説明

減衰性樹脂組成物

【課題】優れた減衰性能を発揮させることの容易な減衰性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】減衰性樹脂組成物は、樹脂材料にマイカを配合して構成される。マイカのアスペクト比は60〜110の範囲であるとともに平均粒径が23〜55μmの範囲である。更に、マイカについては、平均粒径をXμmとしたとき、Xμm±10μmの粒径範囲における頻度により示される粒度分布が15%以上の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギー、衝撃エネルギー等のエネルギーを減衰する性能を発揮する減衰性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイカを含有する減衰性樹脂組成物として例えば特許文献1の制振塗料が知られている。この制振塗料に含まれるマイカのアスペクト比が20〜60の範囲である。また、特許文献2の制振塗料に含まれるマイカは、粒度分布が1〜100μmの範囲であるとともに平均粒度が20μmのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第99/06491号パンフレット
【特許文献2】特開2004−18670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減衰性樹脂組成物の性能を高める新たな技術が所望されている。本発明は、減衰性能を高めることのできる減衰性樹脂組成物を見出すことでなされたものである。本発明の目的は、優れた減衰性能を発揮させることの容易な減衰性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、樹脂材料にマイカを配合してなる減衰性樹脂組成物であって、前記マイカのアスペクト比が60〜110の範囲であるとともに平均粒径が23〜55μmの範囲であり、前記平均粒径をXμmとしたときXμm±10μmの粒径範囲における頻度により示される粒度分布が15%以上の範囲であることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の減衰性樹脂組成物において、前記樹脂材料は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液として含有されることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の減衰性樹脂組成物において、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の減衰性樹脂組成物において、前記マイカは、前記樹脂材料100質量部に対して1〜300質量部の範囲で配合されることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の減衰性樹脂組成物において、前記樹脂材料が、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の高分子材料から構成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた減衰性能を発揮させることの容易な減衰性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における減衰性樹脂組成物は、樹脂材料にマイカを配合して構成される。マイカのアスペクト比は60〜110の範囲である。マイカの平均粒径は、23〜55μmの範囲である。マイカの粒度分布は、15%以上の範囲である。この粒度分布は、マイカの平均粒径をXμmとしたときXμm±10μmの粒径範囲における頻度により示される。
【0012】
樹脂材料としては、周知の汎用プラスチック及びエンジニアリングプラスチックを使用することができる。汎用プラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂共重合体等が挙げられる。エチレン/アクリル酸エステル共重合体としては、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。エチレン/メタクリル酸エステル共重合体としては、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエステルエラストマー、各種液晶ポリマー等が挙げられる。樹脂材料は、単独種を使用してもよいし、複数種をブレンドして使用してもよい。
【0013】
減衰性樹脂組成物を水系の減衰性樹脂塗料として構成する場合、減衰性樹脂組成物に含有する樹脂材料は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液として含有される。
水系樹脂分散液に含有される樹脂粒子を構成する材料としては、例えばアクリル系樹脂、アクリル/スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル/アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、及びイソプレンゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの高分子材料は変性体であってもよい。
【0014】
樹脂粒子は、単独種の高分子材料から形成されていてもよいし、複数種の高分子材料から形成されていてもよい。さらに、水系樹脂分散液には、これらの高分子材料から構成される樹脂粒子を単独で含有させてもよいし、複数種の樹脂粒子を含有させてもよい。
【0015】
樹脂粒子を分散している水系分散媒としては、水、及び水とアルコールとの混合液が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。水系樹脂分散液は、例えば乳化剤を含有した水溶液中に単量体及び重合開始剤を滴下する乳化重合等の周知の方法に従って得ることができる。
【0016】
これらの樹脂材料の中でも、優れた減衰性能が発揮され易いという観点から、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。アクリル/スチレン系樹脂としては、上記アクリル系樹脂を形成する単量体と、スチレン単量体との共重合体が挙げられる。
【0017】
マイカは、樹脂材料に振動エネルギー、衝撃エネルギー等のエネルギーを減衰する性能を付与する。マイカとしては、例えば非膨潤性マイカ、膨潤性マイカ等が挙げられる。マイカのアスペクト比は、60〜110の範囲であり、好ましくは70〜105の範囲である。マイカのアスペクト比が60未満の場合、優れた減衰性能を発揮させることが困難である。一方、マイカのアスペクト比が110を超える場合においても、優れた減衰性能を発揮させることが困難である。なお、アスペクト比は、マイカの長径/厚みを示し、本明細書のアスペクト比は、マイカについての走査型電子顕微鏡の観察において、無作為に50個のマイカを選び、それらマイカの長径と厚みを測定した測定値の平均を求めることにより得られる。
【0018】
マイカの平均粒径は、23〜55μmの範囲であり、好ましくは25〜53μmの範囲である。マイカの平均粒径が23μm未満の場合、優れた減衰性能を発揮させることが困難である。一方、マイカの平均粒径が55μmを超える場合においても、優れた減衰性能を発揮させることが困難である。本明細書の平均粒径は、レーザー回折法にて測定した平均粒径を意味する。
【0019】
上記アスペクト比及び平均粒径に加えて、平均粒径をXμmとしたときXμm±10μmの粒径範囲における頻度により示される粒度分布は、減衰性樹脂組成物の減衰性能を高める上で極めて重要である。その粒度分布は、15%以上の範囲であり、好ましくは17%以上の範囲である。マイカの粒度分布が15%未満の場合、優れた減衰性能を発揮させることが困難である。マイカの粒度分布の上限は、減衰性を高めるという観点からは、特に限定されないが、マイカの調製が容易であるという観点から、55%以下の範囲であることが好ましい。
【0020】
マイカのアスペクト比、平均粒径及び粒度分布は、マイカの粉砕条件、ふるい分けの条件等を調整することにより上記範囲とされる。マイカとしては、天然マイカであってもよいし、合成マイカであってもよい。マイカは、膨潤性を高める処理が施された膨潤性マイカであってもよい。
【0021】
減衰性樹脂組成物においてマイカの配合量は、樹脂材料100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜270質量部、さらに好ましくは10〜250質量部である。マイカの配合量が樹脂材料100質量部に対して1質量部未満の場合、優れた減衰性能が発揮され難くなるおそれがある。一方、マイカの配合量が樹脂材料100質量部に対して300質量部を超える場合、減衰性樹脂組成物の粘度が過剰に高まることにより、減衰性樹脂組成物の成形性が十分に得られないおそれがある。なお、水系の減衰性樹脂塗料として構成する場合においては、マイカの配合量は、樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは200質量部未満、より好ましくは150質量部未満である。水系の減衰性樹脂塗料として構成する場合においては、マイカの配合量が、樹脂粒子100質量部に対して、200質量部を超えると、減衰性樹脂塗料としての塗布性が十分に得られないおそれがある。
【0022】
減衰性樹脂組成物は、減衰性付与成分として、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。減衰性付与成分は、塗膜中の双極子モーメント量を増大させることによって、振動エネルギー、衝撃エネルギー、音のエネルギー等のエネルギー(但し、光エネルギー及び電気エネルギーを除く)を効率的に熱エネルギーへ変換する。
【0023】
ベンゾチアジル系化合物としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、及びN,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合したものであって、2−[2′−ハイドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラハイドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−(2′−ハイドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)、及び2−(2′−ハイドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HOPB)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0025】
ジフェニルアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(ECDPA)、及びオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(OCDPA)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0026】
正リン酸エステル系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0027】
芳香族第二級アミン系化合物としては、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン及び4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0028】
含ハロゲン酸エステル系化合物としては、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0029】
減衰性付与成分の含有量は、樹脂材料と減衰性付与成分との合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。減衰性付与成分の含有量が20質量%を超える場合、減衰性能の向上率が低下する傾向にあるため、不経済となるおそれがある。また、減衰性付与成分の含有量は、樹脂材料と減衰性付与成分との合計量に対して、好ましくは1質量%以上であり、最も好ましくは1〜5質量%である。減衰性付与成分の含有量が1質量%未満であると、優れた減衰性を付与することが困難になるおそれがある。
【0030】
減衰性樹脂組成物には、その他の成分として、充填剤、ゲル化剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、粘度調整剤、増粘剤、流動改良剤、硬化剤、消泡剤、造膜助剤、沈降防止剤、湿潤剤等を必要に応じて配合することが可能である。充填剤としては、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、珪藻土、ゼオライト、フェライト、カーボン等が挙げられる。ゲル化剤としては、有機ゲル化剤と無機ゲル化剤とに分類され、有機ゲル化剤としてはでんぷん、でんぷん誘導体等が挙げられ、無機ゲル化剤としては硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0031】
減衰性樹脂組成物は、樹脂材料と上述したマイカとを攪拌機等の公知の混合手段によって混合することによって調製することができる。こうした減衰性樹脂組成物の減衰性能、すなわち同組成物から得られる成形体の減衰性能は、損失弾性率又は損失係数によって示される。つまり、成形体の損失弾性率又は損失係数が高ければ高いほど、成形体の減衰性が高まることが示される。成形体の損失弾性率は、公知の動的粘弾性測定装置によって測定することができる。成形体の損失係数は、周知の中央加振法損失係数測定装置によって測定することができる。
【0032】
減衰性樹脂組成物は、振動エネルギーを減衰する制振用樹脂組成物、衝撃エネルギーを減衰する衝撃吸収用樹脂組成物等として利用することができる。減衰性樹脂組成物の適用分野としては、例えば自動車、建材、家電機器、産業機械、スポーツ用品、医療用品等が挙げられる。
【0033】
減衰性樹脂組成物を成形する成形法としては、射出成形法、押出成形法等の周知の樹脂成形法を利用することができる。減衰性樹脂組成物を塗料として利用する際には、スリット等から塗料を吐出させるとともに適用箇所に塗布する方法の他、エアスプレーガン、エアレススプレーガン、刷毛塗り等の塗布手段を用いることが可能である。
【0034】
減衰性樹脂組成物から得られる成形体には、マイカが含有されている。このため、振動エネルギー、衝撃エネルギー、音のエネルギー等のエネルギー(但し、光エネルギー及び電気エネルギーを除く)が成形体に伝わった際に、樹脂材料の分子鎖とマイカとの相互作用によって、そうしたエネルギーが熱エネルギーに変換される際に、上述したアスペクト比、平均粒径及び粒度分布のマイカは、樹脂材料の分子鎖との相互作用が高まると推測される。これにより、優れた減衰性能を発揮させることが容易となる。
【0035】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)減衰性樹脂組成物に配合されるマイカのアスペクト比は60〜110の範囲であるとともに平均粒径は23〜55μmの範囲である。更に、マイカの粒度分布は、平均粒径をXμmとしたときXμm±10μmの粒径範囲における頻度により示される粒度分布において、15%以上の範囲である。このため、優れた減衰性能を発揮させることが容易である。
【0036】
(2)樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液として樹脂材料を配合した減衰性樹脂組成物として構成した場合、水系の減衰性樹脂塗料として利用することができる。従って、環境に対する影響を配慮した上で、優れた減衰性能を発揮させることが容易である。
【0037】
(3)減衰性樹脂組成物には、上述した減衰性付与成分を更に含有させることが好ましい。この場合、優れた減衰性能を発揮させることが更に容易となる。
(4)減衰性樹脂組成物には、マイカは、樹脂材料100質量部に対して1〜300質量部の範囲で配合されることが好ましい。この場合、優れた減衰性能が発揮させることが容易であるとともに成形性も維持され易い。
【0038】
(5)樹脂材料は、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の高分子材料から構成されることが好ましい。この場合、例えば10℃〜50℃の温度範囲において減衰性能を発揮させることが容易となる。
【実施例】
【0039】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜11、比較例1〜13)
表1に示されるマイカ50質量部とアクリル系樹脂50質量部とを混合することにより、減衰性樹脂組成物を調製した。マイカとアクリル系樹脂との混合は、ミキシングロール機(株式会社安田精機製作所製)を用いて、加熱温度230℃、5分の条件で樹脂材料を溶融混練することによって行った。なお、各例のマイカについて、アスペクト比の測定には、走査型電子顕微鏡S−2400(日立製)を用いるとともに、平均粒径及び粒度分布の測定には、マイクロトラック(商品名)粒度分布測定装置MT3000(日機装製)を用いて測定した。
【0040】
<動的粘弾性の測定>
各例で得られた減衰性樹脂組成物をシート状に成形することによって、厚さ1mmのシート材を得た。各シート材を35mm×3mmの寸法に切断し、動的粘弾性測定用の試験片とした。動的粘弾性測定装置(RSA−II:レオメトリック社製)を用いて各試験片を加振しながら連続的に昇温した際の損失弾性率E″を測定した。測定条件は、加振の周波数10Hz、測定温度範囲−40℃〜+90℃、昇温速度5℃/分とした。各例について、損失弾性率E″のピーク値を表1に併記する。
【0041】
【表1】

表1に示されるように、各実施例では、アスペクト比、平均粒径及び粒度分布のいずれも前記範囲内である。各比較例では、アスペクト比、平均粒径又は粒度分布が前記範囲外であるものについて、表1に(※)で示している。表1の結果から明らかなように、実施例における損失弾性率E″のピーク値は、各比較例における損失弾性率E″のピーク値よりも高い値を示している。このように各実施例では、優れた減衰性能を発揮させることができる。
【0042】
(実施例12及び比較例14)
実施例12及び比較例14においては、水系樹脂分散液を含有する減衰性樹脂塗料を調製した。表2に示すように、減衰性樹脂塗料においては、水系樹脂分散液に含まれるアクリル系樹脂100質量部に対して、マイカを約200質量部配合している。また、減衰性付与成分としてN−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)をアクリル系樹脂と減衰性付与成分との合計量に対して、約3.2質量%となるように配合している。なお、各例の減衰性樹脂塗料には、炭酸カルシウム、増粘剤等の添加剤を、アクリル系樹脂に対して、各例について同じ質量比になるように配合している。
【0043】
<損失係数の測定>
実施例12及び比較例14の減衰性樹脂塗料を鋼板(厚さ0.8mm)に塗布した後、140℃で43分間加熱乾燥することにより塗膜を形成し、これらの塗膜を試験片とした。なお、鋼板に対する塗膜の厚みは、同一となるように塗布量を調整した。各例の試験片について、中央加振法損失係数測定装置(CF5200タイプ、小野測器(株)製)を用いて、20℃、40℃及び60℃における損失係数、及び損失係数のピーク値を測定した。各温度における損失係数、並びに損失係数のピーク値及びピーク温度を表2に併記する。
【0044】
【表2】

表2に示されるように、実施例12では、アスペクト比、平均粒径及び粒度分布のいずれも前記範囲内である。比較例14では、アスペクト比、平均粒径及び粒度分布が、前記範囲外である。表2の結果から明らかなように、実施例12における損失係数のピーク値は、比較例14における損失係数のピーク値よりも高い値を示している。このように実施例12では、優れた減衰性能を発揮させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料にマイカを配合してなる減衰性樹脂組成物であって、
前記マイカのアスペクト比が60〜110の範囲であるとともに平均粒径が23〜55μmの範囲であり、前記平均粒径をXμmとしたときXμm±10μmの粒径範囲における頻度により示される粒度分布が15%以上の範囲であることを特徴とする減衰性樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂材料は、樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液として含有されることを特徴とする請求項1に記載の減衰性樹脂組成物。
【請求項3】
ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の減衰性樹脂組成物。
【請求項4】
前記マイカは、前記樹脂材料100質量部に対して1〜300質量部の範囲で配合されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の減衰性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂材料が、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の高分子材料から構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の減衰性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−84690(P2011−84690A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240379(P2009−240379)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】