説明

渦流探傷装置

【課題】冷間圧延された鋼管のきず検出精度を向上できる渦流探傷装置を提供する。
【解決手段】渦流探傷装置は、貫通コイルと、複数の搬送ロールと、探傷器とを備える。貫通コイルは、検査対象の鋼管を通す。複数の搬送ロールは、貫通コイルの前方及び後方に一列に配置され、鋼管を搬送する。探傷器は、貫通コイルと接続され、貫通コイルのインピーダンス変化に応じて探傷信号を生成する。貫通コイルは、一対の試験コイル21及び22を含む。各試験コイル21及び22は、半円弧状に巻かれた巻線210及び220を有する。一対の試験コイル21及び22は同一円周上に互いに対向して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流探傷装置に関し、さらに詳しくは、貫通コイルを備えた渦流探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2−66447号公報(特許文献1)、特公平6−87051号公報(特許文献2)、特開平2−208552号公報(特許文献3)及び特開平2−173561号公報(特許文献4)は、鋼管を探傷する渦流探傷装置を開示する。これらの文献で開示された渦流探傷装置は、円形状の貫通コイルを備える。検査対象である鋼管は、貫通コイルを通過するとき、貫通コイルから磁束を受ける。磁束により、鋼管には渦電流が発生する。鋼管にきずがあると、渦電流は乱れる。渦流探傷装置は、渦電流の乱れを検知して、鋼管に形成されたきずを検出する。
【0003】
これらの渦流探傷装置の貫通コイルは、一対の試験コイルを備える。各試験コイルは円形状であり、互いに同軸に配置される。鋼管は一対の試験コイルを通過する。鋼管にきずがあれば、一対の試験コイルのインピーダンスに差が生じ、きず信号を含む探傷信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−66447号公報
【特許文献2】特公平6−87051号公報
【特許文献3】特開平2−208552号公報
【特許文献4】特開平2−173561号公報
【特許文献5】特開平8−334496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高強度を有する鋼管は、ピルガーミルにより冷間圧延される。ピルガーミルは、上下に配置される一対のロールダイスと、マンドレルバーとを備える。マンドレルバーは先端に向かって徐々に小さくなる外径を有し、鋼管に挿入される。マンドレルバーが挿入された鋼管は、パスライン上を搬送され、一対のロールダイスの間に挿入される。ロールダイスは、回転しながらパスライン上を前後に往復移動する。ロールダイスの往復より、マンドレルバーが挿入された鋼管は、所定のサイズに圧延される。
【0006】
冷間圧延中、鋼管は、ロールダイスが1往復するごとに、所定の送り量で前方に搬送されるとともに、鋼管の中心軸周りに所定角度回転される。鋼管が中心軸まわりに回転されながら圧延されると、圧延後の鋼管の外径寸法は、軸方向に沿って若干変動する。このような外径寸法のわずかな変動は、渦流探傷装置のきず検出精度を低下させる。上述のとおり、貫通コイルは通常、同軸に配置された2つの試験コイルできずを検知する。検査対象となる鋼管の外径寸法が長手方向で変動する場合、2つの試験コイルのインピーダンスは、きずによる影響の他に、外径寸法の変動による影響も受ける。2つのコイルのインピーダンスの差により生成される探傷信号は、きず信号とともに外径寸法変動に起因したノイズも含む。そのため、渦流探傷装置のきず検出精度が低下する。
【0007】
本発明の目的は、鋼管のきず検出精度を向上できる渦流探傷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明による渦流探傷装置は、第1貫通コイルと、複数の搬送ロールと、第1探傷器とを備える。第1貫通コイルは、検査対象の鋼管を通す。搬送ロールは、第1貫通コイルの前方及び後方に一列に配置され、鋼管を搬送する。第1探傷器は、第1貫通コイルと接続され、第1貫通コイルのインピーダンス変化に応じて探傷信号を生成する。第1貫通コイルは、一対の第1試験コイルを含む。各第1試験コイルは、半円弧状に巻かれた第1巻線を有する。一対の第1試験コイルは同一円周上に互いに対向して配置される。
【0009】
本発明による渦流探傷装置では、同一円周上に配置された一対の第1試験コイルが差動コイルとして機能する。そのため、鋼管の軸方向での外径寸法変動の影響を受けにくい。その結果、冷間圧延された鋼管のきず検出精度が向上する。
【0010】
好ましくは、各第1試験コイルのコイル面の法線は、鋼管の軸方向に向く。
【0011】
この場合、各第1試験コイルで発生した磁束により、鋼管の円周方向に渦電流が発生する。そのため、鋼管の軸方向に延びるきずが検出されやすくなる。
【0012】
好ましくは、渦流探傷装置はさらに、第2貫通コイルと、第2探傷器とを備える。第2貫通コイルは、第1貫通コイルと同軸に配置される。第2探傷器は、第2貫通コイルと接続され、第2貫通コイルのインピーダンス変化に応じて探傷信号を生成する。第2貫通コイルは、一対の第2試験コイルを含む。各第2試験コイルは、半円弧状に巻かれた第2巻線を有する。一対の第2試験コイルは同一円周上に互いに対向して配置される。一対の第1試験コイルの間には第1隙間が形成され、一対の第2試験コイルの間には第2隙間が形成される。一対の第2試験コイルは、一対の第1試験コイルから第1貫通コイルの中心軸周りに所定角度ずれて配置される。
【0013】
一対の第1試験コイルの間には隙間が形成される。そのため、第1貫通コイルは、きずを検出しにくい不感帯を有する。第2貫通コイルは、第1貫通コイルから第1貫通コイルの中心軸周りに所定角度ずれて配置される。そのため、第1貫通コイルにより不感帯となる鋼管部分は、第2貫通コイルにより検出される。要するに、第2貫通コイルにより、鋼管の不感帯領域が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態による渦流探傷装置の構成図である。
【図2】図1中の探傷器の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1中の貫通コイルの斜視図である。
【図4】図3中の一対の試験コイルの斜視図である。
【図5】図4に示す一対の試験コイルの正面図である。
【図6】同軸に配置された円形状の試験コイルからなる貫通コイルによる鋼管の渦流探傷方法を説明するための模式図である。
【図7】図1に示す渦流探傷装置による鋼管の渦流探傷方法を説明するための模式図である。
【図8】第2の実施の形態による渦流探傷装置の構成図である。
【図9】図8中の第1及び第2の貫通コイルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
[第1の実施の形態]
[渦流探傷装置の全体構成]
図1は、本実施の形態による渦流探傷装置の構成図である。図1を参照して、渦流探傷装置1は、貫通コイル2と、探傷器3と、送り装置4と、コイル架台10とを備える。
【0017】
貫通コイル2は、自己誘導自己比較方式の試験コイル(いわゆる差動コイル)であり、励磁と検出とを兼ねる。貫通コイル2は略円形状であり、その中心軸は、貫通コイル2を通過する鋼管100の中心軸と同軸に配置される。貫通コイル2の下方には、コイル架台10が配置される。コイル架台10は貫通コイル2を昇降し、貫通コイル2の中心軸を鋼管100の中心軸に合わせる。貫通コイル2及び探傷器3は、鋼管100のきずを検出したとき探傷信号を生成する。
【0018】
送り装置4は、鋼管100を搬送して貫通コイル2に通す。送り装置4は、複数の搬送ロール5及び6と、一対のガイドロール7A及び7Bと、複数のピンチロール8とを備える。
【0019】
複数の搬送ロール5は貫通コイル2の前方に配置され、複数の搬送ロール6は貫通コイル2の後方に配置される。複数の搬送ロール5及び6は一列に配置される。複数の搬送ロール5及び6は、図示しない駆動源と接続され、駆動源により回転する。そして、搬送ロール5及び6は、鋼管100を貫通コイル2の前方から後方に搬送する。各搬送ロール5及び6は、中央部がV字状にくぼむ、いわゆるVローラである。
【0020】
一対のガイドロール7Aは、貫通コイル2の前方の左右に配置される。同様に、一対のガイドロール7Bは、貫通コイル2の後方の左右に配置される。搬送ロール5により搬送される鋼管100は、一対のガイドロール7A及び一対のガイドロール7Bの間を通過する。ガイドロール7A及び7Bは、搬送中の鋼管100が左右に振動するのを抑制する。
【0021】
複数のピンチロール8は、貫通コイル2の前方と後方とにそれぞれ配置される。貫通コイル2の前方の複数のピンチロール8は、搬送ロール5の上方に配置される。貫通コイル2の後方の複数のピンチロール8は、搬送ロール6の上方に配置される。各ピンチロール8は、図示しない昇降装置により昇降可能に支持される。鋼管100が搬送されるとき、各ピンチロール8は下降して、鋼管100と接触する。ピンチロール8は、搬送中の鋼管100が上下に振動するのを抑制する。
【0022】
[探傷器3の構成]
図2は、図1中の探傷器3の構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して、探傷器3は、発信器301と、電力増幅器302と、貫通コイル2と接続されるブリッジ回路303と、増幅器304と、移相器305と、同期検波器306及び307と、フィルタ308及び309と、ディスプレイ310とを備える。
【0023】
発信器301は、正弦波の交流電流を出力する。電力増幅器302は、発信器301の出力を増幅し、ブリッジ回路303を介して貫通コイル2に供給する。貫通コイル2を通過する鋼管100にきずがあると、貫通コイル2のインピーダンスが変化する。ブリッジ回路303は貫通コイル2のインピーダンスの変化に応じて探傷信号を生成する。
【0024】
増幅器304は、生成された探傷信号を増幅する。増幅器304により増幅された探傷信号は、2つの同期検波器306及び307に入力される。同期検波器306及び307は、移相器305から出力される制御信号を受け、探傷信号から、インピーダンス平面上のX軸に対応した成分(以下、X信号という)とY軸に対応した成分(以下、Y信号という)とを抽出する。移相器305は、発信器301から出力された交流信号の位相を適宜シフトして、第1制御信号と、第1制御信号と位相が90度異なる第2制御信号とを出力する。同期検波器306は、第1制御信号で探傷信号を同期検波してX信号を出力する。同期検波器307は、第2制御信号で探傷信号を同期検波してY信号を出力する。
【0025】
X信号及びY信号は、それぞれ電気ノイズや鋼管100の搬送時の振動等に基づくノイズを含んでいる。フィルタ308及び309はそれぞれ、対応する信号(X信号、Y信号)からノイズを除去し、ディスプレイ310に出力する。
【0026】
ディスプレイ310は、探傷信号をベクトル表示する。具体的には、ディスプレイ310は、X信号及びY信号をインピーダンス平面上に表示する。これにより、探傷信号は二次元的に表示される。
【0027】
[貫通コイル2の構成]
図3は、貫通コイル2の斜視図である。図3を参照して、貫通コイル2は、ボビン20と、一対の試験コイル21及び22とを備える。
【0028】
ボビン20は、円筒形の筐体であり、コイル架台10上に配置され、固定される。一対のコイル21及び22は、ボビン20の内周面に配置される。図4は、一対の試験コイル21及び22の斜視図である。図4を参照して、試験コイル21は半円弧状に湾曲されている。より具体的には、試験コイル21は、巻線210からなる空芯コイルである。巻線210は、半円弧状に巻かれている。ここでいう「半円弧状」とは厳密は半円弧だけでなく、略半円弧の形状となるものも含む。巻線210は、外周円弧210OCと、内周円弧210ICと、弧端210Eとを含む。弧端210Eは、外周円弧210OCと、内周円弧210ICとの間に位置する部分であって、巻き線210が折れ曲がった部分に相当する。試験コイル21のコイル面210Sの法線210Nは、貫通コイル2の中心軸方向に向く。換言すれば、法線210Nは、鋼管100の軸方向に向く。ブリッジ回路303から交流電流を受けた試験コイル21は、コイル面210Sを貫通する磁束を発生する。これにより、鋼管100の円周方向に流れる渦電流を発生させる。冷間圧延された鋼管100には、軸方向に延びるきずが発生しやすい。そのため、渦電流が円周方向に流れれば、軸方向に延びるきずが検出されやすくなる。
【0029】
試験コイル22も試験コイル21と同じ構成を有する。試験コイル22は、半円弧状に巻かれた巻線220からなる空芯コイルであり、そのコイル面の法線は貫通コイル2の中心軸方向に向く。巻線220は、外周円弧220OCと、内周円弧220ICと、一対の弧端220Eとを有する。試験コイル22のコイル面の法線は、貫通コイル2の中心軸方向にむき、鋼管100の軸方向に向く。
【0030】
図5は、貫通コイル2の正面図である。図5を参照して、試験コイル21及び22は、同一円周上に互いに対向して配置される。このとき、試験コイル21及び22は互いに隙間S1離れて配置される。隙間S1は1mm程度であり、狭い方が好ましい。隙間S1では鋼管100のきずを検出できないためである。
【0031】
[渦流探傷装置1の作用]
図6は従来の渦流探傷装置を用いた鋼管100の渦流探傷方法を説明するための模式図である。図6は、鋼管100及び貫通コイルを上方から見た平面図である。図6を参照して、ピルガーミルにより冷間圧延された鋼管100の外径寸法は、軸方向に沿って変動している。そのため、鋼管100の外面は平坦ではなく、軸方向に沿ってわずかに凹凸を有する。なお、図6中の鋼管100の凹凸は実際の凹凸よりも強調して描画されている。実際の外面における凹凸差(凹部の底と凸部の山頂との差)は0.05mm未満である。
【0032】
鋼管100の外面ではさらに、上述の凹凸が二重螺旋状に形成されている。図6中の実線で描画された凹部帯110は、鋼管100の外面上部に形成された帯状の凹部である。図6中の破線で描画された凹部帯120は、鋼管100の外面下部(つまり、平面視で見えない部分)に形成された帯状の凹部である。ピルガーミルは、上下に配置された一対のロールダイスを備える。一対のロールダイスの往復移動により圧延された鋼管100の横断形状は、真円にはならず、わずかに楕円形状になる。ここで、一対のロールダイスが往復移動するごとに、鋼管100が60°回転され、ロールダイスにより再度圧延されるとする。この場合、圧延されるごとに楕円形状が60°ずれながら形成される。その結果、図6に示すとおり、鋼管100の外面には、軸方向に延びる二重螺旋状の凹部帯110及び120が形成される。このとき、鋼管100の外面の横断面は、鋼管100の中心軸C100を中心としてほぼ点対称の図形となる。
【0033】
このような外面形状を有する鋼管100に対して、従来の貫通コイル500を用いて渦流探傷試験を実施する。貫通コイル500は、円形状の試験コイル501及び502を有する。これらの試験コイル501及び502は互いに同軸に配置され、試験コイル501は試験コイル502よりも前方に配置される。
【0034】
貫通コイル500に鋼管100が挿入される。鋼管100の外径寸法は軸方向に沿って変動する。そのため、試験コイル501に挿入された鋼管部分の外径D101は、試験コイル502に挿入された鋼管部分の外径D102と異なる。したがって、試験コイル501と鋼管100の外面との間の距離(リフトオフ)Δh1は、試験コイル502でのリフトオフΔh2と異なる。
【0035】
貫通コイル500は、試験コイル501及び502の同一時刻におけるインピーダンス差により、きず信号を生成する。検査対象の鋼管の外径寸法が軸方向に沿って一定である場合、試験コイル501でのリフトオフと試験コイル502でのリフトオフは同じである。そのため、リフトオフによるノイズは、試験コイル501と502とで同じである。したがって、リフトオフによるノイズは相殺され、試験コイル501及び502のインピーダンス差にリフトオフによるノイズは含まれない。
【0036】
しかしながら、冷間圧延された鋼管100の外径は図6に示すとおり軸方向に沿って変動する。そのため、各試験コイル501及び502のインピーダンスは、鋼管100のきずの有無だけでなく、リフトオフの変動によっても変化する。そのため、従来の貫通コイル500では、インピーダンス差により生成される探傷信号に、リフトオフに起因したノイズが含まれる。したがって、従来の渦流探傷装置では、探傷信号内のきず信号を確認しにくく、きず検出精度が低くなる。
【0037】
本実施の形態による渦流探傷装置1は、このような従来の貫通コイル500の問題点を解決する。図7は、本実施の形態による渦流探傷装置1を用いた渦流探傷方法を説明するための図である。図7を参照して、半円弧状の試験コイル21及び22は、同一円周上に配置される。上述のとおり、鋼管100の横断形状は中心軸C100を中心とした点対称の図形となる。したがって、同一時刻において、試験コイル21のインピーダンスに影響を与える外面形状と、試験コイル22のインピーダンスに影響を与える外面形状はほぼ同じになる。そのため、寸法形状の変動に基づく試験コイル21のインピーダンス変化は、試験コイル22のインピーダンス変化と相殺される。したがって、試験コイル21及び22のインピーダンスの差は、主としてきずの有無に基づくものとなり、探傷信号にリフトオフに基づくノイズが含まれるのを抑制できる。以上の原理により、渦流探傷装置1では、冷間圧延された鋼管100のきず検出精度が向上する。
【0038】
[第2の実施の形態]
図8に本発明の第2の実施の形態による渦流探傷装置の構成図を示す。図8を参照して、渦流探傷装置40は、渦流探傷装置1と比較して、新たに貫通コイル50と、探傷器60とを備える。その他の構成は渦流探傷装置1と同じである。貫通コイル50は、複数の搬送ロール5及び6の間に配置され、貫通コイル2とともに、コイル架台10上に配置される。
【0039】
図9に貫通コイル2及び50の斜視図を示す。貫通コイル50は、円形状のコイルであり、貫通コイル2と同軸に配置される。つまり、貫通コイル50の中心軸は、貫通コイル2の中心軸C2と同軸に配置される。
【0040】
貫通コイル50は、貫通コイル2と同様の構成を有する。貫通コイル50は、一対の試験コイル51及び52を含む。各試験コイル51及び52は、半円弧状に湾曲される。試験コイル51は、半円弧状に巻かれた巻線510を有し、コイル面510Sの法線510Nは貫通コイル2の中心軸C2方向に向く。試験コイル52は、半円弧状に巻かれた巻線520を有し、コイル面520Sの法線520Nは貫通コイル2の中心軸C2方向に向く。試験コイル51及び52は同一円周上に互いに対向して配置される。このとき、試験コイル51及び52は互いに隙間S2だけ離れて配置される。
【0041】
探傷器60の構成は図2に示すとおりである。探傷器3内のブリッジ回路303は、試験コイル51及び52と接続される。ブリッジ回路303は、試験コイル51及び52のインピーダンス差に応じて探傷信号を生成する。
【0042】
図9に戻って、一対の試験コイル51及び52は、一対の試験コイル21及び22から中心軸C2周りに所定角度ずらして配置される。図9では、一対の試験コイル51及び52は、一対の試験コイル21及び22から、中心軸C2周りに90度ずらして配置される。そのため、隙間S2は隙間S1から中心軸C2周りに90度ずらして配置される。
【0043】
以上の構成を有する渦流探傷装置40は、鋼管100に不感帯が発生するのを抑制できる。貫通コイル2は、隙間S1において鋼管100のきずを検出できない。そのため、貫通コイル2の探傷のみでは、鋼管100にわずかな不感帯が発生する。しかしながら、貫通コイル2の後方には貫通コイル50が配置されている。貫通コイル50内の一対の試験コイル51及び52は、試験コイル21及び22から中心軸C2周りに90度ずらして配置されている。したがって、隙間S1により検出できなかったきずは、貫通コイル50で検出される。以上の動作により、渦流探傷装置40は、鋼管100に不感帯が発生するのを抑制できる。
【0044】
上述の実施の形態では、試験コイル51及び52は試験コイル21及び22から中心軸C2周りに90度ずらして配置される。しかしながら、ずらす角度は90度に限られない。試験コイル51及び52が試験コイル21及び22から少しでもずれて配置されていれば、隙間S1は隙間S2と直列に配置されない。そのため、不感帯は減少する。好ましくは、貫通コイル2及び50の正面視において、隙間S1と隙間S2が重なり合わないように、試験コイル51及び52は試験コイル21及び22からずれて配置される。この場合、不感帯の発生は防止される。
【0045】
第1及び第2の実施の形態では、貫通コイル2及び50を自己誘導自己比較方式とする。しかしながら、貫通コイル2及び50は、相互誘導自己比較方式であってもよい。要するに、貫通コイル2及び50は、自己比較方式のコイル(つまり、差動コイル)であればよい。
【0046】
第2探傷器60は、ブリッジ回路303のみであってもよい。この場合、第2探傷器60のブリッジ回路303で生成された探傷信号は、第1探傷器3内の他の構成を利用して、第1貫通コイルにより生成される探傷信号とともに、ディスプレイ310に出力される。
【0047】
ピルガーミルによる冷間圧延の製造条件によっては、圧延された鋼管100の外面のうち、非点対象の横断形状を有する部分が生じる場合がある。このような場合、貫通コイル2及び/又は貫通コイル50の中心軸を、鋼管100の中心軸C100から若干傾けて(1.5〜3°程度)配置してもよい。この場合、リフトオフによる影響を抑えることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,40 渦流探傷装置
2,50 貫通コイル
3,60 探傷器
5,6 搬送ロール
10 コイル架台
20 ボビン
21,22,51,52 試験コイル
100 鋼管
210,220 巻線
210N 法線
210S コイル面
S1,S2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の鋼管を通す第1貫通コイルと、
前記第1貫通コイルの前方及び後方に一列に配置され、前記鋼管を搬送する複数の搬送ロールと、
前記第1貫通コイルと接続され、前記第1貫通コイルのインピーダンス変化に応じて探傷信号を生成する第1探傷器とを備え、
前記第1貫通コイルは、
各々が半円弧状に巻かれた第1巻線を有し、同一円周上に互いに対向して配置される一対の第1試験コイルを含む、渦流探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の渦流探傷装置であって、
前記各第1試験コイルのコイル面の法線は、前記鋼管の軸方向に向く、渦流探傷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の渦流探傷装置であってさらに、
前記第1貫通コイルと同軸に配置される第2貫通コイルと、
前記第2貫通コイルに接続され、前記第2貫通コイルのインピーダンス変化に応じて探傷信号を生成する第2探傷器とを備え、
前記第2貫通コイルは、
各々が半円弧状に巻かれた第2巻線を有し、同一円周上に互いに対向して配置される一対の第2試験コイルを含み、
前記一対の第1試験コイルの間には第1隙間が形成され、
前記一対の第2試験コイルの間には第2隙間が形成され
前記一対の第2試験コイルは、前記一対の第1試験コイルから前記第1貫通コイルの中心軸まわりに所定角度ずらして配置される、渦流探傷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−128022(P2011−128022A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286870(P2009−286870)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】