温度応答性スマートテキスタイル
【課題】周辺温度の変化に応答性のある織布を提供する。
【解決手段】織布は隣り合って設けられる少なくとも第1のポリマーと第2のポリマーとから形成される多成分繊維を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。上記第1のポリマー及び上記第2のポリマーが、上記多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、それにより周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節する。
【解決手段】織布は隣り合って設けられる少なくとも第1のポリマーと第2のポリマーとから形成される多成分繊維を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。上記第1のポリマー及び上記第2のポリマーが、上記多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、それにより周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布、より詳細には周囲温度の変化に応答性である織布に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な織布は生地の構築時に特性が定められ、この特性は周囲条件の変化及び/又は身体活動にかかわらず保持される。これらの標準的な製品は、特に相乗効果及び快適性の向上のために他の織布と共に積層される場合、実に有効である。
【発明の概要】
【0003】
フリースのような、起毛面(片面又は両面のいずれか)を有する織布は、種々の周囲条件及び種々の活動のために種々のパイル高さ及び種々の密度を有する。
【0004】
一態様によれば、織布は、隣り合って設けられる少なくとも第1のポリマーと第2のポリマーとから形成される多成分繊維(例えば、二成分繊維、三成分繊維等)を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。第1のポリマー及び第2のポリマーは、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長(differential thermal elongation;特異的な熱伸長)(例えば、膨張及び/又は短縮)を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0005】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。第1のポリマー及び第2のポリマーの少なくとも1つは、低ガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーである。第1のポリマーはポリプロピレンであり、第2のポリマーはポリエチレン(例えば、直鎖低密度ポリエチレン)である。第1のポリマーは、第1のポリプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレン)であり、第2のポリマーは、第1のポリプロピレンと異なる第2のポリプロピレン(例えば、シンジオタクチックポリプロピレン)である。多成分繊維はまた、第1のポリプロピレン及び第2のポリプロピレンの両方と異なる第3のポリプロピレンを含んでいてもよい。糸のデニールは、約90〜約500、例えば約150〜約360、例えば約160である。糸の引張強さは、約0.5重量グラム毎デニール(grams-force per denier)〜約5.0重量グラム毎デニール、例えば0.9重量グラム毎デニール〜約2.4重量グラム毎デニール、例えば約2.3重量グラム毎デニールである。糸のフィラメント数は36〜144である。例えば、場合によっては、糸が72フィラメント糸である。多成分繊維は円形の断面を有していてもよく、第1のポリマー及び第2のポリマーは隣り合った配置で配される。多成分繊維はトリローバル(trilobal:三裂片状)断面を有する。多成分繊維はトリローバル断面を有し、第1のポリマー及び第2のポリマーが前後の配置で配される。多成分繊維はトリローバル断面を有し、第1のポリマー及び第2のポリマーが左右の配置で配される。多成分繊維はデルタ断面を有する。場合によっては、多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−5%〜約−60%、例えば−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−11%〜約−40%、例えば−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−20%〜約−40%の平均変位を示す。多成分繊維としては、押出しされた繊維(例えば、一対の共押出しされた繊維)が挙げられる。少なくとも1つの起毛面は、フリース、ベロア、シャーリング、パイル及びループテリーからなる群から選択される形態に加工される。織布は、ニット構造(例えば、丸編ニット構造、片面ニット構造、両面ニット構造、よこ編ニット構造及びたて編ニット構造等)を有する。場合によっては、織布が、織物構造又は2本針棒ラッセルたて編ニット構造等を有するパイル地である。例によっては、第2のポリマーが、第1のポリマーと相溶性である。場合によっては、第2の材料が、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマーである。第1のポリマー及び第2のポリマーの少なくとも1つは、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びナイロンから選択される熱可塑性ポリマーである。第1のポリマーはナイロンであり、第2のポリマーはポリエステルである。実施態様によっては、多成分繊維が、第1のポリマーと第2のポリマーとの間に設けられる第3のポリマーも含む。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方との相溶性が高い。第1のポリマー及び第2のポリマーは、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含んでいてもよい。場合によっては、織布が、ステッチ糸により形成される技術上の表面(technical face)と、ループ糸及び/又はパイル糸により形成される技術上の裏面(technical back)とを有する。ループ糸及び/又はパイル糸は多成分繊維を含む。ステッチ糸は、伸縮性及び形状回復性を高めるための弾性糸(例えば、スパンデックス)を含んでいてもよい。第1のポリマー及び第2のポリマーの示差熱伸長は、低いヒステリシスにより実質上可逆的である。織布の断熱性能の調節は、比較的低いヒステリシスにより実質上可逆的である。実施態様によっては、織布が温度応答性織布製衣服に組み込まれる。
【0006】
別の態様では、織布が、隣り合って設けられる少なくともポリプロピレンとポリエチレン(例えば、約50%のポリプロピレン及び約50%のポリエチレン)とから形成される多成分繊維を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。ポリプロピレン及びポリエチレンは、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。糸のデニールは約150〜約160である。多成分繊維は、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−15%〜約−40%(例えば、約−40%)の平均変位を示す。
【0007】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。多成分繊維はトリローバル断面を有し、ポリプロピレン及びポリエチレンが前後の配置で配される。
【0008】
さらなる態様では、織布が、隣り合って(例えば押出し、例えば共押出しされて)設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される多成分繊維(例えば、二成分繊維、三成分繊維等)を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。第1の材料及び第2の材料は、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮)を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0009】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。第1の材料及び第2の材料は、所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて示差熱伸長を示す。好ましくは、所定の温度範囲が32°F(0℃)〜120°F(49℃)である。より好ましくは、所定の温度範囲が50°F(10℃)〜100°F(38℃)である。起毛面は、フリース、ベロア、パイル、シャーリング及びループテリーからなる群から選択される形態に加工される。織布は、丸編ニット構造、片面ニット構造、両面ニット構造、よこ編ニット構造及びたて編ニット構造からなる群から選択されるニット構造を有する。織布は、織物構造又は2本針棒ラッセルたて編ニット構造を有するパイル地である。多成分繊維としては、二成分繊維及び/又は三成分繊維が挙げられる。第1の材料は第1のポリマーであり、第2の材料は、第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーである。第1の材料及び/又は第2の材料は、ポリエステル、ポリウレタン及び/又はナイロンからなる群から選択される熱可塑性ポリマーを含む。第1の材料は第1のポリマー(例えば、ナイロン)であり、第2の材料は、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマー(例えば、ポリエステル)である。多成分繊維はまた、第1のポリマーと第2のポリマーとの間に設けられる第3のポリマーを含むことができる。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方との相溶性が高くてもよい。第1の材料及び第2の材料は、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含んでいてもよい。生地本体は、ステッチ糸により形成される技術上の表面と、多成分繊維を含むループ糸及び/又はパイル糸により形成される技術上の裏面とを有する。保温(thermal)生地は、伸縮性及び形状回復性を高めるためにステッチ糸に組み込まれる弾性糸(例えば、Lycra(登録商標)等のスパンデックス)を含み得る。第1の材料及び第2の材料の示差熱伸長は、低いヒステリシスにより実質上可逆的である。織布の断熱性能の調節は、比較的低いヒステリシスにより実質上可逆的である。
【0010】
別の態様によれば、温度応答性織布製衣服は、多成分繊維からなる1つ又は複数の糸から形成される第1の起毛面を、着用者の皮膚側に有するニット保温生地を含む。多成分繊維は、隣り合った配置で配される第1の繊維成分と第2の繊維成分とを含む。多成分繊維は、異なる熱特性を有し、これにより、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻すことにより、織布製衣服の断熱特性を調節する。好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。ニット保温生地は、起毛ループ糸及び/又は起毛パイル糸の1つ又は複数の領域を有する内面を、着用者の皮膚側に含む。起毛ループ糸及び/又は起毛パイル糸は、約32°F(0℃)〜約120°F(49℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の嵩高さ変化を示す。好ましくは、周囲温度変化に応じて嵩高さを変化させる特性は、比較的低いヒステリシスにより可逆的である。多成分繊維は、約32°F(0℃)〜約120°F(49℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の断面積変化を示す。第1の繊維成分及び/又は第2の繊維成分は、コポリマー又はブロックポリマーであってもよい。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は、物理的な固着により互いに固定されていてもよい。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含み得る。多成分繊維としては、二成分繊維及び/又は三成分繊維が挙げられる。第1の繊維成分としては第1のポリマーが挙げられ、第2の繊維成分としては、第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーが挙げられる。第1の繊維成分としては第1のポリマー(例えばポリエステル)が挙げられ、第2の繊維成分としては、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマー(例えばナイロン)が挙げられる。多成分繊維はまた、第1の繊維成分と第2の繊維成分との間に設けられる第3のポリマーを含み得る。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方と相溶性である。多成分繊維は、第1の繊維成分と第2の繊維成分とを互いに物理的に固着させる付加物(例えば、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン等)を含んでいてもよい。第1の繊維成分又は第2の繊維成分の少なくとも1つは鋸歯状面を含む。多成分繊維は、1つ又は複数の鋸歯状面を有する。多成分繊維は略矩形の断面形状を有する。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は略円形の断面形状を有する。ニット保温生地は、第1の起毛面の反対側に、起毛ループ糸及び/又は起毛パイル糸の1つ又は複数の領域を含む第2の起毛面を有する。第2の起毛面は、多成分繊維からなる1つ又は複数の糸を含む。
【0011】
さらに別の態様では、工学的な保温生地製衣服に用いられる温度応答性織布要素を製造する方法が、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成することを含む。該方法はまた、所定のパイル高さを有しかつ1つ又は複数の多成分繊維を含むループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工することを含む。多成分繊維は、隣り合って設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される。第1の材料及び第2の材料は、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0012】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。また、上記方法は、多成分繊維を含むループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の他の領域を形成するように、連続ウェブの第2の面を加工することを含んでいてもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、選択される電子針及び/又はシンカーを用いて糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。所定のパイル高さを有するループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工する工程は、織布要素の技術上の裏面にループを形成することを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、円筒状に編むことにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、裏添え糸編み(reverse plating)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。第1の面を加工する工程は、片面フリースを形成するように第1の面を加工することを含む。該方法はまた、両面フリースを形成するように連続ウェブの第2の面を加工することを含んでいてもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、添え糸編みにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、標準的な添え糸編み(regular plating)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含み、ここで、第1の面を加工することは、片面フリースを形成するように第1の面を加工することをさらに含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、たて編み(例えば、2本針棒たて編み、例えばラッセルたて編み)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。一例として、糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、ラッセルたて編みにより、糸及び/又は繊維を組み合わせることを含み、また該方法は、相互結合パイルを切断することによって、片面カットパイル地を形成することを含む。この場合、該方法はまた、カットパイル地の技術上の表面を形成する糸を起毛させることにより、両面パイル地を形成してもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、スライバ編みにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。所定のパイル高さを有するループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工する工程は、第1の面を起毛させることを含む。該方法は、第1の面と反対側の、連続ウェブの第2の面を起毛させることを含んでいてもよい。該方法はまた、ループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域のループを切断すること、及びカットループを共通のパイル高さに加工することを含んでいてもよい。第1の材料及び第2の材料は、所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて示差熱伸長、例えば、膨張及び/又は短縮を示す。好ましくは、所定の温度範囲は、32°F(0℃)〜120°F(49℃)、より好ましくは50°F(10℃)〜約100°F(38℃)である。該方法はまた、1つ又は複数の多成分繊維を形成するように、第1の材料と第2の材料とを組み合わせることを含んでいてもよい。第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、第1の材料と第2の材料とを共押出しすることを含んでいてもよい。第1の材料及び第2の材料は、非相溶性ポリマーであり、第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、多成分繊維において第1の材料と第2の材料との間に設けられるような第3のポリマーと共に、第1の材料と第2の材料とを共押出しすることを含んでいてもよい。第3のポリマーは、第1の材料及び第2の材料の両方と相溶性である。第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、第1の材料を第2の材料に物理的に固着させることを含んでいてもよい。第1の材料を第2の材料に物理的に固着させることは、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン等の付加物を、第1の材料及び第2の材料の1つ又は両方に付加することを含んでいてもよい。ここで、この付加物は、第1の材料と第2の材料との間で物理的に又は化学的に作用し得る架橋である。第1の材料及び/又は第2の材料は、ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンからなる群から選択され得る。ループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域は、約50°F(10℃)〜約100°F(38℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の嵩高さ変化を示す。1つ又は複数の多成分繊維は、約50°F(10℃)〜約100°F(38℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の断面積変化を示す。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面から、また特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図1B】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図1C】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図2A】温度応答性スマートテキスタイルファブリック(smart textile fabric)の断面図である。
【図2B】温度応答性スマートテキスタイルファブリックの断面図である。
【図3】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の斜視図である。
【図3A】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図3B】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図3C】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図4A】略矩形の断面形状を有する温度応答性二成分繊維の一実施形態の詳細図である。
【図4B】略矩形の断面形状を有する温度応答性二成分繊維の一実施形態の詳細図である。
【図5】鋸歯状面を有する温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図6】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図7】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図8】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図9】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図10】第1のサンプル糸(サンプル糸1)である、隣り合った配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成された断面が円形の二成分繊維から形成される144フィラメントの断面である。
【図11】熱変位試験を受けた多成分繊維の写真である。
【図12】サンプル糸1の試験繊維について得られる熱変位試験結果をグラフに表したものである。
【図13】第2のサンプル糸(サンプル糸2)である、前後の配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたトリローバル二成分繊維から形成される72フィラメント糸の断面である。
【図14】サンプル糸2の試験繊維について得られる熱変位試験結果をグラフに表したものである。
【図15】第3のサンプル糸(サンプル糸3)である、前後の配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたトリローバル二成分繊維から形成される144フィラメント糸の試験繊維について得られる熱変位試験結果をグラフに表したものである。
【図16】左右の配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたトリローバル二成分繊維から形成される72フィラメント糸の断面である。
【図17】矩形形状を有しかつ隣り合った配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成された二成分繊維から形成される72フィラメント糸の断面である。
【図18】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
種々の図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0016】
図1Aは、二成分繊維10の詳細図である。繊維成分10は、隣り合って配される2つの温度応答性材料、すなわち、第1の繊維成分A及び第2の繊維成分Bを含む。第1の繊維成分A及び第2の繊維成分Bは、温度変化に応じて示差熱伸長、例えば、膨張及び/又は短縮を示す。その結果、繊維は、周囲条件に応じて湾曲及び/又はカールする傾向にある。第1の繊維成分A及び/又は第2の繊維成分Bに好適な材料としては、ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンが挙げられる。
【0017】
例えば、一実施形態において、第1の繊維成分Aは第2の繊維成分Bよりも相対的に大きい熱膨張係数を有する(すなわち、温度の上昇に応じて増大(grow)及び/又は膨張する傾向が高い)。繊維10が臨界温度範囲を超える熱に曝されると、第1の繊維成分Aは、第2の繊維成分Bよりも相対的に速い速度で膨張するため、繊維が湾曲する(例えば図1Bを参照)。示差熱伸長(例えば、膨張及び/又は収縮)が或る特定の閾値レベルを超えると、繊維10はカールする傾向にある(例えば図1Cを参照)。このプロセスは、低いヒステリシスにより可逆的でもある。すなわち、温度が臨界温度範囲未満に戻ると、繊維10は元の三次元構造に戻る。このタイプの好適な二成分繊維は、Mide Technologies Corporation(Medford,
Massachusetts U.S.A.)により製造されている。
【0018】
図2Aは、上記の種類の二成分繊維10の起毛面を含む温度応答性織布20を示す。この織布20は、好ましくは、二成分繊維10を(例えば、シンカーループ糸又はパイルとして)含む少なくとも1つの起毛面24(例えば、たて編み又は特殊な丸編みのパイル糸)を有するニット構造の、一般的なシート状基材22を含む。繊維10から形成される糸のデニールは、約90〜約500、例えば約150〜約360であり得る。繊維10から形成される糸の引張強さは、約0.5重量グラム毎デニール〜約5.0重量グラム毎デニール、例えば約2.3重量グラム毎デニールであり得る。パイル糸が二成分繊維10からなり、また種々の温度に曝される場合、織布20の断熱性の変化は、起毛面を形成するパイル糸の嵩高さ/厚みの変化の結果である。
【0019】
上記のニット構造のいずれかにおいて、例えばステッチ糸に弾性糸(例えば、Lycra(登録商標)等のスパンデックス)を加えてもよい。例えば、場合によっては、伸縮性及び形状回復性を高めるためにスパンデックスをステッチ糸に組み込む。周囲温度が上昇すると、起毛面(複数可)の繊維は、起毛面方向に湾曲及び/又はカールし、織布の嵩高性(loft)及び密度を変え、結果として、織布20の断熱性能を調節する。図2Bは、両面温度応答性織布の応答挙動を示す。
【0020】
一例として、図3に示されるように、温度応答性織布20を織布製衣服30に組み込むことができる。図3Aに示されるように、二成分繊維10を含む起毛面24は使用者の皮膚Sと接触して、快適性の向上、水分管理、並びに空気の移動性及び通気性の向上をもたらす。周囲温度が上昇すると、起毛面の繊維は、湾曲(図3B)及びカール(図3C)して、織布の三次元構造を変えることにより、衣服の断熱性を改善させる。すなわち、周囲温度が上昇すると、織布は薄くなり(嵩高性が低くなり)、それゆえ断熱性が低くなり、全体的な快適性を高める。
【0021】
好ましくは、約32°F(0℃)〜約120°F(49℃)、より好ましくは約50°F(10℃)〜約100°F(38℃)の温度範囲にわたって三次元構造の変化が起きる。
【0022】
本発明の多くの実施形態を記載してきたが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。例えば、二成分繊維は、多種多様な断面形状を有していてもよい。例えば、図4Aは、長辺43及び長辺44並びに短辺45及び短辺46を有する略矩形の断面を有する二成分繊維40の一実施形態を示す。二成分繊維40は、隣り合って配される2つの異なるポリマー、すなわち、第1の繊維成分41及び第2の繊維成分42を含み、これらの繊維成分は、温度変化に応じて示差熱伸長、例えば、膨張及び/又は短縮を示す。この例では、第1の繊維成分41が、第2の繊維成分42よりも相対的に大きい熱膨張係数を有する。このため、(例えば、図1A〜図1Cに関する)上記の二成分繊維と同様に、繊維40が臨界温度範囲を超える熱に曝されると、第1の繊維成分41が、第2の繊維成分42よりも相対的に速い速度で膨張するため、繊維が湾曲し(例えば図4Aを参照)、示差熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮(収縮))が或る特定の閾値を超えれば、かつ/又は超える場合、繊維40がカールする傾向にある(例えば図4Bを参照)。略矩形の断面形状のために、二成分繊維40は、例えば短辺45及び短辺46と比べ、(図4Aの矢印47で示されるように)長辺43及び長辺44に沿って比較的容易に湾曲しやすい。このプロセスは、低いヒステリシスにより可逆的でもある。すなわち、温度が臨界温度範囲未満に戻ると、繊維40は元の三次元構造に戻る。
【0023】
この二成分繊維は、平面及び/又は1つ若しくは複数の鋸歯状面を有し得る。例えば、図5は、鋸歯状面53を有する第1の繊維成分51と、鋸歯状面54を有する第2の繊維成分52とを含む二成分繊維50を示す。鋸歯状面は、例えば図1A及び図4Aに示される平面と比べて、異なる外観、感触、靱性、及び/又は光反射率をもたらし得る。
【0024】
実施形態によっては、二成分繊維が、2つの非相溶性ポリマー(例えば繊維成分)又は相溶性が低いポリマー(例えばナイロン及びポリエステル)を含み得る。例えば、場合によっては、二成分繊維が、隣り合って設けられるナイロン繊維とポリエステル繊維とを含んでいてもよい。非相溶性ポリマー又は相溶性が低いポリマーにより形成される繊維は裂ける傾向を示すおそれがある。すなわち、個々の繊維成分が分離する傾向を示すおそれがあり、これは温度変化に対する二成分繊維応答の効果を変える可能性がある。
【0025】
図6及び図7は、多成分繊維の個々の繊維成分の分離を防止するアプローチを示す。図6は、略円形の断面を有する第1の繊維成分61と第2の繊維成分62とを含む三成分繊維60に適用されるようなアプローチを示す。図6に示されるように、第3のポリマー63は、第1のポリマーと第2のポリマー(すなわち、第1の繊維成分61及び第2の繊維成分62)との間に(例えば、これらのポリマーと共に共押出しされて)設けられる。第3のポリマー63は、第1のポリマーと第2のポリマーとを互いに固定するのを助ける架橋として用いられる。第3の「架橋」ポリマー63は、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーのそれぞれとの相溶性が高いため、第1のポリマーと第2のポリマーとの間により強力な結合をもたらし、分離の可能性を低減し得る。
【0026】
図7は、鋸歯状面73を有する略矩形の断面を有する第1の繊維成分71と、鋸歯状面74を有する略矩形の断面を有する第2の繊維成分72とを含む三成分繊維70に適用されるような、図6に関して上記に記載されるアプローチを示す。図7に示されるように、第3のポリマー75は、第1の繊維成分71及び第2の繊維成分72である非相溶性ポリマーを固定する架橋として用いられる。
【0027】
図8及び図9は、多成分繊維の個々の繊維成分の分離を防止する別のアプローチを示す。ここで、個々の繊維成分は、物理的な固着により互いに固定される。このアプローチは、単独で、又は図7及び図8に関して上記に記載されるアプローチと組み合わせて用いてもよい。物理的な固着は、繊維成分の境界面で、相互に噛み合う種々の形状を合わせ面に沿って設けることにより達成することができる。例えば、図8に示されるように、第1の繊維成分81及び第2の繊維成分82の合わせ面に、第1のポリマーと第2のポリマーとを互いに固着させるように作用する相補的な噛み合わせ形状83及び84を設ける。代替的に又は付加的に、例えば図9に示されるように、物理的な固着は、付加物93(例えば、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン(TiO2)等)を付加することによっても達成することができる。この付加物93は、多成分繊維90の第1の繊維成分91と第2の繊維成分92とを物理的又は化学的に架橋することにより、繊維成分91と繊維成分92とを互いに固着させる。
【0028】
実施形態によっては、温度応答性織布、例えば、図3に関連して上記に記載される衣服等の織布製衣服に用いられるのに好適な、図2A及び図2Bの温度応答性スマートテキスタイルファブリックは、プロピレンとポリエチレン(例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE))で構成された二成分繊維を含む糸を組み込んでなり得る。二成分繊維から形成される糸のデニールは、約90〜約500、例えば約150〜約360であり得る。二成分繊維から形成される糸の引張強さは、約0.5重量グラム毎デニール〜約5.0重量グラム毎デニール、例えば約2.3重量グラム毎デニールであり得る。パイル糸が二成分繊維からなり、また種々の温度に曝される場合、織布/織布製衣服の断熱性の変化は、パイル糸の嵩高さ/厚みの変化の結果である。
【0029】
表1は、50/50比率の、第1のポリマー(Basell Canada Inc.(Corunna, Ontario, Canada)により製造され、Pro−fax(商標)PH835の商標で販売されている、Basellの製品安全データシートPH835(発行日:2000年3月28日、改訂番号:New
MSDS)に記載される、PH−835ポリプロピレン)と、第2のポリマー(直鎖低密度ポリエチレン(polyethelene)、例えば、The Dow Chemical Company(Midland, Michigan
U.S.A.)から入手可能な、Dow Chemical Companyの製品安全データシート22539/1001(発行日:2008年9月18日、第2.2版)に記載される、8335 NT−7 LLDPE)とで構成された二成分繊維からそれぞれ形成した、多数のサンプル糸を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1を参照すると、サンプル糸1は144フィラメント糸であった。サンプル糸1の平均デニールは320.3であり、101%の平均伸長を示し、平均引張強さは2.39重量グラム毎デニール(gpd)であった。図10に示されるように、サンプル糸1のフィラメントは、第1のポリマー及び第2のポリマーを隣り合った(S/S)配置で共押出しした円形の(RND)断面を有する。
【0032】
計4つの単繊維用熱変位試験を、サンプル糸1の試験繊維について実行した。図11は、例示的な熱変位試験による被験繊維の写真を示す。一番上の2つの画像は、−30℃(−22°F)の開始温度における被験繊維の正面図及び側面図(それぞれ、ページの左側及び右側)である。図11に示されるように、−30℃で、個々の繊維は略垂直方向にある。温度が0℃(32°F)に上昇すると、図11の中央の2つの画像に示されるように、嵩高性(すなわち、垂直方向の繊維の高さ)が減少する。被験繊維の嵩高性は、図11の一番下の2つの画像に示されるように、温度が+35℃(95°F)に上昇するにつれて減少し続ける。
【0033】
図12は、サンプル糸1の試験繊維について得られる試験結果をグラフに表したものである。図12は、サンプル糸1についての4つの単繊維用熱変位試験のそれぞれに関する、停止温度(Dwell Temperature)の関数である%平均変位、及び全体の平均の計算値を示す。%平均変位は、被験繊維の正面図についての高さ(嵩高性)H1(例えば図11を参照)の%変化、及び被験繊維の側面図についての高さ(嵩高性)H2(例えば図11を参照)の%変化を求め、その後、それらの2つの値の平均をとることによって算出する。図12に示されるように、サンプル糸1の繊維は、−30℃(−22°F)〜+35℃(95°F)の温度範囲にわたって全体で−15%の平均変位を示した。同一試験をサンプル糸2及びサンプル糸3について行った。
【0034】
サンプル糸2は72フィラメント糸であった。サンプル糸2の平均デニールは159.7であり、111%の平均伸長を示し、平均引張強さは2.28重量グラム毎デニール(gpd)であった。図13に示されるように、サンプル糸2のフィラメントは、第1のポリマー及び第2のポリマー(それぞれ、PH−835 PP及び8335 NT−7 LLDPE)を前後(F/B)の配置で隣り合って共押出ししたトリローバル(TRI)断面を有する。
【0035】
計4つの単繊維用熱変位試験を、サンプル糸2の試験繊維についても実行した。図14は得られる試験結果を示している。図14は、4つの単繊維用熱変位試験のそれぞれに関する、サンプル糸2の繊維についての、停止温度の関数である%平均変位、及び全体の平均の計算値を示す。サンプル糸2の繊維は、温度が上昇するにつれて高さの減少を示した。図14に示されるように、サンプル糸2の繊維は、−30℃(−22°F)〜+35℃(95°F)の温度範囲にわたって全体で−40%の平均変位を示した。
【0036】
サンプル糸3は、第1のポリマー及び第2のポリマー(それぞれ、PH−835 PP及び8335 NT−7 LLDPE)を前後(F/B)の配置で隣り合って共押出ししたトリローバル断面を有する144フィラメント糸であった。サンプル糸3の平均デニールは317.7であり、118%の平均伸長を示し、平均引張強さは2.24であった。
【0037】
計4つの単繊維用熱変位試験を、サンプル糸3の個々のフィラメントについても実行した。図15は得られる試験結果を示している。図15は、4つの単繊維用熱変位試験のそれぞれに関する、サンプル糸3の繊維についての、停止温度の関数である%平均変位を示す。サンプル糸3の繊維はまた、温度が上昇するにつれて高さの減少も示した。図15に示されるように、サンプル糸3の繊維は、−30℃(−22°F)〜+35℃(95°F)の温度範囲にわたって全体で−12%の平均変位を示した。
【0038】
図16は、トリローバル断面を有するフィラメントを有する72フィラメント糸の別の実施形態を示す。図16に示される個々のフィラメントでは、第1のポリマー及び第2のポリマー(それぞれ、PH−835 PP及び8335 NT−7 LLDPE)を、左右(L/R)の配置で隣り合って共押出しした。
【0039】
他の好適なポリプロピレンとしては、Braskem PP Americas, Inc,から入手可能であり、また製品安全データシートコード番号C4001(Sunoco Chemicals発行、2006年1月25日付け)について言及する製品安全データシートCP360Hホモポリマーポリプロピレン(Sunoco Chemical発行、改訂日:2008年3月26日)に記載されている、360H PPが挙げられる。
【0040】
他の繊維断面も可能である。例えば、図17は、矩形断面を有する二成分繊維(ポリプロピレン/ポリエチレン)を含むコンポーネント糸を示す。他の繊維はデルタ断面を有していてもよい。例えば、場合によっては、糸が、種々の相対的な断面形状を有する繊維(例えば、多成分繊維)を含んでいてもよい。例えば、糸によっては、断面が円形の繊維とトリローバル繊維とを含んでいてもよい。
【0041】
実施形態によっては、織布製衣服に用いられるのに好適な温度応答性織布が、3タイプのプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)及びポリプロピレンPP)で構成された三成分繊維を含む糸を組み込んでなり得る。
【0042】
様々な断面形状の繊維を含む糸を記載したが、他の形状も可能である。例えば、図18は、マルチフィラメント糸に組み込まれ得る、デルタ断面を有する例示的な繊維を示す。図18に示されるように、繊維100は、隣り合った配置で押出しした第1のポリマー102と第2のポリマー104とを含む。
【0043】
実施態様によっては、少なくとも1つの起毛面を有する生地製品を作るように、糸及び/又は繊維を組み合わせるのに好適な任意の手法によって織布を製造してもよい。多成分繊維の第1の材料及び第2の材料は、相対湿度の変化又は汗の量の変化に応じて示差伸長を示す可能性がある(例えば、温度応答性生地が衣服に組み込まれている場合)。起毛面は、フリース、ベロア、パイル及び/又はテリーループとして加工することができる。温度応答性織布は、多層衣服系における断熱層に組み込むことができる。したがって、他の実施態様も、添付の特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布、より詳細には周囲温度の変化に応答性である織布に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な織布は生地の構築時に特性が定められ、この特性は周囲条件の変化及び/又は身体活動にかかわらず保持される。これらの標準的な製品は、特に相乗効果及び快適性の向上のために他の織布と共に積層される場合、実に有効である。
【発明の概要】
【0003】
フリースのような、起毛面(片面又は両面のいずれか)を有する織布は、種々の周囲条件及び種々の活動のために種々のパイル高さ及び種々の密度を有する。
【0004】
一態様によれば、織布は、隣り合って設けられる少なくとも第1のポリマーと第2のポリマーとから形成される多成分繊維(例えば、二成分繊維、三成分繊維等)を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。第1のポリマー及び第2のポリマーは、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長(differential thermal elongation;特異的な熱伸長)(例えば、膨張及び/又は短縮)を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0005】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。第1のポリマー及び第2のポリマーの少なくとも1つは、低ガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーである。第1のポリマーはポリプロピレンであり、第2のポリマーはポリエチレン(例えば、直鎖低密度ポリエチレン)である。第1のポリマーは、第1のポリプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレン)であり、第2のポリマーは、第1のポリプロピレンと異なる第2のポリプロピレン(例えば、シンジオタクチックポリプロピレン)である。多成分繊維はまた、第1のポリプロピレン及び第2のポリプロピレンの両方と異なる第3のポリプロピレンを含んでいてもよい。糸のデニールは、約90〜約500、例えば約150〜約360、例えば約160である。糸の引張強さは、約0.5重量グラム毎デニール(grams-force per denier)〜約5.0重量グラム毎デニール、例えば0.9重量グラム毎デニール〜約2.4重量グラム毎デニール、例えば約2.3重量グラム毎デニールである。糸のフィラメント数は36〜144である。例えば、場合によっては、糸が72フィラメント糸である。多成分繊維は円形の断面を有していてもよく、第1のポリマー及び第2のポリマーは隣り合った配置で配される。多成分繊維はトリローバル(trilobal:三裂片状)断面を有する。多成分繊維はトリローバル断面を有し、第1のポリマー及び第2のポリマーが前後の配置で配される。多成分繊維はトリローバル断面を有し、第1のポリマー及び第2のポリマーが左右の配置で配される。多成分繊維はデルタ断面を有する。場合によっては、多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−5%〜約−60%、例えば−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−11%〜約−40%、例えば−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−20%〜約−40%の平均変位を示す。多成分繊維としては、押出しされた繊維(例えば、一対の共押出しされた繊維)が挙げられる。少なくとも1つの起毛面は、フリース、ベロア、シャーリング、パイル及びループテリーからなる群から選択される形態に加工される。織布は、ニット構造(例えば、丸編ニット構造、片面ニット構造、両面ニット構造、よこ編ニット構造及びたて編ニット構造等)を有する。場合によっては、織布が、織物構造又は2本針棒ラッセルたて編ニット構造等を有するパイル地である。例によっては、第2のポリマーが、第1のポリマーと相溶性である。場合によっては、第2の材料が、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマーである。第1のポリマー及び第2のポリマーの少なくとも1つは、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びナイロンから選択される熱可塑性ポリマーである。第1のポリマーはナイロンであり、第2のポリマーはポリエステルである。実施態様によっては、多成分繊維が、第1のポリマーと第2のポリマーとの間に設けられる第3のポリマーも含む。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方との相溶性が高い。第1のポリマー及び第2のポリマーは、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含んでいてもよい。場合によっては、織布が、ステッチ糸により形成される技術上の表面(technical face)と、ループ糸及び/又はパイル糸により形成される技術上の裏面(technical back)とを有する。ループ糸及び/又はパイル糸は多成分繊維を含む。ステッチ糸は、伸縮性及び形状回復性を高めるための弾性糸(例えば、スパンデックス)を含んでいてもよい。第1のポリマー及び第2のポリマーの示差熱伸長は、低いヒステリシスにより実質上可逆的である。織布の断熱性能の調節は、比較的低いヒステリシスにより実質上可逆的である。実施態様によっては、織布が温度応答性織布製衣服に組み込まれる。
【0006】
別の態様では、織布が、隣り合って設けられる少なくともポリプロピレンとポリエチレン(例えば、約50%のポリプロピレン及び約50%のポリエチレン)とから形成される多成分繊維を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。ポリプロピレン及びポリエチレンは、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。糸のデニールは約150〜約160である。多成分繊維は、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−15%〜約−40%(例えば、約−40%)の平均変位を示す。
【0007】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。多成分繊維はトリローバル断面を有し、ポリプロピレン及びポリエチレンが前後の配置で配される。
【0008】
さらなる態様では、織布が、隣り合って(例えば押出し、例えば共押出しされて)設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される多成分繊維(例えば、二成分繊維、三成分繊維等)を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する。第1の材料及び第2の材料は、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮)を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0009】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。第1の材料及び第2の材料は、所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて示差熱伸長を示す。好ましくは、所定の温度範囲が32°F(0℃)〜120°F(49℃)である。より好ましくは、所定の温度範囲が50°F(10℃)〜100°F(38℃)である。起毛面は、フリース、ベロア、パイル、シャーリング及びループテリーからなる群から選択される形態に加工される。織布は、丸編ニット構造、片面ニット構造、両面ニット構造、よこ編ニット構造及びたて編ニット構造からなる群から選択されるニット構造を有する。織布は、織物構造又は2本針棒ラッセルたて編ニット構造を有するパイル地である。多成分繊維としては、二成分繊維及び/又は三成分繊維が挙げられる。第1の材料は第1のポリマーであり、第2の材料は、第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーである。第1の材料及び/又は第2の材料は、ポリエステル、ポリウレタン及び/又はナイロンからなる群から選択される熱可塑性ポリマーを含む。第1の材料は第1のポリマー(例えば、ナイロン)であり、第2の材料は、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマー(例えば、ポリエステル)である。多成分繊維はまた、第1のポリマーと第2のポリマーとの間に設けられる第3のポリマーを含むことができる。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方との相溶性が高くてもよい。第1の材料及び第2の材料は、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含んでいてもよい。生地本体は、ステッチ糸により形成される技術上の表面と、多成分繊維を含むループ糸及び/又はパイル糸により形成される技術上の裏面とを有する。保温(thermal)生地は、伸縮性及び形状回復性を高めるためにステッチ糸に組み込まれる弾性糸(例えば、Lycra(登録商標)等のスパンデックス)を含み得る。第1の材料及び第2の材料の示差熱伸長は、低いヒステリシスにより実質上可逆的である。織布の断熱性能の調節は、比較的低いヒステリシスにより実質上可逆的である。
【0010】
別の態様によれば、温度応答性織布製衣服は、多成分繊維からなる1つ又は複数の糸から形成される第1の起毛面を、着用者の皮膚側に有するニット保温生地を含む。多成分繊維は、隣り合った配置で配される第1の繊維成分と第2の繊維成分とを含む。多成分繊維は、異なる熱特性を有し、これにより、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻すことにより、織布製衣服の断熱特性を調節する。好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。ニット保温生地は、起毛ループ糸及び/又は起毛パイル糸の1つ又は複数の領域を有する内面を、着用者の皮膚側に含む。起毛ループ糸及び/又は起毛パイル糸は、約32°F(0℃)〜約120°F(49℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の嵩高さ変化を示す。好ましくは、周囲温度変化に応じて嵩高さを変化させる特性は、比較的低いヒステリシスにより可逆的である。多成分繊維は、約32°F(0℃)〜約120°F(49℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の断面積変化を示す。第1の繊維成分及び/又は第2の繊維成分は、コポリマー又はブロックポリマーであってもよい。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は、物理的な固着により互いに固定されていてもよい。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は、第1の材料と第2の材料との分離を防止するようになっている相補的な噛み合わせ面形状を含み得る。多成分繊維としては、二成分繊維及び/又は三成分繊維が挙げられる。第1の繊維成分としては第1のポリマーが挙げられ、第2の繊維成分としては、第1のポリマーと相溶性である第2のポリマーが挙げられる。第1の繊維成分としては第1のポリマー(例えばポリエステル)が挙げられ、第2の繊維成分としては、第1のポリマーと非相溶性である第2のポリマー(例えばナイロン)が挙げられる。多成分繊維はまた、第1の繊維成分と第2の繊維成分との間に設けられる第3のポリマーを含み得る。第3のポリマーは、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方と相溶性である。多成分繊維は、第1の繊維成分と第2の繊維成分とを互いに物理的に固着させる付加物(例えば、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン等)を含んでいてもよい。第1の繊維成分又は第2の繊維成分の少なくとも1つは鋸歯状面を含む。多成分繊維は、1つ又は複数の鋸歯状面を有する。多成分繊維は略矩形の断面形状を有する。第1の繊維成分及び第2の繊維成分は略円形の断面形状を有する。ニット保温生地は、第1の起毛面の反対側に、起毛ループ糸及び/又は起毛パイル糸の1つ又は複数の領域を含む第2の起毛面を有する。第2の起毛面は、多成分繊維からなる1つ又は複数の糸を含む。
【0011】
さらに別の態様では、工学的な保温生地製衣服に用いられる温度応答性織布要素を製造する方法が、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成することを含む。該方法はまた、所定のパイル高さを有しかつ1つ又は複数の多成分繊維を含むループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工することを含む。多成分繊維は、隣り合って設けられる少なくとも第1の材料と第2の材料とから形成される。第1の材料及び第2の材料は、多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、それにより、周囲条件に応じて織布の断熱性能を調節する。
【0012】
好ましい実施態様は、以下のさらなる特徴の1つ又は複数を含み得る。また、上記方法は、多成分繊維を含むループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の他の領域を形成するように、連続ウェブの第2の面を加工することを含んでいてもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、選択される電子針及び/又はシンカーを用いて糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。所定のパイル高さを有するループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工する工程は、織布要素の技術上の裏面にループを形成することを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、円筒状に編むことにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、裏添え糸編み(reverse plating)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。第1の面を加工する工程は、片面フリースを形成するように第1の面を加工することを含む。該方法はまた、両面フリースを形成するように連続ウェブの第2の面を加工することを含んでいてもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、添え糸編みにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、標準的な添え糸編み(regular plating)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含み、ここで、第1の面を加工することは、片面フリースを形成するように第1の面を加工することをさらに含む。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、たて編み(例えば、2本針棒たて編み、例えばラッセルたて編み)により、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。一例として、糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、ラッセルたて編みにより、糸及び/又は繊維を組み合わせることを含み、また該方法は、相互結合パイルを切断することによって、片面カットパイル地を形成することを含む。この場合、該方法はまた、カットパイル地の技術上の表面を形成する糸を起毛させることにより、両面パイル地を形成してもよい。糸及び/又は繊維の連続ウェブを形成する工程は、スライバ編みにより、1つ又は複数の多成分繊維を含む糸及び/又は繊維を組み合わせることを含む。所定のパイル高さを有するループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域を形成するように、連続ウェブの第1の面を加工する工程は、第1の面を起毛させることを含む。該方法は、第1の面と反対側の、連続ウェブの第2の面を起毛させることを含んでいてもよい。該方法はまた、ループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域のループを切断すること、及びカットループを共通のパイル高さに加工することを含んでいてもよい。第1の材料及び第2の材料は、所定の温度範囲にわたる温度変化に応じて示差熱伸長、例えば、膨張及び/又は短縮を示す。好ましくは、所定の温度範囲は、32°F(0℃)〜120°F(49℃)、より好ましくは50°F(10℃)〜約100°F(38℃)である。該方法はまた、1つ又は複数の多成分繊維を形成するように、第1の材料と第2の材料とを組み合わせることを含んでいてもよい。第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、第1の材料と第2の材料とを共押出しすることを含んでいてもよい。第1の材料及び第2の材料は、非相溶性ポリマーであり、第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、多成分繊維において第1の材料と第2の材料との間に設けられるような第3のポリマーと共に、第1の材料と第2の材料とを共押出しすることを含んでいてもよい。第3のポリマーは、第1の材料及び第2の材料の両方と相溶性である。第1の材料と第2の材料とを組み合わせることは、第1の材料を第2の材料に物理的に固着させることを含んでいてもよい。第1の材料を第2の材料に物理的に固着させることは、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン等の付加物を、第1の材料及び第2の材料の1つ又は両方に付加することを含んでいてもよい。ここで、この付加物は、第1の材料と第2の材料との間で物理的に又は化学的に作用し得る架橋である。第1の材料及び/又は第2の材料は、ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンからなる群から選択され得る。ループ糸及び/又はパイル糸の1つ又は複数の領域は、約50°F(10℃)〜約100°F(38℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の嵩高さ変化を示す。1つ又は複数の多成分繊維は、約50°F(10℃)〜約100°F(38℃)の温度範囲にわたって全体で約5%〜約50%の断面積変化を示す。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面から、また特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図1B】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図1C】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図2A】温度応答性スマートテキスタイルファブリック(smart textile fabric)の断面図である。
【図2B】温度応答性スマートテキスタイルファブリックの断面図である。
【図3】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の斜視図である。
【図3A】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図3B】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図3C】温度応答性スマートテキスタイルファブリック製衣服の詳細な断面図である。
【図4A】略矩形の断面形状を有する温度応答性二成分繊維の一実施形態の詳細図である。
【図4B】略矩形の断面形状を有する温度応答性二成分繊維の一実施形態の詳細図である。
【図5】鋸歯状面を有する温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【図6】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図7】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図8】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図9】多成分繊維の個々の繊維成分を互いに固定するための1つのアプローチを示す図である。
【図10】第1のサンプル糸(サンプル糸1)である、隣り合った配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成された断面が円形の二成分繊維から形成される144フィラメントの断面である。
【図11】熱変位試験を受けた多成分繊維の写真である。
【図12】サンプル糸1の試験繊維について得られる熱変位試験結果をグラフに表したものである。
【図13】第2のサンプル糸(サンプル糸2)である、前後の配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたトリローバル二成分繊維から形成される72フィラメント糸の断面である。
【図14】サンプル糸2の試験繊維について得られる熱変位試験結果をグラフに表したものである。
【図15】第3のサンプル糸(サンプル糸3)である、前後の配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたトリローバル二成分繊維から形成される144フィラメント糸の試験繊維について得られる熱変位試験結果をグラフに表したものである。
【図16】左右の配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成されたトリローバル二成分繊維から形成される72フィラメント糸の断面である。
【図17】矩形形状を有しかつ隣り合った配置で配されるポリプロピレンとポリエチレンとで構成された二成分繊維から形成される72フィラメント糸の断面である。
【図18】温度応答性二成分繊維の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
種々の図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0016】
図1Aは、二成分繊維10の詳細図である。繊維成分10は、隣り合って配される2つの温度応答性材料、すなわち、第1の繊維成分A及び第2の繊維成分Bを含む。第1の繊維成分A及び第2の繊維成分Bは、温度変化に応じて示差熱伸長、例えば、膨張及び/又は短縮を示す。その結果、繊維は、周囲条件に応じて湾曲及び/又はカールする傾向にある。第1の繊維成分A及び/又は第2の繊維成分Bに好適な材料としては、ポリエステル、ポリウレタン及びナイロンが挙げられる。
【0017】
例えば、一実施形態において、第1の繊維成分Aは第2の繊維成分Bよりも相対的に大きい熱膨張係数を有する(すなわち、温度の上昇に応じて増大(grow)及び/又は膨張する傾向が高い)。繊維10が臨界温度範囲を超える熱に曝されると、第1の繊維成分Aは、第2の繊維成分Bよりも相対的に速い速度で膨張するため、繊維が湾曲する(例えば図1Bを参照)。示差熱伸長(例えば、膨張及び/又は収縮)が或る特定の閾値レベルを超えると、繊維10はカールする傾向にある(例えば図1Cを参照)。このプロセスは、低いヒステリシスにより可逆的でもある。すなわち、温度が臨界温度範囲未満に戻ると、繊維10は元の三次元構造に戻る。このタイプの好適な二成分繊維は、Mide Technologies Corporation(Medford,
Massachusetts U.S.A.)により製造されている。
【0018】
図2Aは、上記の種類の二成分繊維10の起毛面を含む温度応答性織布20を示す。この織布20は、好ましくは、二成分繊維10を(例えば、シンカーループ糸又はパイルとして)含む少なくとも1つの起毛面24(例えば、たて編み又は特殊な丸編みのパイル糸)を有するニット構造の、一般的なシート状基材22を含む。繊維10から形成される糸のデニールは、約90〜約500、例えば約150〜約360であり得る。繊維10から形成される糸の引張強さは、約0.5重量グラム毎デニール〜約5.0重量グラム毎デニール、例えば約2.3重量グラム毎デニールであり得る。パイル糸が二成分繊維10からなり、また種々の温度に曝される場合、織布20の断熱性の変化は、起毛面を形成するパイル糸の嵩高さ/厚みの変化の結果である。
【0019】
上記のニット構造のいずれかにおいて、例えばステッチ糸に弾性糸(例えば、Lycra(登録商標)等のスパンデックス)を加えてもよい。例えば、場合によっては、伸縮性及び形状回復性を高めるためにスパンデックスをステッチ糸に組み込む。周囲温度が上昇すると、起毛面(複数可)の繊維は、起毛面方向に湾曲及び/又はカールし、織布の嵩高性(loft)及び密度を変え、結果として、織布20の断熱性能を調節する。図2Bは、両面温度応答性織布の応答挙動を示す。
【0020】
一例として、図3に示されるように、温度応答性織布20を織布製衣服30に組み込むことができる。図3Aに示されるように、二成分繊維10を含む起毛面24は使用者の皮膚Sと接触して、快適性の向上、水分管理、並びに空気の移動性及び通気性の向上をもたらす。周囲温度が上昇すると、起毛面の繊維は、湾曲(図3B)及びカール(図3C)して、織布の三次元構造を変えることにより、衣服の断熱性を改善させる。すなわち、周囲温度が上昇すると、織布は薄くなり(嵩高性が低くなり)、それゆえ断熱性が低くなり、全体的な快適性を高める。
【0021】
好ましくは、約32°F(0℃)〜約120°F(49℃)、より好ましくは約50°F(10℃)〜約100°F(38℃)の温度範囲にわたって三次元構造の変化が起きる。
【0022】
本発明の多くの実施形態を記載してきたが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。例えば、二成分繊維は、多種多様な断面形状を有していてもよい。例えば、図4Aは、長辺43及び長辺44並びに短辺45及び短辺46を有する略矩形の断面を有する二成分繊維40の一実施形態を示す。二成分繊維40は、隣り合って配される2つの異なるポリマー、すなわち、第1の繊維成分41及び第2の繊維成分42を含み、これらの繊維成分は、温度変化に応じて示差熱伸長、例えば、膨張及び/又は短縮を示す。この例では、第1の繊維成分41が、第2の繊維成分42よりも相対的に大きい熱膨張係数を有する。このため、(例えば、図1A〜図1Cに関する)上記の二成分繊維と同様に、繊維40が臨界温度範囲を超える熱に曝されると、第1の繊維成分41が、第2の繊維成分42よりも相対的に速い速度で膨張するため、繊維が湾曲し(例えば図4Aを参照)、示差熱伸長(例えば、膨張及び/又は短縮(収縮))が或る特定の閾値を超えれば、かつ/又は超える場合、繊維40がカールする傾向にある(例えば図4Bを参照)。略矩形の断面形状のために、二成分繊維40は、例えば短辺45及び短辺46と比べ、(図4Aの矢印47で示されるように)長辺43及び長辺44に沿って比較的容易に湾曲しやすい。このプロセスは、低いヒステリシスにより可逆的でもある。すなわち、温度が臨界温度範囲未満に戻ると、繊維40は元の三次元構造に戻る。
【0023】
この二成分繊維は、平面及び/又は1つ若しくは複数の鋸歯状面を有し得る。例えば、図5は、鋸歯状面53を有する第1の繊維成分51と、鋸歯状面54を有する第2の繊維成分52とを含む二成分繊維50を示す。鋸歯状面は、例えば図1A及び図4Aに示される平面と比べて、異なる外観、感触、靱性、及び/又は光反射率をもたらし得る。
【0024】
実施形態によっては、二成分繊維が、2つの非相溶性ポリマー(例えば繊維成分)又は相溶性が低いポリマー(例えばナイロン及びポリエステル)を含み得る。例えば、場合によっては、二成分繊維が、隣り合って設けられるナイロン繊維とポリエステル繊維とを含んでいてもよい。非相溶性ポリマー又は相溶性が低いポリマーにより形成される繊維は裂ける傾向を示すおそれがある。すなわち、個々の繊維成分が分離する傾向を示すおそれがあり、これは温度変化に対する二成分繊維応答の効果を変える可能性がある。
【0025】
図6及び図7は、多成分繊維の個々の繊維成分の分離を防止するアプローチを示す。図6は、略円形の断面を有する第1の繊維成分61と第2の繊維成分62とを含む三成分繊維60に適用されるようなアプローチを示す。図6に示されるように、第3のポリマー63は、第1のポリマーと第2のポリマー(すなわち、第1の繊維成分61及び第2の繊維成分62)との間に(例えば、これらのポリマーと共に共押出しされて)設けられる。第3のポリマー63は、第1のポリマーと第2のポリマーとを互いに固定するのを助ける架橋として用いられる。第3の「架橋」ポリマー63は、第1のポリマー及び第2のポリマーの互いに対する相溶性よりも、第1のポリマー及び第2のポリマーのそれぞれとの相溶性が高いため、第1のポリマーと第2のポリマーとの間により強力な結合をもたらし、分離の可能性を低減し得る。
【0026】
図7は、鋸歯状面73を有する略矩形の断面を有する第1の繊維成分71と、鋸歯状面74を有する略矩形の断面を有する第2の繊維成分72とを含む三成分繊維70に適用されるような、図6に関して上記に記載されるアプローチを示す。図7に示されるように、第3のポリマー75は、第1の繊維成分71及び第2の繊維成分72である非相溶性ポリマーを固定する架橋として用いられる。
【0027】
図8及び図9は、多成分繊維の個々の繊維成分の分離を防止する別のアプローチを示す。ここで、個々の繊維成分は、物理的な固着により互いに固定される。このアプローチは、単独で、又は図7及び図8に関して上記に記載されるアプローチと組み合わせて用いてもよい。物理的な固着は、繊維成分の境界面で、相互に噛み合う種々の形状を合わせ面に沿って設けることにより達成することができる。例えば、図8に示されるように、第1の繊維成分81及び第2の繊維成分82の合わせ面に、第1のポリマーと第2のポリマーとを互いに固着させるように作用する相補的な噛み合わせ形状83及び84を設ける。代替的に又は付加的に、例えば図9に示されるように、物理的な固着は、付加物93(例えば、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン(TiO2)等)を付加することによっても達成することができる。この付加物93は、多成分繊維90の第1の繊維成分91と第2の繊維成分92とを物理的又は化学的に架橋することにより、繊維成分91と繊維成分92とを互いに固着させる。
【0028】
実施形態によっては、温度応答性織布、例えば、図3に関連して上記に記載される衣服等の織布製衣服に用いられるのに好適な、図2A及び図2Bの温度応答性スマートテキスタイルファブリックは、プロピレンとポリエチレン(例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE))で構成された二成分繊維を含む糸を組み込んでなり得る。二成分繊維から形成される糸のデニールは、約90〜約500、例えば約150〜約360であり得る。二成分繊維から形成される糸の引張強さは、約0.5重量グラム毎デニール〜約5.0重量グラム毎デニール、例えば約2.3重量グラム毎デニールであり得る。パイル糸が二成分繊維からなり、また種々の温度に曝される場合、織布/織布製衣服の断熱性の変化は、パイル糸の嵩高さ/厚みの変化の結果である。
【0029】
表1は、50/50比率の、第1のポリマー(Basell Canada Inc.(Corunna, Ontario, Canada)により製造され、Pro−fax(商標)PH835の商標で販売されている、Basellの製品安全データシートPH835(発行日:2000年3月28日、改訂番号:New
MSDS)に記載される、PH−835ポリプロピレン)と、第2のポリマー(直鎖低密度ポリエチレン(polyethelene)、例えば、The Dow Chemical Company(Midland, Michigan
U.S.A.)から入手可能な、Dow Chemical Companyの製品安全データシート22539/1001(発行日:2008年9月18日、第2.2版)に記載される、8335 NT−7 LLDPE)とで構成された二成分繊維からそれぞれ形成した、多数のサンプル糸を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1を参照すると、サンプル糸1は144フィラメント糸であった。サンプル糸1の平均デニールは320.3であり、101%の平均伸長を示し、平均引張強さは2.39重量グラム毎デニール(gpd)であった。図10に示されるように、サンプル糸1のフィラメントは、第1のポリマー及び第2のポリマーを隣り合った(S/S)配置で共押出しした円形の(RND)断面を有する。
【0032】
計4つの単繊維用熱変位試験を、サンプル糸1の試験繊維について実行した。図11は、例示的な熱変位試験による被験繊維の写真を示す。一番上の2つの画像は、−30℃(−22°F)の開始温度における被験繊維の正面図及び側面図(それぞれ、ページの左側及び右側)である。図11に示されるように、−30℃で、個々の繊維は略垂直方向にある。温度が0℃(32°F)に上昇すると、図11の中央の2つの画像に示されるように、嵩高性(すなわち、垂直方向の繊維の高さ)が減少する。被験繊維の嵩高性は、図11の一番下の2つの画像に示されるように、温度が+35℃(95°F)に上昇するにつれて減少し続ける。
【0033】
図12は、サンプル糸1の試験繊維について得られる試験結果をグラフに表したものである。図12は、サンプル糸1についての4つの単繊維用熱変位試験のそれぞれに関する、停止温度(Dwell Temperature)の関数である%平均変位、及び全体の平均の計算値を示す。%平均変位は、被験繊維の正面図についての高さ(嵩高性)H1(例えば図11を参照)の%変化、及び被験繊維の側面図についての高さ(嵩高性)H2(例えば図11を参照)の%変化を求め、その後、それらの2つの値の平均をとることによって算出する。図12に示されるように、サンプル糸1の繊維は、−30℃(−22°F)〜+35℃(95°F)の温度範囲にわたって全体で−15%の平均変位を示した。同一試験をサンプル糸2及びサンプル糸3について行った。
【0034】
サンプル糸2は72フィラメント糸であった。サンプル糸2の平均デニールは159.7であり、111%の平均伸長を示し、平均引張強さは2.28重量グラム毎デニール(gpd)であった。図13に示されるように、サンプル糸2のフィラメントは、第1のポリマー及び第2のポリマー(それぞれ、PH−835 PP及び8335 NT−7 LLDPE)を前後(F/B)の配置で隣り合って共押出ししたトリローバル(TRI)断面を有する。
【0035】
計4つの単繊維用熱変位試験を、サンプル糸2の試験繊維についても実行した。図14は得られる試験結果を示している。図14は、4つの単繊維用熱変位試験のそれぞれに関する、サンプル糸2の繊維についての、停止温度の関数である%平均変位、及び全体の平均の計算値を示す。サンプル糸2の繊維は、温度が上昇するにつれて高さの減少を示した。図14に示されるように、サンプル糸2の繊維は、−30℃(−22°F)〜+35℃(95°F)の温度範囲にわたって全体で−40%の平均変位を示した。
【0036】
サンプル糸3は、第1のポリマー及び第2のポリマー(それぞれ、PH−835 PP及び8335 NT−7 LLDPE)を前後(F/B)の配置で隣り合って共押出ししたトリローバル断面を有する144フィラメント糸であった。サンプル糸3の平均デニールは317.7であり、118%の平均伸長を示し、平均引張強さは2.24であった。
【0037】
計4つの単繊維用熱変位試験を、サンプル糸3の個々のフィラメントについても実行した。図15は得られる試験結果を示している。図15は、4つの単繊維用熱変位試験のそれぞれに関する、サンプル糸3の繊維についての、停止温度の関数である%平均変位を示す。サンプル糸3の繊維はまた、温度が上昇するにつれて高さの減少も示した。図15に示されるように、サンプル糸3の繊維は、−30℃(−22°F)〜+35℃(95°F)の温度範囲にわたって全体で−12%の平均変位を示した。
【0038】
図16は、トリローバル断面を有するフィラメントを有する72フィラメント糸の別の実施形態を示す。図16に示される個々のフィラメントでは、第1のポリマー及び第2のポリマー(それぞれ、PH−835 PP及び8335 NT−7 LLDPE)を、左右(L/R)の配置で隣り合って共押出しした。
【0039】
他の好適なポリプロピレンとしては、Braskem PP Americas, Inc,から入手可能であり、また製品安全データシートコード番号C4001(Sunoco Chemicals発行、2006年1月25日付け)について言及する製品安全データシートCP360Hホモポリマーポリプロピレン(Sunoco Chemical発行、改訂日:2008年3月26日)に記載されている、360H PPが挙げられる。
【0040】
他の繊維断面も可能である。例えば、図17は、矩形断面を有する二成分繊維(ポリプロピレン/ポリエチレン)を含むコンポーネント糸を示す。他の繊維はデルタ断面を有していてもよい。例えば、場合によっては、糸が、種々の相対的な断面形状を有する繊維(例えば、多成分繊維)を含んでいてもよい。例えば、糸によっては、断面が円形の繊維とトリローバル繊維とを含んでいてもよい。
【0041】
実施形態によっては、織布製衣服に用いられるのに好適な温度応答性織布が、3タイプのプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)及びポリプロピレンPP)で構成された三成分繊維を含む糸を組み込んでなり得る。
【0042】
様々な断面形状の繊維を含む糸を記載したが、他の形状も可能である。例えば、図18は、マルチフィラメント糸に組み込まれ得る、デルタ断面を有する例示的な繊維を示す。図18に示されるように、繊維100は、隣り合った配置で押出しした第1のポリマー102と第2のポリマー104とを含む。
【0043】
実施態様によっては、少なくとも1つの起毛面を有する生地製品を作るように、糸及び/又は繊維を組み合わせるのに好適な任意の手法によって織布を製造してもよい。多成分繊維の第1の材料及び第2の材料は、相対湿度の変化又は汗の量の変化に応じて示差伸長を示す可能性がある(例えば、温度応答性生地が衣服に組み込まれている場合)。起毛面は、フリース、ベロア、パイル及び/又はテリーループとして加工することができる。温度応答性織布は、多層衣服系における断熱層に組み込むことができる。したがって、他の実施態様も、添付の特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合って設けられる少なくとも第1のポリマーと第2のポリマーとから形成される多成分繊維を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する織布であって、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが、前記多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節する、織布。
【請求項2】
前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの少なくとも1つが、低ガラス転移温度を有する第1の熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の織布。
【請求項3】
前記第1のポリマーがポリプロピレンであり、前記第2のポリマーがポリエチレンである、請求項1に記載の織布。
【請求項4】
前記ポリエチレンが直鎖低密度ポリエチレンである、請求項3に記載の織布。
【請求項5】
前記第1のポリマーが第1のポリプロピレンであり、前記第2のポリマーが、該第1のポリプロピレンと異なる第2のポリプロピレンである、請求項1に記載の織布。
【請求項6】
前記第1のポリプロピレンがアイソタクチックポリプロピレンであり、前記第2のポリプロピレンがシンジオタクチックポリプロピレンである、請求項5に記載の織布。
【請求項7】
前記多成分繊維が、前記第1のポリプロピレン及び前記第2のポリプロピレンの両方と異なる第3のポリプロピレンをさらに含む、請求項5に記載の織布。
【請求項8】
前記糸のデニールが約90〜約500である、請求項1に記載の織布。
【請求項9】
前記糸のデニールが約160である、請求項8に記載の織布。
【請求項10】
前記糸の引張強さが、約0.5重量グラム毎デニール〜約5.0重量グラム毎デニールである、請求項1に記載の織布。
【請求項11】
前記糸の引張強さが、約2.3重量グラム毎デニールである、請求項10に記載の織布。
【請求項12】
前記糸のフィラメント数が36〜144である、請求項1に記載の織布。
【請求項13】
前記糸が72フィラメント糸である、請求項12に記載の織布。
【請求項14】
前記多成分繊維が円形の断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが隣り合った配置で配される、請求項1に記載の織布。
【請求項15】
前記多成分繊維が矩形断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが隣り合った配置で配される、請求項1に記載の織布。
【請求項16】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有する、請求項1に記載の織布。
【請求項17】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが前後の配置で配される、請求項16に記載の織布。
【請求項18】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが左右の配置で配される、請求項16に記載の織布。
【請求項19】
前記多成分繊維がデルタ断面を有する、請求項1に記載の織布。
【請求項20】
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−5%〜約−60%の平均変位を示す、請求項1に記載の織布。
【請求項21】
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−20%〜約−40%の平均変位を示す、請求項20に記載の織布。
【請求項22】
隣り合って設けられる少なくともポリプロピレンとポリエチレンとから形成される多成分繊維を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する織布であって、前記ポリプロピレン及び前記ポリエチレンが、前記多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節し、
前記糸のデニールが約150〜約160であり、
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−5%〜約−60%の平均変位を示す、織布。
【請求項23】
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−20%〜約−40%の平均変位を示す、請求項22に記載の織布。
【請求項24】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有し、前記ポリプロピレン及び前記ポリエチレンが前後の配置で配される、請求項22に記載の織布。
【請求項25】
前記多成分繊維が、約50%のポリプロピレンと約50%のポリエチレンとで構成される、請求項22に記載の織布。
【請求項26】
請求項1又は請求項22に記載の織布を含む、温度応答性織布製衣服。
【請求項1】
隣り合って設けられる少なくとも第1のポリマーと第2のポリマーとから形成される多成分繊維を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する織布であって、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが、前記多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節する、織布。
【請求項2】
前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの少なくとも1つが、低ガラス転移温度を有する第1の熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の織布。
【請求項3】
前記第1のポリマーがポリプロピレンであり、前記第2のポリマーがポリエチレンである、請求項1に記載の織布。
【請求項4】
前記ポリエチレンが直鎖低密度ポリエチレンである、請求項3に記載の織布。
【請求項5】
前記第1のポリマーが第1のポリプロピレンであり、前記第2のポリマーが、該第1のポリプロピレンと異なる第2のポリプロピレンである、請求項1に記載の織布。
【請求項6】
前記第1のポリプロピレンがアイソタクチックポリプロピレンであり、前記第2のポリプロピレンがシンジオタクチックポリプロピレンである、請求項5に記載の織布。
【請求項7】
前記多成分繊維が、前記第1のポリプロピレン及び前記第2のポリプロピレンの両方と異なる第3のポリプロピレンをさらに含む、請求項5に記載の織布。
【請求項8】
前記糸のデニールが約90〜約500である、請求項1に記載の織布。
【請求項9】
前記糸のデニールが約160である、請求項8に記載の織布。
【請求項10】
前記糸の引張強さが、約0.5重量グラム毎デニール〜約5.0重量グラム毎デニールである、請求項1に記載の織布。
【請求項11】
前記糸の引張強さが、約2.3重量グラム毎デニールである、請求項10に記載の織布。
【請求項12】
前記糸のフィラメント数が36〜144である、請求項1に記載の織布。
【請求項13】
前記糸が72フィラメント糸である、請求項12に記載の織布。
【請求項14】
前記多成分繊維が円形の断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが隣り合った配置で配される、請求項1に記載の織布。
【請求項15】
前記多成分繊維が矩形断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが隣り合った配置で配される、請求項1に記載の織布。
【請求項16】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有する、請求項1に記載の織布。
【請求項17】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが前後の配置で配される、請求項16に記載の織布。
【請求項18】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有し、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが左右の配置で配される、請求項16に記載の織布。
【請求項19】
前記多成分繊維がデルタ断面を有する、請求項1に記載の織布。
【請求項20】
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−5%〜約−60%の平均変位を示す、請求項1に記載の織布。
【請求項21】
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−20%〜約−40%の平均変位を示す、請求項20に記載の織布。
【請求項22】
隣り合って設けられる少なくともポリプロピレンとポリエチレンとから形成される多成分繊維を含む糸を組み込んでなる少なくとも1つの起毛面を有する織布であって、前記ポリプロピレン及び前記ポリエチレンが、前記多成分繊維を湾曲又はカールさせ、かつ温度変化に応じて可逆的に元に戻す示差熱伸長を示し、周囲条件に応じて該織布の断熱性能を調節し、
前記糸のデニールが約150〜約160であり、
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−5%〜約−60%の平均変位を示す、織布。
【請求項23】
前記多成分繊維が、−22°F(−30℃)〜95°F(+35℃)の温度範囲にわたって全体で約−20%〜約−40%の平均変位を示す、請求項22に記載の織布。
【請求項24】
前記多成分繊維がトリローバル断面を有し、前記ポリプロピレン及び前記ポリエチレンが前後の配置で配される、請求項22に記載の織布。
【請求項25】
前記多成分繊維が、約50%のポリプロピレンと約50%のポリエチレンとで構成される、請求項22に記載の織布。
【請求項26】
請求項1又は請求項22に記載の織布を含む、温度応答性織布製衣服。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−87449(P2012−87449A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222107(P2011−222107)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(507165305)エムエムアイ−アイピーシーオー、エルエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】MMI−IPCO,LLC
【出願人】(507165361)ミデ・テクノロジー・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222107(P2011−222107)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(507165305)エムエムアイ−アイピーシーオー、エルエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】MMI−IPCO,LLC
【出願人】(507165361)ミデ・テクノロジー・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】
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