説明

温度補償型圧電発振回路および温度補償方法

【課題】温度補償結果の精度を高くする。
【解決手段】所定の周波数で励振される圧電素子を備えた圧電振動子と、前記圧電素子に電流を流して励振させる発振用増幅器と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた温度補償型圧電発振回路の温度補償方法において、前記周波数温度補償回路から出力される温度変化に対応する温度補償波形と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形形状からなる等価波形を生成し、前記等価波形を反転させた反転等価波形を前記周波数温度補償回路の出力端子に印加することにより、前記温度補償波形を補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子を使用した圧電発振器に関し、特に簡単な回路構成によってATカット水晶振動子の発振周波数の温度補償が可能な温度補償型圧電発振回路および温度補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される陸上移動体通信器の使用エリアは拡大の一途を辿っている。それと同時に、携帯電話の普及もすさまじく技術開発競争は激化している。携帯電話に使用される水晶発振器も小型化、ローコスト化、更に高性能化が要求されている。特にGPSシステムとの共存を要求されるシステムでは温度特性が優れているだけでなく、低ノイズ化が強く要求されている。
【0003】
図9に携帯電話に使用されている水晶振動子(At−Cut)の切断角度の違いによる温度特性を示す。図9に示す様に振動子の温度特性は3次関数に近い特性を示すが、これだけでは特性上十分ではなくこの特性以上の高い周波数安定度が得られるよう温度補償を行っていた。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1の温度補償型圧電発振回路100では、図10に示すように、水晶振動子141を備えた水晶発振回路140と、両端の電位差により容量が変化する可変容量ダイオードVCaと、各回路をアイソレーションする高抵抗Rak、Raaと、コンデンサC1と、周囲温度を検出する温度センサ部120と、温度センサ部120の電圧に基づいて温度補償電圧を発生する補償電圧発生回路130と、を備えて構成される。
【0005】
図4(C)は、水晶振動子の温度特性を示すグラフG1と、補償電圧発生回路130で発生した温度補償電圧を可変容量ダイオードVCaの両端に印加することにより水晶振動子に印加される補償温度特性を示すグラフG2と、温度補償結果を示すグラフG3である。図4(C)の温度t4からt8の区間は、グラフG3に示すように温度補償結果がなだらかで比較的安定している。
【0006】
【特許文献1】特開2005−6028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4(C)の低温領域である温度t1からt4の区間、および、高温領域である温度t8からt11の区間は、グラフG3に示すように温度特性が3次カーブとなり、温度特性を安定させることができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低温領域および高温領域においても温度補償特性を安定させることができる温度補償型圧電発振回路および温度補償方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の温度補償型圧電発振回路の温度補償方法では、発振周波数が温度により変化し得る発振信号における前記発振周波数についての温度特性を補償すべく、前記温度特性と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形が反転された1つ以上の反転台形からなる補償特性を前記温度特性に加える工程を含むことを要旨とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の温度補償型圧電発振回路の温度補償方法では、所定の周波数で励振される圧電素子を備えた圧電振動子と、前記圧電素子に電流を流して励振させる発振用増幅器と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた温度補償型圧電発振回路の温度補償方法において、前記周波数温度補償回路から出力される温度変化に対応する温度補償波形と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形形状からなる等価波形を生成し、前記等価波形を反転させた反転等価波形を前記周波数温度補償回路の出力端子に印加することにより、前記温度補償波形を補償することを要旨とする。
【0011】
また、本発明の温度補償型圧電発振回路では、所定の周波数で励振される圧電素子を備えた圧電振動子と、前記圧電素子に電流を流して励振させる発振用増幅器と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた温度補償型圧電発振回路において、前記温度補償型圧電発振回路は、前記周波数温度補償回路から出力される温度変化に対応する温度補償波形と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形形状からなる等価波形を反転させた反転等価波形を生成する2次補償電圧発生回路を備え、前記反転等価波形を前記周波数温度補償回路の出力端子に印加することにより、前記温度補償波形を補償する。
【0012】
この構成によれば、周波数温度補償回路による補償結果の温度補償波形において、安定させることができなかった温度領域の波形に対し反転等価波形を印加し補償することにより、すべての温度領域で温度特性が安定した温度補償型圧電発振回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第1実施形態)
【0014】
<温度補償型圧電発振回路の構成>
まず、第1実施形態に係る温度補償型圧電発振回路の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る温度補償型圧電発振回路の構成を説明する回路図である。図1に示すように、温度補償型圧電発振回路1は、従来の温度補償型圧電発振回路100に、2次補償電圧発生部200を追加して構成されている。
【0015】
従来の温度補償型圧電発振回路100は、どのような構成でも構わないが、本第1実施形態においては、定電圧回路110、温度センサ部120、1次補償電圧発生回路130、水晶発振回路140、から構成されている。
【0016】
定電圧回路110は、外部電圧VCCの入力を受けて安定した内部電圧Vrefを生成する。温度センサ部120は、外部温度に対応する電圧Vt1を出力する。1次補償電圧発生回路130は、電圧Vt1を入力し、可変容量素子VCaのカソード側に高抵抗Rakを介して補償電圧VCakを、可変容量素子VCaのアノード側に高抵抗Raaを介して補償電圧VCaaを、それぞれ出力する。
【0017】
可変容量素子VCaのカソード側は、水晶発振回路140の水晶振動子141に接続され、可変容量素子VCaのアノード側は、コンデンサC1を介して外部制御端子VCONTに接続されている。また、可変容量素子VCbのカソード側は、外部制御端子VCONTに接続され、可変容量素子VCbのアノード側は、コンデンサC2を介して接地電位GNDに接続されている。
【0018】
2次補償電圧発生部200は、電圧Vt1を入力し、可変容量素子VCbのカソード側に高抵抗Rbkを介して補償電圧VCbkを、可変容量素子VCbのアノード側に高抵抗Rbaを介して補償電圧VCbaを、それぞれ出力する。
【0019】
<温度センサ部の構成>
次に、温度センサ部の構成について図2を参照して説明する。図2は、温度センサ部の構成を示す回路図である。図2に示すように、温度センサ部120は、演算増幅器OP1、ダイオードD11、抵抗R11、R12、R13、R14、可変抵抗R15、から構成されている。内部電圧Vrefと接地電位GNDの間に、抵抗R11、ダイオードD11、抵抗R12が直列に接続され、抵抗R13、R14が直列に接続されている。演算増幅器OP1の+端子(非反転入力端子)は、ダイオードD11のアノードに接続され、−端子(反転入力端子)は、抵抗R13とR14の接続点に接続されている。可変抵抗R15は、演算増幅器OP1の−端子と出力端子の間に接続されている。
【0020】
温度センサ部120は、演算増幅器OP1の出力端子から外部温度に対応する電圧Vt1を出力する。電圧Vt1は、図4(A)に示すように、外部温度の低温側(t1以下)から高温側(t11以上)に向かって内部電圧Vrefから接地電位GND(0V)までリニアに減少する。
【0021】
<1次補償電圧発生回路の構成>
次に、1次補償電圧発生回路の構成について図3を参照して説明する。図3は、1次補償電圧発生回路の構成を示す回路図である。図3に示すように、1次補償電圧発生回路130は、基準電圧発生回路131と、演算増幅器OPaa、OPab、OPacと、抵抗Raa1、Raa2、Raa3、Raa4、Rab1、Rab2、Rab3、Rac1、Rac2、Rac3、R15と、コンデンサCa1、Ca2と、から構成されている。
【0022】
基準電圧発生回路131は、内部電圧Vrefと接地電位GNDの間に、抵抗Ra1、Ra2、Ra3、Ra4が直列に接続され構成されている。抵抗Ra1とRa2の接続点から電圧Vab1が、抵抗Ra2とRa3の接続点から電圧Vaa1が、抵抗Ra3とRa4の接続点から電圧Vac1が、出力される。
【0023】
演算増幅器OPaaは、+端子に電圧Vaa1が入力され、−端子に抵抗Raa1を介して電圧Vt1が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Raa2が接続され、出力端子に抵抗Raa3の一端が接続されている。
【0024】
演算増幅器OPabは、+端子に電圧Vab1が入力され、−端子に抵抗Rab1を介して電圧Vt1が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Rab2が接続され、出力端子に抵抗Rab3の一端が接続されている。
【0025】
演算増幅器OPacは、+端子に電圧Vac1が入力され、−端子に抵抗Rac1を介して電圧Vt1が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Rac2が接続され、出力端子に抵抗Rac3の一端が接続されている。
【0026】
抵抗Raa3の他端には、他端が内部電圧Vrefに接続された抵抗Raa4の一端と、他端が接地電位GNDに接続されたコンデンサCa1の一端がそれぞれ接続され、出力信号VCakを出力する。
【0027】
抵抗Rab3の他端と抵抗Rac3の他端は相互に接続され、他端が接地電位GNDに接続された抵抗R15の一端と、他端が接地電位GNDに接続されたコンデンサCa2の一端がそれぞれ接続され、出力信号VCaaを出力する。
【0028】
1次補償電圧発生回路130は、図4(C)のグラフG1に示す温度特性を補償するために、補償電圧VCakを図1の可変容量素子VCaのカソード端子に、補償電圧VCaaを図1の可変容量素子VCaのアノード端子に印加する。これにより得られる図4(C)のグラフG2に示す容量変化により、グラフG1の温度特性が補償され、図4(C)のグラフG3に示す1次温度補償結果が得られる。
【0029】
図4(A)は、温度変化に対応する、温度センサ部120からの出力電圧Vt1と、図3のVaa2、Vab2、Vac2の電位の変化を示すグラフ図である。図4(B)は、温度変化に対応する、温度センサ部120からの出力電圧Vt1と、図3のVCak、Vab2、VCaaの電位の変化と、図1の可変容量素子VCaのカソード−アノード間電位ΔVaの電位の変化を示すグラフ図である。図4(B)の電位ΔVaの変化により、図4(C)のグラフG2に示す容量変化が得られる。
【0030】
<2次補償電圧発生部の構成>
次に、2次補償電圧発生部の構成について図5を参照して説明する。図5は、2次補償電圧発生部の構成を説明する回路図である。図5に示すように、2次補償電圧発生部200は、2次補償電圧発生回路210、220から構成されている。
【0031】
2次補償電圧発生回路210は、基準電圧発生回路211と、演算増幅器OP2、OPba、OPbb、OPbc、OPbdと、抵抗R26、R27、Rba1、Rba2、Rba3、Rbb1、Rbb2、Rbb3、Rbc1、Rbc2、Rbc3、Rbd1、Rbd2、Rbd3、Rs、Rtから構成されている。
【0032】
基準電圧発生回路211は、内部電圧Vrefと接地電位GNDの間に、抵抗Rb1、Rb2、Rb3、Rb4、Rb5、Rb6が直列に接続され構成されている。抵抗Rb1とRb2の接続点から電圧Vbc1が、抵抗Rb2とRb3の接続点から電圧Vbb1が、抵抗Rb3とRb4の接続点から電圧Vb01が、抵抗Rb4とRb5の接続点から電圧Vbd1が、抵抗Rb5とRb6の接続点から電圧Vba1が、出力される。
【0033】
演算増幅器OP2は、+端子に電圧Vb01が入力され、−端子に抵抗R26を介して電圧Vt1が入力され、出力端子と−端子間に抵抗R27が接続されている。
【0034】
演算増幅器OPbaは、+端子に電圧Vba1が入力され、−端子に抵抗Rba1を介して電圧Vt2が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Rba2が接続され、出力端子に抵抗Rba3の一端が接続されている。
【0035】
演算増幅器OPbbは、+端子に電圧Vbb1が入力され、−端子に抵抗Rbb1を介して電圧Vt1が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Rbb2が接続され、出力端子に抵抗Rbb3の一端が接続されている。
【0036】
演算増幅器OPbcは、+端子に電圧Vbc1が入力され、−端子に抵抗Rbc1を介して電圧Vt2が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Rbc2が接続され、出力端子に抵抗Rbc3の一端が接続されている。
【0037】
演算増幅器OPbdは、+端子に電圧Vbd1が入力され、−端子に抵抗Rbd1を介して電圧Vt1が入力され、出力端子と−端子間に抵抗Rbd2が接続され、出力端子に抵抗Rbd3の一端が接続されている。
【0038】
抵抗Rba3の他端と、抵抗Rbb3の他端と、抵抗Rbc3の他端と、抵抗Rbd3の他端は、相互に接続され、抵抗Rsの一端と接続される。抵抗Rsの他端は、他端が接地電位GNDに接続された抵抗Rtの一端と接続され、出力電位VCbkを出力する。
【0039】
2次補償電圧発生回路220は、演算増幅器OPbeと、抵抗Rbe1、Rbe2とから構成され、演算増幅器OPbeの+端子は、接地電位GNDに、−端子は、抵抗Rbe1を介して内部電位Vrefに接続されている。また、演算増幅器OPbeの出力端子と−端子の間に抵抗Rbe2が接続されている。2次補償電圧発生回路220の出力電位VCbaは、常時、接地電位GNDとなる。
【0040】
2次補償電圧発生部200は、図6(C)のグラフG3に示す1次温度補償結果を補償するために、補償電圧VCbkを図1の可変容量素子VCbのカソード端子に、補償電圧VCbaを図1の可変容量素子VCbのアノード端子に印加する。これにより得られる図6(C)のグラフG4に示す容量変化により、グラフG3の1次温度補償結果が補償され、図6(C)のグラフG5に示す2次温度補償結果が得られる。
【0041】
図6(A)は、温度変化に対応する、温度センサ部120からの出力電圧Vt1と、図5のVt2、Vba2、Vbb2、Vbc2、Vbd2の電位の変化を示すグラフ図である。
【0042】
演算増幅器OP2の出力電圧Vt2は、+端子の電圧Vb01と、演算増幅器OP2の利得R26/R27を調整することによって決まり、図6(A)に示すように、電圧Vt1を電圧Vb01に対して反転したグラフとなる。
【0043】
演算増幅器OPbaの出力電圧Vba2は、+端子の電圧Vba1と、演算増幅器OPbaの利得Rba1/Rba2を調整することによって決まり、図6(A)に示すように、温度t1以下では内部電圧Vref、温度t1からt2にかけて内部電圧Vrefから接地電位GNDまでリニアに立ち下り、温度t2以上では、接地電位GNDを保つ。
【0044】
演算増幅器OPbbの出力電圧Vbb2は、+端子の電圧Vbb1と、演算増幅器OPbbの利得Rbb1/Rbb2を調整することによって決まり、図6(A)に示すように、温度t3以下では接地電位GND、温度t3からt4にかけて接地電位GNDから内部電圧Vrefまでリニアに立ち上り、温度t4以上では、内部電圧Vrefを保つ。
【0045】
演算増幅器OPbcの出力電圧Vbc2は、+端子の電圧Vbc1と、演算増幅器OPbcの利得Rbc1/Rbc2を調整することによって決まり、図6(A)に示すように、温度t10以下では内部電圧Vref、温度t10からt11にかけて内部電圧Vrefから接地電位GNDまでリニアに立ち下り、温度t11以上では、接地電位GNDを保つ。
【0046】
演算増幅器OPbdの出力電圧Vbd2は、+端子の電圧Vbd1と、演算増幅器OPbdの利得Rbd1/Rbd2を調整することによって決まり、図6(A)に示すように、温度t8以下では接地電位GND、温度t8からt9にかけて接地電位GNDから内部電圧Vrefまでリニアに立ち上り、温度t9以上では、内部電圧Vrefを保つ。
【0047】
図6(B)は、温度変化に対応する、図6(A)の出力電圧Vba2、Vbb2、Vbc2、Vbd2の合成結果である出力電圧VCbkの変化を示すグラフ図である。なお、出力電圧VCbaは接地電位GNDに固定されているので、可変容量素子VCbのカソード−アノード間の電圧差ΔVb=VCbkとなる。
【0048】
温度t1では、Vba2=Vbc2=Vref、Vbb2=Vbd2=0Vなので、出力電圧VCbkの電圧値V1は、次の(1)式で求められる。
V1=Vref×Rbb3×Rbd3×(Rba3+Rbc3)/(Rba3×Rbc3×(Rbb3+Rbd3)+Rbb3×Rbd3×(Rba3+Rbc3)) ・・・(1)
【0049】
温度t2では、Vbc2=Vref、Vba2=Vbb2=Vbd2=0Vなので、出力電圧VCbkの電圧値V2は、次の(2)式で求められる。
V2=Vref×Rba3×Rbb3×Rbd3/(Rbc3×(Rba3×Rbb3+Rbb3×Rbd3+Rba3×Rbd3)+Rba3×Rbb3×Rbd3) ・・・(2)
【0050】
温度t4では、Vbc2=Vbd2=Vref、Vba2=Vbb2=0Vなので、出力電圧VCbkの電圧値V3は、次の(3)式で求められる。
V3=Vref×Rba3×Rbd3×(Rbb3+Rbc3)/(Rbb3×Rbc3×(Rba3+Rbd3)+Rba3×Rbd3×(Rbb3+Rbc3)) ・・・(3)
【0051】
温度t9では、Vbb2=Vbc2=Vbd2=Vref、Vba2=0Vなので、出力電圧VCbkの電圧値V4は、次の(4)式で求められる。
V4=Vref×Rba3×(Rbb3×Rbc3+Rbc3×Rbd3+Rbb3×Rbd3)/(Rba3×(Rbb3×Rbc3+Rbc3×Rbd3+Rbb3×Rbd3)+Rbb3×Rbc3×Rbd3) ・・・(4)
【0052】
温度t11では、Vbb2=Vbd2=Vref、Vba2=Vbc2=0Vなので、出力電圧VCbkの電圧値V5は、次の(5)式で求められる。
V5=Vref×Rba3×Rbc3×(Rbb3+Rbd3)/(Rbb3×Rbd3×(Rba3+Rbc3)+Rba3×Rbc3×(Rbb3+Rbd3)) ・・・(5)
【0053】
なお、Rba3、Rbb3、Rbc3、Rbd3の値は、(1)式〜(5)式を連立して解くことにより求めることができる。
【0054】
図1の可変容量素子VCbのカソード−アノード間にΔVb(=VCbk)を印加することにより、図6(C)のグラフG4に示す容量変化を外部制御端子VCONTに印加されるので、グラフG3の1次温度補償結果が補償され、グラフG5に示す2次温度補償結果が得られる。
【0055】
以上に述べた前記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0056】
本実施形態では、周波数温度補償回路による補償結果の温度補償波形(図6(C)のグラフG3)において、安定させることができなかった温度領域(温度t4以下と温度t8以上)の波形に対し反転等価波形である図6(C)のグラフG5に示す台形状の容量変化を印加し補償することにより、すべての温度領域で温度特性が安定した温度補償型圧電発振回路を提供できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0058】
(変形例1)本発明に係る温度補償型圧電発振回路の第1変形例について説明する。前記第1実施形態では、図5に示すように、可変容量素子VCbのアノード側に印加する電圧VCbaを接地電位GNDに固定した場合を説明したが、図7(A)に示すように、アノード側電圧VCbaを出力する回路として2次補償電圧発生回路210と同様の構成で各抵抗値を変更した2次補償電圧発生回路210aで構成してもよい。このような構成にすれば、図7(B)に示すように、可変容量素子VCbのカソード−アノード間の電圧ΔVbをより複雑な台形波形にすることも可能である。
【0059】
(変形例2)本発明に係る温度補償型圧電発振回路の第2変形例について説明する。前記第1実施形態では、図1に示すように、外部制御端子VCONTを2次補償電圧発生部200により占有してしまい、外部制御ができなくなるという問題があった。本変形例2では、図8に示すように、2次補償電圧発生部200の出力電圧VCbkと外部制御端子VCONTの間に演算増幅器OP3を設け、演算増幅器OP3の+端子に外部制御信号VCONT1を入力することにより、外部制御信号による制御を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る温度補償型圧電発振回路の構成を説明する回路図。
【図2】温度センサ部の構成を説明する回路図。
【図3】1次補償電圧発生回路の構成を説明する回路図。
【図4】1次補償電圧発生回路の動作を説明するグラフ図。
【図5】2次補償電圧発生部の構成を説明する回路図。
【図6】2次補償電圧発生部の動作を説明するグラフ図。
【図7】変形例2の2次補償電圧発生部の構成を説明する図。
【図8】変形例3の温度補償型圧電発振回路の構成を説明する回路図。
【図9】携帯電話に使用されている水晶振動子(At−Cut)の切断角度の違いによる温度特性を示すグラフ図。
【図10】従来の温度補償型圧電発振回路の構成を説明する回路図。
【符号の説明】
【0061】
1…温度補償型圧電発振回路、100…従来の温度補償型圧電発振回路、110…定電圧回路、120…温度センサ部、130…1次補償電圧発生回路、131…基準電圧発生回路、140…水晶発振回路、141…水晶振動子、142…発振用増幅器、200…2次補償電圧発生部、210…2次補償電圧発生回路、211…基準電圧発生回路、220…2次補償電圧発生回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振周波数が温度により変化し得る発振信号における前記発振周波数についての温度特性を補償すべく、前記温度特性と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形が反転された1つ以上の反転台形からなる補償特性を前記温度特性に加える工程を含むことを特徴とする温度補償型圧電発振回路の温度補償方法。
【請求項2】
所定の周波数で励振される圧電素子を備えた圧電振動子と、前記圧電素子に電流を流して励振させる発振用増幅器と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた温度補償型圧電発振回路の温度補償方法において、
前記周波数温度補償回路から出力される温度変化に対応する温度補償波形と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形形状からなる等価波形を生成し、
前記等価波形を反転させた反転等価波形を前記周波数温度補償回路の出力端子に印加することにより、前記温度補償波形を補償する、
ことを特徴とする温度補償型圧電発振回路の温度補償方法。
【請求項3】
所定の周波数で励振される圧電素子を備えた圧電振動子と、前記圧電素子に電流を流して励振させる発振用増幅器と、温度変化による発振周波数の変化を補償する周波数温度補償回路と、を備えた温度補償型圧電発振回路において、
前記温度補償型圧電発振回路は、前記周波数温度補償回路から出力される温度変化に対応する温度補償波形と実質的に等価とみなせる1つ以上の台形形状からなる等価波形を反転させた反転等価波形を生成する2次補償電圧発生回路を備え、
前記反転等価波形を前記周波数温度補償回路の出力端子に印加することにより、前記温度補償波形を補償する、
ことを特徴とする温度補償型圧電発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−300518(P2007−300518A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128158(P2006−128158)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】