説明

温度特性計測装置

【課題】安定した温度特性計測を実現できる温度特性検査装置を提供する。
【解決手段】温度特性計測装置1は、電子部品2が収容される凹部12を有する電子部品搭載プレート10と、この電子部品搭載プレート10の電子部品2に対して直接又は間接的に熱を供給する温度制御ユニット30と、電子部品搭載プレート10に収容される電子部品の上面の少なくとも一部を覆うカバーユニット40と、電子部品2の接点に対して電気的接続を確保するプローブユニット50を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の温度特性を計測する温度特性計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子や加速度センサ、空気圧センサ、ブレーカ、サーマルプロテクタ、サーモスタット、サーミスタ等は、目的に応じて各種電気信号等を出力する。この出力は、使用される雰囲気温度に依存するので、その温度依存特性を予め計測する。
【0003】
例えば水晶振動子は、その周波数特性の温度依存性があるので、出荷前に複数の温度帯域における出力特性を測定する。
【0004】
またブレーカ(サーマルプロテクタ)、サーモスタット、サーミスタなどの温度検出素子は、目標温度で適切な動作を行うか否かを予め計測する。例えばブレーカなどは、内部にバイメタル等の動作素子を備えており、目標温度を超えると動作素子が変位して、機械的に電気的な接続を遮断する。従って、出荷前に、ブレーカを目標温度以上に加熱して、確実にスイッチ(遮断)するか否かを試験する。
【0005】
例えば特許文献1には、電子部品の移動経路に沿って、複数の温度調節ユニットが配置された温度特性計測装置が開示されている。複数の温度調節ユニットは、それぞれ別々の温度に設定されており、電子部品が各温度調節ユニットを通過する間に、電子部品の特性を試験する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3777395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の電子部品は、小型化及び高精度化が進展しており、その温度依存特性も高精度に計測する必要がある。従来の温度特性計測装置は、温度調節ユニットによって電子部品を下側(背面側)から直接又は間接的に加熱する構造であることから、電子部品に供給される熱が、電子部品の上面側から放出されやすいという問題があった。
【0008】
また、本出願時には未開時の課題ではあるが、小型軽量化が進展が著しいブレーカ(サーマルプロテクタ)、サーモスタット、サーミスタなどの温度検出素子の場合、内部の動作素子が機械的に変位するので、その衝撃で電子部品が跳ね上がる可能性がある。従って、温度特性計測装置において、温度制御中に電子部品が跳ね上がると、電子部品の位置精度が悪化し、正確なプロービングを行うことが出来ないという問題があった。更に、地震等によって温度特性計測装置自体が振動しても、電子部品の位置精度が悪化するという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、電子部品の温度特性を高精度に計測すると共に、電子部品の振動等に対して柔軟に対応可能な温度特性計測装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者の鋭意研究により、上記課題の少なくとも一部は以下の手段によって達成される。
【0011】
即ち、本発明は、電子部品の温度特性を計測する温度特性計測装置であって、前記電子部品が収容される凹部を有する電子部品搭載プレートと、前記電子部品搭載プレートの前記電子部品に対して直接又は間接的に熱を供給する温度制御ユニットと、前記電子部品搭載プレートに収容される前記電子部品の上面の少なくとも一部を覆うカバーユニットと、前記電子部品の前記接点に対して電気的接続を確保し、該電子部品の出力特性を測定するプローブユニットと、を備える事を特徴とする温度特性計測装置である。
【0012】
上記発明において、前記プローブユニットにおける待機中のプローブの突端と比較して、前記カバーユニットが、前記電子部品の上面に接近していることを特徴とする。
【0013】
上記発明において、前記カバーユニットは、前記電子部品の上面の少なくとも一部を覆いつつ、該電子部品の接点の上面を開放する開放領域を備え、前記プローブユニットは、前記開放領域を介して、前記電子部品の前記接点に対して電気的接続を確保することを特徴とする。
【0014】
上記発明において、前記カバーユニットと前記電子部品との間には隙間が形成されており、前記隙間の大きさは、前記電子部品搭載プレートの前記凹部の深さとほぼ同一又はそれ以下に設定されることを特徴とする。
【0015】
上記発明において、前記カバーユニットと前記電子部品搭載プレートは、面方向に相対移動可能となっていることを特徴とする。
【0016】
上記発明において、前記電子部品搭載プレートと前記温度制御ユニットは、面方向に相対移動可能となっていることを特徴とする。
【0017】
上記発明において、複数の前記温度制御ユニットが、前記電子部品搭載プレートの移動方向に沿って固定配置されることで、前記電子部品を複数の温度帯域に制御可能となっており、前記カバーユニットは、前記複数の温度制御ユニットが配置される領域と少なくとも一部が重なるように配置され、前記電子部品搭載プレートは、前記複数の温度制御ユニットの間を移動することを特徴とする。
【0018】
上記発明において、前記カバーユニットが温度制御されることを特徴とする。
【0019】
上記発明において、前記カバーユニットは、前記温度制御ユニットの熱を自身に伝達する熱伝導部材を備えており、該カバーユニットが、前記温度制御ユニットによって温度制御されることを特徴とする。
【0020】
上記発明において、前記カバーユニットは、自身の温度を制御するカバーユニット用温度制御ユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の温度特性計測装置によれば、電子部品の温度特性を安定して計測できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る温度特性計測装置の全体構成を示す上面図である。
【図2】同温度特性計測装置の電子部品搭載プレートを拡大して示す上面図である。
【図3】同温度特性計測装置の搬送方向に沿った断面の一部を拡大して示す図である。
【図4】同温度特性計測装置の一部を拡大して示す上面図。
【図5】同温度特性計測装置のカバーユニットの継ぎ目を拡大して示す断面図。
【図6】同温度特性計測装置の搬送方向に対して垂直方向に沿った断面の一部を拡大して示すことによってプローブユニットの上下動作を説明する図である。
【図7】同温度特性計測装置における電子部品が跳ね上がる状態を説明する図である。
【図8】同温度特性計測装置による計測方法において実現される電子部品の温度変化状態を示すグラフである。
【図9】同温度特性計測装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1には、本発明の実施形態に係る温度特性計測装置1の全体構成が開示されている。この温度特性計測装置1は、周方向に列を成して複数配置される電子部品搭載プレート10と、この電子部品搭載プレート10を周方向に移動させる移送ユニット20と、電子部品搭載プレート10の底面側に配置される複数の温度制御ユニット30と、電子部品搭載プレート10の上面側に配置されるカバーユニット40と、カバーユニット40の更に上方に配置される複数のプローブユニット50と、電子部品2の搬入を行う電子部品搬入ユニット60と、電子部品2の搬出を行う電子部品搬出ユニット70を備える。
【0025】
電子部品搭載プレート10は、図2に拡大して示されるように、銅やアルミニウム等の熱伝導性の高い金属素材で構成された扇形の板状部材となっている。この電子部品搭載プレート10には、搬送方向に並ぶ複数(4個)の凹部12から構成される収容列14が、幅方向に複数(2列)形成されている。各凹部12には電子部品2が収容される。電子部品搭載プレート10は合計8個の電子部品2が同時に収容される。
【0026】
図1に戻って、この電子部品搭載プレート10は、いわゆる搬送キャリアとなっており、移送ユニット20の外周縁に形成される環状の搬送領域に沿って合計90枚配置される。なお、各電子部品搭載プレート10の内部には、このプレート自体の温度状況を検出するための温度センサを収容しておくことが好ましい。
【0027】
移送ユニット20は、回転テーブル22及びこの回転テーブル22を回転させるモータ24を備える。回転テーブル22の外周縁には、電子部品搭載プレート10が固定されている。従って、モータ24の動力によって回転テーブル22が回転すると、外周に固定されている合計90枚の電子部品搭載プレート10が周方向に移動する。
【0028】
温度制御ユニット30は、回転テーブル22の周方向に沿って合計14台が固定配置される。各温度制御ユニット30の大きさは、搬送領域に並ぶ複数(ここでは5枚分)の電子部品搭載プレート10に対応している。
【0029】
温度制御ユニット30は、図3に拡大して示されるように、熱伝達プレート32、温度制御素子34、熱交換ユニット36を備える。熱伝達プレート32は、例えば銅やアルミニウム等の高熱導電性を有する材料で構成された板状部材であり、載置面32Aに配置される電子部品搭載プレート10に対して温熱または冷熱を供給する。熱伝達プレート32の下面32Bには、板状の温度制御素子30が当接配置されている。熱伝達プレート32の内部には特に図示しない温度センサが収容されている。この温度センサは、熱伝達プレート32の全体の温度を計測する。
【0030】
温度制御素子34は、ここではペルチェ素子が用いられており、熱伝達プレート32に対して温熱または冷熱を供給する。従って、熱伝達プレート32は、温度制御素子34の熱を電子部品搭載プレート10に伝達する役割を担う。なお、ペルチェ素子の動作原理は、PN接合部に電流を流すと、電流方向に見たときにN→P接合部分では吸熱現象が、P→N接合部分では放熱現象が発生することによる。従って、電流の方向を切り替えるだけでペルチェ素子による熱伝導プレート32に対する放熱(加熱)と吸熱(冷却)を切り替えられる。なお、このペルチェ素子の両面の温度差は相対的に生じるものである。従って、例えば、このペルチェ素子の吸熱側(冷却側)に熱交換ユニット36を配置して熱を供給し、放熱側に熱伝達プレート32を配置すると、この熱伝達プレート32の温度が上昇する。即ち、電子部品2を加熱することができる。これとは反対に、ペルチェ素子の放熱側に熱交換ユニット36を配置して熱を回収し、吸熱側(冷却側)に熱伝達プレート32を配置すると、この熱伝達プレート32の温度が下降する。即ち、電子部品2を冷却することができる。
【0031】
電子部品搭載プレート10は、温度制御ユニット20の熱伝達プレート32の上面を滑るようにして移動する。即ち、電子部品搭載プレート10と温度制御ユニット20は、互いに熱を伝達しながらも、面方向に相対移動する。
【0032】
図1に戻って、本実施形態では、合計14台の温度制御ユニット30により、搬送方向に沿って、第1予熱領域Y1、第1計測領域D1、第2予熱領域Y2、第2計測領域D2、第3予熱領域Y3、第3計測領域D3、第4予熱領域Y4、第4計測領域D4、第5予熱領域Y5、第5計測領域D5の合計10個の温度制御領域が形成される。電子部品2は、この温度制御領域内を移動しながら、それぞれの目標温度に制御され、後述するプローブユニット50によって電気的出力状態が計測される。
【0033】
カバーユニット40は、アルマイト処理された金属プレート材であって、温度制御ユニット30によって構成される温度制御領域に沿って、この温度制御領域の少なくとも一部と重複するように固定配置される。なお、本実施形態では、温度制御領域と完全に一致するように合計14枚のカバーユニット40が配置される。
【0034】
このカバーユニット40は、図4に拡大して示されるように、電子部品搭載プレート10に収容される電子部品2の上面の少なくとも一部を覆うカバー領域42と、電子部品2の接点2Aの上面を開放するための開放領域44を備える。カバー領域42は、電子部品搭載プレート10の収容列14内に列状に並ぶ複数の電子部品2の中央部分をまとめて覆う帯状領域となる。従って、このカバー領域42は、複数(ここでは2列)の収容列14の数に対応して複数設けられる。このように、カバー領域42を電子部品2の搬送方向に沿った帯形状とすることで、電子部品搭載プレート10が、カバーユニット40の下側を移動している間、電子部品2の中央部分の上方が、常にカバー領域42によって覆われた状態となる。
【0035】
開放領域44は、電子部品搭載プレート10の収容列14内に列状に並ぶ複数の電子部品2の接点2A(図6参照)部分をまとめて開放する帯状の開口となる。本実施形態の電子部品2は、搬送方向に対して幅方向両側に接点2Aを有していることから、この帯状の開放領域44が、カバー領域42の両外側に形成される。
【0036】
このように、カバーユニット40は、移動中の電子部品2の上方をカバー領域42によって覆いながらも、接点2A部分に限って開放領域44によって上方を開放して、電子部品2の出力検査と、姿勢の安定性を両立させることができる。
【0037】
図5には、隣接するカバーユニット40の継ぎ目構造が拡大して示されている。搬送方向Tに沿って上流側のカバーユニット40の下流側縁には、厚さ方向の上方に向かって上流側に退避する下流縁傾斜面48Aを備える。一方、搬送方向Tに沿って下流側のカバーユニット40の上流側縁には、厚さ方向の上方に向かって上流側に突出する上流縁傾斜面48Bを備える。従って、この継ぎ目部分では、上流側のカバーユニット40の下流縁傾斜面48Aと、下流側のカバーユニット40の上流縁傾斜面48Bが対向する結果、互いのカバーユニット40が厚さ方向に重なり合う構造となっている。
【0038】
この継ぎ目構造によって、下流縁傾斜面48Aと上流縁傾斜面48Bの隙間から、熱が逃げることを抑制すると共に、搬送方向Tに沿って移動する電子部品2が、下流縁傾斜面48Aと上流縁傾斜面48Bに引っ掛かることを抑制する。
【0039】
図6に更に拡大して示されるように、カバーユニット40のカバー領域42と電子部品2の間には隙間Sが形成される。この隙間Sの大きさは、電子部品搭載プレート10の凹部12の深さHとほぼ同一又はそれ以下に設定される。このようにカバーユニット40を電子部品2に接近させることで、電子部品2の上方の開放空間が狭くなり、電子部品2の上面からの放熱(吸熱)が抑制されて、温度制御精度を高めることが可能となる。なお、この隙間Sによって、カバーユニット40と電子部品搭載プレート10は、非接触状態で面方向に相対移動する。結果、カバーユニット40は、温度制御ユニット30側と一緒に固定配置されるので、カバーユニット40の温度も常に安定させることができる。
【0040】
特にこのカバーユニット40は、自身も温度制御される。具体的にカバーユニット40は、温度制御ユニット30の熱を自身に伝達する熱伝導部材46を備える。この熱電動部材46は、温度制御ユニット30の熱伝達プレート32に接続されており、温度制御ユニット30によって、熱伝達プレート32とカバーユニット40の双方が一緒に温度制御される。この結果、簡潔な構造によって、電子部品2が、上下方向から挟まれるようにして加熱、冷却されるので、高精度且つ安定した温度制御を実現できる。なお、熱電動部材46は、カバーユニット40を保持する基台の役目も兼ねている。
【0041】
電子部品2がサーモスタット、サーミスタなどの温度検出素子の場合、温度制御中に内部の動作素子が機械的に変位するので、その衝撃で電子部品2が跳ね上がる可能性がある。しかし、既に述べたように、隙間Sの大きさは、電子部品搭載プレート10の凹部12の深さHとほぼ同一又はそれ以下に設定されるので、図7に示されるように、仮に電子部品2の跳ね上がっての、その跳ね上がり距離が抑制されるので、電子部品2が凹部12内から飛び出したり、姿勢が崩れたりすることを低減できる。
【0042】
図6(A)に示されるように、プローブユニット50は、電子部品搭載プレート10及びカバーユニット40の上方側に対向状態で配置される。このプローブユニット50は、プローブ52と、プローブ52を保持する基台54と、この基台を上下方向に移動させる移動機構56を備える。プローブ52は、カバーユニット40の開放領域44の上方に位置決めされ、開放領域44を介して電子部品2の接点2Aに臨んでいる。更に、上方待機中のプローブ52の突端と比較して、カバーユニット40の下面が、電子部品2の上面に接近している。即ち、待機中は、プローブ52の突端が、カバーユニット40の下面より退避するようになっている。
【0043】
図6(B)に示されるように、移動機構56によってプローブユニット50が下降すると、プローブ52の先端が、カバーユニット40の開放領域44に進入して、電子部品搭載プレート10上の電子部品2の接点2Aに接触する。結果、プローブユニット50は、プローブ52を用いて電子部品2の出力特性を検出する。
【0044】
なお、プローブユニット50には、プローブ側温度制御素子55が配置される。プローブ側温度制御素子55はペルチェ素子であり、プローブ52に冷熱または温熱を供給して、プローブ52の温度を高精度に制御する。プローブ52の目標温度は、電子部品2の目標温度と同じに設定される。
【0045】
図1に戻って、電子部品搬入ユニット60は、パーツフィーダ62及び搬入アーム64を備えており、パーツフィーダ62から供給される電子部品(図示省略)を、搬入アーム64によって取り出して、電子部品搭載プレート10に搭載する。また、電子部品搬出ユニット70は、回収トレイ72及び搬出アーム74を備えており、電子部品搭載プレート10上の電子部品を、搬出アーム74によって取り出して、回収トレイ72に整列させる。
【0046】
次に、この温度特性計測装置1による、電子部品2の温度特性計測方法について、図8の温度遷移グラフを参照して説明する。なお、ここでは電子部品2の具体例として、サーマルプロテクタの温度特性を計測する手順を例示する。なお、サーマルプロテクタとは、特定の温度以上に上昇すると電気的接続を遮断する電子部品である。
【0047】
電子部品搬入ユニット60から電子部品搭載プレート10に搭載された電子部品2は、移送ユニット20の動力によって電子部品搭載プレート10と一緒に搬送される。まず、電子部品2は第1予熱領域Y1に進入し、温度上昇時に電気的接続を遮断してはならない判定基準温度となる80度まで急加熱してその温度を維持する。その後、電子部品2は第1計測領域D1に進入して、更にこの判定基準温度となる80度を維持しながら温度を安定させて、この第1計測領域D1の終端部分に配置されるプローブユニット50によって出力特性を計測する。第1計測領域D1では、電子部品2の電気的接続が維持されていれば合格となる。その後、電子部品2は第2予熱領域Y2に進入して、温度上昇時に電気的接続を遮断しなければならない判定基準温度となる90度まで急加熱してその温度を維持する。この第2予熱領域Y2内において、正常な電子部品2であれば、内部のバイメタル等によって構成される動作素子が機械的に変位して接点2Aの電気的接続を遮断する。従って、この動作素子の振動によって電子部品2が跳ね上がろうとするが、その跳ね上がりがカバーユニット40によって抑え込まれる(図7参照)。その後、電子部品2は第2計測領域D2に進入して、この判定基準温度となる90度を維持しながら温度を安定させて、この第2計測領域D2の終端部分に配置されるプローブユニット50によって出力特性を計測する。第2計測領域D2では、電子部品2の電気的接続が遮断されていれば合格となる。
【0048】
その後、電子部品2は第3予熱領域Y3に進入して、温度下降時に電気的接続を接続してはならない判定基準温度となる70度まで除熱する。その後、電子部品2は第3計測領域D3に進入して、この判定基準温度となる70度を維持しながら温度を安定させて、この第3計測領域D3の終端部分に配置されるプローブユニット50によって出力特性を計測する。第3計測領域D3では、電子部品2の電気的接続が接続されていれば合格となる。更にその後、電子部品2は第4予熱領域Y4に進入して、温度下降時に電気的接続を接続しなければならない判定基準温度となる60度まで除熱する。第4予熱領域Y4内において、正常な電子部品2であれば、内部のバイメタル等によって構成される動作素子が機械的に変位して接点2Aの電気的接続を接続する。従って、この動作素子の振動によって電子部品2が跳ね上がろうとするが、その跳ね上がりがカバーユニット40によって抑え込まれる。その後、電子部品2は第4計測領域D4に進入して、この判定基準温度となる60度を維持しながら温度を安定させて、この第4計測領域D4の終端部分に配置されるプローブユニット50によって出力特性を計測する。第4計測領域D4では、電子部品2の電気的接続が接続されていれば合格となる。最後に、電子部品2は第5予熱領域Y5に進入して、抵抗値を計測するための判定基準温度となる25度まで除熱する。その後、電子部品2は第5計測領域D5に進入して、この判定基準温度となる25度を維持しながら温度を安定させて、この第5計測領域D5の終端部分に配置されるプローブユニット50によって抵抗値を計測する。これらの工程を経て計測が完了した電子部品は、電子部品搬出ユニット70によって回収トレイ72に回収される。
【0049】
以上、本実施形態の温度特性計測装置1によれば、電子部品2の温度特性を計測する際に、カバーユニット40によって電子部品2の上方を覆うことができるので、例えば地震等によって電子部品温度特性計測装置1が振動したり、また、スイッチング動作によって電子部品2が単独で振動したりする場合に、電子部品2の飛散を抑制することが可能となる。また、カバーユニット40の存在によって、電子部品2の上面の空気が滞留するので、電子部品2の上面からの放熱を抑制することができ、電子部品2の温度を安定させることが可能となる。更に、プローブ42よりも電子部品2に接近しているカバーユニット40を温度制御ユニット30によって同時に温度制御することで、上側からも温熱、冷熱を供給することが可能となり、電子部品2の温度制御精度を飛躍的に高めることが可能になる。
【0050】
また、このカバーユニット40には、開放領域44が形成されているので、プローブユニットは、この開放領域44を介して電子部品2の接点2Aに対して電気的接続を確保できる。従って、出力特性を計測している最中においても、電子部品2の接点2A以外の領域を覆うことが可能となる。また、この開放領域44によって、搬送中の電子部品2の状態を外部から観察できる。結果、電子部品2の保持姿勢や、電子部品搭載プレート10の移動状態などに異常が生じた場合であっても、作業者がこの開放領域44から内部を覗くことによって、その異常箇所を素早く発見できる。
【0051】
更に本実施形態では、カバーユニット40と電子部品2との隙間Sが、電子部品搭載プレート10の凹部12の深さHとほぼ同一又はそれ以下に設定されるので、何らかの衝撃で電子部品2が跳ね上がっても、電子部品2が凹部12から飛び出すことを抑制できる。また、このようにカバーユニット40を電子部品2に接近させることで、隙間2内の空気の移動量が抑制されることから、電子部品2の放熱を抑制できる。
【0052】
また本実施形態では、温度制御ユニット30とカバーユニット40が共に固定配置されており、その間を、電子部品搭載プレート10が移動する。結果、温度制御ユニット30とカバーユニット40の間の狭い空間において、温度の安定性が増すので、電子部品搭載プレート10及び電子部品2の温度を高精度に制御することができる。特に、このカバーユニット10は、複数の温度制御ユニット30が配置される領域のほぼ全部に亘って配置されるので、電子部品2が加熱・冷却される全域に亘って上方を覆うことが可能となる。
【0053】
なお、上記実施形態では、カバーユニット40の開放領域44が帯状に形成される場合に限って示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図9(A)に示されるように、複数のカバーユニット44の隙間を、開放領域44の開口として用いることもできる。この場合、単体のカバーユニット40に対して個々に開口を形成する必要は無いが、搬送中の電子部品2の外部からの視認性を高めるためには、カバーユニット40をガラスなどの透明材料で構成することも好ましい。
【0054】
また、カバーユニット40の厚みは一定である必要は無く、例えば図9(B)に示されるように、電子部品2の上方に限って電子部品2と接近するような突起40Aを形成することも可能である。また、この図9(B)に示されるように、カバーユニット40は、自身の温度を専用に制御するカバーユニット用温度制御ユニット80を備えるようにしても良い。なお、本実施形態で示したように、カバーユニット40を温度制御する場合は、カバーユニット40の素材を金属等の熱伝導性の高い材料にすることが望ましいが、カバーユニット40を温度制御しない場合は、電子部品2から上方への放熱を抑制するために、カバーユニット40を断熱性の高い材料で構成することが好ましい。
【0055】
また、図9(C)に示されるように、カバーユニット40の開放領域44の開口を、電子部品2単位で独立させることも可能である。
【0056】
更に上記実施形態では、温度制御ユニット30の上方の全域にカバーユニット40を配置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、温度制御ユニット30の上方の一部に限ってカバーユニット40で覆うようにしても良く、また、温度制御ユニット30以外の領域をカバーユニット40で覆うようにしても良い。
【0057】
また更に、上記実施形態では、電子部品搭載プレート10の搬送方向が環状となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、直線方向に搬送してもよく、また、搬送方式もコンベア駆動やウオーキングビーム搬送などの各種手法を採用できる。
【0058】
また、上記実施形態では、電子部品搭載プレート10とカバーユニット40が相対移動する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、電子部品搭載プレート10とカバーユニット40が一体となって移動したり、共に固定配置されていたりすることもできる。
【0059】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電子部品温度特性計測装置は、様々な電子部品の計測に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0061】
1 電子部品温度特性計測装置
10 電子部品搭載プレート
20 移送ユニット
30 温度制御ユニット
40 カバーユニット
50 プローブユニット
60 電子部品搬入ユニット
70 電子部品搬出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の温度特性を計測する温度特性計測装置であって、
前記電子部品が収容される凹部を有する電子部品搭載プレートと、
前記電子部品搭載プレートの前記電子部品に対して直接又は間接的に熱を供給する温度制御ユニットと、
前記電子部品搭載プレートに収容される前記電子部品の上面の少なくとも一部を覆うカバーユニットと、
前記電子部品の前記接点に対して電気的接続を確保し、該電子部品の出力特性を測定するプローブユニットと、
を備える事を特徴とする温度特性計測装置。
【請求項2】
前記プローブユニットにおける待機中のプローブの突端と比較して、前記カバーユニットが、前記電子部品の上面に接近していることを特徴とする、
請求項1に記載の温度特性検査装置。
【請求項3】
前記カバーユニットは、前記電子部品の上面の少なくとも一部を覆いつつ、該電子部品の接点の上面を開放する開放領域を備え、
前記プローブユニットは、前記開放領域を介して、前記電子部品の前記接点に対して電気的接続を確保することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の温度特性計測装置。
【請求項4】
前記カバーユニットと前記電子部品との間には隙間が形成されており、
前記隙間の大きさは、前記電子部品搭載プレートの前記凹部の深さとほぼ同一又はそれ以下に設定されることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の温度特性計測装置。
【請求項5】
前記カバーユニットと前記電子部品搭載プレートは、面方向に相対移動可能となっていることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の温度特性計測装置。
【請求項6】
前記電子部品搭載プレートと前記温度制御ユニットは、面方向に相対移動可能となっていることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の温度特性計測装置。
【請求項7】
複数の前記温度制御ユニットが、前記電子部品搭載プレートの移動方向に沿って固定配置されることで、前記電子部品を複数の温度帯域に制御可能となっており、
前記カバーユニットは、前記複数の温度制御ユニットが配置される領域と少なくとも一部が重なるように配置され、
前記電子部品搭載プレートは、前記複数の温度制御ユニットの間を移動することを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれかに記載の温度特性計測装置。
【請求項8】
前記カバーユニットが温度制御されることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の温度特性計測装置。
【請求項9】
前記カバーユニットは、前記温度制御ユニットの熱を自身に伝達する熱伝導部材を備えており、該カバーユニットが、前記温度制御ユニットによって温度制御されることを特徴とする、
請求項8に記載の温度特性計測装置。
【請求項10】
前記カバーユニットは、自身の温度を制御するカバーユニット用温度制御ユニットを備えることを特徴とする、
請求項8に記載の温度特性計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−32940(P2013−32940A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168435(P2011−168435)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(501410137)アキム株式会社 (49)
【Fターム(参考)】