説明

減圧解凍方法及び装置

【課題】解凍時間を短くすることを可能とする。
【解決手段】冷凍食を収容する開閉可能な減圧容器3と、この減圧容器3内を減圧する減圧部5と、減圧容器3内の温液を設定温度に保持する加温部7とを備え、密閉容器3内に冷凍食材を温液に浸しながら密閉容器3内を減圧して温液を沸騰させ冷凍食材を解凍する。 減圧によって温液が沸騰状態となり、この沸騰状態の温液が冷凍食材の表面に激しく衝突して攪拌状態となり、冷凍食材の表面での熱交換を大きく促進させ、素早い解凍を行わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食材等を解凍するための減圧解凍方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の解凍方法及び装置として、特許文献1に記載のものがある。この方法及び装置は、水蒸気の潜熱を利用した真空解凍装置であり、真空ポンプによって真空解凍室内を減圧すると共に、蒸気供給部によって真空解凍室内に蒸気を供給している。
【0003】
したがって、蒸気が被解凍物の表面に集まって凝縮し、この時に発せられる凝縮潜熱によって被解凍物の解凍が行われるものである。
【0004】
しかし、被解凍物の表面での潜熱のみによる伝熱に過ぎず、表面での混合力がないため、表面における伝熱が極端に悪く、解凍時間が長いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−166863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、解凍時間が長い点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、解凍時間を短くするために、密閉容器内に冷凍食材等の被解凍物を温液に浸しながら前記密閉容器内を減圧して温液を沸騰させ前記被解凍物を解凍することを減圧解凍方法の特徴とする。
【0008】
上記減圧解凍方法に用いる減圧解凍装置であって、前記被解凍物を収容する開閉可能な減圧容器と、この減圧容器内を減圧する減圧部と、前記減圧容器内の温液を設定温度に保持する加温部とを備えたことを減圧解凍装置の特徴とする。
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の減圧解凍方法は、密閉容器内に冷凍食材等の被解凍物を温液に浸しながら前記密閉容器内を減圧して温液を沸騰させ前記被解凍物を解凍する。
【0010】
このため、減圧によって温液が沸騰状態となり、この沸騰状態の温液が被解凍物の表面に激しく衝突して攪拌状態となり、被解凍物の表面での熱交換を大きく促進させ、素早い解凍を行わせることができる。
【0011】
本発明の減圧解凍装置は、前記被解凍物を収容する開閉可能な減圧容器と、この減圧容器内を減圧する減圧部と、前記減圧容器内の温液を設定温度に保持する加温部とを備えた。
【0012】
このため、減圧部により減圧容器内を減圧し、加温部により温液を設定温度に保持して温液を沸騰させ、被解凍物の解凍を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】減圧解凍装置を示す正面図である。(実施例1)
【図2】減圧解凍装置を示す平面図である。(実施例1)
【図3】マンホールの開動作を示す説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
解凍時間を短くするという目的を、温水を減圧により沸騰させることで実現した。
【実施例1】
【0015】
[減圧解凍装置]
図1は、減圧解凍装置を示す平面図、図2は、減圧解凍装置を示す正面図である。
【0016】
図1、図2のように、減圧解凍装置1は、減圧容器3と、減圧部5と、加温部7とを備えている。
【0017】
減圧容器3は、本体9の上部に本体9を密閉可能なマンホール11を開閉可能に備えている。マンホール11を開くことで凍結原料を減圧容器3内に投入でき、密閉して閉じることができる。マンホール11には、のぞき窓11aが設けられている。
【0018】
減圧容器3の上部には、その他、液供給口15、投光器17、真空計19が設けられている。投光器17及び真空計19は、制御部21に接続されている。
【0019】
減圧容器3の底部には、温度センサ23が取り付けら、制御部21に接続されている。減圧容器3の底部中央には、溶解エキス抜き出しノズル25が設けられ、配管27を介して移送ポンプ29が接続されている。
【0020】
減圧部5は、真空ポンプ31を備え、この真空ポンプ31が吸引配管33を介して減圧容器3の上部に接続されている。
【0021】
加温部7は、蒸気の給排が可能な蒸気ジャケット35を備え、この蒸気ジャケット35は、減圧容器3の底部及び底部側周囲に渡って設けられ、減圧容器3の底部側を覆っている。蒸気ジャケット35は、蒸気配管37を介して図外の蒸気供給部に接続されている。
[解凍操作]
先ず水を減圧容器3内へ仕込み、蒸気ジャケット35に蒸気を供給して水を所定温度に加熱する。
【0022】
次いで、マンホール11より凍結した原料、例えば冷凍食材を所定量投入する。
【0023】
次にマンホール11を閉じ、真空ポンプ31を起動させると共に蒸気ジャケット35での蒸気加熱を行い、内部温度を所定温度に調節する。内部温度は、温度センサ23が検出し、その検出信号を受けた制御部21が蒸気ジャケット35への蒸気の給排、温度をコントロールする。
【0024】
このとき、減圧容器3内に投入された水が蒸気加熱により適度に加温され、100℃未満の所定温度に保たれているが、真空ポンプ31の起動で減圧されているので、内部は沸騰状態となり、冷凍原料と沸騰状態の温水が激しく接触し、解凍が短時間で終了する。
【0025】
解凍(溶解)自体は凍結物界面で生じるが、この時に沸騰現象による攪拌と温水からの伝熱が、溶解の駆動力となる。従って温水量が多く、温度が高く、沸騰が激しい条件で溶解速度大となる。
【0026】
一方、比較例として、冷凍原料を減圧の水蒸気と接触させた。解凍に4倍以上の時間が必要となった。比較例は、凍結物の表面で水蒸気の凝縮による伝熱となり、凝縮自体は効率的な伝熱でも、溶解面の混合力がないため、凍結物表面における伝熱が極端に悪く、このような結果になったと思われる。
【0027】
以下に実施例1と比較例とを示す。
(実施例1)
設備:ジャケット加熱付き真空槽(150L)と水封式真空ポンプ0.75kW
冷凍原料:9.35Kg 凍結エキス
水:23.4Kg(原料の2.5倍相当量)
水(23.4kg)を投入し、75℃までジャケット加熱により昇温させ達温後(3分)、冷凍原料を投入し、真空下に75℃温調(蒸気加熱を調整)で真空溶解させた。ジャケット112度 内圧-0.065MPa
溶解時間 7分40秒
(比較例)
冷凍原料:8.3kg
水:8.3kg(原料と同量)
釜に冷凍原料(8.3Kg)と同量の水(8.3Kg)を投入し、その上に金網を敷いて、さらにその金網上に冷凍材料を載せ、実施例1と同様に、空下に75℃温調(蒸気加熱を調整)で真空溶解させた
溶解時間 18.5分で中断 1/2程度溶解
溶解完了後は、原料が温水と共に次の調理工程に向けて払いだされる。この払いだしは、移送ポンプ29の駆動により溶解エキス抜き出しノズル25から行われる。
(原料の状態)
このように、テストでは、凍結物を直接温水と接触させている。
【0028】
調理において、原料に水を混合し加熱するケースが多く、その操作に対応する。即ち、許容範囲内の水を温水として供給し、解凍後食材として分離せずに使用するコンセプトとなる。
(.袋に入った凍結物の溶解)
袋に入った凍結物に対しても解凍は促進される。溶解速度は袋なしの場合に比べ遅くなるが、原料に水が混入してはいけない場合には必要な条件となる。この場合、解凍物の取り出しは投入したマンホール11からとなり、減圧容器3の傾動などで取り出しに対応できる。
(解凍時の攪拌)
攪拌を行えば、解凍速度は増加する。凍結食材の形状によっては、解凍後に攪拌を行ない、解凍後の混合を行う。
[実施例1の効果]
本発明実施例1の減圧解凍方法は、密閉容器3内に冷凍食材を温液に浸しながら密閉容器3内を減圧して温液を沸騰させ冷凍食材を解凍する。
【0029】
このため、減圧によって温液が沸騰状態となり、この沸騰状態の温液が冷凍食材の表面に激しく衝突して攪拌状態となり、冷凍食材の表面での熱交換を大きく促進させ、素早い解凍を行わせることができる。
【0030】
本発明実施例1の減圧解凍装置1は、冷凍食を収容する開閉可能な減圧容器3と、この減圧容器3内を減圧する減圧部5と、減圧容器3内の温液を設定温度に保持する加温部7とを備えた。
【0031】
このため、減圧部5により減圧容器3内を減圧し、加温部7により温液を設定温度に保持して温液を沸騰させ、冷凍食材の解凍を短時間で行わせることができる。
[その他]
被解凍物は、冷凍食材以外にも適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 減圧解凍装置
3 減圧容器
5 減圧部
7 加温部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に冷凍食材等の被解凍物を温液に浸しながら前記密閉容器内を減圧して温液を沸騰させ前記被解凍物を解凍することを特徴とする減圧解凍方法。
【請求項2】
請求項1記載の減圧解凍方法に用いる減圧解凍装置であって、
前記被解凍物を収容する開閉可能な減圧容器と、
この減圧容器内を減圧する減圧部と、
前記減圧容器内の温液を設定温度に保持する加温部と、
を備えたことを特徴とする減圧解凍装置。
【請求項3】
請求項2記載の減圧解凍装置であって、
前記減圧部は、前記容器に接続された真空ポンプである、
ことを特徴とする減圧解凍装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の減圧解凍装置であって、
前記加温部は、前記減圧容器の底部側に設けられ蒸気の給排が可能な蒸気ジャケットである、
ことを特徴とする減圧解凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−120464(P2012−120464A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272223(P2010−272223)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000125587)梶原工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】