説明

温度安定性に優れた接着力を有する感圧接着剤

【課題】(1)〜(3)から成る加熱架橋可能な接着剤組成物と、それが塗布された自己接着性支持体。
【解決手段】(1)20〜85重量%の下記式(I)を有する2つの加水分解可能なアルコキシシラン-タイプの末端基を有するポリウレタン:


(ここで、R1は5〜15の炭素原子数を有する芳香族または脂肪族の直鎖または分岐鎖または環状の炭化水素をベースにした2価の基を表し、R2はC1〜4の直鎖または分岐鎖の2価アルキレン基を表し、R3はC1〜3の直鎖2価アルキレン基を表し、R4とR5は各々C1〜4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR4(またはR5)が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異っていてもよく、nは式-[OR2]n-のポリエーテルブロックの数平均分子量が300Da〜30kDaの間になるような整数であり、mは式(I)のポリマーの数平均分子量が600Da〜60kDaとの間になるな整数、pは0、1または2の整数)、(2)15〜80重量%の200Da〜5kDaの間の数平均分子量を有する相溶性のある粘着付与樹脂、(3)0.01〜3重量%の硬化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱で硬化可能な自己接着性組成物と、この組成物が硬化した感圧性接着剤が塗布された自己接着性支持体とに関するものである。この自己接着性支持体は自己接着性ラベルおよび/またはテープを製造するのに用いられ、広範囲の温度で接着強度を維持することができるという利点がある。
【0002】
感圧接着剤(pressure sensitive adhesion、PSA)はそれで被覆した支持体に室温でほんのわずかな圧力下で瞬間的に粘着性を付与する物質である。このPSAは物品に情報(例えばバーコード、説明書、価格)および/または装飾を付与するための自己接着性ラベルの製造で広く使用されている。また、PSAは各種自己接着性テープの製造でも使用されている。例えば、日常的に広く使用されている透明接着テープの他に、ボール紙の包装材の形成/組立、塗装作業での表面保護、建築、運搬業での電気ケーブルの保持、両面接着テープによるカーペットの結合等で使用されている。
【0003】
自己接着性ラベルおよび/またはテープの製造では、一般に連続コーティングプロセスを用いてPSAが大きな寸法の支持体(必要に応じて印刷可能な支持体)の表面全体に所定量(一般に、g/m2で表される)が塗布される。この量を以下、「単位面積当り重量(weight per unit area)」という用語で表すことにする。支持体層は一枚以上の層を有する紙またはポリマー材料のフィルムで構成される。支持体層を覆う接着層自身は例えばシリコン塗布されたフィルムから成る保護層(剥離ライナーとよばれる)で被覆される。こうして得られた多層系は一般に直径が1m、幅が2mまで大型リールに巻取られ、包装され、保管され、輸送できる。
【0004】
次いで、この多層系から自己接着性ラベルが作られ、所望の形状および寸法に切断された後、支持体層上の印刷可能表面上に所望の装飾要素および/または情報が印刷され、エンドユーザへ供給される。保護層は簡単に除去でき、接着性層は支持体層上に固定されて残る。保護層を分離した後に、手動または自動パッケージングライン上のラベル付け機を使用してラベルは被被覆物品上に付けられる。また、上記多層系を所定の幅と長さに切断し、ロールとして包装することで自己接着性テープにすることもできる。
【0005】
PSAは室温での粘着性(タック)が高いため、自己接着性ラベルおよび/またはテープは被被覆基材(または物品)上、例えば、ラベルではビン等の上、テープでは形成すべき包装ボックス上に高い工業的生産速度で迅速に結合できる。
【0006】
PSAの用途の中には、接着部分(従って、ラベルおよび/またはテープで被覆された物品)が広範囲の温度変化に曝された時でも、基材上のラベルおよび/またはテープの接着強度が維持されるのが望ましい分野がある。その例としてはエンジンの近くに位置した自動車の一定コンポーネント上に展着剤を形成する場合や、包装中に加熱した熱い液体を受けなければならない包装材料や、生産ラインの終りに熱い状態でラベルを付けなければならない物品(例えばタイヤ)を挙げることができる。さらに、耐熱性が必要なパーツ、例えば航空機、その他車両のインテリアのアセンブリ用自己接着性テープも挙げられる。
【0007】
この分野に広く使用われているPSAは高分子量のアクリレート型ポリマー(またはコポリマー)を含んでる。このポリマーは水性乳剤または有機溶液の形をしている。しかし、この種のPSAを支持体上のコーテングする操作は産業的改定からは複雑であり、エマルションを乾燥させる追加の階段を必要としたり、有機溶媒の蒸発に対する産業上の安全性および健康問題を考慮に入れた特定の設備を必要とする。さらに、ポリアクリレートの不快な臭い関連する欠点も考慮に入れなければならない。
【0008】
PSAは溶剤も水も含まないため、ホットメルト感圧接着剤またはHMPSAは室温で固体の物質であり、溶融状態で支持体上に塗布(または被覆)され、冷却後に各種基材上で高い粘着度と接着強度とを付与する。しかし、対応する組成物は一般に熱可塑性高分子を含むので、基材への支持を提供している接着部は高温で、予め目標にしたその用途分野に必要とされる凝集力の全てを示さない。
【0009】
特許文献1(米国特許第US 6486229号明細書)には粘着付与樹脂と、光重合開始剤と、放射状多ブロックブタジエンスチレンコポリマー(このブタジエンブロックはペンダントビニール基の含有量が高い)とから成るUV硬化性ホットメルト接着組成物が記載されている。この組成物は硬化前の状態で支持体上に被覆され、紫外線の照射で硬化される。こうして得られた自己接着性支持体は高温で優れた凝集力を必要とするテープおよびラベルの用途に特に適している。
【0010】
特許文献2(国際特許第WO 2004/011559号公報)には、アクリルコポリマーと、光重合開始剤と、多官能性(メタ)アクリレートから成る被覆用アクリル性組成物が記載されている。この組成物も紫外線の照射によって硬化されて、高性能のPSAになる。
【0011】
しかしPSAを製造するたのこれらの方法はUVランプに起因する産業健康問題と、ランプの使用時間が短いことに起因するコスト上の欠点がある。さらに、PSAの単位面積当り重量を高くした自己接着性支持体の場合(例えば単位面積当りの重量が70g/m2以上の場合)、広い温度領域、特に高温で接着強度を確実に維持することは難しい。
【0012】
特許文献3(欧州特許第EP 0106330号公報)には、シリルヒドロリサブル(加水分解可能な)な末端基を有する粘着付与樹脂と、ポリエーテルとを含む、耐熱性および粘着度特性に優れた組成物が記載されている。この特許には支持体上へ上記組成物を塗布して感圧接着剤製品を生産する方法も記載されている。上記組成物には触媒を入れ、室温〜150℃の間の温度で硬化させる。
【0013】
特許文献4(カナダ特許第CA 2554743号公報)には、粘着付与樹脂と、触媒と、分子量が15000〜100000の0.3〜0.7当量のシリルヒドロリサブル(加水分解可能な)なシリル基を有するオキシアルキレンポリマーとから成る組成物が記載されている。この組成物は塗工機によって支持体上に塗布され、高温で硬化されて自己接着性製品になる。
しかし、後者2つの特許に記載の自己接着性製品は、単位面積当りの重量が大きくなると高温度での基材上への接着強度の維持が不充分になるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第US 6486229号明細書
【特許文献2】国際特許第WO 2004/011559号公報
【特許文献3】欧州特許第EP 0106330号公報
【特許文献4】カナダ特許第CA 2554743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、支持体上に塗布し、硬化した後に優れた接着強度および粘着性(タック)を示す熱硬化型の感圧接着剤組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、PSAの単位面積当り重量を大きくした場合でも広範囲の温度領域で必要な凝集力を保持することができる接着継目(上記自己接着性支持体を基材に取付けて得られる)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の対象は下記の(1)〜(3)から成る熱硬化性接着剤組成物にある:
(1)20〜85重量%の下記式(I)を有する2つの加水分解可能(hydrolysable)なアルコキシシラン-タイプの末端基を有するポリウレタン:

(ここで、
1は5〜15の炭素原子数を有する芳香族または脂肪族の直鎖または分岐鎖または環状の炭化水素をベースにした2価の基を表し、
2は1〜4の炭素原子数を有する直鎖または分岐鎖の2価のアルキレン基を表し、
3は1〜3の炭素原子数を有する直鎖の2価のアルキレン基を表し、
4とR5は各々1〜4の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR4(またはR5)が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異っていてもよく、
nは式−[OR2]n−のポリエーテルブロックの数平均分子量が300Da〜30kDaの間になるような整数であり、
mは式(I)のポリマーの数平均分子量が600Da〜60kDaとの間になるような整数であり、
pは0、1または2の整数である)
(2)15〜80重量%の下記(i)または(ii)で得られる樹脂の中から選択される200Da〜5kDaの間の数平均分子量を有する相溶性のある粘着付与樹脂:
(i)フリーデル−クラフッ触媒の存在下でのテルペン炭化水素とフェノールとの重合、
(ii)α−メチルスチレン重合(必要に応じてフェノールと反応させてもよい)、
(3)0.01〜3重量%の硬化触媒。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で特にことわらない限り、百分比の形で表される量は重量/重量百分率に対応し、R1〜R5の基および整数n、mおよびpは、各化学式の定義で上記と同じ意味を有し、ダルトン(da)で表した数平均分子量および重量平均分子量はポリエチレングリコール(PEG)標準で較正したカラムゲルパーミエーションクロマトグラフィで求めた。
【0018】
本発明組成物に含まれる式(I)のポリマーは下記の方法で得られることができる。
最初の階段で、2つのヒドロキシル末端基を有する式(II):
【0019】

【0020】
のポリウレタン)を1モルの式(III)のジイソシアネートと約2モルの式(IV)のポリエーテルジオールとを反応させて作る:
NCO−R1−NCO (III)
H−[OR2]n−OH (IV)
(これは、NCO/OHの官能基数の比が約0.5であることに対応する)
【0021】
反応は60〜90℃の温度で約2〜8時間、必要に応じて触媒の存在下で行う。
第2階段では、式(II)のポリウレタンを下記式(V)のイソシアネートシランとのシリル化反応によって変換して式(I)のポリウレタンにする:
NCO−R3−Si(R4p(OR5)3-p (V)
式(V)の化合物2モルに対して式(II)のポリウレタンの量を約1モルにする。
【0022】
式(IV)のポリエーテルジオールおよび式(V)のイソシアネートシランは市販されている。例えば、γ−イソシアネート-n-プロピルトリメトキシシランはジェニオシル(Geniosi1、登録商標)GF 40として、また、α−イソシアネート-n-メチル(メチル)ジメトキシシランはジェニオシル(Geniosi1、登録商標)XL 42としてワッカー(Wacker)社から市販されている。
【0023】
上記の2つの合成階段はアルコキシシラン基の加水分解を避けるために無水条件下で実行される。これらの反応を行うための典型的な温度範囲は30〜120℃、特に60〜90℃である。上記のストイキオメトリからわずかに変動しても特に問題はないが、最初の階段(式IIのポリウレタンの合成)では変動は10%を越えてはならず、第2階段(式Iのポリウレタンの合成)では変動は2%を越えてはならない。
【0024】
アルコキシシラン・タイプ末端基を有する式(I)のポリウレタンの製造方法の詳細は下記文献を参照できる。
【特許文献5】欧州特許第EP 0 931 800号公報
【0025】
式(I)のポリウレタンの数平均分子量は600Da〜60kDaの間にある。これはmの値が約1〜10であることに対応する。
【0026】
本発明組成物の一つの好ましい変形例では、式(I)のポリウレタンのポリエーテルブロックの数平均分子量が4〜50kDa(これは実質的にmの値が1〜4でることに対応する)で、−{OR2]n−の数平均分子量が2〜25kDaとの間にある。
【0027】
本発明の他の好ましい変形例(これは上記変形例と組合せることができる)では、式(I)のポリウレタンが下記のものである:
1が下記の二価の基の一つから選択される(その式は下記の2つのフリーな原子価を有する):
【0028】

【0029】
2はエチレンおよび/またはイソプロピレンの2価の基であり、
3はメチレンおよび/またはn−プロピレンの2価の基であり、
4およびR5は各々メチルまたはエチル基ラジカルを表す。
【0030】
本発明組成物の他の特に好ましい変形例では、式(I)のポリウレタンが下記である:
1がイソホロンに由来する下記式の二価の基である:

【0031】
2はイソプロピレンの2価の基であり、
3はn−プロピレンの2価の基であり、
−Si(R4p(OR53-p基はトリメトキシシリル基である。
【0032】
本発明のPSAの有利な変形例は、式(I)のポリウレタンが1.1〜2.0の間の多分散性指数を有する。この多分散性指数は数平均分子量に対する重量平均分子量の比である。このポリウレタンは多分散性指数が1〜1.6でる式(IV)のポリエーテルジオールから製造できる。この種のポリエーテルは金属-シアニド複錯体をベースにした触媒の存在下で対応するアルキレンオキシドを公知の方法で重合して得ることができる。
【0033】
2がイソプロピレン基の場合、式(I)のポリウレタンの多分散性指数は1.3〜1.6の間であるのが有利である。このポリウレタンは多分散性指数)が1〜1.4であるポリイソプロポキシジオール(ポリプロピレングリコールまたはポリオキシイソプロペンオールともよばれる)から製造できる。このポリプロピレングリコールは市販されている。多分散性指数が約1.1であるポリプロピレングリコールの例としてはバイエル社からのACCLAIMR(登録商標)として市販されている。例えば約8250Daの数平均分子量を有するACCLAIMR(登録商標)8200、11225Daの数平均分子量を有するACCLAIMR(登録商標)12200、18100Daの数平均分子量を有するACCLAIMR(登録商標)18200等がある。
【0034】
本発明組成物に含まれる粘着付与樹脂が「相溶性を有する粘着付与樹脂」であるという表現は、式(I)のポリマーと50%/50%の比率で混合したときに実質的に均一な混合物となる粘着付与樹脂を意味する。この樹脂は市販されており、上記(i)および(ii)の方法で得られる。例としては下記の製品が挙げられる:
方法(i)
DRT社から入手可能な約870Daの分子量Mnを有するDertophene(登録商標)1510、約630Daの分子量Mnを有するDertophene(登録商標)H150、約1200Daの分子量Mnを有するアリゾナケミカル社から入手可能なSylvarez(登録商標)TP 95
方法(ii)
フェノールを作用させずにα−メチルスチレンの重合で得られるクレイバレー社から入手可能な900Daの数平均分子量を有するNorsolene(登録商標)Wl00、または、フェノールの作用を含む生産プロセスで得られる約1740Daの分子量Mnを有するアリゾナケミカル社から入手可能なSylvarez(登録商標)510。
【0035】
本発明の熱で硬化可能な接着剤組成物の一つの好ましい変形例で使用される粘着付与樹脂は方法(i)で得ることができる。
【0036】
本発明組成物で使用可能な硬化触媒はシラノール縮合として当業者に公知の任意の触媒にすることでできる。例としてはチタンの有機の誘導体、例えばチタン・アセチルアセトネート(デュポン社からTYZOR(登録商標)AA75で市販)、アルミニウムの有機の誘導体、例えばアルミニウムキレート(キングインダストリー社からK-KAT(登録商標) 5218で市販)、アミン、例えば1,8-ジアゾビシクロ [5.4.0]ウンデク-7-エンまたはDBUがある。
【0037】
本発明の熱硬化可能な接着剤粗の好ましい実施例では、式(I)のポリウレタンは40〜65重量%であり、粘着付与樹脂は35〜60重量%である。
【0038】
本発明粗は、式(I)の加水分解可能な末端基を有するポリウレタンの他に、必要に応じて、HMPSAの製造でよく使用される熱可塑性高分子、例えばエチレン/酢酸ビニール(EVA)またはスチレンブロック共重合体をさらに含むことができる。
【0039】
本発明の熱硬化可能な組成物はさらに、上記方法(i)または(ii)で得られる粘着付与樹脂の他に、数平均分子量が200〜5000Daである他の粘着付与樹脂を単独または組合せて含むこともできる。その例としては下記の樹脂を挙げることができる:
【0040】
(iii) 自然または変性したロジン、例えば松ゴムから抽出したロジン、木根抽出したウッドロジンおよびこれらの誘導体、例えばその水素化、ダイマー化、重合化またはモノアルコールまたはグリセリンのようなポリオールとのエステル化誘導体、
(iv) 石油留分から誘導される炭素原子数が約5、9または10の不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合または(芳香族炭化水素との)共重合によって得られる樹脂、
(v) モノテルペン(またはピネン)のようなテルペン炭化水素の一般にフリーデル−クラフト触媒存在下での重合で得られるテルペン樹脂、
(vi) 天然のテルペン、例えばスチレン/テルペン、α−メチルスチレン/テルペン、ビニールトルエン/テルペンをベースにしたコポリマー、
(vii) アクリル樹脂。
【0041】
しかし、本発明組成物中でのこの種樹脂の含有量は組成物中に存在する粘着付与樹脂の全重量の40重量%を上回ってはならない。
【0042】
本発明の熱硬化性接着剤組成物は乾燥剤として加水分解可能なアルコキシシラン誘導体、好ましくはトリメトキシシラン誘導体を3重量%以下含むことができる。この種の薬剤を使用することで本発明の組成物の使用前の貯蔵および運搬時の貯蔵寿命を延ばすことができる。その例としてはUS Momentive Performance Materials Incから商品名SILQUEST(登録商標)A−74で入手化合物なγ−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシランがある。
【0043】
本発明の組成物は、可塑剤、例えばフタレートまたはベンゾエート、パラフインオイル、ナフテン油(例えばESSO社のPrimol(登録商標)352)や、ポリエチレンホモポリマーの蝋(ハネウェル社の.A−C(登録商標)617)またはポリエチレン/酢酸ビニールコポリマーの蝋や、顔料、色素または充填材をさらに含むことができる。
【0044】
本発明の組成物はさらに、0.1〜2重量%の一種以上の安定化剤(または抗酸化剤)を含むのが好ましい。この化合物は本発明組成物を熱または光の作用で生じる酸素との反応に起因する劣化から保護するために導入される。この化合物はフリーラジカルを捕捉する主成分の抗酸化剤を含み、CIBA社のIrganox(登録商標)1076のような置換されたフェノールである。主成分の抗酸化剤はそれ単独で使用するか、他の第二の抗酸化剤または紫外線安定剤と一緒に使用できる。
【0045】
本発明の熱硬化可能な接着剤組成物は下記の方法で製造できる:
(1)有する式(I)のポリマーと粘着付与樹脂を50〜170℃、好ましくは100〜170℃の温度で空気を含まない雰囲気゛好ましくは不活性雰囲気下の混合する階段、
(2)得られた混合物を50〜90℃、有利には約70℃の温度に冷却する階段、
(3)上記混合物に触媒、必要に応じて乾燥剤およびその他のオプション成分を組み込む階段。
【0046】
本発明の他の対象は、下記方法によって得られる自己接着性支持体にある:
(a) 上記定義の接着剤組成物を50〜130℃の温度に予熱し、
(b)それを支持体層上へ塗布し、
(c)被覆された支持体を50〜150℃の温度に加熱して硬化させる。
【0047】
支持体層に被覆する階段(b)は公知の被覆装置、例えばリップダイまたはカーテンコーティング型のダイ、ローラーを使用して実行できる。使用する接着剤組成物の単位面積当りの重量は3〜500g/m2、好ましくは10〜250g/m2にする。支持体層用に使用可能な材料は例えば1層または複数層の紙またはポリマー材料のフィルムである。
【0048】
階段(c)の硬化に必要な時間は大きい範囲で変えることができ、例えば1秒〜10分の間である。この加熱硬化階段では式(I)のポリウレタンのポリマー鎖とシロキサン-タイプ結合の大気中の水分の作用による三次元ポリマーネットワークが形成される。従って、硬化した接着剤組成物は感圧接着剤で、それが塗布された支持体層に望ましい接着強度と粘着度(タック)とを付与する。
【0049】
従って、単位面積当りの重量を20g/m2にして被覆したポリエチレンテレフタレート(PET)の支持体はステンレス基材に永久接着し、その接着強度(後述するステンレス上での180度剥離テストで測定)は1〜15N/cm、好ましくは2〜10N/cmに対応する。同じ支持体の粘着度(後述するループ粘着度テストで測定)は室温で0.5〜8N/cm2間の間、好ましくは2〜6N/cm2である。
【0050】
同様に、単位面積当りの重量を200g/m2にして被覆したポリエチレンテレフタレート(PET)の支持体は永久接着し、接着強度は1〜50N/、好ましくは5〜30N/cmに対応する。この同じ支持体の粘着度は室温で1〜30N/cm2、好ましくは4〜15N/cm2である。
【0051】
硬化した上記組成物で被覆した支持体層を基材上に取付けて形成される接着継目は、−60℃〜+200℃の温度領域で確実に支持体層を取付ける。
【0052】
本発明の自己接着性支持体は、PSA層をカバーする非粘着性の保護層を有することができ、この保護膜は単にラミネトすることができる。
【0053】
本発明はさらに、上記定義の自己接着性支持体の、自己接着性ラベルおよび/またはテープの製造での使用にも関するものである。
【0054】
自己接着性ラベルの製造に必要な熱硬化可能な接着剤組成物の単位面積当りの重量は1〜100g/m2、好ましくは20〜50g/m2である。自己接着性テープの製造に必要とされるの3〜500g/m2、好ましくは15〜250g/m2である。
【0055】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明が式実施例に制限すると解釈してはならない。
実施例A〜Cは式(I)のポリウレタンの製造方法の例で、2つの−アルコキシシラン−タイプ末端基はトリメトキシシリル基から成り、R2はイソプロピレン基であり、R3はn−プロピレン基である。
【実施例】
【0056】
実施例A
式−[OR2]n−のポリエーテルブロックの分子量が約8250Daである式(I)のポリウレタンAの製造
ガラス製反応装中に961.2g(0.1165モル)のポリイソプロポキシジオールACCLAIM(登録商標)8200と、12.99g(0.0582モル)のイソホロンジイソシアネート(IIPDI)(これはNCO/ OHの官能基数の比=0.5に対応)と、120ppmのビスマス/亜鉛ネオデカノエート型触媒(Borchers社からBorchi Kat VP 0244の名称で市販)とを導入した。
IPDIのNCO官能基が完全に反応するまでこの混合物を85℃で一定数の撹拌下に3時間、窒素下に維持した。得られたヒドロキシル末端基を有するポリウレタンに、24.6g(0.1165のモル)のγ−イソシアネート-n-プロピルトリメトオキシシランを加え、でNCO官能基が完全に消えるまで混合物を85℃に維持する。得られたポリウレタンAは55Pa.sの粘度(No.7スピンドル回転速度を20回転数/分、23℃でブルックフィールド粘度計を使用して測定)を有し、約20kDaの数平均分子量と、約1.3の多分散性指数とを有する。
【0057】
実施例B
式−[OR2]n−のポリエーテルブロックが約11225Daの分子量を有する式(I)のポリウレタンBの製造
実施例Aの操作を繰り返したが、1100g(0.098モル)のポリイソプロポキシジオールACCLAIM(登録商標)12200と、10.9g(0.049モル)のIPDI(これはNCO/ OH官能基数の割合=0.5に対応)とをガラス製反応装置に導入し、得られたヒドロキシル-末端基を有するポリウレタンに20.7g(0.098モル)のγ−イソシアネート-n-プロピルトリメトオキシシランを加えた。得られたポリウレタンBは185Pa.s(上記と同じ条件で測定)の粘度と、約30kDaの数平均分子量と、約1.4の多分散性指数とを有する。
【0058】
実施例C
式−[OR2]n−のポリエーテルブロックが約18100Daの分子量を有する式(I)のポリウレタンBの製造
実施例Aの操作を繰り返したが、1220g(0.0685モル)のポリイソプロポキシジオールACCLAIM(登録商標)18200と、7.03g(0.0342モル)IPDI(これはNCO/ OH官能基数の割合=0.5に対応)とをガラス製反応装置に導入し、得られたヒドロキシル-末端基を有するポリウレタンに14.45g(0.0685モル)のγ−イソシアネート-n-プロピルトリメトオキシシランを加えた。得られたポリウレタンCは390Pa.s(上記と同じ条件で測定)の粘度と、約40kDaの数平均分子量と、約1.5の多分散性指数とを有する。
【0059】
実施例1
1) ポリウレタンAをベースにした熱硬化可能な接着剤組成物の製造
ガラス製反応装置に下記の[表1]に記載の組成を入れた。最初に粘着付与樹脂(ダートフェン(Dertophene、登録商標)1510)を減圧下に導入し、約160℃で加熱し、この樹脂が完全に融解してからポリウレタンAを加える。混合物を減圧下に15分間撹拌し、それから70℃に冷却する。それから乾燥剤(シルケスト(SILQUEST、登録商標)A-174)と触媒(K-KAT(登録商標)5218)とを導入する。
混合物を減圧下に維持し、さらに10分間撹拌を継続する。(高温粘度の測定を目的とする加熱システムを備えた)ブルックフィールド粘度計を使用して、A29スピンドル回転数10回転数/分で、100℃での混合物の粘度を求めた。結果(Pa.sで表示)は[表1]に示した。
【0060】
2) 単位面積当りの重量を20および200g/m2にした2つの硬化組成物で被覆した2つのPET支持体層の製造
支持体層として厚さ50μm、寸法20cm×40cmのポリエチレンテレフタラート(PET)の矩形のシートを使用した。1)で得られた組成物
100℃の近くの温度に予熱し、カートリッジに導入し、そこからビーズを押し出し、それをシートのエッジ近くにその幅と平行に堆積させた。
このビーズに含まれる組成物をシートの全表面上に実質的に一定の厚さで均一な層となるように拡げた。そのためにフィルムスプレッダー(またフィルムアプリケータともよばれる)を使用し、シートのエッジから反対エッジまで移動させた。塗布した組成物層の単位面積タリの重量は20g/m2で、これは約20μmの厚さに対応する。
【0061】
新しいPET支持体層で上記の操作を繰り返し、組成物の層を単位面積当りの重量が200g/m2となるように塗布した。これは約200μmの厚さに対応する。
こうして被覆した2枚のPETシートを130℃のオーブンに5分間入れて組成物を硬化した。2枚のシートの各々に同じ寸法を有するは、矩形のシリコン化した非粘着性の保護フィルムを積層した。得られた2枚のPET支持体層に下記テストを実施した。
【0062】
ステンレス板上での180度剥離テスト
接着強度はFINAT Technical Manual、第6版、2001に記載のFINATテスト法No.1を用いたステンレス板上の180剥離テストで評価した。FINATは自己接着性ラベルの製造業者およびコンバータの国際的連合である。これテストの原則は以下の通り:
予め得た硬化した組成物で被覆されたPET支持体層から矩形ストリップ(25mm×175mm)の形をしたテスト試験片を切断する。このテスト試験片(非粘着性保護層の対応部分を除去した後に)をその長さの2/3以上をステンレス板から成る基材に固定する。得られた組立体を室温で20分間放置する。ストリップを引張試験機に設置し、矩形ストリップのフリーな末端から始めて毎分300mmの速度で180度の角度で剥離する。この条件下でストリップを剥離するのに必要な力を引張試験機で測定する。
2つの試料(20および200g/m2)の単位面積当りの重量に対応する結果は[表1]にN/cmで示してある。
【0063】
タックテスト(ループテストともよばれる)
粘着度は下記の原則に基づくF]INAT法No.9に記載のループ粘着テストで評価した:硬化た組成物で被覆されたPET支持体層から矩形ストリップ(25mm×175mm)の形をしたテスト試験片を切断する。非粘着性保護層の全てを除去した後に、ストリップの両末端は結合してループにする。接着剤層を外側にする。両末端を縦軸線に沿って300mm/分の移動速度で前進−後退運動が可能な引張試験機の移動可能なジョーに取付ける。先ず最初に、垂直に配置したループの下部を30mm×25mmの水平ガラス板と一辺が約25mmの正方形面積側面で接触させる。接触を行なった後、ジョーの移動方向を逆にする。粘着度はプレートからループを完全に剥離するのに必要な力の最高値である。
2つの試験片(20および200g/m2)の単位面積当りの重量に対応する結果は[表1]にN/cm2で示した。
【0064】
90℃での静的剪断力に対する接着継目の耐久時間
得られたPET支持体層の高温での接着強度の安定性を90℃での静的剪断力に対する接着継目の耐久時間を求めるテストで評価した。このテストは下記原則を用いたFINAT法No.8で行なった。
上記の2つのPET支持体層から矩形のストリップ(25mm×75mm)の形をしたテスト試験片を切断した。非粘着保護層を全て除去した後に、接着ストリップの端部を一辺が25mmの正方形でガラス板に固定する。得られたテストプレートを90℃のオーブン中に実質的に垂直にして、適切な支持体を用いて入れる。結合されていない50mmの長さのストリップの部分がプレートの下に位置する。熱平衡に達した後、ストリップのフリーな部分に1kgの重量に接続する。テスト時間中、全てのデバイスはオーブン中で90℃に維持する。
上記重量の作用で、プレートにストリップを固定している接着継目には剪断応力が加わる。この応力を上手く制御して、テストプレートを垂直に対して2度の角度に置く。
この応力作用下でストリップがプレートから剥がれ、接着継目が破壊するまでの時間を測定する。
上記2つの試料(単位面積当り重量が20および200g/m2)でこの時間をテストしたが、この時間は24時間以上であった。
【0065】
静的剪断力で接着継目が破壊に至る温度
上記で得たPET支持体層の接着強度の温度安定度を静的剪断力で接着継目が破壊に至るまでの温度を求めるテストで評価した。このテストは剪断接着破断温度(SAFT)として公知である。
上記テストの操作を繰り返したが、最初の熱平衡テストとデバイス全体に1kgの重量を加えるテストの両方で、オーブンの最初の温度を20℃にし、オーブンの昇温速度を1分当り1.6℃にプログラムした。
この応力作用下でストリップがプレートから剥がれ、接着継目が破壊した時の温度を測定する。
2つの試料(単位面積当りの重量が20および200g/m2)で、この温度は180℃以上であった。
【0066】
実施例2〜8
[表1]に示した組成物で実施例1の操作を繰返した。90℃での静的剪断力での昇温度での接着継目の破壊および静的剪断力下での接着継目の耐久時間の両方で同じ結果が得られた。
ステンレス板上の180度剥離テストおよび粘着度テストの結果も[表1]に示した。値を測定しなかったものはndと記載した。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)〜(3)から成る熱硬化性接着剤組成物:
(1)20〜85重量%の下記式(I)を有する2つの加水分解可能(hydrolysable)なアルコキシシラン-タイプの末端基を有するポリウレタン:

(ここで、
1は5〜15の炭素原子数を有する芳香族または脂肪族の直鎖または分岐鎖または環状の炭化水素をベースにした2価の基を表し、
2は1〜4の炭素原子数を有する直鎖または分岐鎖の2価のアルキレン基を表し、
3は1〜3の炭素原子数を有する直鎖の2価のアルキレン基を表し、
4とR5は各々1〜4の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR4(またはR5)が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異っていてもよく、
nは式−[OR2]n−のポリエーテルブロックの数平均分子量が300Da〜30kDaの間になるような整数であり、
mは式(I)のポリマーの数平均分子量が600Da〜60kDaとの間になるような整数であり、
pは0、1または2の整数である)
(2)15〜80重量%の下記(i)または(ii)で得られる樹脂の中から選択される200Da〜5kDaの間の数平均分子量を有する相溶性のある粘着付与樹脂:
(i)フリーデル−クラフッ触媒の存在下でのテルペン炭化水素とフェノールとの重合、
(ii)α−メチルスチレン重合(必要に応じてフェノールと反応させてもよい)、
(3)0.01〜3重量%の硬化触媒。
【請求項2】
式(I)のポリウレタンの数平均分子量が4〜50kDaで、式−[OR2]n−のポリエーテルブロックの数平均分子量が2〜25kDaの間にある請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
式(I)のポリウレタンが下記である請求項1または2に記載の接着剤組成物:
1が下記の二価の基の一つから選択される(下記の式は2つのフリーな原子価を示す):

2がエチレンおよび/またはイソプロピルの二価の基であり、
3がメチレンおよび/またはn−プロピレンの2価の基であり、
4とR5が各々メチルまたはエチルを表す。
【請求項4】
式(I)のポリウレタンが下記である請求項1〜3のいずれか一項に記載の記載の接着剤組成物:
1が下記式のイソホロンに由来する二価の基であり:

2がイソプロピレンの二価の基あり、
3がn−プロピレンの二価の基であり、
Si(R4p(OR53-p基がトリメトキシシリル基である。
【請求項5】
2がイソプロピレン基である式(I)のポリウレタンの多分散性指数が1.3〜1.6の間にある請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
使用する粘着付与樹脂が(i)の方法で得られる請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
35〜65重量%の式(I)のポリウレタンと、40〜60重量%の粘着付与樹脂とから成る請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
乾燥剤として3重量%以下の加水分解可能なアルコキシシラン誘導体、好ましくはトリメトキシシランの誘導体をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
下記(a)〜(c)の方法で得られる自己接着性支持体:
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物を50〜130℃の間の温度に予熱し、
(b)それを支持体層上へ塗布し、
(c)被覆された支持体を50〜150℃の間の温度に加熱して硬化する。
【請求項10】
請求項9に記載の自己接着性支持体の、自己接着性ラベルおよび/またはテープの製造での使用。

【公表番号】特表2011−506737(P2011−506737A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538827(P2010−538827)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001734
【国際公開番号】WO2009/106699
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(501305888)
【Fターム(参考)】