説明

減圧弁

【課題】リリーフ機能を有しつつ、簡易な構造で小型化に対応できる減圧弁を提供する。
【解決手段】減圧弁26は、二次室54の流体圧力が所定値F4を超えた場合、ダイヤフラム68の動作により二次室54と外部とを連通させる連通手段84を有する。この構成より、減圧弁26は、リリーフ機能を有しつつ、簡易な構造で小型化に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減圧弁に関し、特にリリーフ機能を有する減圧弁の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧弁は、二次側の流体圧力を、一次側の流体圧力より下げ、かつ一定に保つ装置である。このような減圧弁には、二次側の流体圧力の異常な上昇を防止するためにリリーフ機能を有するものが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、整圧器(減圧弁に相当)本体にリリーフ弁部を一体に備える整圧器が開示されている。整圧器本体は、流体流路の一次側と二次側とを仕切る隔壁を有し、この隔壁には一次側と二次側を連通する開口部が形成されている。そして、整圧器本体は、二次側の流体圧力の大きさに応じて開口部の開度を調整し、二次側の流体圧力の整圧を行う整圧部を有する。リリーフ弁部は、流体流路を間にして、整圧部に対向するように設けられている。リリーフ弁部は、二次側の流体圧力の異常な上昇が検知された場合、二次側の流体を外部に放出するリリーフ動作を行う。
【0004】
下記特許文献2には、空気駆動弁を流れる空気の圧力を検出するセンサと、弁のストロークを検出するセンサと、弁を駆動させる駆動源の作動を検出するセンサと、弁に伝達される操作力を検出するセンサと、弁の開閉状態を監視するためのリミットスイッチの作動を検出するセンサとを有し、これらのセンサの検出結果に基づいて空気駆動弁の異常を診断する空気駆動弁の診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−310040号公報
【特許文献2】特開平11−210921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されるような減圧弁は、流体圧力を減圧する機構である整圧部と、リリーフ機能を有する機構であるリリーフ弁部とが流体流路を間にして対向するように設けられている。このような構成とすることにより、減圧弁と安全弁が流体流路に直列に設置されるより、流路方向に対して省スペース化を図ることができる。しかしながら、装置類の設置スペースが限られる場所、例えば車両内に設置される減圧弁は、更なる小型化が要求される。また、減圧弁を保守点検又は修理する場合、その作業を簡略化するために、更なる部品点数の削減と組み立て工数の削減が要求される。
【0007】
本発明は、リリーフ機能を有する減圧弁であって、簡易な構造で小型化に対応できる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一次側の管路から流体が流入する一次室と、この一次室に連通孔を介して連通するとともに二次側の管路に流体が流出する二次室と、外部に連通する大気室とを有するハウジングと、ハウジングの内部に設けられ、二次室と大気室とを区画形成するダイヤフラムと、ダイヤフラムに接続され、二次室の流体圧力と大気室の大気圧との圧力差により弾性変形するダイヤフラムの動作により連通孔を開閉する弁体と、を有する減圧弁において、二次室の流体圧力が所定値を超えた場合、ダイヤフラムの動作により二次室と外部とを連通させる連通手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、連通手段は、ハウジングに形成され、大気室と外部とを連通する外部連通路と、ダイヤフラムの大気室側の表面に接して設けられ、外部連通路に嵌ってこれを封止する封止部材と、を有し、二次室の流体圧力が所定値を超えた場合、ダイヤフラムに押されて封止部材が潰れるように変形することにより外部連通路と二次室との間に隙間が形成され、二次室と外部とが連通することができる。
【0010】
また、ハウジングは、ハウジング本体と、ハウジング本体の開口部を覆うカバーを有し、ダイヤフラムは、ハウジング本体とカバーとが接合する接合部に挿入され、ハウジング内の気密性を向上させるシール部を有し、封止部材は、シール部の大気室側の表面に接して設けられることが好適である。
【0011】
また、外部連通路は、ハウジングの接合部に形成されることができる。
【0012】
また、ハウジングは、ハウジング本体と、ハウジング本体の開口部を覆うカバーと、軸部がカバーにスライド可能に貫通するとともに軸部の先端がハウジング本体に螺合する締結ボルトとを有し、ダイヤフラムは、ハウジング本体とカバーとが接合する接合部に挿入され、ハウジング内の気密性を向上させるシール部を有するとともに、ハウジング本体の開口部を覆うことで、ハウジング本体側に二次室とカバー側に大気室とを区画形成し、連通手段は、締結ボルトの首部とカバーとの間に設けられ、カバーをハウジング本体の方向に付勢する弾性部材であり、二次室の流体圧力が所定値を超えた場合、カバーを介してダイヤフラムに押された弾性部材が縮むことによりシール部と接合部との間に隙間が形成されて、二次室と外部とが連通することができる。
【0013】
また、大気室に設けられ、弁体に対して連通孔を開放する方向の付勢力をダイヤフラムに付勢するダイヤフラムばねと、ダイヤフラムばねの一端に当接してダイヤフラムばねの付勢力を受けるとともに、ダイヤフラムを保持するダイヤフラム保持部と、ダイヤフラム保持部の位置を検出する位置検出センサと、を有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の減圧弁によれば、リリーフ機能を有しつつ、簡易な構造で小型化に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態の減圧弁の構成を示す断面図である。
【図3】二次側の流体を外部に放出するときの減圧弁の要部を示す図である。
【図4】二次側の流体圧力の異常を検出するときの減圧弁の要部を示す図である。
【図5】別の態様の減圧弁の構成を示す断面図である。
【図6】二次側の流体を外部に放出するときの減圧弁の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る減圧弁の実施形態について、図を用いて説明する。一例として、燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムを挙げ、この燃料電池システムの管路であって、燃料ガスが流れる燃料ガス管路に設置される減圧弁について説明する。なお、本発明は、燃料電池システムの燃料ガス管路に限らず、流体が流れる管路に設置される減圧弁にも適用することができる。
【0017】
まず、燃料電池自動車に搭載される燃料電池システム10について図1を用いて説明する。燃料電池システム10は、燃料ガスと酸化ガスとを電気化学反応させて発電を行なう燃料電池12を有する。なお、燃料電池システム10に用いられる燃料ガスは水素であり、酸化ガスは空気である。
【0018】
燃料電池12には、これのアノード(図示せず)に燃料ガスを供給する燃料ガス管路14と、燃料電池12のカソード(図示せず)に酸化剤ガスを供給する酸化ガス管路16とが接続されている。
【0019】
また、燃料電池12には、アノードから排出される排出燃料ガスを燃料ガス管路14に戻し、その排出燃料ガスを燃料電池12に循環させる循環管路18と、カソードから排出される排出酸化ガスを外部へ放出する放出管路20が接続されている。
【0020】
燃料電池12は、例えばフッ素樹脂などの高分子材料により形成されたプロトン導電性の膜体である電解質膜を有する固体高分子型の燃料電池である。この電池の単位セル(図示せず)は、電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、二枚のセパレータでさらに挟んで構成される。この単位セルを複数積層することにより、燃料電池12が構成される。
【0021】
燃料電池システム10は、燃料ガスを燃料電池12に供給する供給源として、タンク22を有する。タンク22は、燃料ガスを高圧状態にして貯蔵する。タンク22と燃料電池12とは、燃料ガス管路14で接続される。
【0022】
燃料ガス管路14には、タンク22から燃料電池12に向けて主止弁24と減圧弁26が順に取り付けられている。
【0023】
主止弁24は、電気信号により電磁石を駆動して弁を開閉する電磁弁である。主止弁24は、自動車の停止時、具体的にはイグニッションスイッチがオフである場合、閉状態となり、自動車の運転時、具体的にはイグニッションスイッチがオンである場合、開状態となるように制御される。また、後に詳述するが、主止弁24は、減圧弁26が内蔵する位置検出センサ28(図3に示す)からの電気信号により弁を開閉する。
【0024】
本実施形態の減圧弁26は、タンク22から燃料電池12に供給される燃料ガスの圧力を減圧する減圧弁の機能とともに、燃料電池12に供給される燃料ガスの圧力が異常に上昇した場合、燃料ガスを外部へ放出する安全弁の機能とを備えた弁装置である。この減圧弁26の詳細な構造については後述する。
【0025】
また、燃料ガス管路14には、減圧弁26の下流側に循環管路18が接続されている。循環管路18には、燃料電池12から燃料ガス管路14に接続する部分までの間に、気液分離装置30とポンプ32とが順に設けられている。燃料電池12から排出される排出燃料ガスには、未反応の燃料ガスと、電気化学反応により生成される水(水蒸気も含む)とが含まれる。気液分離装置30は、排出燃料ガスに含まれる水を分離する。気液分離装置30には、分離された水を排水する排水弁34が接続されており、この排水弁34には、上述した放出管路20が接続されている。ポンプ20は、燃料電池12から排出される排出燃料ガスを燃料ガス管路14に送り出す。
【0026】
燃料電池12のカソードに接続する酸化ガス管路16は、その端部を外部に開放している。酸化ガス管路16には、その端部から燃料電池12に向けフィルタ36と空気ポンプ38が順に設けられ、この空気ポンプ38の動作により、外部の空気がフィルタ36で清浄されて燃料電池12に供給される。
【0027】
次に、減圧弁26の構成について、図2を用いて説明する。減圧弁26は、ハウジング40を有する。ハウジング40は、ハウジング本体42と、ハウジング本体42に対し着脱可能なカバー44とを有する。
【0028】
ハウジング本体42は、減圧弁26の組み立て、または保守点検の作業性を考慮し、ハウジング本体42の上面に開口部46が形成されている。開口部46の周囲には、その開口部46を縁取るようにハウジング本体42の端部の面がある。この面は、後述するようにカバー44と接合する面であり、ここを以降、ハウジング本体接合面42aと記す。
【0029】
ハウジング本体42には、タンク22に連通する燃料ガス管路14(一次側の管路)に接続される一次側ポート48と、燃料電池12に連通する燃料ガス管路14(二次側の管路)に接続される二次側ポート50とが取り付けられている。ハウジング本体42は、一次側ポート48から燃料ガスが流入する一次室52と、二次側ポート50に燃料ガスが流出する二次室54とを有する。そして、ハウジング本体42には、一次室52と二次室54とを連通させる連通孔56と、連通孔56の開口部側に弁座58とが形成されている。
【0030】
一次室52と二次室54には、連通孔56を貫通するように弁体60が設けられている。弁体60は、弁座58に対応する形状を有しており、弁座58に接触してこれを閉じる状態と、弁座58から離れてこれを開く状態とに作動する。連通孔56に対向する一次室52の壁面には、弁ばね62が設置されている。弁ばね62の一端は、一次室52の壁面に当接し、他端は、弁体60に当接しており、弁ばね62により弁体60には弁座58を閉じる方向、すなわち一次室52から連通孔56を介して二次室54に向かう方向(図2の矢印X1方向)に付勢する付勢力が加えられている。
【0031】
カバー44は、ハウジング本体42の開口部46を覆う蓋である。カバー44は、開口部46に対応する部分が隆起した形状である。カバー44の外周部には、ハウジング本体接合面42aに対向し、これに接合するカバー接合面44aが形成されている。カバー接合面44aとハウジング本体接合面42aとを接合させ、カバー44とハウジング本体42とを締結ボルト64で締め付けることにより、カバー44がハウジング本体42に固定されて開口部46を覆う。ここで、カバー接合面44aとハウジング本体接合面42aが接合する部分、すなわちカバー44とハウジング本体42が接合する部分のことを、以降、接合部66と記す。
【0032】
ハウジング40は、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料または金属を基材として膜状に形成されたダイヤフラム68を有する。ダイヤフラム68は、開口部46を覆い、ハウジング本体42とカバー44とにより挟み付けられて装着される。上述したように開口部46に対応する、カバー44の部分が隆起しているので、開口部46を覆う部分は、ダイヤフラム68と、これに対し所定の間隔をあけて配置されたカバー44とにより構成される。この構成により、カバー44とダイヤフラム68との間の間隔に空間が形成される。この空間は、カバー44に形成された貫通孔70により外部と連通し、常に大気圧の状態となるので、この空間のことを、以降、大気室72と記す。このように、ダイヤフラム68は、開口部46を覆うことにより、ハウジング本体42側の二次室54とカバー44側の大気室72を区画形成する。
【0033】
ダイヤフラム68は、これの外周部にシール部74を有し、シール部74が接合部66に挿入される。シール部74は、締結ボルト64の締め付けにより、カバー接合面44aとハウジング本体接合面42aに隙間なく密着するので、ハウジング40の気密性が向上する。
【0034】
ダイヤフラム68の中央域には、これを保持するダイヤフラム保持部76が設けられている。ダイヤフラム保持部76は、大気室72側に位置する第一保持部78と、二次室54側に位置する第二保持部80とを有し、これらの保持部78,80がダイヤフラム68を挟持する。本実施形態のダイヤフラム68は、これの中央域に孔が形成され、この孔の縁にシール部81を有する。シール部81は、第一及び第二保持部78,80の間に挿入され、ボルト(図示せず)で第一及び第二保持部78,80を締め付けることにより、第一及び第二保持部78,80に隙間なく密着する。なお、ダイヤフラム68の中央域の形成される孔の大きさは、第一及び第二保持部78,80を締結するボルトの軸部の径より大きく、かつ第一及び第二保持部78,80より小さければ、任意の大きさにすることができる。
【0035】
第二保持部80には、弁体60が接続されている。大気室72には、ダイヤフラムばね82が設けられている。ダイヤフラムばね82の一端は、連通孔56に対向するカバー44の壁面に当接し、他端は、第一保持部78に当接しており、ダイヤフラムばね82によりダイヤフラム68とダイヤフラム保持部76を介して弁体60には弁座58を開ける方向、すなわち二次室54から連通孔56を介して一次室52に向かう方向(図2の矢印X2方向)に付勢する付勢力が加えられている。つまり、ダイヤフラムばね82は、弁ばね62に対して逆向きの付勢力を発揮する。なお、ダイヤフラムばね82のばね荷重は、弁ばね62のばね荷重より大きく設定されている。このため、減圧弁26に流体が導入されない状態においては、弁体60がX2方向に移動し、連通孔56は開放状態になっている。
【0036】
減圧弁26が流体圧力を減圧する動作について説明する。燃料ガス管路14から一次側ポート48を介して一次室52に流入した燃料ガスは、連通孔56を通過することにより減圧され二次室54に流れ込む。これにより、二次室54の燃料ガスの圧力と大気室72の圧力との圧力差に基づいてダイヤフラム68がX1方向に向かう力F1を受ける。このとき、ダイヤフラム68は、弁ばね52から弁体60を介してX1方向に向かう力F2と、ダイヤフラムばね82からX2方向に向かう力F3とを受ける。これらの力によりダイヤフラム68がX1またはX2方向に弾性変形し、X1方向に向かう力F1とF2の合計と、X2方向に向かう力F3とが均衡した時点において、弁体60が保持される。この均衡により、連通孔56の開度が決定される。一方、X1方向に向かう力とX2に向かう力がそれぞれ変化すると、ダイヤフラム68が弾性変形し、弁体60の均衡する位置が変化するため、連通孔56の開度が変化する。例えば、二次室54の燃料ガスの圧力が大きくなるにつれてX1方向に向かう力F1が大きくなるので、ダイヤフラム68はX1方向に動作し、弁体60は連通孔56を閉じる方向(X1方向)に移動する。一方、二次室54の燃料ガスの圧力が小さくなるにつれてX1方向に向かう力F1が小さくなるので、ダイヤフラム68はX2方向に動作し、弁体60は連通孔56を開ける方向(X2方向)に移動する。このようなダイヤフラム68の動作により、減圧弁26は流体圧力を減圧するとともに、二次側の流体圧力を一定に保つことができる。
【0037】
本実施形態の減圧弁26は、二次室54の流体圧力が所定値F4を超えた場合、ダイヤフラム68の動作により二次室54と外部とを連通させる連通手段84を有する。この構成より、減圧弁26は、リリーフ機能を有しつつ、簡易な構造で小型化に対応することができる。以下、連通手段84について詳述する。ここで、所定値F4とは、二次側の燃料ガスの圧力により二次側のシステムが破損するおそれがある値のことである。
【0038】
連通手段84は、ハウジング40に形成され、大気室72と外部とを連通する外部連通路86と、ダイヤフラム68の大気室72側の表面に接して設けられ、外部連通路86に嵌ってこれを封止する封止部材88とを有する。
【0039】
外部連通路86は、ハウジング40の接合部66に形成されている。具体的には、カバー44のカバー接合面44aに、外部から大気室72に向けて溝が形成され、この溝の開口部をハウジング本体接合面42aが覆うことにより外部連通路86が形成される。
【0040】
封止部材88は、所定の力F4を超える力が加わると潰れるように変形する変形部材90と、変形部材90とダイヤフラム68との間に設けられ、ダイヤフラム68と変形部材90と間の均一の面圧を確保し、外部連通路86を封止する板状部材92とを有する。変形部材90は、可塑性を有する部材であり、例えば金属からなるパイプである。板状部材92は、ダイヤフラム68のシール部74の大気室72側の表面に接して設けられている。なお、変形部材90は、所定の力F4を超える力が加わると変形し、その力が所定に力F4以下になると元の形状に戻る弾性を有する例えば板ばねであってもよい。また、封止部材88は、ダイヤフラム68と変形部材90との間で均一の面圧が確保され、変形部材90が外部連通路86を封止するのであれば、板状部材92がなくてもよい。
【0041】
次に、減圧弁26が二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F4を超えた場合、その燃料ガスを外部に放出する動作について、図3を用いて説明する。図3は、二次側の流体を外部に放出するときの減圧弁26の要部を示す図である。
【0042】
二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F4を超えたとき、その力がダイヤフラム68にX1方向に加わり、同時に、その力がダイヤフラム68を介して封止部材88にも加わる。封止部材88は、上述したように、所定の力F4を超える力が加わると潰れるように変形する変形部材90を有する。このため、封止部材88は、X1方向にダイヤフラム68に押されてX1方向に潰れる。このとき、ダイヤフラム68のシール部74がX1方向に移動するため、シール部74とハウジング本体接合面42aとの間に隙間が生じる。この隙間により、二次室54と外部連通路86とが連通し、二次室54の燃料ガスが外部に放出される。
【0043】
本実施形態の減圧弁26によれば、減圧機能のみを有する従来の減圧弁の構造に連通手段84という簡易な構造を加えることにより、二次側の燃料ガスの圧力の異常な上昇を確実に防止することができる。また、連通手段84は、減圧機能のみを有する従来の減圧弁のハウジングの内部に取り付けられるため、小型化に対応することができる。また、連通手段84は、部品点数も少ないため、減圧弁26を保守点検又は修理する場合、組み立て工数を削減することができ、作業の簡略化を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態の減圧弁26は、ダイヤフラム保持部78の位置を検出する位置検出センサ28を有する。位置検出センサ28の構成について図4を用いて説明する。
【0045】
位置検出センサ28は、カバー44の内壁に設けられる。位置検出センサ28は、このセンサ本体から大気室54側に伸び、X1またはX2方向に回動可能な棒状の接点28aを有する。接点28aは、この先端がダイヤフラム保持部76の可動域にかかる長さを有しており、二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F4より低い所定値F5のときに、ダイヤフラム保持部76に接触するように設定されている。ここで、所定値F5とは、二次側のシステムが許容可能な燃料ガスの圧力値、すなわち二次側の流体圧力の上限値のことである。
【0046】
位置検出センサ28の動作について説明する。二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F5まで上昇するにつれて、ダイヤフラム68とダイヤフラム保持部76はX1方向に移動する。そして、二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F5になると、ダイヤフラム保持部76の第一保持部78と接点28aとが接触し、接点28aがX1方向に回動する。この接点28aの動作により、位置検出センサ28内の電気回路が閉回路となり、位置検出センサ28は、二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F5の場合におけるダイヤフラム保持部76の位置を検出することができる。すなわち、位置検出センサ28は、予め設定された二次側の燃料ガスの圧力値を検出することができる。
【0047】
このような構成によれば、位置検出センサ28により二次側の燃料ガスの圧力値であって許容される上限値F5を検出することができるので、同様の上限値F5を検出するために二次側の燃料ガス管路14に設置される圧力センサを省くことができる。そして、二次側の燃料ガスの圧力が上限値F5になると、位置検出センサ28の検出信号に基づいて燃料電池システム10の主止弁24を閉動作させることにより、一次側の燃料ガス管路14から減圧弁26に流入する燃料ガスを停止させることができ、燃料電池システム10の不具合を未然に防ぐことができる。
【0048】
本実施形態においては、位置検出センサ28の接点28aがダイヤフラム保持部76に接触することにより、ダイヤフラム保持部76の位置を検出する場合について説明したが、この構成に限定されない。コイルを内蔵した無接触式のポジションセンサを用い、検出される磁束の変化により、ダイヤフラム保持部76の位置を検出することもできる。
【0049】
次に、別の態様の減圧弁26の構成について、図5を用いて説明する。なお、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
ハウジング本体42には、軸部64aに形成されるねじ山に係合する締結ボルト64用の孔42bが形成される。そして、カバー44には、軸部64aが貫通したときに軸部64aに対して間隔が空くように締結ボルト64用の孔44bが形成される。また、これらの孔42b,44bは、これらの長さの合計が締結ボルト64の軸部64aの長さより短くなるように形成される。このように構成される孔42b,44bに締結ボルト64の軸部64aをX2方向に向けて差し込むことにより、締結ボルト64は、軸部64aがカバー44にスライド可能に貫通するとともに、軸部64aの先端がハウジング本体42に螺合するように設けられる。このとき、締結ボルト64の首部64bは、カバー44の表面に対して間隔を空けて位置する。
【0051】
この実施形態における連通手段94は、締結ボルト64の首部64bとカバー44との間に設けられ、カバー44をハウジング本体42の方向(X2方向)に向けて付勢する弾性部材である。この弾性部材は、例えば、軸部64bの外周に間隔を空けて巻回されたコイルばねであり、このコイルばねの一端が首部64bに当接し、他端がカバー44に当接するように設けられる。このコイルばねは、上述した所定の力F4を超える力が加わると軸方向に縮む特性を有する。通常時においては、このコイルばねの付勢力により、カバー44はハウジング本体42に押し付けられ、カバー44はハウジング本体42に固定される。このとき、接合部66に挿入されたダイヤフラム68のシール部74が、連通手段94の付勢力により、カバー接合面44aとハウジング本体接合面42aに隙間なく密着するので、ハウジング40の気密性が向上する。
【0052】
次に、減圧弁26が二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F4を超えた場合、その燃料ガスを外部に放出する動作について、図6を用いて説明する。図6は、二次側の流体を外部に放出するときの減圧弁26の要部を示す図である。
【0053】
二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F4を超えたとき、その力がダイヤフラム68にX1方向に加わり、同時に、その力がダイヤフラム68からカバー44を介して連通手段94にも加わる。具体的には、図に示されるように、二次室54の燃料ガスの圧力が所定値F4を超えたとき、その力を受けたダイヤフラム68とダイヤフラム保持部76がX1方向に移動し、ダイヤフラム保持部76の第一保持部78の端部がカバー44の内壁に当接する。そして、ダイヤフラム68とダイヤフラム保持部76に受ける力がカバー44を介して連通手段94に加わる。
【0054】
連通手段94は、上述したように、所定の力F4を超える力が加わると縮むように変形するコイルばねである。このため、連通手段94は、ダイヤフラム68に押されたカバー44によりX1方向に押されて縮む。このとき、ダイヤフラム68のシール部74がX1方向に移動するため、シール部74とハウジング本体接合面42aとの間に隙間が生じるとともに、ハウジング本体接合面42aとカバー接合面44aとの間にも隙間が生じる。これらの隙間により、二次室54と外部とが連通し、二次室54の燃料ガスが外部に放出される。
【0055】
この実施形態の減圧弁26によれば、減圧機能のみを有する従来の減圧弁の構造に、上述した実施形態の連通手段84よりも少なく、簡易な構造である連通手段94を加えることにより、二次側の燃料ガスの圧力の異常な上昇を確実に防止することができる。また、連通手段94は、締結ボルト64の首部64bとカバー44との間に取り付けられるため、小型化に対応することができる。また、連通手段94は、部品点数も少ないため、減圧弁26を保守点検又は修理する場合、組み立て工数を削減することができ、作業の簡略化を図ることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 燃料電池システム、12 燃料電池、14 燃料ガス管路、22 タンク、24 主止弁、26 減圧弁、28 位置検出センサ、40 ハウジング、42 ハウジング本体、44 カバー、52 一次室、54 二次室、56 連通孔、60 弁体、64 締結ボルト、66 接合部、68 ダイヤフラム、72 大気室、74 シール部、76 ダイヤフラム保持部、82 ダイヤフラムばね、84,94 連通手段、86 外部連通路、88 封止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側の管路から流体が流入する一次室と、この一次室に連通孔を介して連通するとともに二次側の管路に流体が流出する二次室と、外部に連通する大気室とを有するハウジングと、
ハウジングの内部に設けられ、二次室と大気室とを区画形成するダイヤフラムと、
ダイヤフラムに接続され、二次室の流体圧力と大気室の大気圧との圧力差により弾性変形するダイヤフラムの動作により連通孔を開閉する弁体と、
を有する減圧弁において、
二次室の流体圧力が所定値を超えた場合、ダイヤフラムの動作により二次室と外部とを連通させる連通手段を有することを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧弁において、
連通手段は、
ハウジングに形成され、大気室と外部とを連通する外部連通路と、
ダイヤフラムの大気室側の表面に接して設けられ、外部連通路に嵌ってこれを封止する封止部材と、
を有し、
二次室の流体圧力が所定値を超えた場合、ダイヤフラムに押されて封止部材が潰れるように変形することにより外部連通路と二次室との間に隙間が形成され、二次室と外部とが連通する、
ことを特徴とする減圧弁。
【請求項3】
請求項2に記載の減圧弁において、
ハウジングは、ハウジング本体と、ハウジング本体の開口部を覆うカバーを有し、
ダイヤフラムは、ハウジング本体とカバーとが接合する接合部に挿入され、ハウジング内の気密性を向上させるシール部を有し、
封止部材は、シール部の大気室側の表面に接して設けられる、
ことを特徴とする減圧弁。
【請求項4】
請求項3に記載の減圧弁において、
外部連通路は、ハウジングの接合部に形成される、
ことを特徴とする減圧弁。
【請求項5】
請求項1に記載の減圧弁において、
ハウジングは、ハウジング本体と、ハウジング本体の開口部を覆うカバーと、軸部がカバーにスライド可能に貫通するとともに軸部の先端がハウジング本体に螺合する締結ボルトとを有し、
ダイヤフラムは、ハウジング本体とカバーとが接合する接合部に挿入され、ハウジング内の気密性を向上させるシール部を有するとともに、ハウジング本体の開口部を覆うことで、ハウジング本体側に二次室とカバー側に大気室とを区画形成し、
連通手段は、締結ボルトの首部とカバーとの間に設けられ、カバーをハウジング本体の方向に付勢する弾性部材であり、
二次室の流体圧力が所定値を超えた場合、カバーを介してダイヤフラムに押された弾性部材が縮むことによりシール部と接合部との間に隙間が形成されて、二次室と外部とが連通する、
ことを特徴とする減圧弁。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の減圧弁において、
大気室に設けられ、弁体に対して連通孔を開放する方向の付勢力をダイヤフラムに付勢するダイヤフラムばねと、
ダイヤフラムばねの一端に当接してダイヤフラムばねの付勢力を受けるとともに、ダイヤフラムを保持するダイヤフラム保持部と、
ダイヤフラム保持部の位置を検出する位置検出センサと、
を有する、
ことを特徴とする減圧弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−244362(P2010−244362A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93388(P2009−93388)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】