嵌合状態に水密結合し、またOリング98を介しその外面を、外ハウジング30側通水開口である湯流入用開口52の内面に嵌合状態に水密結合し、以て外ハウジング30側の湯流入用開口52と、内ハウジング32側の湯流入用開口50とをスペーサ部材84,連結口部82を介して水密接続している。
【0049】
即ち外ハウジング30と内ハウジング32との間に形成される水側流路36を横切る状態に、湯流入用開口52と50とを連絡してその内部に、クランク脚28から送られて来た湯を内ハウジング32内に流入させるための、独立した1次側流路としての湯側流路を形成している。
【0050】
図11において、100は接続部材54を抜止状態に固定する固定クリップ(固定部材)で、図14に示しているように全体としてCリング状をなしていて、径方向に弾性変形能を有している。
図11に示しているように、この実施形態ではクランク脚28からの湯を流入させる筒状の湯流入口部55が外ハウジング30に一体に構成されており、上記の接続部材54は、この湯流入口部55の開口部からその内部に差し込まれて内ハウジング32側の湯流入用開口50、具体的には連結口部82と外ハウジング30側の湯流入用開口52とを水密接続している。
【0051】
而して湯流入口部55の内面には、環状の嵌込凹部102が設けられており、そこに固定クリップ100を縮径状態で挿入した後これを拡径して嵌込凹部102に嵌め込むことで、固定クリップ100の接続部材54に対する当接作用により、接続部材54が図中上向きに抜け防止されている。
【0052】
このとき固定クリップ100は、軸方向の一方の端面(図中下端面)を接続部材54の軸方向端面に当接させ、また逆方向の端面を、嵌込凹部102の当接面252に当接させた状態となり、その当接作用によって接続部材54を図中上下方向に位置決状態に固定する。
【0053】
尚この実施形態においては、スペーサ部材84の内面,流入用開口52の内面及び嵌込凹部102の全体を1つの挿入穴として、そこに接続部材54と固定クリップ100とを内嵌状態に挿入し、そしてその挿入穴において、接続部材54と固定クリップ100とを軸方向に隣接して位置させ、以て固定クリップ102で接続部材54を抜け防止した構造とみることができる。
【0054】
尚図14に示しているように、固定クリップ100には周方向両端部且つ径方向内方への突出部に、径方向内方に凹陥した形態の凹部106が設けられている。
この凹部106は治具を係合させるための部分であって、この固定クリップ100は、凹部106に治具を係合させて縮径させることで、湯流入口部55から取出可能である。
尚接続部材54は、これを図11中下向きに押し込むと先端が内ハウジング32の筒壁の外面に当接し、そこで押込量が規定される。
【0055】
図15及び図10は、図11におけるスペーサ部材84,接続部材54及び固定クリップ100等の組付けの手順を示している。
図に示しているように、ここでは先ず内ハウジング32を外ハウジング30に挿入する前において、連結口部82にスペーサ部材84を内嵌状態に装着してそこに保持させておく。
そしてその状態で、図10(A)に示しているように内ハウジング32を外ハウジング30の内部に軸方向(図10中右方向,図7及び図3中左方向)に挿入する。図15(III)はこのときの状態を表している。
【0056】
その後、図10(A)に示しているように先ず接続部材54を外ハウジング30における湯流入口部55の内部に差し込み、しかる後、固定クリップ100を縮径変形させた状態で同じく湯流入口部55内部に押し込み、これを湯流入口部55内部の嵌込凹部102に嵌め込む。
このとき固定クリップ100は蓄えられていた弾性力で拡径して嵌込凹部102に嵌り込み、接続部材54の図中上向きの抜けを防止する。
即ち接続部材54をその軸方向に固定状態とする。
【0057】
本実施形態においては、図2及び図11における接続部材54によって、外ハウジング30の湯流入用開口52と連結口部82、つまり内ハウジング32の湯流入用開口50が接続されることで、また図7に示す内ハウジング32側の混合水の流出用開口60と外ハウジング30側の流出用開口64とが、接続部材を兼ねた流出口部66にて接続されることで、更には図2に示すように混合水を流出させる内ハウジング32側の流出用開口70と外ハウジング30の流出用開口74とが、接続部材を兼ねた流出口部76にて接続されることで、外ハウジング30と内ハウジング32とが固定状態とされる。
【0058】
図3における上記の混合弁ユニット56が、周辺部とともに図4に拡大して詳しく示してあり、また切替弁ユニット58が周辺部とともに図7に拡大して詳しく示してある。
本実施形態の混合弁ユニット56はサーモスタット式(自動温度調節機能付)のもので、弁ケース112を有しており、その弁ケース112ごと、上記の内ハウジング32の内部に軸方向に挿入されて組み付けられている。
【0059】
図4において、110は段付きの円筒形状をなす固定ナットで、内ハウジング32内部に挿入された混合弁ユニット56は、この固定ナット110を内ハウジング32の端部にねじ結合することで、内ハウジング32から抜止めされ、内ハウジング32内部に固定される。
【0060】
弁ケース112には、軸方向に互いに離隔した位置に水流入口116,湯流入口118が形成されており、これら水流入口116,湯流入口118を通じて水,湯が弁ケース112内部に流入する。
流入した水と湯とは混合室120で混合された後、その混合水が流出口122から図中右向きに流出する。
【0061】
124,126はそれぞれ水流入口116,湯流入口118から流入する水,湯の流入量を調節する水側弁部,湯側弁部で、水流入口116,湯流入口118からの水と湯の流入量は、それぞれ水側弁部124,湯側弁部126の弁開度に応じて大小変化する。即ち混合室120での水と湯との混合比率が変化し、混合水温度が高低変化する。
【0062】
弁ケース112の内部には、弁体ユニット128が図中左右方向(軸方向)に移動可能に設けられている。
この弁体ユニット128は、軸方向に離隔して設けられた水側弁体130と湯側弁体132、及びそれらを軸方向に連繋する連繋部134を有している。
【0063】
ここで水側弁体130及び湯側弁体132はそれぞれ円筒形状(環状)をなしており、それぞれの外周面の軸方向中間位置に断面U字形状をなすシール部材136,138が保持されていて、それらシール部材136,138により水側弁体130及び湯側弁体132と弁ケース112との間が水密にシールされている。
【0064】
連繋部134は湯側弁体132と一体に構成されている。
この連繋部134は、図5にも示しているように湯側弁体132の内側位置において十字状をなすように中心部から放射状に延びる複数(ここでは4つ)の補強板140と、この補強板140から軸方向且つ図中右方向に突き出した円筒部142とを一体に有している。
ここで補強板140は湯側弁体132を内側から補強する働きをなすもので、板面が軸方向に延びており、そして外周端が湯側弁体132に一体化されている。
この実施形態では、水流入口116,湯流入口118から流入した水と湯とが図中右向きに流れて混合室120に到り、そこで水と湯とが混合される。
【0065】
混合室120には、形状記憶合金製のコイル形状の感温ばね(付勢部材)144が収容されており、その付勢力を軸方向の押圧力として弁体ユニット128に対し図中左向きに、即ち湯側弁体132を閉弁させ、水側弁体130を開弁させる方向に及ぼしている。
この形状記憶合金製の感温ばね144は混合室120内部の混合水温度に応じて伸縮し、混合水温度が設定温度となるように図中左向きの付勢力を変化させて、弁体ユニット128の位置を自動的に微調節する。
【0066】
146は混合室120を形成するとともに感温ばね144の一端を当接させるばね受で、図中左端に外向きの係合爪148を有し、その係合爪148を弁ケース112の係合孔150に係合させることで、弁ケース112に組み付けられている。
【0067】
上記水側弁体130は、湯側弁体132及び連繋部134とは別体に構成されている。
この水側弁体130には、図5にも明らかに示しているように内側が段付形状をなす円筒形状の嵌合部152が形成されており、その嵌合部152が、段付部154を円筒部142の先端面に当接させる状態に、円筒部142に外嵌状態に嵌合され組み付けられている。
詳しくは、円筒部142の内側には雌ねじ部156が形成されていて、そこに後述の弁軸206の先端部に形成された雄ねじ部158がねじ込まれている。
【0068】
この弁軸206には押え部材としての止め輪160が装着されており、弁軸206の雄ねじ部158が円筒部142の内側の雌ねじ部156にねじ込まれることで、水側弁体130が止め輪160にて円筒部142に図中右向きに押し付けられ、連繋部134に組付固定されている。
【0069】
図4に示しているように弁ケース112には、水側弁体130,湯側弁体132のそれぞれの軸方向の内側位置に、水側弁部124における水側弁座164,湯側弁部126における湯側弁座166が設けられており、それらに対し水側弁体130,湯側弁体132が軸方向に当接するようになっている。
詳しくは水側弁座164,湯側弁座166におけるそれぞれの弁座面168,170に対して水側弁体130,湯側弁体132が当接するようになっている。
【0070】
この実施形態において、弁体ユニット128は通常の金属製のコイルばねから成るバイアスばね(付勢部材)172にて図中右向き、即ち湯側弁体132を開弁させ、水側弁体130を閉弁させる方向に付勢(押圧)されており、また混合室120内に設けられた感温ばね144にてこれとは逆方向の図中左向き、即ち湯側弁体132を閉弁させ、水側弁体130を開弁させる方向に付勢されている。
弁体ユニット128は、感温ばね144による図中左向きの付勢力と、バイアスばね172による図中右向きの付勢力とが釣合う位置に保持される。
【0071】
図4に示しているように、弁ケース112には回転操作軸174が組み付けられている。
この回転操作軸174は、弁体ユニット128を弁ケース112の内部で軸方向、即ち図中左右方向に移動させて混合水温度を設定操作するためのもので、嵌合軸部176と、ハンドル連結部178とを有しており、その嵌合軸部176が弁ケース112の嵌合孔180に回転可能に内嵌されている。
ここで嵌合軸部176と弁ケース112の嵌合孔180との間はOリング182にて水密にシールされている。
また弁ケース112から軸方向の左方に突き出したハンドル連結部178には、セレーション部184において温調ハンドル22が一体回転状態に連結されるようになっている。
【0072】
回転操作軸174は、弁ケース112の内部において大径の円筒部185を有しており、その円筒部185の図中左端の肩部と、回転操作軸174に装着された径方向に弾性を有する止め輪186にて、弁ケース112に軸方向に固定されている。
この円筒部185の内周面には雌ねじ部188が形成され、そこに円筒形状をなす駆動部材190が、外周面の雄ねじ部192において螺合されている。
この駆動部材190は、回転操作軸174の回転操作によってねじ送りで軸方向即ち図中左右方向に進退移動させられる。
【0073】
この駆動部材190と弁体ユニット128との間には、ストッパリング194,ばね受196を介して通常の金属製のコイルばねからなる上記のバイアスばね172が介在させられており、バイアスばね172の図中右向きの付勢力が弁体ユニット128に対し図中右向きに及ぼされている。
尚、ばね受196には図中右端と左端とに内向きのフランジ部198,200が設けられている。
【0074】
一方、駆動部材190の図中右端には外向きのフランジ部202が設けられ、この外向きのフランジ部202が、一対のフランジ部198,200の間においてばね受196内部を図中左右方向に相対移動可能とされている。
また駆動部材190には、内向きに突出した段付部204が図中左端に設けられていて、そこにストッパリング194が図中右向きに当接させられている。
【0075】
上記のように弁体ユニット128からは図中左向きに弁軸206が延び出している。
弁軸206の左端側はストッパリング194を貫通して図中左向きに突出しており、その突出した端部に、ストッパリング194の内径よりも大径の頭部208が設けられている。
この頭部208には、弁軸206における上記の雄ねじ部158を連繋部134の雌ねじ部156にねじ込む際に工具掛け部となる係合溝が形成されている。
【0076】
この実施形態では、回転操作軸174を正方向に回転操作すると、駆動部材190がねじ送り作用で図中右向きに前進させられ、これによりストッパリング194を介してバイアスばね172が圧縮せしめられ、弁体ユニット128に対する図中右向きの付勢力を増大させる。
また回転操作軸174を逆方向に回転操作すると、駆動部材190が図中左向きに後退移動させられて、バイアスばね172が延びる方向に変位し、弁体ユニット28に対する図中右向きの付勢力を弱くする。
【0077】
この例の混合弁ユニット56では、このようにして回転操作軸174を正方向又は逆方向に回転操作することで、弁体ユニット128に対するバイアスばね172の図中右向きの付勢力と、感温ばね144の図中左向きの付勢力との釣合位置が図中左右方向に変化し、これに伴って弁体ユニット128が図中左右方向にシフトせしめられる。即ち混合弁ユニット56における混合水の温度が設定ないし設定変更される。
【0078】
この混合弁ユニット56では、弁体ユニット128が図中右向きに一杯まで移動して水側弁体130が水側弁座164の弁座面168に当接することで水流入口116が全閉、湯流入口118が全開となり、弁体ユニット128が逆方向に一杯まで移動して湯側弁体132が湯側弁座166の弁座面170に当接することで湯流入口118が全閉、水流入口116が全開状態となる。
またそれらの中間位置において水流入口116及び湯流入口118を開き、且つその開度を感温ばね144の温度感知に基づいて自動的に変化させ、水,湯の流入量を変化させて混合水温度を自動的に設定温度に調節する。
【0079】
図6は、上記の混合弁ユニット56と温調ハンドル22との組付構造を示している。
図示のように温調ハンドル22には、内周面に雌セレーション部を有するセレーション部材212が一体回転状態に装着されており、このセレーション部材212が、混合弁ユニット56における上記のセレーション部184、詳しくは雄セレーション部にセレーション結合されることで、温調ハンドル22が混合弁ユニット56における回転操作軸174に一体回転状態に連結されている。
【0080】
214は、温調ハンドル22に備えられた安全ボタンで、ばね216により図中上向きの外向きに突出する側に付勢されている。
この安全ボタン214には、後述のストッパ部材220におけるストッパ部224,226に当接する当接部218が備えられている。
220は、この当接部218を当接させることによって温調ハンドル22の回転規制をなすストッパ部材で、222はストッパ部材220を内ハウジング32に取り付けるための取付部材である。
【0081】
この実施形態では、温調ハンドル22を高温側に回転させると、あるところで安全ボタン214の当接部218が、ストッパ部材220の第1ストッパ部224に当接するに到る。ここにおいて温調ハンドル22が、より高温側に回転操作されるのが規制される。
【0082】
この段階で使用者が更に混合水の温度を高温側に設定変更したいときは、安全ボタン214をばね216の付勢力に抗して図中下向き(内向き)に押すと、当接部218と第1ストッパ部224との当接が解除され、ここにおいて温調ハンドル22が更なる高温側に回転操作可能となる。
そしてその状態で一杯まで温調ハンドル22を高温側に回転操作すると、最終的に第2ストッパ部226に対して当接部218が当接し、それ以上の回転操作が禁止される。
【0083】
図7に示すように、本実施形態において切替弁ユニット58はシリンダ式の弁体ユニットであって、切替ハンドル24と一体回転する回転操作軸228と、回転操作軸228に対し同じく一体回転状態に連結されたシリンダ弁体230及び弁ケース232を備えて構成されている。
【0084】
弁ケース232は、シリンダ弁体230に直接嵌合してこれを保持するインナケース234と、インナケース234の外側のアウタケース236とを有しており、そのアウタケース236が、内ハウジング32の内部に軸方向に挿入され、組み付けられている。
【0085】
弁ケース232は、更にアウタケース236の回止めをなす回止め部材238を有しており、その回止め部材238の部分において、固定ナット240により内ハウジング32の端部に回止め状態に固定されている。
シリンダ弁体230には、送られて来た混合水を吐水管16側に流出させる開口242と、シャワー側に流出させる開口244とが設けられている。
【0086】
一方弁ケース232は、開口242に対応する開口246と、開口244に対応する図示を省略する開口とを備えており、切替ハンドル24にてシリンダ弁体230を回転させ、開口242を弁ケース232の開口246に合致させた状態の下では、混合水を開口242,246から流出させて、これを内ハウジング32の流出用開口60へと流動させる。
流出用開口60に到った混合水は、先に述べたように吐水管16へと流れ込んで、先端の吐水口14から外部に流出(吐水)する。
【0087】
一方シリンダ弁体230の開口244を、図示を省略する弁ケース232の別の開口に合致させると(このとき開口242は開口246に対して不一致の状態にあって、開口242は閉鎖された状態にある)、開口244から流出した混合水が、シャワー側の流出口部76へと流れ込んでシャワーヘッドへと送られ、そこからシャワー吐水される。
【0088】
本実施形態において、樹脂製の内ハウジング32には軸方向の中間部、詳しくは軸方向の略中央部に、混合水を流出させる2つの流出用開口60,70が設けられており、従って内ハウジング32はこれら2つの流出用開口60,70が位置する軸方向の略中央部が強度的に弱い部分となる。
【0089】
そこでこの実施形態では、水圧等により万一内ハウジング32が軸方向の略中央部で破断するようなことがあっても、破断した一方、ここでは図中右側の略半分が、そこに組み付けられた部品等とともに金属製の外ハウジング30から図中右方向に抜け出ることがないように抜け防止が図られている。
【0090】
具体的には図16,図8及び図9に示しているように、内ハウジング32には流出用開口60,70をそれぞれ横切るようにしてリブ状のブリッジ部294が一体に設けられており、そしてそれらブリッジ部294のそれぞれに、図17に示す金属製の筒形の接続部材248,250の軸端からそれらの内部に突出し、接続部材248,250の内面、詳しくは内ハウジング32における軸方向の内面に対向する抜止用の掛止突起296がブリッジ部294に一体に設けられている。
【0091】
ここで各掛止突起296は図17に示しているようにブリッジ部294の端に寄った位置、詳しくは接続部材248,250の内面に対して図中右方向に寄った近い位置に設けられている。
またこれら掛止突起296は、その側面形状が先端(突出端)からブリッジ部294側の付根に向って軸方向の幅が漸次増大する形状となしてある。
【0092】
この実施形態では、万一内ハウジング32が軸方向の略中央部、より具体的には流出用開口60,70の図中左右方向の略中央部で破断したときには、各掛止突起296が接続部材248,250の内面に対し図17中右方向に掛止し、そしてその掛止作用によって、内ハウジング32の破断した図中右側の部分が、外ハウジング30から軸方向の右方向、つまり外ハウジング30に対する内ハウジング32の挿入方向とは反対方向に抜け出るのを有効に防止する。
【0093】
本実施形態ではまた、図18に示しているように外ハウジング30の図中右の端部側で外ハウジング30の筒壁から突出した水流入口部40の内部に抜止部材298が挿入され、組み付けられている。
【0094】
抜止部材298は、Cリング状をなし径方向に弾性を有する本体部300を有し、この本体部300から、周方向にほぼ等間隔で設けられた複数(ここでは5個)の掛止突起302が、内ハウジング32に向けて突出している。
図18(A)に示しているようにこれら複数の掛止突起302は、夫々外ハウジング30の内面よりも内ハウジング32側に突出している。
尚、水流入口部40の付根側の内面には嵌込凹部304が設けられており、抜止部材298は、本体部300においてこの嵌込凹部304に弾性的に嵌め込まれ、保持されている。
【0095】
抜止部材298は、本体部300を縮径方向に弾性変形させた状態で水流入口部40の内部に挿入することができる。そして嵌込凹部304の位置でこれを拡径させることで嵌込凹部304に嵌め込み、固定状態とすることができる。
ここで抜止部材298は、本体部300の周方向の両端部に、治具を係合させて縮径させるための凹部306が設けられている。
【0096】
一方内ハウジング32には、筒壁の外面から外ハウジング30側に突出する被掛止部308が一体に設けてあり、この被掛止部308に対して、抜止部材298の掛止突起302を軸方向に掛止させるようになっている。
ここでは被掛止部308は平面視形状が円弧状をなしている。
【0097】
抜止部材298は、掛止突起302が周方向にほぼ等間隔で複数設けてあるため、周方向の向きを特に定めることなくこれを水流入口部40に挿入し組み付けた場合であっても、少なくとも隣接する2つの掛止突起302が、内ハウジング32側の被掛止部308に掛止することができる。
【0098】
この水流入口部40の内部に挿入し組み付けた抜止部材298は、内ハウジング32が万一その略中央部で破断した場合に、掛止突起302を内ハウジング32の被掛止部308に掛止させることで、内ハウジング32の破断した右半分が外ハウジング30から図中右方向に抜け出るのを防止する。
【0099】
即ち本実施形態では、内ハウジング32の軸方向の略中央部に設けた図16に示す2つの掛止突起296と、図18に示す水流入口部40内部に挿入した抜止部材298及び内ハウジング32に形成した被掛止部308との作用によって、確実に内ハウジング32の図中右半分が外ハウジング30から抜けるのを防止することができる。
【0100】
以上のように本実施形態によれば、内ハウジング32を金属に対して強度的に弱い樹脂等で形成した場合において、万一内ハウジング32が流出用開口60,70の部分で軸方向に破断を生じることがあっても、接続部材248,250に対する掛止突起296の掛止作用で、破断した内ハウジング32の図中右半分が外ハウジング30から軸方向の右方に抜け、離脱するといったことを防止することができる。
【0101】
更に外ハウジング30の右の端部側の水流入口部40に挿入した抜止部材298と内ハウジング32側の被掛止部308とによって、内ハウジング32の軸方向の抜けをより一層確実に防止することができる。
【0102】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は、内ハウジング32側に、水側のクランク脚26からの水を内ハウジング32内部に流入させるための水流入用開口を設けて、その内ハウジング32側の水流入用開口と、外ハウジング30側の水流入用開口38とを接続部材にて水密接続する一方、外ハウジング30と内ハウジング32との間の空間を湯側流路となして、湯側のクランク脚28からの湯を、外ハウジング30の湯流入用開口52から湯側流路へと流入させ、更に内ハウジング32に設けた開口を通じその内部に流入させるようになすことも可能である。
【0103】
この場合において、内ハウジング32を外ハウジング30に対して湯流入用開口の側から挿入するようになし、抜止部材298を湯流入口部55の内部に挿入して組み付ける一方、内ハウジング32に、抜止部材298に対応する位置において上記の被掛止部308を設けておくといったことも可能である。
また抜止部材の各掛止突起と内ハウジング32側の被掛止部との掛止構造を、上記例示した形態と異なった他の様々な形態で構成することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 混合水栓
30 外ハウジング
32 内ハウジング
36 水流路
38 水流入用開口
40 水流入口部
60,64,70,74 流出用開口
248,250 接続部材
294 ブリッジ部
296,302 掛止突起
298 抜止部材
308 被掛止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形の外ハウジングと内ハウジングとの2重ハウジング構造をなし、該外ハウジングと内ハウジングとの間に流路を形成する混合水栓において、
前記外ハウジングには、該外ハウジングの筒壁を貫通する外ハウジング側通水開口を設ける一方、前記内ハウジングには、該外ハウジング側通水開口に対して径方向に対向する位置に、該内ハウジングの筒壁を貫通する内ハウジング側通水開口を設けて、それら外ハウジング側通水開口と内ハウジング側通水開口とを接続部材にて水密に接続するとともに、該接続部材にて該内ハウジングを該外ハウジングに固定し、
該内ハウジングには、前記内ハウジング側通水開口の側から前記接続部材の軸端の開口を通じて該接続部材の内部に突出し、該接続部材の内面に対して前記内ハウジングの軸方向に対向する、該内ハウジングの抜止用の掛止突起を設けたことを特徴とする混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記掛止突起が、前記内ハウジング側通水開口を横切る状態に設けたリブ状のブリッジ部に設けてあることを特徴とする混合水栓。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記外ハウジング側通水開口及び内ハウジング側通水開口が、前記外ハウジング及び内ハウジングのそれぞれの軸方向中間部に設けられた、混合水を流出させる流出用開口であることを特徴とする混合水栓。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記外ハウジングの軸方向の端部側には、前記外ハウジング側通水開口としての水又は湯の流入用開口及び該流入用開口から外部に突出する筒形の流入口部が設けてあり、該流入口部の内部に、前記内ハウジングの抜止用の掛止突起を有する抜止部材が挿入してある一方、該内ハウジングには、筒壁の外面から該掛止突起の側に突出し、該掛止突起に対して内ハウジングの抜け方向に対向し該掛止突起を掛止させる被掛止部が設けてあることを特徴とする混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−229758(P2012−229758A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98806(P2011−98806)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】