説明

減震装置

【課題】免震構造のように大きな移動可能距離を確保することなく、衝撃に弱い部品を内蔵した機器を地震による振動から有効に保護できる減震技術を提供する。
【解決手段】保護対象機器40を載置固定する防振架台41に、複数の振動エネルギー減衰機構を設けた。一つの機構は、上部架台45の上縁部59、滑りシート60、保護対象機器40の取付脚部61の積層体に貫通孔59b,60b,61bを形成し、これに第2の揺れ防止ピン52を挿通させると共に、両者間に比較的小さな隙間を形成したものよりなる。他の機構は、同積層体にボルト挿通孔59a,60a,61aを形成し、第2のストッパーボルト63を挿通させると共に、両者間に比較的大きな隙間を形成したものよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震の運動エネルギーを軽減する減震装置に係り、特に、自由度系上に支持された動力機械、作業機械、計測機械、情報・知能機械、医療用機器等の保護対象機器に装着し、地震の破壊的エネルギーをわずかな移動距離内の運動を通じてエネルギー消費させることにより、保護対象機器の破壊を防止する減震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震は、誕生後46億年の地球の内部構造に関わって発生する不可避な自然現象であり、自然を制圧し克服するという西洋科学技術思想の下で様々な地震対策がなされて来た。
【0003】
例えば、従来の地震対策の一つとして「耐震構造」があり、これは「強度」をもって地震に対抗することを目的としたものであり、保護対象機器の主要な構造体そのものの強度を向上させたり、あるいは保護対象機器を収納するキャビネット等の収納体の強度を向上させることが行われている(例えば、特開2008−177189号公報参照)。
【0004】
また、従来における他の地震対策として「免震構造」があり、これは地震の影響を限りなくゼ口(気象庁震度階級の無感)にすることを目的としたものであり、海洋プレートと大陸プレート、あるいは大陸プレートと大陸プレートの地殻移動のストレス解放に関わって震源域から震央と活断層に表象する地震波(P波・S波・レイリー波・ラブ波・反射波)の影響を、無感とすることを意図している。
この免震構造の原理は、鉛直方向に保護対象機器を支持しつつ水平方向に柔軟に変位可能なアイソレータやスライドレール等の免震機構を設置し、上記免震機構が水平方向に移動することにより、地震の震動が保護対象機器に伝わらないようにするものである(例えば、特開2001−124139号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−177189号公報
【特許文献2】特開2001−124139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の耐震構造の場合、想定される地震の規模に対応した剛性の確保に偏向し、地震による衝撃力の緩和という観点に欠けているため、衝撃に弱い半導体IC部品や精密加工部品を内蔵した機器の保護には不向きであった。
これに対し上記の免震構造の場合には、衝撃に弱い部品を内蔵した機器の保護に適しているが、免震機構が水平方向に移動することにより、地震の震動が機器に伝わらないようにする仕組みであることから、大地震に対応するためには免震機構の移動可能距離を大きく確保しておく必要があり、工場等の限られた空間内に多数の機器を設置している場合等には適用困難であった。
【0007】
この発明は、このような従来の問題を解決するために案出されたものであり、免震構造のように比較的大きな移動可能距離を確保することなく、衝撃に弱い部品を内蔵した機器を地震による振動から有効に保護することを可能とする減震技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載した減震装置は、保護対象機器を載置固定し、地震時の振動エネルギーを減衰して保護対象機器の破壊を防止する減震装置であって、上記保護対象機器の構成部材とこの装置の構成部材との隣接部、またはこの装置の複数の構成部材同士の隣接部に設けられた複数の隙間と、上記の各隙間に設けられた振動エネルギー減衰機構とを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載した減震装置は、請求項1の装置であって、さらに、上記複数の振動エネルギー減衰機構の振動強度に差異が設けられており、地震の振動強度に応じてより耐震強度の小さい振動エネルギー減衰機構が破壊されると共に、より耐震強度の大きな振動エネルギー減衰機構が段階的に機能するように、各振動エネルギー減衰機構が配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載した減震装置は、請求項1または2の装置であって、さらに上記隙間の少なくとも一つが、一方の構成部材に設けられた貫通孔と他方の構成部材に設けられた貫通孔とを重ねた連通貫通孔と、当該連通貫通孔に挿通された係合部材との間に形成される隙間であり、上記振動エネルギー減衰機構が、振動時に上記係合部材が上記連通貫通孔内面に繰り返し衝突することによる減衰機能を利用したものであることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載した減震装置は、請求項3の装置であって、さらに上記一方の構成部材と他方の構成部材との間に、滑り部材が介装されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載した減震装置は、請求項3または4の装置であって、さらに上記係合部材が、一方の構成部材の貫通孔から挿通され、他方の構成部材の貫通孔外において先端部にナットが螺合されたボルトよりなり、このボルトの頭部と一方の構成部材との間に複数の皿バネが介装されていることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載した減震装置は、請求項1または2の装置であって、さらに上記隙間の少なくとも一つが、一方の構成部材に設けられた貫通孔に挿通され、その先端が他方の構成部材に螺合されたボルトと、上記貫通孔との間に形成される隙間であり、上記振動エネルギー減衰機構が、振動時に上記ボルトが上記貫通孔の内面に繰り返し衝突することによる減衰機能を利用したものであることを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載した減震装置は、請求項6の装置であって、さらに、上記ボルトの頭部と一方の構成部材との間に複数の皿バネが介装されていることを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載した減震装置は、請求項3〜8の装置であって、さらに、上記連通貫通孔内に弾性材よりなる減衰部材が配置されていることを特徴としている。
【0016】
請求項9に記載した減震装置は、請求項1または2の装置であって、さらに、上記隙間の少なくとも一つが、水平方向に相対移動する一方の構成部材と他方の構成部材との間に設けられた隙間であり、上記振動エネルギー減衰機構が、一方の構成部材の対向面に回動自在に設けられた揺動体と、他方の構成部材の対向面に設けられた係合部材からなり、他方の構成部材が水平方向に相対移動すると、上記係合部材が上記揺動体に当接してこれを回動させ、以て揺動体の端部が他方の構成部材の対向面に圧着する仕組みを備えていることを特徴としている。
【0017】
請求項10に記載した減震装置は、請求項1〜9の装置であって、さらに、想定外の震度の地震が発生した場合にも破損しない強度を備えたストッパーボルトによって、建造物の基礎に係合されると共に、同じく想定外の震度の地震が発生した場合にも破損しない強度を備えたストッパーボルトによって、上記保護対象機器と係合されることを特徴としている。
【0018】
請求項11に記載した減震装置は、請求項1〜10の装置であって、さらに、上記振動エネルギー減衰機構の少なくとも1つが、楔状部材と、この楔状部材の先端部を受け入れる凹部を備えた楔受け部材とからなり、保護対象機器及び建物基礎の何れか一方に上記楔状部材が固定されると共に、保護対象機器及び建物基礎の何れか他方に上記楔受け部材が固定され、上記保護対象機器と建物基礎との間に滑り部材が配置されていることを特徴としている。
【0019】
請求項12に記載した減震装置は、請求項11の装置であって、さらに、保護対象機器側に固定された上記楔状部材または楔受部材には貫通孔が設けられると共に、当該貫通孔には弾性材よりなる減衰部材が換装されており、この貫通孔には固定ボルトが挿通されると共に、その先端部が建物基礎に固定され、この固定ボルトと上記減衰部材の内面との間に隙間が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の減震装置においては、保護対象機器の構成部材とこの装置の構成部材との隣接部、またはこの装置の複数の構成部材同士の隣接部に設けられた隙間を減衰空間として積極的に利用し、ここに様々な振動エネルギー減衰機構を仕込むことによって地震の振動エネルギーを低減するものであるため、従来の「免震」のように装置の外部に専用の空間を広く確保することなく、保護対象機器を地震による振動から有効に保護することが可能となる。
もちろん、限られた隙間を活用するものであるため、単一の減衰機構では十分な減衰効果を上げられない可能性があるが、複数の減衰機構を組み合わせることにより、装置全体として実用上十分な減衰効果を確保することができる。
【0021】
請求項2に記載の減震装置によれば、地震の強度に応じて異なる減衰機構を段階的に発動させることが可能となり、地震の規模に応じたきめ細かい対応が可能となる。
また、部分的に破壊された減衰機構を交換することにより、迅速な復旧を実現することが可能となる。
【0022】
請求項3に記載の減震装置の場合、部材間の連結方法として普通に用いられる係合部材(係合ピン等)及び貫通孔を減衰機構として利用し、主として水平方向の振動を減衰することが可能となる。
【0023】
請求項4に記載の減震装置の場合、一方の構成部材と他方の構成部材との間に滑り部材が介装されているため、振動時には両構成部材が別個独立して移動することになり、隙間における移動距離が倍増する結果、振動エネルギーの減衰効果を高めることができる。
【0024】
請求項5及び7に記載の減震装置の場合、ボルトと一方の構成部材との間に皿バネが介装されているため、主として上下方向の振動を有効に減衰することが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の減震装置の場合、構成部材間の連結方法として普通に用いられるボルト及び貫通孔を減衰機構として利用し、主として水平方向の振動を減衰することが可能となる。
【0026】
請求項8に記載の減震装置の場合、貫通孔内に配置された弾性材よりなる減衰部材の作用により、振動エネルギーをより効果的に減衰することが可能となる。
【0027】
請求項9に記載の減震装置の場合、水平方向の振動を揺動板の上下方向への回動に転換すると共に、揺動板と構成部材間の摩擦を利用して振動エネルギーを減衰させることが可能となる。
【0028】
請求項10に記載の減震装置の場合、想定外の地震が発生しても破損しない十分な強度を備えたストッパーボルトによって、保護対象機器とこの装置とが係合されると共に、同様のストッパーボルトによってこの装置と建造物の基礎とが係合されるため、想定外の規模の地震が発生した場合であっても、保護対象機器の転倒は完全に回避され、尊い人命を保護することが可能となる。
【0029】
請求項11に記載の減震装置によれば、水平方向の振動を受けた際に、楔状部材の先端部が弾塑性材よりなる楔受け部材の凹部内に繰り返し嵌合挿入され、その結果生じるブレーキ効果により、振動エネルギーを有効に減衰させることが可能となる。
【0030】
請求項12に記載の減震装置の場合、楔状部材と楔受け部材間のブレーキ効果の他に、固定ボルトが減衰部材に繰り返し衝突することによる減衰効果が加わるため、より効果的に振動エネルギーを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
まず初めに、この発明が実現しようとしている「減震」の基本理念について説明する。
上記の通り、地震による振動から機器を保護するための従来の主な対策としては、地震による振動を限りなくゼロに近づける「免震」と、機器自体あるいはその収納体等の強度を向上させる「耐震」とが存在していたが、この発明が提案する「減震」は、これら既存技術の中間に位置付けられる。
【0032】
すなわち、平時には特定の機能を発揮しない部材間のわずかな隙間(クリアランス)や自由度を振動制御可能な空間とみなし、この空間をエネルギー消費部として積極的に活用することにより、地震による振動エネルギーを減衰させることを企図している。
【0033】
これには、意図的にクラッシャブル箇所(破損可能部)を設けておくことにより、地震の振動エネルギーを塑性変形エネルギーとして最大限消費するというアイディアが含まれている。
【0034】
また、水平・上下・回転の各方向に対する自由度を、所定の機構や原理を利用することによってベクトル変換する(例えば、水平方向の運動を上下方向の運動や回転運動に変換する)ことにより、エネルギーの消費量を増大させるというアイディアも含まれている。
【0035】
個々のエネルギー消費部におけるエネルギー消費量が限られているという問題は、エネルギー消費部及びエネルギー消費機能の多段化(複合化)を採用することにより、解決が図られる。
この多段化には、同一種類のエネルギー消費機能間で多段化することはもちろん、複数の種類のエネルギー消費機能の組合せで多段化することも含まれている。
保護対象機器側の挙動が時間の経過に伴って変化する場合(例えば、機器の水平運動から引き抜き上下運動に変化する場合)には、順次、エネルギー消費部及び消費方法を変えていくという多段化も可能となる。
想定される地震の規模に合わせて、作動するエネルギー消費機能を段階的に遷移させることもできる。
【0036】
つぎに、「減震」に基づくエネルギー消費の意義について述べる。
まず、運動しているものはすべて、「入力E(エネルギー)=出力E」という釣合い条件、すなわちエネルギー保存則が成り立つ。
ここで、対象機器に対して何らの減震対策を講じない場合、図1(a)に示すように、入力総Eに対しては材料減衰E(通常数%程度)しか減衰要因として機能せず、残りの大部分は弾性変形Eとして作用する結果、対象機器に対して大きな損傷を与えることとなる。
これに対し、この発明に係る減震対策を施すことにより、図1(b)に示すように、減震消費E分が材料減衰Eにプラスして機能することとなり、その分、弾性変形Eを大幅に低減することが可能となる。
以下、この発明に係る減震装置に応用可能なエネルギー消費機能の具体例を説明する。
【0037】
[1]衝撃力の緩和機能
これは、地震用弾性機構(弾性素材、各種バネ類)を設けることにより、衝撃加速度のピークを低減することを意味する。
【0038】
[2]エネルギー消費機能
(1) 移動距離拡大によるエネルギー消費の促進
これは、地震時に隙間おける移動距離を人為的に拡大することにより、消費運動エネルギーを大きくする機能であり、梃子やローラー、滑車、車輪等の原理を応用したものである。
【0039】
図2(a)はその一例を示すものであり、第1の部材10と第2の部材11をボルト12とナット13を介して係合するに際し、両部材間に滑り部材14を介装させると共に、ボルト12を挿通させる貫通孔15の孔径をボルト径よりも若干大きく形成することにより、ボルト12の周囲に隙間16を形成した係止構造17が描かれている。
【0040】
この結果、地震による横方向の振動を受けた際には、図2(b)に示すように、第1の部材10が右方向に横滑りすると共に、図2(c)に示すように、第2の部材11も独自に右方向に横滑りする。
このように、振動を受けた際に第1の部材10と第2の部材11が別個独立して移動するような仕掛けを講じることにより、隙間16におけるトータルの移動距離が2倍となり、その分、消費エネルギーを稼ぐことが可能となる。
【0041】
(2) エネルギー変換によるエネルギー消費の促進
これは、例えば線状運動エネルギーを回転エネルギー等へ変換する過程で、エネルギー消費量の拡大を図るものであり、梃子やねじの原理の応用である。
【0042】
図3(a)はその一例を示すものであり、第1の部材20と第2の部材21とが対向配置されると共に、第2の部材21の対向面には揺動板22を備えた回動部材23が取り付けられ、第1の部材20に貫通固定されたピン24の先端が、揺動板22の係合孔25に挿通されたエネルギー変換構造26が描かれている。回動部材23の回転軸27には、図示しない捻りバネが装着されており、揺動板22の回動に一定の負荷が加えられている。
【0043】
ここで、地震による振動を受けて第1の部材20が図中の右方向に移動すると、図3(b)に示すように、回動部材23の揺動板22が右方向に回動し、その左端が梃子の原理で第1の部材20の対向面に強く接触し、これを上方向に持ち上げることとなる。
以上のように、揺動板22の回動及び揺動板22と第1の部材20間の摩擦力により、消費エネルギー量が増大することとなる。
【0044】
(3) 質量差を用いたエネルギー消費の促進
これは、2つの球体衝突理論より、大きい質量体は動かない原理を応用したものであり、機械下に重量剛板(RC板や鉄板)を敷いてから防振装置を支持することなどが該当する。
【0045】
(4) 抵抗要素を用いたエネルギー消費の促進
これは、抵抗要素を用いることにより、強震応答で支配的な1次振動モードを撹乱するものであり、例えばガタ構造(部材間の隙間)を積極的に活用することで撹乱したり、水槽内にスロッシング(水流抵抗板)を設けて撹乱することなどが該当する。
【0046】
(5) 伝搬面積あるいは伝搬距離の拡大によるエネルギー消費の促進
これは、伝搬面積や伝搬距離が大きいと波動エネルギーの逸散が多いという原理を応用したものであり、防振架台の形状設計において寸法上の冗長性を付与することなどが該当する。
【0047】
(6) 素材の選定によるエネルギー消費の促進
これは、防振架台にエネルギー放出特性の大きな素材(ウレタン、ゲル、アクリル、ポリマー、シリコン材等)を取り入れることなどが該当する。
【0048】
(7) 素材密度の選定によるエネルギー消費の促進
これは、「硬いと揺れない」あるいは「軟いと振動伝達が少なくなる」という原理を応用したものであり、前者の例として「高剛性素材」によって防振架台を構成すること等が該当し、後者の例として「ハニカム構造を備えた素材」や「波板鋼板」を用いて保護対象機器を構成することなどが該当する。
【0049】
[3]エネルギー放出機能
(1) 揺らせ構造によるエネルギー放出
これは、対象機器をバネ等を用いて揺らせることにより、弾性エネルギーを放出するものである。
(2) ガタ構造によるエネルギー放出
これは、数多くの部品間摩擦を用いてエネルギーを放出するものである。
(3) エネルギー転化によるエネルギー放出
これは、外部質量体にエネルギーを転化することによってエネルギーを放出するものであり、例えば衝突ダンパを設置することが該当する。
【0050】
[4]減衰機能(共振応答の抑制)
(1) 移動要素による減衰
これは、移動距離中(運動中)に減衰機能を設けることにより、エネルギー散逸量の拡大を図るものである。
(2) 減衰要素による減衰
これは、粘性摩擦力や滑り摩擦力を利用してエネルギーの減衰を図るものである。前者の例として、オイルダンパ等を設けることが該当する。また後者の例としては、複数の皿バネを積層させた構造や、部材間に滑りシートを介装させることなどが該当する。
【0051】
[5]クラッシャブル機能
これは、大地震であっても装置全体に被害が及ばないように、局所的に破損させる箇所を事前に設けておくものである。
【0052】
図4(a)はその一例を示すものであり、第1の部材30に埋設された一対のクラッシャブルピン31が、第1の部材30の表面に載置された第2の部材32の貫通孔33に挿通され、外部に取り出されたクラッシャブル構造34が描かれている。
【0053】
ここで、地震による振動を受けて第2の部材32が図中の右方向に移動すると、図4(b)に示すように、各クラッシャブルピン31が第2の部材32側に設けられた隙間35内で曲げ変形を起こす。また、第2の部材32が図中の左方向に移動すると、図4(c)に示すように、各クラッシャブルピン31が隙間35内で反対方向に曲げ変形を起こす。
以上の動作を繰り返すことにより、地震による振動エネルギーは各クラッシャブルピン31の曲げ変形を通じて吸収される。また、振動によるエネルギー入力が一定限度を超えた時点で、各クラッシャブルピン31は破断することになる。
【0054】
このように、予め部分的な破損を許容する機構を設けておくことにより、当該クラッシャブル部材の持つ減衰効果をぎりぎりまで引き出すことが可能となる。
なお、車の衝突と異なり、地震の揺れは何度も繰り返すため、変形制限範囲内で繰返し変形に耐え得る素材(例えば低降伏点鋼材)を用いてクラッシャブル部材を構成することが望ましい。
地震終息後には、破損したクラッシャブル部材を交換することにより、極めて容易に復旧することが可能となる。
また後述のように、この意図的な破損を次のより高度な減衰機構を発動させるためのトリガーとして利用することもできる。
【0055】
[6]人命保護機能
これは、減震装置の設計に際し、弾性変形域→塑性変形域→破断などの損傷過程の遷移を明確に想定すると共に、人命に係わる重量支持ボルト等の最終損傷ヶ所については、想定外地震をも考慮して、部品レベルで十分な安全率を確保することを意味する。
【0056】
[7]各機能の多段化
この発明に係る減震装置の場合、部材間のわずかな隙間を利用してエネルギーの減衰を図るものであるため、十分な移動距離を確保することができず、単一の機構による消費エネルギー量には限界がある。
そこで、複数の減衰機構を盛り込んだ多段減衰機構を採用している。
この際、地震の規模(大地震/中地震/小地震)や対象機器等の挙動(機器の水平運動から引抜き上下運動などへの移動)に沿って、順次、エネルギー吸収部及び吸収方法を変えていくという多段機能を持たせることが望ましい。
【実施例】
【0057】
図5は、この発明に係る第1の実施例を示すものであり、保護対象機器40を載置固定する防振架台41にこの発明を適用した例が描かれている。
この防振架台41は、建物の基礎42にアンカーボルト43によって強固に固定された下部架台44と、これと所定の間隙を隔てて対向配置された上部架台45とを備えている。
上部架台45と下部架台44との間には、内部に圧縮コイルバネ46を備えた吸振体47が介装されており、この吸振体47によって上部架台45が弾性支持されている。
【0058】
下部架台44の上縁部48に形成された貫通孔49と、上部架台45の下縁部50に形成された貫通孔51には、第1の揺れ防止ピン52が挿通されている。
この第1の揺れ防止ピン52の外周面と各貫通孔49, 51との間には、5mm程度の比較的小さな隙間(可動空間)が設けられている。
【0059】
上部架台45の隅部には、ボルト挿通孔53が設けられている。
このボルト挿通孔53内には、管状の弾性材よりなる第1の減衰部材54が換装されている。
このボルト挿通孔53には第1のストッパーボルト55が挿通され、その先端部が下部架台44の対向面に形成されたネジ穴56に螺合されている。
第1のストッパーボルト55の外周面と第1の減衰部材54の内周面との間には、1.5cm程度の比較的大きな隙間が設けられている。
第1のストッパーボルト55の頭部57とボルト挿通孔53との間には、つば広のワッシャ58が介装されている。
【0060】
上部架台45の上縁部59には滑りシート60が配置されると共に、その上面には保護対象機器40の取付脚部61が載置されている。
上部架台45の上縁部59、滑りシート60及び取付脚部61には、それぞれの対応箇所にボルト挿通孔59a, 60a, 61aが形成されており、各ボルト挿通孔59a, 60a, 61aには、管状の弾性材よりなる第2の減衰部材62が換装されている。
【0061】
このボルト挿通孔59a, 60a, 61aには下側から第2のストッパーボルト63が挿通され、その先端部にはナット64が螺合されている。
第2のストッパーボルト63の外周面と第2の減衰部材62の内周面との間には、7mm程度の隙間が設けられている。
【0062】
また、上部架台45の上縁部59、滑りシート60及び取付脚部61には、それぞれの対応箇所にピン挿通孔59b, 60b, 61bが形成されており、各ピン挿通孔59b, 60b, 61bには第2の揺れ防止ピン65が挿通されている。
この第2の揺れ防止ピン65の外周面と各貫通孔59b, 60b, 61bとの間には、5mm程度の隙間が設けられている。
【0063】
図には明示されていないが、上部架台45及び下部架台44はそれぞれ矩形の枠体よりなり、上記の貫通孔49, 51、第1の揺れ防止ピン52、ボルト挿通孔53、第1の減衰部材54、第1のストッパーボルト55等は、枠体の四隅にそれぞれ設けられている。
また上記吸振体47は、枠体の各辺に2個ずつ装着されており、合計8個の吸振体47によって上部架台45は下部架台44上に弾性支持されている。
【0064】
この防振架台41に地震の振動が水平方向に加えられると、まず滑りシート60による滑り作用により、保護対象機器40の取付脚部61と上部架台45の上縁部59が左右に別個に移動し、各貫通孔59b, 60b, 61bの内面に第2の揺れ防止ピン65が繰り返し衝突する。この結果、地震の振動は、滑りシート60における滑り摩擦や、各貫通孔59b, 60b, 61bに対する第2の揺れ防止ピン65の衝突、ピン65の塑性変形により減衰される。
この際、第2のストッパーボルト63と第2の減衰部材62間の距離にも変動は生じているが、両者間の隙間は第2の揺れ防止ピン65と各貫通孔59b, 60b, 61b間の隙間よりもが距離が長いため、接触することはない。
【0065】
これと平行して、上部架台45と下部架台44も左右に振動し、第1の揺れ防止ピン52が貫通孔49, 51の内面に繰り返し衝突する。この結果、地震の振動は、吸振体47内の圧縮コイルバネ46の弾性変形や貫通孔49, 51に対する第1の揺れ防止ピン52の衝突、同ピン52の塑性変形により、減衰される。
この場合も、第1のストッパーボルト55と第1の減衰部材54間の距離に変動が生じてはいるが、両者間の隙間は第1の揺れ防止ピン52と各貫通孔49, 51間の隙間よりもが距離が長いため、接触することはない。
【0066】
この段階で地震が収束すれば問題ないが、さらに大きな振動が継続した場合には、第2の揺れ防止ピン65が破断し、第2のストッパーボルト63がボルト挿通孔59a, 60a, 61a内の第2の減衰部材62に衝突する。この結果、地震の振動は第2の減衰部材62によって減衰される。
【0067】
同時に、上部架台45と下部架台44も左右に大きく振動して第1の揺れ防止ピン52が破断し、第1のストッパーボルト55がボルト挿通孔53内の第1の減衰部材54に衝突する。この結果、地震の振動は第1の減衰部材54によって減衰される。
【0068】
上記のように、一対の振動部材(例えば上部架台45の上縁部59と保護対象機器40の取付脚部61)に複数の貫通孔を設けておき、それぞれに挿通される係合部材(例えば第2の揺れ防止ピン65と第2のストッパーボルト63)との間の間隙長に差異を設けておくことで、間隙長の短い方の減衰機構を先に機能させることが可能となる。
また、間隙長の短い方の係合部材をクラッシャブルに構成しておくことで、当該係合部材が破損した時点で、間隙長の長い方の減衰機構を発動させることが可能となる。
【0069】
このように、地震による振動の強度に応じて各減衰機構が段階的に発動し、振動に対する減衰機能を有効に発揮する結果、保護対象機器40内に搭載された電子部品等を保全することが可能となる。
【0070】
この段階で地震が収束すれば、破断した第1の揺れ防止ピン52及び第2の揺れ防止ピン65を交換することで、迅速な復旧を実現することが可能となる。
また、地震による振動が継続した場合であっても、第1のストッパーボルト55及び第2のストッパーボルト63は想定される地震の震度を遙かに超える十分な強度が確保されているため、保護対象機器40が倒壊することはなく、人身事故の発生という最悪の事態は回避できる。
【0071】
各減衰機構は、例えば通常のボルト挿通孔(貫通孔)に比べてわずかに孔径を拡大するとか、部材間に滑り部材を挿入するといったレベルに止まり、従来の免震や耐震のように大がかりなスペースを確保したり、特別な材料や構造を準備する必要がないため、コストの低減効果も期待できる。
【0072】
図6は、この発明に係る第2の実施例を示すものであり、第1の実施例にプラスして、上下方向(引き抜き方向)の振動に対する減衰機能を付与した点に特徴を備えている。図中、第1の実施例と共通する構成要素については、同一の符号が割り振られている。
【0073】
まず、保護対象機器40を載置する防振架台41は上記と同様、建物の基礎42にアンカーボルト43によって強固に固定された下部架台44と、これと所定の間隙を隔てて対向配置された上部架台45とを備えている。
上部架台45と下部架台44との間には、内部に圧縮コイルバネ46を備えた吸振体47が介装されており、この吸振体47によって上部架台45が弾性支持されている。
【0074】
下部架台44の上縁部48に形成された貫通孔49と、上部架台45の下縁部50に形成された貫通孔51には、第1の揺れ防止ボルト70が挿通されており、その先端部には複数枚の皿バネ71が係合された上で、ナット72により係止されている。
この第1の揺れ防止ボルト70の外周面と各貫通孔49, 51との間には、5mm程度の比較的小さな隙間が設けられている。
【0075】
上部架台45の隅部には、ボルト挿通孔53が設けられている。
このボルト挿通孔53内には、管状の第1の減衰部材54が換装されている。
このボルト挿通孔53には第1のストッパーボルト55が挿通され、その先端部が下部架台44の対向面に形成されたネジ穴56に螺合されている。
第1のストッパーボルト55の外周面と減衰部材54の内周面との間には、1.5cm程度の比較的大きな隙間が設けられている。
第1のストッパーボルト55の頭部57とボルト挿通孔53との間には、つば広のワッシャ58と複数枚の皿バネ73が介装されている。
【0076】
上部架台45の上縁部59には滑りシート60が配置されると共に、その上面には保護対象機器40の取付脚部61が載置されている。
上部架台45の上縁部59、滑りシート60及び取付脚部61には、それぞれの対応箇所にボルト挿通孔59a, 60a, 61aが形成されており、各ボルト挿通孔59a, 60a, 61aには管状の第2の減衰部材62が換装されている。
【0077】
このボルト挿通孔59a, 60a, 61aには下側から第2のストッパーボルト63が挿通され、その先端部にはナット64が螺合されている。
また、第2のストッパーボルト63の頭部74とボルト挿通孔59aとの間には、複数枚の皿バネ75が介装されている。
第2のストッパーボルト63の外周面と第2の減衰部材62の内周面との間には、7mm程度の隙間が設けられている。
【0078】
また、上部架台45の上縁部59、滑りシート60及び取付脚部61には、それぞれの対応箇所にボルト挿通孔59b, 60b, 61bが形成されている。
このボルト挿通孔59b, 60b, 61bには、第2の揺れ防止ボルト76が挿通され、その先端部にはナット77が螺合されている。
この第2の揺れ防止ボルト76の外周面と各貫通孔59b, 60b, 61bとの間には、5mm程度の隙間が設けられている。
また、ナット77とボルト挿通孔59bとの間には、複数枚の皿バネ78が介装されている。
【0079】
この防振架台41に地震の振動が水平方向に加えられた場合には、第1の実施例において説明したように、まず滑りシート60による滑り作用により、保護対象機器40の取付脚部61と上部架台45の上縁部59が左右に別個に移動し、ボルト挿通孔59b, 60b, 61bの内面に第2の揺れ防止ボルト76が繰り返し衝突する。この結果、地震の振動は、滑りシート60における滑り摩擦や、ボルト挿通孔59b, 60b, 61bにおける第2の揺れ防止ボルト76の衝突により減衰される。
【0080】
これと平行して、上部架台45と下部架台44も左右に振動し、第1の揺れ防止ボルト70が貫通孔49, 51の内面に繰り返し衝突する。この結果、地震の振動は、吸振体品内の圧縮コイルバネ46の弾性変形や貫通孔49, 51における第1の揺れ防止ボルト70の衝突、同ボルト70の塑性変形により、減衰される。
【0081】
この段階で地震が収束せずに、さらに大きな振動が継続した場合には、第2の揺れ防止ボルト76が破断し、第2のストッパーボルト63がボルト挿通孔59a, 60a, 61a内の減衰部材62に衝突する。この結果、地震の振動は減衰部材62によって減衰される。
【0082】
同時に、上部架台45と下部架台44も左右に大きく振動して第1の揺れ防止ボルト70が破断し、第1のストッパーボルト55がボルト挿通孔53内の第1の減衰部材54に衝突する。この結果、地震の振動は第1の減衰部材54によって減衰される。
【0083】
この段階で地震が収束すれば、破断した第1の揺れ防止ボルト70及び第2の揺れ防止ボルト76を交換することで、迅速な復旧を実現することが可能となるが、地震による振動が継続した場合であっても、第1のストッパーボルト55及び第2のストッパーボルト63は想定される地震の震度を遙かに超える十分な強度が確保されているため、保護対象機器40の倒壊は回避される。
【0084】
さらに、この防振架台41に対し1Gを越える上下方向の振動が加えられた場合には、各皿バネ71, 73, 75, 78の弾性力が機能し、エネルギーの吸収が実現される。
この際、各皿バネ71, 73, 75, 78は複数用意されており、相互間で滑り摩擦が生じるため、より効率的な減衰効果が期待できる。
【0085】
図7は、この発明に係る第3の実施例を示すものであり、溶接やボルト等によって保護対象機器40に強固に取り付けられた楔状部材80と、この楔状部材80と対向する位置に設けられた楔受け部材81とを備えた第1の楔状減衰機構82が描かれている。
楔受け部材81は弾塑性材よりなり、楔状部材80の先端部80aを受け入れるための凹部81aが設けられている。
保護対象機器40は、建物の基礎42の上に載置されているが、基礎42と保護対象機器40の底面との間には、滑りシート83が介装されている。
【0086】
ここで、地震による振動が水平方向に加えられると、保護対象機器40が左右に往復移動し、楔状部材80の先端部80aが楔受け部材81の凹部81a内に何度も圧入される。
この結果、滑りシート83における滑り摩擦効果と、楔状部材80の先端部80a及び楔受け部材81の凹部81a間のブレーキ効果により、振動エネルギーが効果的に消費される。
【0087】
上記楔状部材80及び楔受け部材81の形状に特に限定はなく、ブレーキ効果が得られる限り、どのような形状であってもよい。
また、保護対象機器40側に凹部81aを備えた楔受け部材81を固定すると共に、外部に楔状部材80を固定することもできる。
上記滑りシート83の代わりに、ころやベアリング等の滑り部材を用いることもできる。
保護対象機器40がスプリングを内蔵した吸振体等によって弾性支持されている場合には、これによって保護対象機器40の横移動が担保されるため、滑りシート83等の滑り部材を省略することができる。
【0088】
図8は、この発明に係る第4の実施例を示すものであり、上記第1の楔状減衰機構82と同様、保護対象機器40に強固に取り付けられた楔状部材80と、楔状部材80の先端部80aを受け入れる凹部81aを有する楔受け部材81と、建物の基礎42と保護対象機器40の底面との間に介装された滑りシート83を備えた第2の楔状減衰機構85が描かれている。
【0089】
さらにこの第4の実施例の場合、楔状部材80及び保護対象機器40のフランジ部86に貫通孔80b, 86aが設けられており、この連通貫通孔80b, 86aには、弾性材よりなる管状の減衰部材87が換装されている。
この連通貫通孔80b, 86aには、固定ボルト88が挿通されており、この固定ボルト88の先端は、滑りシート83を貫通して基礎42に到達し、基礎42に設けられたネジ穴89に螺合されている。また、固定ボルト88と減衰部材87との間には、所定の隙間が設けられている。
【0090】
ここで、地震による振動が水平方向に振動が加えられると、まず、固定ボルト88が減衰材87に繰り返し衝突し、振動エネルギーが消費される。
同時に、保護対象機器40が左右に往復移動し、楔状部材80の先端部80aが楔受け部材81の凹部81a内に何度も圧入され、そのブレーキ効果によって振動エネルギーが消費される。
もちろん、滑りシート83における滑り摩擦効果によっても、振動エネルギーの消費が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】地震による入力エネルギーと出力エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図2】隙間における移動距離の拡大によるエネルギー消費の促進機能を説明する図である。
【図3】エネルギー変換によるエネルギー消費の促進機能を説明する図である。
【図4】クラッシャブル機能を説明する図である。
【図5】第1の実施例を示す図である。
【図6】第2の実施例を示す図である。
【図7】第3の実施例を示す図である。
【図8】第4の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
10 第1の部材
11 第2の部材
12 ボルト
13 ナット
14 滑り部材
15 貫通孔
16 隙間
17 係止構造
20 第1の部材
21 第2の部材
22 揺動板
23 回動部材
24 ピン
25 係合孔
26 エネルギー変換構造
27 回転軸
30 第1の部材
31 クラッシャブルピン
32 第2の部材
33 貫通孔
34 クラッシャブル構造
35 隙間
40 対象機器
41 防振架台
42 基礎
43 アンカーボルト
44 下部架台
45 上部架台
46 圧縮コイルバネ
47 吸振体
48 下部架台の上縁部
49 貫通孔
50 上部架台の下縁部
51 貫通孔
52 第1の揺れ防止ピン
53 ボルト挿通孔
54 第1の減衰部材
55 第1のストッパーボルト
56 ネジ穴
57 第1のストッパーボルトの頭部
58 ワッシャ
59 上部架台の上縁部
59a, 60a, 61a ボルト挿通孔
59b, 60b, 61b 59a 貫通孔
60 滑りシート
61 対象機器の取付脚部
62 第2の減衰部材
63 第2のストッパーボルト
64 ナット
65 第2の揺れ防止ピン
70 第1の揺れ防止ボルト
71 皿バネ
72 ナット
73 皿バネ
74 第2のストッパーボルトの頭部
75 皿バネ
76 第2の揺れ防止ボルト
77 ナット
78 皿バネ
80 楔状部材
80a 楔状部材の先端部
81 楔受け部材
81a 楔受け部材の凹部
82 第1の楔状減衰機構
83 滑りシート
85 第2の楔状減衰機構
86 保護機器のフランジ
87 減衰材
88 固定ボルト
89 ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象機器を載置固定し、地震時の振動エネルギーを減衰して保護対象機器の破壊を防止する減震装置であって、
上記保護対象機器の構成部材とこの装置の構成部材との隣接部、またはこの装置の複数の構成部材同士の隣接部に設けられた複数の隙間と、
上記の各隙間に設けられた振動エネルギー減衰機構とを備えたことを特徴とする減震装置。
【請求項2】
上記複数の振動エネルギー減衰機構の耐震強度に差異が設けられており、地震の振動強度に応じてより耐震強度の小さい振動エネルギー減衰機構が破壊されると共に、より耐震強度の大きな振動エネルギー減衰機構が段階的に機能するように、各振動エネルギー減衰機構が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の減震装置。
【請求項3】
上記隙間の少なくとも一つが、一方の構成部材に設けられた貫通孔と他方の構成部材に設けられた貫通孔とを重ねた連通貫通孔と、当該連通貫通孔に挿通された係合部材との間に形成される隙間であり、
上記振動エネルギー減衰機構が、振動時に上記係合部材が上記連通貫通孔内面に繰り返し衝突することによる減衰機能を利用したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の減震装置。
【請求項4】
上記一方の構成部材と他方の構成部材との間に、滑り部材が介装されていることを特徴とする請求項3に記載の減震装置。
【請求項5】
上記係合部材が、一方の構成部材の貫通孔から挿通され、他方の構成部材の貫通孔外において先端部にナットが螺合されたボルトよりなり、
このボルトの頭部と一方の構成部材との間に複数の皿バネが介装されていることを特徴とする請求項3または4に記載の減震装置。
【請求項6】
上記隙間の少なくとも一つが、一方の構成部材に設けられた貫通孔に挿通され、その先端が他方の構成部材に螺合されたボルトと、上記貫通孔との間に形成される隙間であり、
上記振動エネルギー減衰機構が、振動時に上記ボルトが上記貫通孔の内面に繰り返し衝突することによる減衰機能を利用したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の減震装置。
【請求項7】
上記ボルトの頭部と一方の構成部材との間に複数の皿バネが介装されていることを特徴とする請求項6に記載の減震装置。
【請求項8】
上記連通貫通孔内に弾性材よりなる減衰部材が配置されていることを特徴とする請求項3〜8の何れかに記載の減震装置。
【請求項9】
上記隙間の少なくとも一つが、水平方向に相対移動する一方の構成部材と他方の構成部材との間に設けられた隙間であり、
上記振動エネルギー減衰機構が、一方の構成部材の対向面に回動自在に設けられた揺動体と、他方の構成部材の対向面に設けられた係合部材からなり、
他方の構成部材が水平方向に相対移動すると、上記係合部材が上記揺動体に当接してこれを回動させ、以て揺動体の端部が他方の構成部材の対向面に圧着する仕組みを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の減震装置。
【請求項10】
想定外の震度の地震が発生した場合にも破損しない強度を備えたストッパーボルトによって、建造物の基礎に係合されると共に、
同じく想定外の震度の地震が発生した場合にも破損しない強度を備えたストッパーボルトによって、上記保護対象機器と係合されることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の減震装置。
【請求項11】
上記振動エネルギー減衰機構の少なくとも1つが、楔状部材と、この楔状部材の先端部を受け入れる凹部を備えた弾塑性材よりなる楔受け部材とからなり、
保護対象機器及び建物基礎の何れか一方に上記楔状部材が固定されると共に、保護対象機器及び建物基礎の何れか他方に上記楔受け部材が固定され、
上記保護対象機器と建物基礎との間に滑り部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の減震装置。
【請求項12】
保護対象機器側に固定された上記楔状部材または楔受部材には貫通孔が設けられると共に、当該貫通孔には弾性材よりなる減衰部材が換装されており、
この貫通孔には固定ボルトが挿通されると共に、その先端部が建物基礎に固定され、この固定ボルトと上記減衰部材の内面との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の減震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−24257(P2013−24257A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156612(P2011−156612)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】