説明

渦巻ポンプ

【課題】ポンプから生じる騒音の要因となるケーシング形状の改善を図った渦巻ポンプを提供する。
【解決手段】ケーシング51が吸込口部60の開口縁周囲に連なる凸状部62を有し、凸状部62は、その頂点623を通り羽根車53の回転軸心Xと直交する直線を第1基線L1とし、第1基線L1から羽根車53の回転軸心方向に沿って羽根車側へ所定距離hを隔てた位置において羽根車53の回転軸心と直交する平面を基準面αとし、基準面αと凸状部62の内周面624との交線を通り羽根車53の回転軸心Xと平行な線を第2基線L2とする場合に、前記頂点623から第1基線L1と第2基線L2の交点までの距離Lxであって羽根車53の回転軸心周りで水流の半径方向流速Vが最大となる半径方向流速最大位置Aにおける前記距離Lxaが、半径方向流速が最小となる半径方向流速最小位置Bにおける前記距離Lxbより大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は渦巻ポンプに関し、特に渦巻ポンプのケーシング構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の渦巻ポンプの一種である両吸込渦巻ポンプは、図10に示すように、ケーシング1と、主軸2に設けた羽根車3を備えている。ケーシング1は羽根車3の回転軸心方向で羽根車3の側方に位置する渦巻形の吸込流路11と、羽根車3の回転軸心廻りに形成する吐出流路12を有している。羽根車3は内部に羽根車内流路13を有しており、羽根車内流路13は回転軸心方向に向けて開口する吸込口部14でケーシング1の吸込流路11に連通し、かつ回転軸心と直交する径方向に向けて開口する吐出口部15でケーシング1の吐出流路12に連通している。
【0003】
羽根車3が主軸2の駆動により回転軸心廻りに回転する状態で、ケーシング1の吸込流路11に流入する水は吸込流路11の渦巻形に沿って旋回しながら吸込流路11の羽根車へ向かう終端部から羽根車3の吸込口部14を通して羽根車内流路13へ流入する。羽根車内流路13へ流入した水は羽根車3の回転による遠心力を受けて吐出口部15からケーシング1の吐出流路12に噴出する。
先行技術文献としては特許文献1および2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−290096号公報
【特許文献2】特開昭61−49195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構成において、ケーシング1の吸込流路11で旋回する水流が吸込流路11の羽根車へ向かう終端部から羽根車3の吸込口部14へ流入する際に、図10中で矢印で示すように、羽根車3の回転軸心に沿った方向に転向する。
【0006】
この水流の急転向は流れの剥離を発生させ、水頭損失を大きくさせる。水頭損失の増大は圧力降下を大きくするため、キャビテーションの発生による吸込性能の低下につながる。キャビテーションが発生するとポンプ性能の低下、振動および騒音の発生、壊食、損傷等の有害な事象を引き起す。
【0007】
このため、特許文献1では、水流を羽根車へ流れ込ませる吸込口部がベルマウスに類似する形状をなし、吸込口部がケーシング内面から突出し、吸込口部とケーシング内面との間に環状または弧状の溝部を備えており、ポンプ軸と直交する方向に流れてきた水流が吸込口部の溝部に入り、その流速を低下させつつ溝部の水流誘導作用により旋回成分が大きくなることで、水流が旋回しながら吸込口部を乗り越えてポンプ軸と平行な方向に方向転換する。
【0008】
特許文献2では、両吸込渦巻ポンプにおいて羽根車への吸込口部の全円周部断面形状が、吸込口部へ旋回状態で吸込まれる水流の上流側始点から下流側終点に向かって、曲面の曲率半径、および羽根車端面と曲面頂点間の間隔が次第に小さくなるように形成しており、上流側始点での水流は、曲面の曲率半径が他の下流側の曲面の曲率半径より大きいので、曲面に倣って方向転換を行う。
【0009】
本願発明は、ポンプから生じる騒音の要因となるケーシング形状の改善を図った渦巻ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の渦巻ポンプは、ケーシングと回転軸心廻りに回転する羽根車を備え、ケーシングは羽根車の回転軸心方向で羽根車の側方に位置する渦巻形の吸込流路と、羽根車の回転軸心廻りに形成する吐出流路を有し、羽根車は羽根車内流路と羽根車内流路内に配置した羽根を有し、羽根車内流路が羽根車の回転軸心方向に向けて開口する吸込口部でケーシングの吸込流路に連通し、かつ羽根車の径方向に向けて開口する吐出口部でケーシングの吐出流路に連通するものであって、ケーシングは、吸込流路の内壁面において羽根車内流路の吸込口部の開口縁周囲に連なる部位に、羽根車の回転軸心方向に隆起してその頂点を水流が羽根車の半径方向の速度成分をなす半径方向流速を伴って通過する凸状部を有し、凸状部は、その頂点から羽根車の回転軸心と直交する方向に延びる線を第1基線とし、第1基線から羽根車の回転軸心方向に所定距離hを隔てた位置において羽根車の回転軸心と直交する平面を基準面とし、基準面と凸状部の内周面との交線を通り羽根車の回転軸心と平行をなす線を第2基線とし、前記頂点から第1基線に沿った第1基線と第2基線の交点までの距離をLxとする場合に、羽根車の回転軸心周りで水流の半径方向流速が最大となる半径方向流速最大位置における距離Lxaが、半径方向流速が最小となる半径方向流速最小位置における距離Lxbより大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の渦巻ポンプにおいて、凸状部は、第1基線から羽根車の回転軸心方向に沿って吸込口部の開口縁までの距離Hが羽根車の回転軸心周りにおいて一定であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の渦巻ポンプにおいて、凸状部は、半径方向流速最大位置から周方向に沿った所定距離間における距離Lxが半径方向流速最小位置における距離Lxbより大きいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の渦巻ポンプにおいて、凸状部は、その内周面が羽根車の回転軸心側に向けて2次曲線状に滑らかに変化する凸状の曲面をなすことを特徴とする。
また、本発明の渦巻ポンプにおいて、凸状部は、その内周面が周方向に沿って滑らかに変化する曲面をなすことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の渦巻ポンプにおいて、凸状部は、その内面が羽根車の回転軸心側に向けて円弧状に滑らかに変化する凸状の曲面をなし、半径方向流速最大位置から周方向に120°の位置まで前記距離Lxが半径方向流速最小位置における前記距離Lxbより大きいことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の渦巻ポンプにおいて、凸状部は、ケーシングと別体に形成した交換可能なものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、羽根車の回転軸心周りで水流の半径方向流速が最大となる半径方向流速最大位置における距離Lxaが、半径方向流速が最小となる半径方向流速最小位置における距離Lxbより大きいことにより、水流が旋回しながら凸状部を乗り越えて羽根車の回転軸心と平行な方向に方向転換する際に生じる水流の剥離が抑制でき、キャビテーションの発生による騒音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における渦巻ポンプの要部を示す斜視図
【図2】(a)は図1のA部における断面図、(b)は図1のB部における断面図
【図3】本発明の実施の形態における渦巻ポンプを示す断面図
【図4】解析上の半径方向流速分布を示す模式図
【図5】半径方向流速の円周方向分布を示すグラフ図
【図6】半径方向流速の円周方向分布を示すグラフ図
【図7】本発明の実施の形態における渦巻ポンプを示す正面図
【図8】本発明の実施の形態における渦巻ポンプのカップリングを示す平面図
【図9】騒音の改善を示すグラフ図
【図10】従来の渦巻ポンプを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図3において、両吸込渦巻ポンプは、ケーシング51の内部に主軸52によって駆動する羽根車53を備えている。ケーシング51は羽根車53の回転軸心方向で羽根車53の側方に位置する渦巻形の吸込流路54を有し、かつ羽根車53の回転軸心廻りに形成する吐出流路55を有している。
【0019】
なお、図4に示すように、巻き角度θが回転軸中心と舌部511を結ぶ直線を0°として水流622の流れ方向の回転角度を示すものであるとき、吸込流路54は、ケーシング51の舌部511のある巻き角度0°から360°にかけて、回転軸心方向および半径方向の幅が狭くなる形状をなしている。
【0020】
羽根車53はハブ56とシュラウド57の間に羽根車内流路58を有し、ハブ56とシュラウド57の所定位置に複数の羽根59を形成している。羽根車内流路58は羽根車53の回転軸心方向に向けて開口する吸込口部60でケーシング51の吸込流路54に連通し、かつ羽根車53の回転軸心と直交する径方向に向けて開口する吐出口部61でケーシング51の吐出流路55に連通している。羽根59はハブ56とシュラウド57とに接合し、吸込口部60における始端位置から吐出口部61における終端位置まで延在している。
【0021】
ケーシング51は吸込流路54の内壁面において羽根車内流路58の吸込口部60の開口縁周囲に連なる部位に羽根車53の回転軸心周りに沿って凸状部62を有しており、凸状部62はケーシング51を鋳造する際に一体成形しても良く、ケーシング51と別体に形成して交換可能とすることも可能である。
【0022】
凸状部62は以下の条件を満たす形状をなす。つまり、図1および図2に示すように、凸状部62は羽根車53の回転軸心方向に隆起してその頂部621を水流622が羽根車53の半径方向の速度成分をなす半径方向流速を伴って通過するものであり、吸込口部60に臨み、頂点623から開口縁601に至る内周面624が羽根車53の回転軸心側に向けて2次曲線(円、楕円、放物線、双曲線等の一部)状に滑らかに変化する凸状の曲面をなす。
【0023】
そして、凸状部62は、その頂点623から羽根車53の回転軸心Xと直交する方向に延びる線を第1基線L1とし、第1基線L1から羽根車53の回転軸心方向に所定距離hを隔てた位置において羽根車53の回転軸心Xと直交する平面を基準面αとし、基準面αと凸状部62の内周面624との交線625を通り羽根車53の回転軸心Xと平行をなす線を第2基線L2とし、頂点623から第1基線L1に沿った第1基線L1と第2基線L2の交点までの距離をLxとする場合に、羽根車53の回転軸心周りで水流622の半径方向流速が最大となる半径方向流速最大位置Aにおける距離Lxaが、半径方向流速が最小となる半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きくなるように、凸状部62の内周面が周方向に沿って滑らかに変化する曲面をなす。
【0024】
また、凸状部62は、第1基線L1から羽根車53の回転軸心方向に沿って吸込口部60の開口縁601までの距離Hが羽根車53の回転軸心周りにおいて一定である。本実施の形態では、半径方向流速最大位置Aから周方向に沿った所定距離間Laにおける距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きいが、所定距離間Laの長さは任意に設定することが可能であり、これについては後述する。
【0025】
上記した構成において、羽根車53が主軸52の駆動により回転軸心廻りに回転する状態で、ケーシング51の吸込流路54に流入する水は吸込流路54の渦巻形に沿って旋回しながら吸込流路54の終端部から羽根車53の吸込口部60を通して羽根車内流路58へ流入する。羽根車内流路58へ流入した水は羽根車53の回転による遠心力を受けて吐出口部61からケーシング51の吐出流路55に噴出する。
【0026】
ケーシング51の吸込流路54で旋回する水流622は、吸込流路54から羽根車53の吸込口部60へ流入する際に、羽根車53の回転軸心Xに沿った方向に転向する。このとき、半径方向流速を伴う水流622は羽根車53の回転軸心周りに沿って形成した凸状部62を越えることで、回転軸心方向へ急転向する流れ、特にケーシング51に沿った流れを緩和させ、流れがケーシング51から剥離することを抑制することで、キャビテーションの発生を抑制して騒音の発生を抑制することができる。さらに、キャビテーションの発生によるポンプ吸込性能の低下、ポンプ性能の低下、振動の発生、壊食、損傷を抑制することができる。
【0027】
以下に詳述する。図4は本発明の渦巻ポンプにおける水流622の流れを示す模式図であり、図5は吸込流路54の巻き角度と、距離Lxおよび半径方向流速Vの関係を示すグラフ図であり、距離Lxは無次元化した値であって、距離Lxを凸状部62の全長にわたって一定とする場合の距離Lxの標準値で羽根車53の回転軸心周りにおける各巻き角度での距離Lxの値を除算した値であり、半径方向流速Vは無次元化した値であって、ポンプ吸込量を吸込口部60の面積で割った平均流速で羽根車53の回転軸心周りにおける各巻き角度での半径方向流速Vの値を除算した値である。
【0028】
図5において、軌跡K1は距離Lxを凸状部62の全長にわたって一定とする参考例の場合を示し、この条件下において羽根車53の回転軸心周りにおける各巻き角度での半径方向流速Vを軌跡K2で示している。
【0029】
軌跡K3は、本実施の形態にかかるものであり、半径方向流速最大位置Aから周方向に沿った所定距離間La、巻き角度0°から90°までの範囲において距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きく、かつ各巻き角度における半径方向流速Vに応じて距離Lxを漸減させる場合を示しており、軌跡K4に示すように、巻き角度0°から120°までの範囲において距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きく、かつ各巻き角度における半径方向流速Vに応じて距離Lxを漸減させる条件とすることも可能である。軌跡K3の条件下において羽根車53の回転軸心周りにおける各巻き角度での半径方向流速Vを軌跡K5で示している。また、軌跡K4においては、半径方向流速Vは軌跡K5とほぼ同じとなる。
【0030】
図5から明らかなように、本実施の形態において、半径方向流速最大位置Aは巻き角度0°から30°の範囲にあり、半径方向流速最大位置Aから周方向に沿った所定距離間La、巻き角度0°から90°までの範囲で、あるいは巻き角度0°から120°までの範囲(領域)で距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きいことにより、本実施の形態における水流622の半径方向流速V(K5)が参考例の場合の半径方向流速V(K2)に比べて小さくなっており、表1に示すように、剥離、キャビテーションの状況を表す負圧の状況は、参考例と比較して本実施の形態において減少している。
【0031】
【表1】

【0032】
この結果、水流622が旋回しながら凸状部62を乗り越えて羽根車53の回転軸心Xと平行な方向に方向転換する際に、不均一な流れ込みで流速が速くなる領域において生じる水流622の剥離が抑制でき、キャビテーションの発生を抑制して騒音の発生を抑制することができる。さらに、剥離が抑制できることにより、吸込性能の低下、ポンプ性能の低下、振動の発生、壊食、損傷を抑制することができる。
【0033】
図6に示すように、距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きくなる範囲は任意に設定することが可能であり、巻き角度0°から90°までの範囲において距離Lxを漸減させる場合(軌跡K6)、巻き角度0°から90°までの範囲において距離Lxを一定に維持した後に巻き角度90°から210°までの範囲において漸減させる場合(軌跡K7)、巻き角度0°から90°までの範囲において距離Lxを一定に維持した後に巻き角度90°から300°までの範囲において漸減させる場合(軌跡K8)、巻き角度0°から300°までの範囲において距離Lxを漸減させる場合(軌跡K9)、巻き角度0°から300°までの範囲において距離Lxを二次曲線的に漸減させる場合(軌跡K10)等の構成が可能である。
【0034】
なお、図5で0°における半径方向流束Vが下がるのは、舌部511の形状による半径方向成分の減少や、ケーシングの摩擦抵抗の増加による。さらに、図5、図6で巻き角度を300°までしか記載していないのは、本実施の形態において300°を超えると凸状部の頂部621がケーシング51に接触し吸収されて不明確となるためである。
【0035】
図7および図8に示すように、渦巻ポンプ800をカップリング801でモータ802に連結して使用する条件下で、渦巻ポンプ800の周囲の4箇所D1〜D4において測定した騒音の変化を図9に示す。
【0036】
図9は距離Lxを凸状部62の全長にわたって一定とする参考例の場合における騒音と、本実施の形態のように、半径方向流速最大位置Aを含む周方向に沿った所定距離間La、巻き角度0°から90°までの範囲において距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きくなる場合における騒音との差を、4箇所の測定位置D1〜D4において示すものである。図9に示すように、ポンプの吐出量を変化させても、4箇所の測定位置D1〜D4での本発明における騒音は参考例における騒音よりも下がった範囲にある。
【0037】
本実施の形態において、距離Hを一定とすることで凸状部の形状が単純となり、製作容易となってコストダウンをはかることができる。
さらに、凸状部を、半径方向流速最大位置を含む周方向に沿った所定距離範囲における距離Lxが半径方向流速最小位置における距離Lxbより大きくなるように形成することで、半径方向流速が速くて剥離が生じる可能性の高い所定距離範囲において剥離を抑制でき、より効果的に騒音の発生を抑制することができる。
【0038】
特に、巻き角度0°から120°の範囲は半径方向流速が平均流速より速く、この範囲を所定距離範囲とすることが望ましい。より望ましくは半径方向流速が平均流速の1.4倍以上となる0°から90°を所定距離範囲とすることである。
【0039】
また、所定距離範囲を巻き角度0°から360°にわたって設定することもできるが、本実施の形態において巻き角度0°から90°の場合はケーシング重量で1%の増加である。一方、巻き角度0°から360°とするとケーシング重量で4%の増加となり、巻き角度0°から90°にした場合と比較して4倍の重量増加となる。コストを考慮すると効果の高い巻き角度0°から90°の範囲で行なうことがより効果的である。
【0040】
さらに、本実施の形態において、凸状部の内周面を滑らかな曲面とすることで、流れが内周面で急激な変化を生じ難くなり、剥離をより抑制することができる。
本実施の形態において、凸状部62はケーシング51を鋳造する際に一体成形しているが、距離Lxが半径方向流速最小位置Bにおける距離Lxbより大きくなる部位は、ケーシング51と別体に形成して交換可能とすることも可能である。交換可能とすることで、凸状部62が損傷した場合にケーシング51を交換することなく凸状部62を交換することで容易にポンプを復旧できるとともに、騒音や振動、吸込性能が運転状態の変化により悪化した場合に凸状部62を交換することで、改善を図ることもできる。
【符号の説明】
【0041】
51 ケーシング
52 主軸
53 羽根車
54 吸込流路
55 吐出流路
56 ハブ
57 シュラウド
58 羽根車内流路
59 羽根
60 吸込口部
61 吐出口部
62 凸状部
511 舌部
601 開口縁
621 頂部
622 水流
623 頂点
624 内周面
625 交線
800 渦巻ポンプ
801 カップリング
802 モータ
X 回転軸心
L1 第1基線
L2 第2基線
h 所定距離
α 基準面
Lxa 水流の半径方向流速が最大となる半径方向流速最大位置における距離
Lx(Lxa、Lxb) 頂点623から第1基線L1に沿った第1基線L1と第2基線L2の交点までの距離
A 半径方向流速最大位置
B 半径方向流速最小位置
La 半径方向流速最大位置Aから周方向に沿った所定距離間
V 半径方向流速
D1〜D4 測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと回転軸心廻りに回転する羽根車を備え、ケーシングは羽根車の回転軸心方向で羽根車の側方に位置する渦巻形の吸込流路と、羽根車の回転軸心廻りに形成する吐出流路を有し、羽根車は羽根車内流路と羽根車内流路内に配置した羽根を有し、羽根車内流路が羽根車の回転軸心方向に向けて開口する吸込口部でケーシングの吸込流路に連通し、かつ羽根車の径方向に向けて開口する吐出口部でケーシングの吐出流路に連通するものであって、
ケーシングは、吸込流路の内壁面において羽根車内流路の吸込口部の開口縁周囲に連なる部位に、羽根車の回転軸心方向に隆起してその頂点を水流が羽根車の半径方向の速度成分をなす半径方向流速を伴って通過する凸状部を有し、
凸状部は、その頂点を通り羽根車の回転軸心と直交する直線を第1基線とし、第1基線から羽根車の回転軸心方向に沿って羽根車側へ所定距離hを隔てた位置において羽根車の回転軸心と直交する平面を基準面とし、基準面と凸状部の内周面との交線を通り羽根車の回転軸心と平行な線を第2基線とする場合に、前記頂点から第1基線と第2基線の交点までの距離Lxであって羽根車の回転軸心周りで水流の半径方向流速が最大となる半径方向流速最大位置における前記距離Lxaが、半径方向流速が最小となる半径方向流速最小位置における前記距離Lxbより大きいことを特徴とする渦巻ポンプ。
【請求項2】
凸状部は、第1基線から羽根車の回転軸心方向に沿った吸込口部の開口縁までの距離Hが羽根車の回転軸心周りにおいて一定であることを特徴とする請求項1に記載の渦巻ポンプ。
【請求項3】
凸状部は、半径方向流速最大位置を含む周方向に沿った所定距離範囲における前記距離Lxaが半径方向流速最小位置における前記距離Lxbより大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の渦巻ポンプ。
【請求項4】
凸状部は、その内周面が羽根車の回転軸心側に向けて滑らかに変化する凸状の曲面をなすことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の渦巻ポンプ。
【請求項5】
凸状部は、その内周面が周方向に沿って滑らかに変化する曲面をなすことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の渦巻ポンプ。
【請求項6】
凸状部は、その内面が羽根車の回転軸心側に向けて円弧状に滑らかに変化する凸状の曲面をなし、半径方向流速最大位置から周方向に120°の位置まで前記距離Lxが半径方向流速最小位置における前記距離Lxbより大きいことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の渦巻ポンプ。
【請求項7】
凸状部は、ケーシングと別体に形成した交換可能なものであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の渦巻ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−111956(P2011−111956A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268176(P2009−268176)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】