説明

清拭用不織布シート

【課題】柔らかく、耐久性に優れるカウンタークロス用途に必要な特性に優れる清拭用不織布シートを提供する。
【解決手段】不織布シートの表裏面にバインダー層を有する清拭用不織布シートであって、不織布シートは、開口面積が2.0〜4.0mm2の複数の貫通孔Hが縦横互いに違い並ぶ貫通孔列パターンを有し、貫通孔列パターンにおける隣接する貫通孔間は、2.0〜4.0mmであり、前記バインダー層は、二層以上あり、少なくとも一つのバインダー層は、不織布シートの表裏面の全体に形成されており、最表裏面層に位置するバインダー層は、等間隔で平列する波形線Wで構成され、平面視において波形模様をなしている、清拭用不織布シートX1により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清拭用不織布シートに関し、特に、吸水性が良く、耐久性が良い、水拭きや洗濯が可能な清拭用不織布シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台拭き用途として織布が主に使用されてきたが、近年、衛生面から不織布で構成されたシートで繰り返し洗濯可能であり乾燥性の良いカウンタークロスが供されるようになった(例えば、特許文献1、2)。
このような清拭用不織布シートでは、清拭に必要な柔らかさの他、織布が達成しているような、吸水性、洗濯耐久性、耐絞り性、伸び耐性が要求される。
かかる清拭用不織布シートでは、比較的柔らかいスパンレース等の不織布シートを主材とするとともに、表裏面にバインダーを塗布して、要求される強度を発現させるようにしている。
【特許文献1】特開2003−230520
【特許文献2】特開2002−105826
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の清拭用不織布シートは、数回の洗濯で伸びや毛羽立ち、ほつれが生じているのが現状であり、強度の点で十分とはいえないものであった。
強度発現のみに着目すれば、バインダー塗工厚を厚くする等の方法が対処方となるが、清拭用途では、柔らかさも重要な要素となるため、単にバインダー厚さを増やすことができない。
そこで、本発明の主たる課題は、十分な柔らかさを確保又は向上させつつ、乾燥性、吸水性、洗濯耐久性、耐絞り性、伸び耐性といった台拭き用途に必要な特性を向上させた清拭用不織布シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<請求項1記載の発明>
不織布シートの表裏面にバインダー層を有する清拭用不織布シートであって、
不織布シートは、開口面積が2.0〜4.0mm2の複数の貫通孔が縦横互いに違い並ぶ貫通孔列パターンを有し、
貫通孔列パターンにおける隣接する貫通孔間は、2.0〜4.0mmであり、
前記バインダー層は、二層以上あり、
少なくとも一つのバインダー層は、不織布シートの表裏面の全体に形成されており、
最表裏面層に位置するバインダー層は、等間隔で平列する波形線で構成され、平面視において波形模様をなしている、ことを特徴とする清拭用不織布シート。
【0005】
<請求項2記載の発明>
前記不織布シートが、レーヨンを主成分とするスパンレース不織布である請求項1記載の清拭用不織布シート。
【0006】
<請求項3記載の発明>
前記貫通孔は、波形線が連続する方向と直交する方向に長辺を有する楕円形状である、請求項1又は2記載の清拭用不織布シート。
【0007】
<請求項4記載の発明>
前記波形線は、交互に弧が反転しつつ連続する円弧連続の波形線、又はサインカーブである、請求項1〜3の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【0008】
<請求項5記載の発明>
波形線の幅は、2.0〜5.0mmであり、隣接する波形線間の間隔は、0〜2.0mmである、請求項1〜4の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【0009】
<請求項6記載の発明>
波形線の単位波の長さが、5.0〜30.0mmである請求項1〜5の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【0010】
<請求項7記載の発明>
波形線の高さが、4.0〜8.0mmである請求項1〜6の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、十分な柔らかさを有し、しかもカウンタークロス用途に必要な特性に優れる清拭用不織布シートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次いで、本発明の実施の形態を以下に詳述する。図1は、本実施の形態にかかる清拭用不織布シートX1の平面図である。
本形態の清拭用不織布シートX1は、不織布シートの表裏面に二層以上のバインダー層を有するものである。
バインダー層は、二層以上であれば層数は特に限定されないが、柔らかさ確保と強度のバランスの点から二層であるのが好ましい。本形態も二層を例にして以下、説明する。
【0013】
二層のうち不織布シートに近い又は不織布に含浸されて一体となっている下層(図示しない)は不織布シートの表裏面の全体に形成され、それよりも表裏面に近い上層は、図1及び2に示されるとおり、特徴的に、等間隔で平列する波形線W,Wで構成され、平面視において波形模様をなす。
一つの波形線Wの形状は、凹凸が連続するものであれば、山形、のこぎり型などでもよく、特に限定はされないが、好適には交互に弧が反転しつつ連続する円弧連続の波形線、又はサインカーブである。
特に好適なものは、図示例の如く弧が反転しつつ連続する円弧連続の波形線である。波形線に角となる部分がないため、波形線に延在方向に引っ張られた時の、引張り力に対する力の分散性に優れ、破断し難いものとなる。
【0014】
波形線の好適な構成を特に図2に基づき説明すると、まず、その幅L1は2.0〜5.0mmとし、隣接する波形線間の間隔L2は、0〜2.0mmとするのがよい。幅L1が、2.0mm未満であると、上記波線間の間隔L2との関係で、不織布シート表面の繊維の毛羽立ちを抑制する効果が低下し、清拭に際して問題となる繊維抜けや毛羽立ちの発生のおそれが高まる。他方、5.0mmを超えると、同様に波形線間隔L2との関係で、シートが硬くなりやすくなる。波形線間隔L2が2.0mmを超えると、シートの耐久性が悪化し、伸び、毛羽立ち、ほつれが発生しやすくなる。なお、波形線間隔L2とは、図2からも理解されるように、隣接する波形線の各頂部を結ぶ線間の距離である。
他方、波形線Wの単位波L3の長さは、5.0〜30.0mmとするのがよい。5.0mm未満であるとバインダー付与部が密になりすぎて、硬くなり、また清拭性が悪化する。30.0mmを超えると、相対的に直線に近くなり、本発明が所望する強度を確保するのが困難となる。特に、引張りに対する強度を確保するのが困難となる。
他方、波形線の高さL4は、4.0〜8.0mmとするのがよい。4.0mm未満であると波形線延在方向の引張り強度が十分に発現し難く、8.0mmを超えると、波形線並列方向の引張り強度が十分に発現し難くなる。
【0015】
上記説明のバインダー層は、上層W、下層ともに、バインダー樹脂等を用いることにより形成することができ、例えば、エマルジョンの樹脂バインダーを使用することができる。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
なお、上層と下層について同様のバインダー樹脂を用いる必要はない。特に、上層には、染料等の着色料を混合することで、視覚的に見栄えのよい波形模様が得られる。染料はバインダーの着色に用いられている既知のものが利用できる。
【0016】
バインダー層の形成方法としては、下層、上層の順に分けてバインダー樹脂を不織布シートに付与すればよい。
下層ついては、塗工機による塗布、印刷機による印刷、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。浸漬法が特に好ましい。
上層についても、塗工機による塗布、印刷機による印刷、浸漬法、スプレー法等を用いることができるが、波形線Wを正確に形成できることから、浸漬法よりも、スプレー法や塗工機による塗布、印刷機による印刷による付与が適する。
【0017】
バインダー樹脂を付与する場合は、下層については不織布シート質量に対して3〜5%が好ましく、より好ましくは4〜4.5%である。塗布量が3%未満の場合は、樹脂が繊維全体に均一に塗布できず部分的に弱くなる場合がある。そのため、毛羽立ち、繊維抜けが発生し易く、洗濯を繰り返すような使用に耐えられない場合がある。一方、塗布量が5%を超えると、また不織布が硬くなり手触り感が悪くなるとともに、拭き取り対象物の微妙な凹凸に柔軟に対応できず、拭き取り効果が低下してしまうおそれが高まる。
上層については、不織布シート質量に対して8〜10%が好ましく、より好ましくは8.5〜9.5%である。8%未満であると、波形線によることの効果が発現し難い。10%を超えると、また不織布が硬くなり手触り感が悪くなる。
【0018】
他方、本発明の清拭用不織布シートは、図1及び3に示されるように、開口面積が2.0〜4.0mm2の複数の楕円形の貫通孔H,H…が縦横互いに違い並ぶ貫通孔列パターンを有する。
貫通孔Hの開口面積が2.0mm2未満であると、柔らかさが劣るようになるとともに、乾燥性が不十分となる。他方、4.0mm2を超えると、貫通孔H,H…形成に起因して伸び、毛羽立ち、ほつれ量が過度となり十分な強度を確保できない。また、破断のおそれも高まる。
前記貫通孔列パターンにおける隣接する貫通孔間の間隔は、縦間隔L5、横間隔L6とも2.0〜4.0mm、好適には2.5〜3.5mmである。ただし。縦間隔L5と横間隔L6は、必ずしも同一にする必要はない。2.0mm未満であると、貫通孔形成による伸び、毛羽立ち、ほつれや破断のおそれが高まる。他方、4.0mmを超えると、柔らかさが劣るようになるとともに、乾燥性が不十分となる。
貫通孔H自体の形状は特に限定されないが、引張り時の破断起点となる角がないことから、円形が適する。特に好ましくは、図示例の如く、バインダー層の内の上層を構成する波形線が連続する方向と直交する方向に長辺を有する楕円形状である。この関係にあると縦、横の引張り力がきわめて強靱になる。
【0019】
貫通孔形成については、繊維を分断しない形成方法が適し、例えば、湿潤状態の不織布シートに対して、ジェット空気流、ジェット水流等により形成するのがよい。貫通孔形成は、不織布シートを形成する際、例えば、スパンレース法などによる不織布シート形成の際に設けることもできる。
ここで、不織布シートの素材は、清拭用途の不織布シートに用いられている既知の不織布シートが用いられる。
不織布シートの原料繊維の具体例を挙げれば、コットン、レーヨン等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンと痾オレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から構成される熱可塑性繊維、生分解性合成繊維などから、一種又は数種を適宜選択することができる。
【0020】
前記熱可塑性繊維は、単一成分の繊維でもよく、複数の樹脂を適宜組み合わせて構成される複合繊維、例えば並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造の複合繊維とすることもできる。
上記繊維の中でも、水との親和性に優れるとともに十分な湿潤時の強度を発現させることができ、しかも柔らかさもある、レーヨン繊維が特に適する。
【0021】
原料繊維からの不織布の製法としては、エアスルー、ヒートロールによるサーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、エアレイド等の製法が採用できるが、エアレイド、スパンレースが好適であり、特に、柔らかさを高められるスパンレースが適する。
スパンレース法であれば、使用する繊維の繊維長は30〜60mm程とするのが好ましい。更に好ましくは32mm以上70mm以下である。
用いる繊維の繊維太さは、1.0〜5.0dtex、好適には1.5〜3.5dtexとするのがよい。繊維の太さが1.0dtex未満であると、乾燥時および湿潤時の引張強度が不足する。反対に5.0dtexを超えると剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
用いる不織布シートの坪量は、柔軟性及び強度の点から30g/m2以上100g/m2以下とするのが好ましい。更に好ましくは40g/m2以上80g/m2以下である。坪量が小さすぎると、強度不足となるとともに吸水性が低下する。坪量が大きすぎると柔軟性が低下するとともに、適宜の大きさに折り曲げたりする時に剛度が大きく取り扱いにくくなる。
【0022】
以上の実施形態に代表される本発明の清拭用シートは、十分な柔らかさを確保しつつ、乾燥性、吸水性、洗濯耐久性、耐絞り性、伸び耐性といったカウンタークロス用途に必要な特性が向上されている。
【実施例】
【0023】
本発明に係る清拭用不織布シート(実施例1〜3)と他の清拭用不織布シート(比較例1〜4)とについて、「洗濯後の伸び」、「乾燥性」、「引張強度」、「破断性」について評価試験を行った。
各例の組成・物性及び洗濯後の伸び、乾燥性の結果は表1に、「破断性」の結果は、図3に示す。
【0024】
<洗濯後の伸び>
伸び率(%)で評価した。具体的には、175mm×300mmの試料を、松下電器産業株式会社製「電気バケツ」(品番:N−BK2−A)の中に、水道水7?及び花王株式会社製「キッチンハイター」42mlと共に入れ、洗濯時間0.5時間、1.0時間、3.0時間、5.0時間の4水準を行った後の試料の伸び率を測定する。本発明の不織布では、0〜2%までの伸び率が好ましいことから、0〜2%までのものを「良い(○)」、2%を越えたものを「悪い(×)」と評価した。
【0025】
<乾燥性>
洗濯後の伸び試験同様の試料、装置を用い試験し、洗濯時間1.0時間後のサンプルを3時間常温にて乾燥させた後、シートの濡れ具合により判断した。乾燥した状態のものを「良い(○)」、湿り気が残るものを「悪い(×)」と評価した。
【0026】
<引張強度>
試料は、縦・横方向ともに幅25mm×長さ150mmで作成する。ロードセル引張試験機のつかみ間隔を100mmに設定し、速度100mm/minで試験する。
【0027】
<破断性>
実施例1、比較例4について、引張強度試験同様の試料、装置を用い、速度300mm/minで1500cNまで力を加えたときの、破断具合を確認した。
【0028】
【表1】

【0029】
表1及び図4に示される結果より、本発明の清拭用不織布シート(実施例)は、他の清拭用不織布シートと比較して、耐久性に優れ、速乾性に優れ、引張り強度、破断性に優れることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、カウンタークロスのほか、清拭用途、特に水分存在での清拭用に用いられる清拭用シートに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の清拭用不織布シートの概略を示す平面図である。
【図2】バインダーによる波形線を説明するための図である。
【図3】貫通孔間の関係を説明するための図である。
【図4】破断試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
X1…清拭用不織布シート、W…波形線、H…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シートの表裏面にバインダー層を有する清拭用不織布シートであって、
不織布シートは、開口面積が2.0〜4.0mm2の複数の貫通孔が縦横互いに違い並ぶ貫通孔列パターンを有し、
貫通孔列パターンにおける隣接する貫通孔間は、2.0〜4.0mmであり、
前記バインダー層は、二層以上あり、
少なくとも一つのバインダー層は、不織布シートの表裏面の全体に形成されており、
最表裏面層に位置するバインダー層は、等間隔で平列する波形線で構成され、平面視において波形模様をなしている、ことを特徴とする清拭用不織布シート。
【請求項2】
前記不織布シートが、レーヨンを主成分とするスパンレース不織布である請求項1記載の清拭用不織布シート。
【請求項3】
前記貫通孔は、波形線が連続する方向と直交する方向に長辺を有する楕円形状である、請求項1又は2記載の清拭用不織布シート。
【請求項4】
前記波形線は、交互に弧が反転しつつ連続する円弧連続の波形線、又はサインカーブである、請求項1〜3の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【請求項5】
波形線の幅は、2.0〜5.0mmであり、隣接する波形線間の間隔は、0〜2.0mmである、請求項1〜4の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【請求項6】
波形線の単位波の長さが、5.0〜30.0mmである請求項1〜5の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。
【請求項7】
波形線の高さが、4.0〜8.0mmである請求項1〜6の何れか1項に記載の清拭用不織布シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−213194(P2008−213194A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50828(P2007−50828)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】