説明

混練装置および成形機

【課題】混練装置および成形機において、スクリュー部やシリンダー部の長さを抑えつつ、材料に高せん断力を与えることができるようにする。
【解決手段】混練装置1Aは、スクリュー部7と、スクリュー駆動部8と、スクリュー部7を囲繞するように設けられた回転シリンダー部9と、スクリュー部7をその回転軸線回りに回転させるシリンダー駆動部12と、回転シリンダー部9の内周部に沿って、スクリュー部7の回転軸線に斜めに交差する方向に延ばして設けられた螺旋溝部10Aとを備え、シリンダー駆動部12によって回転シリンダー部9をスクリュー部7に対して相対回転させることで、螺旋溝部10Aから混練空間S内の被混練物に対してスクリュー部7の基端側に押し戻す推進力を加えられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練装置および成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂に、この熱可塑性樹脂と異なる成分からなる非相溶系の高分子材料を、分散性良く混練りするための混練装置が知られている。また、このような混練装置を備える成形機が知られている。
例えば、特許文献1には、複数台の押出機が前段の押出機から後段の押出機に熱可塑性樹脂を供給するように順次連結され、2段目以後の押出機内の熱可塑性樹脂に添加剤が加えられて混練が行われる多段式熱可塑性樹脂押出装置において、添加剤が加えられる押出機のスクリューには、この押出機に対する添加剤注入位置より出口側に位置させて、このスクリューの他の部分より高い剪断力で混練を行う高剪断混練部が設けられている多段式熱可塑性樹脂押出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−42581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の混練装置および成形機には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、材料に高せん断力を作用させるには、スクリューの回転速度を上げる必要があるが、回転速度が上がるとともに材料の流動速度も増加していくため、十分な混練りが出来なくなる。
十分な混練りを行うため、例えば、混練装置のスクリュー部やシリンダー部を長くすることも考えられるが、混練部の長さが長くなると、設備が大きくなり非常に高価なものとなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、スクリュー部やシリンダー部の長さを抑えつつ、材料に高せん断力を作用させることができる混練装置および成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の混練装置は、スクリュー部と、該スクリュー部を回転させるスクリュー駆動部と、前記スクリュー部を囲繞するように設けられたシリンダー部とを有し、前記スクリュー部を回転させることで前記スクリュー部の外周部と前記シリンダー部の内周部との間に形成された混練空間で熱可塑性樹脂を含む被混練物を前記スクリュー部の基端側から先端側に移動させつつ混練りする混練装置であって、前記シリンダー部を前記スクリュー部の回転軸線回りに回転させるシリンダー駆動部と、前記シリンダー部の内周部に沿って、前記スクリュー部の回転軸線に斜めに交差する方向に延ばして設けられた溝部とを備え、前記シリンダー駆動部によって前記シリンダー部を前記スクリュー部に対して相対回転させることで、前記溝部から前記混練空間内の前記被混練物に対して前記スクリュー部の基端側に押し戻す推進力を加えられるようにした構成とする。
【0007】
また、本発明の混練装置では、前記溝部は、前記スクリュー部のスクリューの旋回方向と同方向に旋回する螺旋溝部からなり、前記シリンダー駆動部は、前記シリンダー部を、前記スクリュー部の回転方向と逆方向に回転させるものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明の混練装置では、前記溝部は、前記スクリュー部のスクリューの旋回方向と反対方向に旋回する螺旋溝部からなり、前記シリンダー駆動部は、前記シリンダー部を前記スクリュー部の回転方向と同方向に回転させるものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の混練装置では、前記シリンダー部および前記スクリュー部の少なくともいずれかを冷却する冷却機構を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の混練装置では、前記シリンダー駆動部は、前記シリンダー部の外周部に外嵌して取り付けられた環状ローターを回転させる中空モーターからなることが好ましい。
【0011】
本発明の成形機は、本発明の混練装置を備える構成とする。
この発明によれば、本発明の混練装置を備えるので、本発明の混練装置と同様の作用を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の混練装置および成形機によれば、シリンダー部の溝部から被混練物をスクリュー部の基端側に押し戻す推進力が加えられ、被混練物が混練空間内で基端側に押し戻されつつ徐々に先端側に移動されるため、スクリュー部やシリンダー部の長さを抑えつつ、材料に高せん断力を作用させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る混練装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る混練装置の混練空間の詳細、および第1変形例の混練空間の詳細を示す模式的な部分断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る混練装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る混練装置のスクリュー部の模式的な斜視外観図および斜視断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る成形機の概略構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。また、すべての図面は模式図であり、見易さのため、寸法や形状は誇張されている。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る混練装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る混練装置の概略構成を示す模式的な断面図である。図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る混練装置の混練空間の詳細を示す模式的な部分断面図である。
【0016】
本実施形態の混練装置1Aは、熱可塑性樹脂に、この熱可塑性樹脂と異なる成分からなる非相溶系の高分子材料を分散性良く混練りするための装置であり、混練りが終了した被混練物(以下、混練樹脂材料と称する)を、流体の状態で、例えば射出成形機や押し出し成形機等の成形機に供給するのに好適なものである。また、混練装置1Aは、これらの成形機に組み込んで用いることが可能である。
混練装置1Aの概略構成は、図1に示すように、可塑化部3、スクリュー部7、スクリュー駆動部8、回転シリンダー部9(シリンダー部)、シリンダー駆動部12、および制御部15を備える。
【0017】
可塑化部3は、熱可塑性樹脂のペレットと非相溶系の高分子材料のペレットとが予め決められた配合比で混合された被混練物を可塑化するもので、可塑化部本体3a、固定シリンダー部5、ホッパー2、およびヒーター4を備える。
【0018】
可塑化部本体3aは、固定シリンダー部5、ホッパー2、およびヒーター4を、内部に固定するブロック状部材であり、熱伝導性のよい金属で構成される。
【0019】
固定シリンダー部5は、スクリュー部7の基端部を囲繞するように収める円筒状部材である。固定シリンダー部5は、その一方の端部側で、可塑化部本体3aの側部(図1の図示左側)から内部側(図示右側)に形成された円筒穴に埋め込まれ、他方の端部が可塑化部本体3aから突出された状態で可塑化部本体3aに固定されている。
固定シリンダー部5の可塑化部本体3aに埋め込まれた部分の径方向の側面には、被混練物を固定シリンダー部5の内部に導くための側部開口5aが設けられている。
【0020】
また、固定シリンダー部5の外周部近傍の可塑化部本体3aには、固定シリンダー部5の温度計測を行うため、例えば熱電対などからなる温度センサー6が埋め込まれている。
温度センサー6の出力は、配線6aを介して制御部15に送出されるようになっている。
【0021】
また、固定シリンダー部5の軸方向の底部には、スクリュー部7を挿通させて回転可能に保持する軸受部16が設けられている。
【0022】
ホッパー2は、可塑化部本体3aの外部から側部開口5aに被混練物を供給するためのもので、一方の端部が固定シリンダー部5の側部開口5aに連結されて、他方の端部が可塑化部本体3aの外部側に延出された管路部2bと、管路部2bの他方の端部から拡径して、被混練物を投入するすり鉢状の開口を形成する材料投入部2aとからなる。
【0023】
ヒーター4は、固定シリンダー部5を外周側から加熱するもので、可塑化部本体3aに埋め込まれた固定シリンダー部5の外周を取り囲む状態で、可塑化部本体3aの内部に埋め込まれている。
ヒーター4は、配線4aを介して制御部15に電気的に接続され、制御部15によって固定シリンダー部5を一定の温度に保つように温度制御される。
【0024】
スクリュー部7は、スクリュー軸7aの外周面に螺旋状のスクリュー7bが形成されたものである。
スクリュー軸7aは、基端側から先端側に向って、スクリュー駆動部8に連結された軸状の連結軸部7A、軸外周面上にスクリュー7bが形成された搬送部7B、および先細テーパ状の先端部7Cが、この順に設けられている。
スクリュー軸7aの連結軸部7Aは、先端部5bに対向する固定シリンダー部5の底部に形成された貫通孔に、先端部5b側から挿入され、可塑化部本体3aに設けられた軸受部16により回転可能に支持された状態で、可塑化部本体3aの外部に突出されている。そして、連結軸部7Aに隣接する搬送部7Bは、連結軸部7A側の端部が、少なくとも側部開口5aに重なる範囲まで固定シリンダー部5の内部に挿入されている。
【0025】
本実施形態のスクリュー7bは、スクリュー軸7aの基端側から先端側に向かって、スクリュー軸7aの中心に対して時計回りに旋回して進む螺旋状に設けられている。
本実施形態のスクリュー部7の形状は、図2(a)に示すように、搬送部7Bにおけるスクリュー軸7aの外径がD、スクリュー軸7aの外周面からのスクリュー7bの山高さがH、スクリュー7bのピッチがpであるとする。また、スクリュー部7のスクリュー有効長さはL、スクリュー直径はD(=D+2・H)とする。
ここで、スクリュー7bのピッチpは、回転シリンダー部9に重なる範囲におけるスクリュー7bのピッチを表すものとする。スクリュー7bの固定シリンダー部5と重なる範囲におけるピッチは、ピッチpと異なる大きさとしてもよい。
スクリュー部7の形状の一例としては、D=30(mm)、H=2.5(mm)、p=15(mm)、D=35(mm)、L/D=10、といった寸法を挙げることができる。
【0026】
なお、スクリュー軸7aの連結軸部7Aにおける外径は、図1では、搬送部7Bと同径のように描かれているが、外径Dと異なる大きさであってもよい。
【0027】
スクリュー駆動部8は、スクリュー部7を回転させるもので、連結軸部7Aの端部に連結された適宜の駆動モーターからなる。スクリュー駆動部8は、ケーブル8aを介して制御部15に電気的に接続され、制御部15からの制御信号に応じて、回転速度、回転方向が制御されるようになっている。
本実施形態の混練り時には、スクリュー駆動部8は、スクリュー部7を基端側から先端側に向かって見るとき、時計回りに回転させる。
以下では、このような回転方向を正方向と称し、反対に、スクリュー部7を基端側から先端側に向かって見るとき、反時計回りに回転させる回転方向を負方向と称する場合がある。
本実施形態のスクリュー部7は、スクリュー駆動部8によって正方向に回転されるとき、スクリュー部7上の被混練物に対して、スクリュー部7の基端側から先端側に推進する推進力を与えることができるになっている。
【0028】
回転シリンダー部9は、スクリュー部7の外形よりわずかに大きな内径を有し、一方に開口するとともに他方に底部9cを有する有底円筒状の部材であり、固定シリンダー部5から突出されたスクリュー部7を囲繞するように設けられている。
また、回転シリンダー部9は、中心軸線がスクリュー部7の回転軸線と同軸となるように配置され、円筒開口側では、固定シリンダー部5に対して径方向にわずかに隙間をあけた状態で外挿されている。そして、回転シリンダー部9の円筒開口の端部は、例えばスラスト軸受等からなる軸受11を介して、可塑化部本体3aに対して回転可能に固定されている。
また、回転シリンダー部9の底部9c寄りの中間部の外周側には、回転シリンダー部9を中心軸線回りに回転させるシリンダー駆動部12が設けられている。
このため、回転シリンダー部9は、軸受11とシリンダー駆動部12とによって、スクリュー部7の回転軸線と同軸に回転可能に支持されている。
【0029】
回転シリンダー部9の底部9cの中心部には、スクリュー部7の先端部7Cに対向する位置に被混練物を装置外部に吐出する吐出口9aが設けられている。吐出口9aには、スクリュー部7の先端部7Cの一部が吐出口9aの内周面と径方向に隙間を設けた状態で挿入されている。
以下では、スクリュー部7の基端側、先端側の向きに合わせて、回転シリンダー部9の軸方向において軸受11で支持された側を回転シリンダー部9の基端側、吐出口9aが設けられた側を回転シリンダー部9の先端側と称する。
【0030】
また、回転シリンダー部9の底部9cの近傍の円筒壁部には、吐出口9a近傍の温度を検出するため、例えば熱電対などからなる温度センサー13が埋設されている。
温度センサー13の出力は、回転シリンダー部9の先端側の外周面に設けられた回転接点部14および回転接点部14の固定側に接続された配線14aを通して、制御部15に送出されるようになっている。
【0031】
回転シリンダー部9のシリンダー内周面9bには、図2(a)に示すように(図1では図示略)、回転シリンダー部9の基端側から先端側に向かって、シリンダー内周面9bの中心に対して時計回りに旋回して進む螺旋状の螺旋溝部10Aが形成されている。すなわち、螺旋溝部10Aの螺旋の旋回方向は、スクリュー7bの螺旋の旋回方向と反対方向になっている。
ここで、シリンダー内周面9bは、螺旋溝部10Aの底面から中心方向に突出された螺旋状スクリューの径方向の先端部を形成している。
【0032】
本実施形態の螺旋溝部10Aの形状は、シリンダー内周面9bの内径がd(ただし、d>D)、シリンダー内周面9bからの溝深さがh、螺旋溝部10Aのピッチがpであるとする。したがって、螺旋溝部10Aの溝底の内径dは、d=d−2・hである。
なお、図2(a)では、螺旋溝部10Aのピッチpは、一例として、p=2・pの場合を図示しているが、螺旋溝部10Aのピッチpとスクリュー7bのピッチpとの比や大小関係は、これに限定されることなく、適宜の比や大小関係を選択することができる。
回転シリンダー部9の螺旋溝部10Aの形状の一例としては、d=40(mm)、h=1.5(mm)、p=30(mm)、d=37(mm)、といった寸法を挙げることができる。
【0033】
シリンダー駆動部12は、図1に示すように、回転シリンダー部9をスクリュー部7の回転軸線回りに回転させるもので、本実施形態では、外周側のステーターと内周側の環状ローターとを有し、環状ローターの内側に中空部が設けられたDD(ダイレクトドライブ)モーターである中空モーターからなる。
シリンダー駆動部12は、ケーブル12aを介して制御部15に電気的に接続され、制御部15からの制御信号に応じて、回転速度、回転方向が制御されるようになっている。
シリンダー駆動部12の環状ローターは、回転シリンダー部9の先端側の中間部に外嵌して取り付けられている。
シリンダー駆動部12は、ステーター側に設けられたケーブル12aによって、制御部15と電気的に接続されている。
【0034】
このような構成により、スクリュー部7の外周部と回転シリンダー部9の内周部との間には、被混練物を混練りしつつ軸方向に搬送する混練空間Sが形成される。
この混練空間Sの径方向の最小隙間tminは、スクリュー7bの径方向の先端部とシリンダー内周面9bとの間の隙間であり、tmin=(d−D)/2である。
また、混練空間Sの径方向の最大隙間tmaxは、スクリュー7bの径方向の先端部とシリンダー内周面9bとの間の隙間であり、tmax=(d−D)/2である。
上記の数値例では、tmin=1.0(mm)、tmax=5(mm)である。
このため、スクリュー駆動部8およびシリンダー駆動部12によるスクリュー部7および回転シリンダー部9の回転数を、それぞれR(rpm)、R(rpm)とすると、それぞれの回転により混練空間S内の被混練物に与えられるせん断速度(シェアレート)V(sec−1)、V(sec−1)は、それぞれ次式(1)、(2)のように求められる。
【0035】
=R・(D/2)・π/(60・tmin) ・・・(1)
=R・(d/2)・π/(60・tmin) ・・・(2)
【0036】
制御部15は、混練装置1Aの動作を制御するためのもので、ヒーター4、スクリュー駆動部8、シリンダー駆動部12、および温度センサー6、13と電気的に接続されている。
制御部15は、温度センサー6からの出力に基づいて固定シリンダー部5の温度を検知し、固定シリンダー部5の温度が、ホッパー2から投入された被混練物を可塑化できる温度になるようにヒーター4の温度を制御する。
また、制御部15は、予め設定された情報に基づいてスクリュー駆動部8およびシリンダー駆動部12の回転方向、および回転速度を制御し、被混練物の混練り制御を行う。その際、温度センサー13の出力を監視し、吐出口9a近傍の被混練物の温度が許容範囲外にならないように、必要に応じて回転数の制御を行う。
【0037】
次に、混練装置1Aの動作について説明する。
以下では、被混練物の一例として、ポリカーボネート(PC)樹脂であるパンライト(登録商標)L−1250Y(商品名;帝人化成(株)製)と、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂であるパラペット(登録商標)HR−S(商品名;(株)クラレ製)との材料ペレットを、7:3の配合比で混合した場合の例で説明する。
まず、制御部15によってヒーター4を昇温させ、固定シリンダー部5に伝熱して、固定シリンダー部5の内部が被混練物を可塑化できる温度になるまで加熱を行い、その温度が維持されるように温度制御を行う。上記の被混練物の場合、可塑化するのに好適な温度は260℃である。
【0038】
そして、制御部15は、スクリュー駆動部8およびシリンダー駆動部12を駆動して、スクリュー部7および回転シリンダー部9を回転させる。本実施形態では、スクリュー部7は正方向に回転させ、回転シリンダー部9は負方向に回転させる。
また、スクリュー部7、回転シリンダー部9の回転数R、Rは、スクリュー部7、回転シリンダー部9から被混練物に与えられるせん断速度V、Vが一定値となるように設定する。
上記の被混練物の場合、V=600(sec−1)、V=400(sec−1)が好適である。
【0039】
次に、作業者は、ホッパー2の材料投入部2aから被混練物を投入する。
材料投入部2aに投入された被混練物は、管路部2b、側部開口5aを介して、固定シリンダー部5の内部に到達し、固定シリンダー部5の内部の温度によって可塑化される。そして、回転中のスクリュー7bによって、スクリュー部7の外周部と固定シリンダー部5の内周部の間の空間を通って、スクリュー部7の先端側に向けて押し出されていく。
その際、被混練物は、固定シリンダー部5の内周面を通して加熱され、粘性流体化し、スクリュー7bの回転によって与えられるせん断力によって、徐々に混練りされつつ先端側に搬送されていく。
【0040】
被混練物が、固定シリンダー部5の側部開口5aから回転シリンダー部9内に搬送されると、回転シリンダー部9がスクリュー部7と反対の負方向に回転されているため、混練空間S内の粘性流体である被混練物には、相対回転速度に応じて周方向にせん断力が作用する。
また、被混練物には、スクリュー部7の回転によってスクリュー7bから軸方向の先端側への推進力が与えられる。ところが、回転シリンダー部9には旋回方向がスクリュー7bと逆方向の螺旋溝部10Aが設けられ、この螺旋溝部10Aが回転シリンダー部9とともにスクリュー部7と反対の負方向に回転されているため、被混練物には、螺旋溝部10Aから軸方向の基端側への推進力が与えられる。
これにより、被混練物には軸方向にもせん断力が作用する。そして被混練物は一定の割合で基端側に押し戻される。これにより、混練空間S内での被混練物の滞留時間は、回転シリンダー部9が回転しない場合に比べて長くなる。
この結果、回転シリンダー部9を固定してスクリュー部7のみを回転させた場合に比べて、被混練物へのせん断作用が増大しスクリュー部7の有効長さLを長くした場合と同様の効果が生じる。
【0041】
また、混練空間S内では、スクリュー7bの径方向の先端とシリンダー内周面9bとの間の隙間が最小隙間となり、被混練物はこの隙間を径方向に通過するとき、最も大きなせん断力が作用する。そして、スクリュー7bおよびシリンダー内周面9bの螺旋の旋回方向および回転方向が互いに反対になっているため、スクリュー7bの先端とシリンダー内周面9bとの間の軸方向の相対速度が増大する。
この結果、スクリュー7bの径方向の先端とシリンダー内周面9bとの間の隙間を通過することによるせん断作用が増大し、回転シリンダー部9が固定されている場合に比べて螺旋溝部10Aのピッチが縮小されたのと同様の効果が生じる。
【0042】
このように、混練空間S内の被混練物は、基端側から先端側に移動するにつれて、スクリュー部7の有効長さLに比べて、顕著なせん断作用を受ける。これにより、被混練物中のPCとPMMAとがそれぞれナノオーダーに細かくせん断され、かつ互いに分散し、良好に混練りされて吐出口9aに到達する。
【0043】
このように、混練装置1Aによれば、回転シリンダー部9を回転させることで、被混練物に対して、スクリュー部7の回転により発生する推進力とは逆向きの推進力を発生させることができ、そのような逆向きの推進力が発生しない場合に比べて、混練空間Sで、被混練物に作用する単位長さ当たりのせん断力を増大させて、被混練物を連続的に混練りすることができる。
このように単位長さ当たりのせん断力を増大させることで、スクリュー部やシリンダー部の長さを抑えつつ、材料に高せん断力を作用させることができる。
したがって、混練装置1Aは小型であっても、複数の高分子材料が良好に分散され、品質の安定した混練樹脂材料を得ることができる。また、混練空間Sが短くても良好な混練りを行うことができるため、混練樹脂材料の生産性を向上することができる。
【0044】
また、混練装置1Aでは、回転シリンダー部9を回転させるシリンダー駆動部12が中空モーターであるため、適宜のモーターの駆動力を、例えばベルトなどの伝動機構を介して回転シリンダー部9に伝達する場合に比べて、コンパクトな装置を構成することができる。
【0045】
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図2(b)は、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る混練装置の混練空間の詳細を示す模式的な部分断面図である。
【0046】
本実施形態の混練装置1Bは、図1、図2(b)に示すように、上記第1の実施形態の混練装置1Aの螺旋溝部10Aに代えて、螺旋溝部10Aと螺旋の旋回方向のみが異なる螺旋溝部10Bを備えるものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0047】
混練装置1Bによれば、シリンダー駆動部12によって、回転シリンダー部9を上記第1の実施形態と逆に正方向に回転させることで、上記第1の実施形態と同様の混練りを行うことができる。
すなわち、被混練物をホッパー2から投入して混練りを開始すると、上記第1の実施形態と同様、被混練物には、スクリュー部7の回転によってスクリュー7bから先端側への推進力が与えられる。ところが、回転シリンダー部9は旋回方向がスクリュー7bと逆方向の螺旋溝部10Bがスクリュー部7と同方向の正方向に回転されているため、被混練物は、螺旋溝部10Bから基端側への推進力が与えられる。
この結果、混練空間S内の粘性流体である被混練物には、軸方向にせん断力が作用し、被混練物は一定の割合で基端側に押し戻される。これにより、上記第1の実施形態と同様、混練空間S内の被混練物の滞留時間は、回転シリンダー部9が回転しない場合に比べて長くなり、上記第1の実施形態と同様、回転シリンダー部9を固定してスクリュー部7のみを回転させた場合に比べて、被混練物へのせん断作用が増大しスクリュー部7の有効長さLを長くした場合と同様の効果が生じる。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る混練装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る混練装置の概略構成を示す模式的な断面図である。図4(a)、(b)は、それぞれ本発明の第2の実施形態に係る混練装置のスクリュー部の模式的な斜視外観図および斜視断面図である。
【0049】
本実施形態の混練装置20は、上記第1の実施形態の混練装置1Aのスクリュー部7、スクリュー駆動部8に代えて、それぞれスクリュー部21、スクリュー駆動部22を備え、ロータリージョイント部23および冷却ポンプ25を追加したものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
スクリュー部21は、スクリュー軸21aの外周面に上記第1の実施形態と同様のスクリュー7bが形成され、内部に冷却管路21cを備えたものである。
スクリュー軸21aの外周部は、スクリュー軸7aと同様、基端側から先端側に向けて、連結軸部7A、搬送部7B、先端部7Cが、この順に設けられ、固定シリンダー部5および回転シリンダー部9に対して、同様の位置関係に配置されている。
ただし、連結軸部7Aは、スクリュー駆動部8に代えてスクリュー駆動部22に連結されている。
【0051】
冷却管路21cは、図4(a)に示すように、連結軸部7Aの端面の中心部に、例えば水などの冷却媒体を供給する供給口21dと、連結軸部7Aの端面に円周溝状に形成された排出口21eとの間に連通する管路である。
図4(b)に示すように、供給口21dから内部に延ばされた冷却管路21cは、径方向外側に屈曲されてから、スクリュー軸21aの内部の外周側を軸方向に沿って先端側に延ばされている。そして、冷却管路21cは、先端部7Cの近傍で径方向の反対側に向きを変えて、スクリュー軸21aの中心軸を挟んで反対側の内部の外周側を軸方向に沿って基端側に延ばされ、排出口21eの底部に連通されている。このように、冷却管路21cは、スクリュー部21において、全体としてU字状の内部管路を構成している。
【0052】
連結軸部7Aの端部には、スクリュー部21が回転したときに、供給口21dおよび排出口21eをそれぞれ外部に設けられた冷却媒体供給管路24aおよび冷却媒体排出管路24bに接続するロータリージョイント部23が連結されている。
冷却媒体供給管路24aおよび冷却媒体排出管路24bには、冷却ポンプ25が連結され、冷却媒体供給管路24a、供給口21d、冷却管路21c、排出口21e、および冷却媒体排出管路24bで構成された流路内に冷却媒体を循環させることができるようになっている。
これにより、スクリュー部21の回転時に、スクリュー軸21aおよびスクリュー7bを冷却できるようになっている。
このため、冷却管路21c、ロータリージョイント部23、および冷却ポンプ25は、スクリュー部21を冷却する冷却機構を構成している。
【0053】
スクリュー駆動部22は、スクリュー部21を回転させるもので、本実施形態では、外周側のステーターと内周側の環状ローターとを有し、環状ローターの内側に中空部が設けられたDDモーターである中空モーターからなる。
スクリュー駆動部22は、ケーブル22aを介して制御部15に電気的に接続され、制御部15からの制御信号に応じて、回転速度、回転方向が制御されるようになっている。
スクリュー駆動部22の環状ローターは、スクリュー軸21aの連結軸部7Aに外嵌して取り付けられている。
本実施形態の混練り時には、スクリュー駆動部22は、スクリュー部21を基端側から先端側に向かって見るとき、時計回りに回転させる(正方向)。
本実施形態のスクリュー部21は、スクリュー駆動部22によって正方向に回転されるとき、スクリュー部21上の被混練物に対して、スクリュー部21の基端側から先端側に推進する推進力を与えることができるようになっている。
【0054】
このような構成の混練装置20によれば、上記第1の実施形態の混練装置1Aと同様に、混練空間Sで、被混練物に作用する単位長さ当たりのせん断力を増大させて、被混練物を連続的に混練りすることができる。
さらに、混練装置20は、スクリュー部21を冷却する冷却機構を備えているため、混練り時に、被混練物をスクリュー部21との接触部から冷却することができる。この結果、混練り時の発熱による粘性の低下を抑制することができるので、より高せん断力を被混練物に作用させて効率的に混練りを行うことができる。また、混練り時のせん断発熱による材料劣化を防止することができるため、安定した品質の材料を生産することができる。
【0055】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る成形機について説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る成形機の概略構成を示す模式的な断面図である。
【0056】
本実施形態の射出成形機30は、図5に示すように、射出成形用の金型40を用いて樹脂射出成形を行うもので、射出シリンダー31、スクリュー32、スクリュー駆動部33、および上記第1の実施形態の混練装置1Aを備える。
【0057】
射出シリンダー31は、上側の側部に設けられた材料投入口31aから投入された混練樹脂材料を射出ノズル31bから射出するものである。
射出シリンダー31の内部には、材料投入口31aを介して投入された混練樹脂材料を射出ノズル31b側に射出するスクリュー32が設けられている。
射出シリンダー31のシリンダー側壁の内部には軸方向に間隔をあけて複数のヒーター34が内蔵されており、これによりシリンダー内部で溶融された混練樹脂材料の温度を一定の温度に保つことができるようになっている。
スクリュー32の射出ノズル31bと反対側の端部は、射出シリンダー31の外部に延出され、モーターなどからなり、スクリュー32を回転駆動するスクリュー駆動部33に連結されている。
【0058】
混練装置1Aは、吐出口9aが材料投入口31aに対向する状態で、射出シリンダー31の上側に起立して設けられている。
【0059】
このような構成の射出成形機30によれば、混練装置1Aのホッパー2に投入された被混練物は、回転シリンダー部9の回転によって、上側に推進力を受けつつ、スクリュー部7の回転によって下方に搬送され、その過程でせん断力を受けて混練りされ、分散性が良好な混練樹脂材料が得られる。
この混練樹脂材料は、流体状態のまま、吐出口9aから材料投入口31aに向かって吐出される。そして、射出シリンダー31の内部でさらに加熱され、スクリュー32の回転によって溶融状態とされて射出ノズル31bから金型40のキャビティ内に射出される。
このように、射出成形機30によれば、熱可塑性樹脂と高分子材料との混練り工程と、これにより得られた混練樹脂材料による射出成形工程とを連続的に行うことができ、混練樹脂材料を固化させてから再加熱する工程を省略することができる。このため、高機能を有する樹脂の成形を効率的に行うことができ、混練樹脂材料の作成から成形までのリードタイムを短縮することができる。
その際、混練装置1Aをコンパクトに構成することができるので、射出成形機30の大きさを小型化することができる。
【0060】
なお、上記の第1〜第3の実施形態の説明では、回転シリンダー部9の内周部に螺旋溝部10A、10Bが設けられた場合の例で説明したが、シリンダー部の内周部に設けられた溝部は、混練空間内の被混練物をスクリュー部の基端側に押し戻す推進力を加えられる溝部であれば、螺旋溝部には限定されない。溝部は、シリンダー部の内周部に沿って、スクリュー部の回転軸線に斜めに交差する方向に延ばして設けられた溝部であれば良く、例えば、スクリュー部の回転軸線に斜めに交差する方向に延ばして設けられた複数の溝部によって回転翼列を形成してもよい。
また、このような溝部は、軸方向に不連続に設けられていてもよい。
【0061】
また、上記の第1〜第3の実施形態の説明では、シリンダー駆動部12として、中空モーターを用いた場合の例で説明したが、例えば、回転シリンダー部9の側方にモーターを配置し、例えば、ベルト伝動機構や歯車伝動機構などの伝動機構を介して、モーターの回転を回転シリンダー部9に伝動する構成としてもよい。
【0062】
また、上記第2の実施形態の説明では、冷却機構がスクリュー部に設けられた場合の例で説明したが、冷却機構は、シリンダー部、あるいはスクリュー部とシリンダー部の両方にそれぞれ設けられていてもよい。
シリンダー部の冷却機構としては、例えば、シリンダー部の外周部に、例えば空気などの冷却媒体を流して冷却する冷却機構を挙げることができる。
【0063】
また、上記第3の実施形態の説明では、本発明の係る成形機の一例として、射出成形機30の場合の例で説明したが、本発明に係る混練装置によって混練りされる混練樹脂材料を用いて成形することができる成形機であれば、射出成形機には限定されない。例えば、樹脂押し出し成形機などであってもよい。
【0064】
また、上記の説明および下記実施例では、被混練物が、2種類の熱可塑性樹脂からなる場合の例で説明したが、被混練物は、熱可塑性樹脂と、非相溶系の高分子材料とからなっていれば、それぞれの種類、種類の数、配合比は、適宜に設定することができる。
【0065】
また、上記の各実施形態、変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
例えば、上記第2の実施形態の混練装置20の回転シリンダー部9に上記第1の実施形態の第1変形例の螺旋溝部10Bを設けて、回転シリンダー部9を反対方向に回転させる構成としてもよい。
また、上記第3の実施形態の射出成形機30において、混練装置1Aを、混練装置1Bや、混練装置20に置き換えた構成としてもよい。
【実施例】
【0066】
次に、上記実施形態の混練装置の実施例について、比較例とともに説明する。
各実施例、各比較例の装置の設定条件、得られた混練樹脂材料の分散性を成形品の透過率によって測定した結果を下記表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
[実施例1]
本実施例は、上記第1の実施形態の混練装置1Aを用いて、パンライト(登録商標)L−1250Y(商品名;帝人化成(株)製)と、パラペット(登録商標)HR−S(商品名;(株)クラレ製)との材料ペレットを、7:3の配合比で混合した被混練物をホッパー2に投入して混練りした。
このとき、表1に示すように、スクリュー部7により与えられるせん断速度Vは、600sec−1、回転シリンダー部9により与えられるせん断速度Vは、400sec−1とした。また、スクリュー部7、回転シリンダー部9の回転方向は、それぞれ正方向、負方向である。また、温度センサー6で検出される固定シリンダー部5の温度(供給側温度)は260℃とした。
スクリュー部7の形状は、上記第1の実施形態に説明した数値例の形状を採用している。
なお、被混練物の構成、供給側温度条件、およびスクリュー部の形状は、以下の実施例2、3、比較例1、2にも共通である。
このような条件下で、混練り時に温度センサー13で検出される吐出口9a近傍の温度(吐出側温度)は、281℃であった。
【0069】
このようにして混練りされた混練樹脂材料の分散性の評価は、次のようにして行った(以下の実施例2、3、比較例1、2も同様)。
まず、混練樹脂材料を熱プレスにより圧縮成形を行って、20mm×20mm×1mmのシートを作成した。
次に、作製したシートの透過率を波長400nmから900nmの範囲で測定し、その平均を測定サンプルの透過率とした。この透過率の測定は分光光度計U−4000(商品名;(株)日立製作所製)を用いて測定した。
実施例1の混練樹脂材料による成形品の透過率は83%であった。透過率の平均が70%以上であれば高分散であると判断できるから、高分散の混練りを行うことができたことが分かる。
【0070】
[実施例2]
本実施例は、上記第1の実施形態の変形例の混練装置1Bを用いて、実施例1と同様の被混練物をホッパー2に投入して混練りした。
このとき、表1に示すように、スクリュー部7により与えられるせん断速度Vは、600sec−1、回転シリンダー部9によりより与えられるせん断速度Vは、400sec−1とした。また、スクリュー部7、回転シリンダー部9の回転方向は、それぞれ正方向、正方向である。
このような条件下で、吐出側温度は、283℃であった。
【0071】
このようにして混練りされた混練樹脂材料の分散性の評価を行ったところ、実施例2の混練樹脂材料による成形品の透過率は83%であった。したがって、実施例1とまったく同様に、高分散の混練りを行うことができたことが分かる。
【0072】
[実施例3]
本実施例は、上記第2の実施形態の混練装置20を用いて、実施例1と同様の被混練物をホッパー2に投入して混練りした。
このとき、表1に示すように、スクリュー部21により与えられるせん断速度Vは、800sec−1、回転シリンダー部9により与えられるせん断速度Vは、650sec−1とした。また、スクリュー部21、回転シリンダー部9の回転方向は、それぞれ正方向、負方向である。
また、冷却管路21cの冷却媒体の流速は、吐出側温度が、264℃になるように設定した。このように本実施例では、冷却機構を備えることにより、スクリュー部21、回転シリンダー部9によるせん断速度を増大させても、実施例1、2、あるいは後述の比較例1、2に比べて、より吐出側温度を低減することができる。
【0073】
このようにして混練りされた混練樹脂材料の分散性の評価を行ったところ、実施例3の混練樹脂材料による成形品の透過率は82%であった。したがって、実施例1とほとんど同様に、高分散の混練りを行うことができたことが分かる。
【0074】
[比較例1、2]
比較例1、2は、上記第1の実施形態の混練装置1Aにおいて、螺旋溝部10Aを削除して、回転シリンダー部9を内周面とするとともに、回転シリンダー部9の回転を停止させた状態の混練装置を用いた例である。被混練物は、実施例1と同様のものを用いた。
このとき、表1に示すように、比較例1では、スクリュー部7により与えられるせん断速度Vを600sec−1とし、比較例2では、スクリュー部7により与えられるせん断速度Vを1000sec−1とした。
このような条件下で、吐出側温度は、比較例1が274℃、比較例2が280℃であった。
【0075】
このようにして混練りされた各混練樹脂材料の分散性の評価を行ったところ、比較例1、2の混練樹脂材料による成形品の透過率は、それぞれ15%、13%であった。
したがって、これらの混練樹脂材料による分散性は、実施例1〜3と比べて格段に劣ることが分かる。
【符号の説明】
【0076】
1A、1B、20 混練装置
3 可塑化部
7、21 スクリュー部
7a、21a スクリュー軸
7b スクリュー
8、22 スクリュー駆動部
9 回転シリンダー部(シリンダー部)
9a 吐出口
9b シリンダー内周面
10A、10B 螺旋溝部(溝部)
12 シリンダー駆動部(中空モーター)
15 制御部
20 混練装置
21c 冷却管路(冷却機構)
25 冷却ポンプ(冷却機構)
30 射出成形機(成形機)
40 金型
S 混練空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー部と、該スクリュー部を回転させるスクリュー駆動部と、前記スクリュー部を囲繞するように設けられたシリンダー部とを有し、前記スクリュー部を回転させることで前記スクリュー部の外周部と前記シリンダー部の内周部との間に形成された混練空間で熱可塑性樹脂を含む被混練物を前記スクリュー部の基端側から先端側に移動させつつ混練りする混練装置であって、
前記シリンダー部を前記スクリュー部の回転軸線回りに回転させるシリンダー駆動部と、
前記シリンダー部の内周部に沿って、前記スクリュー部の回転軸線に斜めに交差する方向に延ばして設けられた溝部とを備え、
前記シリンダー駆動部によって前記シリンダー部を前記スクリュー部に対して相対回転させることで、前記溝部から前記混練空間内の前記被混練物に対して前記スクリュー部の基端側に押し戻す推進力を加えられるようにしたことを特徴とする混練装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記スクリュー部のスクリューの旋回方向と同方向に旋回する螺旋溝部からなり、
前記シリンダー駆動部は、前記シリンダー部を、前記スクリュー部の回転方向と逆方向に回転させるものであることを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記スクリュー部のスクリューの旋回方向と反対方向に旋回する螺旋溝部からなり、
前記シリンダー駆動部は、前記シリンダー部を前記スクリュー部の回転方向と同方向に回転させるものであることを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
【請求項4】
前記シリンダー部および前記スクリュー部の少なくともいずれかを冷却する冷却機構を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の混練装置。
【請求項5】
前記シリンダー駆動部は、前記シリンダー部の外周部に外嵌して取り付けられた環状ローターを回転させる中空モーターからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の混練装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の混練装置を備えることを特徴とする成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280128(P2010−280128A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135116(P2009−135116)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】